羽生結弦選手が筋筋膜性腰痛症でフィンランディア杯欠場!筋筋膜性腰痛は身近な腰痛です。

羽生選手が腰痛で欠場

筋筋膜性腰痛きんきんまくせいようつうという言葉がニュースに出てきて驚きました。そのニュースとは男子フィギアスケートの羽生結弦選手が練習中に腰を痛めてフィンランディア杯を欠場するというものでした。

ソチ五輪の金メダリストである羽生選手は、先日の会見では「今季は全部勝ちたい!!」と強い意気込みを語っていただけに残念でなりません。私もプロ・アスリートのケアを行っておりますので、他人ごとに思えず、また、自分の専門分野のひとつですので記事を書いた次第でございます。

羽生選手を今季の初戦欠場にまで追いこんだ腰痛の名前が「筋筋膜性腰痛きんきんまくせいようつう症」。この腰痛は決してアスリートだけのものではなく、一般の方にもとても多い疾患です。いわゆる「ぎっくり腰」のひとつです。(ぎっくり腰は、急に腰を痛めた際の症状の総称ですので、ギックリ腰といっても、種類は様々です。)

筋筋膜性腰痛は実は身近な腰痛です。腰痛の種類と原因について解説します。

筋筋膜性きんきんまくせい腰痛は身近な腰痛です。そこで今回は「筋筋膜性腰痛になってしまったら、どうすればよいの?」という疑問にお答えします。

最初に筋筋膜という言葉ですが、これはずばり一般的な筋膜です。筋膜は、単語に筋とはいってはいますが、カラダの内臓をはじめあらゆる組織を包んでいます。その中でも筋肉を包んでいる筋膜が筋筋膜、英語ではmyofasciaといいます。

筋筋膜は、筋・筋膜と表記されることが多いのですが、肩こり ラボでは筋筋膜が正しいと考えています。筋筋膜は英語ではmyofasciaといいますが、これはmyo+fasciaで、myoは「筋肉の」、fasciaは「筋膜」です。つまり体全体に張り巡らされている筋膜という組織のうち筋肉を覆っているものはmyofasciaなのです。筋・筋膜は、筋肉と筋膜と解説されていることが多いのですが、筋膜は筋肉を構成する要素です。筋繊維を覆っているのは筋内膜という筋膜、筋繊維の束を覆っているのは筋周膜という筋膜、筋肉全体を覆っているのも筋膜(深筋膜・筋上膜ともいう)です。筋筋膜は、一般的な筋膜とお考え下さい。

慢性的な腰痛いわゆる「腰痛持ち」に心当たりがあるある方は是非ご一読ください。

腰痛は診断名がつくものとつかないものの2つに分類されます。

腰痛と一言でいいましても実際はいろいろな種類がございます。自分の腰痛は一体どんな腰痛なのか?腰痛は医療機関で診断名のつくかつかないかの2種類に大きく分けられます。

  1. 診断名がつく腰痛 特異的腰痛
  2. 診断名がつかない腰痛 非特異的腰痛

「特異的」というのは、これは特殊でレアなという意味ではなく、医療機関で診断がきちんとなされる腰痛です。肩こりでは症候性肩こりに相当します。

一方、非特異性腰痛は、原因がはっきりしない腰痛です。多くの人が悩む腰痛はこちらになります。一般的には、とりあえずの対症療法や「様子を見ましょう」という対応になります。肩こりでは本態性肩こりに相当します。つらい首・肩・腰の痛みに・・・効くとされる薬のCMを見ない日はないと思いますが、それだけ悩みを解決できない方がたくさんいらっしゃるということです。

医療機関で診断がなされるものが特異的というのは、それだけ治りにくい・治らない腰痛が多く、苦しんでいる方が非常に多いことを意味します。

ですから、諦めてしまう人も多いのです。

誤解のないよう繰り返し申し上げますが、非特異性腰痛は、医療機関において原因がはっきりしないとされる腰痛です。医療機関で原因がわからなくても、医学的に腰痛の原因は明確に3つあります。

原因がはっきりしている腰痛は3パターン

原因がはっきりしている腰痛は以下の3パターンに分けることができます。

腰痛を引き起こす原因

  1. 骨のトラブル 特異的腰痛
  2. 関節のトラブル 非特異的腰痛
  3. 筋肉のトラブル 非特異的腰痛

それぞれ詳しく解説します。

骨の問題による腰痛

骨の問題で起こる腰痛は、器質的な異常があることを指します。専門用語で分かりにくいですが、骨格の形態的異常があって、レントゲンやMRIなど画像検査として異常が見受けられるものです。代表的なものとしては、椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎すべり症、変形性腰椎症などがあげられます。

