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息苦しい・呼吸がしづらい・呼吸が浅い等の自覚症状がマッサージと運動療法で解消したケース|ケースレポート

概要

K様 / 東京都在住 / 50歳 / 男性 / 自営業

症状

・息苦しい

・呼吸がしづらい

・呼吸が浅い

状態

特に心当たりはないが、1年程前から、ふとした時に息苦しさや呼吸のしづらさを自覚するようになった。

だんだんとひどくなってきたので、循環器内科と呼吸器内科を受診し、心電図、レントゲン、肺機能検査を受けたが心臓や肺に異常はみられなかった。

以前から、慢性的に首肩こりや頭痛があり、今回の症状でも鍼やマッサージを受けてみたところ、施術を受けた直後にすぐにラクになるということはなかったが、3ヶ月ほどするといつの間にか息苦しさは気にならなくなっていた。

 

数ヶ月間は比較的良い状態が続いたが、2ヶ月前からまた同じ様な症状が出始め、再度医療機関を受診して検査を受けたが、今回も特に異常はみうけられなかったため、当院への来院に至った。

来院時点では常に呼吸が浅くなっている自覚があり、息苦しさを感じている状態。深呼吸すると少し楽になる。そのため、意識的に深呼吸を多く行なってしまう。

 

息苦しさに影響する要因に心当たりはない。仕事では、主にデスクワークや車の運転など、長時間座っている事が多い。

ジムで週2回、筋力強化のためのトレーニングをしている。

見立て

まず医療機関で精密検査を2度行っていたことから、命に関わる呼吸器や循環器の疾患である可能性が低いことを前提として診察を行った。

 

呼吸のメカニズムの重要な要素として、胸郭の可動性が挙げられる。

※胸郭とは胸椎、肋骨、胸骨で構成されたかご状の骨格。胸郭の内部には胸腔があり、肺や気管、食道、心臓などを収めている。

呼吸では、胸郭が大きく広がることで空気が肺に到達するメカニズムとなっている。胸郭が可動性に富んでおり、拡大することができなければ、肺が空気を取り込んで拡大することが困難となってしまう。

 

K様のお身体を診察したところ、胸郭に付着している筋肉(胸鎖乳突筋、大胸筋、広背筋、腹筋群など)の緊張が著しく高くなっていた。また、頚部の緊張も非常に高い。姿勢は、猫背で、いわゆる「巻き肩」の状態となっており、筋緊張と姿勢の観点から、胸郭が広がりにくい状態となっていた。

 

仕事で長時間の座ることが多いとのことで、不良姿勢により胸郭が可動しにくくなっていることが、自覚的な「息苦しさ」や「呼吸の浅さ」につながっていると考えた。

まずは猫背や巻き肩の原因となってしまっている胸郭周囲の筋緊張ならびに関節可動域をマッサージやストレッチで緩め、胸郭が拡大しやすい状態になるようにした。

そして、正しい座り姿勢を習得するために体幹筋(主に上背部の脊柱起立筋と腹横筋)の筋力強化と、体の使い方を練習する方針とした。

 

一方で、当該症状は、精神的ストレスが起因することもある。(内臓疾患が無いということが確認されているため)

仕事でのストレスやプレッシャー、そして「息苦しい」という症状のつらさ自体が精神的ストレスとなり、さらに息苦しさや呼吸の浅さが気になってしまうという悪循環が起こっている可能性もあると考えた。

そのため治療では、肉体だけでなく心理的なリラクセーションにも重きを置き、処置方法として、K様が心理的に心地よいと感じる治療を優先的に行うことした。このような理由から、鍼ではなく、ほぐす手段は、マッサージとストレッチを主体に処置を行なった。

また、緊張を緩和し可動性を改善させたいターゲット部位は胸郭周囲だが、自律神経のバランス調整のためにも、上肢や下肢へのアプローチも行なった。

 

治療

1回目の治療

猫背や巻き肩など、不良姿勢や胸郭の可動性を制限している要因の解除ため、胸鎖乳突筋、大胸筋、広背筋、脊柱起立筋を中心にマッサージで緩めた。

上肢や下肢への刺激は副交感神経を有意にするため、体幹だけでなく、手や足もほぐした。

治療直後のK様の感想として「呼吸のしづらさ」の目立った改善効果は特に実感できなかった。

セルフケアとして、胸椎や胸郭の可動性を上げるストレッチを毎日セルフケアで行っていただいた。

2回目の治療

初回から2週間後のご来院。

初回よりは少し軽減しているが、依然として頚部から上部体幹の筋緊張がとても高い状態となっている。「息苦しい」「呼吸がしづらい」「呼吸が浅い」といって症状も特に変化はない。

処置の内容は、基本方針は初回と同じとして、緊張の高い部位へ処置を行う時間を長くし、それに加えて、頭部と顔面のマッサージを行なった。セルフケアも、同様のメニューを継続とした。

初回同様、直後の改善効果は特に無し。

3回目の治療

2週間後のご来院。治療を行って1ヶ月ほど経過。

客観的な視点では、徐々に胸椎の可動性が出始めた。

呼吸もいつの間にかあまり苦しいと感じる頻度が減るようになった。

良い姿勢を長時間キープするために必要な脊柱起立筋のトレーニングも行いつつ、全身の筋緊張を緩めていった。

4回目の治療

2週間後のご来院。

たまに深呼吸したいと思うことはあるが、以前のように「息苦しい」「呼吸しづらい」「呼吸が浅い」ということは無くなった。

身体所見としては、巻き肩と猫背姿勢はほぼ改善。

胸椎、胸郭の可動性はまだ改善の余地はあったが、日常生活に支障をきたさない状態となったため、治療はゴールとなった。

総治療回数は4回。治療期間は約1ヶ月半。

コメント

呼吸が苦しいなどの症状に関わらず、治療をする上での大前提として、現在起こっている症状が、病気が元になっているか(症候性)か、そうでないか(本態性)かの見極めが重要となります。

症候性とは、医学的に診断のつく疾患など明確な原因が背景にあり、その疾患の一症状として、当該症状が出ているという状態です。

症候性の症状の改善のためには、その原因となっている疾患を専門の医療機関で治療する必要があります。一般的に、呼吸が苦しいというと、呼吸器系、循環器系、血液系などの疾患が背景に隠れている可能性があります。

 

一方、本態性とは、症候性のように症状を引き起こしている明確な原因が特定できないもの(病院では異常がないとされるもの)を指します。

たとえば、肩こりや首こりの原因は様々ありますが、病気が元になっているわけではなく、筋肉や筋膜の過緊張、体の使い方不良、姿勢不良、自律神経の不調、精神的ストレスなどによって引き起こされる場合は本態性の肩こり・首こりとなります。

 

当院で治療の適応となるのは、あくまでも本態性の症状となります。

K様は来院前に循環器内科、呼吸器内科の診察を少なくとも2回受けており、検査に異常がなく、症候性の可能性が低いことから、姿勢不良やストレスなどから呼吸に影響を与えていると見立てて、治療を行いました。

そしてその息苦しさを招いていた原因として、胸郭の広がりにくさなど、筋肉や関節の硬さが原因の多くを占めていたため、マッサージや運動療法によって早期の改善に至りました。

 

自覚的に症候性の可能性が低いと感じている場合でも、症候性の可能性を否定するという意味で、病院への受診はとても重要です。万が一、症候性で、なんらかの病気のサインだった場合、命に関わることがあります。

「息苦しい」「呼吸しづらい」「呼吸が浅い」というような症状がある方は、自己判断せず、まずは必ず医療機関を受診するようにしましょう。

 

 

【セルフケア方法をお探しの方へ】

医療機関を受診して異常が無いことを確認したうえで対処法を探しているという方のために、こちらで肩甲骨や胸郭の動きを改善するストレッチをご紹介しています。

このストレッチは治療の中に組み込むこともございます。

必ず痛みや違和感のない範囲で行ってください。

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首こりと首の痛みによって不眠になり日常生活に支障をきたしてしまったケース|ケースレポート

概要

首こりと首の痛みが慢性化して、つらさのあまり、寝付きが悪い、眠りが浅い、寝ても疲れがとれない、頻繁に起きてしまうといった睡眠障害に陥ってしまい、心身ともに疲弊してしまった。

S様 / 東京都在住 / 29歳 / 女性 / 会社員

症状

首こり
首の痛み

状態

社会人になってから、首こりを自覚するようになった。仕事の忙しさと比例して、首の凝りが気になる状態だったが、デスクワークなので仕方がないと思っていた。首が凝っても、一晩休めば治るので、特に生活に支障はなかった。

ところが、一年ほど前に転職して仕事がかわった頃から急激にひどくなり、痛みも出るようになってしまった。これまでであれば 首が凝っても一晩寝れば回復していたが、最近は体を休めても回復しない。

つらい状態が続き、痛みも出てしまっていたため、整形外科を受診した。特に異常は見つからず、ストレートネックだといわれ、湿布と痛み止めを処方された。ところが鎮痛剤を飲んでも楽にならなかった。知人に鍼と整体を紹介されて何度か行ったが、効果を感じることができなかった。

首がつらくて、寝付けないこともある。眠れたとしても、何度も起きてしまったり、寝ても疲れがとれない状態になり、日中ぼーっとするようにもなってしまい、今が最もひどい状態。仕事に集中できなくなり、本格的に日常生活に支障をきたしてしまうようになってしまったので治療にきた。

見立て

首を触診したところ、表層の僧帽筋だけでなく、深層の半棘筋や板状筋まで過緊張状態にあることがわかった。首の緊張が最も強いが、頭から腰まで上半身全体の筋肉が硬くなってしまっていた。上下に首を動かすと、痛みが出る。(上を向く動作、下を向く動作共に痛みが出るためうがいができない状態)

整形外科で診察を受けて、骨や椎間板に異常や、病気がない事が確認されているため、筋肉や筋膜による痛み(筋筋膜性疼痛症候群:Myofascial Pain Syndrome:MPS)や、頚椎の機能不全(関節の動きの不調)の状態と推測した。

姿勢にも問題が見受けられた。立位だと反り腰となり、頭が前方に出ていた。座位では骨盤が後傾し、背中が丸まっており、猫背の状態となっていた。座位、立位いずれの場合も、頭が体よりも前方に出てしまっていた。丸まっている姿勢でパソコン作業をすることで首に負担がかかるが、立位姿勢も崩れているため、仕事以外の時間も首に負担がかかっており、回復できなくなってしまっていると考えられた。

首に負担をかけている要因として体幹部の機能不全が考えられるため、体幹に着目してさらに分析する。まず、背中が丸まっている(胸椎の後弯増強)ことから、胸郭の動きが少なくなり、胸式呼吸ができない状態となっていた。このため、頭が前方に出ている姿勢による首の筋肉に負担がかっていることに加えて、呼吸をすることでも首を力ませてしまっていた。

また、長時間のパソコン作業で胸や腕の緊張が強く、巻き肩になってしまっているため、仰向けで寝ても肩が浮いてしまう状態だった。その結果、就寝中も首や肩の緊張が抜けない状態となり、寝ても凝ってしまうことになる。首肩の緊張が最も高いが、手や足、頭を含める全身の筋肉の緊張が高まってしまっていた。

姿勢が崩れてしまう要因は、股関節の柔軟性不足、大殿筋・腹横筋・脊柱起立筋の筋力不足が主な要因と考えられる。筋力が低いため、身体造りの期間が長くかかることが予想される。セルフケアがどれだけできるかによってゴールまでの期間や回数がかわるだろう。

治療

首を中心に、全身の筋緊張を緩和するためにマッサージをしたが、首の緊張だけがどうしても緩和されなかった。そのため、深層筋に直接刺激を与えるために、3D鍼で、僧帽筋、半棘筋、板状筋、肩甲挙筋にアプローチをした。

深層筋への鍼が奏功し、1回で首の痛みが約半分(首痛のNRS 10→5)になり、3回の治療終了時点で首の動きに伴う痛みが無くなった(首痛のNRS 0)。
※NRS:Numerical Rating Scale 痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

痛みが改善したので、残るは凝りの症状緩和となる。凝りは、治療後は楽になるが、時間の経過と共につらくなってしまう状態なので、体幹のコンディション改善と、日常生活の姿勢改善が必要となる。

初診時からマッサージに加えて、ストレッチを続けていることから、股関節の柔軟性は概ね良好になったので、今後は、筋力強化が課題となる。セルフケアを筋トレをメインとした。大殿筋強化はクラムシェルとヒップリフト、腹横筋強化は四つ這いドローイン、脊柱起立筋強化は肘つき、全体のためにスクワット、を行っていただいた。

鍼、マッサージ、ストレッチにて筋肉をほぐして症状を緩和するのと、関節可動域の改善を図り、筋トレで姿勢を保つための筋力と、正しい体の使い方の体得する治療を行った。

計7回の治療で、首の痛みと凝りがほぼ全て解消されて[首痛のNRS 0、首こりのNRS 1]、2週間経っても良い状態をキープできるようになった。その後、3週、4週と期間をあけても具合が悪くなることはなく、セルフケアも習慣化できていたため計9回の治療でゴールとなった。

コメント

首こりが慢性化し、ひどくなり、睡眠障害にまで発展してしまったケースです。一年前に、急激に悪化しましたが、それより以前から首や肩の筋肉に負担がかかりやすいお体であったたと推測でき、仕事が変わる前からの蓄積はあったと考えらます。

肩こりラボでは、肩こりという症状を客観的に診て、治療をするために、筋肉が硬いだけでは凝りではなく、症状を自覚してはじめて「凝り」である、と定義しています。

触診状の筋肉の硬さと症状の程度には、必ずしも相関関係はありませんが、硬くなっているということは、血行障害が生じやすく、筋肉や筋膜のコンディションが低下しやすい状況といえます。慢性的に筋肉の緊張が高く、硬くなっているという基盤があり、その上に心身のストレスや負担が加わることで、突如発症したり、悪化するという例は珍しくありません。本件もこのようなパターンであったと考えられます。

以前は自覚症状は強くは無かったとはいえ、コンディションが良いとはいえない状況のなか、仕事がかわって慣れない環境や作業により心身の負担が増えて、急に症状が顕在化したのではないかと考えらます。

痛み止めが効かないほど、強い症状が出ていましたが、対症療法としての3D鍼が著効し、早期に症状が解消しました。加えて、原因療法としてのセルフケアにもしっかりと取り組んでくださったおかげで、当初の予想よりも早くゴールに至ることができました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こり・肩甲骨こりが慢性化して自律神経の乱れやイライラなどの精神症状をきたしたケース|ケースレポート

概要

肩こりと肩甲骨こりが、一時しのぎを続けるうちに慢性化し、日常生活に支障が出るほどになってしまった。

K様 / 東京都在住 / 38歳 / 男性 / システムエンジニア

症状

・重度の肩こり、肩甲骨こり
・怒りっぽい、イライラなどの精神症状

状態

学生時代から首や肩の凝りを自覚していたが、就職して、デスクワークの時間が長くなり、ひどくなってきた。つらくなると湿布や貼付型磁気治療器を貼り、どうしてもつらくなるとマッサージにいってほぐすということを続けてきた。(貼付型磁気治療器をと使うとラクにはなる)

マッサージの頻度は、はじめは月に1回程だったが、次第に間隔が短くなってきて、数年前からは週に1〜2回は行くようになってしまった。というよりも正確には、週に1〜2回通わないと仕事に集中できない状態だった。以前は、マッサージに行ってほぐしてもらうとしばらくは楽になっていたが、ここのところは、いくら揉んでも、押されているその時に気持ちが良いだけで、楽にならならないし改善もしない。

病院で診てもらったところ、特に異常はなく、ストレートネックであることを指摘されるだけで、解決法が見出されなかった。痛み止めと湿布を処方されて様子をみるように言われた。

効果的であるといわれている鍼、注射、ハイドロリリースなど様々な治療を受けても、凝りが緩和されるのはその日だけで、翌日には戻ってしまう。治療を受けてもすぐに戻ってしまうため、最近では、もう通うのをやめてしまった。

最近特につらいのは肩甲骨の内側の凝りで、つらくて気になってしまい仕事で座っていられないため、湿布やピップエレキバンを毎日貼らざるを得ず、時間があればテニスボールや柱などで肩甲骨の内側をゴリゴリするのが癖になってしまっている。

以前は、デスクワークの時間が長くなるにつれて凝りがつらくなっていたが、今は常に凝りがある状態。凝りが気になって寝付けないこともあるし、寝起きからひどく凝っていることもある。常時気になってしまうため、仕事に集中できず、ミスを繰り返してしまっている。ちょっとのことですぐにカッとなってしまい、家族にも申し訳ない。申し訳ないと思いつつも感情をおさえられない。

この先、一生このままなのか、と思うと気が滅入りそうになる。日常生活に支障をきたしてしまっていることから、治るものなら治したいと思って治療にきた。

見立て

まず、医療機関で異常がないことが確認されており、他の疾患が想定される症状ならびに所見が見受けられなかったため、病気が元になっている「肩こり・肩甲骨こり」ではないということを前提とした。

触診にて調べたところ、自覚症状と一致する部位、特に僧帽筋に非常に強い緊張が見受けられた。

また、関節可動域と筋力を調べたところ、背骨(胸椎)と股関節の可動性が低いこと、腹横筋と大殿筋が極めて弱っていることが判明した。特に大殿筋においては、自力で収縮させることが困難で、動かす感覚が全くない状態。

一方で、学生の頃にラグビーをやっていたということもあり、胸や上肢の筋肉は発達している。体を支える土台となる体幹下部の筋肉が弱ってしまっているために、効率良く姿勢をキープすることができない状態となってしまっていた。

K様の場合は、体幹で姿勢をキープすることができず、デスクワーク時に背中が丸まってしまい、負担が首、肩、肩甲骨付近に集中し、凝りが生じていると考えられた。

首や肩に負担をかけている原因への対処をせず、凝りのある箇所に限局したマッサージを常習的に受けていたことから、刺激に慣れてしまい、慢性化してしまったと推測できる。

また、慢性的な凝りによるつらさがストレスになり、イライラや情緒不安定等の精神症状につながってしまっていると考えられる。常時自覚する煩わしい症状、そして症状がつらいというということに加えて解決策の見出せないというストレスが、自律神経を乱し、さらなる凝りを招くという負のスパイラルに陥ってしまっていると考えられた。

症状が慢性化しており、自己回復が困難なため、治療が必要な状態と判断した。きちんと症状を解消することだけでなく、日常生活動作の改善含めて、原因療法が重要になると考えられる。

治療

症状のつらさからくるストレスや精神症状が、さらなる凝りを招く負のスパイラルを形成していたため、まずは慢性的な症状をきちんと解消することからスタートした。3D鍼にて首や肩の筋肉一つ一つにアプローチして、丁寧に凝りをほぐした。特に肩甲骨こりの症状を招いている僧帽筋中部と下部には積極的に3D鍼でアプローチをした。

また、同時並行して、運動療法にて、根本原因である体幹のコンディション改善を行った。具体的には、背中(胸椎)と股関節の可動性改善、体幹の筋力強化。特に、最も筋力低下が著しかった大殿筋の強化に注力した。

慢性的な症状の緩和のために、はじめは凝りを詳細にほぐすことを重きを置いた治療を行なった。初回は体の反応をみるために、3D鍼を弱めにうち、IDマッサージをメインで行ったところ、あまり効果を感じられなかった。

マッサージで効果が得られにくいということから、2回目にやや強めの3D鍼を行ったところ、症状が緩和[ NRS10→8 ]した。これまで施術を受けても全く楽にならなかったため、症状は依然としてあるが、わずかながらも変化がでたということに希望を感じたとのこと。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

3回目の治療も3D鍼で僧帽筋を集中的にアプローチしたところ、症状がおおきく改善[ NRS8→2 ]し、日常生活に支障をきたすひどい症状が緩和した。

4回目以降は、症状の緩和のための鍼マッサージと、原因解消のための運動療法を並行して行った。週一回の治療8回の時点で、悩ましい慢性的な症状は解消された[ NRS0〜1 ]。

症状のコントロールができるようになったので、9回目以降は、治療の頻度を2週間とし、セルフケアでのストレッチ(主に大腿部と背中)と筋力トレーニング(主に大殿筋と腹横筋)を積極的に行い、デスクワーク時の姿勢の改善と定着化を図った。2週間頻度の治療を4回行ない、症状の安定と筋力や関節可動域の改善が見受けられた。

13回目の治療を4週間隔としたところ問題なく過ごすことができ、一度も湿布や貼付型磁気治療器を使用することがなかった。仕事が忙しくなると、夕方に肩や肩甲骨の内側が多少重くなるが、セルフケア体操をして就寝すればリセットでき、翌日には持ち越さないようになった。

14回目、15回目は8週間隔としたが、問題なく過ごせた。日常生活において凝りに悩むということがなくなり、仕事の生産性があがり、休日も家族と楽しく過ごすことができるようなった。人柄も明るくなり、元気になった。

常時ストックしてあった湿布や貼付型磁気治療器にかかる費用面の負担がなくなり経済的にもプラスとなった。疲れることをして、然るべき疲労が生じることは正常である。凝りに悩むことがなくなり、セルフケアで自己管理ができるようになったため、計15回、約9ヶ月間の治療でゴールに至った。

コメント

本件は、一時をしのぐ対処を続けるうちに慢性化、重症化してしまった典型例といえます。はじめは効果があったマッサージも、続けるうちに効果が弱くなり、やがて全く効かなくなってしまう、という方は少なくありません。

痛みが痛みを呼ぶことがあるように、凝りが凝りを呼ぶこともあります。したがって、凝りをほぐすことは、とても大切なことではありますが、それだけでは同じことの繰り返しとなり、やがてひどくなっていってしまいます。肩こり・首こり・肩甲骨の改善のためには、「なぜ凝りが生じるのか?」を分析して、対症療法と同時に原因療法の行うことが大切です。

K様の場合、臀部や腹部といった下部体幹の筋力が低くなってしまっていたために、首肩・肩甲骨周囲の筋肉に過剰な負担がかかってしまっていました。そのため、一見、首や肩のこりと関係がなさそうな、お尻やお腹のトレーニングを行うことで負担が減り、こりが生じにくくなっていきました。

とても慢性的な状態で日常生活にも支障をきたしてしまっていましたが、セルフケアもきちんと行っていただいたことで早期に体が変わり、スムーズにゴールに至りました。つらくても諦めずに、本当によく頑張ってくださいました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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健康 2015年7月号で「耳たぶマッサージ」を紹介。

丸山太地 耳たぶほぐし

天気痛へのセルフケア方法について取材が、6月2日発売の雑誌「健康」に掲載されました。

肩こりラボブログでよく読まれている記事のひとつに「今すぐできる天気痛解消法の紹介。」があるのですが、そこで紹介している耳たぶマッサージについて、先日取材を受けました。

誌面上では、耳たぶほぐしという名前での紹介になっております。

誰でも、いつでもどこでもできる便利な方法ですが、あくまでセルフでできる「対症療法」にすぎません。詳しくは「今すぐできる天気痛解消法の紹介。」をお読みください。

 

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
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肩甲骨ダイエットの嘘・ホント「褐色脂肪を増やせば痩せるの!?」褐色脂肪細胞を冷やして活性化説の検証

ダイエットは、食事制限をしつつ運動を行って体重を落とす「痩身」を意味します。

食事制限はつらいし、運動も面倒だし、やる気がでない。

でも、どうしても痩せたい!

