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イトーUST-770を使った超音波療法

超音波療法は物理療法のひとつ

整形外科領域のリハビリテーション(理学療法)には、物理療法と運動療法の二つの柱があります。温めたり電気を流したりするのが物理療法、筋トレやストレッチなど実際に身体を動かすものが運動療法となります。

物理療法or運動療法ではなく、共に大切です。現在の日本の医療において、保険制度における点数の兼ね合いから物理療法の割合が減り、運動療法が主体になっているのですが、物理療法は運動療法とともに理学療法の両輪をなします。

超音波療法は、物理療法のひとつです。理学療法としての超音波療法は、超音波自体を物理的な刺激として生体に与えて、はたらきかけます。一般外傷や運動器系の急性期及び慢性期の痛み、スポーツ障害などの治療に活用されています。

超音波療法の効果とは?

超音波療法は、主に整形外科のリハビリで患部を温めるのに用いられています。これは超音波が生体組織内に吸収されると超音波の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されるためです。特にコラーゲン含有量の高い組織(腱・靭帯・関節包・筋膜など)に加温の効果があります。

超音波には温熱効果だけではなく「音圧効果」があります。

「超音波骨折治療法」をご存知の方も多いのではないでしょうか?骨折の治癒を超音波によって早める治療法で、サッカーのデビッド・ベッカム選手や野球の松井秀喜選手が骨折治療のために受けたことでも注目され、現在では多くの医療機関で行われています。

これは超音波の温熱効果によるものではありません。その詳しい仕組みはさておき、超音波のもう一つの特徴である音圧効果について簡単に説明します。

音波はその字のとおり音の波(波動)です。波と聞けばどうしても海の波を思い浮かべがちですが、海の波と音の波は別物です。音波は縦波です。光やロープを伝わるような波は横波です。横波とは波の進行方向と垂直に揺れる波であり、縦波は進行方向と同じ向きで揺れる波です。縦波は波の進行方向に対して平行な振動が伝わります。

縦波と横波の違い
超音波は縦波です

この振動によって物理的な刺激を与える効果を音圧効果といいますが、音圧効果はそれだけではありません。例えばメガネ屋さんにあるメガネ洗浄機、使ったことある方も多いでしょう。超音波によって水中の気体を膨張→破裂させて、その衝撃でメガネの汚れを落としやすくしているのです。適度な超音波ですと水中の気泡は膨張→収縮を繰り返し、大きな出力で破裂します。これを超音波キャビテーションといいます。

超音波洗浄の仕組み

 

超音波キャビテーション

実際のところ、超音波自体による物理的な振動による刺激だけでなく、このキャビテーション効果による刺激・影響も大きいと考えられています。

私たちのカラダの組織には血液をはじめとした液体があらゆる部位に存在しています。そして液体中には微小気泡が必ず存在します。この気泡が圧縮・拡張を繰り返すと細胞膜を適度に刺激し細胞が活性化を促す、これがキャビテーション効果の考え方です。

過度なキャビテーションは気泡を破裂させます。気泡の破裂による衝撃で組織を損傷してしまう可能性もあります。超音波を医療で使用するには細かいコントロールが必須です。

この音圧効果は、温熱効果と区別して非温熱効果とも呼ばれています。

超音波がなぜ骨折の治癒を早める効果があるのか?

物理的な振動とキャビテーションが同時に起きているため、詳しい仕組みが明確になっていない部分も多いのですが、このキャビテーション効果が人体に何らかの影響を与えていると予想されており研究が進んでいます。

また超音波は音として捉えることはできませんが、人間の耳の中にあるセンサーは感知はしています。最近では、超音波を脳研究や治療に使う可能性についての研究も盛んです。

超音波はまだわからないことが多いのですが、難治性の骨折や偽関節の治癒促進、骨の手術をした後の骨折治癒期間を短縮する目的での超音波治療は健康保険が適用されます。つまり、一定の実績・効果は認められているのです。

実は海外では以前から超音波治療は一般的で身近なものでした。残念ながら日本はいわゆるガラパゴス状態でしたが、ようやく広まりつつあります。

超音波治療器 UST-770

ITO UST-770

 

UST-770伊藤超短波株式会社

肩こりラボでは、伊藤超短波社製の超音波療法機器のなかでもフラッグシップモデル(2018年12月現在) である「イトー UST-770」を導入しています。

超音波治療機器は本体とプローブで構成されています。UST-770の場合、大きなディスプレイを搭載した本体と左側1本・右側に2本のケーブルが接続されています。このケーブルの先端から超音波が出力されます。これをプローブといいます。

UST-770のプローブ

 

プローブを肌に当てて使用します Ito Co., Ltd.

超音波治療器はどれも使い方・基本的な構造自体は同じです。各メーカーから、様々な超音波治療器が発売されています。

UST-770は、国内メーカーの製品であり、一般的なモデルと比べると非常に高価な機種です。

  • なぜ廉価版ではないのか?
  • なぜ海外製のものではないのか?
  • なぜポータブルのものではないのか?

当機種を選んだのには3つの理由があります。それは【安全性】【信頼性】【応用性】です。

イトー UST-770を選んだ3つの理由

安全性

医療機器で重要なのは性能ではありません。もっとも大切なこと、それは安全性です。

超音波治療器のスペックを表す指標に、BNR(Beam Non-uniformity Ratio=ビーム不均等率)があります。BNRは超音波を照射している際の、平均強度(W/cm²)に対する最大強度の比率です。BNRの値が小さければ均等性が高く、逆に値が大きければ出力に大きなムラがあることを意味します。

つまり、超音波を、どれだけムラなく均一に出すことができるか?の指標がBNRです。

超音波治療器は、プローブの先端から超音波が発せられます。実は、この先端部分の面全体から常時均一に一定の超音波が出てはいません。設定した出力は一定でも、実際に出ている超音波は、強くなったり弱くなったりの誤差が生じます。出力される超音波にはムラがあるのです。誤差を完全に無くすことは不可能ですが、この誤差をできるだけ低く抑えることができるかが機器の安全性に繋がります。

そこでBNRでムラの程度をみることができます。たとえば、BNRが5の機器は、平均強度を1W/cm²と設定して照射した場合、最大強度が5W/cm²の部分があることになります。これは、皮膚に当たっているプローブの一部分に5倍の強度の超音波が出てしまう可能性があるということです。

BNRが5の場合の超音波のイメージ

 

超音波のムラのイメージ

超音波には温熱作用がありますから温めすぎると火傷します。施術者が1W/cm²の出力設定で施術しているつもりでも、ピンポイントで強い出力の部分があると意図せずに強い出力を与えてしまう可能性があり、火傷のリスクとなります。ですからBNRが低ければ低いほど均一に超音波が発せられている、つまり火傷しにくいのです。BNRは5以下が良好なBNR値とされています。

国内外含めて様々な超音波療法機器があります。伊藤超短波社からも、複数の超音波療法機器が出されています。たとえば当院で導入している「イトー UST-770」と、同社製のポータブル機器の「イトー US-101L」のBNRを、比較してみると、以下の違いがあります。

 BNR
UST-770(1MHz)2.9
US-101L(1MHz)3.5

このようにBNRに着目してみてみると、ポータブルと比較して、イトー UST-770は安全性が高いといえます。とはいえ、BNR3.5は決して悪い数値ではありません。一般的に良好とされているBNRは5以下で最高クラスの性能でBNRは2〜3です。そう考えれば、ポータブルの「イトー US-101L」も十分安全性が高いといえます。

機器の価格だけでみれば、ポータブルのイトー US-101Lはイトー UST-770の半分以下です。持ち運びができて、スポーツ現場等で使用することを考えれば非常にすぐれた製品といえるでしょう。

ですが、なぜ価格が2倍以上違うにも関わらずイトー UST-770を採用したのか?それは安全性だけは絶対に譲れないためです。たとえわずかだったとしても安全性が高い方を選ぶのが当院の方針です。

 

信頼性

いくら機器が安全でも実際に効果がなければ意味がありません。本当に効果のある機器なのか?安全性に次いで大切なのは機器の信頼性です。

超音波は目に見えません。その機器からきちんと超音波が発せられていなければ、効果は見込めません。機器を扱う施術者の技術はもちろん必要ですが、効果のある施術をするためにも、機器自体に信頼性があるのが前提となります。

超音波機器の品質を示す指標として、安全性であげたBNR以外にERA(Effective Radiation Area=有効照射面積) があります。ERAは超音波が出るプローブの先端部分の面積の内、有効に超音波が出ている部分がどれくらいあるのかを示すものです。ERAは、プローブ先端の面積に近ければ近いほど、品質的に優れているといえます。

超音波機器のERAの比較

 

太田厚美「何故,超音波療法は世界的に最も評価が高いか」より 国立研究開発法人科学技術振興機構

この違いが何に影響するかといいますと、超音波療法の正確性と効率性です。

正確性

超音波療法は、患部の病状、対象(部位と深度)、患者さんの感受性などを考慮して施術者が任意で細かく設定をできることが利点でもあります。これは他の温熱療法の機器との大きな違いです。

ところが、ERAが不良ですと、施術者としては病巣部位に対して施術を行っているつもりでも、そもそも、実際はきちんと超音波が照射されていなかったことになってしまいます。そうしますと、超音波療法の利点が利点ではなくなってしまいますね。

効率性

同じ部位に、同じ設定・時間で超音波療法を行う場合、ERAの良好な機種とそうでないものでは当然ですが効果に差がでます。

例えばですがERAが良好な機種で5分間で得られる効果が得られるのに対して、ERAが不良な機種で同等の効果を出すのに10分かかってしまうといったケースは容易に想像できるはずです。

超音波療法の施術を行っている最中は、施術者の手が塞がってしまうので、同時に他のことはできません。治療の時間は限られていますので、効率性はとても重要となります。先程の例でいうと、A機種であれば、Bを使った場合よりも、5分間プラスで他の施術ができます。A or B どちらの機種を使ったほうが、治療全体としての効果が期待できるか?言うまでもありませんね。

超音波治療器は、ピンポイトで施術ができるメリットがある反面、基本的には施術者が常に操作をし続けなければなりません。他の治療機器と比較して、正確性の面で利点がありますが、同時進行で複数の施術ができないため、効率面では他の方法に劣ります。正確性と効率性が相反する関係にあるからこそ、機器の精度により、効率性を補うことが大切となります。

超音波は目に見えませんので、設定した通りにきちんと出ているかは、機械の精度に頼らざるを得ません。ですので、超音波療法を行ううえで、機器の信頼性はとても重要です。そのためにBNRとERAは重要な指標となります。

 

応用性

BNRやERAの観点から、安全性と信頼性が高い機器は「イトー UST-770」以外にもありますが、応用性の点で「イトー UST-770」は優れています。設定範囲が広く、幅広い疾患に対応することができるのです。

超音波療法には大きく二つの効果が期待できます。

温熱作用

  • 疼痛緩和(血流改善、循環改善)
  • 組織の伸展性改善
  • 筋スパズムの改善(筋紡錘の感度軽減)
  • 骨格筋の収縮機能の改善(血流改善)

音圧作用

  • 炎症の治癒促進(微細振動による細胞膜の透過性や活性度を改善)
  • 浮腫軽減(微細振動のマッサージによる循環改善)

この音圧作用は、機械的作用ともいわれ、超音波療法ならではの効果です。

一般的には、急性の炎症がある時は、患部への強い刺激はNGです。原則は安静です。ですが、近年では、絶対安静はかえって治癒を遅らせてしまい、安静は必要でも適度な負荷を与えたほうがよい、と提唱されています。

急性の炎症がある時ほど、痛みがあり、どうにかして欲しいのが患者さん心理ですが、標準医学的な観点からみると、闇雲に弄くることでかえって病状を悪化させかねません。ですので、早期に痛みを引かせるために「(急性の炎症がある)患部にはあえて触らない」という判断をする場合があります。炎症がある部位に鍼をうったら余計炎症が増してしまうのは想像できますよね。

急性の炎症がある際は、無闇に触れないのが早期治癒には大切です。患部に関しては、あえて積極的に施術をせず、患部周辺のコンディション改善が教科書的な対処方法でした。ところが、超音波の音圧作用を利用すると、急性炎症の患部に対しても早期治癒のために積極的な施術ができるのです。

これまでは炎症が引くのを“待つ”、しばらく我慢するのが当たり前でしたが、治癒促進のための対処を可能にしたのが超音波療法です。

音圧作用を効果的に使うために重要なポイントがあります。それは温めてはいけないのです。具体的には、出力を低くし、照射時間も短くすることで、患部を温めずに、微細振動による軽微な刺激を患部へ与えることができます。

低出力パルスの超音波も出力できるUST-770

イトー UST-770には、LIPUS( Low Intensity Pulsed Ultrasound / ライプス )という機能があります。直訳すると、低出力パルス超音波となります。極々弱い超音波を断続的に発振することができます。発熱が弱いため患部に固定して使用することができ、筋・腱・靭帯といった軟部組織の損傷にたいして効果的な機能です。

イトー UST-770のLIPUSは、30mW/cm²、45mW/cm²、60mW/cm²の3つの出力設定ができます。これがどのくらい弱いかというと、イトー UST-770や、他の国産のもの含めて、通常の超音波治療器の設定ですと0.1W/cm²の出力が最小となります。

0.1W/cm²=100mW/cm²ですので、通常の設定で最小となるものからさらに3分の1程度弱い設定ができるのです。つまり、従来の設定ではできなかった、とても弱い超音波による施術ができるのです。

照射する深さも柔軟に変えることができるため、炎症があって敏感な箇所や、感受性が豊かな方に対しても用いることができます。

 

UST-770はプローブによって浅部から深部まで対応できる

 

皮膚に近い部分から遠く深い部分まで幅広く対応 Ito Co., Ltd.