関節の問題による腰痛

背骨は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨1個(5個とカウントする場合もありますが、ここでは便宜上1つとさせていただきます)、尾骨1個(3~4個とカウントする場合もありますが、ここでは便宜上1つとさせていただきます)の計26個が連結してできています。骨が連結して、可動するという事はそこに関節が存在することになります。背骨は、上下の骨が2ヶ所で接しており、左右一対の椎間関節があります。仙骨と尾骨は通常の関節の構造となっていないことから便宜上ここでは関節ではないとカウントします。また、第1頚椎と頭蓋骨も関節の関係にあり、背骨には、(後頭骨を含めて)25個の骨×2つの関節=50個もの椎間関節が存在することになります。

この背骨の関節が、何らかのダメージを受けて傷めてしまうのを椎間関節性腰痛といいます。例えば、中腰で重い物を持った時、不用意にくしゃみをした時、予想外に足を踏み外してしまった時などに急激に椎間関節に力が加わり傷めてしまいます。誰もがご存知のぎっくり腰、それも身動きがとれないほどの重度のぎっくり腰は椎間関節を傷めてしまっているケースが多いのです。(ぎっくり腰は「突然生じる腰痛」の総称なため、その病態は様々あり、椎間関節性以外のものもあります) この関節の問題の場合は、残念ながらレントゲンなどでは分かりません。つまり、レントゲンを撮っても「異常無し」となり、鎮痛薬と湿布の処置となります。

ぎっくり腰が癖になるのには理由があります。

病院(整形外科)での典型的な処置の場合、3~7日間の安静で日常生活が可能となるため、この時点で治ったと解釈されます。しかし、注意が必要です。関節を傷めると、関節が動くのを守るために周囲の筋肉が不必要に緊張します。これを筋スパズムと言います。インナーマッスルなど関節運動に関わる筋肉がスパズム状態に陥ると、関節を正しく動くかすことができません。具体的には、背骨は一つ一つの骨がしなるように動くのが正常ですが、動きにムラが生じて本来動くべき所か動かず、動いてはいけない部分が動くようになってしまいます。結果的に、不自然な動きとなります。厄介なことに、この不自然さを感じるのは一流アスリートのような一部の方だけなのです。一般の方が不自然さを自覚されることは稀です。そのため、一定期間が経つと痛みはなくなりますが、正確には治ったわけではなく、その後時間が経ってから慢性腰痛に移行したり、繰り返し傷めてしまう可能性が高いのが特徴です。これがぎっくり腰が癖になってしまう原因です。

関節の問題による腰痛を解決するためには・・・

椎間関節性の腰痛を根治させるためには、急性例であれば一定期間の安静の後、日常生活が可能なレベルまで痛みが引いたら、その後は余分な筋スパズムを深部の筋肉までくまなく取り除き、さらに体幹のインナーマッスルを中心とした筋力トレーニングを行います。そして背骨の関節に負担のかからない動作改善の練習を行います。ここまで行うことで慢性化・再発のリスクを限りなく軽減させることができます。

筋肉の問題による腰痛  筋筋膜性腰痛症

筋筋膜性腰痛症は筋肉の問題による腰痛です。筋肉は構造上、筋膜というその名の通り膜状の組織に覆われています。実は筋膜には筋肉そのものよりも痛覚を感じるセンサーなど、神経が密に分布されており、それ故に重要な組織です。医学的な信憑性・効果はさておき「筋膜リリース」「筋膜はがし」「筋膜の癒着をはがす」などの手技療法が流行っているのはそのためです。 話を戻しますね。 筋肉や筋膜が傷んでしまう事、または筋スパズム状態に陥ってしまうことで痛みを生じるものを筋筋膜性腰痛といいます。

筋膜リリースとは?

筋膜性腰痛には2パターンあります。

筋膜性腰痛はその発症メカニズムから2つに分類できます。

①急性の場合

ぎっくり腰の一つといえます。椎間関節性腰痛の所と繰り返しになりますが、腰に何らかの負荷が急激にかかることで発症します。急性腰痛(=ぎっくり腰)の場合、関節にダメージがいった場合は椎間関節性腰痛へ。筋膜や筋肉にダメージがある場合は筋筋膜性腰痛と考えられます。「考えられる」というのは、これら2つは画像所見によって鑑別することができないため、発症の状況と症状の所見によって推測される、という域に留まるからです。もしレントゲン・CT・MRIなどによって異常が発見されるようであれば別の診断名がつくこととなります。それ故に「(レントゲンを撮って)骨に異常がありませんね。痛み止と湿布を出しておくので、1週間安静にして様子をみてください。」という事となります。・・・しかしそれでは根本的に治ったといえない場合が多いというのは上述させていただきました。(椎間関節性腰痛の項で解説しましたが、急性の筋筋膜性腰痛でも長期的には同様の経過をたどることとなります)

