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イトーUST-770を使った超音波療法

超音波療法は物理療法のひとつ

整形外科領域のリハビリテーション(理学療法)には、物理療法と運動療法の二つの柱があります。温めたり電気を流したりするのが物理療法、筋トレやストレッチなど実際に身体を動かすものが運動療法となります。

物理療法or運動療法ではなく、共に大切です。現在の日本の医療において、保険制度における点数の兼ね合いから物理療法の割合が減り、運動療法が主体になっているのですが、物理療法は運動療法とともに理学療法の両輪をなします。

超音波療法は、物理療法のひとつです。理学療法としての超音波療法は、超音波自体を物理的な刺激として生体に与えて、はたらきかけます。一般外傷や運動器系の急性期及び慢性期の痛み、スポーツ障害などの治療に活用されています。

超音波療法の効果とは?

超音波療法は、主に整形外科のリハビリで患部を温めるのに用いられています。これは超音波が生体組織内に吸収されると超音波の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されるためです。特にコラーゲン含有量の高い組織(腱・靭帯・関節包・筋膜など)に加温の効果があります。

超音波には温熱効果だけではなく「音圧効果」があります。

「超音波骨折治療法」をご存知の方も多いのではないでしょうか?骨折の治癒を超音波によって早める治療法で、サッカーのデビッド・ベッカム選手や野球の松井秀喜選手が骨折治療のために受けたことでも注目され、現在では多くの医療機関で行われています。

これは超音波の温熱効果によるものではありません。その詳しい仕組みはさておき、超音波のもう一つの特徴である音圧効果について簡単に説明します。

音波はその字のとおり音の波(波動)です。波と聞けばどうしても海の波を思い浮かべがちですが、海の波と音の波は別物です。音波は縦波です。光やロープを伝わるような波は横波です。横波とは波の進行方向と垂直に揺れる波であり、縦波は進行方向と同じ向きで揺れる波です。縦波は波の進行方向に対して平行な振動が伝わります。

縦波と横波の違い
超音波は縦波です

この振動によって物理的な刺激を与える効果を音圧効果といいますが、音圧効果はそれだけではありません。例えばメガネ屋さんにあるメガネ洗浄機、使ったことある方も多いでしょう。超音波によって水中の気体を膨張→破裂させて、その衝撃でメガネの汚れを落としやすくしているのです。適度な超音波ですと水中の気泡は膨張→収縮を繰り返し、大きな出力で破裂します。これを超音波キャビテーションといいます。

超音波洗浄の仕組み

 

超音波キャビテーション

実際のところ、超音波自体による物理的な振動による刺激だけでなく、このキャビテーション効果による刺激・影響も大きいと考えられています。

私たちのカラダの組織には血液をはじめとした液体があらゆる部位に存在しています。そして液体中には微小気泡が必ず存在します。この気泡が圧縮・拡張を繰り返すと細胞膜を適度に刺激し細胞が活性化を促す、これがキャビテーション効果の考え方です。

過度なキャビテーションは気泡を破裂させます。気泡の破裂による衝撃で組織を損傷してしまう可能性もあります。超音波を医療で使用するには細かいコントロールが必須です。

この音圧効果は、温熱効果と区別して非温熱効果とも呼ばれています。

超音波がなぜ骨折の治癒を早める効果があるのか?

物理的な振動とキャビテーションが同時に起きているため、詳しい仕組みが明確になっていない部分も多いのですが、このキャビテーション効果が人体に何らかの影響を与えていると予想されており研究が進んでいます。

また超音波は音として捉えることはできませんが、人間の耳の中にあるセンサーは感知はしています。最近では、超音波を脳研究や治療に使う可能性についての研究も盛んです。

超音波はまだわからないことが多いのですが、難治性の骨折や偽関節の治癒促進、骨の手術をした後の骨折治癒期間を短縮する目的での超音波治療は健康保険が適用されます。つまり、一定の実績・効果は認められているのです。

実は海外では以前から超音波治療は一般的で身近なものでした。残念ながら日本はいわゆるガラパゴス状態でしたが、ようやく広まりつつあります。

超音波治療器 UST-770

ITO UST-770

 

UST-770伊藤超短波株式会社

肩こりラボでは、伊藤超短波社製の超音波療法機器のなかでもフラッグシップモデル(2018年12月現在) である「イトー UST-770」を導入しています。

超音波治療機器は本体とプローブで構成されています。UST-770の場合、大きなディスプレイを搭載した本体と左側1本・右側に2本のケーブルが接続されています。このケーブルの先端から超音波が出力されます。これをプローブといいます。

UST-770のプローブ

 

プローブを肌に当てて使用します Ito Co., Ltd.

超音波治療器はどれも使い方・基本的な構造自体は同じです。各メーカーから、様々な超音波治療器が発売されています。

UST-770は、国内メーカーの製品であり、一般的なモデルと比べると非常に高価な機種です。

  • なぜ廉価版ではないのか?
  • なぜ海外製のものではないのか?
  • なぜポータブルのものではないのか?

当機種を選んだのには3つの理由があります。それは【安全性】【信頼性】【応用性】です。

イトー UST-770を選んだ3つの理由

安全性

医療機器で重要なのは性能ではありません。もっとも大切なこと、それは安全性です。

超音波治療器のスペックを表す指標に、BNR(Beam Non-uniformity Ratio=ビーム不均等率)があります。BNRは超音波を照射している際の、平均強度(W/cm²)に対する最大強度の比率です。BNRの値が小さければ均等性が高く、逆に値が大きければ出力に大きなムラがあることを意味します。

つまり、超音波を、どれだけムラなく均一に出すことができるか?の指標がBNRです。

超音波治療器は、プローブの先端から超音波が発せられます。実は、この先端部分の面全体から常時均一に一定の超音波が出てはいません。設定した出力は一定でも、実際に出ている超音波は、強くなったり弱くなったりの誤差が生じます。出力される超音波にはムラがあるのです。誤差を完全に無くすことは不可能ですが、この誤差をできるだけ低く抑えることができるかが機器の安全性に繋がります。

そこでBNRでムラの程度をみることができます。たとえば、BNRが5の機器は、平均強度を1W/cm²と設定して照射した場合、最大強度が5W/cm²の部分があることになります。これは、皮膚に当たっているプローブの一部分に5倍の強度の超音波が出てしまう可能性があるということです。

BNRが5の場合の超音波のイメージ

 

超音波のムラのイメージ

超音波には温熱作用がありますから温めすぎると火傷します。施術者が1W/cm²の出力設定で施術しているつもりでも、ピンポイントで強い出力の部分があると意図せずに強い出力を与えてしまう可能性があり、火傷のリスクとなります。ですからBNRが低ければ低いほど均一に超音波が発せられている、つまり火傷しにくいのです。BNRは5以下が良好なBNR値とされています。

国内外含めて様々な超音波療法機器があります。伊藤超短波社からも、複数の超音波療法機器が出されています。たとえば当院で導入している「イトー UST-770」と、同社製のポータブル機器の「イトー US-101L」のBNRを、比較してみると、以下の違いがあります。

 BNR
UST-770(1MHz)2.9
US-101L(1MHz)3.5

このようにBNRに着目してみてみると、ポータブルと比較して、イトー UST-770は安全性が高いといえます。とはいえ、BNR3.5は決して悪い数値ではありません。一般的に良好とされているBNRは5以下で最高クラスの性能でBNRは2〜3です。そう考えれば、ポータブルの「イトー US-101L」も十分安全性が高いといえます。

機器の価格だけでみれば、ポータブルのイトー US-101Lはイトー UST-770の半分以下です。持ち運びができて、スポーツ現場等で使用することを考えれば非常にすぐれた製品といえるでしょう。

ですが、なぜ価格が2倍以上違うにも関わらずイトー UST-770を採用したのか?それは安全性だけは絶対に譲れないためです。たとえわずかだったとしても安全性が高い方を選ぶのが当院の方針です。

 

信頼性

いくら機器が安全でも実際に効果がなければ意味がありません。本当に効果のある機器なのか?安全性に次いで大切なのは機器の信頼性です。

超音波は目に見えません。その機器からきちんと超音波が発せられていなければ、効果は見込めません。機器を扱う施術者の技術はもちろん必要ですが、効果のある施術をするためにも、機器自体に信頼性があるのが前提となります。

超音波機器の品質を示す指標として、安全性であげたBNR以外にERA(Effective Radiation Area=有効照射面積) があります。ERAは超音波が出るプローブの先端部分の面積の内、有効に超音波が出ている部分がどれくらいあるのかを示すものです。ERAは、プローブ先端の面積に近ければ近いほど、品質的に優れているといえます。

超音波機器のERAの比較

 

太田厚美「何故,超音波療法は世界的に最も評価が高いか」より 国立研究開発法人科学技術振興機構

この違いが何に影響するかといいますと、超音波療法の正確性と効率性です。

正確性

超音波療法は、患部の病状、対象(部位と深度)、患者さんの感受性などを考慮して施術者が任意で細かく設定をできることが利点でもあります。これは他の温熱療法の機器との大きな違いです。

ところが、ERAが不良ですと、施術者としては病巣部位に対して施術を行っているつもりでも、そもそも、実際はきちんと超音波が照射されていなかったことになってしまいます。そうしますと、超音波療法の利点が利点ではなくなってしまいますね。

効率性

同じ部位に、同じ設定・時間で超音波療法を行う場合、ERAの良好な機種とそうでないものでは当然ですが効果に差がでます。

例えばですがERAが良好な機種で5分間で得られる効果が得られるのに対して、ERAが不良な機種で同等の効果を出すのに10分かかってしまうといったケースは容易に想像できるはずです。

超音波療法の施術を行っている最中は、施術者の手が塞がってしまうので、同時に他のことはできません。治療の時間は限られていますので、効率性はとても重要となります。先程の例でいうと、A機種であれば、Bを使った場合よりも、5分間プラスで他の施術ができます。A or B どちらの機種を使ったほうが、治療全体としての効果が期待できるか?言うまでもありませんね。

超音波治療器は、ピンポイトで施術ができるメリットがある反面、基本的には施術者が常に操作をし続けなければなりません。他の治療機器と比較して、正確性の面で利点がありますが、同時進行で複数の施術ができないため、効率面では他の方法に劣ります。正確性と効率性が相反する関係にあるからこそ、機器の精度により、効率性を補うことが大切となります。

超音波は目に見えませんので、設定した通りにきちんと出ているかは、機械の精度に頼らざるを得ません。ですので、超音波療法を行ううえで、機器の信頼性はとても重要です。そのためにBNRとERAは重要な指標となります。

 

応用性

BNRやERAの観点から、安全性と信頼性が高い機器は「イトー UST-770」以外にもありますが、応用性の点で「イトー UST-770」は優れています。設定範囲が広く、幅広い疾患に対応することができるのです。

超音波療法には大きく二つの効果が期待できます。

温熱作用

  • 疼痛緩和(血流改善、循環改善)
  • 組織の伸展性改善
  • 筋スパズムの改善(筋紡錘の感度軽減)
  • 骨格筋の収縮機能の改善(血流改善)

音圧作用

  • 炎症の治癒促進(微細振動による細胞膜の透過性や活性度を改善)
  • 浮腫軽減(微細振動のマッサージによる循環改善)

この音圧作用は、機械的作用ともいわれ、超音波療法ならではの効果です。

一般的には、急性の炎症がある時は、患部への強い刺激はNGです。原則は安静です。ですが、近年では、絶対安静はかえって治癒を遅らせてしまい、安静は必要でも適度な負荷を与えたほうがよい、と提唱されています。

急性の炎症がある時ほど、痛みがあり、どうにかして欲しいのが患者さん心理ですが、標準医学的な観点からみると、闇雲に弄くることでかえって病状を悪化させかねません。ですので、早期に痛みを引かせるために「(急性の炎症がある)患部にはあえて触らない」という判断をする場合があります。炎症がある部位に鍼をうったら余計炎症が増してしまうのは想像できますよね。

急性の炎症がある際は、無闇に触れないのが早期治癒には大切です。患部に関しては、あえて積極的に施術をせず、患部周辺のコンディション改善が教科書的な対処方法でした。ところが、超音波の音圧作用を利用すると、急性炎症の患部に対しても早期治癒のために積極的な施術ができるのです。

これまでは炎症が引くのを“待つ”、しばらく我慢するのが当たり前でしたが、治癒促進のための対処を可能にしたのが超音波療法です。

音圧作用を効果的に使うために重要なポイントがあります。それは温めてはいけないのです。具体的には、出力を低くし、照射時間も短くすることで、患部を温めずに、微細振動による軽微な刺激を患部へ与えることができます。

低出力パルスの超音波も出力できるUST-770

イトー UST-770には、LIPUS( Low Intensity Pulsed Ultrasound / ライプス )という機能があります。直訳すると、低出力パルス超音波となります。極々弱い超音波を断続的に発振することができます。発熱が弱いため患部に固定して使用することができ、筋・腱・靭帯といった軟部組織の損傷にたいして効果的な機能です。

イトー UST-770のLIPUSは、30mW/cm²、45mW/cm²、60mW/cm²の3つの出力設定ができます。これがどのくらい弱いかというと、イトー UST-770や、他の国産のもの含めて、通常の超音波治療器の設定ですと0.1W/cm²の出力が最小となります。

0.1W/cm²=100mW/cm²ですので、通常の設定で最小となるものからさらに3分の1程度弱い設定ができるのです。つまり、従来の設定ではできなかった、とても弱い超音波による施術ができるのです。

照射する深さも柔軟に変えることができるため、炎症があって敏感な箇所や、感受性が豊かな方に対しても用いることができます。

 

UST-770はプローブによって浅部から深部まで対応できる

 

皮膚に近い部分から遠く深い部分まで幅広く対応 Ito Co., Ltd.

ライプスは、難治性の骨折や偽関節の治癒促進、骨の手術をした後の骨折治癒期間を短縮する目的での利用において、健康保険が適用となっています。健康保険が適用される、つまりライプスを使った治療は国から一定の効果が認められているわけです。

肩こりラボでは、健康保険を利用した治療、ならびに骨の治療は行っておりませんが、このような標準医学的観点から認められている機器を利用して、筋線維・筋膜・腱・靭帯などの軟部組織のトラブルに対して施術を行っています。具体的には、五十肩の炎症期(急性期)、腱鞘炎、肉離れや捻挫をはじめとした各種スポーツ傷害の急性期に対する理学療法の手段として使用しています。

超音波と低出力パルスを兼ね備えた唯一の国産機器

一般的なイメージとは逆かもしれませんが「いかに強い刺激を与えられるか」よりも「いかに弱い刺激を与えるか」「いかに弱い刺激で効果を出すか」のほうがずっと難しいのです。機器においても、出力を高めることよりも、いかに弱い出力で安定して超音波を発振できるかという方が、出力の制御や微調整の面で技術的に難しいのです。

2019年1月時点で、ライプス機能のみの超音波療法器はありますが、通常のモードとライプスの両方を、1台の機器で行うことができる国産の機器はイトー UST-770のみです。

超音波療法には、温熱効果と音圧効果が期待できます。ライプス機能があることで、音圧効果を期待した施術の幅が広がり、より繊細な施術につながります。

肩こりラボでの超音波療法の位置付け

超音波療法は、温熱作用により深部を温められること、そして音圧作用により炎症部位へアプローチできるという特徴があります。これらは、鍼・マッサージ・運動療法だけでは難しい、できたとしてもとても効率的なアプローチとはいえません。

肩こりラボでの超音波療法

 

超音波療法が最適な場合にのみ使用します

当院は鍼灸院ですが、鍼・マッサージが全てではありません。鍼もマッサージもあくまで手段・方法のひとつです。鍼がベストな場合は鍼、マッサージがベストならマッサージ、常に最適かつもっとも効果的な方法をとるのが肩こりラボが行ってきた・行っている理学療法です。鍼やマッサージ・運動療法とならんでひとつの手段として超音波療法を取り入れています。

超音波療法を使用する頻度が高いのは、40肩や50肩といった肩関節痛、腱鞘炎、スポーツ傷害、肉離れ、捻挫などです。当院は首こりや肩こりの改善が専門ですが、実はこのような疾患を抱えている方が多数いらっしゃっております。

首肩こりにお悩みの方は、長時間のデスクワークをしている場合が多く、マウス作業のしすぎで腱鞘炎になってしまうこともあります。首肩こりの改善と並行して腱鞘炎に対して超音波を使った施術も行います。また、いわゆる筋膜リリースの手段として筋膜の癒着やシワ(高密度化)の改善に用いることもあります。

超音波療法を行うことが治療そのものではない

繰り返しで恐縮ですが、超音波療法は、あくまでも施術手段の一つでしかありません。

「とりあえず電気でも流しておきましょう」

整形外科でこのようなことを言われた経験がある方は多いと多いますが、当院では超音波療法はとりあえずやってみましょうといった使い方はしません。

必要に応じて、そして効果が期待できると判断した場合に使います。

一発で治る、そんな万能な方法は存在しません

特定の症状を抑える・緩和に一発で効く方法はありますが、慢性的な症状は簡単には治りませんし、再発しないようにすることが理想のゴールです。

どのようなものにも長所と短所があります。

どれだけ優秀な選手が集まってもチームとして機能するかは話が別です。仕事やプロジェクトでも同じです。

鍼・マッサージ・超音波・運動、これらがそれぞれどれだけ優れていたとしても、単体では活きません。

肩こりラボでは、各施術を、長所が活きるよう施術者が見極めて行い、また、他の施術を組み合わせることで短所を補うのが大切だと考えています。そのため、1回の施術で超音波療法のみ行うことはほぼありません。

五十肩に超音波を使用する場合

たとえば、五十肩の急性期。痛くて非常につらい時期です。炎症があって痛みがある時は、炎症による痛みに加えて、周囲の筋肉がかばって硬くなって、結果として痛みを助長させてしまいます。このような場合、肩こりラボでは、炎症がある関節部分には音圧作用を求めて超音波療法、周囲の筋緊張に対しては鍼やマッサージを行います。

超音波を用いた施術でも、筋肉を緩めることはできますが、一般的にみて鍼やマッサージと比較して効果がマイルドで局所的にしか効果がありません。広範囲を施術するにはどうしても超音波だけでは所用時間が長くかかります。

効果と効率性を考えると、防御によって生じている周囲の筋緊張の緩和には鍼・マッサージを施すこと多いのです。ですが、これも必ずではなく、鍼やマッサージが苦手な方、敏感でできない方もいらっしゃいます。このような場合には、超音波療法にて筋緊張の緩和を図ることもあります。

カスタムメイド医療の考え方で、患者さんのお身体状況や感受性、そして考え方を尊重した施術を行います。

UST-770を使用する施術

肩こり・首こり専門コース四十肩・五十肩専門コース腰痛専門コース足専門コース体幹コンディショニング

参考文献

  • 「何故,超音波療法は世界的に最も評価が高いか」
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/mpta/17/1/17_1_14/_pdf
  • 「艾の燃焼温度と生体内温度変化に関する研究」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/38/3/38_3_326/_pdf/-char/ja
  • 「艾の燃焼温度と生体内温度変化に関する研究(第2報)-隔物灸について-」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/39/2/39_2_241/_pdf/-char/ja

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


モヤモヤ血管!病院で原因不明とされる身体の痛みの正体

しつこい痛みは血行不良が原因という常識が覆される新事実が発覚!!頑固な肩こり・腰痛にお悩みの方、セラピスト・トレーナーの方は必見です。

原因不明とされてきた慢性的な痛みの原因は「血管」にあった!!

慢性的な頭痛、肩や首の痛み、関節痛、怪我自体は治ったのに時々痛む、古傷がたまに疼く、と「痛み」でお悩みの方はとても多いのです。

痛みに耐えかねて病院にいったものの、整形外科でのレントゲンやMRI検査では異常なしという診断。原因不明ということで湿布や痛み止めを処方され、勧められたリハビリに通うも効果があるのか、ないのか分からない。はっきりしているのは抜本的な解決策が無いということ‥‥痛み止めの注射のためにペインクリニックに通い続ける‥‥そのようなどうしようもない痛みと向き合っている方々にとっては救いとなりうる方法があるのです。

それは「運動器カテーテル治療」です。

カテーテル自体は一般的なものですしご存知の方も多いと思いますが「運動器カテーテル」という言葉を耳にしたことがある方はそう多くはないでしょう。「運動器カテーテル治療」は横浜のOkuno Clinic院長の奥野祐次医師が第一人者として行っている治療方法です。海外からも大変注目されています。

長引く痛みの原因は血管が9割

奥野先生は次のように述べられています。

従来、血流は多ければ多いほど良い、血管はたくさんあった方がいいとされてきました。なぜなら血管は組織に栄養を届けてくれる良いものとしか考えられていなかったからです。しかし、第2章で紹介したように、血管はすべて役に立つわけではなく、正常な血管と病的な血管があります。モヤモヤ血管は役に立たない病的な血管です。役に立たないどころか、モヤモヤ血管そのものが組織の栄養を奪ってしまい、機能を障害します。このため、この病的な血管を減らすことができれば、病気の改善につながるのです。さらに血管周りには常に神経が寄り添って伸びる性質があり、この血管とその周りの神経が痛みの原因だとすると、異常な血管を減らすことは痛みを治療することにもつながります。

出典:「長引く痛みの原因は、血管が9割(奥野祐次氏著)」

「モヤモヤ血管(新生血管)」が最重要キーワード

モヤモヤ血管(新生血管)は、耳慣れない言葉だと思いますが、特定疾患である「もやもや病」は耳にされたことがある方もいらっしゃると思います。モヤモヤ血管(新生血管)はもやもや病とも関係があります。モヤモヤ血管(新生血管)が、具体的にどのような血管なのかについては、後ほど説明します。

まず押さえておいていただきたいポイントは、今まで原因不明とされてきた慢性的な痛みの原因が、モヤモヤ血管(新生血管)という血管の存在にある!!ことです。

もちろんモヤモヤ血管(新生血管)が100%の原因ではないでしょう。奥野先生の著書のタイトルにある「長引く痛みの原因は、血管が9割」とあるように、原因不明とされてきた痛みの原因の90%はモヤモヤ血管(新生血管)である、は人類にとって大変大きな価値ある発見であると思います。90%という数字は書籍を売るためのマーケティング的な数値でしかないかもしれませんが、原因不明の痛みの多くはモヤモヤ血管に由来しているケースが多いということだけは事実だと思います。

鍼灸師・あんま指圧マッサージ師誰もが抱えてきた疑問に対する一つの回答

鍼灸師・あんま指圧マッサージ師として臨床で疑問に感じてきたことの一つが、定説とされていることは本当に正しいのか?ということでした。

これまでの臨床経験を踏まえ、様々な試行錯誤を経て「肩こり」の専門院を開設したのは施術方法を確立できたからです。ですが、その裏付けとなる医学的な根拠の一部が世の中に存在しないという葛藤がありました。それが、奥野先生の著書、執筆論文を読み氷解したのです。

首肩腰でお悩みの方を迷わせない!病院・鍼灸院・整骨院・サロン選びのコツ

つらいんだけど、症状をうまく説明できない、病院に行っても何科に行けばいいか分からないし、待たされるのもイヤ。

病院以外でどこに行けば・・・街を歩けば、肩こり〜腰痛の改善、歪みを矯正すれば治るといった効果をアピールするお店、整骨院が至る所に・・・なんとコンビニの数より多いのです。そして鍼灸・マッサージだけではなく、リンパマッサージ、アロマやリフレ、整体、 整骨やカイロプラクティックなど種類も多い!!