ライプスは、難治性の骨折や偽関節の治癒促進、骨の手術をした後の骨折治癒期間を短縮する目的での利用において、健康保険が適用となっています。健康保険が適用される、つまりライプスを使った治療は国から一定の効果が認められているわけです。

肩こりラボでは、健康保険を利用した治療、ならびに骨の治療は行っておりませんが、このような標準医学的観点から認められている機器を利用して、筋線維・筋膜・腱・靭帯などの軟部組織のトラブルに対して施術を行っています。具体的には、五十肩の炎症期(急性期)、腱鞘炎、肉離れや捻挫をはじめとした各種スポーツ傷害の急性期に対する理学療法の手段として使用しています。

超音波と低出力パルスを兼ね備えた唯一の国産機器

一般的なイメージとは逆かもしれませんが「いかに強い刺激を与えられるか」よりも「いかに弱い刺激を与えるか」「いかに弱い刺激で効果を出すか」のほうがずっと難しいのです。機器においても、出力を高めることよりも、いかに弱い出力で安定して超音波を発振できるかという方が、出力の制御や微調整の面で技術的に難しいのです。

2019年1月時点で、ライプス機能のみの超音波療法器はありますが、通常のモードとライプスの両方を、1台の機器で行うことができる国産の機器はイトー UST-770のみです。

超音波療法には、温熱効果と音圧効果が期待できます。ライプス機能があることで、音圧効果を期待した施術の幅が広がり、より繊細な施術につながります。

肩こりラボでの超音波療法の位置付け

超音波療法は、温熱作用により深部を温められること、そして音圧作用により炎症部位へアプローチできるという特徴があります。これらは、鍼・マッサージ・運動療法だけでは難しい、できたとしてもとても効率的なアプローチとはいえません。

肩こりラボでの超音波療法

 

超音波療法が最適な場合にのみ使用します

当院は鍼灸院ですが、鍼・マッサージが全てではありません。鍼もマッサージもあくまで手段・方法のひとつです。鍼がベストな場合は鍼、マッサージがベストならマッサージ、常に最適かつもっとも効果的な方法をとるのが肩こりラボが行ってきた・行っている理学療法です。鍼やマッサージ・運動療法とならんでひとつの手段として超音波療法を取り入れています。

超音波療法を使用する頻度が高いのは、40肩や50肩といった肩関節痛、腱鞘炎、スポーツ傷害、肉離れ、捻挫などです。当院は首こりや肩こりの改善が専門ですが、実はこのような疾患を抱えている方が多数いらっしゃっております。

首肩こりにお悩みの方は、長時間のデスクワークをしている場合が多く、マウス作業のしすぎで腱鞘炎になってしまうこともあります。首肩こりの改善と並行して腱鞘炎に対して超音波を使った施術も行います。また、いわゆる筋膜リリースの手段として筋膜の癒着やシワ(高密度化)の改善に用いることもあります。

超音波療法を行うことが治療そのものではない

繰り返しで恐縮ですが、超音波療法は、あくまでも施術手段の一つでしかありません。

「とりあえず電気でも流しておきましょう」

整形外科でこのようなことを言われた経験がある方は多いと多いますが、当院では超音波療法はとりあえずやってみましょうといった使い方はしません。

必要に応じて、そして効果が期待できると判断した場合に使います。

一発で治る、そんな万能な方法は存在しません

特定の症状を抑える・緩和に一発で効く方法はありますが、慢性的な症状は簡単には治りませんし、再発しないようにすることが理想のゴールです。

どのようなものにも長所と短所があります。

どれだけ優秀な選手が集まってもチームとして機能するかは話が別です。仕事やプロジェクトでも同じです。

鍼・マッサージ・超音波・運動、これらがそれぞれどれだけ優れていたとしても、単体では活きません。

肩こりラボでは、各施術を、長所が活きるよう施術者が見極めて行い、また、他の施術を組み合わせることで短所を補うのが大切だと考えています。そのため、1回の施術で超音波療法のみ行うことはほぼありません。

五十肩に超音波を使用する場合

たとえば、五十肩の急性期。痛くて非常につらい時期です。炎症があって痛みがある時は、炎症による痛みに加えて、周囲の筋肉がかばって硬くなって、結果として痛みを助長させてしまいます。このような場合、肩こりラボでは、炎症がある関節部分には音圧作用を求めて超音波療法、周囲の筋緊張に対しては鍼やマッサージを行います。

超音波を用いた施術でも、筋肉を緩めることはできますが、一般的にみて鍼やマッサージと比較して効果がマイルドで局所的にしか効果がありません。広範囲を施術するにはどうしても超音波だけでは所用時間が長くかかります。

効果と効率性を考えると、防御によって生じている周囲の筋緊張の緩和には鍼・マッサージを施すこと多いのです。ですが、これも必ずではなく、鍼やマッサージが苦手な方、敏感でできない方もいらっしゃいます。このような場合には、超音波療法にて筋緊張の緩和を図ることもあります。

カスタムメイド医療の考え方で、患者さんのお身体状況や感受性、そして考え方を尊重した施術を行います。

UST-770を使用する施術

肩こり・首こり専門コース四十肩・五十肩専門コース腰痛専門コース足専門コース体幹コンディショニング

参考文献

  • 「何故,超音波療法は世界的に最も評価が高いか」
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/mpta/17/1/17_1_14/_pdf
  • 「艾の燃焼温度と生体内温度変化に関する研究」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/38/3/38_3_326/_pdf/-char/ja
  • 「艾の燃焼温度と生体内温度変化に関する研究(第2報)-隔物灸について-」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/39/2/39_2_241/_pdf/-char/ja

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


モヤモヤ血管!病院で原因不明とされる身体の痛みの正体

しつこい痛みは血行不良が原因という常識が覆される新事実が発覚!!頑固な肩こり・腰痛にお悩みの方、セラピスト・トレーナーの方は必見です。

原因不明とされてきた慢性的な痛みの原因は「血管」にあった!!

慢性的な頭痛、肩や首の痛み、関節痛、怪我自体は治ったのに時々痛む、古傷がたまに疼く、と「痛み」でお悩みの方はとても多いのです。

痛みに耐えかねて病院にいったものの、整形外科でのレントゲンやMRI検査では異常なしという診断。原因不明ということで湿布や痛み止めを処方され、勧められたリハビリに通うも効果があるのか、ないのか分からない。はっきりしているのは抜本的な解決策が無いということ‥‥痛み止めの注射のためにペインクリニックに通い続ける‥‥そのようなどうしようもない痛みと向き合っている方々にとっては救いとなりうる方法があるのです。

それは「運動器カテーテル治療」です。

カテーテル自体は一般的なものですしご存知の方も多いと思いますが「運動器カテーテル」という言葉を耳にしたことがある方はそう多くはないでしょう。「運動器カテーテル治療」は横浜のOkuno Clinic院長の奥野祐次医師が第一人者として行っている治療方法です。海外からも大変注目されています。

長引く痛みの原因は血管が9割

奥野先生は次のように述べられています。

従来、血流は多ければ多いほど良い、血管はたくさんあった方がいいとされてきました。なぜなら血管は組織に栄養を届けてくれる良いものとしか考えられていなかったからです。しかし、第2章で紹介したように、血管はすべて役に立つわけではなく、正常な血管と病的な血管があります。モヤモヤ血管は役に立たない病的な血管です。役に立たないどころか、モヤモヤ血管そのものが組織の栄養を奪ってしまい、機能を障害します。このため、この病的な血管を減らすことができれば、病気の改善につながるのです。さらに血管周りには常に神経が寄り添って伸びる性質があり、この血管とその周りの神経が痛みの原因だとすると、異常な血管を減らすことは痛みを治療することにもつながります。

出典:「長引く痛みの原因は、血管が9割(奥野祐次氏著)」

「モヤモヤ血管(新生血管)」が最重要キーワード

モヤモヤ血管(新生血管)は、耳慣れない言葉だと思いますが、特定疾患である「もやもや病」は耳にされたことがある方もいらっしゃると思います。モヤモヤ血管(新生血管)はもやもや病とも関係があります。モヤモヤ血管(新生血管)が、具体的にどのような血管なのかについては、後ほど説明します。

まず押さえておいていただきたいポイントは、今まで原因不明とされてきた慢性的な痛みの原因が、モヤモヤ血管(新生血管)という血管の存在にある!!ことです。

もちろんモヤモヤ血管(新生血管)が100%の原因ではないでしょう。奥野先生の著書のタイトルにある「長引く痛みの原因は、血管が9割」とあるように、原因不明とされてきた痛みの原因の90%はモヤモヤ血管(新生血管)である、は人類にとって大変大きな価値ある発見であると思います。90%という数字は書籍を売るためのマーケティング的な数値でしかないかもしれませんが、原因不明の痛みの多くはモヤモヤ血管に由来しているケースが多いということだけは事実だと思います。

鍼灸師・あんま指圧マッサージ師誰もが抱えてきた疑問に対する一つの回答

鍼灸師・あんま指圧マッサージ師として臨床で疑問に感じてきたことの一つが、定説とされていることは本当に正しいのか?ということでした。

これまでの臨床経験を踏まえ、様々な試行錯誤を経て「肩こり」の専門院を開設したのは施術方法を確立できたからです。ですが、その裏付けとなる医学的な根拠の一部が世の中に存在しないという葛藤がありました。それが、奥野先生の著書、執筆論文を読み氷解したのです。

肩こりの概念を再定義する

「肩こりがひどいの?だったら早く治療受けたら?」このような会話が日常になる日のために

こんにちは。肩こりラボの丸山太地です。

私は、一般の方からアスリートや歌手といったプロフェッショナルの方まで、コリや体のバランスで悩みを抱える方を一人でも多く救うべく日々治療に励んでいます。

治すことはもちろんなのですが、とにかく“苦痛満ちた患者さんに笑顔になっていただく”ことを目的とし、できるかぎり治療の頻度・効率をよくする、患者さんご自身の治療に対するモチベーションが上がるよう、治療の本質を追求し続ける鍼灸・マッサージ院、それが肩こりラボです。

世にはこれだけ治療院が存在するなかで、国内では肩こりで約1,200万人、腰痛で約2,000万人もの方が苦しんでいます。(厚生労働省調べ) その他の慢性的な「痛み」「つらい症状」を含めるとその数は計り知れません。 この理由は次のようなことが考えられます。

整形外科にて骨に異常が無いと診断された場合、多くは痛み止めと湿布という処置で様子をみることとなり、改善しない場合は治療院や整体などといった施術所へ足を運ぶこととなります。 そこでは、原因は「骨のゆがみ」や「骨盤のずれ」であり、整形外科で骨に異常が無いと言われたのにも関わらず、再び骨の問題を指摘され、処置としてはつらい部分を刺激して一時の快楽を与え、結局はすぐ元に戻り、これを繰り返すといったサイクルとなります。

やがて刺激にも慣れ、どんどん慢性化してしまいますがが、つらいことには変わりなく、対症療法を続けざるを得ない(依存)状態となってしまいます。つまり、今までの治療は「患者さんの状態分析(評価)」「原因の追究」が不十分であり、処置は「その時気持ちが良くて楽になれば良い」「直後に楽になれば良い」という対症療法のみであり、根本治療に至らなかったからです。

当院は、あくまでも「根本治療」にこだわり、頻繁に通っていただくためではなく、あくまで「治す」ため、 心底お悩みの方を「痛み」「つらい状態」から解放するためだけに開設されました。

業界の現状として

  1. 施術内容(技術・知識)がリラクセーションや整体と大差がなくなってしまっている
  2. ビジネス上患者さんを多く施術した方が良いため「治すこと」ではなく「通ってもらうこと」が第一優先とされてしまっている
  3. 養成学校の乱立により、有資格者の知識技術レベルが著しく低下している
  4. セラピスト同士で協力することができず、仲間同士で足の引っ張り合いをしてしまっている
  5. 多くの例では「〇〇と言われている」「東洋医学的には・・・」「自らの経験的に・・・」といった不確かなことを拠り所とし、医学的根拠に基づく治療が行われていない

これでは絶対に患者さんは救えません。治すこともできません。

何よりも、医療とはチームプレーであり、セラピスト独りよがりではなく、医師を中心に医療従事者やトレーナーなどが密に連絡をとり、またセラピスト同士の情報共有とディスカッションによりそれぞれの長所を最大限発揮して一人の患者さんを包括的にサポートしていくことが大切だと考えております。このチームプレーが、従来、点と点でしかなかった治療(ケア)が線となり、慢性化して生活に支障が出てしまうほど苦しんでいらっしゃる患者さんのお力へとなるのではないかと信じています。肩こりラボでの治療は根本治療であり、チームプレーに重きをおいております。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


【検証】薬で五十肩・四十肩はよくなるの?五十肩に効くとされるクスリの効果と意味を解説

最近、テレビCMや広告で四十肩・五十肩がつらい方へといった市販薬の宣伝を見かけます。五十肩は日常生活に支障をきたしますし、夜眠れないほど痛かったりします。

しかし、病院へ行くのが億劫であったり、とりあえずすぐにでも痛み止めがほしい!!バファリンやロキソニンは効くのかよくわからない、そこで、ご近所の薬局で五十肩の痛みに効くとされる市販薬に手を出してしまうのは、仕方のないことです。

しかも「体の中から効く・・」「痛みにズバリ」といった飲めば治るかのようなキャッチコピーに心動かされ、先の見えない痛みに苦しむ患者さんの中には藁をもつかむ思いで購入を考えている方もきっと多いことでしょう。