簡単にダイエットできるのなら、誰もがその方法に興味を示すはずです。

「褐色脂肪(BAT)を燃やせば簡単に痩せる」説は、簡単にできるダイエット方法として、度々メディアに取り上げられています。当記事ではその説について「肩甲骨ダイエットの嘘」と題しまして解説いたします。

この記事をお読みいただければ、何度もメディアに取り上げられるのはなぜか?そして、褐色脂肪になぜダイエット業界が興味を示したのか?その理由をきっとご理解いただけるでしょう。

以下の3点を軸に解説させていただきます。

  • 非常に大きなダイエット効果があるとされている肩甲骨周辺の褐色脂肪細胞(BAT)についての情報の間違っている点(冷やしても意味はない)
  • 肩甲骨ダイエットとされる運動の本当の効果とは…実はダイエット効果はない
  • 肩甲骨エクササイズ・肩甲骨ストレッチで肩甲骨を動かすことはとても大切である!!

肩甲骨といえば肩甲骨はがし。多くの方が好まれ、興味をお持ちと思われる「肩甲骨はがし」についても、きちんと解説しております(肩甲骨はがし自体は非常に効果的です!!)。

ダイエットに興味をお持ちの方には、とても意味のある内容だと自負しております。特に褐色脂肪細胞とは異なる「ベージュ脂肪細胞」についての内容は、是非知っていただきたいポイントです。

 

脂肪と聞いてイメージするのは皮下脂肪、内臓脂肪、そして贅肉

脂肪って何色ですか?

「白」と答える方がほとんどだと思います。

脂肪というと、体脂肪、皮下脂肪、そして贅肉をイメージする方が大半ではないでしょうか。これらは白色脂肪細胞と呼ばれています。そのまんまの名称ですね。

太る=脂肪がつく・・・痩せたい人にとって脂肪は天敵のようなものです。しかし、脂肪がエネルギー源として必要である、体を守る役割もある、ということは、いくら天敵とはいえ、納得されていることでしょう。

女性にとって、ダイエットという言葉は常に頭の片隅にあるもの。コレを食べれば痩せる、こんな簡単な運動でらくらく減量、といった耳障りのよい言葉の誘惑は強烈です。

定期的にテレビや雑誌で『肩甲骨ダイエット』が話題になります。首・肩の治療において肩甲骨は本当に大切なので、肩甲骨に注目が集まること自体は肩こりのセラピストとして喜ばしいことなのですが、ダイエットとセットになると話は大分変わってきます。

このブログをたまたま読まれた方にだけでも、肩甲骨ダイエットに関して正しい情報をお伝えしたいと思います。

褐色脂肪細胞を刺激すると脂肪燃焼するのか?

まず、結論から申し上げます。

肩甲骨ダイエットによる痩身は不可能ですが、肩甲骨を動かす運動によって体のラインを美しくすることは可能です。そして、肩甲骨の刺激による褐色脂肪細胞の活性化は確認されておりません!!褐色脂肪細胞は、冷えることで活性化するのは事実ですが、それは体温が下がり生命の危機に陥ることから身を守るためです。したがって、人為的に冷やせば良いということではないのです。

肩甲骨ダイエットとは、肩甲骨付近の筋肉を動かす運動やストレッチを行うことで、肩甲骨付近に多く分布しているとされる褐色脂肪細胞を刺激し、脂肪の燃焼を促進させる→痩せる、というものです。

「褐色脂肪細胞」これがキーワードです。この褐色脂肪細胞は、雑誌やテレビでも度々取り上げられてますので、耳にしたことある方は多いかもしれません。

この褐色脂肪細胞(BAT)は身体が冷え切ってしまい低体温になると激しく脂肪燃焼する性質があるのです。ですから身体を冷やせば痩せる、というインパクトの強いトンデモ説が出てきてしまいました。じゃあ、寒い地方の人で太っている人はなんで痩せないの?と子供でも疑問に思うのが普通です。

残念ながら、専門家でも一部の方は間違った情報を発信しています。なぜ専門家でも間違えてしまったのか・・・それにもしっかりとした理由があるのです。

筋肉か脂肪か分からない謎の組織が発見される

褐色脂肪細胞がなぜ注目されるようになったのでしょうか?

まず、脂肪には2種類あるとされています。誰もが脂肪ときいて思い浮かべる白い脂肪と、茶色い脂肪です。この茶色い脂肪は褐色脂肪(組織)といい英語でBAT(Brown adipose tissue)、白色のいわゆる脂肪はWAT(White adipose tissue)または普通にwhite fatといいます。皮下脂肪・内臓脂肪などは主にWATです。

脂肪を燃やすためには・・・運動が一番です。運動するため、生きていくためのエネルギー源として脂肪は必要です。脂肪が燃焼するためには、脳からの指令で交感神経末端からノルアドレナリンが分泌される必要があります。ノルアドレナリンによって脂肪がまず分解されます。分解されたあとにエネルギーとして使われるのです。ノルアドレナリンが分泌されるためにもっとも効果的なのが運動なのです。必要以上に脂肪をとって、ノルアドレナリンが分泌されることが少なければ、脂肪は蓄えられていきます。それが行き過ぎると肥満となるわけです。

ところが、運動せず何も食べず眠り続けているのに脂肪を燃焼することができる動物がいます。それは冬眠する動物です。残念ながら人間は冬眠はできませんが、1日の大半を寝て過ごす赤ちゃんは冬眠する動物と似ているともいえます。

この冬眠する動物や赤ちゃんが生きるためにどうやってエネルギーを生み出しているのか?運動せずにどうやって熱を発生させているのか?という疑問に対する答えが「褐色脂肪細胞の存在」です。

褐色脂肪細胞の発見のきっかけはマーモット

スイスの博物学者であったコンラート・ゲスナーが1551年に著書『動物誌Historia Animalium』においてマーモットの背中に脂肪とも肉とも異なる中間的な組織が存在するとの観察を記載したのが褐色脂肪細胞の存在を最初に示唆したものとされています。

marmot2

マーモットは、リスの一種で冬は冬眠します。冬眠する動物って、なんで死なないの?という子供の頃誰もがもつ疑問だと思いますが、その答えが、この筋肉でもあり脂肪でもあるとされた褐色脂肪細胞だったのです。

そして、筋肉のような働きはするものの、脂肪である、として数百年という長い間扱われてきたのです。人間の褐色脂肪細胞の研究が活発化したのは1970年代からです。

冬眠する動物や人間の赤ちゃんの体内には褐色脂肪が豊富

冬眠する動物や人間の赤ちゃんの体内には、沢山の褐色脂肪が存在しています。

褐色脂肪細胞は、多くのミトコンドリアを含有しているため褐色にみえます。このミトコンドリアはエネルギーを利用して熱を生み出す細胞です。褐色脂肪細胞は、白い脂肪と異なり、ノルアドレナリンの刺激により熱を作り出します。それも褐色脂肪細胞は、筋肉の何十倍もの熱を生み出すのです。

さらに褐色脂肪細胞(BAT)は、熱を生み出すだけでなく、白い脂肪(WAT)の燃焼も手伝います。これは事実です。

そこで、褐色脂肪細胞(BAT)をうまく利用すれば、簡単に痩せることができるのではないか?と誰もが考えるわけです。

残念ながら、この褐色脂肪、赤ちゃんには豊富にあるのですが年齢とともに減少していきます。

楽してダイエットしたいと考える年齢の時には・・・うまく活用するには無意味なくらいの量しか残っていないのです。

褐色脂肪細胞(BAT)の正確ではない情報をうまく利用するダイエット業界

褐色脂肪がダイエットには使えないというのが専門家の中では一般的だったのですが、2007年に転機が訪れます。「Developmental Origin of Fat: Tracking Obesity to Its Source」(Volume 131, Issue 2, p242–256, 19 October 2007)という論文が医学専門誌「Cell」に掲載されたのです。

この論文の内容はともかく、褐色脂肪を刺激すれば簡単に痩せることができる!!医学的に証明されている!!という非常にキャッチーなフレーズだけがメディアを賑わすことになってしまいました。そもそも褐色脂肪は大人の体内には少ないのにもかかわらずです。

後ほど詳しく解説しますが、褐色脂肪細胞は加齢と共に減っていくものです。増やす方法があれば人間にとって素晴らしいことではありますが、残念ながらそんな夢のような方法はございません。年齢と共に減っていくもの、それを、刺激して痩せる、ということ自体がナンセンスなのです。

近年研究が進み褐色脂肪細胞について多くのことが分かってきました。しかし、まだまだ不明な点が多くダイエット業界に都合よく利用されている現状です。

専門用語には、なんだかよくわからないけれども、そうなんだ!!と信じこませるパワーがあります。恥ずかしながら、私も自分の専門分野以外では、専門用語を何となく雰囲気で理解していたり、説明できないのに使っていたりします。無意識でそうなってしまっています。しかし、今回は専門分野。使命感、義務感を感じています。

ネット上、雑誌、テレビなどで取り上げられている褐色脂肪細胞は凄い、という情報で、間違っている情報と現在わかっている正しい情報をしっかりとお伝えしたいと思います。

ダイエット、褐色脂肪細胞に興味お持ちの方に、なるほど!!そういうことだったのか、と思っていただけるような内容だと自負しておりますので、長い記事で恐縮ですが、お付き合いいただければ幸いです。

体温の調整が褐色脂肪細胞の機能。脂肪燃焼は体温の調整が目的

褐色脂肪細胞は筋肉のような働きをすると申し上げました。これは発熱する、脂肪の燃焼を促すという機能を意味します。簡潔に言うならば、体温を調節する機能です。体温が低下すれば体は機能しなくなり死に至ります。体を守るためにある重要な脂肪細胞です。そのため冬眠する動物が多く持っているのです。人間の場合、誕生したばかりの赤ちゃんは褐色脂肪細胞によって守られています。新生児の体重の内、なんと数%も褐色脂肪細胞が占めるのです!!!!

赤ちゃんの体の分布する褐色脂肪細胞

生命の危険に瀕したとき、褐色脂肪細胞は活発に機能する

褐色脂肪細胞は、体温を調節する機能を持っています。赤ちゃんに褐色脂肪が多いのはこれが理由です。赤ちゃん、特に新生児の場合、最重要事項のひとつが体温の維持です。体温調節や、体の機能を維持するために褐色脂肪細胞が働き新生児の体を守っているわけです。

大人の場合、例えば極寒の中で遭難したとすると、生命維持のために褐色脂肪細胞は活動的になります。では、普段の生活において、褐色脂肪細胞を刺激するとどうなるのか・・・食事をとる時に、しっかりと噛んで味わうことで刺激される、辛い食べ物で働きが活発になるという説もありますが、刺激する方法が研究段階です。

鎖骨・肩甲骨・椎骨を冷やしてダイエット?

肩甲骨ダイエットの解説に記されているような、外部からの刺激によって活性化されるというデータも存在しませんし、医学的な根拠は確認されておりません。成人で褐色脂肪細胞の活性化が確認されたのは、体温の低下によるものです(2009年に発見)。

そのため、褐色脂肪がある部分を冷やして楽々ダイエットも当然のように出てくるわけです。鎖骨・肩甲骨・椎骨を冷やすだけで簡単に痩せる・海外セレブも行っている最新ダイエットといった紹介がされることも。痛みを抑えるための冷却は応急処置として必要なケースはありますが、基本的には体を冷やすことはよくありません。話が脱線しますが、うっかり火傷してしまった時、誰もが冷やしますよね。良かれと思ってジンジンした痛みを我慢してずっと冷やし続けるのは却って悪化してしまいます。冷やすのは最初だけで後は常温が基本です。

ダイエットのために、無理に冷やすのは絶対に避けるべき

無理なダイエットはカラダによくありません。ダイエットのために冷やしすぎるのはもってのほかです。

特に気をつけていただきたいのは【首】です!!

首を冷やしたらダメということではございません。熱中症対策で首を冷やすといった簡易的な冷却は必要です。無理な冷却・冷やしすぎはNGという意味です。

首は脳と身体を結ぶ神経が集まっている重要かつ大変デリケートな部位です。ダイエットのためにと無茶な冷却の仕方によってはどんな悪影響が出るかわかりません。

繰り返しになりますが、体が極端に冷えれば生命を維持するために発熱します。危機的状況・緊急事態に発動するのが褐色脂肪細胞です。だからといって首や肩甲骨まわりを冷やせば良いというのは身体を騙そうという安易な発想です。いくら身体を冷やしても脳は騙されません。生命の危機に瀕していると強烈に思い込むことができ、仮に痩せたとしても・・・それは健全な方法ではないということはご理解いただけると思います。

アスリートがよく行う水風呂や美容で行われる全身冷却があるし何がいけないんだ!!大げさだ!という意見があるかもしれません。それらは、冷却によって血管を収縮させた後の膨張による血流促進とそれによる活性化が目的です。ダイエットにも効果的ともいえるかもしれませんが、全身の血流の改善が目的です。

褐色脂肪細胞は明らかでないことが多いのですが、体温調節機能を持っていることは確かな事実です。これだけは間違いありません。

褐色脂肪細胞は年齢と共に減少します。そして男女差があります。

褐色脂肪細胞は幼児期までは沢山ありますが、その後加齢と共に徐々に減少していくことは昔から知られていました。しかし、新しい研究によると、男女の間で減少の仕方に差が出ていることが判明しました。男性の40代以降の急激な減少は特に注目すべき点です。

ですので、中年太りと関係があるのではないか?とも言われています。中年以降の男性には、褐色細胞によるダイエット効果はほぼ望めないということは明確に言えます。しかし、女性の褐色細胞は加齢とともに減少するとはいうものの、割と残っています。そこで褐色脂肪細胞を増やす、活性化することで、肥満解消に繋がるのでは‥‥?という点をついているのが褐色脂肪細胞によるダイエット効果です。しかし、残念ながら褐色脂肪の働きを回復させる方法は現時点では開発されておりません。

ここで、ちょっと考えてみましょう。

褐色脂肪細胞は、大人にはほぼ残っていないとされていましたが、女性には結構残っていることが最近の研究によって判明しました。ですが、その量はわずか数十グラムです。大変少なく、人体から取り出すことも容易ではありません。2012年にiPS細胞から褐色脂肪細胞の作成に成功したことが話題になりました。年齢と共に減少する、機能は分かっているけど体温の低下といった危機的な状況以外での活性化の方法が明らかではない。こういった現実とiPS細胞から作成ということを合わせて考えてみれば・・・褐色脂肪細胞の研究は発展途上であり、ダイエット効果がある!なんて軽々しく言ってはいけないのです。それは、昔から研究されている方への冒涜ともいえるのではないでしょうか?そして、褐色脂肪細胞を増やす、活性化させることで期待できるのは糖尿病の治療への活用でしょう。

しかし、「褐色脂肪細胞が増えるって小耳に挟んだのだけど・・・」「肩甲骨を刺激すると褐色脂肪細胞が活性化するって読んだんだけど・・・」「テレビで専門家が解説しているのを見たけど」という方は沢山いらしゃると思います。

断言します。それらの情報は「間違い」です。

ですが、安心してください。運動で活性化される脂肪細胞は・・・あります!!

ただし、肩甲骨を動かすことによるものではなく、一般論です。

そして、その脂肪細胞は褐色脂肪細胞ではありません

脂肪は、白色と褐色の2種類ではないのです。もう1種類あるのです。これが非常に重要なポイントです。

褐色脂肪細胞と似た脂肪細胞の存在と、褐色脂肪細胞が実は筋肉と兄弟であるという新発見

古くから脂肪細胞には白色と褐色の2種類あるというのが定説でした。そして、生まれたての子供には多く存在するが、成人ではほとんど残っていないとされてきました。先の褐色脂肪細胞の説明でも近年分かったことを述べているように、分からないこと、説明がつかないことがたくさんあります。

2008年に白色脂肪細胞から「褐色脂肪細胞のような脂肪細胞」に変化するという研究結果が発表されました。ポイントは、褐色脂肪細胞と似ているのだけど発生するプロセスが異なるため、果たして同じなのか?という点でした。

さらに、褐色脂肪細胞は筋肉にもなることができる共通の幹細胞から造られるということもわかったのです。機能としては筋肉と類似しておりますが、それだけではなくルーツも同じだったのです。1551年のコンラート・ゲスナーの推測が正しかったわけです!!

つまり、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞は色味は異なるものの見た目は類似しているにもかかわらず、まったく異なる起源と働きを持つ細胞であること、そして、その発生過程がそもそも異なっていたという事なのですね。肉眼上類似している事から脂肪細胞と名称がつけられていますが、中身は全く異なるものだと認識する必要があります。

2008年の褐色脂肪細胞に関する研究発表

では、この褐色脂肪細胞みたいな脂肪細胞は何なのでしょうか?発生プロセスが異なっていますが、構造は似ています。はたして同じ褐色脂肪細胞なのか?という新たな課題が生まれたのです。

PRDM16 controls a brown fat/skeletal muscle switchNature 454, 961-967

[参考URL]  http://shinka3.exblog.jp/9516298/

褐色脂肪細胞とは異なる「ベージュ脂肪細胞」の発見

2012年に転機が訪れました。ハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所のBruce Spiegelman博士の研究チームによって褐色脂肪細胞みたいな脂肪細胞が白色、褐色に続く第3の脂肪細胞「ベージュ脂肪細胞」として存在が明示され、医学専門誌「Cell」で発表されたのです。

[参考文献] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22796012

褐色脂肪細胞には2種類ありその違いに関する表

ベージュ脂肪細胞は褐色脂肪細胞のそっくりさんのようなものですが、発生が異なりますし、働き自体も多少異なります。

褐色脂肪細胞は体の体温の低下を抑える働きを持っていますが、ベージュ脂肪細胞の場合、体温より低い27~33度の冷気をあてたら活性化します。ですが、この条件では褐色脂肪細胞は活性化しないのです。褐色脂肪細胞は、もっと緊急事態にならないと働かないのか、または他のプロセスが必要なようです。脳からの緊急事態の指令が必要なのかもしれません。この辺はまだ研究の段階です。

[参考文献]  http://www.pnas.org/content/early/2013/06/26/1310261110.abstract

そして、ベージュ脂肪細胞は、運動によって白色脂肪細胞が変化したものであるということが明らか日になりました。このベージュから白色への変化を促進するのがイリシンというホルモンです。これもベージュ脂肪細胞の存在の研究発表の中で示され、新しいホルモンとして名付けられたものです。ホルモンは脳や臓器から分泌されると考えられていますが、筋肉からも分泌されるのです。ですから昨今、運動ホルモン、筋肉ホルモンとも呼ばれています。このイリシンは、運動によって分泌され、白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変化させる因子の1つなのです。

ベージュ脂肪細胞の生成には、他のプロセスの報告もあります。今後どんどん解明されていくことでしょう。

[参考文献]
http://www.joslin.org/news/study-shows-exercise-creates-good-fat.html

つまり、ベージュ脂肪細胞を増やせばダイエット効果が期待できますが、あくまでベージュ脂肪細胞であって、褐色脂肪細胞ではないということがお分かりいただけたかと思います。

ベージュ脂肪細胞ってどこにあるの?