そんな肩こり・腰痛で、どこに行くのが正解なのかがわからない方のために、詳しく解説します。

失敗しない整骨院の選び方、鍼灸院選びのコツといった内容のホームページがたくさんございますが、みな内容は同じ・文章もどっかでみたころあるものばかりです。

風邪をひいた、頭痛がひどい、熱っぽい、といったカラダの不調を感じた場合、とにかくすぐになんとかしたいレベルであれば、まず近くの病院へいくことを考えるはずです。

これが「ギックリ腰」だったらどうでしょう?

病院へいきたいけど、腰を痛めると立つのも座るのもキツいので、横になって痛みが治まるまで待つしかない、そうせざるを得ない場合がほとんどかもしれません。

では「肩こり」だったら?

近所の整体・マッサージ店・整骨院にいってみようかな、と思うでしょう。

病院・クリニックに行ってみようと思う人は、極めて少ないはずです。

実は「腰痛」も「肩こり」も背中の筋肉の問題という意味では同じ括りなのでですが「腰痛」であれば治したい、と誰もが思うのに、「肩こり」となるとコリをほぐしたいと思うのです。

もちろん、腰痛は生活に支障をきたしますが、肩こりは我慢できてしまいます。

我慢は日本人の美徳でもあります。ですが、我慢のし過ぎは身体にとってよくありません。

医療費の増大が社会問題となる中、我慢よりも「予防」が大切です。

我慢しすぎて悪化するよりも、軽度なうちに対処して悪化するのを防ぐのも立派な「予防」です。

カラダの不調を感じたら、何をすべきか、どこに相談にいくべきか・・・そんな生活の知恵のご紹介です。

病院・医師・鍼灸院・整骨院の選び方

長文で恐縮ですが、ツライけどどこにいけばいいか分からない、どこにいっても同じ、と思われている方に「治したい」「治療を受けてみよう」という前向きな気持ちになっていただければ幸いです。

整体・マッサージに通う目的が曖昧になってませんか?まず目的を明確にしてみましょう!!

マッサージや整体に通われている方の目的は、大きく2つに分けられます。

あなたはどちらでしょうか?

  1. ヒーリング目的

    症状の緩和や気持ち良さを希望

  2. セラピー目的

    とにかくツライ症状を治したい!

くつろぎ・心地よさによる心身のリラクセーション目的の方は良いのです。

本当は治したいのに、治療に見せかけたリラクセーションでしかないお店に疑問に思いながらも通い続けている、心当たりございませんか?

言われるがまま、通い続けているけど、一向に良くならないし、良くならないのは私のせいにされる・・・そして、職業柄仕方ない、もう年齢だから・・・と治療自体を最初から諦めてしまわれている方が多いのです。

なぜ、そのように思ってしまうのでしょうか?

ひょっとしたら、ただの思い込みかもしれません。

ここで、質問です。

「時間や費用の問題は気にしないでください。時間は少しかかりますが必ずよくなります。治療受けますか?」

こう言われたら、どう答えますか?

今、このページを読まれているあなたは、もちろん、誰もがYESと答えるでしょう。

問題は、時間や費用です。

時間や費用を無駄にしたくない!であれば、自ずと行き先は決まります。

肩こり・腰痛を根本的に改善するには、どこに行けばよいの?病院?整体?

肩こりが酷いから病院へ行こうと思われる方は少ないと思います。

これは、凝りというものを、運動しすぎて筋肉痛になった、という一過性の症状と同じように捉えている人が多いためです。

病院へ行くほどでもない、もめば良くなる、ゆっくりお風呂につかれば・・・という認識が大半です。

治療が必要な酷い肩こりになると、いくら患部を温めても、温泉にいくら入っても緩和程度ですぐにまたつらくなります。

一時的ではなく、ゆっくり体を休めれば良いと考えて休暇をとっても、体が休まらないばかりか睡眠を長時間とっているのに、かえって首がツラくなってしまいます。

放置はいけないとネットやテレビなどで紹介されているセルフケアを様々試しても一向に前に進まない。

これを解決するには、適切な治療を受けなければ解決はしません。

となると、まず病院を検討されるでしょう。肩こり外来の専門の病院というのはほとんどありません。では、病院以外の選択肢となると、整体、整骨、接骨、鍼灸、マッサージ、骨盤矯正、カイロプラクティック、ほぐし・・・いくらでも思いつくことでしょう。

それらの中で、治療できるところは限られるのですが、それは一旦置いておきます。

ネット上の情報の見極め方

インターネット上で治療院を探される場合、スマホの検索窓やGoogle、口コミサイトで、症状+地名、整体+駅名などで検索して探すことでしょう。MAPアプリで、症状を入れて一番近いところをとりあえず探す場合も多いと思います。いずれにせよ、画面に出てくる情報で、最初に注目するのは、★の数でしょう。

口コミや評判を参考にする際に、見方を変えてみてください。

マッサージや整体、カイロプラクティックのお店の口コミで「長いことお世話になっています。」「3年通い続けています。」といった絶賛するコメントを目にされたはずです。多くの方が好印象を抱くはずです。一方で、どうせサクラでしょ?とお思いの方もいらっしゃるでしょう。

実際、サクラは多く、本当の利用者の口コミを見分けるのは難しいかもしれません。大手口コミサイトでは、そもそもネガティブな投稿は掲載されないことが大半です。なぜなら多くの人に利用してもらうことが目的なので、すべてがよいところ、であったほうが都合がよいのです。

不自然に絶賛されている口コミが多いところは、投稿者の口コミ一覧をみてみましょう。普通は行動範囲はある程度限定されるものですが、そうでない投稿の場合、要注意です。そして、他の投稿者の口コミ一覧もみてみましょう。面白いことに、投稿先がかぶっているケースが多いのです。このような口コミがいくつか発見できてしまった場合は、そこの口コミはどんなにたくさんあっても・・・信じるか信じないかはあなた次第、となります。

話を、通い続けてます、といった口コミの話に戻します。

単純に気持ちいいから、通うこと自体が好きだから、そして、スポーツをされている方や、日々の身体のメンテナンス目的ならよいのです。予防のために定期的に通うことは必要です。ですが、肩コリや腰痛を何とかしたい人が通い続ける必要がある治療院というのは、治せない、または敢えて治さない、治療とは名前だけの治療院です。

その理由は、そのような治療院の目的が「通い続けてもらうこと」、つまり「お金」のためです。

お金のためというと悪く聞こえるかもしれませんが、仕事である以上当たり前のことです。

ですが、医療という人の身体・健康を扱う場合、第一目的は絶対に治すことであるべきです。売上や儲けというのは、何事においても「結果」でしかないはずです。

本来、病院は、予防目的や定期検診以外でしたら、通う回数が少なければ少ないほうがよいはずです。

「治したい」「治療を受けたい」方へ

生活範囲内で通える病院・整体院・整骨院・鍼灸院・お店・・・たくさんありますよね。効率よく治して時間とお金を無駄にしないためにも「選び方」が肝心です!

整形外科ではなにをしてくれるの?整骨院と整体は何が違うの?

答えは、それぞれの役割・働きを知ればカンタンに出てきます!!

 

病院・治療院・お店が、具体的に何をする施設なのかをきちんと知ること

とりあえず病院にいけばよい、とりあえずクスリ飲んでおけば良い、ではこれからの時代は乗り切れません。

友だちが言ってた、Twitterでみた、TVで見た、といった情報は、きっかけは何であれ、その情報の本質を理解することが大切です。

デマの拡散。これは情報を理解せずに鵜呑みにしてしまう、さらに人に伝えてしまうことで発生します。

スマホを誰もが持つ現代、誰もが情報発信者です。間違った情報を拡散しない・自己責任で泣き寝入りしないようにするためにも、お店・治療院・病院では具体的に何をしてくれるおか?どのような効果があるのかを正しく知って意味のある選択をしましょう。

 

整形外科

まず検討すべきは病院です。首・肩・腰・足の不調の場合、整形外科で診てもらいましょう。

慢性的な肩こり・腰痛を治すためには、骨の問題・重大な病気が隠れていないかどうかの確認が必要です。

体の内部の状況を正確に把握するためには、医療機関での画像検査(レントゲン・CT・MRI・エコーなど)を受けなくてはなりません。

整骨院・接骨院・鍼灸院・カイロプラクティックで機材による検査を売りにしている所がございますが、それらはあくまでも「参考」でしかなく、身体内部の確実なことは整形外科でしか判らないという点をご理解ください。

そのため、まず病院の整形外科での受診する、診断を受ける、これはマストです。

整形外科で受診をして、特に大きな異常が見当たらない(「関節と関節の間が狭くなっている」を含む)状態であれば、多くは痛み止めか湿布を処方され、リハビリをすすめられます。

ここが、とても重要なポイントです。

異常が見つかれば、その整形外科で治療できます。異常が見当たらない場合、いわゆる「とりあえずお薬出しておきますね」「様子をみましょう」「とりあえず電気でも流してみましょうか」というありきたりな対応がほとんどです。

何もしてくれないのか!と納得のいかない方も多いと思いますが、決められた制約の中、決められた治療法しかできないのが保険内の医療です。

社会人の方は毎月社会保険料を支払っているわけですが、多くの方が給与から天引きされています。そこで支払われている保険料で賄われる保険を使った医療というのは、最低限の健康を保証する医療です。働いて税金を納めてもらわないと国が機能しません。そのため健康でいてもらうための制度、それが保険という制度です。

病院での受診は、治療だけが目的ではありません。人間ドックや健康診断のように、異常がないか確認するための機関でもあります。整形外科で異常がないという診断は、骨に異常はない、という1つの安心を得られたということです。整形外科的な異常ではないからここでは治療はできないんだ、選択肢がひとつ減ったんだという前向きな捉え方をしましょう。

とはいえ、その病院にそのまま通い続けるか、他をあたってみるか、という判断になるのですが、判断して選択するのはあなた自身です。その判断材料としての情報が以下になります。

病院で異常が特に見つからない場合、病院は何をしてくれるのでしょうか?

厚生労働省による調査(日本臨床整形外科学会協力)では、腰痛の8割は原因不明で痛み止めを処方という残念な結果になっています。これは腰痛に関してのレポートですが、肩や首の痛みも、程度の差はあれ、病院の整形外科における治療現場の実態に近いと思います。

痛み止めを処方というのは、つらい症状を抑えるために、痛み止めの注射や薬、湿布(市販されていないモーラステープ等)の処方を意味します。これらの処置はあくまでも、その時の症状をおさえる手段です。つまり対症療法です。痛みが治まる=治る、ではございません。

対症療法以外の治療手段として代表的なものはリハビリです。病院における健康保険の適用範囲内のリハビリは、ホットパックなどの温熱療法、低周波などの電気療法がメインとなり、5~10分程度のストレッチやマッサージになります。

リハビリ室にいらっしゃる理学療法士(PT)さんは身体動作を改善するスペシャリストです。肩こりを治すにあたって、姿勢や動作の改善は必須です。理学療法士は、本来、慢性的な肩こりを治す力を持ち合わせているのですが、医師の指示のもと健康保険適用内のリハビリしか行えません。

健康保険の利用は治療方法が限定されることを意味します。健康保険の意味する健康とは「生活して働くことができる最低限の健康」です。理学療法士さんが本来持っている実力を発揮できないという現状があるのです。

それ故に、医療機関である整形外科のリハビリに通ったとしても「その時は気持ち良いけど・・・」というケースがほとんどというのが現実です。保険を適用しない自由診療であれば、治療方法は広がりますが、費用は全て自己負担となり、かなり高額になります。

医療機関を上手に利用しましょう

まず、医療機関にて体の内部チェックを受けることは必須です。問題が隠れていないかどうかの確認のためにも、まずは医療機関を受診しましょう。

整形外科選びのコツ

検討している病院やクリニックの医師の情報を把握しましょう。

出身大学や経歴で選ぶのではなく、整形外科医の先生の肩書に、整形外科専門医という記載があるかどうか?

大切なポイントは整形外科医でなく整形外科専門医です。

認定医という似たような名称もございますが、専門医の方が上ですのでご注意ください。整形外科専門医は、医師として6年間、主に整形外科を中心に研修を納めて専門医試験をパスした医師の証です(2020年から新しい専門医制度が始まります)。ですので、間違いのない整形外科選びの参考にしてください。

専門医だから間違いないというわけではないでしょうし、まだ専門医になっていないだけで若い優秀な先生もたくさんいらっしゃいます。迷った時の参考になさっていただければと思います。

保険適用という制限の中では、病院で治療できることとできないことがあります。これらを踏まえて、病院で治療を受け続けるか、他を選択するか、という判断は、以下の情報を参考にしていただいて、お考えください。

整骨院・接骨院

整骨院・接骨院を営む柔道整復師は、急性期(傷めてすぐ)の応急手当のスペシャリストです。簡単にいうとケガをした時に行く所が整骨院・接骨院です。

実は健康保険適用も骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷(いわゆる肉離れ含む)に対する処置に限定されています。

※参考:厚生労働省

肩こりで受診したのに捻挫をした事にしてと依頼された…心あたりはないでしょうか…?

肩こりで受診した方は実際にはどのような疾患にて保険請求されているかご存知でしょうか…?

厳密には肩こり治療には保険適用はされませんし、慢性の症状になりますので柔道整復師の範疇外の疾患となります。この業界が保険の不正請求の温床になっているとしばしば問題にされ不信感を持つ方が少なくないのは、これが理由です。

きちんと保険が適用できるケースもあります。医師の同意書があれば、肩こりでも「療養費」として健康保険の対象として治療を受けることができます。ただし保険適用ですので、保険で決められた治療に限定されるという制約があります。保険適用の治療というのは、必要最低限の健康維持のための治療です。『治すために必要十分な治療』ではないのが現状です。(当院では、治すために必要十分な治療を行うため、あえて保険診療は一切行わず完全自費診療とさせていただいております。)。

肩こりについてのお話でしたが、例えばムチ打ちになってしまってすぐの場合などは正式に保険も適用となりますし、すぐ近くに病院がない場合は、整骨院に足を運ぶのが望ましいと思います。

参考:整形外科と整骨院(接骨院)Q.「整体」なども整形外科の一分野なのでしょうか?

A.日本整形外科学会による回答

歪み=肩こりの原因、と説明する整体(整骨院・鍼灸院も含む)

肩こりの原因は「歪み」ではない。

骨盤矯正という言葉は、誰でも見たことある・聞いたことはあるはずです。骨盤の歪みを矯正すれば、体の不調の回復はもちろん、ダイエット効果までうたわれています。骨盤に限らず、骨の歪みを諸悪の根源とする「ゆがみ理論」はもっともらしいのですが、少なくとも肩こりは歪みから生じるものではございません。なんでもかんでも「歪んでますね」と歪みのせいにしている施術者がいますが、間違いです。

肩こりを引き起こす原因は歪みではありません。肩こりの原因は、あくまで筋肉の問題が主です。ですから骨格矯正や歪みを肩こりの根拠としている所は、そもそも肩こりを引き起こしている原因へのアプローチができておりません。つまり、わざわざ足を運んでも治る見込みはまずありません。

カイロはたしかに気持ちよいでしょう。ですが首の骨をボキッと鳴らす施術は大変危険です。

特に骨をボキっとするカイロプラクティックでおなじみの矯正術などは、 直後はスッキリしますが、その音は過剰に関節が動くことによって生じるため、その後時間が経つと周囲の緊張が増してきます。骨ボキ施術を受けた後に、かえってつらくなってしまったという方、ムチ打ちのようになって悪化したという方は少なくないと思います。

「ソフトカイロ」「無痛整体」といった、骨ボキをやらない、痛くない施術もありますが、ベースとなる理論は「骨のゆがみ」です。ですので、これをいくら追究しても治ることは100%ありませんし、無痛であろうと有痛であろうと整体は無資格者による施術であるため、治療ですらありません。

首の骨と椎骨動脈解離の正しい知識。自分の体は自分で守りましょう。

海外では認められている、WHOが認めている、よくわからないけど凄そうな民間資格を誇示するところが多いのですが、ここは日本です。もし、何かあっても、対応するのは施術者ではなく日本の医師です。

このような治療ではない行為は、無資格ですので誰でもできますし勝手に名乗れます。自称ゴッドハンドが良い例です。その結果、整体やカイロでの施術が原因による事故も起こっております。

体がおかしくなったらどこに行きますか?

病院ですよね。

治療して無事に治っても、あとから整体やカイロで受けた施術が原因だったと証明することは困難です。だからこそ、好き放題やっている側面もあります。無資格者なのに一般の方から見てさも有資格者のような表記をしていること(ここでいう有資格者とは国家資格である厚生労働大臣免許を保有している者という意味で民間資格保持者を意味しません)、そして治療ではないのにさも治療のように見せかけた表現をしていること、この二点が本当に治したい方を惑わす大きな要因であり、問題であると当院では考えております。

人は、どうしても、ニュースや話題にでもならない限り、問題意識、危機感を持ちません。ひとつ言えるのは、近い将来、必ず大きな問題になります。

急増する『整体師による骨折』

国民生活センターでは、「マッサージを受けて骨折、もしくは健康被害を受けた件数は2007年度以降の5年間で825件が発生しており、報告件数は年々増加している」と発表しています。参照: 国民生活センター-手技による医業類似行為の危害-

柔道整復師がいる接骨院や整骨院で、健康保険が使えます、各種保険取り扱い、ということをアピールしている治療院が多いですが、健康保険が適用できるのは、健康保険適用も骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷(いわゆる肉離れ含む)に対する治療のみです。つまり、整体も行っている整骨院がある以上、整体も保険が適用されるように錯覚してしまいます。整体には保険は適用できません。

国の医療費の増大が社会問題になっています。安いから、薦められたから、という理由で、安易に保険を使うのは不正請求に手を貸すことになります。不正請求は遡ってバレます。何もかも捻挫ということにしているので捻挫する人が統計上多すぎなのが今の国の現状です。ですので法律も変わり厳しい状況になってきています。不正請求によって潰れる整骨院がありますが、当然、利用者の情報も筒抜けです。国の保険だけでなく、民間の保険会社からの信用を失うと大変なことになります。

街頭での呼びかけ、ポストに大量に投函されるチラシ、オープニングキャンペーン、初回無料、先着○○名さま限定、無料治療体験?といった囲い込み・呼び込みに必死な整骨院には特に気をつけて下さい。

参考:整形外科とカイロプラクティックQ.カイロプラクティックとはどのような治療法でしょうか?

 

A.日本整形外科学会による回答

カイロプラクティックは、海外の医療現場で行われていますが、理論・方法は、国内のそれとはだいぶ異なるものです。それを本物といってしまっていいのかわかりませんが、国内でも真面目な本物のカイロプラクティックを行なっているところはあると思います。ただし数はかなり少ないと思われます。

少しずつですが歪み原因説を否定する整体・治療院は確実に増えてきています

ここ最近になってようやく歪みを直しても意味がないと説明する整体・治療院が増えてきました。中には当院のホームページ上のテキストをそのまま使って説明していて実際どのようなことを行っているのかは定かではないところもございますが、少なくとも選択肢の幅は広がってきています。「その痛みの原因は歪みかも?」といった手書き看板を掲げているようなところは治療の選択肢から除外するだけで、かなり絞り込めるはずです。

 

リンパの流れを良くする、身体をほぐすことを目的とするマッサージ屋さん

マッサージという言葉を使ってよいのは「あん摩指圧マッサージ師」という厚生労働大臣免許を保有している者のみです。つまり「お店」では使えません。ですから、リンパマッサージのように○○マッサージという名前にすることで法律の隙間をついているのです。マッサージという言葉を使わずドレナージュといっているところも見かけます。

リンパの流れを良くして、内側から綺麗にする、リンパの流れを改善すると毒素が消える、肌荒れやむくみが解消する、などといいますが・・・残念ながら、医学的根拠に乏しいです。

そもそも毒素ってなんでしょうか?そして、リンパの流れをよくすると免疫力を高めるともいいますが、免疫の主役は白血球。白血球というと血液の中にあるもの、というイメージがありますが、血液の中だけではないのです。白血球にも種類があり、それらの総称です。そのうちのひとつがリンパ球であり、それはリンパ液の中に存在します。ただ、それだけのことです。

ところでリンパって何なのですか?どこにあるんですか?

リンパの流れ・免疫というワードがもっている、なんとなく良さげなイメージ・雰囲気。実際、きちんと説明できる人自体少ないでしょう。マッサージ屋さんでもほとんどいないと思われます。もし通われているのなら、リンパ・毒素・老廃物ってなんなのか質問してみて下さい。

クイックマッサージ・リフレなどいわゆるマッサージ屋さんは基本的に凝っている所を揉んで快楽を提供する所なので、治しにいく所ではありません。当然治りません。気持ちよさ、安らぎを求める人のためのお店です。ですから、カラダを治すことを目的としているのでしたら、オススメしません。

人間の身体は刺激に慣れていく順応性があります。

コリは刺激に慣れていきます。お店に通う頻度が増し、行くたびに強さを求めてしまうようになりますと、コリは悪化しているということです。そうなると治療にも時間を要するので、身に覚えがある方は治療を早めに検討しましょう。あくまでも目的次第でございます。

ペインクリニック

「何をやっても治らない!!」方の中にはペインクリニックへの受診を検討している方も少なからずいらっしゃると思います。

ペインクリニックとは、その名の通り「痛み(=pain)をとる」「症状を緩和する」ための医療機関です。主に麻酔科の医師がいらっしゃいます。

ペインクリニックで主に行っている肩こり治療は2つあります。

  1. 痛み・症状を感じさせる神経をブロックする

    圧痛点の局所神経ブロック(トリガーポイント注射)・肩甲上神経ブロック→症状を自覚しているその部分に対して直接アプローチして痛みや疼きを感じなくさせます。

  2. 首肩への血流を妨げている神経をブロックする

    星状神経節ブロック→首の付け根にある頭と肩、上腕を支配する自律神経のうちの交感神経の塊です。この神経をブロックすると肩全体の血流を改善します。

神経ブロック治療を受けますと、今までマッサージ・整体・一般的な鍼(ハリ)を行っても数日内で元通りになってしまっていた方でも、一定期間はその苦痛から解放されます。

これは治療を行う上で、とても良いことです。

注意点として、薬の効果は一定期間で確実に切れます。つまり投薬をずっと繰り返し行わなければいけません。

これは仕方のないことですが、繰り返しているうちにだんだん効きが悪くなり、少しずつ量を増やしていく必要があります。

ブロック注射は一定期間効果はあっても、あくまでも対症療法。首肩の筋肉へ物理的負担をかけている原因、首肩の筋肉が疲労し硬くなる原因に対する効能はないということは覚えておいてください。

星状神経節ブロックによって血流を改善はできますが、肩こりの原因が血行不良だけではないことは以下の記事で詳しく解説しています。

苦痛からの即時的な解放はとても素晴らしいことである反面、これは、痛み止め・消炎鎮痛剤を服用し続けること本質的には変わりはないのではないかと考えております。

 

 

ボトックス注射

美容クリニックで有名なボトックスをコリの感じる部分に注射する施術があります。

ボトックスにはボツリヌス菌から作られた成分があり、筋肉の動きを止める作用があるのです。いわゆる筋弛緩作用です。つまりボトックスは筋肉を収縮できない状態にするため、硬くなっている筋肉を一定期間弛緩させることができます。

これは一見血流改善よりは理に適っていることになりますが、注意が必要です。

例えばA、B、Cの3つの筋肉が相互関係にある場合、Aにボトックス注射を打ちますと、ボトックスによってAの筋肉は収縮できないようになります。そうしますと、B、Cの筋肉がそれに代わって頑張って働くようになります。すると別の所にコリが発生します。

繰り返しボトックスを使用しますと、その筋肉は退化してきます。筋肉が退化しますと、他の筋肉で補う状態となります。つまり、また別の箇所がコリ、ボトックスを打ちますと、悪循環になります。

筋肉を緩めることで、血流を改善と聞けば聞こえはよいのですが、筋肉の内側の血流は筋収縮によって促されます。ボトックスによって収縮できない状態ということは該当する筋肉内の血流は悪くなっているのです。

そのため、ボトックスを使えば頑固なコリを絶対に弛めることはできますが、それが治るということにつながるかといいますと、ケースバイケース、むしろ、かなり限定的な場合のみ有効といえます。

ボトックス注射は、ボツリヌス菌から作られた成分です。ボツリヌス菌は食中毒の代表的な原因菌のひとつです。どんなクスリにも副作用がありますが、ボトックス注射は、動物実験で妊娠や胎児への影響が認められており、妊活・妊娠中の女性はもちろんのこと男性も受けてはいけないとされています。

神経ブロック治療は有効な場合はもちろんございますし、根本治療と併用できれば理想の治療方法のひとつです

上記ではネガティブな見解となってしまいましたが、ペインクリニックでの神経ブロック治療は治療の選択肢のひとつとして必要です。

鍼灸・マッサージ含めてどんな施術・治療を受けても楽にならないという方の症状を即時的に解消できる手段は本当に大切です。疼痛の管理はQOL(生活の質)の向上のために欠かせません。

兎にも角にも一刻も早く、今ある痛み・こりから解放されたいというお考えでありましたらペインクリニックに足を運ぶのが良いです。注射技術によってバラつきはあるもの、ほぼ確実に一定期間の痛みからの解放という希望は叶うはずです。

忘れてはいけないのは「痛み・コリを感じなくなる=治った」ではないということ。この点を患者さんご自身で認識しなくてはいけません。

ペインクリニックにて神経ブロック治療を行い、症状が緩和している期間に、筋肉バランス・姿勢・動作など体を造り変えることで根本治療を行うことができれば理想です。ブロック注射の効果がある内に根本治療が行うことができれば、ブロック注射の効果が切れた後に元通りになるというサイクルを断ち切ることができます。

 

ストレッチ店

最近はストレッチ店も目立ちますが、ストレッチのみで肩こりは治りません!!ここでいう「治る」というのは、一時的な症状の緩和を意味しません。

肩こりがストレッチでは治らない理由

肩こりでつらくなる部分は、不良姿勢によって常に引き伸ばされてしまっているのです。ストレッチは、引っ張って伸ばす、という意味ですが、肩こり=つらい部分がストレッチされてしまっているという状態なのです。

その引き伸ばされた状態はつらいので体は反発しようとします。そのために筋肉が疲労して硬くなり、血流が悪くなり、症状が出現するのです。

整理しましょう。

凝っている部分は日頃から常にストレッチ・引き伸ばされてしまっている状態なので、その部分をさらにいくらストレッチしても、一時的には楽になったような気がしても、根本の解消には決してならないのです。

え・・・?こっている部分が日頃からストレッチされている・・・?