「痛みが取れなければ、病院へ」なんていうCMもありますが、最初から病院に行けばいいのでは?と思われる方も多いことでしょう。そこで、薬を飲む事で五十肩が改善するものなのか、果たして治るものなのか、その成分と効能を元に検証してみます。

最初にはっきりと申し上げておきますが、一般的な五十肩向けの市販薬の説明には「五十肩が治る」とはどこにも書いてありません。たいてい「諸症状の緩和」と書かれています。なお、痛みが収まる=五十肩が治る、ではありません。

しかし、服用すれば治る、と思ってしまうような宣伝がなされています。

 

大事なポイント四十肩や五十肩は、放っておいても1-2年ほどで痛みだけは自然と治まることが多いです。痛みを感じなくなるまでの間、痛み止め注射を打ったり、鎮痛剤を服用してしのげば良いと思いがちですが、痛みだけ抑えていても、五十肩自体は治らないのです。

痛みが治まっても五十肩が治ったことにはなりません。

現代医学的には、原則再発はしないとされていますが、以前四十肩患い、再び五十肩になってしまったので今回はきちんと治療をしたいと訴えてご来院される患者さんが、当院には一定数いらっしゃいます。

治療せずに痛みが自然と感じなくなった時、残念ながら肩の関節は確実に動かしにくくなります。日常生活に支障はない動きはできても、発症以前の動きは確実にできなくなります。これは“年齢のせい”ではありません。四十肩や五十肩は、きちんと治療を行えば、肩の関節が正常に機能するよう元に戻ります。

 

今回は、四十肩や五十肩の薬について、肩関節痛の治療を行う者として、患者さんの悩みを少しでもスッキリしてもらいたいという思いでこの記事を書いていきます。

現在お悩みの方だけでなく、お父さん、お母さんをはじめ身の回りで四十肩・五十肩で悩んでいらっしゃる方のお役に立てましたら幸いです。

五十肩に効くクスリの本当の効果について

五十肩に効くという市販薬がアピールする効能は3つ。

お手元にクスリがある、または、クスリのホームページをご覧の方、説明やキャッチコピーをよく読んでみてください。

「痛みを解消」「痛みを緩和」「つらい症状を緩和」「体の中から改善」etc…実はすごく曖昧だと思いませんか?痛みが緩和されるとはいっても、五十肩がよくなる、とはどこにも書かれていません。

とはいえ、何よりもまず痛みをなんとかしたい!!と思われますよね。実際の五十肩(肩関節周囲炎)のクスリの効能について説明いたします。

五十肩に効くとされているクスリの効能は大きく分けると以下の3点です。

  1. 鎮痛作用
  2. 血流改善作用
  3. 軟骨修復作用(?)

 

鎮痛作用について

市販薬で鎮痛作用(痛みの緩和)が期待できるのは、消炎鎮痛剤が配合されているものです。消炎鎮痛剤(NSAIDs=Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)とは各種あり、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称でステロイドではない抗炎症薬すべてを含みます。

NASIDsに該当される場合は、痛みの緩和が期待できますが、痛みや諸症状の緩和をうたう市販薬全てがそうであるというわけではありません。

いわゆる解熱鎮痛剤、たとえば、ロキソニン、バファリン、ボルタレン、イブ  等はNSAIDsに該当します。

 

ペイン・スパズム・サイクルという考え方があります。

慢性的な痛みがある場合、痛みを感じる神経が過敏になる場合が多く、普段よりも痛みを感じやすくなってしまっているのです。これがさらに筋肉や精神の緊張を招き、新たな痛みを招いてしまうという悪循環を招きます。

この負のスパイラル[Pain-spasm cycle(ペイン・スパズム・サイクル)]を生んでしまうと、長期にわたって辛い状況から抜け出すことができなくなります。

Pain-Spasm-Cycle

出典: http://joshuaoliphantmassage.com/pain-spasm-cycle/

 

これを緩和するためには、痛みを感じ始めた時期(急性期)に鎮痛を図ることが大切なのです。

そこで、五十肩に効くとされている薬の中でよく宣伝されておりネット上でランキングされている上位の6種類を調べてみると、どれも消炎鎮痛剤(NSAIDs)は含まれていないことがわかりました。

代わりに痛み止めの成分として含まれているのはビタミンB群や各種の漢方でした。 神経痛の場合はビタミンB12が処方される場合がありますが五十肩は神経痛ではありません。厳密な意味での四十肩や五十肩は、関節の内部(滑膜)の炎症です。

また、漢方で血流を改善して痛みを緩和するとのことなのですが、痛みに苦しむ急性期は炎症が盛んなため温めたり血流を良くすると、かえって痛みが増してしまう可能性があるのでこの点は注意が必要です。

 

ビタミンB1、B6、B12が配合されたビタミン剤は、肉体疲労時の栄養補給、神経痛、筋肉痛、関節痛などの症状改善、眼精疲労に効果があるとされていて、転じてコリをほぐす効果があるとされていますが、ここで大切なのは、ビタミン自体は、あくまでも身体の代謝に必要な栄養素です。

ビタミン自体がコリをほぐすわけではありません!カラダの機能を補助する栄養素であって、普通の食生活をしていれば不足することはあまりありません。

 

では純粋に鎮痛薬という点に的をしぼってみます。 医師によって処方されるお薬(処方箋医薬品・医療用医薬品)には消炎鎮痛剤が十分に含まれているため鎮痛作用が確かにあります。

いわゆる頭痛・生理痛などのための市販の鎮痛薬は第一類医薬品・第二類医薬品に分類され、消炎鎮痛剤(NSAID)が含まれているため、ある程度痛みの緩和には有効です。そのため、急性期の鎮痛には有効と考えられます。

 

医薬品の分類と消炎鎮痛剤の含有量の表
分類 消炎鎮痛剤の含有量
医療用医薬品医師による処方せんが必要★★★★★
一般用医薬品 第1類・・・副作用に注意が必要薬剤師のみ扱える★★☆☆☆
 第2類・・・副作用が少ない薬剤師、登録販売者★☆☆☆☆
 第3類・・・副作用の心配をしなくても良い薬剤師、登録販売者☆☆☆☆☆

 

とはいえ病院で医師の処方による消炎鎮痛剤と比較すると含まれる成分の量の差は歴然で、その効能の差も明らかです。

病院でもらった薬、処方された薬は効きが全然違う、というのは一般的な認識だと思いますが、この理由の一つが、有効な成分の含有量の違いなのです。

 

血流改善作用について

市販薬で一般的に五十肩・肩関節周囲炎に効くとされている薬は第二類医薬品・第三類医薬品に分類されています。上記でもご説明させていただきましたが、五十肩の薬には消炎鎮痛剤はほとんど含まれておらず、含まれていても微量であり、鎮痛作用は非常にマイルドと思われます。

では、なぜそれらのクスリが五十肩に効くと謳っているのかといいますと、血流を改善することが効果ありとしているためです。配合されている漢方の成分やビタミン剤によって血流の改善を期待するようです。

急性期は炎症が盛んなため、血流が増す事で痛みが増してしまうことがありますが、拘縮期以降は血流を増すことで、痛みの緩和などにプラスに働くことは確かに考えられます。これは、服薬がプラスになるというよりは血流改善を促すということは確かに効果的であろう、という意味です。

しかし血流改善を求めるだけならば、クスリを服用するよりも、ホットパックや温水などを用いたご自身で行うことができる温熱療法にて直接患部を温めた方が、疼痛閾値を上げる働きもあり痛みの緩和作用としてずっと効果的です。

軟骨修復作用について

グルコサミン、コンドロイチン・・・誰もが名前だけは知っているという知名度抜群の成分です。コンドロイチンのような軟骨成分は五十肩の市販薬に含まれている場合が多いです。大量のCM、通販、さらにはドラマかと思ったらCMだったというように、あの手この手でテレビを見ている人を洗脳した結果、磨り減った軟骨が復活すると信じている人も少なからずいらっしゃいます。

そして、五十肩は加齢現象によるものいう認識が広まっているため、加齢 → 軟骨がすり減る → 痛み という図式を想像する方が多いと思います。

四十肩や五十肩は軟骨が磨り減って生じるものではないという事実

セラピストとして、はっきりと申し上げますが、四十肩や五十肩は軟骨がすり減るから生じるわけではありません。この点は多くの方に誤解されている点でございます。

先の記事内でご紹介させていただきましたが、レントゲン所見上異常がなく骨や関節軟骨など器質的な異常が見当たらないのに痛みがある場合、そして関節包などの軟部組織が異常を起こしてしまっている状態で、特徴的な病期を経る状態を厳密な意味での「五十肩」や「四十肩」といいます。

もし骨や軟骨に異常があれば他の診断名がつきます。

厳密な意味での四十肩や五十肩は、上腕骨と肩甲骨を連結する肩甲上腕関節の、関節包の内面の存在する滑膜が炎症を起こしている状態です。慢性例や重症例ですと、関節包と関連のある周囲の組織に炎症が波及したり、合併した炎症が見受けられることがありますが、原則、構造的な問題(骨や軟骨の問題)は無いものです。そのためレントゲン上は異常が無いとされるのです。

五十肩も四十肩も、医学的には肩関節周囲炎と呼ばれ、病態は同じものです。発症する年齢によって俗称として「四十肩」「五十肩」と使い分けています。ですので、「四十肩」や「五十肩」は正式な医学的な名称ではございません。本記事では、わかりやすやを優先して、肩関節周囲炎=(厳密な意味での)五十肩=(厳密な意味での)四十肩 として「五十肩」と表記させていただきます。

では、磨り減った軟骨が再生すると思われているコンドロイチンやグルコサミンって何の意味があるのでしょうか?

コラーゲン摂取→お肌プルプル・・・気のせいです。。効果ありません。

女性には悲しい事実ですが、コラーゲンを摂取しても肌に効果はありません。肌の上から塗っても浸透しません。ただ、コラーゲン自体に保湿成分があるので、化粧品としての効果はあるでしょう。

コラーゲンを摂取しても美肌効果はが無いのとコンドロイチン、グルコサミン摂取の効果はないというのは原理は同じです。それら軟骨成分を摂取しても、実際は消化吸収される際には軟骨としてではなく、分解されてコンドロイチンは乳糖、グルコサミンはブドウ糖として吸収されます。

仮に、軟骨成分が腸から吸収された後に体内に入って再び元に戻ったとしても、血液として流れていき関節内の滑液にまで運ばれ、都合よく軟骨がすり減っている部分に集まり、修復されるのを助長することができるかどうかは医学的に疑問が残る所であり、正直な所、疑似科学といわざるを得ない部分があります。

本来、軟骨には血液循環がほとんどありません。血液の代わりに関節内に存在する滑膜から分泌される滑液によって栄養が補給されています。残念ながら人体の中でも軟骨への栄養供給の優先度が低く、血液→滑膜→滑液→軟骨 となるため血液中にいくら栄養素が存在していても軟骨に到達するまで間に障壁が存在します。

これは生命維持において関節軟骨への栄養供給優先度は低いためです。さらに栄養が軟骨まで届いたとしても、その栄養素は限りなく微々たるものです。関節軟骨は、厳密に言えば若干は再生能力がありますが、画像検査にて観察できる肉眼で確認できるレベルの再生能力は基本的に持ち合わせていません。

学術的に「結論」はすでに出ています。

ところが、効果の有無を示した論文が多数出展されており、サプリメント会社やフィットネス関連の方々は推奨する一方、医療関係者は否定するといった形で議論されてきました。医療関係者が否定するので、サプリメントの訪問販売の業者などは「これを医学的に認めると、医者が儲からなくなるから医者は認めない。」などという陰謀論まで持ちだして高額な商品を販売することもしばしばです。

何が正しいのか?

2010年にメタアナリシスが発表されました。メタアナリシスとは複数の研究結果、研究データを計算してまとめて解析、分析したものです。これは、根拠に基づいた医療において、最も質の高い根拠とされます。様々な説がある中で、信頼のおける結果が出ているのです。

 

結論コンドロイチンとグルコサミンは例え二つを組み合わせて飲んだとしても変形性膝関節症、変形性股関節症への効果、つまり「すり減った骨や軟骨を修復する効果は期待できない

 

当文献では論文としての形式上膝と股関節に限定しておりますが、直接患部に注射するのではなく経口摂取である限り、成分は血中に入り全身を循環するため膝と股関節へ選択的・限定的に集まるという事は考えにくく、腰・肘・手などといった他の関節・軟骨にも同様と考えて差し支えないと思います。

この結論から、整形外科でしばしば言われる「背骨の間が狭まっている」「関節の隙間が狭くなっている」ことによる痛み・しびれなどに対する作用は全身どこの部位においてもあてはまる事と考えても良いのではないでしょうか。

つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどの軟骨修復作用をうたう成分は、例え「医薬品」という表示があったとしても経口摂取である限り、身体各所の変形性関節症・頚椎ヘルニア・腰椎椎間板ヘルニアなどの痛み・しびれを改善する効果(すり減った骨や軟骨を修復する効果=関節と関節の隙間が狭くなってしまっているのを回復させる効果)はプラセボ(心理的作用)以上のものは期待できないと考えて良いでしょう。

 

ただし、2018年に発表されたメタアナリシスでは、「グルコサミンやコンドロイチンのような広く使用されているサプリメントは、効果がないか、あるいは小さく臨床的に重要ではない」という結論とさてておりますが、実験結果としては、短期的な痛みの緩和において役に立つ可能性が示唆されています。

医学に絶対はありませんし、今の常識が数年後には非常識になるということは少なくありません。今後研究が進み、新たなことがわかってきて覆るという可能性はありますが、エビデンスを元に考えますと、現時点の結論としては、コンドロイチンやグルコサミンといったサプリメント・市販薬は、変形性関節症の長期的な改善において効果は低いと考えられます。また、同様に五十肩の根本的な改善にも効果は低いと考えて良いかと思います。