褐色脂肪細胞は、先に赤ちゃんの図で示したとおり、肩甲骨周囲・首・わきの下・腎臓周囲・心臓内膜などに分布しているとされています。

褐色脂肪細胞はある程度の塊で存在するのですが、ベージュ脂肪細胞は小さな豆ほどの大きさで白色脂肪細胞組織の中に散在しています。ですから白色からベージュに変化するのであれば、ごく自然なことといえますね。ベージュ脂肪細胞が含まれている白色脂肪細胞ですが、皮下脂肪と内臓脂肪に大きく分けることができます。この内、内臓脂肪よりも皮下脂肪にベージュ細胞は多いとされています。

ベージュ脂肪細胞は、白色脂肪細胞組織の中にあるので”brown-in-white” をもじって「ブライト(brite)脂肪細胞」とも呼ばれます。

ベージュ脂肪細胞を増やすには

体温より低い27-33度においてベージュ脂肪細胞は活性化します。ですから、ベージュ脂肪細胞を増やして冷やせば痩せる・・・テレビなどのメディアではこの部分がインパクトあるために強調され多くの勘違いを生みます。

今、このテキストをお読みのあなたも、どうすれば簡単に痩せるのか?という答えが欲しいのかもしれません。

悲しいお知らせかもしれませんが、ベージュ脂肪細胞を増やすためには、運動することしか方法がありません。しっかりと激しい運動をすれば増えるのはもちろん、沢山運動をすると普通に痩せていきます。つまり、簡単に痩せる方法などでも何でもなく、至って当たり前のことでしかないのです。

ですが、これまで分からなかった仕組みが明らかにされつつありますので、いくら運動してもやせない人、体質の問題は、このベージュ脂肪細胞を薬などで増やせるのか?移植できるのか?といった医療の進歩が解決してくれるかもしれません。

結論:肩甲骨ダイエットは嘘

ようやく本題でございます。

Googleで「肩甲骨ダイエット 褐色脂肪細胞」で検索してみました。

検索結果

2014年6月現在の検索結果1ページ目はこのようになっております。ここまで当ブログ記事をお読みになられた方でしたら、ひどい検索結果だと思われることでしょう。

最近では、いわゆる「まとめサイト」の情報が検索上位にきますが、「体脂肪を減らす“褐色脂肪細胞”を増やす方法」まとめも、このような間違った情報の寄せ集めです。

痩せるために必要であろうとされる脂肪細胞のカラーは、褐色ではなくベージュ色です。

ベージュだって薄い褐色だから、いいじゃないか、という意見もあるかもしれません。ベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞は、種類が明確に異なります。そして、ベージュ脂肪細胞が肩甲骨付近に多く分布しているというデータはございません。多く分布しているとされるのは褐色脂肪細胞です。

先にご説明したとおり、40代以降の男性では褐色脂肪細胞はほとんど残っておりませんし、女性でも少ないという事実もあります。

さらに、褐色脂肪細胞を、運動で刺激しても活性化するということは確認されておりません。

褐色脂肪細胞は、まだ分かっていないことが多いのですが、生命の危機を感じたときに機能するカラダを守る脂肪細胞であるということは分かっています。

読者の方には、もはや説明不要かもしれませんが、このような誤った情報が蔓延しているのは、これまでの説明中のベージュ脂肪細胞を褐色脂肪細胞に置き換えてみれば分かりますね。

つまり、ベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞を混同しているために、もっともらしい効果があるように感じられてしまうのです。

一部の専門家が誤った情報を発信してしまったのも誤解の大きな原因

まず、脂肪には白色と褐色の2種類という定説があったことが大きいです。そして、海外の研究発表が大元なのですが、それが日本語訳された時に誤訳したために、専門家の情報がおかしなことになりました。さらに、その日本の専門家の情報を鵜呑みにして拡散されたわけです。

ただ、本当に単純な間違いなのです。

ネット上の情報発信者が英語論文の本文中の「browner fat」と「Brown fat cell」の解釈を混同したことが原因だと思われます。browner fatは、「より茶色い脂肪」です。これはベージュ脂肪細胞のことなのです。そして「Brown fat cell」は褐色脂肪細胞です。先ほど、ベージュ脂肪細胞が”brown-in-white” をもじってブライト(brite)脂肪細胞とも呼ばれているという点も誤解を招いた可能性もあると思います。ベージュも薄い茶色ですから。

困ったことに、有名女性向け雑誌・健康雑誌・健康がテーマのテレビ番組・インターネット上の生活お役立ち情報サイト・まとめサイトの多くは、この間違った解釈のまま情報発信しております。もちろん中には正しい情報を発信しているメディアもありますが、比較すると少数と言わざるを得ません。

だったら、肩甲骨ダイエットって意味ないじゃん、と思わないでください。冒頭で申し上げましたように、肩甲骨を動かす運動によって、ボディラインを綺麗にする、姿勢をよくするといった効果はあります。そして、肩こりの治療においても肩甲骨はとても大切なのです!!これまでの長い文章は、肩甲骨によるシェイプアップ効果の解説の長い前振りでございます。

 

肩甲骨を動かしても痩せることはないが、シェイプアップ効果はあり!肩甲骨ストレッチは全ての方にオススメします。

ダイエットの目的は大きく2つあります。

  • 体重を減らす
  • 体のライン・シルエットを美しくする

まず、肩甲骨を動かすことで体重を減少させることは出来ません。

体重を減らすには摂取エネルギーに対し、消費エネルギーを増やすということが必要になります。肩甲骨をどう操作しても摂取エネルギーを減らすことは出来ませんし、消費エネルギーを増やすことも出来ません。またリンパの流れを良くすることでムクミをとっても本質的な体重減少には至りません。

以上のことから体重の減少を目的とした場合、肩甲骨ダイエットではダイエットは不可能といえます。

では体のラインを美しくするという点についてはいかがでしょうか。

結論からいいますとこれは可能です!!

肩甲骨ダイエットは脂肪を減らして体を細くスリムにする、いわゆる痩身ではありません。あくまでも体を本来あるべき正しい状態へ戻し、姿勢を良くすることで、結果的に体のラインがスッキリ見えるようになるということなのです。肩甲骨ダイエットにおいて、ダイエット効果に必要なことは、リンパやムクミ、ゆがみなどではなく、筋肉です。筋肉を良好な状態にすることが必要なのです。

肩甲骨は実は特殊な存在。なんと関節なのです。

肩甲骨って何ですか?と問われたら、背中の肩の下にある骨とお答えになると思います。

肩甲骨はその名のとおり骨ですが、実は関節でもあるのです。

解剖学上、肩甲骨は肋骨の上に筋肉で貼りつけられている状態です。一般的に、骨と骨の連結部分のことを関節と言い、肩甲骨と肋骨と同様に、肩甲胸郭関節けんこうきょうかくかんせつといいます。肩甲胸郭関節は関節の中でも特殊な存在で、通常、関節は靭帯・関節包などいった結合組織という関節の連結を強める組織によってつながれていますが、なんと肩甲胸郭関節にはそのようなものがありません。筋肉のみで連結されているのです!!これは人体で最も可動性の高い肩関節の動きに関与するためです。すなわち肩甲骨のコンディションは筋肉の状態によって左右されるのです。

話をもどしますね。

現代人はデスクワークや立ち仕事など同一姿勢を続けることが多いです。長い時間同じ姿勢でいると大変疲れますよね。そのため楽な姿勢、力を抜いた姿勢を自然と続けるようになり、いわゆる丸まった姿勢=猫背の姿勢になります。また、見たときの姿勢が、背中はまっすぐ伸びていても、肩が丸まっている方が沢山いるのです。このような方が肩甲骨ダイエット(体のシルエットを美しくする)の対象となります。

猫背は、肩甲骨が外側に移動してしまっていることが原因です。

猫背の姿勢や背すじがのびても肩が前に入っている姿勢ですと、たとえどんなに体重が軽く、横から見たら細くても、正面や後方から見た姿が横に膨張して見えてしまいます。肩幅が広く、背中が丸く、首が短く、さらには二の腕が太く見えてしまいます。これは肩甲骨が外側に移動(外転)してしまっているのが原因なのです。

このような状態
↓↓↓

肩甲骨シェイプアップ1

なぜ、このように肩甲骨が外側に移動してしまうのでしょう?

  1. 肩甲骨を外側に引っ張る(外転)作用のある筋肉の緊張

    大胸筋・僧帽筋上部線維・広背筋・大円筋・前鋸筋・上腕二頭筋・上腕三 頭筋長頭・烏口腕筋など

  2. 肩甲骨を内側に寄せる(内転)作用のある筋肉の弱体化

    僧帽筋中部線維・僧帽筋下部線維・菱形筋など

の二つがあげられます。(厳密には首・腰・股関節の状態も影響しますがここでは話が複雑になってくるので割愛します。)

このように例をあげると、肩甲骨を外側に引っ張る働きを持つ筋肉がそもそも沢山あるのです。したがって、何も意識せず脱力した姿勢で生活を続けていると、知らぬ間に丸まっていってしまうというのも納得出来ます。

外転してしまっている肩甲骨をどうすれば良いのでしょうか?

逆にする、つまり、内転している状態にすれば良いのです。

このような状態
↓↓↓

肩甲骨シェイプアップ2

この記事をご覧になった方は今すぐにこの画像のように肩甲骨を、そして背骨を中心に寄せるイメージで力をいれてみてください。

・・・恐らくすぐに疲れてしまうと思います。(きちんと対処法をご紹介しますのでまだ諦めないでください!!)

すぐに疲れてしまうのは、外に引っ張る力がまだ解除されていないためです。ここで「緊張を解除するためには治療に来てください」という面白くないオチではありません。しっかりと効果のあるセルフケア方法をご紹介します。

肩甲骨の緊張を解消するkatakori LABSオリジナル肩甲骨ストレッチの解説動画をYouTubeで公開しましたのでご覧ください。(必ず痛みや違和感のない範囲で行ってください)

 

 

※ブログ記事でも紹介しています→[セルフケアブログと同じストレッチ方法

この肩甲骨ストレッチを行ったあと、上記画像のように肩甲骨を内側に寄せてみましょう。きっと変化を実感していただけるはずです!!エクササイズとして行う場合は、先にストレッチを行い柔らかくなってから、肩甲骨寄せ運動を30秒×2セット目安に行ってみてください。ストレッチと合わせてトータル2分で完結です。

夏に向けて、体のラインは気になっているけれど、ハードな食事制限や運動を行う高いモチベーションは持てないという方にオススメです。驚くほどの効果が実感できるわけではありませんが、簡単で、それなりの効果が見込めます。是非、朝・昼休み・夜の一日3回、夏までの1ヶ月間の日課にしてみてください。(簡単で確実な効果のあるダイエットということならば美容医療という選択肢があります。根本から細くしたい、脂肪そのものを取り除きたいということであれば、最も効果が期待できる選択肢であるといえます。)

もしかすると、体のラインが美しくなるだけではなく、肩こりが酷かったけど最近あまり気にならない!なんて嬉しい効果があるかもしれません(^^)

肩甲骨を動かしたくても動かせないひどい肩こりの方は「肩甲骨はがし」が効果的

重度の肩こり・肩甲骨こりをお持ちの方の中には、硬くなりすぎて動かしたくても動かすことが出来ないという方もいらっしゃいます。そればかりか動かしているのかそうでないのか、コリすぎてその部分の感覚すらない方が実際にはいらっしゃいます。

このような方々に特にお勧めしたいのが「肩甲骨はがし」です。巷でも流行っておりますので、ご存じの方も多いと思いますが、肩甲骨と背中の間に指をいれてグイッと引き上げて肩甲骨の内側の筋肉を刺激する技です。

肩甲骨はがし

解剖学用語では、肩甲骨と肋骨の連結部分のことを、肩甲胸郭関節けんこうきょうかくかんせつといいます。そう、あまりピンと来ませんが「関節」なのです。ここで注目すべきなのが、この肩甲胸郭関節は人体の中でも特殊な存在であるという点です。普通、関節は関節包(関節を包む袋)や靭帯(関節を連結するヒモ)で連結を強めています。それに加えて筋肉があって関節を作り上げています。肩や膝、股関節など、皆さんがイメージできるほぼ全ての関節も同じようにこのような構造となっています。

ところが、肩甲胸郭関節だけは筋肉のみで連結されているのです。すなわち、他の補助が無い分、筋肉は非常に大きな負担が掛かることになります。ですから肩甲骨周囲の筋肉は疲労しやすく、硬くなりやすいのです。

一般的には肩甲骨の内側の筋肉、僧帽筋そうぼうきん菱形筋りょうけいきん脊柱起立筋せきちゅうきりつきんなどが硬くなり症状を自覚する場合が多いです。肩甲骨はがしを行うと、ちょうどその部分に手を当てることによって引き伸ばすため、指圧とストレッチが合わさり、大変心地良くすっきりした感じが直後に出ます。ですが、効果は持続せず、すぐに元通りとなることが殆どです。その理由は、該当する筋肉に対する負担が解消されていないからです。つまり、肩甲骨がこる方の大きな特徴として、肩甲骨が外転してしまっているということがあげられます。

このような状態
↓↓↓

肩甲骨シェイプアップ1

つまり、肩甲骨を外側に引っ張る(外転させる)筋肉が硬くなってしまっており、内側の筋肉(僧帽筋・菱形筋など)が引き延ばされてしまうために肩甲骨の内側にコリを感じるのです。

そのため「肩甲骨はがし」という何とも特殊な技のように感じますが、それだけを行うのであればコッている部分をひたすら揉んで心地よいというリラクセーションと大きな差はないのです。

肩甲骨はがしだけならリラクセーション。+αで肩甲骨こりを解消!

もうお分かりですね。

肩甲骨はがしと同時に肩甲骨の外転作用のある筋肉をほぐせば良いのです。

ここまで行って初めて肩甲骨こりが解消できます。

肩こりラボでも、肩甲骨はがしは処置方法の1つとして行いますが、外転作用のある筋肉に対する処置とセットで行うのが鉄則です。加えて、通常の肩甲骨はがしにさらに特殊な技を加えることで、従来の肩甲骨はがしで届かなかった部分の筋肉を弛めることもできます。

つらい部分をひたすらマッサージすれば、その時は楽になるかもしれませんが、楽なのはその時のみですぐに元通り・・・そしてまたマッサージを受けて・・・という繰り返し、断ち切りたいと思いませんか?

この繰り返しを変えるには、やはり根本的な原因を明らかにして解決するしかありません。ある部分がきまっていつもつらくなるのであれば、そこに負担をかけている原因が必ず存在します。その原因を生むさらに原因もあるはずです。こういった原因を追究して、ひとつひとつ解決することではじめて「施術を受けてもすぐに元通り」という悪循環を断ち切ることができるのです。

もし、あなたが「骨がゆがんでいますね」といわれたら、気をつけてください。それは「治らない宣言」です。「治せませんので繰り返し通ってくださいね」ということです。

今通われている治療院、今後通われる治療院の良し悪しを見極めるポイント

肩甲骨はがしは確かに気持ち良いですし、直後は楽になります。しかしそれがリラクセーションなのか治療なのかは別問題なので、それは患者さんが見極めなければなりません。

せっかくお金と時間をかけているわけですし、何より治したいという気持ちに沿った治療院でないと救われません。

見極めるポイントは「“肩甲骨をはがす事”が目的となっているのか否か」という点です。
そして次のようにお尋ねください。

「肩甲骨はがしを行っても良くはならないとネットで見たのですが本当ですか?」

この質問に対して「そんなことはありません。よくなりますよ」という返答でしたら、肩甲骨はがしが目的となってしまっています。その場合は高確率でリラクセーションの場合が多いです。(上記でご説明しましたように、肩甲骨の内側がつらくなる原因を解消しなければ治療をうたっていたとしてもこれでは治る見込みはないからです)

今現在通われているところが信頼できるかどうか?は上記でご説明させていただきました一連のメカニズムと相違のない内容の解説してくれるかどうかでご判断ください。理解できない専門用語だけ並べられて難解な説明をされたのでしたら、今後も通うべきか否かを判断する一つの材料になると思います。

「肩甲骨はがし」は確かに気持ち良いのですが、あくまで手技の一つでしかありません。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首肩の痛みに効く!!肩こり解消ストレッチ〜正しいストレッチ方法を解説

肩、首の痛み、寝違え、ぎっくり腰・・・といった急に現れる体の痛み。

悪天候や寒さの影響、そして疲労が溜まると決まって現れる「いつもの」痛み・・・憂鬱な気分になり頭痛も出てくる長引く首こり、肩こり、腰痛。慢性痛。

テレビでは、簡単かつ効果抜群と言われる体操やストレッチ方法がよく紹介されているけど・・・効果がない。沢山ありすぎてどれが正解なのか分からない!!そもそも動かすことに恐怖を感じる・・・

誰もが経験する急な痛みと慢性的なツラい症状を解消するための正しい対処方法を、肩こり・腰痛の専門コースを行っている専門家の立場から責任を持ってキッチリお教えします。

肩こり外来の受診を検討している方、楽になる場所を探し求め日々お悩みの方、まずはご自身で行うことのできる方法で少しでも楽になりましょう!!

今回ご紹介するのは、「今」つらくてお困りの方が、ご自身で行える効果抜群の「肩甲骨ストレッチ」と「セルフケアで押さえておくべきポイント」です。

肩こり対策から急な痛み対策、そして肩こり予防のために、正しい知識を是非とも身につけてください!!

肩こりが簡単に治ってしまう運動・体操・ストレッチは、存在しません!!

肩こりが一発で治るように思わせる情報がたくさんございます。本当にそんな方法があるのなら、世の中から肩こりで悩む人はいなくなります。湿布やピップエレキバンも売れません。

たびたび話題になる肩こり解消方法は、どれも一時的な緩和・解消法

応急処置・対症療法は必要です。頭痛薬や風邪薬が欠かせないように、一時的な解消方法は必要です。

一時的ではなく、きちんと肩こりを根本的に解決するには「原因」にアプローチしなくてはいけません。

痛み・辛い症状の一時的な緩和はまず最初に行う応急処置の一つですが、これらは「原因」ではなく「結果」へのアプローチです。

この記事で紹介するストレッチ方法は「結果」だけでなく「原因」に対するアプローチもしっかり含まれています。セルフケア方法は、肩こり・首こりに限らず、体のどこかを傷めた時にも使える方法です!!生きていく上で必ず役に立つ情報です。ぜひ身の回りの方にも教えてあげてください。

 

近くに救急外来の病院がない!!

祝日、日曜日は医療機関が休みなことが多いので、急に痛くなってしまった時は、ついつい近所のクイックマッサージや整体にいってみようと思われるかもしれません。

もちろんコリをほぐしてもらうという応急処置としてはよいかもしれないが、一時的な緩和ですので、それを繰り返しても決して症状が治まることはありません。

まずはご自身でできる、当ページで紹介のセルフケアを行ってみてください。

正しいセルフケア方法を行えば、十分症状は軽減されます!!

肩こり専門院が行なっているストレッチ

世の中には、肩こり解消を謳ったストレッチの方法がたくさん溢れかえっています。

もちろん効果を期待できるものもありますが、見よう見まねでやってみると、効果が出ないばかりか却って肩こりが悪化してしまうこともあります。

「プロにやってもらう」「プロに正しい方法を教わる」のが正解ですが、今回は誰もが簡単に、そして確実にできる方法をご紹介します。

このストレッチ方法は、患者さんがご自宅で無理なく実践でき、かつ効果のある方法として、試行錯誤を重ねて考えだしたkatakori LABSオリジナルの肩甲骨ストレッチです。肩こりを治すための鍼灸・マッサージにおいても活用しているストレッチですから効果は保証します◎。

katakori LABSオリジナル肩甲骨ストレッチの特徴

  • 誰でも簡単に行えます。
  • 所要時間、わずか1分!!
  • 確実に効果あります。

健康のコツは肩甲骨、というキャッチフレーズをリラクセーションのお店の立て看板でよく見かけますが、その肩甲骨が今回のストレッチの要です。体操よりも気軽にできます。すべての人に自信をもってオススメしたい肩甲骨ストレッチ!!ご自宅だけでなくオフィスでも行えます。

肩甲骨ストレッチの具体的な方法のご紹介の前に、まず、痛みと熱についての豆知識から解説いたします。

痛くなったら冷やすべき?温めるべき?