いまいちピンとこない方がいらっしゃると思います。もっとわかりやすく解説いたします。

例えば下を向いて作業をしていると首の後ろの筋肉が引き伸ばされている状態となり、それが長時間に及ぶとコリになります。コリがひどい部分はそもそもストレッチしても伸びないし、楽にならない、という点を重症の方はご理解いただけると思います。

そして、多くの方にはあまり実感がわかないかもしれませんが、中には体が非常に柔らかい、つまり関節可動域が非常に優れているにも関わらず首肩こりにお悩みでいらっしゃる方がいます。

実はこのような方の場合、ただほぐせば良い、やわらかくすれば良いとはいきません。関節可動域は正常、もしくはそれ以上あるわけなので当然ストレッチによって改善は見込めないのです。

また、ストレッチ店にお勤めでいらっしゃる方は基本的には民間資格保持者で国家資格を有しているケースは少数です。国家資格を取得していなければ法律上治療行為は行えません!!違法行為となります。

そのため「体を変える」ことをうたっていたとしてもストレッチ店は整体と同様、無資格者が行うリラクセーションの範疇であり、肩こりを治すために行く所ではないのです。

当院でもストレッチは関節可動域を改善するためにしばしば行いますが、あくまでも一つの手技でしかありません。ストレッチのみで肩こりを根本的に改善することは現実的には不可能に近いと思います。しかし、裏を返せば、関節可動域の改善にはストレッチが特に有効といえます。

ストレッチ店ならではのメリット

「肩こりを治す」「腰痛を治す」という限定的な面に限ってはストレッチ店を否定するような文章になってしまいますが、ストレッチ店ならではのメリットもあります。

まず、ストレッチは無資格者が行ったとしてもマッサージと比べて有害事象は比較的起こりにくいといえます。

そのため、無資格マッサージや整体で硬い所をひたすら揉まれた結果、揉み返しに苦しむといったことはストレッチ店ではまず起こりません。この点は安心です。

ストレッチ店には、NATA- ATC、NSCA-CSCSといった資格を保持しているトレーナーが在籍しているお店がります。このようなプロのトレーナーの資格を有している方は、単に固い所を伸ばすというだけではなく、体のバランスを整えるという意味での施術をしてくれる可能性が高いです。きっと何よりも効果的な筋トレやセルフケア方法の指導も受けることができるでしょう。

体の硬さでお悩みの場合や、健康な方がさらに健康増進を図るためにはストレッチ店に足を運んでいただくメリットはとても大きいと思います。これはヨガ教室も同様です。ストレッチ店もヨガ教室も、体を治してからいくべきところです。治しにいくところではありません。

 

 

健康な人が健康を維持するための場所

フィットネスジムはあくまで健康な方が健康増進をはかるための場所です。ヨガも同様です。単にマニュアルに則っての筋肉トレや、やみくもに体を動かすことでかえって負担となり状況が悪化してしまう場合もございますのでこれには注意が必要です。体を変えるには患者さんの個々のお体状況に応じた対処が必要になります。そしてお体状況をきちんと把握するためには専門的な知識が必要になります。
西洋医学的な鍼灸・マッサージ院や、NATA-ATC・PT(理学療法士)・NSCA-CSCS・日本体育協会認定ATなどの資格保持者が属するパーソナルトレーニングジムとなります。数々の民間トレーナー資格がありますが、この四つの資格いずれかの有無を参考にしていただくとよいでしょう。あくまでも個人的な見解ですが、日本国内でみられるトレーナー資格の信頼度としては「①NATA-ATC・PT(理学療法士)→②NSCA-CSCS→③日本体育協会認定AT」となります。

体造りを目的としたトレーニングを行う、もしくは現在行っている場合「お体状況が常に前進しているかどうか」これを第一のチェック項目にしてください。前進していなければ、見立て、もしくは対処方法(トレーニング内容)のいずれかがエラーとなっているためなので、今一度検討していただけましたらと存じます。体を変えるという事は容易な事ではありませんが、お体状況に最適化された処置を行えば体は必ず変わりますよ。

ストレッチをすると疲労解消にも効果があるとされています。たしかに、スッキリして精神的疲労を緩和する効果はあるでしょう。ここで大切なのは精神的な疲労を解消という点です!!ストレッチには肉体的な疲労を解消する効果はございません。

血行がよくなるからという、いかにもな理由による説明をされているところも多いですが、血行良くしたいのでしたら温める方がずーっと効果的です。お風呂で湯船にゆっくり浸かりましょう。

東洋医学に基づく鍼灸・マッサージ院

東洋医学では、伝統的で特徴的な診察法が用いられます。脈・舌・腹などの状況を観察して、施術者の主観的観測のもと「気」「血」「津液」「経絡」 などの異常をみつけ、独自の診断が出されます。そしてその診断に則り、ツボと呼ばれる定点に鍼やお灸といった施術を行います。

東洋医学において、基本的に適応できない疾患は無いとされています。様々な。ただし、「治療方法はあります。でも効果は保証できません。」というのが実際のところです。

実は、 東洋医学はあくまでも考え方であり思想なのです。

数千年前、まだ人体解剖学が体系化されていなかった時代に人体を構成するものは「気」「血」「津液」だとされ、「経絡」というルートがあることが仮定されました。そこの異常を見出して治療を行うので、今現在では実体が確認されていないものに対して施術を行いま す。

よくわからないから定義して仮定しただけなのです。

人は、よくわからなくても、シンプルな因果関係さえ示されれば、すんなり受け入れてしまいがちです。

人体にはまだまだ未知な部分があります。今後新たに気や経絡などが確認される可能性はありますが、万人が眼で見て触れることができる西洋医学的な解剖学と比較すると「不確か」と言わざるをえません。施術者のセンス(直観)がとても問われる治療です。

例えば肩こり治療の場合、症状を自覚しているのが首や肩だとしてもその部分にはあまり触れず、手や足に対して処置を行うケースが多いです。

もちろん全てがそうではありません。ほとんどの場合がそうなのです。

その理由は、首肩がつらくなるのは「気」「血」「津液」の過不足や滞りが原因とされるためです。その通路となる「経絡」の流れを良くすることを目的としています。「経絡」と呼ばれているルートの主要部分やツボが手足に多いため手や足に対して処置を行うのです。東洋医学では「刺しているか、刺していないかわからない鍼」や「お灸」がしばしば行われます。

当院ではリスク対効果という面からお灸は一切行っておりません。

あらゆる病院に通って診療受けたのに改善しなかったのに、東洋医学で救われたという方も少なくないと思いますが、それは、たまたま、その人には効果があった、というのが現実です。自分に効果あったから人に薦めたくなる気持ちはよく分かりますが、東洋医学=誰にでも効果がある、万能である、ということではないという点だけご留意ください。

当記事は、10人中1人に効果があるものと10人中3人に効果があるものがあれば、後者をオススメする、という視点であるという点を、どうぞご理解ください。

西洋医学に基づく鍼灸・マッサージ院

東洋医学とは言葉としては対をなす西洋医学ですが、一般的な医学、現代医学を指します。

現代医学の特徴でもあり欠点でもあるのですが、とにかく明確です。

現在の医療では治りません、現在処方できるのはこの薬のみです、決まった日数分しかお薬は出せません、といったようにとにかく融通がききません。もちろん医学というよりは健康保険制度による制約のせいもあるでしょう。

現代医学というのはより高い確率で、効率よく治すこと、生命を救うこと、を突き詰めていく学問なのです。

これだけですと、東洋医学の方が良いと思われるかもしれません。1%でも望みがあるなら、希望がもてる方が良いにきまっています。

西洋学的な医療に100%はありえませんが、再現性や一定の確率が担保されているのは間違いありません。

効果はあるかもしれないし、ないのかもしれない、という確率自体が担保されていないのが東洋医学です。わかりやすく説明するためにあえて極端な例を挙げます。1万人に対して1人に効果があれば、効果あったとする のが東洋医学、あまりに数が少ないので効果なし、とするのが西洋医学(現代医学)です。

現代医学的な肩こり施術の流れとは?

西洋医学では、解剖学をベースとし、まず問題を起こしている部分、つまり解剖学的な異常がある部分に直接アプローチします。

肩こりでしたら、首肩周辺の筋肉です。

症状を引き起こしている首肩の筋肉そのものに対して処置を行います。いわゆる対症療法です。

次に症状を引き起こしている筋肉に負担をかけている他の部分の筋肉に対してもアプローチを行います。これは、首肩にかかる物理学的な負担を減らすことが目的です。首や肩へ負担をかけている原因は人それぞれとはいえ、首肩自体にその原因がありません。例えば姿勢が悪いから、となれば足腰に問題があるわけです。体全体へのアプローチが必要なのです。

肩こりや腰痛を確実に治したい方は、まず整形外科にて基礎疾患の有無をチェックしましょう。問題がなければ、上記の例のように西洋医学的な視点のもと全身へのアプローチが望ましいのです。原因を究明し、一つ一つ解消していくという論理的なアプローチ、これをきちんと実践できればよいのです。

ですので、西洋医学的理論のもと筋肉に対する施術を行い、姿勢と動作を改善してくれる鍼灸・マッサージ院をオススメします。

それでも、治らなかった、よくならなかったのでしたら、東洋医学の鍼灸・マッサージが効果あるかもしれません。この順番が本当に大切なポイントで す。つまり「東洋医学は第一選択肢であるべきではない」のです。

東洋医学と西洋医学の融合をうたう鍼灸・マッサージ院

世の中には、西洋・東洋医学の良い所を合わせた施術をする折衷治療を行う治療院がありますが、これはあまりおすすめできません。「良い所だけを合わせた・・・」と聞くと響きが良いですが、裏を返せば、どちらにも特化していない、中途半端である可能性が高いです。もし、東洋医学的治療をご希 望されるようであれば、完全に東洋医学的理論の元、治療を行う治療所に足を運んでいただきたいと思います。この業界の宣伝におきまして、耳触りの よいキャッチコピーには必ず裏があるとお考え頂いて良いと思います。

肩こりに効果的なのは、鍼・マッサージ、ストレッチ、トレーニングの3つ

治療院やお店が何を行うかについて、解説しましたが、メリットとデメリットが混在しているケースがあります。混乱されるといけませんので、上記解説を、肩こり治療を行う上で効果的な「方法」の面から、整理します。

肩こりを治すためには、鍼・マッサージ、ストレッチ、トレーニングの3つが大切です。

マッサージ・鍼硬くなった筋肉を弛めることができる=局所症状の解消に対しては効果的。対症療法に特化しているので、これだけだですと「施術を受けても時間がたてば元通り」から抜け出せません。 ストレッチ・関節モビリゼーション硬くなって動きづらい関節の可動域の改善ができます。首肩腰に負担をかける不良姿勢を改善できますが、局所の症状(コリ)を解消することは難しいです。運動療法・トレーニング体を動かすことで筋肉がゆるんだり、スッキリする感じを得ることができます。筋力の向上はとても大切なこと。根本改善には運動は必須ですが、局所の症状(コリ)を解消するには不十分です。症状が低下して、関節可動域が確保されている状態での運動が重要です。

このように、それぞれの方法には一長一短があるため、首肩こりを治すためには、これが一番いい、これだけやれば良いといった、最良の唯一の方法はないという点をご理解いただけると思います。

つまり、これら3つを全て行うことができるところが、肩こりでお悩みの方にとって最適です。

肩こりや腰痛を治すためにどこに行けばよいのかという質問に対する回答

長々と解説しましたので、最後に、どこに行けばよいのか?という点についてまとめます。

まず、整形外科にて骨の問題や病気がかくれていないか、チェックを受けてください。そして、異常が無い、もしくは原因がはっきりしないようであれば、東洋医学ではなく現代医学的理論のもと筋肉に対する処置を行い、姿勢と動作を改善してくれるNATA-ATCまたはNSCA-CSCSといったトレーナーライセンスを保持したセラピストか理学療法士が在籍する鍼灸・マッサージ院に足を運んでください。(リハビリにて電気や温熱療法を続けていても、直後には緩和されても一時しのぎであるということをどうかご理解くださいませ)

そして、鍼灸師、按摩・マッサージ・指圧師という国家資格を有している者が施術を行っているかどうかを確認してください(事前に電話で確認する、ホームページなどでスタッフの情報をチェックしましょう)。

鍼灸・マッサージという言葉が院名に入っていても国家資格者が施術をしているとは限らない

鍼灸・マッサージ・整体院、整体・鍼灸・マッサージ院といった名称も目にされることでしょう。

整体は無資格者が行い、鍼灸・マッサージは有資格者が行うもの。

つまり、有資格者が、整体も行うんだ、と思われるはずです。

ここで、ひとつタネ明かしをしておきます。

国家資格を持っているのに整体という言葉を使う理由

国家資格には、接骨を行う柔道整復師以外に以下の種類があります。

  1. 鍼灸師

    鍼とお灸

  2. 按摩マッサージ指圧師

    マッサージ

鍼灸師は、鍼師と灸師の2つの資格を一緒にとる人がほとんどなので、1つにまとめられて呼ばれます。

ポイントは「按摩マッサージ指圧師」という資格です。

鍼灸師の資格はもっていても、按摩マッサージ指圧師の資格は持っていない方がとても多いのです。これは、学校の数の差という現実的な問題も大きいのです。両方持っているから偉い、優秀ということではございません。

ですが、整体・鍼灸・マッサージ院といった名前のところは高確率で、按摩マッサージ指圧師の資格を持ったセラピストがいません。鍼灸師資格のみを有する者しかいないということです。

これが、「整体・鍼灸・マッサージ」というネーミングのカラクリです。

繰り返し強調しておきたいのは按摩マッサージ指圧師の有無が全てではございません。有していなくても素晴らしい技術をもったセラピストはたくさんいらっしゃいます。

技術ではなく国家資格を持っている・持っていない、という点での判断というのは、腕の良し悪しとは無関係ですし、患者さんからすれば、治るの?治らないの?という点がもっとも重要です。

本気で患者さんを治すことに取り組んでいる鍼灸師、鍼灸師であることに強いプライドを持っているならば「整体」という言葉は使いません。

ただ、整体という単語がこれだけ一般に認知されてしまっている以上、資格があろうがなかろうが「整体」でひとくくりにされてしまうわけです。ですから、分かりやすさに重きをおいて整体やってますというスタイルの鍼灸・マッサージの存在の否定はできません。按摩マッサージ指圧師の資格がないから、整体という言葉を使う鍼灸師と、整体という言葉を使わない鍼灸師がいます。そして按摩マッサージ指圧師の資格を持っていても整体という言葉が一般受けがいいから使っている人もいるのです。

整体やスポーツマッサージ・〇〇マッサージといった類のリラクセーション施術ではなく、本物のマッサージを受けたい場合は、按摩マッサージ指圧師かどうかを確認してください。これだけで、かなり絞り込めるはずです。

整体やゆがみ理論については、先に説明したとおりです。施術内容の説明やコース名に「ゆがみ」という言葉が入っている場合は、治療という意味ではまったくもって無意味です。「リンパ」という言葉を使っているところも同様です。効果はまったく期待できません。

「整体」「ゆがみ」「リンパ」・・・この3つのうち1つでも入っている治療院・お店で期待できるのはリラクセーション効果のみです。

良い鍼灸院の選び方を知りたい方へ

鍼灸・マッサージ院の名前や施術メニューに「整体」という単語の有無がひとつの判断基準になります。

数は限られると思いますが、NATA-ATCまたはNSCA-CSCSといったトレーナーライセンスを保持した施術者か理学療法士が在籍する鍼灸・マッサージ院が理想です。

そして、西洋医学的な鍼灸・マッサージ院でも、もちろん技術力には差がございます。もし、改善しない、効果を感じないようでしたら、他の西洋医学的な鍼灸・マッサージ院に思い切って変えましょう。それでも、どこにいっても効果がないようでしたら・・・東洋医学的な鍼灸・マッサージ院を検討なさってください。

実際問題、当記事で推奨しているような治療院は少ないです。

業界現状を見渡してみると、ご推奨させていただきましたような治療施設の数は多くはありません。探したけれども見つからない、行きたい所が見つかったけれど遠方により行くことができないという方もいらっしゃることでしょう。

いい治療院が見つからない・・・目的を明確にして、施設を使い分けましょう!!

希望の治療院が見つからない、見つけたけど通うのが困難な場合は、目的をはっきりさせて施設を使い分けることをお勧めします。

あなたの目的のうち、「今つらい症状をどうにかしたい」「コリをほぐしたい」「筋肉を柔らかくする」「関節をやわらかくする」といった事に関しては西洋医学的な理論のもとで治療を行う鍼灸・マッサージ院をご利用ください。

そして、「筋肉を強化する」「体のつかい方を改善する」「姿勢や動きを改善する」といった体造りに関しては、NATA-ATCまたはNSCA-CSCSといった資格をもったトレーナーか理学療法士が在籍するパーソナルトレーニングを受けてください。パーソナルトレーニングを受ける際「体幹機能を回復させてほしい」とオーダーするのがポイントです。

トレーニングジム選びのポイント

トレーニングジムを選ぶ際のの留意点は大きなフィットネスジムやチェーン展開しているお店のパーソナルトレーニングではなく、なるべく小さい規模のジムや個人で開業されているトレーナーさんのほうが良いです。そして、必ず確認していただきたいのは、それは、NATA-ATCまたはNSCA-CSCSのトレーナーのライセンス、または国家資格である理学療法士を保持している方が在籍しているかという点です。これはとても重要です。

ライセンス・国家資格の有無を確認しなければならない理由

理学療法士・NATA-ATC・NSCA-CSCSといった資格は、お金払って講習受ければ取れる類のものではございません。取得するのは簡単ではなく、何より資格を取得するためには、一定の医学的知識があることが担保とされています。専門トレーナーといいながら、実際は研修2週間受けただけのただの素人といったケースが多い業界ですので、資格の有無の確認は必須です。

肩こりを治すためにはフィットネスの知識では不十分です。肩こりを治すためには、医学的な知識が必要不可欠なのです。

掛け持ちするのは良くないのでは?と思われた方へ

理想であれば、これらを一つの施設で一貫して行うことが慢性的な肩こりや腰痛を最短での根治につながりますが、実際はそのような施設はそう多くはありませんので、読者様のおかれている状況によってはこのように目的に応じて使いわけていただければと思います。

「掛け持ちするのは良くないのでは・・・」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。患者さんを治すということやメリットを最優先することを貫いているセラピストやトレーナーは、自らの専門分野や適応範疇を熟知しており、それぞれの領域のプロフェッショナルと連携を組むことが可能です。

何を掛け持ちするかにもよりますが、それが目的を達成することに医学的観点から適しているということであればむしろ連携を推奨するでしょう。決して、自らの領域にしばりつけようといたしません。患者さんにとって最も有効な手段、方針、意志を優先するはずです。(目的に応じた使い分けや連携を拒むか否か、それに対する説明でその治療担当者の資質を判断する目安にもなるでしょう。)

当記事はkatakori LABSが実践していることを踏まえ、患者さんを治す、助けになるはず、という信念を持って書きました。冒頭で述べましたように当院に治療にお越しになれない方のお役に立てれば幸いです。そして、もし疑問点やご質問がございましたら、できる限りの対応をさせていただきます。

1点だけ注意点がございます。

実際に体を診てみないことには判断はできません。責任のもてない適当なアドバイス・回答はできませんし曖昧な答えは双方にとってよくありません。回答できる範囲はどうしても限定されてしまうという点だけは、どうぞご了承ください。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


【検証】薬で五十肩・四十肩はよくなるの?五十肩に効くとされるクスリの効果と意味を解説

最近、テレビCMや広告で四十肩・五十肩がつらい方へといった市販薬の宣伝を見かけます。五十肩は日常生活に支障をきたしますし、夜眠れないほど痛かったりします。

しかし、病院へ行くのが億劫であったり、とりあえずすぐにでも痛み止めがほしい!!バファリンやロキソニンは効くのかよくわからない、そこで、ご近所の薬局で五十肩の痛みに効くとされる市販薬に手を出してしまうのは、仕方のないことです。

しかも「体の中から効く・・」「痛みにズバリ」といった飲めば治るかのようなキャッチコピーに心動かされ、先の見えない痛みに苦しむ患者さんの中には藁をもつかむ思いで購入を考えている方もきっと多いことでしょう。

「痛みが取れなければ、病院へ」なんていうCMもありますが、最初から病院に行けばいいのでは?と思われる方も多いことでしょう。そこで、薬を飲む事で五十肩が改善するものなのか、果たして治るものなのか、その成分と効能を元に検証してみます。

最初にはっきりと申し上げておきますが、一般的な五十肩向けの市販薬の説明には「五十肩が治る」とはどこにも書いてありません。たいてい「諸症状の緩和」と書かれています。なお、痛みが収まる=五十肩が治る、ではありません。

しかし、服用すれば治る、と思ってしまうような宣伝がなされています。

 

大事なポイント四十肩や五十肩は、放っておいても1-2年ほどで痛みだけは自然と治まることが多いです。痛みを感じなくなるまでの間、痛み止め注射を打ったり、鎮痛剤を服用してしのげば良いと思いがちですが、痛みだけ抑えていても、五十肩自体は治らないのです。

痛みが治まっても五十肩が治ったことにはなりません。

現代医学的には、原則再発はしないとされていますが、以前四十肩患い、再び五十肩になってしまったので今回はきちんと治療をしたいと訴えてご来院される患者さんが、当院には一定数いらっしゃいます。

治療せずに痛みが自然と感じなくなった時、残念ながら肩の関節は確実に動かしにくくなります。日常生活に支障はない動きはできても、発症以前の動きは確実にできなくなります。これは“年齢のせい”ではありません。四十肩や五十肩は、きちんと治療を行えば、肩の関節が正常に機能するよう元に戻ります。

 

今回は、四十肩や五十肩の薬について、肩関節痛の治療を行う者として、患者さんの悩みを少しでもスッキリしてもらいたいという思いでこの記事を書いていきます。

現在お悩みの方だけでなく、お父さん、お母さんをはじめ身の回りで四十肩・五十肩で悩んでいらっしゃる方のお役に立てましたら幸いです。

五十肩に効くクスリの本当の効果について

五十肩に効くという市販薬がアピールする効能は3つ。

お手元にクスリがある、または、クスリのホームページをご覧の方、説明やキャッチコピーをよく読んでみてください。

「痛みを解消」「痛みを緩和」「つらい症状を緩和」「体の中から改善」etc…実はすごく曖昧だと思いませんか?痛みが緩和されるとはいっても、五十肩がよくなる、とはどこにも書かれていません。

とはいえ、何よりもまず痛みをなんとかしたい!!と思われますよね。実際の五十肩(肩関節周囲炎)のクスリの効能について説明いたします。

五十肩に効くとされているクスリの効能は大きく分けると以下の3点です。

  1. 鎮痛作用
  2. 血流改善作用
  3. 軟骨修復作用(?)