 

 

余談ではりますが・・・

 

ヘルニア=腰痛ではない

ヘルニアといいますと、腰の椎間板ヘルニアが一般的で、ヘルニア=腰痛と思われる方が大半かと思われます。椎間板ヘルニアは、ヘルニアの一種です。

ヘルニアという言葉は、ラテン語で「脱出」という意味です。そこから、体内の臓器などが、本来あるべき部位から脱出した状態を指します。

脱腸やでべそもヘルニアなのです。脱腸は鼠径(そけい)ヘルニアといい、でべそは臍(さい)ヘルニアといいます。

椎間板ヘルニアは、椎間板の中心部にあるゲル状の組織が外へ出てしまっている状態で、脊髄や神経を圧迫するため痛いのです。主に腰の部分にある椎間板(腰椎)で発症します。ぎっくり腰として発症することもあります。

肝心の椎間板ですが、これは背骨の一つ一つの骨と骨の間にある円形の線維軟骨です。中央部分は髄核と呼ばれるゲル状でその周囲をコラーゲンなどの線維輪が囲っています。骨と骨の衝撃を和らげるクッションのような役割なのです。人間の複雑な動き、運動ができるのは、この椎間板のおかげなのです。

五十肩の激痛に対する治療について

五十肩は症状によって3つの時期を経ます。これは、どんな五十肩であれ共通です。これを病期といい、以下の3つの病期となります。

急性期 → 拘縮期(慢性期) → 回復期

このうち最もつらいのは言わずもがな最初の急性期です。急性期の間は夜、痛くて眠れない、僅かでも動かすと激痛が走る、といった痛みのために心身ともに疲弊してしまいます。激痛に苦しむ患者さんには本当に心苦しいのですが、急性期にはどんな治療を施してもいきなり治るということはないというのが実状ですので鎮痛に重点をおく治療となります。

ですので、急性期は炎症をなるべく早く落ち着かせるために肩関節周囲の負担を減らし、余分に動かしたり治療するなど過度の刺激は避け、とにかく安静を図りつつ鎮痛を持続させながら、拘縮期(慢性期)へ移行するのを『待つ』期間です。安静が大事ということは・・・痛みを抑えて、肩が楽に動かせることをアピールしている薬がありますが、服用される方は気をつけてください。痛みが治まった=動かせる、ではないのです。

拘縮期に移行したらはじめて前向きな治療が可能となるのです。痛いからどうにかしようと様々な処置を行う事により、これが刺激となりかえって炎症を助長させてしまい、つらい急性期を長引ませてしまう可能性があるのでこれにも注意が必要です。我慢できず痛み止めやヒアルロン酸の注射をしたが、注射が刺激となって炎症を助長させかえって痛くなってしまったという例はめずらしくありません。

このため、五十肩の治療は病期に合わせて最適な処置を行う必要があります。 病期ごとにどうような治療が適切かはこちらをご参照ください。

【肩関節周囲炎】50肩の病期に応じた対症療法と原因療法とは?

はたして五十肩の薬を飲んで五十肩は治るのでしょうか?

五十肩に効くとされる市販薬に消炎鎮痛剤が含まれているようでしたら少なからず(1)急性期における鎮痛作用は期待できます。しかし、医師から処方される鎮痛剤と比べるとその量は微々たるものであり、効果も同様です。処方薬が効かないのに市販薬が効くということは理論上考えにくいです。 消炎鎮痛作用という点でみた場合、効果の程度を比較すると 「処方された消炎鎮痛剤薬 > 市販の消炎鎮痛薬 > 五十肩に効くとされる市販薬」 となります。

血流改善作用におきましては、炎症が盛んな急性期には返って痛みを助長させてしまう可能性がありますので注意が必要です。血流改善が効果的となる可能性があるのは (2)拘縮期以降となります。

軟骨修復作用においては・・・上記でご説明いたしました通り五十肩の治癒とは関係はないでしょう。

これらの事から、五十肩の痛みをどうにかしたくて服薬を検討する場合は「市販薬には医師から処方される消炎鎮痛剤以上の効果を期待することはできない。特に五十肩に効果的と宣伝されている薬の効果は非常にマイルドであることが予想される。」が私の見解です。

 

結論服薬という手段は急性期における鎮痛には有効だが、それは根本治療にはならない。

 

実際の効果はないけれども、調子よくなった気がするのならば効果あり

“体の内側から効く”というキャッチコピーは、とても効きそうですが、急性期で痛みに苦しむ場合、医師から処方された鎮痛剤以上の効果を市販薬に求めることはできないこととなります。現実問題として、急性期の激痛は処方された鎮痛剤や強いお薬、そして注射をうってもおさまらないことがあります。するとつい、「根拠が定かでなく、よくわからないけど効きそうなもの」に頼りたくなってしまう気持ちはとてもわかります。

一見、さも効きそうな効能がうたわれている市販薬やサプリが宣伝広告されていますが、五十肩の痛みをどうにかしたい場合、処方薬を服用することが最も痛みから解放される手段である事は変わらないでしょう。特に急性期の激痛においては藁をもすがる思いでどうにかしたいとお考えなのは重々承知ではありますが、処方された鎮痛剤が効かないのに鍼灸・マッサージはじめ、漢方やその他の療法が効くということはまずありえません。

ただ、クスリを服用することで、効いている気がする、クスリの影響でなかったとしても調子が良くなったのならば、それはラッキーなことです。病は気から・・・というように、精神的な影響は大きく、思い込みは決して馬鹿にできません。カラダの調子がよくなった!治ってしまった!これが一番です。

いくらクスリを信じて飲んでも効果がない場合は嫌かもしれませんが上記で述べた現実と向き合ってください。

五十肩の薬の効果を知ってガッカリされた方、とっておきの方法をお教えします。

安心してください。 そのような方にご自身でできる、とっておきのセルフケア方法があります。それはアイシングです。 古典的な方法ですが、正しく行うことで、意外な効果が期待できます。是非一度はお試しいただきたいと思います。

アイシングもあくまで鎮痛目的であるため、ずっと続ければ良いというものではありません。あくまで急性期の痛みをコントロールするための対症療法とお考えください。

五十肩の急性期における効果的なアイシング方法は 氷嚢(ビニール袋に氷と水を入れた簡易的なものでも良いです)にて痛い部分を20分間程冷やします。 もし、患部が熱感をもっていて何もしないでもジンジン痛いようでしたら、20分冷やした後一旦休憩し、患部の皮膚の温度が常温となるまで待ちます。皮膚の温度が元に戻ったら再度冷却を行います。この行程を痛みが気になる際に行ってください。一日1回、1セット行っていただくだけでもだいぶ楽になると思います。この時の注意点は、凍傷となる恐れがあるため、保冷剤や氷で直接冷やしてはいけないということです。アイシングとはいえ0℃以下で冷やしてはいけないのです。氷のうは薬局やスポーツ量販店にて安価でお買い求め可能です。

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また、アイシングのしすぎにも注意が必要です。急性期の痛みに苦しんでいる際に、アイシングを行うと、その効果に驚くと思います。するとついついアイシングをたくさん行えば良いと錯覚してしまいがちなのですが、過ぎたるは及ばざるが如しという言葉のとおり、アイシングの行いすぎには注意が必要です。アイシングを行う時間が過度に長いと例え氷のうを用いていても凍傷を起こす可能性がありますし、常に冷やす事によって返って血流が悪くなり他の痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしていただきまして、繰り返す場合は皮膚の温度が完全に元通りになってから行うようにしてください。

ただし、夜間痛があるようなひどい炎症がある場合、最も改善できるのは、肩関節専門医による治療です。五十肩の炎症期(急性期)は、関節方の内部に非常に強い炎症が生じています。そのため、適切な薬剤を用いた医学的な対処が最も効果的となります。

そのため、夜間痛や安静時痛のあるような状態であれば、セルフケアではなく、専門医の治療を受けることを強くご推奨いたします。

拘縮期(慢性期)以降の服薬の有効性について

一時の激痛や夜間痛などは落ち着いたが、まだ動かすと痛いという(2)慢性期に入ったら、肩甲骨周囲の緊張した筋肉を弛める事とインナーマッスルの強化など肩関節が動くことができる下地作りが根本治療には必要です。血流改善の目的はあくまでも鎮痛のためであり、動かしやすくするためです。つまり運動療法の補助的要素であり、拘縮期において、血流改善のみを行っていても五十肩が治ることはありません。

五十肩に効くとされる市販薬は拘縮期に入ってからでしたら、強い鎮痛作用を求めることもありませんので、血流改善目的で服用する意味は少なからずあるように思えますが、医学的にはどのような扱いなのでしょうか?

『今日の整形外科治療指針 第6版 医学書院』409ページには五十肩の治療において急性期は鎮痛剤を服用し安静を図るが、拘縮期には基本的に薬物療法の必要は無い。(要点を抜粋させていただきました)

また、『標準整形外科学 第11版 医学書院』420ページには 疼痛が強い時期(急性期)には安静と消炎鎮痛剤の服用や注射などが行われるが、可動域制限が主体の凍結期(拘縮期)に達したらリハビリを中心に行う。(要点を抜粋させていただきました)

このように二つの医学専門書おいて、拘縮期(慢性期=凍結期)には薬の服用が必要ないということが記載されておりました。

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【まとめ】五十肩には適切な対処方法があります!!

医学的根拠に基づいた治療という観点から申し上げると、四十肩・五十肩におきましては、急性期においてその場の痛み・辛さを抑えるために消炎鎮痛剤を服薬することは効果的です。拘縮期以降においては、お薬の服用は得てして必要ではないとされています。

最も肝心なのは、たとえ薬を飲み続けたとしても根本的に治ることはないということです。お薬の役目はあくまで、急性期の乗り切るための鎮痛目的です。拘縮期以降、本格的に肩関節の可動性を回復させる治療を受ける前までその場の痛みをしのぐものとして活用していただけたらと思います。

何よりも、五十肩を根治させるためには、病期に応じた適切な処置を行うことが大切です。

例えば、急性期は積極的な安静が必要ですが、拘縮期はたとえ痛くても積極的に動かさなければなりません。痛いからといっていつまでも安静を保ちすぎるのは返って治癒を遅らせてしまう要因となります。このあたりはとても詳細な見立てが必要となりますので、是非、自己判断で病期や状態を判定せず、お近くの専門家にご相談いただけたらと思います。

【補足】五十肩に限らず、肩こり、腰痛などの慢性的な症状でお悩みの方へ

慢性的な症状の解決には、ご自身でできる事や、行っていただかなければならない事はもちろんあります。 しかし慢性的な症状となればなるほど、ご自身では気が付かない部分に原因があったり、ご自身の力ではどうにもならないことが治るのを妨げているという場合がしばしばあります。

良かれと思って行っていただいている事や、○○改善本に書かれていることを自己判断で行う事によってかえってマイナスとなってしまっている事もよくあります。

どうしても「劇的な効果」や「自力でなんとかする」という点に着目されがちですが、確実な治療にはそれなりの手順や段階があります。

治療は魔法ではありません。こと東洋医学や鍼灸・マッサージは「即効性」や「魔法のような効果」を強調されますが、100人に1人たまたまそのような劇的な効果があったとしても、その1例だけを強調して効果有りとしてしまう良くない慣習があります。

今痛みに苦しんでいらっしゃる方には本当に心苦しいのですが、いきなり症状をゼロにするのは現実問題、困難です。 確実に改善していくためには、ある程度の施術回数や期間が必要なのです。

症状が安定し、セルフケアを体得し、ご自身で体調管理ができるようになるまで一定期間プロに体を任せるのも現状打開のための一つの手ではないかと思います。

もし、当院へ大切なお身体をお任せいただけるようでしたら、通ってもらうためではなく、一刻も早い最短でのゴールを目指します。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


【肩関節周囲炎】50肩の病期に応じた対症療法と原因療法とは?

50肩という言葉の解説と発症する原因、症状進行の大まかな流れについてのブログ記事『五十肩の原因・症状・治し方 ①五十肩とは』に続きまして、今回は具体的に50肩はどうすれば治るのか?についての解説です。

病院に行っても50肩が治らない!!一向に改善しない!!これには明確な理由があります。

現在、通院中の方はもちろん病院での受診をお考えのみなさん、いま、あなたが困っていたり悩んでいるのは、誤った情報と思い込みのせいかもしれません。

悩み・迷いをなくすには、あなた自身が、なるほど!と納得できる情報です。

何が正しくて何が間違っているのか、あなたが正しいと思った情報が正しいのです。

40肩・50肩と気軽に言ってしまいますが、実は奥が深いのです

40代-50代で「肩を動かすと痛い」「何もしていなくても肩が痛い」「肩が痛すぎて眠れない」「痛くて腕が上がらない」といった症状がすべて40肩・50肩というのが一般的な認識でしょう。

ですが実際は、そうではないケースも多いのです。

厳密には50肩(40肩)とは骨自体でなく関節包・肩関節の周囲の筋肉に原因があるものを指します

医学専門用語では「五十肩(=凍結肩=癒着性関節包炎)とは関節包の肥厚・短縮・硬化を主病態とし、肩痛・可動域制限を主訴とする疾患」となっています。

肩関節周囲炎は名前のとおり関節のトラブル!!実は年齢には関係ない

中高年に限定すれば5人に1人が何かしらの肩の痛みがあると言われています。40肩・50肩は年老いた証というのが一般的な認識かもしれませんが20代・30代でも発症します。つまり「自分はまだ30代前半だし、40肩のわけがない!」と思いこみ、ほっとけば治るという認識は危険です。

痛みを我慢すれば腕を動かすことはできるような肩痛もあれば、腕が全然動かせない肩痛もあります。肩こりも五十肩も痛いという共通点があり、肩こりによる痛みと混同されがちですが、コリによる痛みは筋肉の痛み、筋肉痛です。

50肩の根本的な問題は【肩の関節】です。もちろん筋肉も含みますが、問題の核心は関節なのです。

50肩によって周辺の筋肉に影響は出ますので、どうしても混同されがちですが「肩こり」と「50肩」は全くの別物です。

肩関節の痛みという症状に含まれているのが50肩であり、肩の関節が痛いからといって、それは50肩とは限らないのです。

肩が痛い!まさか五十肩?・・・判別する方法

 

50肩と【診断】できるのは医師のみです。

整形外科にてX線、MRI、超音波などを使った検査を行った上で、腱版断裂、腱板炎、石灰性腱炎、上腕二頭筋長頭腱炎といった明らかな疾患がない場合、【肩関節周囲炎】です、いわゆる50肩ですね、という診断がなされます。

大切なことなので繰り返しますが、明らかな疾患がない場合が「肩関節周囲炎」なのです。

「えっ?なにそれ、どういうこと?」って驚かれたかもしれません。

明らかな疾患がなければ五十肩??