セルフケアの基本は、患部を温める、もしくは冷やす、というものです。これを間違えてしまうと逆効果、せっかくのストレッチも活きません。

痛みには冷やすべき痛みと温めるべき痛みがある

現場で特に多く受ける質問のひとつです。

痛みを緩和するために、冷やすべきか、温めるべきか、これは沢山の方が判断に迷う問題です。

古くより「首や腰は冷やしてはいけない」という言い伝えがありますが、サッカーや野球などで選手が負傷した時、応急処置としてスプレーで冷やしているのを見たことがありませんか?
湿布には、冷感湿布と温感湿布の2種類あるので、こういったことも混乱する原因の一つだと思います。

また、やり方によっては、冷やすことで血流の改善も可能なのです。
ですので、「首だから冷やしてはいけない」「腰だから冷やしてはいけない」と部位によってではなく、患部の状態によって、温めと冷却を使い分けることが大切です。

急な痛みは冷やし、慢性的な痛みは温める。

処置の方法として、「温める」「冷やす」この2パターンと考えられることが多いですが、「冷やしてから温める」というパターンも含め、基本的には3パターンあります。ただ、温めるべきなのに温めても改善がみられないという場合は「冷やしてみる」という方法もございます。これらについては、それぞれの症状に応じて、後に詳しく解説いたします。

まず、最初に覚えておいていただきたいのは以下の2つです。

  • 急に痛み出した場合は冷やす
  • 慢性的な痛みは温める

先に冷やしてから温める、またその逆の場合でも、最初にとるべき方法はこの2つの方法のどちらかです!!

肩や腰の急な痛みに効くセルフケア方法

寝違え・ギックリ腰など急に傷めた場合、まず冷やすことが大切です。

急な痛みの場合、炎症が生じていることが考えられますので、ストレッチやマッサージなど無理に動かしたり、温めを行ったりするとかえって逆効果となります。

急性の痛みに対しては基本的には冷却(アイシング)と安静が必要です。

市販の湿布の真実

知りたくなかった!!と思われるかもしれませんが、どのご家庭にもある湿布、ヒヤッとはしますが冷却効果はありません。あくまで冷感、文字通り冷たく感じるだけです。

冷感だけでなく温感湿布もございますが、いずれにせよ冷感湿布も温感湿布も効果に差はありません。

冷たく感じる成分、暖かく感じる成分の違いなだけで、冷やされているわけでも温めているわけでもありません。

ただし温感・冷感どちらの湿布にも血流を増加させる効果はあります。ですので寝ちがえやギックリ腰、打撲、捻挫などの急性の痛みの時には不適切であるばかりか、炎症が助長される可能性もあります。

急性の痛みの時には、氷のうで15−20分間のアイシングが有効です。

保冷剤や氷で直接冷やすと凍傷となる恐れがあるので、その点だけは気をつけてください。繰り返しになりますが、冷湿布には急性の痛みに対するアイシング作用はありません。

鎮痛効果という意味では、医師の処方箋が必要なモーラステープやロキソニンテープといった調剤薬局・薬剤師のいる薬局で購入できる湿布は有効です。塗るタイプも同様です。

効果的なアイシング方法と注意点

アイシングには昔からある氷嚢(アイスバッグ)がとても効果的です。

氷のう

お持ちでない場合、アマゾンなどはもちろん、お近くのドラッグストア・薬局に必ず置いてありますので、是非ご用意ください。

  1. 氷嚢で約20分間、患部を冷やします。
  2. 氷嚢を外して、患部の肌温度が元に戻るまで待ちます。
  3. 再び、氷嚢で約20分間冷やします。

このサイクルをできるだけ多く繰り返し、2−3日続けてください。安静を保つことも忘れずに!!

注意点は、凍傷となる恐れがあるため、保冷剤や氷で直接冷やしてはいけないということです。アイシングとはいえ0℃以下で冷やしてはいけないのです。

 

アイシングのしすぎに気をつけてください。

アイシングのしすぎにも注意が必要です。常に冷やす事によって、却って血流が悪くなり痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしていただきまして、繰り返す場合は皮膚の温度が完全に元通りになってから行うようにしてください。(上記の慢性症状の際にもアイシングを行う場合がありますが、その時とは目的が異なるためアイシング施行時間が異なります)

急に痛くなった時のストレッチやマッサージは禁物です。できるだけに安静に!!

無理なストレッチやマッサージ(整体や骨盤矯正含む)は控えて頂き、痛くない姿勢で安静を保ってください。

どうしても動かなければならない時は、コルセットやネックカラーを着用してください。寝違えやムチ打ちの場合で、ネックカラーが無い場合、簡易的な対処としてバスタオルをマフラーのように首に巻くと負担が軽減されます。

初期の処置をしっかり行えば、24~72時間で炎症が鎮静化しますので、初めの処置が肝心です。

アイシングはあくまで応急処置です。アイシング後は可能な限り早く医療機関を受診し、医師の診察を受け処置を行うことをおすすめします。

腕、足に痺れを感じたら、必ず整形外科へ!!

傷めた後から、手足(肘や膝より末端部分)にシビレ感がある場合は、必ず整形外科を受診し医師の診断を受けるようにしてください。

しびれなどの神経症状が無いようであれば、当院で対応できます。2~3回の施術で日常生活が問題なく送れるようになります。

慢性的な肩こりに効果抜群の肩甲骨ストレッチ!!

症状が慢性的で肩こり・首こりが徐々に痛く、つらくなった場合のセルフケア方法は、以下の手順になります。

  1. ストレッチ
  2. 温める
  3. 状況に応じて冷却する

超簡単かつ即効性の高い肩甲骨ストレッチ

肩こり解消に良いとされるストレッチや体操があらゆる所で沢山紹介されています。肩甲骨ダイエット(※ 肩甲骨ダイエットの嘘・ホント)も巷でよく話題に上がります。肩甲骨ダイエットには、残念ながらダイエット効果はないのですが、肩甲骨を動かしストレッチを行うことは大変意味のあることです。

お待たせいたしました。それでは肩こり解消ストレッチではベストな方法だと自負しております肩甲骨ストレッチをご紹介いたします。

所要時間は約1分です。

「肩こり」にお心当たりがある方は騙されたと思って1回試してみましょう。

Point
肩こり・首こりがつらい時は、肩甲骨の動きや位置が正しくない状態です。つらい部分にのみ目を向けるのではなく、その部分に負担をかけている原因、つまり肩甲骨の動きを改善するということが大切です。

step.1

ストレッチその1
肩をグーッと上にすぼめて力を入れて・・・(この時に顎を引かず、やや遠くを見るように少しだけ上を向くようにしましょう)
ストレッチその2
一気に脱力します。

 

これを2~3回行います。

step.2

ストレッチその3
グーッと背伸びをして手をなるべく上に伸ばすように力を込めます。この時もやや上を向く意識を持ちます。両腕を耳の後ろにつけるように力を込めると同時に肩甲骨の外側を伸ばしていきましょう。(肩関節が痛い場合は無理をしないでください。)
ストレッチその4
その後、両肘を後下方に寄せていき、左右の肩甲骨を近づけるように力をいれます。

 

これを2~3回程繰り返します。

step.3

ストレッチその5
脇の下から背中にかけての筋肉(図の赤い部分)をストレッチします。
back-stretch
四つ這いになって腕を頭上にあげていきます。この時も肩甲骨を中心に寄せるように意識します。腕の付け根と胸が伸びるのを感じてください。10秒を2~3セット程。
lat-stretch
デスクでは左の写真のように応用することもできます。ご家庭はもちろん、オフィスでのデスクワークの合間にお試しください。

 

この体勢はご存知の方、よくされている方も多いかもしれませんね

step.4

最後に腕を大きく回します。

前回し後ろ回し5回ずつです。この時も下向かず、やや上を向くくらいの意識で行ってください。

この時に、気をつけるべき大切なポイントがあります!!

  • 両腕同時に行う。
  • 肘を耳の高さまであげる。

この2点を抑えないと効果が期待できませんので注意してくださいね!!書籍や動画、テレビなどで紹介される様々な方法を見よう見まねで試しても効果がない場合は、抑えるべきポイントを抑えられていない、そしてそもそも説明されていないことが多いです。

  • この4つのメニューを行い、肩甲骨の周囲や背中がスッキリした感じがあればOKです。
  • このストレッチは、1日に何回行っても大丈夫な、メリットしかないストレッチです。

どうでしょう?少し楽になりましたか?

このストレッチ方法は以下のYouTube動画でもご紹介していますので、ご覧ください。

 

肩こり治療で行うストレッチ

 

ご紹介した肩甲骨ストレッチの目的と、肩こり解消ストレッチとして機能する理由を解説します。

首や肩のこり固まった筋肉をいくらストレッチしても、伸びませんし楽になりません。肩こりでつらくなる筋肉は頚椎と肩甲骨をつなぐ筋肉です。そのため、以下の図のように肩甲骨をあらゆる方向に動かすことが大切です。

ShoulderMvmnt

肩甲骨ストレッチが肩こり解消ストレッチとして効果的な理由

今回ご紹介したストレッチ方法は、首肩の筋肉への負担を減らしつつ肩甲骨を動かすことを目的としたストレッチなのです。これが、肩こり解消に効くのです!!

ストレッチには種類があります!!一般的なストレッチは静的ストレッチ

皆様がご存知のストレッチと呼ばれているものは、じっくりと筋肉を引き伸ばして行うストレッチ方法です。これは、ストレッチの中でも静的ストレッチ(=static stretch)と呼ばれているものです。

ストレッチには大きく分けて

  • 静的ストレッチ
  • 動的ストレッチ
  • PNFストレッチ

の3種類があります。

一般的なストレッチは静的ストレッチ、今回ご紹介したストレッチ方法は、動的ストレッチ(=dynamic stretch)+PNFストレッチになります。

動的ストレッチが効く理由

セラピストとしての経験から、動的ストレッチによる肩甲骨ストレッチを自信をもってオススメしています。実際に試して頂ければ効果を実感していただけるはずなのですが、本当に効果あるの?と試されていない方のために、動的ストレッチの有効性を示唆した論文を見つけてきました。

〜筋ストレッチング法の違いが筋血液量に与える影響〜

酸素化ヘモグロビン(新鮮な酸素が含まれたもの)変化量(安静時値とストレッチング後の値との差)は,ダイナミックストレッチではスタティックストレッチと比較して有意な増加を認めた。しかし,脱酸素化ヘモグロビン(酸素が含まれてないもの)の変化および頚部側屈可動域,筋硬度には有意な差を認めなかった。

筋ストレッチング法の違いが筋血液量に与える影響 公益社団法人 日本理学療法士協会

簡単にまとめると、じっくりと引き伸ばすストレッチ(スタティックストレッチ)と動きを伴ったストレッチ(ダイナミックストレッチ)を比べた所、筋肉の硬さや首の可動域には差が生じなかったが、動きを伴った方が「血流改善効果」が高かった、ということです。

肩こりでつらいその部分におきましては、筋肉が硬くなり血流が悪くなってしまっている状態です。よって・・・「今つらい!!」コリの症状に対処するためであれば、ゆっくり静かに伸ばすストレッチよりも、動きを伴ったもの方が効果的となるわけです。

動的ストレッチだけでなくPNFストレッチの要素も盛り込んだ肩甲骨ストレッチ

katakori LABSが実践・推奨している肩甲骨ストレッチは、動的ストレッチに加えPNFストレッチの要素を取り入れています。その理由は即効性を高めるためです。

PNFストレッチの要素を加えることでなぜ即効性が高まるのか?そもそもPNFとは何なのか?

以下に、ストレッチなのに力を込めるの?という疑問をお持ちの方への回答と合わせてPNFについて簡単にですが、まとめました。理論にご興味がある方はご覧ください。

 

筋肉が凝っている状態とは、筋肉が収縮したまま緩まない状態

人体に本来備わっている機能として、筋肉は力を入れる(収縮)とゆるむ(弛緩)の2つの性質があります。これは人体が円滑に動く上で必要不可欠な機能です。生理学用語でⅠb抑制(イチビー)といい、反射のひとつで意志とは関係なく生じます。時間がたっても戻らないひどい凝りとは、何らかの理由で筋肉が持続的に収縮してしまっていて、弛緩することができない状態にあります。つまり、こっている部分は本来備わっている正しい機能が失われてしまっているのです。

収縮して硬くなった筋肉を伸ばしても効果は期待できません。

肩こり・首こりに良いとされるストレッチは僧帽筋や肩甲挙筋など硬くなっている筋肉を伸ばそうとします。読者のみなさんはもうおわかりだと思いますが、こってつらくなっている部分をいくらストレッチしようとしても伸びないですし楽にならないのです。

その理由は、肩こりで硬くなっている筋肉は、疲労の機序が一般的な筋疲労(階段を上って足が疲労するなど)と異なるからです。具体的には、肩こりでつらくなる筋肉は能動的に収縮を行い疲労したのではなく、不良姿勢などで持続的に引き伸ばされる(ストレッチされ続けて)事によって、負荷を与えられているからなのです。

肩こり・首こりに効果的なストレッチとは?

Ⅰb抑制は筋肉のスジが引き伸ばされた時に生じます。ストレッチはⅠb抑制という反射を意図的に生じさせ、筋肉が弛緩することを望みます。しかし、肩こりでつらくなる筋肉は、引き伸ばされ続けてしまっている事から疲労が生じているため、Ⅰb抑制が生じにくくなっています。「引きのばされる」という刺激に慣れてしまっているのです。だから、慢性的に患っていらっしゃる方は、つらい部分を伸ばす肩こりに良いとされるストレッチをいくら行ってもほぐれないし楽にならないのです。

そこで、肩こり・首こりに対しては単なるストレッチではなく、一工夫したストレッチを行う必要があります。

Ⅰb抑制は筋肉が強く収縮した時にも生じます。そのため、『筋肉は最大収縮後に最大弛緩する』と格言のように言われることもあります。つまり、つらくこってしまっている筋肉をあえて収縮を促します。そうすることによってⅠb抑制を効果的に喚起して筋肉を弛めるのです。これを専門用語ではPNFストレッチと言います。

一人でもできるPNFストレッチを応用したセルフストレッチ

PNFはProprioceptive Neuromuscular Facilitationの略で、日本語では固有受容性神経筋促通法となります。 ・・・難しいですね。簡単に言うと、全身各所にあるセンサーを刺激して体の機能を改善するリハビリの手段です。とても専門的で難しい技術・理論なのですが、PNFストレッチとはその理論をストレッチに適用したものです。PNFストレッチは関節の可動域を大幅に改善することができるため、プロアスリートなど結果を求める方に対してしばしば行われる技術です。基本的には専門家がマンツーマンにて行う技なのですが、一般の方でも要点をおさえて行えば、自分自身で行ったとしても今まで以上の効果が期待できます。つまり、ご紹介させていただいたストレッチ方法はPNFストレッチを応用したものなのです。だからこそ従来のストレッチと比較して効果が期待できるのです。

当院推奨の肩甲骨ストレッチが、他のストレッチと比べて効果がある理由をまとめますと・・・

違い①
首ではなく肩甲骨を動かす事→ 安全。何回行ってもOK!
違い②
動きを伴ったストレッチ→ ゆっくり伸ばすストレッチよりも血流改善効果有り=症状解消に効果的
違い③
PNF理論を導入→ 単なるストレッチでは効かない方へも効果的

という3点が巷に広まっている方法と大きく異なる点であり、当記事の肩甲骨ストレッチが効果的である理由です。

辛くなった時にだけ試すのではなく、気分転換に行うなどと習慣にしていただくと肩こり対策にもなります。日々、肩甲骨を動かす、という意識を持ってください。

肩甲骨剥がしをセルフで行うのはNG!!なんちゃって肩甲骨剥がしは逆効果の可能性も・・・

肩甲骨を動かしたいけど痛くて動かせない場合に有効なのが「肩甲骨剥がし」です。一時期話題にもなりましたし、名前のインパクトが大きいのでご存知の方も多いと思いますが、実際どういうものかとなると、間違った認識が蔓延しているようです。

もともとは、肩甲骨の下に手を入れて剥がすと気持ちいい、ということから流行りました。当然、人にやってもらう方法です。

肩甲骨はがしところが“肩甲骨剥がし=肩甲骨ストレッチ”のように紹介されているホームページが多々ございます。専門知識のない方が、いろいろな情報をまとめたもの、その中には自称・専門家による情報もあります。

肩甲骨剥がしはセルフでできることではございません!!

人間の体は、自分自身で動かせる動作と、動かせない動作がございます。動かせない動作を無理に行おうとすれば、筋肉や筋を痛める可能性が高いです。それでは逆効果ですので、肩甲骨はがしをやってみようとお思いの方は、治療院にご相談ください。

なお、なお、肩甲骨はがしだけで行っても根本的な解決にはなりません。繰り返しで恐縮ですが、とても大切なポイントですので、ご留意ください。

全体的につらくて重だるい・慢性的な痛みのある方 → 温めてください

体を温める方法は多々あります。今回ご紹介する方法は、自宅で簡単にでき、ホッカイロや電気機器よりも確実に効果が高い方法です。

  1. 自作の簡易ホットパックを作ります。

    タオルを濡らしてビニール袋にいれ、レンジでチンをすると簡易ホットパックができます。(触れる際には火傷にご注意ください)

  2. ホットパックをさらにもう一枚タオルでくるみ、患部を数分温めます。
  3. 患部の皮膚の温度が元に戻ったら再度行います。

    低温火傷の可能性があるため行う際は皮膚の状態を常に観察し、くれぐれも注意を払って行ってください。

患部だけではなく、手足の冷えに対してもオススメです★

ホッカイロなどの懐炉の常用は避けましょう。

冷えを気にされて、使い捨てカイロ等を常に貼り付けている方がいらっしゃいますが、これには注意が必要です。良くも悪くも人体の感覚には慣れが生じます。常時カイロで温めていると、温熱刺激に慣れてしまい、温まらなくなってしまうばかりか、温度に体が慣れてしまい体を温める機能が低下してしまいます。つまり、常に温めているとそれに慣れてしまうため、自ら温める機能が低下して冷えを助長させてしまう可能性があります。そのため常にカイロで温めていないといられないという状態となってしまいます。常に温めるのではなく、メリハリをつけて行うことが良いです。

腰痛改善本などの情報は鵜呑みにしないでください。

腰痛改善本で大抵紹介されている体操にマッケンジー体操があります。これは“うつ伏せに寝て過度に体を反らせる運動”なのですが、マッケンジー体操を自己判断で行いますと却って悪化する可能性があります。同様に、あおむけに寝て膝を曲げて状態を起こす“腹筋運動=ウィリアムズ体操”もケースバイケースです。割れる腹筋(腹直筋・腹斜筋)を鍛えても腰痛は改善しません!むしろ首へも負担がかかります。

お体の状況は千差万別であり、形だけをまねるエクササイズを行っても効果が出ないばかりか、却って逆効果ともなりかねません。体造りをして根本的な改善をお考えの場合は専門家へご相談ください。プロのスポーツ選手に専属のトレーナーがつくように、あなたの体を専門家がみることが改善への近道なのです。

サポーターやコルセットの常時着用は避けましょう。

サポーター等を常時着用するのは避けましょう。例えば、慢性腰痛の場合のコルセット。コルセットを四六時中毎日着用していますと筋力低下を招きます。そうなるとコルセットが手放せない体となってしまい、さらに難治性となり慢性化させてしまうのです。サポーターなどは、どうしても必要な時のみ、ご使用ください。

慢性的なコリや痛みの原因は1つではないということ←重要

慢性的なコリ・痛みの原因は“骨盤・骨格のゆがみ”、“数センチの足の長さの違い”、“リンパ・血液の滞り”が根本原因ではありません。ひとつの原因だということで納得してしまいたい気持ちはわかります。シンプルな方が気持ちが楽です。しかし、痛みやコリなど慢性的な症状の原因は非常に複雑です。それによる不合理な動きや姿勢の及ぼす悪い影響が集約された結果なのです。そのため根本的に改善するためには、まずはしっかりと複数ある原因を見極めた上でひとつひとつ解消していく「原因療法」が必要です。その部分だけではなく全身の筋力・動作などを改める「体造り」も行わなければなりません。根本改善のためには根気はいりますが、きちんとした専門家と共に行えば必ず体は良くなります。

どうしてもつらいポイントがあり、いてもたってもいられない、強い力でグリグリ押したい感覚のある方(温めを行っても改善しない方) → 冷やしてください

押してダメなら引いてみよ、と同じで温めてダメなら冷やしてみようということなのですが、これは実はとても大事なことなのです。一般的に「コリは温めるべき」という認識されています。とにかくコリは温める、そう信じて疑うことすらしない施術者が大半なのです。

  • 温めて改善しない場合には冷やすことで効果が出ることが多い。

これは私の実体験・臨床経験から強く主張したいことです。今まで温めて効果が出なかった方は、先入観を一度お忘れていただき、ぜひとも冷やしてみてください。

冷やし方の手順

氷のう(ビニール袋に氷と水を入れた簡易的なものでも良いです)にて患部へ、10分程度アイシングを行ってください。冷湿布ではなく、氷のうを用いるのがポイントです。冷湿布は冷たく感じますが実際の冷却効果はほとんどないのです。アイシングを行って症状が改善しない場合は、アイシング後にさらに上述しました②の温めを行ってください。これにより血流改善効果が補足され、より効果的となります。

  1. 氷嚢で約10分間、患部を冷やします。
  2. 氷嚢を外して、患部の肌温度が元に戻るまで待ちます。
  3. 再び、氷嚢で約10分間冷やします。
  4. この繰り返しで改善すればOKですが、改善しない場合は、ホットパックを使って温めてみてください。

 

保冷剤や氷を直接肌につけないでください。

アイシングといえど0℃以下で冷やしてはいけないのです。またアイシングのしすぎにも注意が必要です。常に冷やす事によって、却って血流が悪くなり痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしてください。(凍傷の生じ方は個人差がありますので、当記事にてご推奨しております時間内だとしても皮膚の状態を確認しながらくれぐれもご注意のうえ行うようにしてください。下記の急性症状の際にもアイシングを行いますが、その時とは目的が異なるためアイシング施行時間が異なることをご留意ください。)

あなたに肩こり専門家としてお伝えしたいこと

ご自宅などで、簡単にできるセルフケア方法は、多くの方が興味をお持ちのことだと思います。コンビニや書店には、そのような類の書籍、雑誌がたくさん販売されています。テレビやインターネットでも、○○体操がすごい!!と取り上げられることもしばしばです。しかし、それで治った方は、どれだけいるでしょうか?