 

鎮痛作用について

市販薬で鎮痛作用(痛みの緩和)が期待できるのは、消炎鎮痛剤が配合されているものです。消炎鎮痛剤(NSAIDs=Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)とは各種あり、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称でステロイドではない抗炎症薬すべてを含みます。

NASIDsに該当される場合は、痛みの緩和が期待できますが、痛みや諸症状の緩和をうたう市販薬全てがそうであるというわけではありません。

いわゆる解熱鎮痛剤、たとえば、ロキソニン、バファリン、ボルタレン、イブ  等はNSAIDsに該当します。

 

ペイン・スパズム・サイクルという考え方があります。

慢性的な痛みがある場合、痛みを感じる神経が過敏になる場合が多く、普段よりも痛みを感じやすくなってしまっているのです。これがさらに筋肉や精神の緊張を招き、新たな痛みを招いてしまうという悪循環を招きます。

この負のスパイラル[Pain-spasm cycle(ペイン・スパズム・サイクル)]を生んでしまうと、長期にわたって辛い状況から抜け出すことができなくなります。

Pain-Spasm-Cycle

出典: http://joshuaoliphantmassage.com/pain-spasm-cycle/

 

これを緩和するためには、痛みを感じ始めた時期(急性期)に鎮痛を図ることが大切なのです。

そこで、五十肩に効くとされている薬の中でよく宣伝されておりネット上でランキングされている上位の6種類を調べてみると、どれも消炎鎮痛剤(NSAIDs)は含まれていないことがわかりました。

代わりに痛み止めの成分として含まれているのはビタミンB群や各種の漢方でした。 神経痛の場合はビタミンB12が処方される場合がありますが五十肩は神経痛ではありません。厳密な意味での四十肩や五十肩は、関節の内部(滑膜)の炎症です。

また、漢方で血流を改善して痛みを緩和するとのことなのですが、痛みに苦しむ急性期は炎症が盛んなため温めたり血流を良くすると、かえって痛みが増してしまう可能性があるのでこの点は注意が必要です。

 

ビタミンB1、B6、B12が配合されたビタミン剤は、肉体疲労時の栄養補給、神経痛、筋肉痛、関節痛などの症状改善、眼精疲労に効果があるとされていて、転じてコリをほぐす効果があるとされていますが、ここで大切なのは、ビタミン自体は、あくまでも身体の代謝に必要な栄養素です。

ビタミン自体がコリをほぐすわけではありません!カラダの機能を補助する栄養素であって、普通の食生活をしていれば不足することはあまりありません。

 

では純粋に鎮痛薬という点に的をしぼってみます。 医師によって処方されるお薬(処方箋医薬品・医療用医薬品)には消炎鎮痛剤が十分に含まれているため鎮痛作用が確かにあります。

いわゆる頭痛・生理痛などのための市販の鎮痛薬は第一類医薬品・第二類医薬品に分類され、消炎鎮痛剤(NSAID)が含まれているため、ある程度痛みの緩和には有効です。そのため、急性期の鎮痛には有効と考えられます。

 

医薬品の分類と消炎鎮痛剤の含有量の表
分類 消炎鎮痛剤の含有量
医療用医薬品医師による処方せんが必要★★★★★
一般用医薬品 第1類・・・副作用に注意が必要薬剤師のみ扱える★★☆☆☆
 第2類・・・副作用が少ない薬剤師、登録販売者★☆☆☆☆
 第3類・・・副作用の心配をしなくても良い薬剤師、登録販売者☆☆☆☆☆

 

とはいえ病院で医師の処方による消炎鎮痛剤と比較すると含まれる成分の量の差は歴然で、その効能の差も明らかです。

病院でもらった薬、処方された薬は効きが全然違う、というのは一般的な認識だと思いますが、この理由の一つが、有効な成分の含有量の違いなのです。

 

血流改善作用について

市販薬で一般的に五十肩・肩関節周囲炎に効くとされている薬は第二類医薬品・第三類医薬品に分類されています。上記でもご説明させていただきましたが、五十肩の薬には消炎鎮痛剤はほとんど含まれておらず、含まれていても微量であり、鎮痛作用は非常にマイルドと思われます。

では、なぜそれらのクスリが五十肩に効くと謳っているのかといいますと、血流を改善することが効果ありとしているためです。配合されている漢方の成分やビタミン剤によって血流の改善を期待するようです。

急性期は炎症が盛んなため、血流が増す事で痛みが増してしまうことがありますが、拘縮期以降は血流を増すことで、痛みの緩和などにプラスに働くことは確かに考えられます。これは、服薬がプラスになるというよりは血流改善を促すということは確かに効果的であろう、という意味です。

しかし血流改善を求めるだけならば、クスリを服用するよりも、ホットパックや温水などを用いたご自身で行うことができる温熱療法にて直接患部を温めた方が、疼痛閾値を上げる働きもあり痛みの緩和作用としてずっと効果的です。

軟骨修復作用について

グルコサミン、コンドロイチン・・・誰もが名前だけは知っているという知名度抜群の成分です。コンドロイチンのような軟骨成分は五十肩の市販薬に含まれている場合が多いです。大量のCM、通販、さらにはドラマかと思ったらCMだったというように、あの手この手でテレビを見ている人を洗脳した結果、磨り減った軟骨が復活すると信じている人も少なからずいらっしゃいます。

そして、五十肩は加齢現象によるものいう認識が広まっているため、加齢 → 軟骨がすり減る → 痛み という図式を想像する方が多いと思います。

四十肩や五十肩は軟骨が磨り減って生じるものではないという事実

セラピストとして、はっきりと申し上げますが、四十肩や五十肩は軟骨がすり減るから生じるわけではありません。この点は多くの方に誤解されている点でございます。

先の記事内でご紹介させていただきましたが、レントゲン所見上異常がなく骨や関節軟骨など器質的な異常が見当たらないのに痛みがある場合、そして関節包などの軟部組織が異常を起こしてしまっている状態で、特徴的な病期を経る状態を厳密な意味での「五十肩」や「四十肩」といいます。

もし骨や軟骨に異常があれば他の診断名がつきます。

厳密な意味での四十肩や五十肩は、上腕骨と肩甲骨を連結する肩甲上腕関節の、関節包の内面の存在する滑膜が炎症を起こしている状態です。慢性例や重症例ですと、関節包と関連のある周囲の組織に炎症が波及したり、合併した炎症が見受けられることがありますが、原則、構造的な問題(骨や軟骨の問題)は無いものです。そのためレントゲン上は異常が無いとされるのです。

五十肩も四十肩も、医学的には肩関節周囲炎と呼ばれ、病態は同じものです。発症する年齢によって俗称として「四十肩」「五十肩」と使い分けています。ですので、「四十肩」や「五十肩」は正式な医学的な名称ではございません。本記事では、わかりやすやを優先して、肩関節周囲炎=(厳密な意味での)五十肩=(厳密な意味での)四十肩 として「五十肩」と表記させていただきます。

では、磨り減った軟骨が再生すると思われているコンドロイチンやグルコサミンって何の意味があるのでしょうか?

コラーゲン摂取→お肌プルプル・・・気のせいです。。効果ありません。

女性には悲しい事実ですが、コラーゲンを摂取しても肌に効果はありません。肌の上から塗っても浸透しません。ただ、コラーゲン自体に保湿成分があるので、化粧品としての効果はあるでしょう。

コラーゲンを摂取しても美肌効果はが無いのとコンドロイチン、グルコサミン摂取の効果はないというのは原理は同じです。それら軟骨成分を摂取しても、実際は消化吸収される際には軟骨としてではなく、分解されてコンドロイチンは乳糖、グルコサミンはブドウ糖として吸収されます。

仮に、軟骨成分が腸から吸収された後に体内に入って再び元に戻ったとしても、血液として流れていき関節内の滑液にまで運ばれ、都合よく軟骨がすり減っている部分に集まり、修復されるのを助長することができるかどうかは医学的に疑問が残る所であり、正直な所、疑似科学といわざるを得ない部分があります。

本来、軟骨には血液循環がほとんどありません。血液の代わりに関節内に存在する滑膜から分泌される滑液によって栄養が補給されています。残念ながら人体の中でも軟骨への栄養供給の優先度が低く、血液→滑膜→滑液→軟骨 となるため血液中にいくら栄養素が存在していても軟骨に到達するまで間に障壁が存在します。

これは生命維持において関節軟骨への栄養供給優先度は低いためです。さらに栄養が軟骨まで届いたとしても、その栄養素は限りなく微々たるものです。関節軟骨は、厳密に言えば若干は再生能力がありますが、画像検査にて観察できる肉眼で確認できるレベルの再生能力は基本的に持ち合わせていません。

学術的に「結論」はすでに出ています。

ところが、効果の有無を示した論文が多数出展されており、サプリメント会社やフィットネス関連の方々は推奨する一方、医療関係者は否定するといった形で議論されてきました。医療関係者が否定するので、サプリメントの訪問販売の業者などは「これを医学的に認めると、医者が儲からなくなるから医者は認めない。」などという陰謀論まで持ちだして高額な商品を販売することもしばしばです。

何が正しいのか?

2010年にメタアナリシスが発表されました。メタアナリシスとは複数の研究結果、研究データを計算してまとめて解析、分析したものです。これは、根拠に基づいた医療において、最も質の高い根拠とされます。様々な説がある中で、信頼のおける結果が出ているのです。

 

結論コンドロイチンとグルコサミンは例え二つを組み合わせて飲んだとしても変形性膝関節症、変形性股関節症への効果、つまり「すり減った骨や軟骨を修復する効果は期待できない

 

当文献では論文としての形式上膝と股関節に限定しておりますが、直接患部に注射するのではなく経口摂取である限り、成分は血中に入り全身を循環するため膝と股関節へ選択的・限定的に集まるという事は考えにくく、腰・肘・手などといった他の関節・軟骨にも同様と考えて差し支えないと思います。

この結論から、整形外科でしばしば言われる「背骨の間が狭まっている」「関節の隙間が狭くなっている」ことによる痛み・しびれなどに対する作用は全身どこの部位においてもあてはまる事と考えても良いのではないでしょうか。

つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどの軟骨修復作用をうたう成分は、例え「医薬品」という表示があったとしても経口摂取である限り、身体各所の変形性関節症・頚椎ヘルニア・腰椎椎間板ヘルニアなどの痛み・しびれを改善する効果(すり減った骨や軟骨を修復する効果=関節と関節の隙間が狭くなってしまっているのを回復させる効果)はプラセボ(心理的作用)以上のものは期待できないと考えて良いでしょう。

 

ただし、2018年に発表されたメタアナリシスでは、「グルコサミンやコンドロイチンのような広く使用されているサプリメントは、効果がないか、あるいは小さく臨床的に重要ではない」という結論とさてておりますが、実験結果としては、短期的な痛みの緩和において役に立つ可能性が示唆されています。

医学に絶対はありませんし、今の常識が数年後には非常識になるということは少なくありません。今後研究が進み、新たなことがわかってきて覆るという可能性はありますが、エビデンスを元に考えますと、現時点の結論としては、コンドロイチンやグルコサミンといったサプリメント・市販薬は、変形性関節症の長期的な改善において効果は低いと考えられます。また、同様に五十肩の根本的な改善にも効果は低いと考えて良いかと思います。

 

 

余談ではりますが・・・

 

ヘルニア=腰痛ではない

ヘルニアといいますと、腰の椎間板ヘルニアが一般的で、ヘルニア=腰痛と思われる方が大半かと思われます。椎間板ヘルニアは、ヘルニアの一種です。

ヘルニアという言葉は、ラテン語で「脱出」という意味です。そこから、体内の臓器などが、本来あるべき部位から脱出した状態を指します。

脱腸やでべそもヘルニアなのです。脱腸は鼠径(そけい)ヘルニアといい、でべそは臍(さい)ヘルニアといいます。

椎間板ヘルニアは、椎間板の中心部にあるゲル状の組織が外へ出てしまっている状態で、脊髄や神経を圧迫するため痛いのです。主に腰の部分にある椎間板(腰椎)で発症します。ぎっくり腰として発症することもあります。

肝心の椎間板ですが、これは背骨の一つ一つの骨と骨の間にある円形の線維軟骨です。中央部分は髄核と呼ばれるゲル状でその周囲をコラーゲンなどの線維輪が囲っています。骨と骨の衝撃を和らげるクッションのような役割なのです。人間の複雑な動き、運動ができるのは、この椎間板のおかげなのです。

五十肩の激痛に対する治療について

五十肩は症状によって3つの時期を経ます。これは、どんな五十肩であれ共通です。これを病期といい、以下の3つの病期となります。

急性期 → 拘縮期(慢性期) → 回復期

このうち最もつらいのは言わずもがな最初の急性期です。急性期の間は夜、痛くて眠れない、僅かでも動かすと激痛が走る、といった痛みのために心身ともに疲弊してしまいます。激痛に苦しむ患者さんには本当に心苦しいのですが、急性期にはどんな治療を施してもいきなり治るということはないというのが実状ですので鎮痛に重点をおく治療となります。

ですので、急性期は炎症をなるべく早く落ち着かせるために肩関節周囲の負担を減らし、余分に動かしたり治療するなど過度の刺激は避け、とにかく安静を図りつつ鎮痛を持続させながら、拘縮期(慢性期)へ移行するのを『待つ』期間です。安静が大事ということは・・・痛みを抑えて、肩が楽に動かせることをアピールしている薬がありますが、服用される方は気をつけてください。痛みが治まった=動かせる、ではないのです。

拘縮期に移行したらはじめて前向きな治療が可能となるのです。痛いからどうにかしようと様々な処置を行う事により、これが刺激となりかえって炎症を助長させてしまい、つらい急性期を長引ませてしまう可能性があるのでこれにも注意が必要です。我慢できず痛み止めやヒアルロン酸の注射をしたが、注射が刺激となって炎症を助長させかえって痛くなってしまったという例はめずらしくありません。

このため、五十肩の治療は病期に合わせて最適な処置を行う必要があります。 病期ごとにどうような治療が適切かはこちらをご参照ください。

【肩関節周囲炎】50肩の病期に応じた対症療法と原因療法とは?

はたして五十肩の薬を飲んで五十肩は治るのでしょうか?

五十肩に効くとされる市販薬に消炎鎮痛剤が含まれているようでしたら少なからず(1)急性期における鎮痛作用は期待できます。しかし、医師から処方される鎮痛剤と比べるとその量は微々たるものであり、効果も同様です。処方薬が効かないのに市販薬が効くということは理論上考えにくいです。 消炎鎮痛作用という点でみた場合、効果の程度を比較すると 「処方された消炎鎮痛剤薬 > 市販の消炎鎮痛薬 > 五十肩に効くとされる市販薬」 となります。

血流改善作用におきましては、炎症が盛んな急性期には返って痛みを助長させてしまう可能性がありますので注意が必要です。血流改善が効果的となる可能性があるのは (2)拘縮期以降となります。

軟骨修復作用においては・・・上記でご説明いたしました通り五十肩の治癒とは関係はないでしょう。

これらの事から、五十肩の痛みをどうにかしたくて服薬を検討する場合は「市販薬には医師から処方される消炎鎮痛剤以上の効果を期待することはできない。特に五十肩に効果的と宣伝されている薬の効果は非常にマイルドであることが予想される。」が私の見解です。

 

結論服薬という手段は急性期における鎮痛には有効だが、それは根本治療にはならない。

 

実際の効果はないけれども、調子よくなった気がするのならば効果あり

“体の内側から効く”というキャッチコピーは、とても効きそうですが、急性期で痛みに苦しむ場合、医師から処方された鎮痛剤以上の効果を市販薬に求めることはできないこととなります。現実問題として、急性期の激痛は処方された鎮痛剤や強いお薬、そして注射をうってもおさまらないことがあります。するとつい、「根拠が定かでなく、よくわからないけど効きそうなもの」に頼りたくなってしまう気持ちはとてもわかります。

一見、さも効きそうな効能がうたわれている市販薬やサプリが宣伝広告されていますが、五十肩の痛みをどうにかしたい場合、処方薬を服用することが最も痛みから解放される手段である事は変わらないでしょう。特に急性期の激痛においては藁をもすがる思いでどうにかしたいとお考えなのは重々承知ではありますが、処方された鎮痛剤が効かないのに鍼灸・マッサージはじめ、漢方やその他の療法が効くということはまずありえません。

ただ、クスリを服用することで、効いている気がする、クスリの影響でなかったとしても調子が良くなったのならば、それはラッキーなことです。病は気から・・・というように、精神的な影響は大きく、思い込みは決して馬鹿にできません。カラダの調子がよくなった!治ってしまった!これが一番です。

いくらクスリを信じて飲んでも効果がない場合は嫌かもしれませんが上記で述べた現実と向き合ってください。

五十肩の薬の効果を知ってガッカリされた方、とっておきの方法をお教えします。

安心してください。 そのような方にご自身でできる、とっておきのセルフケア方法があります。それはアイシングです。 古典的な方法ですが、正しく行うことで、意外な効果が期待できます。是非一度はお試しいただきたいと思います。

アイシングもあくまで鎮痛目的であるため、ずっと続ければ良いというものではありません。あくまで急性期の痛みをコントロールするための対症療法とお考えください。

五十肩の急性期における効果的なアイシング方法は 氷嚢(ビニール袋に氷と水を入れた簡易的なものでも良いです)にて痛い部分を20分間程冷やします。 もし、患部が熱感をもっていて何もしないでもジンジン痛いようでしたら、20分冷やした後一旦休憩し、患部の皮膚の温度が常温となるまで待ちます。皮膚の温度が元に戻ったら再度冷却を行います。この行程を痛みが気になる際に行ってください。一日1回、1セット行っていただくだけでもだいぶ楽になると思います。この時の注意点は、凍傷となる恐れがあるため、保冷剤や氷で直接冷やしてはいけないということです。アイシングとはいえ0℃以下で冷やしてはいけないのです。氷のうは薬局やスポーツ量販店にて安価でお買い求め可能です。

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また、アイシングのしすぎにも注意が必要です。急性期の痛みに苦しんでいる際に、アイシングを行うと、その効果に驚くと思います。するとついついアイシングをたくさん行えば良いと錯覚してしまいがちなのですが、過ぎたるは及ばざるが如しという言葉のとおり、アイシングの行いすぎには注意が必要です。アイシングを行う時間が過度に長いと例え氷のうを用いていても凍傷を起こす可能性がありますし、常に冷やす事によって返って血流が悪くなり他の痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしていただきまして、繰り返す場合は皮膚の温度が完全に元通りになってから行うようにしてください。

ただし、夜間痛があるようなひどい炎症がある場合、最も改善できるのは、肩関節専門医による治療です。五十肩の炎症期(急性期)は、関節方の内部に非常に強い炎症が生じています。そのため、適切な薬剤を用いた医学的な対処が最も効果的となります。

そのため、夜間痛や安静時痛のあるような状態であれば、セルフケアではなく、専門医の治療を受けることを強くご推奨いたします。

拘縮期(慢性期)以降の服薬の有効性について

一時の激痛や夜間痛などは落ち着いたが、まだ動かすと痛いという(2)慢性期に入ったら、肩甲骨周囲の緊張した筋肉を弛める事とインナーマッスルの強化など肩関節が動くことができる下地作りが根本治療には必要です。血流改善の目的はあくまでも鎮痛のためであり、動かしやすくするためです。つまり運動療法の補助的要素であり、拘縮期において、血流改善のみを行っていても五十肩が治ることはありません。

五十肩に効くとされる市販薬は拘縮期に入ってからでしたら、強い鎮痛作用を求めることもありませんので、血流改善目的で服用する意味は少なからずあるように思えますが、医学的にはどのような扱いなのでしょうか?

『今日の整形外科治療指針 第6版 医学書院』409ページには五十肩の治療において急性期は鎮痛剤を服用し安静を図るが、拘縮期には基本的に薬物療法の必要は無い。(要点を抜粋させていただきました)

また、『標準整形外科学 第11版 医学書院』420ページには 疼痛が強い時期(急性期)には安静と消炎鎮痛剤の服用や注射などが行われるが、可動域制限が主体の凍結期(拘縮期)に達したらリハビリを中心に行う。(要点を抜粋させていただきました)

このように二つの医学専門書おいて、拘縮期(慢性期=凍結期)には薬の服用が必要ないということが記載されておりました。

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【まとめ】五十肩には適切な対処方法があります!!