そんないい加減なもの?アバウトすぎない?と思われるかもしれません。医療機関で、原因不明で確実な改善方法がないという診断が「50肩」なのです。

肩関節の様々な問題は、まだまだ研究段階にあるものが多く、医療機関で「様子をみましょう」と言わざるをえないのです。これは医療機関が悪いわけではありません。保険制度・医療制度上仕方のないことなのです。発言・診断に責任が伴う以上、仕方のないことなのです。

これより40肩・50肩を【肩関節周囲炎】という名称に統一して解説していきます。

【肩関節周囲炎】は20代・30代でも発症する

若年層の首や肩への負担はスマートフォン・パソコンなどの普及により増大しています。ストレートネック・巻き肩は10代にも広がっています。

【肩関節周囲炎】の原因は解明されていないことが多いのですが、加齢による筋肉や関節の変性と血液循環の悪化が主な原因でされています。

明確なことは申し上げられませんが、首や肩への負担が【肩関節周囲炎】と関係ないと言い切ることは誰もできないと思います。

年齢をとれば体にガタがくるのは仕方ないと誰もがお思いでしょう。

ですが、安心してください。

【肩関節周囲炎】は関節の老化が全てではありません!!

事実、20代・30代でも【肩関節周囲炎】は発症します。

ただ、40代〜は運動不足・筋肉量の低下・食事の変化といった影響により発症しやすいだけです。

若くても肩関節周囲炎は発症してしまう、つまり加齢による不可抗力的な症状ではない、ということをご理解ください。

【肩関節周囲炎】は人によって進行具合が異なります。

大切なのは今現在の肩の状態を正確に把握する必要があります。

【肩関節周囲炎】は時間と共に症状が変化する


【肩関節周囲炎】は経過と共に症状が変化するという特徴があります。

  1. 急性期

    炎症期ともいいます。疼痛が主体で可動域制限が進行する(6週~9ヶ月)

  2. 拘縮期

    可動域制限が著しく進行する(4~6ヶ月)

  3. 回復期

    疼痛・可動域制限ともに軽快する(6カ月~2年)

【肩関節周囲炎】は、一般的に3つの病期に分かれます。いつのまにか痛みが治まってきたと感じるのは回復期にあたります。

【肩関節周囲炎】への適切な対処には、最低限この3つの病期に応じた処置を行う必要があります。3つに分類にはなっていますが、実際は、急性期→拘縮期、拘縮期→回復期への移行時期も存在します。

肩こりラボでは拘縮期は前期・後期に分けて考えており、移行期ふくめて6つの期間+急性期の前段階も合わせて7つの期間に分けています。

この分け方は、当院独自の分け方です。

なぜ【肩関節周囲炎】を病院は治してくれないのか?

肩の痛みは命に関わるものでもないですし、肩こり同様、年齢のせいにされがちで軽視されています。さらに厄介なことに、放っておけばいつかは痛み自体は治まるため、とりあえずの対症療法で様子をみましょう、というのが一般的な対応です。

病院で治らないのは、保険適用できる範囲内で対応できる術がないためです。それがあれば、全国どこの整形外科でも対応でき、少なくともなぜ治らない?と悩む人は減ります。

ですが、現在医学的に原因不明とされている【肩関節周囲炎】の痛みを解明するために世界中で研究が進んでいます!

「五十肩は放っておけば治るんでしょ?」という疑問にお答えします。

病期についての説明で「回復期」という言葉にピンときた方、この回復期が五十肩は自然に治るものとされている定説のポイントです。

【肩関節周囲炎】は、肩に違和感を感じはじめ、やがて激しく痛みが出る→痛みが少し落ち着くが肩が動かなくなる→痛みがおさまり肩が動くようになるという流れを辿ります。

注意していただきたいのは、このように「痛み」にフォーカスすれば、たしかに自然とおさまります。痛みが治まる=【肩関節周囲炎】が治った、ではないのです。

この痛みをなんとか誤魔化し時間が経つのを待つ=様子を見る、というのは、今現在つらい思いをされている方が望んでいることではないはずです。

自然と痛みがおさまっても、残念ながら以前のようには肩は動かなくなります。

適切な処置をせずに【肩関節周囲炎】を放置して自然と痛みを感じなくなるケースでは、ほぼ確実に肩関節の可動域制限が生じます。痛みは引いたけれども、元のようにスムーズに動かない、肩を真上にピっと垂直にあげることができない、腕が耳につかない、といった状態です。

日常生活において、両腕を真横に広げることができれば(肩が90度まで動けば)、肘を使って様々な動作はなんとかこなせます。ですから意識されていない方もいらっしゃるはずです。

例えば、思い切り万歳!できなくても、小ぶりな万歳はできます。このように生活にはさほど困りません。ですが、腕を使う職人さんやゴルフをはじめとしたスポーツを趣味とされている方にとっては相当なダメージです。これを年齢のせいと一言で片付けてしまうことは簡単です。

【肩関節周囲炎】を放置すると可動域が制限される理由

なぜ、動かすことのできる範囲が制限されてしまうのでしょう?

人は痛みがあると無意識にかばってしまいます。【肩関節周囲炎】の場合、その痛みをかばうために長期間にわたって肩関節を動かさないようにしてしまうのです。関節を長い間動かさないでいると固まってしまいます。これを専門用語で「関節拘縮かんせつこうしゅく」といいます。関節拘縮かんせつこうしゅくは「関節包かんせつほうの癒着が生じてしまう」状態を指します。

関節包かんせつほうに問題が残るだけでなく、筋肉にも悪影響が出ます。肩を長期間動かさないことで、インナーマッスルなど動かすために重要な筋肉が衰えるのです。

いつも使っていた筋肉を使わなくなれば当然筋力は衰えと思われることでしょう。

ここに多くの方が誤解されているポイントがあります。筋肉を鍛えれば元に戻るというわけではないのです。

筋肉を正しく動かす能力自体が衰えてしまう

筋肉を長期間動かさないことで、筋力だけでなく筋肉を正しく動かす能力自体が衰えてしまいます。

筋肉=力、という筋力のイメージをお持ちの方がほとんどでしょう。

もちろん力も大切ですが「動かし方」これがとても重要です。

筋肉を正しく動かす能力は、普段は意識することがありません。

身についてしまっているからです。

一度身についていたものを失うということは、身につけ方を覚えていればよいのですが、これを自力でなんとかするのは難しいことなのです。

たとえば、長い間車椅子生活を余儀なくされ、長い間歩くことがなければ、リハビリが大変なことになるのは想像に難くないでしょう。【肩関節周囲炎】の場合も同じなのです。長い間動かさないと、動かし方を再度身に付ける・正常に戻すためには専門家の指導が絶対に必要です。

可動域が制限されてしまうのは、長期間肩関節を動かさないようにすることで、筋力が衰えるだけでなく、筋肉の使い方を忘れてしまうためです。筋力自体は元に戻すことはできても、筋肉の使い方を再習得するのは自力では困難です。

【肩関節周囲炎】を諦めないでほしい!

痛いから動かせない肩関節痛と【肩関節周囲炎】は厳密には異なる疾患です。

痛みが治まっても、以前のように動かせなくなるのが【肩関節周囲炎】。痛みさえ治まれば問題なく動かせるのは【肩関節周囲炎】ではございません。自己判断で【肩関節周囲炎】だと思いこんでいらっしゃる方の内、実際は違う肩関節痛であるケースは多いと思われます。

とにかく痛みだけ抑えるのは絶対に必要な対症療法

なにはともあれ痛みだけでもなんとかしたい、これは苦しんでいる方にとって一番の願いです。とりあえず痛みだけおさまってくれればそれでいいと思われる気持ちはよくわかりますが、痛みを抑えることが全てではありません。クスリや注射には当然のことながら副作用もあります。四十肩・五十肩が根本的に改善するというのは、腕や肩が発症以前のように動かせる状態になるということです。

その具体的な方法については以下で解説いたします。

【肩関節周囲炎】への効果的なアプローチ方法

 

肩関節周囲炎は、病期に応じた対症療法と原因療法が必要です。当院では病期を7つに分類していますが、整形外科的基本となっている急性期・拘縮期・回復期の3つの病期において何をすべきなのかをご説明します。

アメリカの理学療法ガイドラインでは4つに分けられています。

 

急性期(6週~9ヶ月)

五十肩を患っていらっしゃる方にとって、最もつらい時期がこの急性期です。動作時だけではなくじっとしていても痛みがあります。夜間痛が生じる場合も多く、痛くて眠れず鬱など精神症状へとつながっていってしまうこともあります。痛みをなんとか抑えることが望ましいのですが、実際のところ簡単には治りません。緩和はできても、ある程度の痛みは覚悟する必要があります。その痛みと向き合う時間をできるだけ短くする、つまり急性期という期間を出来るだけ短くすることが効果的なのです。

 

急性期に行うべき処置

  • 炎症の鎮静化
  • 拘縮期への早期移行
  • 痛みの緩和

実際に、急性期の五十肩に対して病院が行うのは保存療法が主です。保存療法では、手術をせず、投薬やリハビリを行います。具体的には、炎症を抑える・痛みを緩和するたことを目的とした投薬と注射になります。

どんな薬?どんな注射?・・・気になりますよね。

はい、医療機関で処方される薬と注射について解説します。

五十肩の急性期に処方される薬

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID=Non Steroidal Anti Inflammatory Drug)の処方が医療機関での第一選択肢となります。錠剤、湿布、座薬といった患者さんに合わせたタイプで処方され、いずれも鎮痛と抗炎症作用の両方が期待できます。服用する内用薬の場合はロキソニン、湿布の場合は、モーラステープまたはロキソニンテープが多いです。これらが効かない場合、より強力なボルタレンが処方されますが座薬として処方されることが多いです。これらNSAIDの処方で痛みが治らず生活に支障をきたす場合は、もう一段階強力なトラムセットが処方されます。トラムセットは強力な鎮痛作用がありますが、トラムセットに含まれているアセトアミノフェンによる抗炎症作用は弱めです。

NSAID・トラムセットは処方される薬で市販薬ではございません。五十肩などに効くとされる市販薬については別記事で解説しました。

【検証】薬で五十肩・四十肩はよくなるの?五十肩に効くとされるクスリの効果と意味を解説

注射が鎮痛にはもっとも効果あり

目的を「痛み緩和」に限定した場合、最も効果的な手段です。整形外科、または麻酔科(ペインクリニック)にて受けることができ、ヒアルロン酸注射とステロイド注射の2種類が一般的です。

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸のもつ抗炎症作用及び鎮痛作用により痛みの緩和が期待できます。さらに腱の癒着防止作用、関節拘縮抑制作用も期待できるため、整形外科では1週間に一度、連続5回ヒアルロン酸を注射するのが一般的です。ヒアルロン酸を飲食物として経口的摂取しても上記の効果はなく、あくまでも患部に直接注入する必要があります。

ステロイド注射

炎症が強く関節に腫れがある場合はヒアルロン酸による効果が得られにくく、その場合強力な抗炎症作用があるステロイド注射が有効です。ステロイド注射は、急性期の炎症鎮静化と痛みの緩和においては最も効果が期待できる方法である。ただし何度も繰り返すと軟骨を痛めるリスクがあり、多用は危険です。ですので連続してステロイド注射をする場合は最低3ヶ月以上の間隔をおく必要があり1年に計2回までとされています。

以上が、医療機関で受ける治療になります。他にPRP療法(自己多血小板血漿療法)や運動器カテーテルといった特殊な方法もあります。テレビで紹介されたり有名人が行なったことがニュースになり知名度は高いのですが、いずれも保険が適用されません。

次に、当院で行なっている方法ご紹介します。

肩ラボの急性期の五十肩へのアプローチ方法

とにかく痛みをなんとかしてほしい!これが患者さんがもっとも望んでいることです。痛みの緩和・炎症の鎮静化はもちろん大切です。

重要なのは、できる限り「拘縮期への早期移行」を促す、これがポイントです。

拘縮期への早期移行とは、肩が動かなくなる状態になっていただくということ。肩が痛くて動かしにくい状態から、肩が全然動かない状態になるということは悪化していると感じられるはずです。ですが、この動かない状態(=拘縮期)を経ないと治りません。