簡単で楽なものに人はどうしても頼りがちです。しかし、生活が便利になったことによる代償は、最終的には少なからずとも体、健康にくると思います。

身近にあることをいくつか具体例としてあげ、問題点をまとめておきます。

クイックマッサージ・整体・カイロプラクティックについて

肩こりとなると多くの方がまず足を運ぶのはクイックマッサージ・整体・カイロプラクティックなどです。

つらい部分をグイグイ押して揉みほぐすのは、その時は気持ちが良いのですが、それは一時しのぎです。一時しのぎはそれはそれで必要ですが、注意しなければならないのは、人間の体は刺激に慣れていってしまうように出来ているという点です。

強い刺激に慣れてしまいますと、一層ほぐれにくくなり、慢性化してしまいます。そしてさらに強い刺激をもとめ・・・と悪循環が生まれてきてしまいます。これは、受ける側の問題というよりは行う側に問題があります。

首の関節をむやみに鳴らさないでください。

また、首をボキっとならすのは一時的には爽快感があり楽になったように感じますが、外から力を加えても骨を矯正する事はできませんし、反対に背骨を傷めたり、却って周囲の筋肉の緊張を増すことにもつながりかねません。首ボキ施術を受けて頚椎を傷めてしてしまい、当院に駆け込んでいらっしゃる方が本当に後を絶たないのです。なので「首ボキ施術」を受けるのだけは絶対にやめていただきたいと、これだけは強く主張させていただきます。整体やカイロプラクティックではしばしば気軽に背骨をボキっと鳴らしますが、患者さんからもそれを避けてもらうようお願いしても良いと思います。それに対して意味の分からない説明をされたら、通うのは止めるのが賢明な判断です。施術をうける側が理解できないことを話す施術者を信用できますか?

セルフケアは日常生活を送る上でよいことですが、応急処置でもあります。

ご紹介させていただきましたセルフケアは日頃のケアとして行っていただくのはとても良いストレッチ方法です。肩こり解消に効果的ですが、あくまでも応急処置の範疇です。

注意していただきたいのは、セルフケアに限界があるという点です。

症状や体の状態は千差万別ですし、肩こりの原因はとても複雑です。そのため全員が肩こりを自分で治すことはできないという事はご理解いただきたいと思います。

このストレッチ方法で改善されない場合は、残念ながらセルフケアで状況を変えるのは難しい、つまり原因に対する自己解決が難しいので、理学療法が必要といえます。

肩こり・首こりは直近で生活が危機となるものではないため、どうしようもなくつらくなるまで後回しとされがちですが、「心底困っているわけではない」という軽症の方ほど簡単な処置やセルフケアで治すことが可能です。

たくさん通ってもらうための施設があふれていますが・・・

実際、対症療法を繰り返すというとにかく通ってもらうことを目的とした治療や、慢性化し難治性となってから回数多く治療を行ったほうが、ビジネス上に限れば良いです。

外食産業やリラクセーション・旅行といったビジネスでは、たくさん利用してもらうことは絶対に必要です。

医療はそうであってはいけないはずです。

重症化してしまうと完全に治す事自体が難しくなりますし、患者さんの費用面や治療に費やす時間面の負担も大きくなります。

重症化を防ぐ、そして軽症のうちに治してしまうという意味も含めて、さほど悩ましくない初期のうちに根本治療を始めていただくのがベストであり、私たちセラピストが望むべきことです。そうすれば、少ない回数の治療とセルフケアのみで改善可能です。

肩こり解消や体幹トレーニングの目的でヨガ教室に通われている方も多いと思いますが、まず肩こりを治してからヨガ教室に行ってください。

効果が感じられなかったり、逆に疲れて体調が悪い、そんな悩みを抱えていらっしゃいませんか?

はっきり申し上げますが、ヨガ教室で慢性的な肩こりはよくなりません。ヨガを本気でやっている人・理解している人はそもそも肩が凝らなくなるなんてことは決して言いません。

ヨガは、健康な人が、より健康的な生活を送る上では効果があるのです。

予防対策の方法は、できるだけ専門家に相談しましょう。耳障りのよい安易な情報は鵜呑みは禁物!!

いま現在、症状の自覚がなくても、猫背・姿勢の悪さ、体の硬さ、ポッコリお腹に心あたりが有る方は肩こり予備軍です。

肩こりを発症する筋肉・骨格の条件だけは整っていることになります。

肩こりというのは自覚症状ですから、症状が出る前に一度はお体のチェックをしていただくことが、発症を未然に防ぐ、肩こり予防という意味で大切です。

要点をきちんとおさえたセルフケアなら、軽症であれば十分改善します。

無理なくできる範囲で行ってください。

お体のチェックや細かい部分の修正、体造りのための個々の状態に適したセルフケア方法など一歩進んだことをお求めの場合は専門家に相談しましょう。

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中~重症の方は、どうしてもご自身で治すということに限界があるのも現実問題あります。そのため、「つらくなっては一時しのぎのマッサージでその時をやり過ごす」というのを繰り返すのではなく、根本原因をつきとめて対処する『治療』を行うことをご検討いただけたら幸いです。

もちろん、できる限りご自身でケアを行っていただく事は大切です。

慢性的な症状の根本的解決にはどうしても時間がかかってしまいます。ただ、原因に対する処置を行い、体を変えれば、現在のつらい状態から解放できる!!ということは覚えておいてください。

通ってもらうための施設を選ばない!!

いくら時間と費用をかけてマッサージに通ってもすぐに元通り・・・次第に悪化・・・という負のスパイラルから脱却するためには根本原因の解明と適切な処置が必要です。

一度、いつまで通い続ければいいんだろう?と冷静になってみましょう。

もし、あなたが心底肩こりに悩まされているのでしたら、まずはこちらで紹介したセルフケアを行ってみてください。それで効果が感じられない場合、お電話やメールでお問い合わせください。わかる範囲内で、できる限りのご対応をさせていただきます。

肩こり ラボは、通ってもらうための施設ではなく「通う必要のないカラダになる」ことを目的とした代替医療機関です。

当記事がひとつのきっかけとなりましたら幸いです。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


歯ぎしりが肩こり原因?咬み合わせが悪いと肩や首が凝るって本当?

むし歯がないのに歯が痛い!!

肩こりからくる歯痛??

歯が痛いと肩が凝る・・・?

肩こり・首こりが歯痛の原因?

噛み合わせを治せば、肩こりが治る?

肩こりと歯痛、そして咬み合わせや歯ぎしりといった咬合異常と肩こり・首こりは関係があるということはきっと聞いたことがあるはずです。

なぜか、その根拠は明確にされていません。

つまり噛み合わせと首肩こりの関連性の根拠が示されていないのです。

鍼灸・マッサージの現場においても「なんとなくみんなが言っているからそうなんだろう」という考えで発言している施術者ばかりです。

今回は論文・文献を基に、その関連性を探っていきます。また、ガムの噛みすぎの問題点、首や肩への影響、正しいガムの噛み方についても触れていますので、是非お読みください。

正しいガムの噛み方
 

記事内容において一部専門用語が入っておりますのではじめに解説させていただきます。



しゃく
口で物を噛むことです。摂取した食物を歯で咬み粉砕することです。

咀嚼
そしゃく
噛むのに顎を動かすための筋肉です。咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つをいいます。機能上、舌骨上筋群を含める場合もあります。

咀嚼
そしゃく
運動
モノを噛む動きのこと。

こう
ごう
上の歯と下の歯とのかみ合わせのこと。

モノを噛む時には首に力学的負荷がかかります

頚椎は高機能

動物実験ではありますが、意識とは関係なく、噛み合わせ・咬合時には頚椎(けいつい)に負荷がかかることがわかっています。頚椎というのは首の骨です。人間の頚椎は7つの骨で構成されていますが、哺乳類の頚椎は大体みんな7つあります。首の長いキリンも頚椎は7つです。

キリンも人間も首の骨は七つ

噛む力はとても強いということ

噛む力というのはとても大きく、例えば肉を噛む時は、1平方センチ当たり約10~14キロもあります。ですから歯の表面が人体でもっとも固いエナメル質で覆われているんですね。モノを噛むと頚椎に負荷がかかると申し上げましたが、これも大きなカであることは何となくご理解いただけると思います。

頚椎人間の体は上手くできていまして、大きな力による負荷をうまく分散させる構造になっています。人間の頭の重さは大体5kg。頭を上手く支える為に頚椎はまっすぐではなく緩やかにカーブしていて、7つの骨がスプリングのような構造をとっています。

これは、脳がきちんと働くようにするためです。つまり、どんな体勢でも脳がきちんと機能するように、体は頭をなるべく平衡に保とうとするのです。そして、モノを噛む時にかかる負荷も分散・吸収するようになっています。

具体的にどのように頚椎に負荷がかかるのか?

  • 片側で噛んだ場合、噛んでいない側に負担がかかる。つまり、右側の歯で噛んだ時は頚椎の左側へ負担がかかり、反対も然りとなる。
  • 片側で噛んだ場合、噛んでいない側に頭部を傾ける力が作用する事となる。
  • 噛んでいない側では、第3および第7頚椎は頭部が片側に傾斜するのを防ぐ支点となる。
  • 噛んでいる側では、犬歯で木片を噛ませたときには第2頚椎が、第1大臼歯で噛ませたときは第4頚椎が、片側に傾斜するのを防ぐ支点として働く。
  • 咀嚼運動において、頚椎にかかる力学的負荷は第6頚椎に最も集中する。

ちょっと複雑ですね。

もっと簡単で、わかりやすく説明します。

食事の際、両側同時や同じ配分でモノを噛む方はとても少ないと思います。ほとんどの方が左右どちらかの歯で噛むと思います。左右どちらかで噛むと いうことは、首が傾くような力が無意識に加わっているということです。それにも関わらず首が動かず直立を保っていることができるのは、首周囲の筋肉が働き、その動きを制御しているという事なのです。

つまり、癖や口の中の痛みなどでどちらか一方のみでモノを噛み続けると、頚椎や頚部の筋肉の一定部位にも継続的に負担がかかることとなります。

[参考文献1] 咬合力に対するサル頚椎の力学的反応 http://ci.nii.ac.jp/naid/110001723670/

噛む時だけではなく、口を開ける時にも首に負担がかかります

モノを食べている時の骨と筋肉の動きに着目してみると、一見、顎の関節のみが動いているように感じます。しかし、詳細に分析をしてみますと、その力学的運動軸は顎関節ではなく、7つある頚椎の骨の上から2番目に位置する第二頚椎の歯突起部にある、ということがわかっています。1番目と2番目の頚椎は以下の頭のようになっています。

第一頚椎と第二頚椎

第二頚椎は、このように特徴ある形状で軸椎とも言います。この歯突起というのは 「のど仏」(火葬場で拾うお骨の方です。喉にある膨らみも喉仏といいますが、あれは軟骨です。)です。その部位は本来、矢状面(体を横から見た面)上を回転するための構造はしておらず、顎の動きと同様に動く関節としての機能はもちあわせていませんが、回転する力が作用します。

あくびをする時など自然と顔面は上を向きますし、むちうち症などで頚椎を損傷すると口の開け閉めだけで頚部に痛みを感じることから、開閉口運動に上部頚椎が関与していることは間違いありません。

噛み合わせは閉口動作ばかりが着目されがちですが、実は開口動作も重要です。だらんと力を抜けば重力に引っ張られて口があくため、口を開くのに負担はないように思えますが、開口動作にも筋肉がしっかりと働いています。首に対する力学的負荷は、口の開け閉めともに考えなければなりません。

開口閉口

開口時、外側翼突筋・舌骨上筋群が働きますが、それに伴い頭が前方へ引っ張られることとなります。しかし、モノをたべている時に頭が前後に動いている方はいませんよね。これは、物理の法則上、力が作用しているのに関わらず動きが出現しないということは、それと同じ強さの力が相反する方向に作用していることを意味します。つまり、口を開ける時、頭が前方にいくのを後方へ引っ張る力が見えない所で作用しているということです。これを担っているのが、首の深部に存在する後頭下筋群です。後頭下筋群は、しばしば頭痛をまねく頑固な首こりの原因となる筋肉です。

 

後頭下筋郡

首の筋肉は、意識のない所で姿勢を保つために作用しているため、異常な状態でなくとも負担のかかりやすい部分なのです。すごく大雑把な言い方ですが、肩こりの原因は、この首の筋肉の問題であることが多いのです。

[参考文献2] 顎関節症 –生理的咬合の判定基準– (歯科ブックレットシリーズ35) 著者:藤田和也 出版元:株式会社デンタルフォーラム社

顎関節症持ちは姿勢も悪い?

顎関節症と姿勢の関連性について調査した結果、顎関節症の方が健常者と比べて、前のめり(猫背)の姿勢になっている傾向があることがわかりました。

猫背になれば、当然頭部を支えるために首肩の筋肉は必要以上に疲労する事となります。つまり、肩こり・首こりとなりやすいといえます。

猫背となる原因が顎関節症とはいえませんが、顎関節症を患っていると同時に首こりを自覚する方が多いという事のひとつの理由になるのではないでしょうか。

[参考文献3] The relationship between forward head posture and temporomandibular disorders. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7488986

ものを咬む筋肉と首には深い関係があります

咀嚼筋が緊張すると首の筋肉も緊張する

顎関節症の患者さんは顎を動かす咀嚼筋の硬化や痛みと同時に首こりや痛みを自覚することが多いため、咀嚼筋と首の筋肉の関連性を調べた所、咀嚼筋が 硬い人は僧帽筋と胸鎖乳突筋も同時に硬くなっていることがわかりました。

また、咀嚼筋を動かすと、同時に胸鎖乳突筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群、頭半棘筋、頚半棘筋、多裂筋が共同的に収縮を起こすことがわかっています。

顎関節を動かす咀嚼筋と、肩こり・首こりにお悩みの方が硬くなっている頚部の筋肉は密接な関係にあるようです。

[参考文献4]Influence of masticatory muscle pain on electromyographic activities of cervical muscles in patients with myogenous temporomandibular disorders http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2842.2004.01266.x/abstract?deniedAccessCustomisedMessage=&userIsAuthenticated=false

[参考文献5]Anterior and posterior neck muscle activation during a variety of biting tasks http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1600-0722.2012.00969.x/abstract?deniedAccessCustomisedMessage=&userIsAuthenticated=false

咀嚼筋は一般的な筋肉の中でも特殊な存在だった!?

北海道大学 大学院歯学研究科 北川 善政教授の研究では、顎を動かす働きをする咀嚼筋の特殊な性質を示しています。

咀嚼筋は骨格筋に分類されますが、特にヒトの咬筋は、手足の筋肉ではみられない心筋(心臓の筋肉)と同じ細胞の特徴を持っており、さらに咀嚼筋の興奮性には交感神経系の調節が関与していることがわかっています。

咀嚼筋

発生学上、咀嚼筋は鰓弓(さいきゅう)から分化するため、鰓弓筋ともいわれます。鰓弓筋は、他に呼吸や嚥下(えんげ:食物を飲み込むこと)に関わる筋肉、つ まり生命を維持するために重要度が高い部分を構成する筋肉が該当します。例えば呼吸は意識的(随意運動)に行うこともできますが、通常は無意識的 (不随意運動)に行われています。

嚥下も喉元までは舌による随意運動ですが、その先は不随意運動となり胃まで食物を運びます。 考察となりますが、無意識的に歯を喰いしばったり、歯ぎしりをしてしまうのも咀嚼筋が鰓弓由来であり不随意運動を行う要素を持ち合わせているからかもしれません。

そして、肩こり・首こりでつらくなる僧帽筋や胸鎖乳突筋なども鰓弓筋であるため、上記であげさせていただいたように、咀嚼運動と首の筋肉が同時に 興奮するなど密接な関係にあるのではないかと考えられます。鰓弓由来の筋肉は、手足に存在する一般的な骨格筋と分子レベルで構造が異なっていることがわかっています。

咬合異常(噛み合わせ・ブラキシズムなど)と肩こり・首こりが関連づけられるは、単に経験則ではなく解剖学・生理学・運動学の観点から考察すると あながち間違いではなさそうです。

[参考文献6]顎変形症の成因に関する咀嚼筋の筋病理学的研究 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/17659621.ja.html

[参考文献7]除神経嚥下筋におけるエネルギー代謝と筋病理学的解析 http://kaken.nii.ac.jp/pdf/2011/seika/C-19/10101/22659361seika.pdf

[参考文献8]鰓弓筋の発育と筋蛋白質の分化 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/12771094.ja.html

咀嚼筋を支配している神経も特殊である!

通常、骨格筋(手足など自らの動かすことのできる筋肉)は交感神経の働きによって血流が増加します。

ところが咬む筋肉は副交感神経性血管拡張神経の働きによって血流が支配されているのです。

これはどういうことかといいますと、ストレスがかかっていたり、体が冷えている状況では、顎の筋肉の血流が悪くなります。それが、痛みなどの原因 となる可能性があるということです。

また、咀嚼筋は交感神経が活発に働くと緊張が増すという研究結果もあり、自律神経と密接な関係にあることが示されています。

原因不明の歯痛や難治性の三叉神経痛・顔面神経麻痺、肩こりなどの処置として首肩を温めることが推奨されますが、これは単に局所の血流を良くする ためだけではなく、交感神経の働きを抑え、副交感神経を優位にすることも大きな目的です。ペインクリニックでは、そのような症状に対して星状神経 節ブロック(交感神経の働きを抑える注射)が行われる事もあります。

このような事から、顔・顎・首周辺の痛みやコリに関しても自律神経が非常に密接に関わっていることが考えられます。

[参考文献9]Evidence for parasympathetic vasodilator fibres in the rat masseter muscle http://jp.physoc.org/content/569/2/617.full

[参考文献10]咀嚼筋の分化と痛みに対する交感神経活動の影響 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/22592203.ja.html

ただし、これらは医学的根拠であるとは、まだ完全には言い切れません。

これまでは噛み合わせ・咀嚼運動と頚椎・首周囲の筋肉との関連性を示してきましたが、否定的な文献もあります。

[参考文献11]The association between the cervical spine, the stomatognathic system, and craniofacial pain: a critical review.

この文献では、数々の文献をまとめて総合的に評価するメタ分析(メタアナリシス)を行っています。総評として、当領域の各文献のエビデンスレベル が低いことがあげられており、歯科領域と首から上部の痛み・不快感との関連性は現段階の研究では必ずしも確定的とはいえないという結論に至っています。

痛み、症状の感じ方というのは、あくまで自覚症状です。自覚症状は錯覚や思い込みの影響が少なくないために、判定には聴取を行うことがとても大切なのです。信頼性を高めるためにはできるだけ多くのサンプル数が必要になりますが、それには大変な労力がかかります。時間も必要です。だからこそ、患者さんとの向き合う時間は、本当に大切です。

ガムを噛む=健康に良い・・・って思っていませんか?