医学的根拠に基づいた治療という観点から申し上げると、四十肩・五十肩におきましては、急性期においてその場の痛み・辛さを抑えるために消炎鎮痛剤を服薬することは効果的です。拘縮期以降においては、お薬の服用は得てして必要ではないとされています。

最も肝心なのは、たとえ薬を飲み続けたとしても根本的に治ることはないということです。お薬の役目はあくまで、急性期の乗り切るための鎮痛目的です。拘縮期以降、本格的に肩関節の可動性を回復させる治療を受ける前までその場の痛みをしのぐものとして活用していただけたらと思います。

何よりも、五十肩を根治させるためには、病期に応じた適切な処置を行うことが大切です。

例えば、急性期は積極的な安静が必要ですが、拘縮期はたとえ痛くても積極的に動かさなければなりません。痛いからといっていつまでも安静を保ちすぎるのは返って治癒を遅らせてしまう要因となります。このあたりはとても詳細な見立てが必要となりますので、是非、自己判断で病期や状態を判定せず、お近くの専門家にご相談いただけたらと思います。

【補足】五十肩に限らず、肩こり、腰痛などの慢性的な症状でお悩みの方へ

慢性的な症状の解決には、ご自身でできる事や、行っていただかなければならない事はもちろんあります。 しかし慢性的な症状となればなるほど、ご自身では気が付かない部分に原因があったり、ご自身の力ではどうにもならないことが治るのを妨げているという場合がしばしばあります。

良かれと思って行っていただいている事や、○○改善本に書かれていることを自己判断で行う事によってかえってマイナスとなってしまっている事もよくあります。

どうしても「劇的な効果」や「自力でなんとかする」という点に着目されがちですが、確実な治療にはそれなりの手順や段階があります。

治療は魔法ではありません。こと東洋医学や鍼灸・マッサージは「即効性」や「魔法のような効果」を強調されますが、100人に1人たまたまそのような劇的な効果があったとしても、その1例だけを強調して効果有りとしてしまう良くない慣習があります。

今痛みに苦しんでいらっしゃる方には本当に心苦しいのですが、いきなり症状をゼロにするのは現実問題、困難です。 確実に改善していくためには、ある程度の施術回数や期間が必要なのです。

症状が安定し、セルフケアを体得し、ご自身で体調管理ができるようになるまで一定期間プロに体を任せるのも現状打開のための一つの手ではないかと思います。

もし、当院へ大切なお身体をお任せいただけるようでしたら、通ってもらうためではなく、一刻も早い最短でのゴールを目指します。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首肩の痛みに効く!!肩こり解消ストレッチ〜正しいストレッチ方法を解説

肩、首の痛み、寝違え、ぎっくり腰・・・といった急に現れる体の痛み。

悪天候や寒さの影響、そして疲労が溜まると決まって現れる「いつもの」痛み・・・憂鬱な気分になり頭痛も出てくる長引く首こり、肩こり、腰痛。慢性痛。

テレビでは、簡単かつ効果抜群と言われる体操やストレッチ方法がよく紹介されているけど・・・効果がない。沢山ありすぎてどれが正解なのか分からない!!そもそも動かすことに恐怖を感じる・・・

誰もが経験する急な痛みと慢性的なツラい症状を解消するための正しい対処方法を、肩こり・腰痛の専門コースを行っている専門家の立場から責任を持ってキッチリお教えします。

肩こり外来の受診を検討している方、楽になる場所を探し求め日々お悩みの方、まずはご自身で行うことのできる方法で少しでも楽になりましょう!!

今回ご紹介するのは、「今」つらくてお困りの方が、ご自身で行える効果抜群の「肩甲骨ストレッチ」と「セルフケアで押さえておくべきポイント」です。

肩こり対策から急な痛み対策、そして肩こり予防のために、正しい知識を是非とも身につけてください!!

肩こりが簡単に治ってしまう運動・体操・ストレッチは、存在しません!!

肩こりが一発で治るように思わせる情報がたくさんございます。本当にそんな方法があるのなら、世の中から肩こりで悩む人はいなくなります。湿布やピップエレキバンも売れません。

たびたび話題になる肩こり解消方法は、どれも一時的な緩和・解消法

応急処置・対症療法は必要です。頭痛薬や風邪薬が欠かせないように、一時的な解消方法は必要です。

一時的ではなく、きちんと肩こりを根本的に解決するには「原因」にアプローチしなくてはいけません。

痛み・辛い症状の一時的な緩和はまず最初に行う応急処置の一つですが、これらは「原因」ではなく「結果」へのアプローチです。

この記事で紹介するストレッチ方法は「結果」だけでなく「原因」に対するアプローチもしっかり含まれています。セルフケア方法は、肩こり・首こりに限らず、体のどこかを傷めた時にも使える方法です!!生きていく上で必ず役に立つ情報です。ぜひ身の回りの方にも教えてあげてください。

 

近くに救急外来の病院がない!!

祝日、日曜日は医療機関が休みなことが多いので、急に痛くなってしまった時は、ついつい近所のクイックマッサージや整体にいってみようと思われるかもしれません。

もちろんコリをほぐしてもらうという応急処置としてはよいかもしれないが、一時的な緩和ですので、それを繰り返しても決して症状が治まることはありません。

まずはご自身でできる、当ページで紹介のセルフケアを行ってみてください。

正しいセルフケア方法を行えば、十分症状は軽減されます!!

肩こり専門院が行なっているストレッチ

世の中には、肩こり解消を謳ったストレッチの方法がたくさん溢れかえっています。

もちろん効果を期待できるものもありますが、見よう見まねでやってみると、効果が出ないばかりか却って肩こりが悪化してしまうこともあります。

「プロにやってもらう」「プロに正しい方法を教わる」のが正解ですが、今回は誰もが簡単に、そして確実にできる方法をご紹介します。

このストレッチ方法は、患者さんがご自宅で無理なく実践でき、かつ効果のある方法として、試行錯誤を重ねて考えだしたkatakori LABSオリジナルの肩甲骨ストレッチです。肩こりを治すための鍼灸・マッサージにおいても活用しているストレッチですから効果は保証します◎。

katakori LABSオリジナル肩甲骨ストレッチの特徴

  • 誰でも簡単に行えます。
  • 所要時間、わずか1分!!
  • 確実に効果あります。

健康のコツは肩甲骨、というキャッチフレーズをリラクセーションのお店の立て看板でよく見かけますが、その肩甲骨が今回のストレッチの要です。体操よりも気軽にできます。すべての人に自信をもってオススメしたい肩甲骨ストレッチ!!ご自宅だけでなくオフィスでも行えます。

肩甲骨ストレッチの具体的な方法のご紹介の前に、まず、痛みと熱についての豆知識から解説いたします。

痛くなったら冷やすべき?温めるべき?

セルフケアの基本は、患部を温める、もしくは冷やす、というものです。これを間違えてしまうと逆効果、せっかくのストレッチも活きません。

痛みには冷やすべき痛みと温めるべき痛みがある

現場で特に多く受ける質問のひとつです。

痛みを緩和するために、冷やすべきか、温めるべきか、これは沢山の方が判断に迷う問題です。

古くより「首や腰は冷やしてはいけない」という言い伝えがありますが、サッカーや野球などで選手が負傷した時、応急処置としてスプレーで冷やしているのを見たことがありませんか?
湿布には、冷感湿布と温感湿布の2種類あるので、こういったことも混乱する原因の一つだと思います。

また、やり方によっては、冷やすことで血流の改善も可能なのです。
ですので、「首だから冷やしてはいけない」「腰だから冷やしてはいけない」と部位によってではなく、患部の状態によって、温めと冷却を使い分けることが大切です。

急な痛みは冷やし、慢性的な痛みは温める。

処置の方法として、「温める」「冷やす」この2パターンと考えられることが多いですが、「冷やしてから温める」というパターンも含め、基本的には3パターンあります。ただ、温めるべきなのに温めても改善がみられないという場合は「冷やしてみる」という方法もございます。これらについては、それぞれの症状に応じて、後に詳しく解説いたします。

まず、最初に覚えておいていただきたいのは以下の2つです。

  • 急に痛み出した場合は冷やす
  • 慢性的な痛みは温める

先に冷やしてから温める、またその逆の場合でも、最初にとるべき方法はこの2つの方法のどちらかです!!

肩や腰の急な痛みに効くセルフケア方法

寝違え・ギックリ腰など急に傷めた場合、まず冷やすことが大切です。

急な痛みの場合、炎症が生じていることが考えられますので、ストレッチやマッサージなど無理に動かしたり、温めを行ったりするとかえって逆効果となります。

急性の痛みに対しては基本的には冷却(アイシング)と安静が必要です。

市販の湿布の真実

知りたくなかった!!と思われるかもしれませんが、どのご家庭にもある湿布、ヒヤッとはしますが冷却効果はありません。あくまで冷感、文字通り冷たく感じるだけです。

冷感だけでなく温感湿布もございますが、いずれにせよ冷感湿布も温感湿布も効果に差はありません。

冷たく感じる成分、暖かく感じる成分の違いなだけで、冷やされているわけでも温めているわけでもありません。

ただし温感・冷感どちらの湿布にも血流を増加させる効果はあります。ですので寝ちがえやギックリ腰、打撲、捻挫などの急性の痛みの時には不適切であるばかりか、炎症が助長される可能性もあります。

急性の痛みの時には、氷のうで15−20分間のアイシングが有効です。

保冷剤や氷で直接冷やすと凍傷となる恐れがあるので、その点だけは気をつけてください。繰り返しになりますが、冷湿布には急性の痛みに対するアイシング作用はありません。

鎮痛効果という意味では、医師の処方箋が必要なモーラステープやロキソニンテープといった調剤薬局・薬剤師のいる薬局で購入できる湿布は有効です。塗るタイプも同様です。

効果的なアイシング方法と注意点

アイシングには昔からある氷嚢(アイスバッグ)がとても効果的です。

氷のう

お持ちでない場合、アマゾンなどはもちろん、お近くのドラッグストア・薬局に必ず置いてありますので、是非ご用意ください。

  1. 氷嚢で約20分間、患部を冷やします。
  2. 氷嚢を外して、患部の肌温度が元に戻るまで待ちます。
  3. 再び、氷嚢で約20分間冷やします。

このサイクルをできるだけ多く繰り返し、2−3日続けてください。安静を保つことも忘れずに!!

注意点は、凍傷となる恐れがあるため、保冷剤や氷で直接冷やしてはいけないということです。アイシングとはいえ0℃以下で冷やしてはいけないのです。

 

アイシングのしすぎに気をつけてください。

アイシングのしすぎにも注意が必要です。常に冷やす事によって、却って血流が悪くなり痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしていただきまして、繰り返す場合は皮膚の温度が完全に元通りになってから行うようにしてください。(上記の慢性症状の際にもアイシングを行う場合がありますが、その時とは目的が異なるためアイシング施行時間が異なります)

急に痛くなった時のストレッチやマッサージは禁物です。できるだけに安静に!!

無理なストレッチやマッサージ(整体や骨盤矯正含む)は控えて頂き、痛くない姿勢で安静を保ってください。

どうしても動かなければならない時は、コルセットやネックカラーを着用してください。寝違えやムチ打ちの場合で、ネックカラーが無い場合、簡易的な対処としてバスタオルをマフラーのように首に巻くと負担が軽減されます。

初期の処置をしっかり行えば、24~72時間で炎症が鎮静化しますので、初めの処置が肝心です。

アイシングはあくまで応急処置です。アイシング後は可能な限り早く医療機関を受診し、医師の診察を受け処置を行うことをおすすめします。

腕、足に痺れを感じたら、必ず整形外科へ!!

傷めた後から、手足(肘や膝より末端部分)にシビレ感がある場合は、必ず整形外科を受診し医師の診断を受けるようにしてください。

しびれなどの神経症状が無いようであれば、当院で対応できます。2~3回の施術で日常生活が問題なく送れるようになります。

慢性的な肩こりに効果抜群の肩甲骨ストレッチ!!

症状が慢性的で肩こり・首こりが徐々に痛く、つらくなった場合のセルフケア方法は、以下の手順になります。

  1. ストレッチ
  2. 温める
  3. 状況に応じて冷却する

超簡単かつ即効性の高い肩甲骨ストレッチ

肩こり解消に良いとされるストレッチや体操があらゆる所で沢山紹介されています。肩甲骨ダイエット(※ 肩甲骨ダイエットの嘘・ホント)も巷でよく話題に上がります。肩甲骨ダイエットには、残念ながらダイエット効果はないのですが、肩甲骨を動かしストレッチを行うことは大変意味のあることです。

お待たせいたしました。それでは肩こり解消ストレッチではベストな方法だと自負しております肩甲骨ストレッチをご紹介いたします。

所要時間は約1分です。

「肩こり」にお心当たりがある方は騙されたと思って1回試してみましょう。

Point
肩こり・首こりがつらい時は、肩甲骨の動きや位置が正しくない状態です。つらい部分にのみ目を向けるのではなく、その部分に負担をかけている原因、つまり肩甲骨の動きを改善するということが大切です。

step.1

ストレッチその1
肩をグーッと上にすぼめて力を入れて・・・(この時に顎を引かず、やや遠くを見るように少しだけ上を向くようにしましょう)
ストレッチその2
一気に脱力します。

 

これを2~3回行います。

step.2

ストレッチその3
グーッと背伸びをして手をなるべく上に伸ばすように力を込めます。この時もやや上を向く意識を持ちます。両腕を耳の後ろにつけるように力を込めると同時に肩甲骨の外側を伸ばしていきましょう。(肩関節が痛い場合は無理をしないでください。)
ストレッチその4
その後、両肘を後下方に寄せていき、左右の肩甲骨を近づけるように力をいれます。

 

これを2~3回程繰り返します。

step.3

ストレッチその5
脇の下から背中にかけての筋肉(図の赤い部分)をストレッチします。
back-stretch
四つ這いになって腕を頭上にあげていきます。この時も肩甲骨を中心に寄せるように意識します。腕の付け根と胸が伸びるのを感じてください。10秒を2~3セット程。
lat-stretch
デスクでは左の写真のように応用することもできます。ご家庭はもちろん、オフィスでのデスクワークの合間にお試しください。

 

この体勢はご存知の方、よくされている方も多いかもしれませんね

step.4

最後に腕を大きく回します。

前回し後ろ回し5回ずつです。この時も下向かず、やや上を向くくらいの意識で行ってください。

この時に、気をつけるべき大切なポイントがあります!!

  • 両腕同時に行う。
  • 肘を耳の高さまであげる。

この2点を抑えないと効果が期待できませんので注意してくださいね!!書籍や動画、テレビなどで紹介される様々な方法を見よう見まねで試しても効果がない場合は、抑えるべきポイントを抑えられていない、そしてそもそも説明されていないことが多いです。

  • この4つのメニューを行い、肩甲骨の周囲や背中がスッキリした感じがあればOKです。
  • このストレッチは、1日に何回行っても大丈夫な、メリットしかないストレッチです。

どうでしょう?少し楽になりましたか?

このストレッチ方法は以下のYouTube動画でもご紹介していますので、ご覧ください。

 

肩こり治療で行うストレッチ

 

ご紹介した肩甲骨ストレッチの目的と、肩こり解消ストレッチとして機能する理由を解説します。

首や肩のこり固まった筋肉をいくらストレッチしても、伸びませんし楽になりません。肩こりでつらくなる筋肉は頚椎と肩甲骨をつなぐ筋肉です。そのため、以下の図のように肩甲骨をあらゆる方向に動かすことが大切です。

ShoulderMvmnt

肩甲骨ストレッチが肩こり解消ストレッチとして効果的な理由

今回ご紹介したストレッチ方法は、首肩の筋肉への負担を減らしつつ肩甲骨を動かすことを目的としたストレッチなのです。これが、肩こり解消に効くのです!!

ストレッチには種類があります!!一般的なストレッチは静的ストレッチ

皆様がご存知のストレッチと呼ばれているものは、じっくりと筋肉を引き伸ばして行うストレッチ方法です。これは、ストレッチの中でも静的ストレッチ(=static stretch)と呼ばれているものです。

ストレッチには大きく分けて

  • 静的ストレッチ
  • 動的ストレッチ
  • PNFストレッチ

の3種類があります。

一般的なストレッチは静的ストレッチ、今回ご紹介したストレッチ方法は、動的ストレッチ(=dynamic stretch)+PNFストレッチになります。

動的ストレッチが効く理由

セラピストとしての経験から、動的ストレッチによる肩甲骨ストレッチを自信をもってオススメしています。実際に試して頂ければ効果を実感していただけるはずなのですが、本当に効果あるの?と試されていない方のために、動的ストレッチの有効性を示唆した論文を見つけてきました。

〜筋ストレッチング法の違いが筋血液量に与える影響〜

酸素化ヘモグロビン(新鮮な酸素が含まれたもの)変化量(安静時値とストレッチング後の値との差)は,ダイナミックストレッチではスタティックストレッチと比較して有意な増加を認めた。しかし,脱酸素化ヘモグロビン(酸素が含まれてないもの)の変化および頚部側屈可動域,筋硬度には有意な差を認めなかった。

筋ストレッチング法の違いが筋血液量に与える影響 公益社団法人 日本理学療法士協会

簡単にまとめると、じっくりと引き伸ばすストレッチ(スタティックストレッチ)と動きを伴ったストレッチ(ダイナミックストレッチ)を比べた所、筋肉の硬さや首の可動域には差が生じなかったが、動きを伴った方が「血流改善効果」が高かった、ということです。

肩こりでつらいその部分におきましては、筋肉が硬くなり血流が悪くなってしまっている状態です。よって・・・「今つらい!!」コリの症状に対処するためであれば、ゆっくり静かに伸ばすストレッチよりも、動きを伴ったもの方が効果的となるわけです。

動的ストレッチだけでなくPNFストレッチの要素も盛り込んだ肩甲骨ストレッチ

katakori LABSが実践・推奨している肩甲骨ストレッチは、動的ストレッチに加えPNFストレッチの要素を取り入れています。その理由は即効性を高めるためです。

PNFストレッチの要素を加えることでなぜ即効性が高まるのか?そもそもPNFとは何なのか?

以下に、ストレッチなのに力を込めるの?という疑問をお持ちの方への回答と合わせてPNFについて簡単にですが、まとめました。理論にご興味がある方はご覧ください。

 

筋肉が凝っている状態とは、筋肉が収縮したまま緩まない状態

人体に本来備わっている機能として、筋肉は力を入れる(収縮)とゆるむ(弛緩)の2つの性質があります。これは人体が円滑に動く上で必要不可欠な機能です。生理学用語でⅠb抑制(イチビー)といい、反射のひとつで意志とは関係なく生じます。時間がたっても戻らないひどい凝りとは、何らかの理由で筋肉が持続的に収縮してしまっていて、弛緩することができない状態にあります。つまり、こっている部分は本来備わっている正しい機能が失われてしまっているのです。

収縮して硬くなった筋肉を伸ばしても効果は期待できません。

肩こり・首こりに良いとされるストレッチは僧帽筋や肩甲挙筋など硬くなっている筋肉を伸ばそうとします。読者のみなさんはもうおわかりだと思いますが、こってつらくなっている部分をいくらストレッチしようとしても伸びないですし楽にならないのです。

その理由は、肩こりで硬くなっている筋肉は、疲労の機序が一般的な筋疲労(階段を上って足が疲労するなど)と異なるからです。具体的には、肩こりでつらくなる筋肉は能動的に収縮を行い疲労したのではなく、不良姿勢などで持続的に引き伸ばされる(ストレッチされ続けて)事によって、負荷を与えられているからなのです。

肩こり・首こりに効果的なストレッチとは?

Ⅰb抑制は筋肉のスジが引き伸ばされた時に生じます。ストレッチはⅠb抑制という反射を意図的に生じさせ、筋肉が弛緩することを望みます。しかし、肩こりでつらくなる筋肉は、引き伸ばされ続けてしまっている事から疲労が生じているため、Ⅰb抑制が生じにくくなっています。「引きのばされる」という刺激に慣れてしまっているのです。だから、慢性的に患っていらっしゃる方は、つらい部分を伸ばす肩こりに良いとされるストレッチをいくら行ってもほぐれないし楽にならないのです。

そこで、肩こり・首こりに対しては単なるストレッチではなく、一工夫したストレッチを行う必要があります。

Ⅰb抑制は筋肉が強く収縮した時にも生じます。そのため、『筋肉は最大収縮後に最大弛緩する』と格言のように言われることもあります。つまり、つらくこってしまっている筋肉をあえて収縮を促します。そうすることによってⅠb抑制を効果的に喚起して筋肉を弛めるのです。これを専門用語ではPNFストレッチと言います。

一人でもできるPNFストレッチを応用したセルフストレッチ

PNFはProprioceptive Neuromuscular Facilitationの略で、日本語では固有受容性神経筋促通法となります。 ・・・難しいですね。簡単に言うと、全身各所にあるセンサーを刺激して体の機能を改善するリハビリの手段です。とても専門的で難しい技術・理論なのですが、PNFストレッチとはその理論をストレッチに適用したものです。PNFストレッチは関節の可動域を大幅に改善することができるため、プロアスリートなど結果を求める方に対してしばしば行われる技術です。基本的には専門家がマンツーマンにて行う技なのですが、一般の方でも要点をおさえて行えば、自分自身で行ったとしても今まで以上の効果が期待できます。つまり、ご紹介させていただいたストレッチ方法はPNFストレッチを応用したものなのです。だからこそ従来のストレッチと比較して効果が期待できるのです。

当院推奨の肩甲骨ストレッチが、他のストレッチと比べて効果がある理由をまとめますと・・・

違い①
首ではなく肩甲骨を動かす事→ 安全。何回行ってもOK!
違い②
動きを伴ったストレッチ→ ゆっくり伸ばすストレッチよりも血流改善効果有り=症状解消に効果的
違い③
PNF理論を導入→ 単なるストレッチでは効かない方へも効果的

という3点が巷に広まっている方法と大きく異なる点であり、当記事の肩甲骨ストレッチが効果的である理由です。

辛くなった時にだけ試すのではなく、気分転換に行うなどと習慣にしていただくと肩こり対策にもなります。日々、肩甲骨を動かす、という意識を持ってください。

肩甲骨剥がしをセルフで行うのはNG!!なんちゃって肩甲骨剥がしは逆効果の可能性も・・・

肩甲骨を動かしたいけど痛くて動かせない場合に有効なのが「肩甲骨剥がし」です。一時期話題にもなりましたし、名前のインパクトが大きいのでご存知の方も多いと思いますが、実際どういうものかとなると、間違った認識が蔓延しているようです。

もともとは、肩甲骨の下に手を入れて剥がすと気持ちいい、ということから流行りました。当然、人にやってもらう方法です。

肩甲骨はがしところが“肩甲骨剥がし=肩甲骨ストレッチ”のように紹介されているホームページが多々ございます。専門知識のない方が、いろいろな情報をまとめたもの、その中には自称・専門家による情報もあります。

肩甲骨剥がしはセルフでできることではございません!!