ここの理解が得られないと次のステージへ進めません。

医療機関にて五十肩と診断を受けた方に対して、当院のような鍼灸・マッサージ院ができるのは「寒冷療法」「超音波療法」「鍼」「マッサージ」「運動療法」の5つです。

痛みの緩和の効果に限れば、整形外科・ペインクリニックの注射には劣ります。

五十肩に対するアプローチの本質は、状態に応じた処置方法の組み合わせ方です。つらい症状を緩和する対症療法はもちろんですが、つらい期間をできるだけ短くし、五十肩を発症する前の状態に戻すためには、適切な処置を個々に合わせて組み合わせるテクニックが必要なのです。

寒冷療法

炎症が強くて痛みが激しく、熱感や腫脹(腫れ)がある場合は、まずはアイシングにより鎮痛と炎症の鎮静化を図ります。

超音波療法

超音波で炎症部位に極微細な刺激を与えることで、細胞の反応を喚起して治癒を促進させます。1秒間に100万回(1MHz)/300万回(3MHz)の高速度ミクロマッサージが可能なUST-770(伊藤超短波株式会社)を使用します。

鍼とマッサージ

鍼を打つことで、急性期の痛みが魔法のように治ることはありません。そして急性の炎症部位に鍼を行うことで却って炎症を助長させる可能性が高いため直接的な鍼は原則行いません。

では、どこに鍼を刺すのか?といいますと患部となる肩関節の“周囲”に刺します。

急性期は関節内部の炎症に加え、痛みに対する生体の防御反応により肩関節周囲の筋肉に過剰な緊張(スパズム)が生じています。

この過剰なスパズムによって関節部の痛みの助長や、腕や首などの周辺部位の不快感や鈍痛、気怠さなどの二次的な痛みが合併して発症しているケースがほとんどです。

さらに緊張だけでなく、痛みにより動かしたくても動かせない期間が続くため、不動により筋肉(筋線維と筋膜)の硬化が生じます。

炎症部に負担をかけずに筋緊張の緩和を図るためには、過度なストレッチや体操は避けなければいけません。

炎症部に負担をかけないために鍼・マッサージで行うことが望ましいのです。急性期における鍼・マッサージは、肩関節周囲の過剰な筋緊張の緩和と血流改善をすることで、二次的な痛みの緩和を図ることと関節拘縮の軽減が目的です。

マッサージと鍼は、個々の患者さんの感受性や具合に応じて使い分け、または組み合わせて行います。

運動療法

急性期において炎症の早期鎮静化は最優先課題です。原則痛みを我慢して動かすということは行いません。

ですが、インナーマッスル(腱板)の強化は必要です。

そのため、インナーマッスル強化のために運動療法は極めて低負荷で行います。

インナーマッスルの強化によって関節拘縮を予防して根治までの期間を縮まります。インナーマッスル(腱板)のなかでも特に棘上筋と棘下筋の強化が大切で、あくまでも痛みを自覚しない範囲で行うことが重要です。わずかな挙動においても痛みが強い場合は、炎症鎮静化を優先します。

繰り返しになりますが、痛みを我慢しての運動療法は行いません。

 

拘縮期(4~6ヶ月)

拘縮期に入ると、“何もしないでも痛い”状態からはやや解放され、主に運動療法が行われます。この拘縮期に運動療法と併行して鍼灸・マッサージを行うことがポイントです。

鍼灸・マッサージは急性期と拘縮期の移行時期に最も有効

急性期の終盤「一時の激痛は少しおさまってきたが、動かすと痛い!」という状況になります。それ以降、急速に関節の拘縮(固まって動かなくなること)が進行します。この急性期→拘縮期の移行時期に、きちんと適切な処置ができるかどうかが、とても大切なポイントなのです。鍼灸・マッサージは、この急性期と拘縮期の移行時期に行う処置として最も有効であると考えております。

関節拘縮を放置してしまいますと元通りにするのは非常に困難です。残念ながら、完全な可動域までの回復が難しくなります。拘縮期を経て回復期に移行した後の可動域を確保するためには、拘縮期における関節拘縮の程度をコントロールする必要があります。

拘縮期に入ってしまってからよりは、症状が変化する、急性期→拘縮期に移行するタイミングで“痛みの管理と関節拘縮の予防”ができることが望ましいわけです。そのための手段として鍼灸・マッサージは効果を発揮すると期待できるのです。

鍼・マッサージで痛みが緩和できる理由

鍼灸・マッサージは「筋肉をゆるめる」と「血流を増加させる」の2点に特化しています。

筋肉の緩和・血流の増加で、なぜ痛みが緩和されるのでしょうか?

人間は痛みを感じると条件反射によりその部位付近の筋緊張が高まります。肩関節は他の関節と異なり、筋肉によって支えられている割合が多いのです。肩をとりまく筋肉の状態により可動性は大きく左右されるのです。

また、肩の動きは“肩甲骨の動き+上腕骨(腕の骨)の動き”によって成り立っています。(これを肩甲上腕リズムまたはコッドマンリズムといいます)

五十肩にお悩みの方は、その痛みに対する防御と長期間肩動かさないことから、ほぼ全員に肩甲骨の硬化が生じます。具体的には肩甲胸郭関節の拘縮が生じているのです。

 

五十肩の拘縮期における鍼・マッサージの目的

  • 鎮痛と運動療法の補助
  • 肩甲骨の動きの回復
  • 筋肉の伸縮性を正常化

鍼とマッサージはこの3点において大変有効ですから、拘縮期から回復期へスムーズに移行できるのです。

 

回復期(6ヶ月〜2年)

回復期には、可動域が回復して根治にむかう時期です。ここまでくれば、肩を苦なく動かせるようになってきて、日に日に良くなってくるのが実感できます。

そこで関節可動域の拡大とスムーズな動きを目指し、積極的な可動域訓練と筋力トレーニングをメインに行います。

特にインナーマッスルの機能回復、前後左右の対になる筋力(force couple mechanism)の関係性を整えることに重点を置きます。

 

肩局所だけでなく、姿勢や日常の動きなど全身に対するアプローチも行います。

この時の鍼灸・マッサージは、可動域を高めるための補助と筋力トレーニングによって疲労した部分の回復が主な目的となります。

動かしにくさを補助して動きを円滑にする、そして二次的な痛みを予防できるという点で鍼灸・マッサージはとても有効なのです。

運動療法・リハビリの効果が出ない理由、それは肩甲骨にあります

肩の動きのうち、三分の一は肩甲骨の動きに頼るものです。気をつけの姿勢からバンザイのまでの角度を180度としたら、60度は肩甲骨が動くことによるものです。裏返せば、いわゆる肩関節(肩甲上腕関節)のみでは人体の構造上120度しか動かないのです。

五十肩、四十肩、肩甲上腕リズム、コッドマンリズム コッドマネクササイズ 出典:ameblo.jp

そのため肩甲骨がきちんと動かなければ、運動療法をしようにも、そもそもうまく動かすことができず、効果を期待できません。

リハビリにて肩を動かす運動を処方されても一向に変化がないか、動かしたくてもうまく動かない、あるいはある程度動くようになったが頭打ちとなったといった場合は、肩を動かす前段階として肩甲骨が動いていない可能性が高いです。

よって積極的に運動療法を行う拘縮期となる少し前から“肩甲骨の可動性”を確保するための鍼灸・マッサージは有効であり、併用して行うことで運動療法の効果を高めることにもつながり、結果的に根治までの期間を早めることにつながると考えられます。

五十肩、四十肩、凍結肩、按摩、マッサージ 出典:www.yogawiz.com

肩甲骨の可動性と共に重要なのが腕の骨(上腕骨)と肩甲骨を連結するいわゆる肩関節(肩甲上腕関節)を円滑に動かすために必要なことはインナーマッスルの活性化です。

インナーマッスルの「強化」ではなく「活性化」とした理由

多くの場合、筋力を高めるためにはトレーニング=筋肉に負荷をかけて縮ませることが第一選択肢となります。

しかし五十肩のように関節をあまり動かさない状態が続くと、関節だけではなく筋肉も硬くなり本来の「伸縮性」が失われてしまいます。ギュッと縮まってしまっている筋肉を、さらに負荷をかけて縮ませても効果は半減です。

筋力トレーニングの原則として、まず筋肉が適切に伸長する必要があります。伸長された筋肉が縮まる際に負荷をかけることで効果の出る適切な筋力トレーニングが可能となります。

このため、筋肉を「強化」する前段階として「活性化」が必要になります。

このような「活性化」つまり硬くなって伸縮という正しい機能を失ってしまっている筋肉を回復させるために鍼灸・マッサージは有効といえます。

筋肉の正常な伸縮性を取り戻してからトレーニングすることにより、インナーマッスルトレーニングの効果を促進することが可能と考えられます。

リハビリ・運動療法がうまくいかない問題の本質

病院・クリニックのリハビリなどでアイロン体操(=コッドマンエクササイズ=ぶん回し体操)や棒体操などのストレッチなどを行うように指導され、一生懸命行っても一向に変化が出ないことが大半かもしれません。これまで述べてきた通り五十肩においてもっと大切なことは病期と痛みの原因の把握です。運動療法の効果がない、一向に良くならない場合は、そもそも「五十肩の病期とその処置」「痛みの原因とその処置」が合致していない可能性大です。

アイロン体操↓

棒体操↓

五十肩は放っておいてもいつかは痛みがおさまることが多いため、軽視されてきました。

昔ながらの方法も「五十肩・四十肩といえば〇〇」といったような古くから伝わる伝統的な方法が、マニュアル的に行われているにすぎず、肩こり同様最終的に「年齢のせい」ということでうやむやになってしまっている・・・これが現実です。

五十肩で当院に駆け込んでいらっしゃる方に、これまでの経過を伺うと「リハビリに通ってもいつもの流れ作業の繰り替えしで、一向に改善しない」とおっしゃる方がほとんどです。

当記事で紹介した当院で行なっているような方法を実践している医療機関は・・・極めて少ないでしょう。

さきほど一般的に3つの病期があると説明しましたが、実際はその3つの期間の把握すらもされないのが普通なのです。普通の保険診療では医師の対応は数分で終わりです。これは手抜きではなく、そもそも時間がかけられないのです。時間がかけられない以上、整形外科医にとってまずは五十肩か否かが大切で、五十肩でないとわかればいろいろしてくれますが、五十肩となると詳しく検査はされません。

当院は、鍼とマッサージがメインですが、鍼自体を認めていない整形外科医・理学療法士は少なくありません。

鍼というとツボ・経路といった神秘的なもの、悪く言えば「うさんくさい」イメージです。実際のところ、そういう鍼が大半です。ですが、きちんと現代医学的根拠に基づいて行う鍼は様々な医療現場で活躍できると確信しています。実際、多くの大学病院でも鍼は取り入れられています。

 

鍼灸外来のある大学病院

  • 東京大学付属病院 麻酔科・痛みセンター
  • 東北大学病院 鍼灸外来
  • 千葉大学医学部付属病院 神経内科
  • 大阪大学生体機能補完医学講座 補完医療外来
  • 筑波技術大学 東西医学統合医療センター
  • 三重大学医学部附属病院 麻酔科(統合医療・鍼灸外来)
  • 岐阜大学医学部付属病院 東洋医学外来
  • 京都府立医科大学付属病院 麻酔科
  • 慶應大学医学部 漢方医学センター
  • 日本医科大学付属病院 東洋医学科
  • 自治医科大学附属病院 麻酔科
  • 東京慈恵会医科大学付属病院 ペインクリニック
  • 東京女子医大 東洋医学研究所クリニック
  • 東海大学医学部付属病院 東洋医学科
  • 東邦大学医療センター大橋病院 漢方外来
  • 埼玉医科大学病院 東洋医学科
  • 北里大学 東洋医学総合研究所 漢方鍼灸治療センター
  • 大阪医科大学麻酔科教室
  • 近畿大学付属病院 東洋医学研究所附属診療所(漢方診療科)
  • 明治国際医療大学附属病院
  • 福岡大学病院 東洋医学診療部

四十肩・五十肩は難易度が高い上に時間がかかります

一言で「五十肩」といっても、本当の意味での五十肩は凍結肩(frozen shoulder)・癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)、実際の五十肩の症状は、ほぼ肩関節痛+肩痛(筋肉痛)のセットです。

複雑な構造をしているが故に、症状そのものが複雑で、これらによって引き起こされる肩周辺の様々な痛み・症状まで全部含まれるため肩関節周囲炎が五十肩の保険病名になっています。

五十肩には自信を持ってよくなりますとお伝えはできるのですが、行う施術は決して簡単ではございませんし、時間・回数はどうしても必要になります。

数回ですっかり良くなってしまうケースもあれば、なかなかうまくいかないことも正直ございます。

五十肩を治してしまうか、放置するか、この選択次第で人生は変わります

五十肩は放置しても発症して1年から2年で自然と痛くなくなります。きちんと適切な処置を行えば、当院の理学療法データによれば、だいたい半年から1年でゴールします。つまり適切な処置を行えば放置した場合にくらべて約半分に期間を短く圧縮できます。

一時的な緩和方法だけして放置すれば、痛みは治まっても可動域は狭くなりますが、適切な処置を行えば発症以前と同等の可動域を取り戻せます。

腕や肩が以前のように動かせなくなるのは想像以上に不便なことです。仮に85歳まで生きると仮定して、約半分の人生に影響があるとしたら、しっかりと治してしまったほうが生活が豊かになる・・・とまではさすがに言い切れませんが、少なくとも日々の悩みは減ります。

まずは医療機関で肩関節周囲炎(五十肩)という診断をもらいましょう。

本当の意味での【肩関節周囲炎】、つまり凍結肩(frozen shoulder)・癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)かどうかは、MRI検査が必要です。そこできちんと医師の診断をうけることは本当に大切です。ただ、最新の研究では癒着性関節包炎に癒着ではないということがわかってきたので名称が変わる可能性大です。