難しい話が続いてしまいましたので、噛むことと首や肩との関連する話で、身近な話をしたいと思います。

よく噛んで食べなさい!!誰もが子供の頃言われることですが、よく噛んで食ことをすることはとても大切なことです。

最近ではなんと視力にも関係していて、噛む筋力が弱まると眼球の筋肉も弱まり視力が低下するということもわかってきました。

健康のためにガムを噛むということ

仕事中にリラックスや集中など何かしらのメリットを期待して長時間にわたってガムを噛み続けている方は多いと思います。

ところが、体に良いことをしているつもりが知らず知らずのうちにかえって首に負担をかけてしまっている可能性があります。

ガム噛みすぎ

噛むことはとても大切!!健康維持には絶対に必要です。

ガムを噛むことで健康増進に効果があるように宣伝されています。特保マークのついた商品もよく目にします。

一般的に提唱されているガムを噛むメリット

  1. 唾液分泌が増加する

    口臭予防・虫歯予防・免疫力アップ・癌予防

  2. 顎を動かすことによって血流が増加する

    脳の活性化

  3. 嗜好品として楽しむ

    ストレス解消・リラックス

  4. 満腹中枢が刺激される

    ダイエット

などがあげられます。

調査をしてみると、確かに咀嚼運動によって脳内血流が増加することや、自律神経の乱れが整うという文献が存在します。そして、唾液には免疫グロブリンや、殺菌・消毒効果のある酵素が含まれることもわかっています。これを単純に免疫力アップ・癌予防と結びつけるのは一考が必要です。

免疫力アップと聞くと病気にかからなくなるようなイメージを持つかもしれませんが、唾液によるものはあくまで「食物からの感染を防止する」という ことが主な目的となります。血液中の白血球数や免疫グロブリンの量が増え、全身的な免疫力が向上して感染症への耐性が増すのではないのです。

癌予防効果については、唾液に含まれる一部の酵素が発ガン物質の作用を低下させるのではないかと言われていますが、この真相は定かではありません。唾液の作用としてはあくまでも消化の補助と口の中の殺菌・消毒です。また、ガンは非常に複雑なメカニズムによって形成され、発ガン物質があれば必ずしも発症するわけではなく、反対に発ガン物質が体内に入らなくても発症します。ガムを噛み、唾液が分泌され、ガンを予防する効果がどれほどあるのか・・・医学的にはかなりあやふや状態です。

ガムを噛む事によって血流改善や唾液分泌量が増えるのは良い事です。だからといって免疫やガンにまで話が及ぶのは・・・行き過ぎだと思います。

インターネットで調べてみますと、ガムを噛むと良いことしかないといった宣伝広告が目立つので、つい否定的な側面を記してしまいましたが・・・多くの方がガムを噛む目的は「口臭予防」「虫歯予防」「リラックス」と思います。こういった効果は『顎を適度に動かして、なるべく多く唾液を分泌させる』ことによるものです。

噛みすぎは禁物!!頭痛の原因にも・・・

ガムは歯のためだけでなく、口臭予防、禁煙のため、噛む筋肉を鍛えての小顔効果を期待、満腹中枢を刺激して食事量を減らすダイエット目的で噛む人も多いでしょう。目的があると、どうしても必要以上に長時間ガムをかみ続けてしまうと思います。しかし、これは咀嚼筋を疲労させますし、首にも負担をかけることになります。咬みすぎるということは、歯ぎしりや食いしばりにも同じことがいえます。わかりやすい体への弊害としてこめかみ部分の頭痛(いわゆる緊張性頭痛)があります。これは側頭筋が疲労・硬化することに起因することが多いです。

日々、肩こり、首こりでお悩みの患者さんの治療を行っている者としての経験的な考えではありますが、咀嚼筋をほぐすと首の筋肉も緩みます。ですので、首肩こり治療においては、当院では必ず手を加える部分であります。

正しいガムの噛み方

“正しい”は過剰な表現ではありますが、せっかく健康のためにガムを噛むわけですから、長時間噛みつづけて顎や首に負担をかけたくはないはずです。顎や首への負担を抑え効率よく唾液を分泌させるようなガムの噛み方について考えてみました。

ガムを噛み始めて最も唾液が分泌するのは30~60秒で、その後150~180秒ほどで一定となるデータが出ています。「顎を鍛えるために積極的に噛むトレーニングをする必要がある」というのは下顎が成長する可能性のある20代までで、それ以降は必要以上に負担をかけてしまう方が問題点とされることが多いそうです。そのため子供から20代までは顎を鍛えるために積極的に咀嚼運動を促す必要があり、30代以降は長時間ガムを噛み続けて しまうのも注意が必要です。持続的な咀嚼運動に伴い周囲の筋肉が疲労するという点も考慮して、推奨するガムを噛む時間は、一般的なガムの味が無くなる5分間程度が望ましいといえます。しかし、歯科医が薦めるガムの噛む時間は10-20分のようです。

そこで、ここからが重要なポイントです。

味が無くなったガムは噛まずにそのまま口の中に残しておき、奥歯と頬の間に留めておきます。そして、会話をしない時などは、舌の上をコロコロと転がします。唾液は必ずしも咀嚼運動を伴わなくとも分泌されます。噛まずとも口の中ガムを留めておく事で、体がガムを異物と認識し唾液腺を刺激する 事となります。このように体の機能である反射を利用して唾液分泌を促すのです。

これで、筋肉を無駄に疲れさせることなく、効果的に長時間噛むことができます。そして静かに噛めます!!くちゃくちゃと音を立てて噛むことに嫌悪感を覚える方は多いですよね。

ガムの味でも効果の差があるのです。

実は、唾液を分泌させる効果は、味によっても差があります。

弱 ミント系 < フルーツ系 < 柑橘系 強

唾液分泌を促う効果が高いのは柑橘系の味なのです。興味深いのは、口臭予防にはミント系ガムが多いのですが、唾液による殺菌・消毒・自浄作用に着目した場合、柑橘系のガムの方が、口臭予防効果が高い事となります。もちろん、砂糖を使っていないガムのがお口には良いでしょうね。

 

自律神経のバランスを整える効果

シトラスはいわゆる柑橘類です。シトラス系の香りには、交感神経を抑えて副交感神経を優位にする中枢神経調整作用や交感神経鎮静作用があることが知られています。

自律神経には、交感神経系と副交感神経系の2つの神経系があります。自律神経のバランスは一般的によくいわれますが、具体的には2つの神経系のバランスを意味します。

一般的に、ストレスが多いというのは、交感神経過多であるということです。つまり、自律神経が乱れていることになります。

リラックスというのは、高ぶっている交感神経を抑えて、副交感神経とちょうどよいバランスを保つということです。

唾液を多く分泌させるガムの味は、シトラス系であると説明しましたが、リラックス効果も期待できるということです。ガム選びの際の参考にしてみください!!

このようにして、「咬む時間」「噛み方」「味」を工夫することによって、負担を適度にとどめながらも最大限唾液を分泌させ、ガムのメリットを引き出 せるのではないでしょうか。最近は長時間にわたって味が持続するミント系のガムがしばしば見られますが・・・健康と結びつけて考えてみると良し悪しが分かれる所です。

オーラルケアや嗜好品としてガムを噛むメリットは十分にあります。では、長時間噛み続けたらそれだけ良い効果が期待できるのかというと必ずしもそうではありません。「過ぎたるはなお及ばざるが如し」という言葉があるように、首こり、肩こりをご自覚している方は、是非とも心に留めておいていただきたいと思います。

[参考文献12]ガムの味の違いが唾液分泌に与える影響 http://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/2272/1/60_22.pdf

[参考文献13]味や香りに対する情動が咀嚼時の循環応答に与える影響 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/21791887.en.html

[参考文献14]顎口腔機能の回復が脳血流に及ぼす影響についての研究 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/19791433.ja.html

体の不調には全て原因があります。原因はひとつではなく様々です。

「頭が重い」「イライラする」「疲労感が取れない」「よく眠れない」などの、何となく体調が悪いという自覚症状を訴えて検査をしても原因となる病気が見つからない状態(不定愁訴)でお悩みの方は多いです。ですから「〇〇を治せば全て解決」という宣伝文句が溢れています。原因と結果、因果律が混同されてしまっている場合が多い上に、宣伝として利用されてしまっていることが患者さんを混乱させる問題点ではないかと考えております。

鍼灸師やマッサージ師がよく言う「背中がハっているから胃が悪い・・・」「足裏が痛いから内臓が悪い・・・」もその例です。胃が悪いと確かに背中 に反応が出ることがある、というだけにすぎません。足裏はもっとあやふやです。

その他「ふくらはぎを揉めば・・・」「尻を叩けば・・・」などからはじまり、中でも特に多いのが「噛み合わせ」「頚椎」「骨盤」の矯正です。たしかに、この3つは人体を構成するとても重要な部分です。しかし、徒手的な方法で本当に矯正されるかどうかは定かではありません。歯科専門医による噛み合わせ矯正は別ですが、カイロプラクティック・整体でボキッと行ったとしても咬合異常は治りません。肩こりも同じです。治りません。

歯ぎしりをしてしまうのには理由がある。つまり体が歯ぎしりを必要としている。このように考えてみましょう。

寝ている間に歯ぎしりをするということは、体が唾液を必要としているケースは確実にあるはずです。もちろん、それが全てではないでしょう。歯ぎしりの原因には諸説あり断定はできませんが、歯ぎしりと唾液についての関係は逆流性食道炎でもしばしば話題になる話でもあります。

消化器系に問題があって、そのために唾液が必要だから、睡眠中に歯ぎしりをする、となると、いくら歯ぎしりをしないようにしても、意味がありません。根本の原因の解決になっていません。

肩こりも同じことで、凝った肩周辺の筋肉をいくらほぐしても、それは一時的なもの。また、肩はこります。肩こりの原因は、複数あり、人によって様々なのです。

噛みあわせを治した結果、肩こりが治ってしまう場合はあります。

噛み合わせを治せば、肩こり・首こりが治るというのは、ケースバイケースです。肩こりの原因は複数あると申し上げましたが、具体的には大きく三つ(解剖学的な問題・神経生理学的な問題・心理学的な問題)あります。噛み合わせはその中の解剖学的な問題の一つですが、それでしかないのです。

現状、咀嚼筋と首肩の筋肉は関連性があることがわかっておりますが、咬合異常(噛み合わせ・歯ぎしりなど)を治せば首肩こりが治るとは言えないのです。

実際問題、歯科医師曰く、噛み合わせを完璧にしたのにも関わらず肩こりが改善されない方は多数いらっしゃるそうです。そして、鍼灸・マッサージにおいても筋肉・姿勢・動きの問題を解決したのに、肩こりから解放されない方も、もちろんいらっしゃいます。

1対1の分かりやすい原因と結果だけを追い求めてしまいがちです。単純な答えの追求は迷宮。振り回されないようにしましょう。

同じことの繰り返しで恐縮でございますが、原因の特定できない不快な症状(不定愁訴)は数々の要素が複雑に絡み合って生じます。肩こり・首こりも然りです。不定愁訴の治療は原因をひとつに 決めつけるのではなく、体を総合的にとらえて個人個人の状態に適切な治療を行う必要があります。

かといって当院は何でもかんでも行う治療院ではありません。

当院では医学的根拠に基づいて、

  1. 解剖学的要因である筋肉を良好な状態とする事(ゆるめるだけではなく鍛えることも含めて)
  2. 神経生理学的要因である自律神経の乱れを調整する事(体性-自律神経反射を利用して調整)、および運動神経を適切に働かせるように促す事(単なる 筋トレではない特殊な運動療法にて)

また、原因と結果、因果律に反した広告宣伝が氾濫している中、それらをしっかりと整理し、何でもありではなく 「できる事とできない事」を明確化し、患者さんにわかりやすくお伝えすることを常に意識して治療を行わせていただいております。

体に良いとされていることは、たくさんありますが、人によって効果の有無は異なります。ご自身でできることは、日々の生活の中で、適度に試してみましょう。要点をおさえ、正しく行えばセルフケアでも十分に効果が期待できるものはあります。

その正しい方法がわからない!良かれと思って実践したらかえって悪化した!

患者さんからいただく質問で「巷で噂の肩こり解消法は本当に効果があるんですか?」の類が大変多いです。当院では、解剖学・生理学に則って適時ご説明させていただいております。

肩こりや首こりの原因は、本当に様々です。

根本治療には少しお手間と時間がかかるかもしれませんが、原因を一緒に探求し、最適な治療法を決めて実践するという、オーダメイドの治療をするのが、肩こりラボです。

テレビやインターネット上の情報、雑誌、書籍での言われていることを試すのはもちろん自由ですが、様々な方法をいくら実践しても一向に症状が改善されないようでしたら、一度お近くの治療院に相談することをおすすめします(リラクセーションやカイロプラクティックではなく治療院、医院へお願いします!!)。

肩こり・首こりの根本治療を行うにあたっては、噛み合わせや、顎関節に関連する咀嚼筋ついても考える必要があるため、当院では、歯科医を含む医師 等と共同で治療方法の研究に努めております。

痛みなく健康であること・・何よりも大事なことですから。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首こりと自律神経失調症・精神的不調との関係性・・・「首こり」が「肩こり」よりもツラい理由

はじめに
当記事は「首こり」が、うつ病・パニック障害・不眠などの原因であると決めつける内容ではございません。

頚性神経筋症候群・首こり病、首のこりを治せば、うつ病やパニック障害などの精神疾患や自律神経失調症が治ってしまうと謳っている東洋医学系の治療院が多数ございますが、ありえません!!

現代医学的に対症療法とならざるを得なくなっている症状が本当に治るならば、治ったという方が増えるはずです。

社会問題にもなりません。

原因がよくわからない不定愁訴は様々な原因が複雑に絡みあって生じます。原因がひとつであればよいのですが、残念ながら、そうではないのです。

自律神経の乱れや体調不良で心底お悩みで藁をもつかむ思いで、いまこのページをご覧の方には大変申し訳ないのですが、原因のよくわからない症状は「〇〇を治したら治る」という単純な図式では解決できないのです。「原因は○○だった!!○○を治せば・・・」というのは、ただのキャッチコピーです。

とにかく何をしても上手く行かない、何とかしたい、と強く思われる方は「答え」が欲しいはずです。

現代医学(西洋医学)的検査には出ない数々の不定愁訴のうち、おそらくもっとも多いであろう症状は「首のこり」です。

肩こりラボは、あくまで首の「こり」のための鍼灸院です。具体的には、首のこりの症状の緩和(対症療法)と「こり」を引き起こしているフィジカルの問題の解決(原因療法)を組み合わせた根本的な改善を行っています。

「首こり」が治れば何もかもよくなるわけではありません。少なくともフィジカルの問題のひとつは解決するわけですから、それに付随する悩み自体はなくなるでしょう。

この点をご留意の上、お読みください。

首こりには単純な首こりと慢性化した酷い首こりがあります。

首こりと一言で片付けることはできません。首すじのこりを何とかしたく、何をしても上手くいかない場合、まず、あなたの首こりはどんな首こりなのかを把握しましょう。

首こりは2つ種類があります

首こりを自覚されている方は、まず、あなたが悩まされている首のこりは、ただの首周辺の筋肉の一時的なこりなのか、それとも、慢性化してしまっている状態にあるのか、を知る必要があります。

あなたの首こりの状態をチェック

  • 連休で体を休めても、いつもより多く睡眠をとっても一向に疲れが抜けないし首・肩の具合が回復しない・・・
  • 体を休めようとしても緊張が抜けずに休まらない・・・
  • 頭痛がする・・・
  • 胃腸の調子が悪い・・・
  • 良くないとわかっていてもイライラしてしまう・・・

もし、このような状況が全てあてはまるようであれば、単純な首こりではなく、慢性化し全身症状へと波及してしまっている可能性があります。

普通の首こりであれば、首の筋肉の疲労・筋肉痛なので時間がたてば元に戻ります。慢性化した首こりは、時間がたっても元に戻らない・もしくはすぐに凝ってしまいます。

慢性化というのは自力でどうしようもならなくなってしまっている状態です。

首こりと自律神経の不調の関係性 http://irorio.jp/asteroid-b-612/20120710/17707/から引用させていただきました

悩ましい首こり・・・なぜ首が凝るのでしょうか?

一般的に肩こり・首こりの原因は筋疲労や血流、姿勢、骨格のゆがみ等とされています。

実際は、そんな単純ではありません。

首こりを引き起こすメカニズムは非常に複雑です。

まず、肩こり・首こりの原因は大きく3つあります。

 

原因① 解剖学的な問題
筋肉バランス、骨格、姿勢、動きなど主に体の構造面
原因② 神経生理学的な問題
自律神経、運動神経(脳と筋肉の命令系統)など主に体の機能面
原因③ 心理学的な問題
ストレスやメンタルバランスなど主に精神面

どの要素からスタートとなるか、どの要素が主な原因となるかは個人によって違いがあるのですが、いずれにしてもこの三つが複雑に絡み合って慢性的な症状が出現します。

例1・解剖学的な問題からスタートする場合

長時間のデスクワーク・不良姿勢などで首肩の筋肉が疲労する → 凝りが神経を圧迫して頭痛を招く→つらさや痛み、凝りが自律神経を乱す(交感神経優位となる) → 全身の緊張が高まりリラックスできなくなる → 体を休めようとしても休まらなくなる → 体だけでなく精神も休まらなくなる → いくら施術をうけてもすぐに元通り・・・

例2・神経生理学的な問題からスタートする場合

天気や気圧など環境の変化で体調が悪くなりやすい → 自律神経が乱れやすい → 交感神経が優位になる → 心身共に緊張しやすい、イライラしてしまう、偏頭痛になりやすい、胃腸の調子が慢性的に良くない → 苦痛から体の硬直を招き、不良姿勢となる → 首こりとなる → 筋肉の緊張や痛み・こりがさらに自律神経のバランスを乱し状態を悪化させる・・・

例3・心理学的な問題からスタートする場合

仕事や日常生活など心理的にストレスがかかる状況 → 交感神経が活発に働き続ける → 自律神経が乱れる → 首から背中にかけて交感神経幹が存在するため、筋緊張が高まり血流も悪くなる →  凝り感や痛みの出現 → 痛み・凝り・不快感によって良い姿勢がとれない → 胃腸など内臓の調子も良くない → まとわりつく不快な症状がさらにストレスとなる、常につらい状態で対症療法をしてもすぐに元通りとなるためそれもストレスに・・・

体のハード面の問題が精神や自律神経というソフト面に悪影響を及ぼし、それが元でさらにハード面の不調を生んでしまうというサイクル

首のこり・首の痛みなど慢性的な不快感は、それを伝える神経回路の性質上、感情に影響を及ぼします。これは情緒不安定でいう情緒に悪影響といった方がわかりやすいかもしれません。精神状態を悪化させ、自律神経を乱すことにつながります。

情動と慢性疼痛 http://www.carenet.com/report/series/orthopae/pain_practice/14.htmlから引用させていただきました

「肩こり・首こり」という体のハード面の問題が慢性化することで、精神や自律神経というソフト面に影響を及ぼし、再び筋肉・血流・内臓というハード面の不調を生む事となります。

慢性的な痛み・苦痛は情動(感情・情緒)に影響します。あまりイメージがわかないかもしれませんが、慢性疼痛を心療内科で診ることは珍しくありません。肩こり・首こりが心療内科の範疇として扱われ、デパスなどの抗不安薬が心理的要素や自律神経の影響が深く絡んでいるためです。

このように、上記原因①~③の三つのどれからスタートするかは個人差がありますが、いずれもマイナスに作用しあって負のサイクルを形成してしまいます。

軽症の方は疲れたなと思った時に温めたり軽く揉んだりすればすぐ良くなりますが、重症の方・慢性化してしまっている方は一時しのぎにしかならないことでしょう。軽症の方は原因①の解剖学的な問題の場合であり、後者は三つの原因が強く絡みあってしまっています。つまり、負のサイクルが生じてしまっているか、否かの違いです。

この負のサイクルが形成されてしまっているからこそ、「いくら対処を行っても一向に前に進まないだけでなく、年々悪化していく」状態となってしまうのです。

当院では、原因の特定できない様々な不調(不定愁訴)を安易にストレスのせいにすることは禁じております。

現実問題、心身相関という言葉があるように人間である以上「精神」「自律神経」「解剖学的要素」は密接に関係しています。

単純に骨格のゆがみや姿勢・部分的な血流といった解剖学的要素だけでなく体を総合的にとらえて対処しなければなりません。

肩こり・首こりは直近で生命の危機が及ぶことがない故に軽視されがちです。世の中では軽視されてるとはいえ慢性化し負のサイクルが出来上がってしまっている方の生活はとてもつらく、そのつらさからの解放の一つの手段としてフィジカル面の改善を当院では行なっています。