人間の体は、自分自身で動かせる動作と、動かせない動作がございます。動かせない動作を無理に行おうとすれば、筋肉や筋を痛める可能性が高いです。それでは逆効果ですので、肩甲骨はがしをやってみようとお思いの方は、治療院にご相談ください。

なお、なお、肩甲骨はがしだけで行っても根本的な解決にはなりません。繰り返しで恐縮ですが、とても大切なポイントですので、ご留意ください。

全体的につらくて重だるい・慢性的な痛みのある方 → 温めてください

体を温める方法は多々あります。今回ご紹介する方法は、自宅で簡単にでき、ホッカイロや電気機器よりも確実に効果が高い方法です。

  1. 自作の簡易ホットパックを作ります。

    タオルを濡らしてビニール袋にいれ、レンジでチンをすると簡易ホットパックができます。(触れる際には火傷にご注意ください)

  2. ホットパックをさらにもう一枚タオルでくるみ、患部を数分温めます。
  3. 患部の皮膚の温度が元に戻ったら再度行います。

    低温火傷の可能性があるため行う際は皮膚の状態を常に観察し、くれぐれも注意を払って行ってください。

患部だけではなく、手足の冷えに対してもオススメです★

ホッカイロなどの懐炉の常用は避けましょう。

冷えを気にされて、使い捨てカイロ等を常に貼り付けている方がいらっしゃいますが、これには注意が必要です。良くも悪くも人体の感覚には慣れが生じます。常時カイロで温めていると、温熱刺激に慣れてしまい、温まらなくなってしまうばかりか、温度に体が慣れてしまい体を温める機能が低下してしまいます。つまり、常に温めているとそれに慣れてしまうため、自ら温める機能が低下して冷えを助長させてしまう可能性があります。そのため常にカイロで温めていないといられないという状態となってしまいます。常に温めるのではなく、メリハリをつけて行うことが良いです。

腰痛改善本などの情報は鵜呑みにしないでください。

腰痛改善本で大抵紹介されている体操にマッケンジー体操があります。これは“うつ伏せに寝て過度に体を反らせる運動”なのですが、マッケンジー体操を自己判断で行いますと却って悪化する可能性があります。同様に、あおむけに寝て膝を曲げて状態を起こす“腹筋運動=ウィリアムズ体操”もケースバイケースです。割れる腹筋(腹直筋・腹斜筋)を鍛えても腰痛は改善しません!むしろ首へも負担がかかります。

お体の状況は千差万別であり、形だけをまねるエクササイズを行っても効果が出ないばかりか、却って逆効果ともなりかねません。体造りをして根本的な改善をお考えの場合は専門家へご相談ください。プロのスポーツ選手に専属のトレーナーがつくように、あなたの体を専門家がみることが改善への近道なのです。

サポーターやコルセットの常時着用は避けましょう。

サポーター等を常時着用するのは避けましょう。例えば、慢性腰痛の場合のコルセット。コルセットを四六時中毎日着用していますと筋力低下を招きます。そうなるとコルセットが手放せない体となってしまい、さらに難治性となり慢性化させてしまうのです。サポーターなどは、どうしても必要な時のみ、ご使用ください。

慢性的なコリや痛みの原因は1つではないということ←重要

慢性的なコリ・痛みの原因は“骨盤・骨格のゆがみ”、“数センチの足の長さの違い”、“リンパ・血液の滞り”が根本原因ではありません。ひとつの原因だということで納得してしまいたい気持ちはわかります。シンプルな方が気持ちが楽です。しかし、痛みやコリなど慢性的な症状の原因は非常に複雑です。それによる不合理な動きや姿勢の及ぼす悪い影響が集約された結果なのです。そのため根本的に改善するためには、まずはしっかりと複数ある原因を見極めた上でひとつひとつ解消していく「原因療法」が必要です。その部分だけではなく全身の筋力・動作などを改める「体造り」も行わなければなりません。根本改善のためには根気はいりますが、きちんとした専門家と共に行えば必ず体は良くなります。

どうしてもつらいポイントがあり、いてもたってもいられない、強い力でグリグリ押したい感覚のある方(温めを行っても改善しない方) → 冷やしてください

押してダメなら引いてみよ、と同じで温めてダメなら冷やしてみようということなのですが、これは実はとても大事なことなのです。一般的に「コリは温めるべき」という認識されています。とにかくコリは温める、そう信じて疑うことすらしない施術者が大半なのです。

  • 温めて改善しない場合には冷やすことで効果が出ることが多い。

これは私の実体験・臨床経験から強く主張したいことです。今まで温めて効果が出なかった方は、先入観を一度お忘れていただき、ぜひとも冷やしてみてください。

冷やし方の手順

氷のう(ビニール袋に氷と水を入れた簡易的なものでも良いです)にて患部へ、10分程度アイシングを行ってください。冷湿布ではなく、氷のうを用いるのがポイントです。冷湿布は冷たく感じますが実際の冷却効果はほとんどないのです。アイシングを行って症状が改善しない場合は、アイシング後にさらに上述しました②の温めを行ってください。これにより血流改善効果が補足され、より効果的となります。

  1. 氷嚢で約10分間、患部を冷やします。
  2. 氷嚢を外して、患部の肌温度が元に戻るまで待ちます。
  3. 再び、氷嚢で約10分間冷やします。
  4. この繰り返しで改善すればOKですが、改善しない場合は、ホットパックを使って温めてみてください。

 

保冷剤や氷を直接肌につけないでください。

アイシングといえど0℃以下で冷やしてはいけないのです。またアイシングのしすぎにも注意が必要です。常に冷やす事によって、却って血流が悪くなり痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしてください。(凍傷の生じ方は個人差がありますので、当記事にてご推奨しております時間内だとしても皮膚の状態を確認しながらくれぐれもご注意のうえ行うようにしてください。下記の急性症状の際にもアイシングを行いますが、その時とは目的が異なるためアイシング施行時間が異なることをご留意ください。)

あなたに肩こり専門家としてお伝えしたいこと

ご自宅などで、簡単にできるセルフケア方法は、多くの方が興味をお持ちのことだと思います。コンビニや書店には、そのような類の書籍、雑誌がたくさん販売されています。テレビやインターネットでも、○○体操がすごい!!と取り上げられることもしばしばです。しかし、それで治った方は、どれだけいるでしょうか?

簡単で楽なものに人はどうしても頼りがちです。しかし、生活が便利になったことによる代償は、最終的には少なからずとも体、健康にくると思います。

身近にあることをいくつか具体例としてあげ、問題点をまとめておきます。

クイックマッサージ・整体・カイロプラクティックについて

肩こりとなると多くの方がまず足を運ぶのはクイックマッサージ・整体・カイロプラクティックなどです。

つらい部分をグイグイ押して揉みほぐすのは、その時は気持ちが良いのですが、それは一時しのぎです。一時しのぎはそれはそれで必要ですが、注意しなければならないのは、人間の体は刺激に慣れていってしまうように出来ているという点です。

強い刺激に慣れてしまいますと、一層ほぐれにくくなり、慢性化してしまいます。そしてさらに強い刺激をもとめ・・・と悪循環が生まれてきてしまいます。これは、受ける側の問題というよりは行う側に問題があります。

首の関節をむやみに鳴らさないでください。

また、首をボキっとならすのは一時的には爽快感があり楽になったように感じますが、外から力を加えても骨を矯正する事はできませんし、反対に背骨を傷めたり、却って周囲の筋肉の緊張を増すことにもつながりかねません。首ボキ施術を受けて頚椎を傷めてしてしまい、当院に駆け込んでいらっしゃる方が本当に後を絶たないのです。なので「首ボキ施術」を受けるのだけは絶対にやめていただきたいと、これだけは強く主張させていただきます。整体やカイロプラクティックではしばしば気軽に背骨をボキっと鳴らしますが、患者さんからもそれを避けてもらうようお願いしても良いと思います。それに対して意味の分からない説明をされたら、通うのは止めるのが賢明な判断です。施術をうける側が理解できないことを話す施術者を信用できますか?

セルフケアは日常生活を送る上でよいことですが、応急処置でもあります。

ご紹介させていただきましたセルフケアは日頃のケアとして行っていただくのはとても良いストレッチ方法です。肩こり解消に効果的ですが、あくまでも応急処置の範疇です。

注意していただきたいのは、セルフケアに限界があるという点です。

症状や体の状態は千差万別ですし、肩こりの原因はとても複雑です。そのため全員が肩こりを自分で治すことはできないという事はご理解いただきたいと思います。

このストレッチ方法で改善されない場合は、残念ながらセルフケアで状況を変えるのは難しい、つまり原因に対する自己解決が難しいので、理学療法が必要といえます。

肩こり・首こりは直近で生活が危機となるものではないため、どうしようもなくつらくなるまで後回しとされがちですが、「心底困っているわけではない」という軽症の方ほど簡単な処置やセルフケアで治すことが可能です。

たくさん通ってもらうための施設があふれていますが・・・

実際、対症療法を繰り返すというとにかく通ってもらうことを目的とした治療や、慢性化し難治性となってから回数多く治療を行ったほうが、ビジネス上に限れば良いです。

外食産業やリラクセーション・旅行といったビジネスでは、たくさん利用してもらうことは絶対に必要です。

医療はそうであってはいけないはずです。

重症化してしまうと完全に治す事自体が難しくなりますし、患者さんの費用面や治療に費やす時間面の負担も大きくなります。

重症化を防ぐ、そして軽症のうちに治してしまうという意味も含めて、さほど悩ましくない初期のうちに根本治療を始めていただくのがベストであり、私たちセラピストが望むべきことです。そうすれば、少ない回数の治療とセルフケアのみで改善可能です。

肩こり解消や体幹トレーニングの目的でヨガ教室に通われている方も多いと思いますが、まず肩こりを治してからヨガ教室に行ってください。

効果が感じられなかったり、逆に疲れて体調が悪い、そんな悩みを抱えていらっしゃいませんか?

はっきり申し上げますが、ヨガ教室で慢性的な肩こりはよくなりません。ヨガを本気でやっている人・理解している人はそもそも肩が凝らなくなるなんてことは決して言いません。

ヨガは、健康な人が、より健康的な生活を送る上では効果があるのです。

予防対策の方法は、できるだけ専門家に相談しましょう。耳障りのよい安易な情報は鵜呑みは禁物!!

いま現在、症状の自覚がなくても、猫背・姿勢の悪さ、体の硬さ、ポッコリお腹に心あたりが有る方は肩こり予備軍です。

肩こりを発症する筋肉・骨格の条件だけは整っていることになります。

肩こりというのは自覚症状ですから、症状が出る前に一度はお体のチェックをしていただくことが、発症を未然に防ぐ、肩こり予防という意味で大切です。

要点をきちんとおさえたセルフケアなら、軽症であれば十分改善します。

無理なくできる範囲で行ってください。

お体のチェックや細かい部分の修正、体造りのための個々の状態に適したセルフケア方法など一歩進んだことをお求めの場合は専門家に相談しましょう。

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中~重症の方は、どうしてもご自身で治すということに限界があるのも現実問題あります。そのため、「つらくなっては一時しのぎのマッサージでその時をやり過ごす」というのを繰り返すのではなく、根本原因をつきとめて対処する『治療』を行うことをご検討いただけたら幸いです。

もちろん、できる限りご自身でケアを行っていただく事は大切です。

慢性的な症状の根本的解決にはどうしても時間がかかってしまいます。ただ、原因に対する処置を行い、体を変えれば、現在のつらい状態から解放できる!!ということは覚えておいてください。

通ってもらうための施設を選ばない!!

いくら時間と費用をかけてマッサージに通ってもすぐに元通り・・・次第に悪化・・・という負のスパイラルから脱却するためには根本原因の解明と適切な処置が必要です。

一度、いつまで通い続ければいいんだろう?と冷静になってみましょう。

もし、あなたが心底肩こりに悩まされているのでしたら、まずはこちらで紹介したセルフケアを行ってみてください。それで効果が感じられない場合、お電話やメールでお問い合わせください。わかる範囲内で、できる限りのご対応をさせていただきます。

肩こり ラボは、通ってもらうための施設ではなく「通う必要のないカラダになる」ことを目的とした代替医療機関です。

当記事がひとつのきっかけとなりましたら幸いです。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


【肩関節周囲炎】50肩の病期に応じた対症療法と原因療法とは?

50肩という言葉の解説と発症する原因、症状進行の大まかな流れについてのブログ記事『五十肩の原因・症状・治し方 ①五十肩とは』に続きまして、今回は具体的に50肩はどうすれば治るのか?についての解説です。

病院に行っても50肩が治らない!!一向に改善しない!!これには明確な理由があります。

現在、通院中の方はもちろん病院での受診をお考えのみなさん、いま、あなたが困っていたり悩んでいるのは、誤った情報と思い込みのせいかもしれません。

悩み・迷いをなくすには、あなた自身が、なるほど!と納得できる情報です。

何が正しくて何が間違っているのか、あなたが正しいと思った情報が正しいのです。

40肩・50肩と気軽に言ってしまいますが、実は奥が深いのです

40代-50代で「肩を動かすと痛い」「何もしていなくても肩が痛い」「肩が痛すぎて眠れない」「痛くて腕が上がらない」といった症状がすべて40肩・50肩というのが一般的な認識でしょう。

ですが実際は、そうではないケースも多いのです。

厳密には50肩(40肩)とは骨自体でなく関節包・肩関節の周囲の筋肉に原因があるものを指します

医学専門用語では「五十肩(=凍結肩=癒着性関節包炎)とは関節包の肥厚・短縮・硬化を主病態とし、肩痛・可動域制限を主訴とする疾患」となっています。

肩関節周囲炎は名前のとおり関節のトラブル!!実は年齢には関係ない

中高年に限定すれば5人に1人が何かしらの肩の痛みがあると言われています。40肩・50肩は年老いた証というのが一般的な認識かもしれませんが20代・30代でも発症します。つまり「自分はまだ30代前半だし、40肩のわけがない!」と思いこみ、ほっとけば治るという認識は危険です。

痛みを我慢すれば腕を動かすことはできるような肩痛もあれば、腕が全然動かせない肩痛もあります。肩こりも五十肩も痛いという共通点があり、肩こりによる痛みと混同されがちですが、コリによる痛みは筋肉の痛み、筋肉痛です。

50肩の根本的な問題は【肩の関節】です。もちろん筋肉も含みますが、問題の核心は関節なのです。

50肩によって周辺の筋肉に影響は出ますので、どうしても混同されがちですが「肩こり」と「50肩」は全くの別物です。

肩関節の痛みという症状に含まれているのが50肩であり、肩の関節が痛いからといって、それは50肩とは限らないのです。

肩が痛い!まさか五十肩?・・・判別する方法

 

50肩と【診断】できるのは医師のみです。

整形外科にてX線、MRI、超音波などを使った検査を行った上で、腱版断裂、腱板炎、石灰性腱炎、上腕二頭筋長頭腱炎といった明らかな疾患がない場合、【肩関節周囲炎】です、いわゆる50肩ですね、という診断がなされます。

大切なことなので繰り返しますが、明らかな疾患がない場合が「肩関節周囲炎」なのです。

「えっ?なにそれ、どういうこと?」って驚かれたかもしれません。

明らかな疾患がなければ五十肩??

そんないい加減なもの?アバウトすぎない?と思われるかもしれません。医療機関で、原因不明で確実な改善方法がないという診断が「50肩」なのです。

肩関節の様々な問題は、まだまだ研究段階にあるものが多く、医療機関で「様子をみましょう」と言わざるをえないのです。これは医療機関が悪いわけではありません。保険制度・医療制度上仕方のないことなのです。発言・診断に責任が伴う以上、仕方のないことなのです。

これより40肩・50肩を【肩関節周囲炎】という名称に統一して解説していきます。

【肩関節周囲炎】は20代・30代でも発症する

若年層の首や肩への負担はスマートフォン・パソコンなどの普及により増大しています。ストレートネック・巻き肩は10代にも広がっています。

【肩関節周囲炎】の原因は解明されていないことが多いのですが、加齢による筋肉や関節の変性と血液循環の悪化が主な原因でされています。

明確なことは申し上げられませんが、首や肩への負担が【肩関節周囲炎】と関係ないと言い切ることは誰もできないと思います。

年齢をとれば体にガタがくるのは仕方ないと誰もがお思いでしょう。

ですが、安心してください。

【肩関節周囲炎】は関節の老化が全てではありません!!

事実、20代・30代でも【肩関節周囲炎】は発症します。

ただ、40代〜は運動不足・筋肉量の低下・食事の変化といった影響により発症しやすいだけです。

若くても肩関節周囲炎は発症してしまう、つまり加齢による不可抗力的な症状ではない、ということをご理解ください。

【肩関節周囲炎】は人によって進行具合が異なります。

大切なのは今現在の肩の状態を正確に把握する必要があります。

【肩関節周囲炎】は時間と共に症状が変化する


【肩関節周囲炎】は経過と共に症状が変化するという特徴があります。

  1. 急性期

    炎症期ともいいます。疼痛が主体で可動域制限が進行する(6週~9ヶ月)

  2. 拘縮期

    可動域制限が著しく進行する(4~6ヶ月)

  3. 回復期

    疼痛・可動域制限ともに軽快する(6カ月~2年)

【肩関節周囲炎】は、一般的に3つの病期に分かれます。いつのまにか痛みが治まってきたと感じるのは回復期にあたります。

【肩関節周囲炎】への適切な対処には、最低限この3つの病期に応じた処置を行う必要があります。3つに分類にはなっていますが、実際は、急性期→拘縮期、拘縮期→回復期への移行時期も存在します。

肩こりラボでは拘縮期は前期・後期に分けて考えており、移行期ふくめて6つの期間+急性期の前段階も合わせて7つの期間に分けています。

この分け方は、当院独自の分け方です。

なぜ【肩関節周囲炎】を病院は治してくれないのか?

肩の痛みは命に関わるものでもないですし、肩こり同様、年齢のせいにされがちで軽視されています。さらに厄介なことに、放っておけばいつかは痛み自体は治まるため、とりあえずの対症療法で様子をみましょう、というのが一般的な対応です。

病院で治らないのは、保険適用できる範囲内で対応できる術がないためです。それがあれば、全国どこの整形外科でも対応でき、少なくともなぜ治らない?と悩む人は減ります。

ですが、現在医学的に原因不明とされている【肩関節周囲炎】の痛みを解明するために世界中で研究が進んでいます!

「五十肩は放っておけば治るんでしょ?」という疑問にお答えします。

病期についての説明で「回復期」という言葉にピンときた方、この回復期が五十肩は自然に治るものとされている定説のポイントです。

【肩関節周囲炎】は、肩に違和感を感じはじめ、やがて激しく痛みが出る→痛みが少し落ち着くが肩が動かなくなる→痛みがおさまり肩が動くようになるという流れを辿ります。

注意していただきたいのは、このように「痛み」にフォーカスすれば、たしかに自然とおさまります。痛みが治まる=【肩関節周囲炎】が治った、ではないのです。

この痛みをなんとか誤魔化し時間が経つのを待つ=様子を見る、というのは、今現在つらい思いをされている方が望んでいることではないはずです。

自然と痛みがおさまっても、残念ながら以前のようには肩は動かなくなります。

適切な処置をせずに【肩関節周囲炎】を放置して自然と痛みを感じなくなるケースでは、ほぼ確実に肩関節の可動域制限が生じます。痛みは引いたけれども、元のようにスムーズに動かない、肩を真上にピっと垂直にあげることができない、腕が耳につかない、といった状態です。

日常生活において、両腕を真横に広げることができれば(肩が90度まで動けば)、肘を使って様々な動作はなんとかこなせます。ですから意識されていない方もいらっしゃるはずです。

例えば、思い切り万歳!できなくても、小ぶりな万歳はできます。このように生活にはさほど困りません。ですが、腕を使う職人さんやゴルフをはじめとしたスポーツを趣味とされている方にとっては相当なダメージです。これを年齢のせいと一言で片付けてしまうことは簡単です。

【肩関節周囲炎】を放置すると可動域が制限される理由

なぜ、動かすことのできる範囲が制限されてしまうのでしょう?

人は痛みがあると無意識にかばってしまいます。【肩関節周囲炎】の場合、その痛みをかばうために長期間にわたって肩関節を動かさないようにしてしまうのです。関節を長い間動かさないでいると固まってしまいます。これを専門用語で「関節拘縮かんせつこうしゅく」といいます。関節拘縮かんせつこうしゅくは「関節包かんせつほうの癒着が生じてしまう」状態を指します。

関節包かんせつほうに問題が残るだけでなく、筋肉にも悪影響が出ます。肩を長期間動かさないことで、インナーマッスルなど動かすために重要な筋肉が衰えるのです。

いつも使っていた筋肉を使わなくなれば当然筋力は衰えと思われることでしょう。

ここに多くの方が誤解されているポイントがあります。筋肉を鍛えれば元に戻るというわけではないのです。

筋肉を正しく動かす能力自体が衰えてしまう

筋肉を長期間動かさないことで、筋力だけでなく筋肉を正しく動かす能力自体が衰えてしまいます。

筋肉=力、という筋力のイメージをお持ちの方がほとんどでしょう。

もちろん力も大切ですが「動かし方」これがとても重要です。

筋肉を正しく動かす能力は、普段は意識することがありません。

身についてしまっているからです。

一度身についていたものを失うということは、身につけ方を覚えていればよいのですが、これを自力でなんとかするのは難しいことなのです。

たとえば、長い間車椅子生活を余儀なくされ、長い間歩くことがなければ、リハビリが大変なことになるのは想像に難くないでしょう。【肩関節周囲炎】の場合も同じなのです。長い間動かさないと、動かし方を再度身に付ける・正常に戻すためには専門家の指導が絶対に必要です。

可動域が制限されてしまうのは、長期間肩関節を動かさないようにすることで、筋力が衰えるだけでなく、筋肉の使い方を忘れてしまうためです。筋力自体は元に戻すことはできても、筋肉の使い方を再習得するのは自力では困難です。

【肩関節周囲炎】を諦めないでほしい!

痛いから動かせない肩関節痛と【肩関節周囲炎】は厳密には異なる疾患です。

痛みが治まっても、以前のように動かせなくなるのが【肩関節周囲炎】。痛みさえ治まれば問題なく動かせるのは【肩関節周囲炎】ではございません。自己判断で【肩関節周囲炎】だと思いこんでいらっしゃる方の内、実際は違う肩関節痛であるケースは多いと思われます。

とにかく痛みだけ抑えるのは絶対に必要な対症療法

なにはともあれ痛みだけでもなんとかしたい、これは苦しんでいる方にとって一番の願いです。とりあえず痛みだけおさまってくれればそれでいいと思われる気持ちはよくわかりますが、痛みを抑えることが全てではありません。クスリや注射には当然のことながら副作用もあります。四十肩・五十肩が根本的に改善するというのは、腕や肩が発症以前のように動かせる状態になるということです。

その具体的な方法については以下で解説いたします。

【肩関節周囲炎】への効果的なアプローチ方法

 

肩関節周囲炎は、病期に応じた対症療法と原因療法が必要です。当院では病期を7つに分類していますが、整形外科的基本となっている急性期・拘縮期・回復期の3つの病期において何をすべきなのかをご説明します。

アメリカの理学療法ガイドラインでは4つに分けられています。

 

急性期(6週~9ヶ月)

五十肩を患っていらっしゃる方にとって、最もつらい時期がこの急性期です。動作時だけではなくじっとしていても痛みがあります。夜間痛が生じる場合も多く、痛くて眠れず鬱など精神症状へとつながっていってしまうこともあります。痛みをなんとか抑えることが望ましいのですが、実際のところ簡単には治りません。緩和はできても、ある程度の痛みは覚悟する必要があります。その痛みと向き合う時間をできるだけ短くする、つまり急性期という期間を出来るだけ短くすることが効果的なのです。

 

急性期に行うべき処置

  • 炎症の鎮静化
  • 拘縮期への早期移行
  • 痛みの緩和

実際に、急性期の五十肩に対して病院が行うのは保存療法が主です。保存療法では、手術をせず、投薬やリハビリを行います。具体的には、炎症を抑える・痛みを緩和するたことを目的とした投薬と注射になります。

どんな薬?どんな注射?・・・気になりますよね。

はい、医療機関で処方される薬と注射について解説します。

五十肩の急性期に処方される薬

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID=Non Steroidal Anti Inflammatory Drug)の処方が医療機関での第一選択肢となります。錠剤、湿布、座薬といった患者さんに合わせたタイプで処方され、いずれも鎮痛と抗炎症作用の両方が期待できます。服用する内用薬の場合はロキソニン、湿布の場合は、モーラステープまたはロキソニンテープが多いです。これらが効かない場合、より強力なボルタレンが処方されますが座薬として処方されることが多いです。これらNSAIDの処方で痛みが治らず生活に支障をきたす場合は、もう一段階強力なトラムセットが処方されます。トラムセットは強力な鎮痛作用がありますが、トラムセットに含まれているアセトアミノフェンによる抗炎症作用は弱めです。

NSAID・トラムセットは処方される薬で市販薬ではございません。五十肩などに効くとされる市販薬については別記事で解説しました。

【検証】薬で五十肩・四十肩はよくなるの?五十肩に効くとされるクスリの効果と意味を解説

注射が鎮痛にはもっとも効果あり

目的を「痛み緩和」に限定した場合、最も効果的な手段です。整形外科、または麻酔科(ペインクリニック)にて受けることができ、ヒアルロン酸注射とステロイド注射の2種類が一般的です。

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸のもつ抗炎症作用及び鎮痛作用により痛みの緩和が期待できます。さらに腱の癒着防止作用、関節拘縮抑制作用も期待できるため、整形外科では1週間に一度、連続5回ヒアルロン酸を注射するのが一般的です。ヒアルロン酸を飲食物として経口的摂取しても上記の効果はなく、あくまでも患部に直接注入する必要があります。