②慢性の場合

日本人の抱える自覚症状のうち最も多いのが(慢性)腰痛です。その最たるものが、この慢性の筋筋膜性腰痛です。 こちらは、上述しましたように、ぎっくり腰の激痛がおさまった後に移行してしまうパターンと、きっかけがあるなど特に思い当たる節はないけれども常に腰が重く感じていて疲労によって痛みの程度が上下するといったパターンがあります。

今回の羽生選手の場合は、何が根本が原因かは存じませんが、フィギュアスケートは前屈・後屈・捻転を正常の可動範囲を越えて動かすなど、とにかく腰を酷使するスポーツ。それを幼少期からハードな練習を行ってきたということから推測すると、腰には長年の負荷が蓄積されていたものと思われます。

筋筋膜性腰痛になってしまったら、まずは徹底的にスパズム状態にある筋肉を弛める必要があります。一時の鋭い痛みは安静によって改善しますが、ある一定まで落ち着くとそれ以上は変化が生じなくなります。ですから、筋スパズムをしっかりと取り除かなければなりません。どうすればよいかといいますと、残念ながら安静だけでは異常な筋緊張状態は全て解除することはできません。電気療法、温熱療法、超音波療法(厳密にはマッサージ効果を出す用い方もありますが便宜上ここでは温熱療法の一貫と解釈します)、ストレッチなどの方法が一般的ではありますが、実は筋スパズムをくまなく解除するにはこれらでは不十分です。マッサージか鍼にて異常を起こしている筋肉へ直接アプローチする方法がとても効果的です。手前味噌となりますが、鍼・マッサージは筋肉を弛めるという点においては最適な方法です。薬剤を使って筋弛緩を生じさせると筋肉の収縮力まで低下させてしまうため、筋の正常な機能を維持したままでの方法では最も優れているといえます。 筋肉を弛めるという点で大切なのはアウターマッスルとインナーマッスルの概念です。 つまり、マッサージではアウターマッスルしか弛めることができないため、インナーマッスルが硬くなって問題が生じている場合はどうしても効果が甘くなります。鍼はこのあたりの問題を解決可能です。(インナーマッスルは関節を安定させるためのものだから弛めたらいけないんじゃないの?一部の方は考えるかもしれませんが、弛める=収縮力を低下させるわけではありませんので、それよりもスパズムであったり、硬くなって収縮できない状況にある筋をある程度弛める事は、反対に収縮力を復活させることができると考えて施術にあたっております)

鍼やマッサージにて筋肉を弛めれば、直後の痛みは軽減可能です。しかしこの状態では、高確率で数日~数週間経つと元の状態に戻ってしまいます。 そのため、しっかりと筋肉を弛めて、個々の背骨がスムーズに動くことができる環境を整えたら、体幹と呼ばれる胴体部分の筋力トレーニングを行い、いわゆる「腹筋と背筋のバランスが悪い」状態を改善します。(当院の実際の施術では基本、同時並行で行います)これが体幹トレーニングです。

腰痛を改善する方法http://matome.naver.jp/odai/2141146523977583101/2141146686679253803から引用させていただきました

体幹トレーニングで注意しなければならいポイント

体幹を鍛えるために行う体幹トレーニングは、仰向けで状態をおこすいわゆる腹筋運動や体を反らせる背筋運動ではございません。これは非常に重要です。つまり、HOW TO本に記載されている体幹トレーニングメニューを行っても改善する可能性は低いのです。本に書いてある事は確かに概ね正しいのですが、決定的なエラーがあります。「記載されているポーズをとることができれば良い」ということではないのです。「体幹」というそのポージングを連想するくらいブームとなっておりますので、おそらく今これを読んでくださっている方もご想像できると思います。 つまり、腰痛改善のための筋力トレーニングは型にはまったものではなく、個々の体の状況、身体能力レベルに最適化させなければなりません。自己流で行うにも限界があるのも事実なので、本当にお困りの方はNATA-ATC 、 NSCA-CSCS、理学療法士のライセンスを持った専門家にご相談いただくのが良いかもしれません。