ネット上の情報には「首こりを治せばうつ病やパニック障害が治る!!」とありますが、冒頭でも申し上げたようにありえません。

確かに精神疾患をお持ちの方は首こりを自覚されていらっしゃる場合が多いです。

一方、首こりがつらくて精神面に影響が出てしまうこともあります。

結果、治ってしまったという方はいらっしゃるかもしれませんが、それはあくまで患者さんの捉え方であり、患者さんご自身によって克服した結果です。

私たち施術者側が、首のこりを治せばうつ病・不眠症・パニック障害などが治るというのは医学的に間違っていますし、論理的におかしいのです。

ただ、患者さんに希望を持たせるために言っている可能性もあります。それによって勇気付けられた・元気になったというケースもあるので一概に否定はできないのも事実です。

ですが、それで結局治らなかった場合は残酷です。

精神疾患をお持ちの方にとって首こりはあくまで症状のひとつにすぎないので、首こりを治したら病が治るというのは根拠もありませんし、あまりにも軽率すぎます。

このような無責任で軽率な宣伝広告は、精神疾患に苦しみ、藁にもすがる思いの患者さんに対して失礼極まりない事です。

そのため、当記事ではあえて「精神的不調」という表現をさせていただいております。

原因と結果、病気の本質と症状などを混同せず、きちんと整理する必要があるはずです。

肩こりより首こりの方ががつらいのには理由があります。

肩こりの専門家とされる整形外科医は、肩こりは首こりである、としますが、その違いに言及することは稀でしょう。たしかに肩こりの原因の多くは首の筋肉です。ですので、肩こりと首こりは、よく混同されますが決定的な違いがございます。首こりと肩こりの違いは神経症状の程度の差にあります。

特に首こり・首周囲の痛みを自覚されていらっしゃる方は、自律神経失調症も併発しやすい傾向にあります。反対に、自律神経失調症の方は首こりも自覚している場合が多いです。

これは当院での理学療法の経験からくる理論だけではなく、100年以上の歴史があるイギリスのJRSM(Journal of the Royal Society of Medicine)という医学雑誌にも、首の痛みと自律神経失調症の関係性を示した文献[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9771493]が掲載されておりました。

論文引用 上記文献より引用させていただきました

(当文献はアンケート調査としては対照群数が少なく、被験者の主観をまとめたものであり、メタ分析されたエビデンスレベルの高いものではありませんがひとつの根拠として示させていただきます。)

首と自律神経の深い関係を示す3つの根拠

根拠その1

解剖学上、首と自律神経は密接な関係にあります。頚部には交感神経の重要な中継地点である上・中・星状神経節や、副交感神経である迷走神経が狭いエリアに存在しています。 首の筋肉が硬くなること(首こり)で二つの自律神経に物理的負荷や血流障害が起こり、正常な機能を全うできなくなり自律神経失調症の症状が出てしまうことが考えられます。

星状神経節・自律神経 http://www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatoka/anatomy/Rauber-Kopsch/2-57.htmlから引用させていただきました

根拠その2

頭部の感覚を担う大後頭神経・大耳介神経・小耳介神経は頚椎から出て、首の筋肉の間を貫き上部へ走行します。首の筋肉が硬くなり、これらの神経を圧迫することにより、後頭部や側頭部の頭痛を招くこととなります。

大後頭神経 http://shibukoz.exblog.jp/11287802/から引用させていただきました

根拠その3

上述しましたが、自律神経の乱れや頭痛など慢性的な苦痛によりイライラや不眠、うつ症状など精神的な症状にもつながってしまいます。

このように、自律神経失調症症状や頭痛が発生しやすいという点、そして精神症状の度合いからして肩こりと首こりを比較すると首こりの方がつらいと感じる場合が多いです。

読者様のうち、首こりだけではなく、イライラや過緊張といった症状・胃腸の不具合なども出ているようであれば、その原因はゆがみや血流だけでなく、他の要因も関与しており、少なくとも軽症ではない状態と推測できます。

自分でできる「首こり対処方法」はどれも一時しのぎ。割り切りが必要です。

今、この記事をご覧のあなたは肩こり・首こりがつらいということで市販薬や湿布、漢方をはじめ、マッサージやストレッチ、温熱療法などは既に様々行ってきたのではないでしょうか?

おそらく、楽になるのはその時のみ、または、変化が感じられない、のいずれかでしょう。

いま、このテキストをお読みのあなたは、きっと非常にお困りだからこそ、調べ、お読みでいただいていると思います。

そのため当記事では、よくある一時しのぎの首こり解消法を紹介しません。そのような方法を試されてダメだった方がお読みいただいているものと認識しております。

これらをふまえ、悩まれている方のことを真剣に考えますと、インターネット・テレビで紹介されているストレッチや体操、町の簡易的なもみほぐしや整体・カイロプラクティックなどでどうにかなるのは原因①の状態方で、つまりは軽症の方のみです。

原因①②③の要素が複雑に絡みあってしまっている重症の方は、残念ながら、セルフケアや簡易的な処置では一時しのぎであるだけではなく、いつまで経っても良くならない焦りやイライラが返って悪化を招き、先に進まず同じことを繰り返し行うことで慢性化させてしまいます。

軽症ではない方が根本的に改善したいようであれば、きちんと原因と状況を分析してもらう必要があります。

とはいえ、自ら行うことが全くないかというとそうではありません。

首こりでお悩みの方に是非試していただきたいセルフケア方法

よくあるツボ押し・ストレッチ・体操などの解消法は、こった部分に刺激を与えてほぐすことが目的です。

もうおわかりですね。

いくら続けても先に進むことはありません。

こっている部分はストレッチしても伸びませんし、無理をして伸ばすことによりかえって傷める可能性もあります。

首をいくらストレッチしても改善されることはありません。

慢性的にこっている部分は単なる筋疲労ではなく、神経系の不具合が生じています。

理想としては、第一に体の機能をつかさどる、自律神経のバランスを整える生活を意識していただき、それに加えて日頃に姿勢や筋肉バランスを整えていくことが良いのです。

セルフケアで大切なのは、こっている部分・つらい部分へのアプローチに執着しないことです。

自律神経が乱れやすいのは体質的な部分はもちろんありますが、特にマイナス要素は「不規則な生活」と「ストレス」です。

今すぐ実行できる対処としては、睡眠のリズム、食事のリズムはじめ、日常生活のリズムを規則正しくすることです。

自律神経は身体が不安定な状況となると、それを安定させるために活発に働き、それが慢性的になると負荷となります。

リラックス http://shibukoz.exblog.jp/11287802/から引用させていただきました

1)生活リズムに対する工夫

睡眠に関しては「長時間寝れば良い」「〇時間寝れば良い」というのではなく、できるだけ就寝時間と起床時間を一定にすることが自律神経にとって負担が少なくなります。極端なムラを無くすことが大切です。

例えば、日頃睡眠時間が少ないからといって休日は昼間まで寝るのではなく、あえてリズムを崩さずに起床し、昼寝や休日は早めに就寝し睡眠時間を確保する方が良いです。

食事においても、一日三食きっちり食べることが重要なのではなく、なるべく同時刻にムラなく食べることが自律神経には良い影響を与えます。嗜好品を無理に制限せず、栄養素や食材こだわったり、義務的に食べるのではなく、何よりも、食べることを楽しむということが重要です。

2)ストレスの対処について

生きている以上、ストレスを無くすことは不可能ですが、なるべくそれをため込まないようにすることは可能です。独自のストレス解消方法をお持ちの方はそれを意識的に実行していただくことが良いのですが、慢性的な不調を抱えていらっしゃる方は、その方法を持ち合わせていらっしゃらない場合が多いです。

レジャーにでかけると体は疲労しますが、メンタルの休息になるというのは良くあります。日頃の診療でも、体の休息とメンタルの休息を別個に考え、オフを管理する術を身に着けることを私はご推奨しております。

最適な方法は人によりけりですが、ひとつの手段として、適度な運動は効果的です。

ここでのポイントは少しでも良いので「汗」をかくことです。汗をかくことによりストレス解消や自律神経を安定させる効果が期待できます。

どんな運動・メニューを行えば良いか?というよりは、この場合は無理なく続けられる事なら何でも良いです。数回で終わるのではなく、あくまで習慣として細く長く続けられる、楽しく続けられることが一番肝心です。

例えば、好きな音楽を聴きながら20~30分早歩きするのも良いです。その準備運動の際に腕を頭上まで回すと肩甲骨のストレッチ効果となり、首こりに関連する筋肉に対して良い影響は期待できます。

また、入浴等で汗をかくよりも、運動によって体を能動的に動かすことによる発汗のほうが効果的です。筋肉の収縮と弛緩が交互に起こるため、筋ポンプ作用により全身の循環も促され、ムクミ対策にもなります。

適度な疲労を促すことにより、自律神経失調症の特徴である「寝つきが悪い」「眠りが浅い」などの睡眠に対する症状へも良い影響が期待できます。

ランニング

http://2ch-m.net/archives/545764.htmlから引用させていただきました

「ストレス解消=リラックス」という目的であればリラクセーションに行くことはよいことです。岩盤浴・温泉・スパ・アロマなどもリラックスを促し、ストレス解消の手段となります。

注意点しなければならないのは、リラクセーションはあくまでリラクセーション。クイックマッサージや整体は、肩こり・首こりが治るわけではない・心地よさ・気分のリフレッシュと割り切って利用しましょう。

また、たとえ気持ち良かったとしても、つらい部分をひたすらグイグイ押したり、関節をボキッとするような施術は返って状況を悪化させる可能性が高いので絶対におすすめできません

リラクセーションはあまり強くない力で全身をまんべんなく行うのがオススメです。とくに手や足への刺激は副交感神経を優位にします。リラックスは何事においてもとても大切な要素です。もし適度な強さで全身をまんべんなく施術受けても効果を実感できない場合、たとえ強く行ったり、その後その施術を続けても状況が変わることは考えられません。逆に悪化して慢性化してしまう可能性大です。

残念ながら、リラクセーションを肩こり・首こり解消だけでなく根本的な改善まであるかのように見せかけているケースが非常に多いです。ごく少数ではありますが、リラクセーションと医学的な効果・効能を明確に線引きしてお客様にきちんとお伝えしているお店は信頼度が高いといえます。

話が少しそれてしまいましたが、ツボ押しやストレッチなどセルフケアは数々の対処方法がありますが、それらのほとんどは不調となってしまった部分の対処法となります。

「不調になってしまってから対処する」のではなく、日頃から「自律神経に負担の少ない」「できるだけ乱れにくい」生活をし、全身へ目をむけることが肝心です。

(姿勢や筋肉バランスにおいてのセルフケア、筋力トレーニングはお体を拝見させていただかないと改善の見込みのある方法をご提案できませんので、ここでは割愛させていただきますことをご了承ください。)

 

まとめ

この長い文章を最後までお読みくださった読者様は、きっと今まで本当に様々な方法を試されてきたはずです。

そのため、セルフケアをお読みいただいて「規則正しい生活をしろって言われてもそれができないから困ってるのじゃないか。結局我慢するしかないんじゃないか。」と思われるかもしれません。

定期的に運動をしているし、ストレスもさほど自覚していない・・・  でもつらい。

そのような方もいらっしゃると思います。

「簡単肩こり解消マッサージ」「肩こり解消のツボ」「即効性のあるストレッチ」などインターネット上には様々な人が様々な「効果的な事」を提唱しています。それで本当に解消された方はどれくらいいるのでしょうか・・・?

正直に申し上げます。

現代社会において、セルフケアで全てを解決することは無理というのは言い過ぎではありません。

根本的な解決を目的とした場合、セルフケアには限界があります。

肩こり・首こりの仕組みは非常に複雑です。わたくしたち肩こりラボは、肩こり・首こり専門ですから、良くなります、と自信をお伝えしますが、施術自体は決して簡単ではありません。とても難しいことです。

とはいえ、根本を理解し、それに対する手立てを行うことは全く無意味ではありません。分かってはいるけど・・・という意識をするだけでも意味があります。

もし、「今のライフスタイル上、自分ではどうにもならない」「自分で頑張って色々やってみたけれど一向に改善されない」。しかし「なんとかしたい!!」という強い意志をお持ちでしたら、プロに相談してみることをご検討ください。

まずはセルフケアをためしてみる。もし、いろいろ試しても、効果がないならば専門家へ相談を。専門員とはそのような方のためにあるものと考えております。

肩こりラボによるセルフケア方法はこちらのYouTube動画でもご紹介していますので、ぜひお試しください。

 

肩こりの治療現場で行っているストレッチ

 

当記事が、迷走して困ってしまっている患者さんのヒントとなりましたら幸いです。

メンタルとフィジカルの問題は、どちらかを治せばよくなるわけではないということ。

ストレスや自律神経の乱れによる結果として、首や肩に負担がかかり頭痛などを引き起こすこともあれば、首や肩のこり・姿勢の悪さが自律神経に悪影響を与えることもあり、卵が先か鶏が先か問題のようなものともいえます。メンタルとフィジカルの問題は、どちらかを治せばよくなるわけではありません。肩こりラボでは、フィジカル面のサポートしかできません。フィジカル面の悩みが減ることでメンタル面に良い影響を与えるということは確実にあるはずです。

薬が手放せなくなってしまっている場合、現在の状態でよいとはおそらく誰も思っていないことでしょう。首や肩の治療だけで、あなたの悩みの全てを解決はできません。ですが、たくさんある悩みのひとつかふたつは解決できる可能性は間違いなくあると思います。

 

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


低気圧による体調不良の仕組みを知って気象病・天気痛・気圧痛を解消!!病院いくなら何科?という疑問にもお答えします!

爆弾低気圧・猛烈な台風・集中豪雨・大寒波・大雪・・・ここ数年、異常気象が当たり前のようになり発生しています。

天気が悪いと、なんか体調が悪い、気分が悪い、これって病気?そんな思いをきっとされたことがあるはずです。

雨の日頭痛」「天気痛」「気象病」「気圧痛」といった名称が一般的になりつつあります。

天気が悪いと体調がわるくなる女性を「低気圧女子」なんて呼ぶことも・・・

私たち人間は地球上で生きている生物ですから、天気という地球の環境に影響されるのは当然のことです。地球の環境が破壊されていると問題になってだいぶ経ちますが、天気も環境のひとつ。体調不良を天気のせいにしたところで何も解決しません。

ですので、低気圧や天気と体調について、首肩こりの専門院としての視点プラス患者さんの声を基に、医学的根拠を踏まえ「なぜ体調が悪くなるのか?」そして「天気が悪いときにできる対処方法」をマジメに考察してみました。

記事の後半で詳しく紹介します耳たぶマッサージは、首や後頭部がつらいといった体調不良の改善対策として、効果的かつ誰でも簡単に今すぐできるセルフケア方法です。

耳たぶマッサージはたったの20秒

この耳たぶマッサージは是非ともお試しください。

低気圧が原因に因る頭痛や目眩で、いざ病院に行ってみよう、と思っても何科に行けば分からない方は多いと思います。その点についても耳たぶマッサージの紹介の後に解説しました。参考になさってください。

台風・大雨といった天候により、肩こり・首こり・腰痛・偏頭痛などが悪化する「天気痛」や「気象病」は気のせいではない。

雨や雷、台風といった天気の悪い日に限って、頭が痛くなる、頭が重く感じる、肩が凝るといった体調不良または気分が悪くなる方は多いです。これらの症状は「天気痛」や「気象病」といった名前で呼ばれています。

冬の寒い日は、どんな人でも肩が痛い!!という経験があると思います。寒さによって血管が収縮するので肩にかぎった話ではないのですが、慢性的な肩こりを抱えていらっしゃる方は、より辛く感じることでしょう。そして、雨、雪の天気が加わりますと、より一層辛さが増すと思います。

天気が悪いと古傷が痛むという方もいらっしゃいますね。ですから、自らの体調で天候の変化がわかる、という方は少なくないはずです。

慢性的な肩こり・首こりを抱えていらっしゃる方は、同時に偏頭痛や目眩などの症状を抱えていらっしゃることが多いです。そして、天気(天候)により具合が変化するというお話をしばしば伺います。

数字でみる天候と体調不良の関係

天気が悪い時期といえば梅雨。夏前の梅雨の時期に体調をくずし、長引いてしまう方は少なくないようです。事実、(株)花王、(株)パナソニックが協賛している「血めぐり研究会」の調査によりますと、女性の約6割が梅雨の時期に体調の不調を感じ、約3割が梅雨の約2か月の間、常に体調が悪いと感じているとのこと。

tsuyudata20122月実施/20代~60代の女性930名を対象

出典:http://www.chimeguri.com/special/special_vol9.html

katakori LABSにいらっしゃる患者さんで低気圧や台風といった気象条件によって体調が左右される方はとても多いです。「天気予報よりも私の勘のほうが当たる」「体調で天気が悪くなる前ぶれがわかる」問診の際の会話でよく耳にします。

天気はそこまで悪くなくても、以下のような台風接近中の天気図のような状態でも不調を感じる方は多いのです。

天気痛3出典:http://blogs.yahoo.co.jp/kikitata3/31458699.html

通常の雨だけではなく、特に台風が接近すると強い症状を訴える患者さんが多いことに加え、標高が高い所に行くと喘息(ぜんそく)起こる飛行機に乗ると頭痛がするということを訴える方が決して少なくないということは、気圧が何かしら関与しているということが推測できます。(一般的には低気圧が関与しているという認識のようです)

必ずしも医学的に証明されたわけではありませんが、天気(天候)と体調との相関関係は統計的に明らかになっているデータはあります。

一例として、医学生を対象とした偏頭痛に対するアンケート調査では、偏頭痛の原因として考えられる項目を気象条件と回答する方が多かったことからも、その関連性が示唆されています。[文献3]

偏頭痛の誘発因子出典:http://www.annbalsofian.org/article.asp?issn=0972-2327;year=2013;volume=16;issue=2;spage=221;epage=225;aulast=Menon

これは、あくまでも経験論の域を出ることはなく、誰もが間違いなく天気(天候)と体調の関連性があることを認識していますが、その根拠は?と問われると苦しくなる処です。

通常の医学が人体内部の変化を分析・解明するのに対し、生気象学は外部環境(天気や気象条件等)が生体に及ぼす影響を研究する生気象学という分野も存在します。

体調不良を引き起こす原因の解明のキーワードは「気圧の変化」と「自律神経」

気圧の変化は、従来、天気予報で知る数値の情報でしかなかったのですが、現代人の生活との関わりは深くなりつつあります。例えばiPhone 6・6 Plusには、気圧をリアルタイムで計測するセンサーが内蔵されており、この機能を利用したアプリやウィジットを使われている方もいらっしゃることでしょう。普段の生活で気温を気にするのは普通ですが、気圧をチェックするのも容易になってきました。

iPhone6で気圧をリアルタイムチェック1気圧(1013.25hPa)と比べて低気圧ですね。

実際に気圧の変化が体調と関係があるのでしょうか?

天気痛研究・診療の第一人者で愛知医科大学の学際的痛みセンター客員教授である佐藤純先生が行った名古屋大学の環境医学研究所附属近未来環境シミュレーションセンターでの研究[文献1]によると、気圧の変化が自律神経に影響を及ぼし、交感神経の働きを活発にし、諸々の体調不良を招くということが示唆されています。

特殊な部屋で被験者に待機してもらい、気圧を下げていくと交感神経が活発に働きだし、同時に痛み等の諸症状が生じるという実験結果がでました。

天気痛出典:http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/050/html/1110500408.html

「低気圧」ではなく「気圧の変化」に注目しましょう。

「低気圧」そのものではなく気圧の変化という点に着目しなければいけません。

世間では、低気圧になると血行が悪くなったりやリンパの流れが悪くなるから、体調が悪くなる、という説明をする人が多く、もはや一般論と化しています。果たして、それは正しいのでしょうか?

一般的な低気圧が血流を悪くする説は、気圧[=空気による圧力]が身体へ与える物理的な負荷による影響で血管が圧迫や拡張して血流等が変調をきたし諸症状を誘発されるとしているのですが、当文献では異なった観点からのメカニズムが示されています。

例えば偏頭痛だと、従来ですと低気圧になると血管に対する外部からの圧力が減少し結果的に血管が拡張し、過剰な血流増加が起こり、頭痛症状に至ると考察されておりました。

しかし、愛知医科大学の佐藤純先生による研究では、人体には気圧の変化をキャッチするセンサーが備わっており、気圧が下がると自律神経のバランスが乱れ、体調を変化させるということがわかりました。

具体的に説明しますと、気圧が低下すると内耳(耳の最深部です)に存在するセンサーがそれをキャッチし、交感神経の興奮が高まり、血流や感覚閾値(感受性)を変化させ、痛みやコリ感などの諸症状を誘発する原因となる ということです。

交感神経が優位となると、痛覚閾値が下がる(痛みを感じやすくなる)ため、普段はなんともなくても、腰や膝など以前傷めたりした自身の弱点がシクシク疼くように感じてしまうわけです。

簡略化すると 気圧の変化 → 内耳のセンサー(三半規管の根元にある)がキャッチ → 交感神経の活動が活発化 → 痛覚閾値低下(痛みを感じやすい体へ)と末端の血流不全 → 様々な不定愁訴 → 交感神経が活発化・・・ といった負のサイクルが台風や前線がきっかけでできあがってしまい、局所症状から全身症状・精神症状へと拡散していき抜け出せなくなってしまう方も多いです

そのため、天気(天候)が変化しやすい時期、季節の変わり目や台風が生じている時、など目まぐるしく気圧が変化する時ほど具合が悪い方が続出してしまうのです。特に梅雨の時期は、雨の日と晴れの日が頻繁に入れ替わります。つまり、気圧の変化が激しい上に、太陽が顔を見せない日が多いので体調、自律神経の乱れやすくなるといえます。

また、本研究の着目すべき点は「気圧の変化をキャッチするセンサー」が内耳に存在することを示唆したことです。

内耳は、聴覚はもちろんのこと、平衡感覚や姿勢を維持するうえで重要な器官です。それ故、低気圧がやってきて体調不良となる時には、内耳のコンディションも低下して、痛みやコリ感などと同時にめまいや耳鳴りが頻発してしまうのが納得できます。

乗り物酔いしてしまう方が服用する「酔い止め」が、天気痛の諸症状に効果があるのは、この内耳のセンサーに働くためなのです。

タワーマンションに住んで大丈夫?