ステロイド注射

炎症が強く関節に腫れがある場合はヒアルロン酸による効果が得られにくく、その場合強力な抗炎症作用があるステロイド注射が有効です。ステロイド注射は、急性期の炎症鎮静化と痛みの緩和においては最も効果が期待できる方法である。ただし何度も繰り返すと軟骨を痛めるリスクがあり、多用は危険です。ですので連続してステロイド注射をする場合は最低3ヶ月以上の間隔をおく必要があり1年に計2回までとされています。

以上が、医療機関で受ける治療になります。他にPRP療法(自己多血小板血漿療法)や運動器カテーテルといった特殊な方法もあります。テレビで紹介されたり有名人が行なったことがニュースになり知名度は高いのですが、いずれも保険が適用されません。

次に、当院で行なっている方法ご紹介します。

肩ラボの急性期の五十肩へのアプローチ方法

とにかく痛みをなんとかしてほしい!これが患者さんがもっとも望んでいることです。痛みの緩和・炎症の鎮静化はもちろん大切です。

重要なのは、できる限り「拘縮期への早期移行」を促す、これがポイントです。

拘縮期への早期移行とは、肩が動かなくなる状態になっていただくということ。肩が痛くて動かしにくい状態から、肩が全然動かない状態になるということは悪化していると感じられるはずです。ですが、この動かない状態(=拘縮期)を経ないと治りません。

ここの理解が得られないと次のステージへ進めません。

医療機関にて五十肩と診断を受けた方に対して、当院のような鍼灸・マッサージ院ができるのは「寒冷療法」「超音波療法」「鍼」「マッサージ」「運動療法」の5つです。

痛みの緩和の効果に限れば、整形外科・ペインクリニックの注射には劣ります。

五十肩に対するアプローチの本質は、状態に応じた処置方法の組み合わせ方です。つらい症状を緩和する対症療法はもちろんですが、つらい期間をできるだけ短くし、五十肩を発症する前の状態に戻すためには、適切な処置を個々に合わせて組み合わせるテクニックが必要なのです。

寒冷療法

炎症が強くて痛みが激しく、熱感や腫脹(腫れ)がある場合は、まずはアイシングにより鎮痛と炎症の鎮静化を図ります。

超音波療法

超音波で炎症部位に極微細な刺激を与えることで、細胞の反応を喚起して治癒を促進させます。1秒間に100万回(1MHz)/300万回(3MHz)の高速度ミクロマッサージが可能なUST-770(伊藤超短波株式会社)を使用します。

鍼とマッサージ

鍼を打つことで、急性期の痛みが魔法のように治ることはありません。そして急性の炎症部位に鍼を行うことで却って炎症を助長させる可能性が高いため直接的な鍼は原則行いません。

では、どこに鍼を刺すのか?といいますと患部となる肩関節の“周囲”に刺します。

急性期は関節内部の炎症に加え、痛みに対する生体の防御反応により肩関節周囲の筋肉に過剰な緊張(スパズム)が生じています。

この過剰なスパズムによって関節部の痛みの助長や、腕や首などの周辺部位の不快感や鈍痛、気怠さなどの二次的な痛みが合併して発症しているケースがほとんどです。

さらに緊張だけでなく、痛みにより動かしたくても動かせない期間が続くため、不動により筋肉(筋線維と筋膜)の硬化が生じます。

炎症部に負担をかけずに筋緊張の緩和を図るためには、過度なストレッチや体操は避けなければいけません。

炎症部に負担をかけないために鍼・マッサージで行うことが望ましいのです。急性期における鍼・マッサージは、肩関節周囲の過剰な筋緊張の緩和と血流改善をすることで、二次的な痛みの緩和を図ることと関節拘縮の軽減が目的です。

マッサージと鍼は、個々の患者さんの感受性や具合に応じて使い分け、または組み合わせて行います。

運動療法

急性期において炎症の早期鎮静化は最優先課題です。原則痛みを我慢して動かすということは行いません。

ですが、インナーマッスル(腱板)の強化は必要です。

そのため、インナーマッスル強化のために運動療法は極めて低負荷で行います。

インナーマッスルの強化によって関節拘縮を予防して根治までの期間を縮まります。インナーマッスル(腱板)のなかでも特に棘上筋と棘下筋の強化が大切で、あくまでも痛みを自覚しない範囲で行うことが重要です。わずかな挙動においても痛みが強い場合は、炎症鎮静化を優先します。

繰り返しになりますが、痛みを我慢しての運動療法は行いません。

 

拘縮期(4~6ヶ月)

拘縮期に入ると、“何もしないでも痛い”状態からはやや解放され、主に運動療法が行われます。この拘縮期に運動療法と併行して鍼灸・マッサージを行うことがポイントです。

鍼灸・マッサージは急性期と拘縮期の移行時期に最も有効

急性期の終盤「一時の激痛は少しおさまってきたが、動かすと痛い!」という状況になります。それ以降、急速に関節の拘縮(固まって動かなくなること)が進行します。この急性期→拘縮期の移行時期に、きちんと適切な処置ができるかどうかが、とても大切なポイントなのです。鍼灸・マッサージは、この急性期と拘縮期の移行時期に行う処置として最も有効であると考えております。

関節拘縮を放置してしまいますと元通りにするのは非常に困難です。残念ながら、完全な可動域までの回復が難しくなります。拘縮期を経て回復期に移行した後の可動域を確保するためには、拘縮期における関節拘縮の程度をコントロールする必要があります。

拘縮期に入ってしまってからよりは、症状が変化する、急性期→拘縮期に移行するタイミングで“痛みの管理と関節拘縮の予防”ができることが望ましいわけです。そのための手段として鍼灸・マッサージは効果を発揮すると期待できるのです。

鍼・マッサージで痛みが緩和できる理由

鍼灸・マッサージは「筋肉をゆるめる」と「血流を増加させる」の2点に特化しています。

筋肉の緩和・血流の増加で、なぜ痛みが緩和されるのでしょうか?

人間は痛みを感じると条件反射によりその部位付近の筋緊張が高まります。肩関節は他の関節と異なり、筋肉によって支えられている割合が多いのです。肩をとりまく筋肉の状態により可動性は大きく左右されるのです。

また、肩の動きは“肩甲骨の動き+上腕骨(腕の骨)の動き”によって成り立っています。(これを肩甲上腕リズムまたはコッドマンリズムといいます)

五十肩にお悩みの方は、その痛みに対する防御と長期間肩動かさないことから、ほぼ全員に肩甲骨の硬化が生じます。具体的には肩甲胸郭関節の拘縮が生じているのです。

 

五十肩の拘縮期における鍼・マッサージの目的

  • 鎮痛と運動療法の補助
  • 肩甲骨の動きの回復
  • 筋肉の伸縮性を正常化

鍼とマッサージはこの3点において大変有効ですから、拘縮期から回復期へスムーズに移行できるのです。

 

回復期(6ヶ月〜2年)

回復期には、可動域が回復して根治にむかう時期です。ここまでくれば、肩を苦なく動かせるようになってきて、日に日に良くなってくるのが実感できます。

そこで関節可動域の拡大とスムーズな動きを目指し、積極的な可動域訓練と筋力トレーニングをメインに行います。

特にインナーマッスルの機能回復、前後左右の対になる筋力(force couple mechanism)の関係性を整えることに重点を置きます。

 

肩局所だけでなく、姿勢や日常の動きなど全身に対するアプローチも行います。

この時の鍼灸・マッサージは、可動域を高めるための補助と筋力トレーニングによって疲労した部分の回復が主な目的となります。

動かしにくさを補助して動きを円滑にする、そして二次的な痛みを予防できるという点で鍼灸・マッサージはとても有効なのです。

運動療法・リハビリの効果が出ない理由、それは肩甲骨にあります

肩の動きのうち、三分の一は肩甲骨の動きに頼るものです。気をつけの姿勢からバンザイのまでの角度を180度としたら、60度は肩甲骨が動くことによるものです。裏返せば、いわゆる肩関節(肩甲上腕関節)のみでは人体の構造上120度しか動かないのです。

五十肩、四十肩、肩甲上腕リズム、コッドマンリズム コッドマネクササイズ 出典:ameblo.jp

そのため肩甲骨がきちんと動かなければ、運動療法をしようにも、そもそもうまく動かすことができず、効果を期待できません。

リハビリにて肩を動かす運動を処方されても一向に変化がないか、動かしたくてもうまく動かない、あるいはある程度動くようになったが頭打ちとなったといった場合は、肩を動かす前段階として肩甲骨が動いていない可能性が高いです。

よって積極的に運動療法を行う拘縮期となる少し前から“肩甲骨の可動性”を確保するための鍼灸・マッサージは有効であり、併用して行うことで運動療法の効果を高めることにもつながり、結果的に根治までの期間を早めることにつながると考えられます。

五十肩、四十肩、凍結肩、按摩、マッサージ 出典:www.yogawiz.com

肩甲骨の可動性と共に重要なのが腕の骨(上腕骨)と肩甲骨を連結するいわゆる肩関節(肩甲上腕関節)を円滑に動かすために必要なことはインナーマッスルの活性化です。

インナーマッスルの「強化」ではなく「活性化」とした理由

多くの場合、筋力を高めるためにはトレーニング=筋肉に負荷をかけて縮ませることが第一選択肢となります。

しかし五十肩のように関節をあまり動かさない状態が続くと、関節だけではなく筋肉も硬くなり本来の「伸縮性」が失われてしまいます。ギュッと縮まってしまっている筋肉を、さらに負荷をかけて縮ませても効果は半減です。

筋力トレーニングの原則として、まず筋肉が適切に伸長する必要があります。伸長された筋肉が縮まる際に負荷をかけることで効果の出る適切な筋力トレーニングが可能となります。

このため、筋肉を「強化」する前段階として「活性化」が必要になります。

このような「活性化」つまり硬くなって伸縮という正しい機能を失ってしまっている筋肉を回復させるために鍼灸・マッサージは有効といえます。

筋肉の正常な伸縮性を取り戻してからトレーニングすることにより、インナーマッスルトレーニングの効果を促進することが可能と考えられます。

リハビリ・運動療法がうまくいかない問題の本質

病院・クリニックのリハビリなどでアイロン体操(=コッドマンエクササイズ=ぶん回し体操)や棒体操などのストレッチなどを行うように指導され、一生懸命行っても一向に変化が出ないことが大半かもしれません。これまで述べてきた通り五十肩においてもっと大切なことは病期と痛みの原因の把握です。運動療法の効果がない、一向に良くならない場合は、そもそも「五十肩の病期とその処置」「痛みの原因とその処置」が合致していない可能性大です。

アイロン体操↓

棒体操↓

五十肩は放っておいてもいつかは痛みがおさまることが多いため、軽視されてきました。

昔ながらの方法も「五十肩・四十肩といえば〇〇」といったような古くから伝わる伝統的な方法が、マニュアル的に行われているにすぎず、肩こり同様最終的に「年齢のせい」ということでうやむやになってしまっている・・・これが現実です。

五十肩で当院に駆け込んでいらっしゃる方に、これまでの経過を伺うと「リハビリに通ってもいつもの流れ作業の繰り替えしで、一向に改善しない」とおっしゃる方がほとんどです。

当記事で紹介した当院で行なっているような方法を実践している医療機関は・・・極めて少ないでしょう。

さきほど一般的に3つの病期があると説明しましたが、実際はその3つの期間の把握すらもされないのが普通なのです。普通の保険診療では医師の対応は数分で終わりです。これは手抜きではなく、そもそも時間がかけられないのです。時間がかけられない以上、整形外科医にとってまずは五十肩か否かが大切で、五十肩でないとわかればいろいろしてくれますが、五十肩となると詳しく検査はされません。

当院は、鍼とマッサージがメインですが、鍼自体を認めていない整形外科医・理学療法士は少なくありません。

鍼というとツボ・経路といった神秘的なもの、悪く言えば「うさんくさい」イメージです。実際のところ、そういう鍼が大半です。ですが、きちんと現代医学的根拠に基づいて行う鍼は様々な医療現場で活躍できると確信しています。実際、多くの大学病院でも鍼は取り入れられています。

 

鍼灸外来のある大学病院

  • 東京大学付属病院 麻酔科・痛みセンター
  • 東北大学病院 鍼灸外来
  • 千葉大学医学部付属病院 神経内科
  • 大阪大学生体機能補完医学講座 補完医療外来
  • 筑波技術大学 東西医学統合医療センター
  • 三重大学医学部附属病院 麻酔科(統合医療・鍼灸外来)
  • 岐阜大学医学部付属病院 東洋医学外来
  • 京都府立医科大学付属病院 麻酔科
  • 慶應大学医学部 漢方医学センター
  • 日本医科大学付属病院 東洋医学科
  • 自治医科大学附属病院 麻酔科
  • 東京慈恵会医科大学付属病院 ペインクリニック
  • 東京女子医大 東洋医学研究所クリニック
  • 東海大学医学部付属病院 東洋医学科
  • 東邦大学医療センター大橋病院 漢方外来
  • 埼玉医科大学病院 東洋医学科
  • 北里大学 東洋医学総合研究所 漢方鍼灸治療センター
  • 大阪医科大学麻酔科教室
  • 近畿大学付属病院 東洋医学研究所附属診療所(漢方診療科)
  • 明治国際医療大学附属病院
  • 福岡大学病院 東洋医学診療部

四十肩・五十肩は難易度が高い上に時間がかかります

一言で「五十肩」といっても、本当の意味での五十肩は凍結肩(frozen shoulder)・癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)、実際の五十肩の症状は、ほぼ肩関節痛+肩痛(筋肉痛)のセットです。

複雑な構造をしているが故に、症状そのものが複雑で、これらによって引き起こされる肩周辺の様々な痛み・症状まで全部含まれるため肩関節周囲炎が五十肩の保険病名になっています。

五十肩には自信を持ってよくなりますとお伝えはできるのですが、行う施術は決して簡単ではございませんし、時間・回数はどうしても必要になります。

数回ですっかり良くなってしまうケースもあれば、なかなかうまくいかないことも正直ございます。

五十肩を治してしまうか、放置するか、この選択次第で人生は変わります

五十肩は放置しても発症して1年から2年で自然と痛くなくなります。きちんと適切な処置を行えば、当院の理学療法データによれば、だいたい半年から1年でゴールします。つまり適切な処置を行えば放置した場合にくらべて約半分に期間を短く圧縮できます。

一時的な緩和方法だけして放置すれば、痛みは治まっても可動域は狭くなりますが、適切な処置を行えば発症以前と同等の可動域を取り戻せます。

腕や肩が以前のように動かせなくなるのは想像以上に不便なことです。仮に85歳まで生きると仮定して、約半分の人生に影響があるとしたら、しっかりと治してしまったほうが生活が豊かになる・・・とまではさすがに言い切れませんが、少なくとも日々の悩みは減ります。

まずは医療機関で肩関節周囲炎(五十肩)という診断をもらいましょう。

本当の意味での【肩関節周囲炎】、つまり凍結肩(frozen shoulder)・癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)かどうかは、MRI検査が必要です。そこできちんと医師の診断をうけることは本当に大切です。ただ、最新の研究では癒着性関節包炎に癒着ではないということがわかってきたので名称が変わる可能性大です。

稀なケースとはいえ、骨や内臓の病気、または感染症等の可能性があるため必ずMRI検査を受診なさってください。

【肩関節周囲炎】の問題を解決するプログラムは医師による診断があってはじめてスタートします。

ここまでは鍼灸・マッサージをはじめとした徒手療法や運動療法などの保存療法について述べてまいりました。

稀にどうしても十分な改善効果が得られないケースがあります。

その場合、全身麻酔下による授動術(徒手的な関節包破断;マニピュレーション)・全身麻酔下による関節鏡下関節包解離術などが医療機関における選択肢となります。

とはいえ、これらは入院が必要であったり保険がきかず費用が高額であったりと“最後の手段”とされているというのが現実です。このような中、最近では手術が必要とされる症例に対してサイレント・マニピュレーション(神経ブロック下授動術)が行われています。

当院では、肩の痛みをすぐにでもなんとかしたい方向けにサイレントマニピュレーションではなく「運動器カテーテル」を推奨しています。ただしケースバイケースです。サイレント・マニピュレーションと運動器カテーテルについては次の記事で紹介します。

【最新医療】五十肩の治療法の1つ「サイレント・マニピュレーション」 ~五十肩の痛みに耐えられない方に知っておいてもらいたいこと

肩が痛い!腕が上げられない!!もしかして五十肩!?肩関節痛でお困りの方が知っておくべき知識

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

首や肩がこる原因は血行が悪いから?

多くの方々が「血行が悪いから肩こり・首こりが起こる」という解釈をしておりますが、以前から私はそれに疑問を抱いていました。

確かに血行不良を起こしているとその部分は痛みや違和感を覚えます。慢性的な肩こり・首こりを自覚している方は、肩甲骨から上部の広範囲にわたって不快感や痛みを感じています。

その部分を温熱療法により血行を良くする処置を行うと、気持ち良く、一時的には症状が軽減されます。

大事なことですので、もう一度言います。あくまで“一時的”なのです。

なぜ、血行を良くしても効果ないのか?

温熱療法といっても、ずっと温め続けるわけにはいきません。皮膚温度が戻るやいなや、症状はすぐに元通りとなってしまいます。

慢性的な症状に対して温熱療法が一時的にしか効かない理由、それは、温熱刺激により痛みを感じる境界線(疼痛閾値:とうつういきち,Pain Thresholdを引き上げているにすぎないからです。

肩こり・首こりは筋肉の硬さと相関関係があるわけではない

以下に3つの根拠を挙げます。

筋肉がやわらかくても猛烈な症状を自覚している方がいる。反対にとても硬くなっていても、症状を全く自覚していらっしゃらない方もいる。

筋肉を徹底的に弛緩させる施術を行い、物理的な“硬さ”が減少している状態でも、発作的に症状が出現してしまう方がいる。

慢性的な症状を自覚している場合、その筋肉に対して様々な刺激を加えても、反応性が鈍く、緊張、弛緩共に変化が起こらない(起こりにくい)方が多いという事実。

身近で分かりやすい例でいいますと、猫背などで姿勢が見るからに悪い方でも、全く肩こり知らずの方はいます。逆に、とても姿勢がよく、体のバランスがよいのに、肩こりで悩まれているという方もいます。力学的に良好な姿勢を維持しても症状を自覚する場合もあれば、逆に力学的によろしくない姿勢でも症状が出ない場合もあるということは、ご理解いただけると思います。

私のたてた仮説

肩こり・首こりの“ジンジンするような痛み、不快感”という症状そのものは、血行不良により蓄積する疲労物が感覚神経を刺激して生じる。

しかし、その根本的な原因は『血行を調整する機能』『筋肉の動きを調整する機能』の異常にあるのではないか?

この仮説を、もう少し具体的に説明いたします。

『自律神経系の異常』と『運動神経系の異常』の2つが「肩こり」の原因である説を検証した結果

まず、血液の流れは、生命を維持する上での根幹のひとつです。血液の流れのことを血流または血行といいます。

そして、自律神経。自律神経という言葉は広く認知されています。自律神経は、常に働いている神経です。起きている時も寝ている時もです。自ら律する神経という名前の通り、人が意識しなくても自ら機能しています。

神経というとイメージは掴めるけど具体的にはよくわからないという方が多いと思います。ごくごく簡単に説明いたしますと、脳や脊髄にある神経(中枢神経)とそれ以外の体の各所にある神経(末梢神経)に便宜的に分けられています。抹消神経も、体性神経と自律神経の2つに分けられます。運動神経というのは体性神経のひとつです。ここで注意していただきたいのが、運動神経という言葉です。スポーツ万能の人を運動神経が良い、と表現しますが、それではありません。筋肉の動きを調整する神経のことを解剖・生理学的には運動神経と呼びます。

血行と自律神経は、密接な関係にあります。血行が悪くなれば、自律神経が乱れます。自律神経が乱れると血行が悪くなります。

ですので

『血行を調整する機能』の異常 ⇔ 自律神経系の異常

が自然な考えだと思います。

さらに、

『筋肉の緊張(硬さ)を調整する機能』の異常 ⇔ 運動神経系の異常

も存在するのではないか?と考えました。 こちらにつきましては当ブログの別記事「鍼灸・マッサージ裏事情(1) 硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説」をご覧ください。)

この2つを合わせてまとめますと、

慢性的で治らない肩こり・首こりの根本原因は「姿勢が悪い」「筋肉が硬い」「体のゆがみ」「血行が悪い」「冷えている」といった表面的な問題だけではなく、体を調整する“機能の異常”である。

という考え(仮説)に辿り着いたわけです。

この考えが確実かどうか検証するために様々な研究論文を読み漁りました。

そして、この仮設を裏付ける研究論文を発見しました。

肩こりと首こりの決定的な違い(解剖学・生理学の視点から徹底解説)

首すじのコリで悩んでいらっしゃる方は大変多いのですが、「首こり」という言葉は、「肩こり」ほど一般的ではありません。

そんな「首こり」ですが、「肩こり」は同じようなものと思われがちです。

医学的にも「そもそも肩こりとは厳密には首こりである」と説明する医師も多くいらっしゃいます。

その根拠は、肩こりの原因が、首の筋肉にあるケースが多いためです。

ですから首こりと肩こりが混同されるのは、仕方ありません。

はっきりと結論から申し上げます。

「肩こり」と「首こり」には大きな違いがあります。

ほとんど肩こりと同じような首こりが多いのは事実です。

首こりにあって肩こりにはないもの、これが一般的に知られていないために、首こりで悩まされている人が救われない原因といえるでしょう。

 

肩こりと首こりを別物として捉える医師が少ないという現実

医療の専門家(整形外科医)の多くが、肩こりとは首こりであるという認識であり、違うものとして捉えている医師が少ないのです。病院にいっても肩こりが治らない、そして首こり肩こりを専門に扱っているような病院でも治らないケースが多いという残念な状況を作り出している理由のひとつだと思います。

そもそも、肩こり・首こりで悩まれている方で、病院を探す人自体少ないでしょう。近所の整体に行ってみる人、とりあえずピップエレキバン・マグネループ・湿布に頼ってみる、痛みがある場合でも、湿布や塗り薬に頼る人がほとんど。最初から、肩がこらないようにするには?という発想がないのです。

そして、四十肩・五十肩といった肩関節周囲炎にも言えることですが病院では「原因が分かりません」「痛みの原因はたぶん○○」と曖昧な回答をされた経験をお持ちの方は多いでしょう。様子をみましょうということで、症状の緩和のための痛み止めの薬・ブロック注射をされるというのが、典型的なパターンです。

風邪を引いたらクスリなどでつらい症状を緩和している間に自分自身の体が回復していきます。クスリはあくまでつらい症状の緩和、つまり対症療法です。

風邪とちがって、慢性的な首肩こり・四十肩・五十肩は、自己回復できないのです。自己回復できない状態にまでなってしまった=慢性化です。

対症療法の効果がない場合、それらを引き起こしている原因を解決しないといけません。正常であれば原因は自己解決できます。自己解決できなくなってしまった場合は、原因療法が必要になります。

首こりと肩こりは違います!!

首こりは、「首すじのこり」「首すじの痛み」といった表現をされることのほうが多いと思います。

首すじは漢字で書くと「首筋」または「頸筋」です。字の通り、首の筋肉を意味ですが、首すじというと、首の後ろの部分、いわゆる、くびねっこ・うなじを指します。

うなじって首ですか?それとも肩ですか?

