体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

『自律神経系の異常』と肩こりの関係性を裏付ける研究論文を発見

自律神経系の異常と肩こりの関係性を裏付ける文献を紹介します。

名古屋学院大学 リハビリテーション理学部 理学療法科による研究論文 [BMC Musculoskelet Disord 2012;13:146.]です。

この研究が示唆することは

  1. 慢性的な肩こり・首こりを自覚している方とそうでない方の首肩の筋肉(僧帽筋)に負荷をかけたところ、両者が共に血行不良が生じ、その差はなかった。

    肩こり・首こりの有無に関わらず筋肉に負荷がかかった時は筋疲労が起こる。

  2. 筋電図所見上、慢性的な肩こり・首こりを自覚している方とそうでない方に筋収縮の様式に差は無く、筋収縮時は、両者は共に筋血流量は増加した。

    慢性化”の決定因子は単純な局所血行障害ではない。

  3. 慢性的な肩こり・首こりの方は、そうでない無い方に比べて負荷終了後、回復時の酸素化ヘモグロビンと総ヘモグロビンが少なかった(=対照と比較し血行が悪かった)

    慢性的な肩こり・首こりの方はコッている筋肉の有酸素性の回復能力が低く、筋疲労の回復が遅い。

  4. 肩こり・首こりの症状の無い方は運動後に交感神経の活動が亢進したが、慢性的な肩こり・首こりの方は変化しなかった。

    運動することにより交感神経の活動が亢進することは正常な機能であり、それにより筋肉内の血流が増加し、筋に酸素や栄養素を送ると共に疲労物質を排除する働きをする。 よって慢性的な肩こり・首こりの方は運動終了後、筋肉内の血流が増加せず、組織が酸素欠乏するとともに各種疲労物質が蓄積しやすい状態となっているため、いつまでも疲労から回復することができない状態となっている。

の4点です。

今回ご紹介した自律神経系の異常と肩こりの関係性を裏付ける論文のまとめ

肩こり・首こりの症状有無に関わらず、負荷がかかると両者は同様に筋疲労し血行は減少するが、負荷がかからなくなった時にいかに血行が回復するかどうか差が生じることとなる。

その原因は自律神経、特に交感神経が適切に働かないことによる。

ということです。

人間であるため、同一動作や不良姿勢を続けることにより限られた部分へ持続的な負荷が加わった場合、そこが疲労するのは正しい生理現象です。 (2リットルのペットボトル3本入った袋を長時間持っていたら腕の筋肉が疲労しパンパンになるのが至極当然のように、体重の約10%(5~7kg)の重量がある頭部を不合理な方法で支え続けたら、その部分は誰しもが確実に疲労します)

そのため慢性化している方ほど疲労やコリが休息によりリセットされることなく“永遠に蓄積され続けてしまう”ということが重症と軽症を隔てる要素です。

よって慢性化を左右する因子は『血行を調整する自律神経の異常』なのです。

興味深いのは、今までは“慢性化している肩こり・首こりの方は交感神経が異常に働きすぎている”という見解が一般的だったにも関わらず、本研究では“交感神経が適切に働かないこと”が要因だとしています。

これらをふまえまして私は、

①自律神経は交感神経と副交感神経が相互に働きあって相対的な優位性により機能を調整するため、慢性的な肩こり・首こりの方はどちらか一方ばかりが優位になっているのではなく、適切な時に適切なバランスで自律神経が作用できなくなってしまっているのではないか。

②そのため重症の肩こり・首こり患者さん程、頭痛・めまい・吐き気・胃腸の不調・全身倦怠感などといった自律神経失調症の症状も同時に抱える場合が多いのではないだろうか。

と考察しております。

交感神経=ストレスといったイメージがもたれやすく敵視されやすいのですが、筋肉の血行は交感神経により支配されているため、その働きは必要不可欠です。

慢性的な肩こり・首こりを治すためには、単に体のハード面(筋肉・姿勢・骨格・血行など)だけではなくソフト面(機能・自律神経・運動神経・精神など)をまでを視野にいれた治療の必要性が裏付けられました。

一般的には、肩こり解消方法というとストレッチや体操などの筋肉を動かす事や温めることにより、血行改善を図り改善されると認識されています。実際のところ、それで改善される方は極少数なはずです。そのような処置で肩こり・首こりが解消されない理由は、根本原因である自律神経の不調あるからなのです。

疲労が蓄積した時などに、たまに「首肩がつかれたな。もんでほしいな。」と思われるぐらいの方でしたら、体操(ストレッチ)や温熱療法で改善してしまいますが、心底お悩みで藁をもつかむ思いで肩こり解消方法を調べていらっしゃる方には残念ながら効果は無いとお考えいただいたほうが良いかもしれません。

体操やストレッチ、温熱療法によって少なからず自律神経にとって良い反応は起こりますが、慢性的な肩こり・首こりを患っていらっしゃる方はそれだけでは不十分です。しっかりと自律神経を整える治療並行して行う必要があります。

結論

慢性的な肩こり・首こりは、○○秒でできる簡単な体操やストレッチ、温め(温熱療法)のみでは、根治はありえません。一時的には楽になるかもしれませんが、治らないので繰り返すことでしょう。すると、だんだん、慣れてしまい、コリが悪化する可能性があります。

気軽に感じる肩こり・首こりですがそのメカニズムはとても複雑で、治すためにはその本質を患者さんご自身にもしっかりと理解していただく必要があります。

YouTubeやテレビでは様々な処置や対処方法、体操などが推奨されています。それらを行っても、根本的には改善されないということ、つまり、コリの原因そのものを的確にとらえられていない可能性があります。そもそも原因は人によって様々です。

簡単に治る体操は、定期的に流行るものかもしれません。雑誌でも特集が組まれることもあるでしょう。それが本当に効果があるなら、誰も苦労しません。肩こり、首こり、腰痛などで苦しんでいる人は増え続けています。これが現実です。一時的な、安らぎ、リラクセーション効果を求める人は多く、それを狙ったビジネスが盛んですが、私は真剣に治したいという強い思いで治療にのぞんでいます。

肩こり・首こりとはどのようなものなのか、その根本をとらえたい方はこちらをご覧ください。 →「確実に肩こりを解消するために必要なこと

首ポキ

首肩がつらくて、ついついポキポキ鳴らしてしまう方、整体やカイロプラクティックで首をボキッとする施術を受けたことがある方はこちらをご覧ください。 →首ポキ解消法の真相(首をポキポキ鳴らすのは本当に危険なのか?脳血管障害・死亡リスクとの関連性)

血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由についてご納得していただけましたでしょうか?

もし当記事が、少しでもあなたのお役に立てたようでしたら、他の方にシェア頂ければ幸いです。

 

 

この記事を書いた人
丸山太地

肩こりラボ鍼灸マッサージ院代表。日本大学文理学部体育学科にてスポーツ医学を学び、在学中よりトレーナーとして活動。東京医療専門学校にて国家資格を取得。上海中医薬大学へ留学、解剖学実習修了。人体の構造を理解するために、日本大学医学部、千葉大学医学部の解剖学教室にて人体解剖について学ぶ。 <資格>鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師/厚労省認定臨床実習指導者/NSCA-CSCS/日本体育協会認定 スポーツリーダー/中学・高校保健体育教員免許/パワープレート認定トレーナー