タワーマンションに憧れを持つ人は多いのですが、高層階症候群という言葉もあるように、実際に体調不良を訴える人は少なくない模様です。

頻繁に昇り降りしなければならない生活でしたら、間違いなく身体に大きな負担をかけることになるでしょう。大きな建物は空調設備で気圧のコントロールも行っていますので、昇り降りしなくても気圧の変化というのは共用部と部屋の移動だけでもあるかもしれません。

東日本大震災以降、徐々に免震構造のマンションも出てきましたが、免震構造自体は地震には強くても、台風などには弱く大きく揺れてしまいます。この「揺れ」も身体に影響があるといえるでしょう。東日本大震災時、長期にわたる余震もあり、いつも揺れている感じがして体調がおかしくなった方は多いはずです。揺れをキャッチするのは耳の中の三半規管です。気圧の変化をキャッチするセンサーも三半規管の一部です。

この「揺れ」については、免震構造のタワーマンションと制振や耐震構造のタワーマンションで話が変わってきます。共通してタワーマンションに住む上で意識しないといけないことは、気圧の変化に身体は反応してしまうという点です。これを意識するだけでも違うと思います。

男性よりも女性の方が気圧の変化の影響を受けやすい?

気圧の変化が自律神経の乱れを引き起こすのは、男性も女性も同じなのですが、女性は男性と違ってホルモンの分泌の問題があります。男性は思春期以降はホルモンの分泌はほぼ一定なのですが、女性は月経があるため常に変化しています。ホルモンの分泌をコントロールしているのは脳の下垂体(かすいたい)というところなのですが、ここは、自律神経をコントロールしている視床下部(ししょうかぶ)の支配下にあります。

視床下部と下垂体の位置

つまり自律神経とホルモンのバランスは密接な関係にあります。ホルモンのバランスが崩れたら自律神経にも影響が出るでしょうし、その逆もあります。そこに気圧の変化という要素が加わることを考えますと、男性よりも女性の方が気圧の影響を受けやすいといえると思います。

天気痛のような天気(天候)による体調不良への対策や解消方法はあるのでしょうか

気象病・天気痛に効果的とされる方法は、入浴(半身浴)や運動、呼吸法からはじまり漢方まで様々な解消方法が提唱されています。 実際それらが本当に効果があるのか?軽度の悩みの方には効果があるのかもしれません。実際に肩こりラボにお越しの方々の声をききますと、効果が感じられない、焼け石に水、といった声がほとんどです。いま、このページをご覧の方は、おそらく何をやっても効果がなくてお困りの方だと思います。

冒頭でも述べましたが、慢性的に肩こり・首こりをお持ちの方は天気によってその症状がひどくなったり軽くなったりします。

そして、天気(天候)により体調不良を訴える方は、ほぼ全員首肩の症状も抱えております。症状として自覚していなくても首の筋緊張と血流不良の所見はほぼ確実に見受けられます。

以前の記事でも書きましたが、肩こり・首こりは自律神経の失調が大きな原因のひとつです。

そして、肩こり・首こりが慢性化すると高確率で自律神経失調症の状態に陥ります。これは特に首こりに顕著です。肩こり解消は、体調を改善する上で大変大きなことなのです。

詳しくは以下記事をご参照ください↓↓

肩こりと首こりの決定的な違い(解剖学・生理学の視点から徹底解説)

体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

つまり、どちらが先か断定できませんが、肩こり・首こりと自律神経失調症は相互に依存しあって負の連鎖を生むことになります。

筆者の経験からの個人的見解ではありますが、首肩の状態と不定愁訴は関連性があると考えています。

台風が来るなど天気が崩れる前や、女性限定ですが生理(月経)が来る前にいつも偏頭痛に悩まされていた方が、肩こり・首こりに悩まされなくなったら、気づいたら頭痛の症状が減っていたとの声をしばしば頂きます。

女性の患者さんの例ですが、半年ほど2週間に1回程度の頻度で首肩の施術を続けたところ、毎月、月経前には必ず頭痛薬を飲まずにはいられなかったのに、いつのまにか飲まなくなっていたという状態まで持っていくことができました。

これを踏まえ、11名の首肩と同時に自律神経失調症をかかえている方へ同様のルーティーンで首肩の施術を行ったところ8名から良好な反応が得られました。首肩の症状を抑え、つらくない状態を一定期間維持することで、肩こり・首こりに悩まなくなった後、結果的に天気(天候)や月経の影響をあまり受けなくなり、薬を飲まなくなった、もしくは飲む回数が減少したとのことです。

これはプラシーボ効果の検討、ランダム化や盲検化もしていないので医学的根拠としての意味は持ちませんが、あくまで首肩の状態と不定愁訴は関連がある可能性は高いと考えている筆者の考えの根拠の一つとして記させていただきました。

6天気痛出典:http://cochiro.com/acupuncture/

天候による体調不良を解消する、予防するために効果的なセルフケア方法

天候による体調不良とは体が気圧の変化による影響を受けやすいために起こります。「自律神経を安定させる方法」は色々ございますが、普段から行うべきことと、不安定になったものを安定させる方法の2つに分けて解説します。

気圧の変化に負けないように、自律神経のバランスを保つために、普段から心がけるべきこと。

「気圧の変化」を内耳に存在するセンサーがキャッチし、そこから自律神経のバランスが乱れて数々の不調が現れることを上記にてご説明させていただきました。

台風や低気圧の接近など、天気(天候)によって体調不良となる理由の本質は、自律神経の乱れにあります。そのため、日頃から自律神経に負担をかけないこと、バランスを整えることは、その対策として有効的です。

体質的な部分はもちろんありますが、特に自律神経にとってもマイナス要素は「不規則な生活」と「ストレス」です。

誰もが知っている規則正しい生活の大切さ。

理想は規則正しい生活。生物には生まれながらにして持っている体内時計があります。しかし、それが出来ないのが現代社会。不規則な生活は、身体への負担が大きく、体の調子が不安定になります。睡眠不足による肌荒れ、徹夜すれば胃腸の調子が悪くなる、など誰もが規則正しい生活が大切なのは分かっています。不安定な体の調子を安定させるために働くのが自律神経です。自律神経を働かせすぎると、自律神経のバランス自体が崩れてしまいます。

生活リズムを変えるのは難しい!!でも、そのリズムを一定にすることなら、可能ではないでしょうか?

規則正しい生活というのは生活のリズムが安定しているということ。睡眠のリズム、食事のリズムはじめ、日常生活のリズムを規則正しくすることは理想的で、良いことなのは当然です。今までの生活を変える、環境を変える、なんてことはそうそうできることではありません。

しかし、朝方寝て昼起きて夜活動するといった生活スタイルの方は、それを日々続けることは可能でしょう。体内時計とはズレた生活ではありますが、それを毎日続けるということは規則正しく行うということですね。これがポイントです。

睡眠に関しては「長時間寝れば良い」「〇時間寝れば良い」というのではなく、できるだけ就寝時間と起床時間を一定にすることが自律神経にとって負担が少なくなります。極端なムラを無くすことです。久しぶりの休みだから、寝れるだけ寝よう、は気持ちはよくわかりますが、これが良くないのです。休みの日でも、決まった時間に起きる、食ことをする、でも休日だから昼寝をするなどして、バランスを取ることが大切です。

食事においても、一日三食きっちり食べることが重要なのではなく、なるべく同時刻にムラなく食べることが自律神経には良い影響を与えます。毎日2食しか食べない人はそれを続けましょう。ただし、食べる時間はいつも同じにしてください。栄養素や食材にこだわることも大切ですが、こだわるなら楽しんで拘りましょう。そして義務的に食べるのではなく、食ことを楽しむということがとても大切です。

ストレスを無くすことは不可能ですから、溜め込まずに発散しましょう。

生きている以上、ストレスを無くすことは不可能です。ですから、なるべくそれをため込まないようにすること、吐き出す、発散が大切なのはいうまでもありません。独自のストレス解消方法をお持ちの方はそれを実行していただくことが良いのですが、慢性的な不調を抱えていらっしゃる方は、その方法を持ち合わせていらっしゃらない場合が多いです。

最適な方法は人それぞれです。ひとつの手段として、適度な運動は効果的です。ここでのポイントは少しでも良いので「汗」をかくことです。汗をかくことによりストレス解消や自律神経を安定させる効果が期待でます。

どんな運動・メニューを行えば良いか?というよりは、この場合は無理なく続けられる事なら何でも良いです。数回で終わるのではなく、あくまで習慣として細く長く続けられる、楽しく続けられることが一番肝心です。

例えば、好きな音楽を聴きながら20~30分早歩きするのも効果的です。

また、入浴等で汗をかくよりも、運動によって体を能動的に動かすことによる発汗のほうが効果的です。筋肉の収縮と弛緩が交互に起こるため、全身の循環も促されます。

適度な疲労を促すことにより、自律神経失調症の特徴である「寝つきが悪い」「眠りが浅い」などの睡眠に対する症状へも良い影響が期待できます。その他数々の対処方法があるとは思いますが、それらのほとんどは不調となってしまった後の対処法となります。

以上が「自律神経に負担の少ない」「できるだけ乱れにくい」生活を目指す上での日頃から行ったほうがよいと思われるセルフケア方法の解説です。

今すぐできる、どこでもできる「耳たぶマッサージ」で自律神経をバランスアップ

恐らく読者様は今まで様々な方法を試してきて、ことごとく効果を感じられなかったことでしょう。これまでの記事をお読みいただいて「規則正しい生活をしろって言われてもそれができないから困ってるの!!結局我慢するしかないんでしょ!!」と思われた方も多いと思います。

そこで、誰もが、いつでもどこでも今すぐできる簡単なセルフケア方法「耳たぶマッサージ」をご紹介します。これが不安定なものを安定させる方法です。

この耳たぶマッサージ、気圧の変化による首や後頭部がつらい、締め付けるような頭痛(緊張性頭痛)といった気圧痛でお悩み方にぴったりの解消方法です。そして「咬筋ほぐし」にもなります。咬筋ほぐしは小顔やフェイスラインの引き締めに効果あるとされてますので女性には嬉しい方法ですよね。耳鳴り、目眩、偏頭痛には効果は期待できませんのでご了承ください。

耳たぶマッサージは2ステップ

耳たぶを外側に引っ張ります。少し痛いと感じるくらいがベストです。 2〜3秒引っ張ったら離します。これを3〜5回繰り返します。
両耳行いましょう。片耳ずつでも構いません。

次に、耳たぶを回します。前回し3回、後ろ回し3回繰り返します。
たったこれだけでOKです。1分もかかりません。いつでもどこでも出来ます!!

耳たぶをマッサージ行う理由とマッサージ効果の解説

①なぜ耳たぶなのでしょうか?

気圧変化によって諸々の体調不良が生じるのは、交感神経が優位になり体が意図せず緊張状態となっていることが大きな原因です。そこで副交感神経優位にして緊張を解くことが大切です。

今現在、耳たぶに触れてみてください。温かいですか?それとも冷たいですか? 気温が低い環境にいるわけではないのに、耳たぶが冷たくなっているのは、末端まで血流がいってないということです。これは、交感神経が優位になっているといえます。

耳たぶのマッサージは、今回の場合は副交感神経を優位にする目的で行います。さらに「心地よい刺激」を与えることで、その「心地よさ」から副交感神経が優位になることも期待できます。
例えば背中の刺激は一時的には交感神経を優位にしますが、心地よい刺激を持続的に行うことで副交感神経を優位にします。

自律神経が乱れている状況とは、交感神経か副交感神経のどちらか一方に偏りすぎてしまっていることを意味しますので、どちらかを優位にするのではなく、本質的には外から刺激を与えてその均衡を取り戻すことが目的となります。

耳たぶに限らず耳への刺激は、実際のところ、交感神経を優位にする、副交感神経を優位にする、という2つの効果があるということで、意見が分かれているところでもあります。部位によって異なるようです。

②耳の後ろにある筋肉への刺激

マッサージの良さである「心地よい刺激」により副交感神経が優位になることが期待できること以外に筋肉を刺激する点が今回のマッサージの重要ポイントです。

耳の後ろには、胸鎖乳突筋、板状筋といった筋肉があるのですが、耳たぶを引っ張っる、耳たぶ回しをすることで、この筋肉を筋膜を介したストレッチになるのです。(筋膜とは筋肉を包む薄い膜で神経が密に分布している重要な組織です)

耳たぶマッサージその3

この耳たぶマッサージによる効果というのは、胸鎖乳突筋、板状筋の筋膜に刺激を与えることで、これらの筋肉が緩むことにより、首こりや肩こりの症状がスッキリするという効果です。(あくまでこれは応急処置であるため、あえて「スッキリ」という表現にしてあります)

体調悪くなりそうな予感がした時に「酔い止め」クスリの服用すると効果的とはいえ、そのような準備がない場合こそ、この耳たぶマッサージをお試しください。「酔い止め」が効果的とされているのは、内耳センサーに働くから、と思われます。そう、耳が大切なんですね。

なお、耳つぼダイエットは、食欲を抑えるツボによる効果を謳っていますが、医学的根拠は極めて曖昧なのでご注意くださいね。(治療院・お店選びの参考にもなると思います。)

残念ながらセルフケアには限界がございます。

正直に申し上げて、特に現代人の生活習慣においてセルフケアで全てを解決することに限界があるのもまた事実です。しかし根本を理解し、それに対する手立てを行うことは少なからず意味があると思います。

まずはセルフケアで対応し、それでダメなら病院へご相談ください。

肩や首、腰の「痛み」を緩和する効率的なセルフケア方法に関しましては、別途記事をご用意しましたので、こちらの記事を御覧ください。

首肩の痛みに効く!!肩こり解消ストレッチ〜正しいストレッチ方法を解説

セルフケアでも改善しない場合は、病院で診察を受けてください!!

体調がすぐれなければ病院へというのはどなたでも分かってはいることですが、具体的に何科の病院にいけばいいの?という疑問があると思います。低気圧などによる体調不良の場合は、とくにそうでしょう。次の表を参考にしてみてください。

 

耳鳴り・めまい 耳鼻咽喉科
頭痛・めまい 神経内科

別に頭痛や耳鳴りはないけど、目眩がするという方は、次の表を参考にしてください。

目が回る目眩 耳鼻咽喉科
ふわふわ浮いている目眩 神経内科
フラフラする目眩 神経内科

上記の様に、目眩の症状として、回転性(目が回る)と浮動性(ふわふわ、フラフラ)の2種類に分かれます。病院へいく際の目安にしてみてください。

 

神経内科について

 神経内科は脳や脊髄、神経、筋肉の病気をみる内科です。体を動かしたり、感じたりする事や、考えたり覚えたりすることが上手にできなくなったときにこのような病気を疑います。症状としてはしびれやめまい、うまく力がはいらない、歩きにくい、ふらつく、つっぱる、ひきつけ、むせ、しゃべりにくい、ものが二重にみえる、頭痛、かってに手足や体が動いてしまう、ものわすれ、意識障害などたくさんあります。まず、全身をみれる神経内科でどこの病気であるかを見極めることが大切です。その上で骨や関節の病気がしびれや麻痺の原因なら整形外科に、手術などが必要なときは脳神経外科に、精神的なものは精神科にご紹介します。また、感じることの中には見たり聞いたりする能力も含まれますが、眼科や耳鼻科の病気の場合もあります。どの診療科に受診するのが一番ふさわしいかは、おかかりになる病院に前もって問い合わせるとよろしいでしょう。

神経内科と他の科はどのように違うでしょうか?

よく神経内科はわかりにくいといわれます。科の名称が紛らわしいためと思いますが、特に間違えられやすいのが精神科、精神神経科、神経科、心療内科などです。これらの科は精神科の仲間で、おもに気分の変化(うつ病や躁病)、精神的な問題を扱う科です。また、心療内科は精神的な問題がもとで体に異常をきたしたような病気を扱う科で、もともと内科のトレーニングを受けた先生が多いですが、一部精神科の先生方も心療内科として診療を行っています。

神経内科はこれらの科と異なり、精神的な問題からではなく、脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。まず、神経内科でどのような病気か診断し、手術が必要な病気の場合は脳神経外科にご紹介します。脳神経外科は外科ですので、基本的に手術などが必要な病気を扱います。脳腫瘍や脳動脈瘤などが脳神経外科でみる代表的な疾患です。

精神科の病気のほとんどが実際に病気の患者さまの脳を拝見しても異常を見つけられないのに対し、神経内科で扱う病気は脳をみるとなにかしら病気の証拠をみつけることができます。但し、中には精神科と神経内科どちらでも見る病気もあり、痴呆やてんかんなどはその代表的なものです。最近は痴呆も原因がわかりつつあり、脳の変化もよくわかってきています。

このようにいろいろな科が関係することもありますが、まずは全身をみれる神経内科にかかっていただき、必要であれば他の科に紹介していただくのが望ましいと思います。

また、大学によっては神経内科とよばず脳神経内科などほかの名称の場合もあります。

神経内科とは?|神経内科の主な病気 一般社団法人 日本神経学会

ただし、歩くこともできないといった立位保持不可・歩行不可な場合や、嘔吐を伴う場合は横になって安静を保ち、改善しなければ迷わず救急外来を受診してください。

症状自体は軽い場合ですが、もし横になってしばらく安静にしても治まらない、寝ている状態でも目眩が緩和されない場合には神経内科へ行くのが良いでしょう。

めまい・頭痛・耳鳴りがひどい場合は重篤な病気が隠れている場合があるので、まずは必ず医療機関を受診してください。鍼灸・マッサージはあくまで、それで異常がなかった場合に適応となりますので、その点を踏まえた上でご検討ください。

鍼灸・マッサージは病院で治せないものが治せるといった魔法のようなものではございません。

 

鍼灸・マッサージで可能なこと

  • 筋肉を弛める
  • 血流を改善させる
  • 自律神経のバランスを整える

以上の3点です。

私たち鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師が行うのはあくまで「肩こりという症状」に対してであり、この3点の改善で対処できる問題が生じている場合には、きっとお力になれるものと存じております。

では、どの鍼灸師でも結果は同じかと思われるかもしれませんが、不調の原因を見極めることが難しいのです。そしてたいてい不調の原因は1つではなく複数ございます。

自律神経を乱れにくくすることは容易ではありません!!

今このテキストをご覧のあなたは、天気による体調不良で悩まされ、様々な対処方法を試してきたことでしょう。でも、どれも期待通りの効果は得られなかったのではないでしょうか?偏頭痛や肩こりと同じように、どうせ治らないとどこか諦めてしまっているかもしれません。ひとつだけ確かなのは、肩こりは治る、という事実です。頭痛の原因が肩こりであれば、頭痛からも解放されます。

自律神経失調症からの不定愁訴に対する特効薬は現段階ではありません。

不調の根源には自律神経のみではなく脳・筋肉・血流・精神・・・など諸々の要素が複雑に絡み合い、体全体として負の連鎖が生じてしまっていることが大きく関与しています。

その負の連鎖を断ち切ることで、ある程度症状はコントロールできるものと考えております。

なかでも鍼灸・マッサージは自律神経や中枢神経にはたらきかける作用が科学的に証明されています。[文献2]

適切な部位に、適切な方法で、適切な処置を行うことで神経に影響を及ぼすことが可能です。

解剖学・生理学的に首と自律神経には密接な関係性があるのは紛れもない事実

当記事では、あくまで筆者の経験による見解が多く、いま現在、医学的根拠として有効なものではございません。医学的根拠として有効ではなくとも、解剖学・生理学的に首と自律神経には密接な関係性があることはまぎれもない事実です。頚部周辺の状態を良くすることは自律神経系の状態を良くすることにつながり、結果的に諸症状の改善につながることは、いまこのテキストをお読みの方でしたらきっと容易に予想できると思います。

肩こりラボでは、さらに症例と客観性のあるデータを蓄積して医学的根拠としての有効化と、より再現性のある理学療法を日々追求しています。

【参考文献】

[文献1] http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/050/html/1110500408.html

[文献2] http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165183899000909

[文献3]http://www.annalsofian.org/article.asp?issn=0972-2327;year=2013;volume=16;issue=2;spage=221;epage=225;aulast=Menon

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。