首と答える方が多いと思いますが、肩と認識されている方も一定数いらっしゃるはずです。

ここで、本題に戻ります。

肩こりと首こりの違い、それは首と肩という筋肉の部位が違いでしょ?と誰もがお思いになるはずですが、違います。

ここで問題です。

首の筋肉が原因で肩が凝る、これは首こりですか?それとも肩こりですか?

正解は、肩こりです。

ツラい症状を感じる場所で、首こりと肩こりと言葉を分けるのが適切です。

症状を感じる場所が違う以外にも、肩こりと首こりとでは明確な違いがあります。肩こりと首こりの決定的な違い、それは神経症状として出るか出ないかです。

首こりは神経症状が出るのです。

「首こり」は神経に症状が出てしまう

首こりによる感覚神経の症状

首にはたくさんの神経が集中しています。

誰もが経験する頭痛。この頭痛は首と関係しているケースが多く「緊張性頭痛」という言葉はご存じの方も多いのではないでしょうか?

緊張性頭痛とは?

頭部の感覚は、大後頭だいこうとう神経、大耳介だいじかい神経、小耳介しょうじかい神経等といった神経が感じます。これらの頭部の感覚を担う神経は、首の骨の内側にある脊髄から出ているのです。 首がこると首の神経を圧迫し、後頭部・側頭部・頭頂部の痛みを誘発します。これがいわゆる緊張性頭痛です。(もちろん後頭筋や側頭筋などといった頭部の筋肉のコリが直接神経を圧迫する場合もあります。)

頭だけでなく肩・腕の神経の問題も首がポイント

肩~腕~手の動きや感覚を担う神経、および血管も首に由来します。神経は頚椎から出るのでイメージがつきやすいのですが「心臓から出た血管が腕に行く前になぜ首へ?」と疑問をもたれる方は少なくありません。解剖学を紐解くことで、その疑問は解決します。

心臓をスタートとする血管は一度鎖骨の高さまで上に上ってからまた腕の方へ降ります。その首の前側の鎖骨近辺で、首の筋肉である斜角筋しゃかくきんを貫くため、首こりによってシビレや血流障害による冷えなどが生じます。正確には斜角筋しゃかくきんはその位置によって前・中・後の三つに分かれ、前と中の間を斜角筋隙しゃかくきんげきという狭い隙間があります。この隙間に神経(腕神経叢=腕を支配する神経群)と血管(鎖骨下動脈・鎖骨下静脈)があるのです。首こりで斜角筋しゃかくきんが硬くなるとこの隙間を圧迫するのです。

ですが、これらはレントゲンに写りません。ですから病院でレントゲン検査をしても異常なし、となります。

これが、肩こり・首こりの重症の方が、腕や肩甲骨周囲に放散する不快な症状を自覚して、病院で検査しても異常なしとされる理由です。首が原因による腕の症状のうち、病院で原因不明、異常なしとされてしまう例として「手の冷え」があります。手が冷えるのは血流が悪いためです。なぜ血流が悪くなるかといいますと、首のコリにより血管が元詮をされている状態だからです。つまり冷えてしまっている末端を温めても温めても改善はしません。元栓がしまっている以上、血行がよくならないのです。

この症状は、正式な病名として胸郭出口きょうかくでぐち症候群の一つともいえます。ただ、胸郭出口きょうかくでぐち症候群は、肩こり・首こりだけが原因ではありません。

胸郭出口きょうかくでぐち症候群かも?と思われたら・・・

胸郭出口きょうかくでぐち症候群が疑わしい場合は、まずは整形外科にて骨や内臓の問題(特に頚椎の状態ですね)をチェックしていただき、異常がないということの確認が必須です。というのも、シビレや冷えなどは神経系・循環器系の病気が隠れている可能性があるため、決して軽視はできないからです。

特に目立った異常が見当たらない、ということであれば胸郭出口きょうかくでぐち症候群への理学療法が適応できます。胸郭出口きょうかくでぐち症候群は単にマッサージや鍼灸、電気・温熱療法だけでは、その場しのぎ止まりで、改善は困難です。

その場しのぎとはいえ、まず、緊張が高まっている斜角筋しゃかくきんを中心とした首の筋肉を弛める必要があります。筋肉を緩めた後、首に負担のかからないようにする筋力を強化しなくてはいけません。筋力強化が胸郭出口きょうかくでぐち症候群に対して必要なのです。

胸郭出口きょうかくでぐち症候群に対して行う筋力トレーニング

胸郭出口きょうかくでぐち症候群になりやすいのは、痩せ形・なで肩の女性です。女性はどうしても筋力が弱いため、首周囲へ負担が強いられてしまうという背景があります。ですから、筋力強化はもちろん必要なのですが、その筋力強化とは単にダンベルや重りをもって筋肉を肥大させる運動ではございません。強化すべき筋肉は体幹とインナーマッスルなのです。体幹とよばれる胴体部分の筋肉とインナーマッスルを活性化させると、体を効率よく負担がするないように動かすことができるようになります。ここで強化ではなく「活性化」と表現したのは、強化というとどうしても単に筋肉をつけて「マッチョ」になることと思われるためです。そうではなく、あくまでも負担なく合理的に体を動かせるようになることが目的で、そのための筋力トレーニングは筋力の強化ではなく活性化なのです。イメージとしては、女性でいうと痩せすぎていない「健康美」、男性でいうと「細マッチョ」です。胸郭出口きょうかくでぐち症候群に対して行う筋力トレーニングは、これを目指した体造りを行っていきます。

繰り返しとなりますが、ここでいう筋力強化は、重量物を歯を喰いしばって持ち上げるようなハードなトレーニングの必要はまったくございません。

まずは整形外科で診てもらうましょう!

胸郭出口きょうかくでぐち症候群になりやすい方を上記であげましたが、あくまでそれは「教科書的になりやすい」例にすぎません。

たとえ体重が多くても、筋肉量が多いとは限りません。個人的には発症しやすい例として「痩せ形」と表現することに疑問をもっています。痩せている女性やなで肩の女性に多いとはいえ、デスクワーク中心の男性にも実際多く見られます。

話が少しそれましたが、そのため「首肩こり」「(常にではないけどたまに)手にがしびれる」「手が冷えやすい」ということに心当たりがある方は、本当に症状が重篤になる前に一度整形外科にて診ていただき、MRIやCTといった検査を受けてください。ヘルニアや頚椎症の可能性があります。ヘルニアというと腰のイメージが強いですが、腰も首も背骨という意味では同じです。首のヘルニアは、頚椎椎間板ヘルニアといいます。

整形外科での検査で異常が無いようでしたら、整形外科の範疇ではないということになります。問題は、骨ではなく筋肉です。是非、軽症のうちに治してしまいましょう。胸郭出口きょうかくでぐち症候群は、解剖学に基づいた筋肉、そして、その動作に対する施術が必要となります。基本的には肩こり・首こりへの対処と同じなのです。

整形外科に行って異常なしとされ、次にどうすればよいか分からなくてお困りの方は以下の記事をご覧ください。

首肩腰でお悩みの方を迷わせない!病院・鍼灸院・整骨院・サロン選びのコツ

 

首こりによる自律神経の症状

首には上神経節・中神経節、星状神経節という自律神経(交感神経)のツボのような要所が存在します。

これらが首こりによって、圧迫刺激されることによりバランスを乱し、偏頭痛や吐き気、めまい、睡眠障害といった自律神経失調症状が引き起こされます。

この神経のツボ(交感神経節)は左右一対あり、数珠のように首から腰まで背骨の際を一つながりになり、交感神経幹という組織を形成します。そのため、それらが不調となると肩甲骨や背中の不快感にもつながります。

さらには自律神経への影響として血圧の変動といった循環器・各内臓機能も不安定となり、イライラや情緒不安定などの精神症状にもつながります。

また、迷走神経という副交感神経も脳から出て首の筋肉間を通って内臓へと下降していくため首こりにより不要な刺激を受けることでバランスを乱し、内臓諸機関の機能を乱します。

首肩こりと自律神経の関係を検索して調べていくと、自律神経が乱れるという所までは同じだが、つきつめると交感神経に着目してる説と副交感神経に着目している説があり、とてもわかりにくいと思います。

実はこれらは表裏一体でシーソーのように均衡を保っており、一概にどちらか一方のみといういいきれないというのが実情なのです。

首肩こりにお悩みの方は元々精神的ストレスを抱えていらっしゃる方もいますし、首肩がつらくてストレスとなってしまっている方もいます。天候など気圧の影響を受けやすい方も自律神経は乱れやすい体質といえます。

このような方々は自律神経のシーソーのバランスがとりにくく、片方へ傾いたら戻れなくなってしまったり、戻ろうとしたら戻りすぎてかえって反対に傾いてしまったりとしてしまうわけです。これがいわゆる「自律神経が乱れた状態」です。

つまり、自律神経を考える場合、対をなす交感神経と副交感神経がどちらか一方が働いてもう一方が働かなくなるいうように絶対的に変化するのではなく、あくまでも相対的なものなのであるとうことを頭にいれていただきまして、どちらか一方に着目するのではなく、ある事象が起きることによって双方に影響が出ることがあり、それは個人差があるということをご理解いただきたいと存じます。

そのため当記事でも首こりによって交感神経・副交感神経療法への影響をご紹介させていただきました。

このように首こりは悪化・長期化すると自律神経系の異常をきたし全身症状へと移行していきます。 (交感神経と副交感神経を合わせて自律神経といいます)

肩こりは主にその局所のつらさに留まる一方、首こりは高い頻度で全身症状へ移行してしまうため、首こりのほうがつらいと感じる方が多い傾向にあるようです。

病状は

  • 肩こりから首こりに移行するパターン
  • 首こりの症状として肩こりを感じるパターン

の2パターンあります。

肩こりを放置して首こりへ移行してしまわないようにするには、悪化しないためのケアを行うか、できるだけ早く治してしまえば問題ありません。

首こりの方はのんびりしているとどんどん悪化していってしまうので早急に集中的な対処を推奨します。

これは多くの肩こり・首こりの患者さんを診てきたセラピストとしての経験的なものですが、「施術をしてもすぐに元通り」という方は、肩こりではなく「首こりが原因」の方が多いです。

「首こり」と「肩こり」は似て非なるもの、この見極めはとても重要です。

肩こり・首こりと聞くと気軽に感じるかもしれませんが、それらは体からの悲鳴です。

肩こりや首こりを根本的に改善するということは、つらい症状を引き起こしている原因をひとつひとつ解決することです。つらい部分の症状を緩和しても再発するだけで、薬、お店、病院に通い続けることになるだけです。時間やお金がかかるだけでなく、厄介なことに徐々に悪化していきます。

ですから、どこで診てもらうか?どこに通うか?がとても重要になります。

どこに行けば肩こりは治るの?

まずはご自身の体が”どのような状態”で”何が起こっているのか”を知りましょう。医療機関などでの説明を受け身ではなく、理解する、疑問に思ったら質問して信頼できるかどうか見極めましょう。そのためには、正しい知識・情報が必要です。

重要なことですので、繰り返し申し上げますが、肩こり・首こり・腰痛に対してでもっとも大切なことは、症状の見極め、原因の究明です。これを間違えると、どんなによい腕を持った医師・セラピストでも改善することはできません。

マッサージ業界では、ゴッドハンドと呼ばれる(自称?)人がもてはやされますが、つらい症状を緩和するだけなら、ある意味誰でもできるといえます。

本当の意味で腕のいいセラピストとは、つらい症状の原因を正確に把握して、その人その人にあった適切な処置ができる人である、そう私は思います。そして、そう思っていただくために、セラピストの道を前へ前へと進んでまいります。

体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

以下の記事では医学的根拠に基づき肩こり・首こりについて解説しています。

鍼灸・マッサージの裏事情(1) 硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説

鍼灸・マッサージの裏事情(2) 首ポキ解消法の真相 脳血管障害・死亡率との関連性

鍼灸・マッサージの裏事情(3) 血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりラボが首肩だけでなく足・腰も対象にしている理由

肩こり専門院なのに、腰痛や足も?・・・疑問に思われて当然かもしれません。

幅広く患者さんを集めるため?

追加のオプションサービス?

専門外だけど一応できるという片手間の施術?

いいえ、違います!!

実は、首も肩も腰も足も全て専門分野であり得意分野なのです。

なぜ足腰が得意分野なのか?その理由を説明します。

肩や首のコリの原因を見極めるには体全体を診る必要がある

肩こり・首こりの原因は多岐にわたります。多岐にわたるのですが、以下の3つに大きく分けることができます。

  1. 解剖学的な問題

    筋肉バランス、筋力バランス、姿勢など

  2. 神経学的な問題

    自律神経(交感神経と副交感神経のバランス)、ホルモンバランスなど

  3. 心理学的な問題

    精神的な負荷、ストレスなど

この3つの原因が、肩こり・首こりを引き起こします。

ただし、この3つの原因のどれか1つが原因ではないのです。

程度の差はありますが、3つの原因すべてが複雑に絡み合っています。

現代社会はストレス社会です。どうしても逃れることはできないでしょう。そんなストレスが原因で、しかも複雑に絡み合っていたらどうしようもない、そう思ってしまうはずです。

安心してください。万人に共通している大きな要因があります。

解剖学的な問題」です。

どんな複雑な問題でも、何か一つのことがきっかけで大きく前進することがあります。

確実に解くことのできる問題、少なくとも正解がある問題、それが解剖学的な問題です。

解剖学的な問題の答えを予想するのがカウンセリング・検査です。

その答え合わせが施術・処置です。

採点するのは「あなた」です。

肩こりの根本的解消とは、良い姿勢を保って生活できる身体ができた時

どんな施術にも必ず意味と目的がございます。

施術の目的は、本来は一つです。

施術する側の目的と、受ける側の目的が異なっていることが多いのです。

需要と供給と同じで、施術する側と受ける側の意思が合致していなければなりません。合致してはじめて本来のひとつの目的となります。

肩こり・首こりの根本的な解消を検討される方は、とにかくもうこれ以上首・肩の不調で悩まされたくないからなんとかしたい人もいれば、とにかく今現在のツライ症状だけでもなんとかしてほしい、という人もいます。

治療にはゴールがあるが、ゴールは1つではない。

治療にはゴールがあります。

もちろん根治がひとつのゴールではありますが、今つらい症状がおさまった、これもゴールです。

今現在の症状を抑える、発症しても症状の度合いを抑える・発症の頻度を減らしていく、いつのまにか気にならなくなる・・・ここまでいけば根治です。

つまり、根治という最終目標のまえに、目標を定めてクリアしていく必要があります。

根本的に改善するために必要となるのは、良い姿勢を保持できる体を造ることです。

良い姿勢というと立ち姿をイメージされるでしょう。静止している不動の姿勢にかぎりません。姿勢は、頭部,体幹、四肢の相対的位置関係を意味します。カラダは動くものであり、動かすものです。静止しているよりも動いている時間のが多いわけです。つまり静的姿勢だけでなくスポーツなどによる動的姿勢も含めなければいけません。つまり良い姿勢を体得できれば、良い動きにつながります。

肩こり・首こりを根本的に改善する唯一の方法=合理的に動く体造りなのです。

良い姿勢ってそもそもどんな姿勢?

姿勢に着目する場合、全身を考えなければなりません。

不適切な足の使い方をしているがために不合理な姿勢となっていることもあります。ほんのちょっと足の使い方を変えるだけで、ほんの数ミリ重心を動かすだけで、上部に存在する首肩にかかる負担が大幅に減ることがしばしばあります。

腰・骨盤の筋肉バランスが乱れているがために良い姿勢がとれないこともあります。(単に“ゆがみ“が原因ではありません。ゆがみを原因とするのは安直すぎます。)

写真を撮ると傾いていたり、気がつくと捻れていたり、猫背となってしまうということは筋力バランスの乱れが原因かもしれません。これは一概に筋力低下とは言えず、あくまで前後・左右・対称的なバランスの乱れです。

これらは人体という不安定な構造物を支えるため必要な筋力不足と筋の過緊張、合理的な使い方が原因です。

背筋を伸ばした姿勢は美しい姿勢だが、良い姿勢ではない

良い姿勢というのは、決して背筋をピンと伸ばして力んだ姿勢ではありません。バレエダンサーの姿勢でもありません。良い姿勢とは、最小筋力で体重を能動的に支えることができる姿勢です。つまり、最も疲れない姿勢です。

ここで勘違いされる方が多いのですが、だら〜っと力みのない脱力姿勢ではありません。そのような姿勢は確かに楽です。ただし楽なのは、ごくごく短い間だけです。楽な姿勢を維持しようとすると骨に負荷がかかります。骨への負荷が長期にわたると、変形が生じます。これが加齢によって骨が変形する理由です。

骨が変形してしまうと、もはや能動的な姿勢がとれなくなります。そのため首・肩・腰に慢性的に負荷がかかり続けます。

加齢による骨の変形と申し上げましたが、生活環境の変化により、年配の方だけの問題ではないのです。

スマホの使いすぎによるストレートネック(スマホ首)も、骨の変形です。

骨の変形は大げさなことではなく、実はとても身近な問題になってしまっています。

良い姿勢のポイントは腰と足

肩こり治療の目的が良い姿勢を保つための体づくりであるわけですから、肩こり・首こりに関係がないように思える腰や足は、実は非常に重要な意味があるのです。

脳科学上、人間はつらいと感じる部分は基本一か所なので、本当は腰が悪くても自覚がなくて肩こり・首こりの症状が治ることで、腰に症状を感じるようになってしまうこともめずらしいことではありません。足の痛みをかばうことで姿勢が乱れて、結果的に首・肩・腰に負担が蓄積してしまうこともあります。

肩こり・首こりを根本的に改善するためには、体全体、つまり腰や足の十分な知識と技術が必要不可欠です。

肩こり・首こり専門の治療院が腰痛や足の治療を行うのは必要だからではなく必然なのです。

katakori LABSが腰や足の治療を行う理由

最後に蛇を例にお話しします。

蛇は頭から尻尾の先まで骨があります。

シンプルに全部繋がっていますので、尻尾に問題があれば、頭の方にも影響が出ることは容易に想像できるでしょう。

人間の体も同じです。少なくとも人間の背骨は頭蓋骨から骨盤まで繋がっています。首や肩の辛い症状の原因が実は腰だった!!なんてことは、珍しいことでもなんでもありません。

人間は2足歩行しますから、蛇と違って、足は足で独立しているとはいえ、骨格としては繋がっています。形状は違いますが、蛇の頭と尻尾と同じように、人間の足と腰は密接な関係にあるのです。

足や腰に問題が生じますと、日常生活に大きな影響がでます。なんとかしないと困るのでほとんどの人は病院にいくと思います。しかし首や肩の場合は、コリを感じるくらいでしたら、日常生活に支障がでることは少ないでしょう。ですから、そのまま放置し続けることで治療が必要なくらい悪化してしまう人が多いのです。

最終的かつもっとも代表的な症状、そしてわかりやすい言葉が「肩こり」なので、当院は「肩こりラボ」という名前になりました。

肩こりラボ(katakori LABS)は、全身の筋肉の問題に由来するあらゆる症状に対して物理療法を行う鍼灸・マッサージ院なのです。本当は、筋肉ラボが正しいのかもしれませんが、筋肉ラボでしたら確実にスポーツジムと勘違いされますよね。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


整体ですか?

整体を常日頃から利用されている方はたくさんいらっしゃいます。

大きな商業施設には大抵いくつか店舗が入っています。

一日の疲れを癒やすため、毎日の仕事・家事の疲れを癒やすために休日に利用される方も多いでしょう。

 

肩こりラボって整体院ですか?

はじめて診る患者さんだけでなく、多くの方からこのような質問を多く受けます。

答えはNO!!です。

肩こりラボは整体とは全く違いますと、ハッキリ申し上げます。

そもそも整体ってどういうものかご存知ですか?

整体とは、そのまま、体を整える、という意味ですね。

押したり、揉んだりして、気持ちのいいもの、これが整体のイメージです。

そして、姿勢が良くなる・リンパの流れが良くなる・血行が良くなる・自律神経を整える、といったいかにもカラダに良さそうな「効果」があるとお思いのはずです。

リラックス効果で自律神経のバランスが正されることはあるかもしれません。

ですが、姿勢・リンパ・血行といった治療効果と思いがちな効果はありません。

マッサージでもありません。

整体とは、国家資格を持たない無資格者がマッサージに類似した施術を行う際に使う「用語」です。

つまり、整体の資格といっても民間資格のため、誰でも自分は整体師と名乗ることができるのです。

あなたも整体師って名乗っても問題ありません。

整体の問題点

整体の効果の有無に関係なく、以下の2点の問題があります。

  • 骨折や脱臼、神経麻痺などを起こすおそれがある。
  • 悪性腫瘍などの重大疾患が隠れているような場合でも気づくことができず、結果的に病院での受診が遅れ取り返しのつかないことになる可能性がある。

つまり、人の健康に害を及ぼすおそれがある医業類似行為であり、国民の利益に反するということです。

多くの方が誤解している「整体」と「マッサージ」の違い

では「マッサージ」とは正式にはどのようなものなのか、ご存じでしょうか?

一般的に広く認識されている「マッサージ」は、正式には3つに区分されます。

按摩(あんま)→ 中国から派生した技術です。いわゆる“もみほぐし”です。皮膚に直接触れずに、手ぬぐいやタオル等を用い、体の中心から末端へ向けて施術を行います。(マッサージというと多くの方がご想像するのがこちらです)

マッサージ  →  西洋から派生した技術です。オイルやパウダーなどを用い、皮膚に直接触れて流すような動きで、体の末端から中心へ向けて施術を行います。(マッサージとは本当はこれを指します)

  指圧    → 日本で派生した技術です。手ぬぐいやタオルを用い、体へ垂直に圧力をかけることを基本に、関節運動やストレッチ等も織り交ぜて施術を行います。

 

以上が一般的に知られる「マッサージ」の本当です。厚生労働省が認定した手技療法の中には“整体”“カイロプラクティック”“リフレクソロジー”“アロマ”等は含まれません。法律上、たとえ費用が発生しなくても、他人に「マッサージ」を行うことが許されているのは按摩・マッサージ・指圧師という国家資格を取得した者と医師のみなのです。資格といっても、民間団体認定の簡易資格と国家資格ではその内容に大きな違いがありますので注意が必要です。

歪みを整えることに意味があるのでしょうか?

肩こり・首こりなどで町のリラクセーションや整体屋にいくと、決まって骨盤や背骨が歪んでいるから・・・といった理由を言われたご経験ありますよね?

実は「歪み」というのは医学用語ではないのです。

  1. まず「利き手」「利き足」があるように人間は左右均等ということはありえません。
  2. 人間は構造的に複雑でとても不安定ですので、歪みがあって当然です。
  3. 厳密に骨の異常を改善できるのは医師による外科的手術のみであり、体の外から色々と力を加えてもすぐ元に戻ってしまいます。
  4. 百歩譲ります。では、体が歪んだらいったいどうなるのでしょうか?
    もし、歪みが治ったらあなた様にとってどんな良いことがあるのでしょうか? 果たして“その症状”は本当に消えるのでしょうか?
  5. 歪みが本当に治った人はこの世にいるのでしょうか?

結論、「骨の歪みを原因とする」=「治しようがない」=「治療を続けても変化無し」という事なのです。これでは全くもって“のれんに腕押し”状態です。通い続けても一向に症状が改善しないのは当然のことなのです。

このように、私は本当に治したい方が“治すための治療”を受けることができない現状、求めてもそれに到達できない現状に疑問を感じずにはいられません。

当院は個人個人の生活や癖の中から出来上がった体の「ゆがみ」を肯定します。その上で、根本的な原因をつくる「筋肉」と「動作」に対して徹底的にアプローチを行い、体を造り変えます。体のバランスを整えるという意味では“整体”かもしれませんが、中身は全く別物なのです。 医療なのですから。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。