筋筋膜性腰痛を根本的に改善する上での最重要ポイント

さて、筋肉を弛めて、筋肉を鍛えて終わりではありません。

最後の仕上げが肝です。

それは、ズバリ「身体動作の改善」です。

歩き方・立ち方・座り方・重量物の持ち上げ方・・・アスリートであれば走り方・跳び方・競技のフォームなど、腰に負担をかけている行動パターンを修正します。

これらはトレーニングの延長ともいえますが、現状多くのトレーナーはトレーニングルームでのエクササイズメニューにこだわるあまり、生活背景や行動パターンへ介入できていない・できないことが多く、これでは「木をみて森をみず」となってしまいます。

惜しい所までいってるのに、あと一歩!で足踏みしてしまう人が非常に多いのです。行動パターンの修正、これが肝心要なのです。

筋筋膜性腰痛を改善するために必要な手順

長くなりましたのでまとめます。筋筋膜性腰痛は

  1. 背骨がひとつひとつ滑らかに動くような環境づくり。そのために深部の筋肉までしっかりと弛める。
  2. 腰にかかる負担を減らすための筋肉をつける。
  3. 腰に負担をかける動作を改善する。

この3つの手順を踏む必要があります。

注意しなければならないのは、冒頭でご説明しましたように腰痛には特異的なものも存在するということ。非特異的腰痛である筋筋膜性腰痛や椎間関節性腰痛は、レントゲンを撮影しても現れません。ですので詳しいことはよく分からないから、筋筋膜性腰痛でしょう、椎間関節性腰痛でしょう、と病院で診断されることがあります。しかし、心理面が関与していたり、本当に原因がわからない特殊な特異的腰痛が、まざっていることはあります。そのため、どんなに体のハード面を完璧にしても治らない例もありますし、反対にあれやこれや腰にたいする処置を一切やめたら気がついたら痛くなくなっていた、などというケースも実際にあります。

鍼灸・マッサージの効果の検討も、単純に平均への回帰だったのか、本当に効果があったかまだ決着がついていません。(効果がなかったという結論の文献も実際にあります)

ただし、鍼・マッサージは筋肉を弛めるという点においては特化しているとお考えください。鍼灸・マッサージのみで、筋筋膜性腰痛が根本的に改善することは困難です。しかし、根本的解決する上で有効な手段であることは間違いありません。

非特異的腰痛を根本的に改善するにはどこにいけば良いのでしょうか?

まず整形外科を受診いただきまして骨格の形態的異常、内臓疾患が無いかチェックを受けてください。これは必須です。以前、病院に行って異常無しと言われたとしても、その時から半年以上経っている場合は、再度受診してください。

病院での診察・検査で、特に目立った異常が見当たらない、もしくは筋筋膜性腰痛と診断をもらうことがファーストステップです。

腰痛というと、整形外科のリハビリに通う、もしくは、整形外科以外の施術所を選択する、の2択です。

他の施術所を選択する場合は、基本的に腰痛は肩コリの根本的改善のための選び方と同じです。念のために補足いたしますと、整体やカイロプラクティックで行われている骨格矯正術では筋筋膜性腰痛はよくなることはありません。

骨格の問題は整形外科にてチェック済みですし骨が筋肉を動かすのではく、筋肉が骨を動かすものだからです。ストレッチをすれば大まかに筋肉を弛めることができますが、細かく背骨一つ一つのインナーマッスルへのアプローチはできません。つまり、腰痛を根本的に改善する場合ストレッチだけでは不十分です。 パーソナルトレーニングは大切ですが筋トレだけでは腰痛は治らないということは上述させていただきました。

では、鍼灸・マッサージ院であれば良いかのというと、そうではありません。方針によります。

筋筋膜性腰痛は、筋肉の細かい分析と対処ができるか否かにかかっています。

筋筋膜性腰痛で肝となるのは、とにかく筋肉を細かく分析して対処することです。例えば代表的ないわゆる背筋は正式には脊柱起立筋といいまして棘筋・最長筋・腸肋筋に分かれ、さらにそれぞれが三つのパートに分かれます。そらを一つ一つ個別に対処する必要があり、さらにはインナーマッスルである多裂筋・腸腰筋・腰方形筋は単なるツボへの施術ではアプローチが難しく、特殊な技術が必要です。具体的には角度と深度をピンポイントでアプローチしなればなりません。これを可能にするのは経絡やツボの知識ではなく、三次元での筋肉の人体解剖学です。そのため、鍼灸・マッサージを希望する場合は西洋医学的な理論のもと施術を行う鍼灸院を選択いただけたらと思います。

ただし、特異的腰痛の場合は東洋医学的な鍼灸が有効である可能性があるため、西洋医学的な理学療法が絶対というわけではない、ということも心の隅に留めておいてください。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。