稀なケースとはいえ、骨や内臓の病気、または感染症等の可能性があるため必ずMRI検査を受診なさってください。

【肩関節周囲炎】の問題を解決するプログラムは医師による診断があってはじめてスタートします。

ここまでは鍼灸・マッサージをはじめとした徒手療法や運動療法などの保存療法について述べてまいりました。

稀にどうしても十分な改善効果が得られないケースがあります。

その場合、全身麻酔下による授動術(徒手的な関節包破断;マニピュレーション)・全身麻酔下による関節鏡下関節包解離術などが医療機関における選択肢となります。

とはいえ、これらは入院が必要であったり保険がきかず費用が高額であったりと“最後の手段”とされているというのが現実です。このような中、最近では手術が必要とされる症例に対してサイレント・マニピュレーション(神経ブロック下授動術)が行われています。

当院では、肩の痛みをすぐにでもなんとかしたい方向けにサイレントマニピュレーションではなく「運動器カテーテル」を推奨しています。ただしケースバイケースです。サイレント・マニピュレーションと運動器カテーテルについては次の記事で紹介します。

【最新医療】五十肩の治療法の1つ「サイレント・マニピュレーション」 ~五十肩の痛みに耐えられない方に知っておいてもらいたいこと

肩が痛い!腕が上げられない!!もしかして五十肩!?肩関節痛でお困りの方が知っておくべき知識

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


病院での四十肩・五十肩の治療法「サイレント・マニピュレーション」「運動器カテーテル治療」 ~五十肩の痛みに耐えられない方に知っておいてもらいたいこと

四十肩・五十肩といった呼び方がございますが、この記事では医療機関で肩関節周囲炎と診断される症状を「五十肩」という表記で統一しています。ご自身の年齢と症状から自己判断で五十肩と思い込むのは危険です。特に中高年に多いのが肩の「腱板断裂」。まず、整形外科できちんと検査を受けましょう。

 

この記事は、整形外科で【肩関節周囲炎】と診断されて治療方法についてお悩みの方、そしてこれから病院を受診される予定で【肩関節周囲炎】と診断された場合を想定されている方のための情報です。

五十肩治療法のひとつ「サイレント・マニピュレーション」とは?

サイレント・マニピュレーションは、城東整形外科(秋田県秋田市)診療部長の皆川洋至先生が考案された治療法です。以前から行われていた全身麻酔による手技を改良したものとのことです。

具体的にどのような治療法かといいますと、エコーを見ながら、肩関節支配の第5、第6頚神経根周囲に麻酔薬を注入(神経ブロック)した上で、上肢を動かし、硬くなった関節包を徒手的に破断させ、拘縮を解除する方法です。

・・・難しいですね。

要点は「全身麻酔による従来の方法よりも簡便でかつ安全に行える治療方法」だということです。

その具体的な施術内容は、痛くて動かせない肩へ局所麻酔を行い、動かせるようにし、徒手的に悪さをしている関節包を破壊する、という技です。

麻酔を行っているので痛みは無く、かつ日帰り手術で行えることから患者さんにかかる負担が大幅に軽減されるそうです。

以下のようなデータがあり、難治例には良い結果が出ています。

施術1週間後に、夜間痛、安静時痛、運動時痛がいずれも減少することを確認しています

肩関節の挙上角度、外旋角度も授動術直後から改善し、1週間後、1カ月後も維持されたようです。

この結果だけ見れば素晴らしい技術です。

凍結肩で苦しんでいる患者さんにとって、希望の光が見える治療方法です。

もし筆者自身が凍結肩(五十肩)になったとして、関節包を破断する治療を受けるかと問われれば・・・私は受けません。

というのは、内視鏡手術においてもですが、関節包を破断してしまうというマイナス点は無視できないためです。

「あなたは五十肩の痛みを経験したことが無いからそんなことが言えるんだ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

クスリはみな副作用があります。良い効果もあれば悪い効果もあります。手術も同様です。

日々、五十肩治療に携わっている筆者の「ひとつの考え方」として、以下を読み進めていただければ幸いです。

関節包を破断するということはどういうことなのか?

関節包とはどういうものなのでしょう。

関節包の詳しい説明は、関節包の構造と不動の変化 理学療法の評価と治療 より以下に引用させていただきます。

関節包とは

骨と骨の継ぎ目を関節と呼ぶがこの関節を補強しているものの一つに関節包がある。 関節可動域の制限は骨格筋の影響の他にこの関節包の影響も大きい。

では関節包とは一体どういったものなのだろうか。

関節包は内層と外層に分類され内層は疎性結合組織で滑膜という滑液を分泌する部分がある。滑液は摩擦の軽減と軟骨の影響を与えている。 また外層は密性結合組織で線維膜になる。自由神経終末のほかに、機械受容器であるルフィ二小体、パチニ小体、ゴルジ腱器官が存在する。これら内外層の主成分になるのはコラーゲンとなる。 関節が不動であると関節包はGAG、ヒアルロン酸、水分量の低下を生じる。それにより関節包は滑膜の癒着や線維化が生じ、可動域制限の原因となりうる。 関節包は関節にとっての機能を発揮する重要な部分である。不動による機能低下を生じないことと、不動を生じさせた場合は早期に可動性を改善するようアプローチをする必要性がある。

関節包の構造と不動の変化 理学療法の評価と治療

要点をまとめると、

1)関節包は、本来構造上不安定ではずれやすい肩関節が容易に脱臼しないように、関節を安定させるための重要な組織である

2)関節包には肩の角度やおかれている状況をキャッチして自動的に修正するためのセンサーがたくさん存在する

ということです。

つまり、脱臼しないであらゆる角度に自由自在に動く、痛みのない正常な肩関節において関節包は必要不可欠なものです。

関節包が無い、あるいは機能していない状況となれば肩関節は脱臼してしまう可能性が高まります。

また、センサーが機能していなければ動きのエラーを修正できず、その結果関節が正しく滑らかな動きができなくなり、周辺の組織へ刺激が生じ、それが長期化することにより骨の変形やインピンジメント症候群、広義の五十肩として二次的な痛みを抱えることとなりかねません。

極論、破断した関節包を縫合する手術は可能ですが、センサーを一度破壊してしまうとIPS細胞が実用化されないかぎり二度と復活させることはできません。

一説によると「一般的に40歳前であれば関節包が破れると肩脱臼が生じやすくなるが、40歳を超えると筋肉が硬くなり、筋肉の固さに守られるようになるので、関節包を破断しても肩脱臼は生じにくくなる」とのことですが、筋肉(腱板=インナーマッスル)が硬くなることによっても正常な関節運動は不可能となってしまいます。

また、正常な関節動作にはセンサーが誤作動をキャッチして修正する機能が不可欠です。これが機能していなければ、たとえ五十肩の症状がなくなったとしても間違った動作を修正できていない状態です。知らず知らずのうちにダメージが蓄積されていきます。やがて再発を引き起こすトリガーになる可能性があります。

以上のことから、関節包を破断することには中~長期的なリスクも伴う というということを覚悟する必要があります。(関節包の機能については下記文献1を参考とさせていただきました)

そして、以下のような指摘もあります。

獨協医大整形外科教授の玉井和哉氏はサイレント・マニピュレーションについて、「早く治すことができ、かつ安全な治療法であれば、素晴らしいと思う」と前置きした上で、「ただし、現時点ではエビデンスは不足しており、評価できない」と語る。

また、炎症が強い時期に関節包を破断することの安全性は不明という。玉井氏によると、授動術はあくまで、疼痛が弱まり拘縮が進行した慢性期の治療との認識だ。

“五十肩”治療に新風 凍結肩を20分程度の外来治療で治す 神経ブロック下授動術で患者のQOLを改善 日経メディカル

一般的に五十肩(=凍結肩=癒着性関節包炎)は放置していても、とりあえずは治るとされています。これは単純に痛みが引く=治る、という誤った認識が一般的になっているためです。治療する側・薬をつくる側もそれにあわせてしまっています。

それでは「今の痛み・動きにくさを何とかしてほしい」という患者さんのニーズには応えることはできません。特に「“今ある痛み”を何とかしたい!」というのが患者さんの一番の願いでしょう。

痛みは患者さんの生活を左右します。慢性的な痛みにより、うつなど精神症状へつながることもしばしばあります。

サイレント・マニピュレーションはどうにもならない痛みに苦しむ患者さんを少しでも救いたい、一刻も早く痛みから解放したい、という信念から生まれた技術だと思います。

考え方は様々ではありますが、当院の考えとしては

  • 五十肩に対しての治療は「今ある痛みをどうにかする」ということももちろん大切でだが、関節包を破壊する治療にはそれなりのリスクも存在するということを受ける側が納得するよう説明する必要がある。
  • 「どうにもならない痛み」となる前にケアをきちんと行っていれば、100%ではないが予防・悪化防止にはなる。常日頃から首・肩・肩甲骨のコンデションを整えておくことが大切である。
  • マニュアル的な治療を続けて改善しなくても、病期に合わせた適切な治療を行うことにより病状が急速に良い方向へ転じることがしばしばある。関節包を破壊する治療は本当に最終手段である。

このように考えております。

五十肩の痛みが消えた!!「運動器カテーテル治療」

難治性の肘、肩、膝などの関節痛に対して有効とされる画期的な方法で「運動器カテーテル治療」があります。OKUNOクリニックの奥野先生が考案した「血管」に着目した新しい方法です。近い将来、痛みの治療のスタンダードになると期待しています。

痛みと血管の関係については、当院でも注目しており治療にも取り入れています。

詳しくは別記事にしてますので是非そちらも読んでいただけたら幸いです。

モヤモヤ血管(新生血管)について

五十肩の治療は、痛みをとることと正常に肩関節が動くようにすることの2つが必要です。当院でも、運動器カテーテル治療を受けた方の治療を行うことがありますが、治療がスピードアップし想定よりも早く完治までたどり着けました。

五十肩の痛みに対して万能ではない

ただ、すべての方に対して有効だったわけではございません。運動器カテーテル治療の効果が全くなかったので来院されたというケースもございました。当たり前のことですがモヤモヤ血管の存在が全てではありません。

冒頭でも申し上げましたとおり、そもそも本当に五十肩なのか?という問題があります。五十肩だと思い込み痛みを取る治療を受けても五十肩は当然治りません。

当院では、モヤモヤ血管が主な原因と予想され、早期解決を望まれる方に対してのみ運動器カテーテル治療を提案させていただいております。ただ、五十肩治療は運動療法が基本です。痛くて何もできない、それを解決するひとつの手段が運動器カテーテル治療であり、痛みをとった後が五十肩治療の本番です。

五十肩の治療にはどうしても時間・回数が必要です。五十肩のつらい症状をまずなんとかするという治療のファーストステップがクリアできれば運動療法は捗ります。当院では、より効率のよい運動療法としてパワープレートを使った治療を取り入れています。

五十肩の治療として考えた時、鍼灸・マッサージは何に有効なのか?

当ブログの趣旨としまして、鍼灸・マッサージを啓蒙、広告することを目的としておりません。

肩こり・首こり含め、五十肩は整形外科に行っても良くならないから鍼灸・マッサージを行うという方は多いです。だからといって全て鍼灸・マッサージが適応となり、効果が期待できるというわけではありません。

こと、五十肩に対する鍼灸・マッサージは、急性期の終盤以降の「何もしなくても痛い・痛くて夜起きてしまうという状態はやわらいできたが、まだ痛くて動かすことができない」「リハビリをしても一向に良くならない」「骨に異常がないのに肩が痛い」という状態の方に対して有効な手段であるといえます。

東洋医学は西洋医学で不可能なことを可能にするというのは大きな間違い

鍼灸・マッサージというと東洋医学と認識されると思います。

一般的には「東洋医学は西洋医学で不可能とされたことを解決できる」と解釈されることが多いですが、これは大きな間違いです。

西洋医学的な検査値として出ないもの・出にくいもの(筋肉・神経など)に対してアプローチが可能ということを拡大解釈しているにすぎません。

100%完璧な治療は存在しません。患者さんはメリット、デメリットふまえて十分に考慮して治療を選択する必要があるのではないでしょうか。偏りのない情報を得て自ら判断する必要がありそうです。

二週間以上続く原因がよくわからない肩の痛みにお悩みの場合には、広義の五十肩か狭義の五十肩か、はたまた別なのか、しっかりと鑑別できる専門家へ相談するのがベストです。

 

肩こりラボでの四十肩・五十肩の治療につきまして

 

 

参考文献

[文献1] 肩 関節 の安 定 化 機構 https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/15/1/15_13/_pdf

[文献2]五十肩の管理:系統的レビューと意思決定分析モデルhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedhealth/PMH0047042/

参考URL

日経BP

http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20130813/361396/?rt=nocnt

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩が痛い!腕が上げられない!!もしかして五十肩!?肩関節痛でお困りの方が知っておくべき知識

肩が痛くて辛い、思うように動かすことができない、肩が痛くて眠れない・・・五十肩、四十肩で悩まれている方は非常に多いです。辛さに波があるため、病院へ行かずに放置してしまっているのも仕方ないことです。

そして「つらい五十肩の痛みに・・・」というキャッチコピーのついたクスリや湿布などが手軽に手に入りますから、その場しのぎしやすいのも事実。

病院に行こうかなと周りの人に相談しても「五十肩なんて病院行っても治らないよ」と言われる確率は高いでしょう。

病院にいっても“とりあえず痛み止めと湿布”、“とりあえず電気を流す”といった「とりあえずの処置」しかされなかった・・・肩こりラボに来院される方とのカウンセリングでよく出てくる話です。

さらに五十肩というネーミングのせいで、年齢には勝てない・・・と諦めてしまう気持ちがどうしてもあるでしょう。

ですが、あなたの肩の痛みは本当に五十肩なのでしょうか?自己判断は禁物です!病院でそう言われた方も一度きちんと五十肩に関する正しい情報を知っていただきたいのです。

率直な疑問「五十肩(四十肩)って治るの?」

はっきりと申し上げますが、五十肩・四十肩はあきらめてしまうのは勿体無いです。

当院は、肩こり・首こりの専門院ですが「五十肩」の方が首肩こりよりも簡単です。

簡単といっても肩関節痛の根本的な改善はどうしても時間がかかりますし難しい処置なのですが、慢性的な首肩こりと比較した場合です。

その理由は、肩こりや首こりは、フィジカル面の問題だけでなく精神的ストレスといったメンタル面による影響を大きく受けますが五十肩・四十肩といった肩関節痛は、首肩こりと違ってフィジカル面の問題のみです。

原因と状態に対する対処方法が明確なのです。

それなら、なぜ病院にいっても治らない?

