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息苦しい・呼吸がしづらい・呼吸が浅い等の自覚症状がマッサージと運動療法で解消したケース|ケースレポート

概要

K様 / 東京都在住 / 50歳 / 男性 / 自営業

症状

・息苦しい

・呼吸がしづらい

・呼吸が浅い

状態

特に心当たりはないが、1年程前から、ふとした時に息苦しさや呼吸のしづらさを自覚するようになった。

だんだんとひどくなってきたので、循環器内科と呼吸器内科を受診し、心電図、レントゲン、肺機能検査を受けたが心臓や肺に異常はみられなかった。

以前から、慢性的に首肩こりや頭痛があり、今回の症状でも鍼やマッサージを受けてみたところ、施術を受けた直後にすぐにラクになるということはなかったが、3ヶ月ほどするといつの間にか息苦しさは気にならなくなっていた。

 

数ヶ月間は比較的良い状態が続いたが、2ヶ月前からまた同じ様な症状が出始め、再度医療機関を受診して検査を受けたが、今回も特に異常はみうけられなかったため、当院への来院に至った。

来院時点では常に呼吸が浅くなっている自覚があり、息苦しさを感じている状態。深呼吸すると少し楽になる。そのため、意識的に深呼吸を多く行なってしまう。

 

息苦しさに影響する要因に心当たりはない。仕事では、主にデスクワークや車の運転など、長時間座っている事が多い。

ジムで週2回、筋力強化のためのトレーニングをしている。

見立て

まず医療機関で精密検査を2度行っていたことから、命に関わる呼吸器や循環器の疾患である可能性が低いことを前提として診察を行った。

 

呼吸のメカニズムの重要な要素として、胸郭の可動性が挙げられる。

※胸郭とは胸椎、肋骨、胸骨で構成されたかご状の骨格。胸郭の内部には胸腔があり、肺や気管、食道、心臓などを収めている。

呼吸では、胸郭が大きく広がることで空気が肺に到達するメカニズムとなっている。胸郭が可動性に富んでおり、拡大することができなければ、肺が空気を取り込んで拡大することが困難となってしまう。

 

K様のお身体を診察したところ、胸郭に付着している筋肉(胸鎖乳突筋、大胸筋、広背筋、腹筋群など)の緊張が著しく高くなっていた。また、頚部の緊張も非常に高い。姿勢は、猫背で、いわゆる「巻き肩」の状態となっており、筋緊張と姿勢の観点から、胸郭が広がりにくい状態となっていた。

 

仕事で長時間の座ることが多いとのことで、不良姿勢により胸郭が可動しにくくなっていることが、自覚的な「息苦しさ」や「呼吸の浅さ」につながっていると考えた。

まずは猫背や巻き肩の原因となってしまっている胸郭周囲の筋緊張ならびに関節可動域をマッサージやストレッチで緩め、胸郭が拡大しやすい状態になるようにした。

そして、正しい座り姿勢を習得するために体幹筋(主に上背部の脊柱起立筋と腹横筋)の筋力強化と、体の使い方を練習する方針とした。

 

一方で、当該症状は、精神的ストレスが起因することもある。(内臓疾患が無いということが確認されているため)

仕事でのストレスやプレッシャー、そして「息苦しい」という症状のつらさ自体が精神的ストレスとなり、さらに息苦しさや呼吸の浅さが気になってしまうという悪循環が起こっている可能性もあると考えた。

そのため治療では、肉体だけでなく心理的なリラクセーションにも重きを置き、処置方法として、K様が心理的に心地よいと感じる治療を優先的に行うことした。このような理由から、鍼ではなく、ほぐす手段は、マッサージとストレッチを主体に処置を行なった。

また、緊張を緩和し可動性を改善させたいターゲット部位は胸郭周囲だが、自律神経のバランス調整のためにも、上肢や下肢へのアプローチも行なった。

 

治療

1回目の治療

猫背や巻き肩など、不良姿勢や胸郭の可動性を制限している要因の解除ため、胸鎖乳突筋、大胸筋、広背筋、脊柱起立筋を中心にマッサージで緩めた。

上肢や下肢への刺激は副交感神経を有意にするため、体幹だけでなく、手や足もほぐした。

治療直後のK様の感想として「呼吸のしづらさ」の目立った改善効果は特に実感できなかった。

セルフケアとして、胸椎や胸郭の可動性を上げるストレッチを毎日セルフケアで行っていただいた。

2回目の治療

初回から2週間後のご来院。

初回よりは少し軽減しているが、依然として頚部から上部体幹の筋緊張がとても高い状態となっている。「息苦しい」「呼吸がしづらい」「呼吸が浅い」といって症状も特に変化はない。

処置の内容は、基本方針は初回と同じとして、緊張の高い部位へ処置を行う時間を長くし、それに加えて、頭部と顔面のマッサージを行なった。セルフケアも、同様のメニューを継続とした。

初回同様、直後の改善効果は特に無し。

3回目の治療

2週間後のご来院。治療を行って1ヶ月ほど経過。

客観的な視点では、徐々に胸椎の可動性が出始めた。

呼吸もいつの間にかあまり苦しいと感じる頻度が減るようになった。

良い姿勢を長時間キープするために必要な脊柱起立筋のトレーニングも行いつつ、全身の筋緊張を緩めていった。

4回目の治療

2週間後のご来院。

たまに深呼吸したいと思うことはあるが、以前のように「息苦しい」「呼吸しづらい」「呼吸が浅い」ということは無くなった。

身体所見としては、巻き肩と猫背姿勢はほぼ改善。

胸椎、胸郭の可動性はまだ改善の余地はあったが、日常生活に支障をきたさない状態となったため、治療はゴールとなった。

総治療回数は4回。治療期間は約1ヶ月半。

コメント

呼吸が苦しいなどの症状に関わらず、治療をする上での大前提として、現在起こっている症状が、病気が元になっているか(症候性)か、そうでないか(本態性)かの見極めが重要となります。

症候性とは、医学的に診断のつく疾患など明確な原因が背景にあり、その疾患の一症状として、当該症状が出ているという状態です。

症候性の症状の改善のためには、その原因となっている疾患を専門の医療機関で治療する必要があります。一般的に、呼吸が苦しいというと、呼吸器系、循環器系、血液系などの疾患が背景に隠れている可能性があります。

 

一方、本態性とは、症候性のように症状を引き起こしている明確な原因が特定できないもの(病院では異常がないとされるもの)を指します。

たとえば、肩こりや首こりの原因は様々ありますが、病気が元になっているわけではなく、筋肉や筋膜の過緊張、体の使い方不良、姿勢不良、自律神経の不調、精神的ストレスなどによって引き起こされる場合は本態性の肩こり・首こりとなります。

 

当院で治療の適応となるのは、あくまでも本態性の症状となります。

K様は来院前に循環器内科、呼吸器内科の診察を少なくとも2回受けており、検査に異常がなく、症候性の可能性が低いことから、姿勢不良やストレスなどから呼吸に影響を与えていると見立てて、治療を行いました。

そしてその息苦しさを招いていた原因として、胸郭の広がりにくさなど、筋肉や関節の硬さが原因の多くを占めていたため、マッサージや運動療法によって早期の改善に至りました。

 

自覚的に症候性の可能性が低いと感じている場合でも、症候性の可能性を否定するという意味で、病院への受診はとても重要です。万が一、症候性で、なんらかの病気のサインだった場合、命に関わることがあります。

「息苦しい」「呼吸しづらい」「呼吸が浅い」というような症状がある方は、自己判断せず、まずは必ず医療機関を受診するようにしましょう。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

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