肩が痛くて辛い、思うように動かすことができない、肩が痛くて眠れない・・・五十肩、四十肩で悩まれている方は非常に多いです。辛さに波があるため、病院へ行かずに放置してしまっているのも仕方ないことです。
そして「つらい五十肩の痛みに・・・」というキャッチコピーのついたクスリや湿布などが手軽に手に入りますから、その場しのぎしやすいのも事実。
病院に行こうかなと周りの人に相談しても「五十肩なんて病院行っても治らないよ」と言われる確率は高いでしょう。
病院にいっても“とりあえず痛み止めと湿布”、“とりあえず電気を流す”といった「とりあえずの処置」しかされなかった・・・肩こりラボに来院される方とのカウンセリングでよく出てくる話です。
さらに五十肩というネーミングのせいで、年齢には勝てない・・・と諦めてしまう気持ちがどうしてもあるでしょう。
ですが、あなたの肩の痛みは本当に五十肩なのでしょうか?自己判断は禁物です!病院でそう言われた方も一度きちんと五十肩に関する正しい情報を知っていただきたいのです。
率直な疑問「五十肩(四十肩)って治るの?」
はっきりと申し上げますが、五十肩・四十肩はあきらめてしまうのは勿体無いです。
当院は、肩こり・首こりの専門院ですが「五十肩」の方が首肩こりよりも簡単です。
簡単といっても肩関節痛の根本的な改善はどうしても時間がかかりますし難しい処置なのですが、慢性的な首肩こりと比較した場合です。
その理由は、肩こりや首こりは、フィジカル面の問題だけでなく精神的ストレスといったメンタル面による影響を大きく受けますが五十肩・四十肩といった肩関節痛は、首肩こりと違ってフィジカル面の問題のみです。
原因と状態に対する対処方法が明確なのです。
それなら、なぜ病院にいっても治らない?
当然疑問に思われるはずです。
あなたのその疑問を解決するために、まず五十肩ってつまり何なの?というところから解説していきます。
五十肩と肩こりは全く別物
五十肩といえば肩の痛み。肩が凝って痛みを感じることがあるため、肩こりと五十肩(四十肩)を混同してしまいがちですが、完全に別物です。根本的に異なります。
肩こりは首〜肩の筋肉の問題によって起こる症状で、五十肩は筋肉ではなく「肩関節の問題」によって起こります。
筋肉と関節の違いなのです。
肩の関節の痛み全般を肩関節痛といいますが、五十肩とは肩関節痛の1つでしかない
肩こりが原因で肩周辺に痛みがある場合、特に40代・50代でしたら、四十肩・五十肩と勘違いしてしまうことは仕方のないことです。
40代・50代の人で肩の関節周辺が痛い=40肩50肩とは限りません。
肩の関節の痛み、いわゆる肩関節痛という症状にはいろいろあり、40肩50肩というのは、その中のひとつでしかないのです。
ですから「自分は四十肩かも」という自己判断で、四十肩五十肩に関する情報を調べて市販薬を服用したり、五十肩に効くとされるセルフケア・運動を行ってしまうのは危険なのです。医療機関で診てもらわずにいきなり整体などのお店に通うと余計に症状が悪化することがあります。
大げさに不安を煽りたいわけではありません。生活に支障をきたす後遺症が残ってしまうということが現実にあります。
五十肩に関する情報がバラバラで何が本当かわからない!
五十肩について、誤った情報が蔓延しています。そして非常に残念なことですが、治療する側も勘違いしていケースが少なくありません。なんでもすぐ調べられる時代だからこそ、リスクも大きいわけで、五十肩を正しく理解していただく必要性を心の底から感じています。
五十肩はきちんと適切な処置をすれば必ずよくなるのですが、この適切な処置の選び方が難しいのです。
様々な五十肩をみてきましたが、他で間違った処置をされてしまったことでより困難になってしまうケースが本当に多いのです。
ですから一人でも多くの方に、まず正確な五十肩情報を知っていただきたいのです。
五十肩とは、そもそもどういう症状?