当然疑問に思われるはずです。

あなたのその疑問を解決するために、まず五十肩ってつまり何なの?というところから解説していきます。

五十肩と肩こりは全く別物

五十肩といえば肩の痛み。肩が凝って痛みを感じることがあるため、肩こりと五十肩(四十肩)を混同してしまいがちですが、完全に別物です。根本的に異なります。

肩こりは首〜肩の筋肉の問題によって起こる症状で、五十肩は筋肉ではなく「肩関節の問題」によって起こります。

筋肉と関節の違いなのです。

肩の関節の痛み全般を肩関節痛といいますが、五十肩とは肩関節痛の1つでしかない

肩こりが原因で肩周辺に痛みがある場合、特に40代・50代でしたら、四十肩・五十肩と勘違いしてしまうことは仕方のないことです。

40代・50代の人で肩の関節周辺が痛い=40肩50肩とは限りません。

肩の関節の痛み、いわゆる肩関節痛という症状にはいろいろあり、40肩50肩というのは、その中のひとつでしかないのです。

ですから「自分は四十肩かも」という自己判断で、四十肩五十肩に関する情報を調べて市販薬を服用したり、五十肩に効くとされるセルフケア・運動を行ってしまうのは危険なのです。医療機関で診てもらわずにいきなり整体などのお店に通うと余計に症状が悪化することがあります。

大げさに不安を煽りたいわけではありません。生活に支障をきたす後遺症が残ってしまうということが現実にあります。

五十肩に関する情報がバラバラで何が本当かわからない!

五十肩について、誤った情報が蔓延しています。そして非常に残念なことですが、治療する側も勘違いしていケースが少なくありません。なんでもすぐ調べられる時代だからこそ、リスクも大きいわけで、五十肩を正しく理解していただく必要性を心の底から感じています。

五十肩はきちんと適切な処置をすれば必ずよくなるのですが、この適切な処置の選び方が難しいのです。

様々な五十肩をみてきましたが、他で間違った処置をされてしまったことでより困難になってしまうケースが本当に多いのです。

ですから一人でも多くの方に、まず正確な五十肩情報を知っていただきたいのです。

五十肩とは、そもそもどういう症状?

五十肩という言葉は、歴史をさかのぼると江戸時代から広く使われていたようです。当時の俗語や諺などを収集した「俚諺集覧」という書物には「五十腕」「五十肩」の記載が残されており、50歳くらいになると腕や肩が痛むがやがて痛みが治まる、これは長く生きていることの証となる病と捉えられていたようです。長く生きていると現在でも五十肩と言えば誰でも分かりますが、昔は診断技術がないため、50歳くらいになって肩が痛くなり、そのうち自然に良くなれば全て五十肩と呼んでいました。これを広義の五十肩といいます。

ちなみに四十肩とは単に40歳くらいで五十肩様の症状が出た場合にそう呼ぶだけで中身は同じです。四十肩と五十肩で違いはありません。60代であれば六十肩、30代であれば三十肩です。つまり、五十肩という名称そのものが曖昧であり、その名前と症状が一致していないという意味のない言葉ともいえます。

五十肩、江戸時代、肩痛施術の様子
引用:http://samurai-kid.at.webry.info/theme/4f782261ee.html

昔から人々を悩ませてきている五十肩ですが、医療の進歩により、現在では肩の痛みの解明が進みました。従来原因不明だった肩の痛み。肩が痛いという症状は同じでも、実際には肩の痛みを引き起こす疾患には多くの種類があるのです。

例えば、烏口突起炎、腱板炎、腱板断裂、肩峰下滑液包炎、石灰性腱炎、上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎・・・と数多く存在します。なお、これらの診断を下すことができるのは医師のみです。整体師、鍼灸師、マッサージ師、柔道整復師、トレーナーは診断することはできません。

整形外科で原因不明の場合のみが本当の意味での五十肩

厳密には、整形外科的にきちんと解明されている数多くの肩の疾患を除外した上で明らかな原因がない一次性の肩痛と可動域制限を「五十肩」と診断します。これが本当の意味での五十肩です。

本当の意味での五十肩とはどういうことかといいますと、世間一般的に言われる五十肩とは、厳密には五十肩ではない疾患も含まれているのです。医師が診断する「五十肩」が正確な五十肩(狭義)であり、誰もがしっている五十肩という名称は肩に関する様々な症状をまとめて呼ばれている(広義)のです。

事実、中高年に生じる肩の痛みを、江戸時代と同様の広い意味で五十肩と理解している方がほとんどです。これは仕方のないことで、医療従事者であっても、五十肩という言葉を狭義の意味で使っている人の方が少ないのです。

医学的に正しい五十肩というのは「狭義の五十肩」、世間一般で言われる五十肩は「広義の五十肩」であり、広義の五十肩には狭義の五十肩も含まれているということです。

狭義の五十肩とは、広義の五十肩に含まれる筋肉や骨、靭帯由来の他の疾患が除外されたうえで、関節包の肥厚、短縮、線維化、血管新生、軟骨分化、滑膜炎など、肩関節構成体である関節包そのものに問題が生じていることを意味します。

病院で「五十肩ですね」という診断をされるということは「原因がよくわかりませんので様子みるしかないですね」を意味します。

原因不明の肩の痛みをとりあえず五十肩と診断されてしまうことも多いわけですから、本当の意味での五十肩でなくても痛み止め・ブロック注射で痛みがおさまり、五十肩がなおったと勘違いされるケースもあります。ネット上の○○したら五十肩がなおった、という口コミなどは実は五十肩だったのかどうかもあやふやなのです。これは口コミをした人が悪いのではなく、実際に五十肩でないのに五十肩だと決めつけてしまっている医療機関側の問題なのです。

痛くなければ動かせるのであれば、それは五十肩ではない

肩が痛い・痛くて動かせない=五十肩、とお思いの方は多いため「五十肩をなおす=痛み止め」と勘違いされている人がほとんどです。痛くて動かせない→痛みがなくなれば動く、これは厳密には五十肩ではありません。ふつうの肩痛です。

非常にややこしい話なのですが、病院で「五十肩」と診断されても、それは広義の意味での五十肩なのか、狭義の意味での五十肩なのか、が伝えられない上に、病院側もそこの区別も曖昧にしているケースが多いのです。わかりやすい例でいいますと、レントゲンは骨しか写りません。骨の問題を除外しただけでは広義の五十肩です。肩関節の問題なのか、肩関節周囲の筋肉の問題なのか、そうなってくるとMRI検査が必要です。MRIの検査ができる整形外科は限られてきますがレントゲンだけでは本当に五十肩かどうかわかりません。レントゲンの検査だけで五十肩という診断は「原因不明なので、とりあえず五十肩」を意味している、ということを覚えておいて下さい。

英語で五十肩のことをなんていう?

国際的に普及しているのはfrozen shoulderです。和訳は「凍結肩」となります。またadhesive capsulitis of the shoulderとも言います。こちらの和訳は「癒着性肩関節包炎」です。五十肩はそもそもなぜ発症するのか?という問題は国際的にもはっきりと分かっておらず研究者によって呼び方が違うのです。これら2つは同じものと認識していただいて構いません。一方、日本で保険病名として認められているのは「肩関節周囲炎」であり、五十肩も凍結肩も保険病名としては認められていません。病院で「肩関節周囲炎ですね。」と診断され、それって何ですか?ときくと「いわゆる五十肩です。」と言われるはずです。これが多くの誤解を招いている理由かもしれません。五十肩=肩関節周囲炎、と認識される方がいて当然です。

五十肩、肩関節周囲炎、腱板炎・腱板断裂・石灰性腱炎・上腕二頭筋長頭腱炎・変形性関節症
引用:http://w-diet.com/50kata10.html

難しい言葉の羅列で恐縮ですが、大事なことなので繰り返し申し上げますが、広義の五十肩とは、関節包の障害(狭義の五十肩)を含み、医学的には五十肩・四十肩ではない烏口突起炎、腱板炎・腱板断裂・石灰性腱炎・上腕二頭筋長頭腱炎・頚椎症・変形性関節症など多くの疾患が含まれています。

要するに今まで多くの方が用いてきた“広義の五十肩”とは肩関節をとりまく様々な痛みの総称であり、意味としてはこちらを肩関節周囲炎というのが正しいかもしれません。

用語がまぎらわしいので再度まとめます

狭義の五十肩

肩関節の関節包の問題。五十肩とは正しくはこの病態を意味する。

凍結肩

狭義の五十肩のこと。(英語:frozen shoulder)

癒着性関節包炎

凍結肩と同じく狭義の五十肩のこと。(英語:adhesive capsulitis)

最新の研究では、癒着ではなかったことがわかってきました。

広義の五十肩

肩関節をとりまく様々な痛みの総称。烏口突起炎、腱板炎・腱板断裂・石灰性腱炎・上腕二頭筋長頭腱炎・頚椎症・変形性関節症など多くの疾患が含まれています。多くの方が云ういわゆる五十肩。肩関節ではなく筋肉の痛みの場合でも、五十肩と認識されてしまうことも。

肩関節周囲炎

広義の五十肩のこと。保険病名ではこの名称が正式名称。実際は凍結肩本来の病態と合致していないという矛盾がある。

治療は医師による診断が確定して、初めて開始されます。

実際は、何をしても効果が出ず、一向に痛みが引かないけれども、一定期間すると自然と痛みが緩和されていくのが五十肩(凍結肩・癒着性関節包炎)の特徴です。

しかし、だからといって軽率に(広義の)五十肩と判断して、電気を流しておきましょう・動かさず様子をみましょう・薬のんで様子をみましょう、といった適切とはいえない「とりあえず」な方法では治るものも決して治りません。ですが、それが健康保険内でできることなのです。

肩の痛みが生じている原因が何なのか、原因をしっかりと見極めた上でそれにあわせた適切な処置を行う必要があります。

このような背景があるため、医療従事者はもちろんのこと、医療を受ける側も用語・意味をお互い共通認識としてもつ必要があります。

以下文章では、五十肩=狭義の五十肩=凍結肩=癒着性関節包炎とさせていただきます。

 

五十肩、四十肩になる原因についてご説明します。

五十肩発症のメカニズムはまだ解明されていない

狭義の五十肩になる原因は様々な説があり、いまだに原因不明とされています。歳を重ねると足腰が弱くなる、これは生物学的に時間の経過とともに体に起こる変化、いわゆる老化であり避けられないことです。狭義の五十肩は関節包の変性ですから、関節の老化によって引き起こされるケースは間違いないなくあります。ですが、20代で発症してしまう人もいます。老化以外にも確実に原因はあります。

発症のメカニズムは不明でも、発症以前の状態に戻すことはできまる

本当の意味でも五十肩の発症のメカニズムは不明でも、肩関節周辺の痛み、一般的な意味でも五十肩が発症しやすい条件・原因はわかっています。

肩関節周辺の痛みは背景に筋肉バランスの乱れや不合理な動作により、一定部位に負荷がかかることが蓄積され生じることが多いです。筋肉の量が少ないのに関節を酷使してしまっている、また、もともと運動をやっていたのにやめてから筋肉が落ちて発症といったことは少なくありません。

インピンジメント症候群や肩関節の不安定性(instability)は、しばしばそのきっかけとなります。インピンジメント症候群とは、骨と骨が衝突しあってその間に様々な組織が挟まって痛みを引き起こす状態です。

五十肩、肩関節周囲炎、衝突、インピンジメント症候群
出典:http://www4.ocn.ne.jp/~miyanoue/shoul_pain.html

このように肩関節をとりまく筋肉の状態、負担のかかる不合理な使い方、インピンジメント症候群、肩関節の不安定性(instability)の状態が長期に持続することで、関節包のコンディションが低下し変性へと向かう可能性は高まります。

首・肩・背中は筋肉の連結が密になっているため、慢性的な肩こり・首こりの方は肩甲骨や肩関節をとりまく筋肉も硬くなる傾向にあります。(”傾向”としたのは、肩こり・首こりは筋肉の硬くなくても生じる場合があるからです)

首や肩だけでなく肩関節周囲の血流も悪くなり、関節包など肩を構成する組織へ十分な栄養がいかずに加齢という要因だけでなく、変性するのが促されてしまうということが推測できます。

このように五十肩によって、肩周辺にも影響が出るようなケースだけでなく、肩関節周辺の痛みから始まって五十肩になってしまうことも考えられ、それが発症する年齢を早めてしまうと思われます。

慢性的な肩こり・首こりは五十肩の発症を誘発する可能性があります。首肩こり+五十肩を二つ抱えますと相当つらいので、首肩こりでお悩みの方はできるだけ早く治療をはじめてほしいと思います。なお首こり・肩こりの治療は早い段階ではじめるにこしたことはありません。

次は五十肩を細かく分析して、みなさんが知りたい具体的な五十肩へのアプローチ方法を説明いたします。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。