五十肩という言葉は、歴史をさかのぼると江戸時代から広く使われていたようです。当時の俗語や諺などを収集した「俚諺集覧」という書物には「五十腕」「五十肩」の記載が残されており、50歳くらいになると腕や肩が痛むがやがて痛みが治まる、これは長く生きていることの証となる病と捉えられていたようです。長く生きていると現在でも五十肩と言えば誰でも分かりますが、昔は診断技術がないため、50歳くらいになって肩が痛くなり、そのうち自然に良くなれば全て五十肩と呼んでいました。これを広義の五十肩といいます。
ちなみに四十肩とは単に40歳くらいで五十肩様の症状が出た場合にそう呼ぶだけで中身は同じです。四十肩と五十肩で違いはありません。60代であれば六十肩、30代であれば三十肩です。つまり、五十肩という名称そのものが曖昧であり、その名前と症状が一致していないという意味のない言葉ともいえます。
引用:http://samurai-kid.at.webry.info/theme/4f782261ee.html
昔から人々を悩ませてきている五十肩ですが、医療の進歩により、現在では肩の痛みの解明が進みました。従来原因不明だった肩の痛み。肩が痛いという症状は同じでも、実際には肩の痛みを引き起こす疾患には多くの種類があるのです。
例えば、烏口突起炎、腱板炎、腱板断裂、肩峰下滑液包炎、石灰性腱炎、上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎・・・と数多く存在します。なお、これらの診断を下すことができるのは医師のみです。整体師、鍼灸師、マッサージ師、柔道整復師、トレーナーは診断することはできません。
整形外科で原因不明の場合のみが本当の意味での五十肩
厳密には、整形外科的にきちんと解明されている数多くの肩の疾患を除外した上で明らかな原因がない一次性の肩痛と可動域制限を「五十肩」と診断します。これが本当の意味での五十肩です。
本当の意味での五十肩とはどういうことかといいますと、世間一般的に言われる五十肩とは、厳密には五十肩ではない疾患も含まれているのです。医師が診断する「五十肩」が正確な五十肩(狭義)であり、誰もがしっている五十肩という名称は肩に関する様々な症状をまとめて呼ばれている(広義)のです。
事実、中高年に生じる肩の痛みを、江戸時代と同様の広い意味で五十肩と理解している方がほとんどです。これは仕方のないことで、医療従事者であっても、五十肩という言葉を狭義の意味で使っている人の方が少ないのです。
医学的に正しい五十肩というのは「狭義の五十肩」、世間一般で言われる五十肩は「広義の五十肩」であり、広義の五十肩には狭義の五十肩も含まれているということです。
狭義の五十肩とは、広義の五十肩に含まれる筋肉や骨、靭帯由来の他の疾患が除外されたうえで、関節包の肥厚、短縮、線維化、血管新生、軟骨分化、滑膜炎など、肩関節構成体である関節包そのものに問題が生じていることを意味します。
病院で「五十肩ですね」という診断をされるということは「原因がよくわかりませんので様子みるしかないですね」を意味します。
原因不明の肩の痛みをとりあえず五十肩と診断されてしまうことも多いわけですから、本当の意味での五十肩でなくても痛み止め・ブロック注射で痛みがおさまり、五十肩がなおったと勘違いされるケースもあります。ネット上の○○したら五十肩がなおった、という口コミなどは実は五十肩だったのかどうかもあやふやなのです。これは口コミをした人が悪いのではなく、実際に五十肩でないのに五十肩だと決めつけてしまっている医療機関側の問題なのです。
痛くなければ動かせるのであれば、それは五十肩ではない
肩が痛い・痛くて動かせない=五十肩、とお思いの方は多いため「五十肩をなおす=痛み止め」と勘違いされている人がほとんどです。痛くて動かせない→痛みがなくなれば動く、これは厳密には五十肩ではありません。ふつうの肩痛です。
非常にややこしい話なのですが、病院で「五十肩」と診断されても、それは広義の意味での五十肩なのか、狭義の意味での五十肩なのか、が伝えられない上に、病院側もそこの区別も曖昧にしているケースが多いのです。わかりやすい例でいいますと、レントゲンは骨しか写りません。骨の問題を除外しただけでは広義の五十肩です。肩関節の問題なのか、肩関節周囲の筋肉の問題なのか、そうなってくるとMRI検査が必要です。MRIの検査ができる整形外科は限られてきますがレントゲンだけでは本当に五十肩かどうかわかりません。レントゲンの検査だけで五十肩という診断は「原因不明なので、とりあえず五十肩」を意味している、ということを覚えておいて下さい。
英語で五十肩のことをなんていう?
国際的に普及しているのはfrozen shoulderです。和訳は「凍結肩」となります。またadhesive capsulitis of the shoulderとも言います。こちらの和訳は「癒着性肩関節包炎」です。五十肩はそもそもなぜ発症するのか?という問題は国際的にもはっきりと分かっておらず研究者によって呼び方が違うのです。これら2つは同じものと認識していただいて構いません。一方、日本で保険病名として認められているのは「肩関節周囲炎」であり、五十肩も凍結肩も保険病名としては認められていません。病院で「肩関節周囲炎ですね。」と診断され、それって何ですか?ときくと「いわゆる五十肩です。」と言われるはずです。これが多くの誤解を招いている理由かもしれません。五十肩=肩関節周囲炎、と認識される方がいて当然です。
引用:http://w-diet.com/50kata10.html
難しい言葉の羅列で恐縮ですが、大事なことなので繰り返し申し上げますが、広義の五十肩とは、関節包の障害(狭義の五十肩)を含み、医学的には五十肩・四十肩ではない烏口突起炎、腱板炎・腱板断裂・石灰性腱炎・上腕二頭筋長頭腱炎・頚椎症・変形性関節症など多くの疾患が含まれています。
要するに今まで多くの方が用いてきた“広義の五十肩”とは肩関節をとりまく様々な痛みの総称であり、意味としてはこちらを肩関節周囲炎というのが正しいかもしれません。
用語がまぎらわしいので再度まとめます
狭義の五十肩
肩関節の関節包の問題。五十肩とは正しくはこの病態を意味する。
凍結肩
狭義の五十肩のこと。(英語:frozen shoulder)
癒着性関節包炎
凍結肩と同じく狭義の五十肩のこと。(英語:adhesive capsulitis)
最新の研究では、癒着ではなかったことがわかってきました。
広義の五十肩
肩関節をとりまく様々な痛みの総称。烏口突起炎、腱板炎・腱板断裂・石灰性腱炎・上腕二頭筋長頭腱炎・頚椎症・変形性関節症など多くの疾患が含まれています。多くの方が云ういわゆる五十肩。肩関節ではなく筋肉の痛みの場合でも、五十肩と認識されてしまうことも。
肩関節周囲炎
広義の五十肩のこと。保険病名ではこの名称が正式名称。実際は凍結肩本来の病態と合致していないという矛盾がある。
治療は医師による診断が確定して、初めて開始されます。
実際は、何をしても効果が出ず、一向に痛みが引かないけれども、一定期間すると自然と痛みが緩和されていくのが五十肩(凍結肩・癒着性関節包炎)の特徴です。
しかし、だからといって軽率に(広義の)五十肩と判断して、電気を流しておきましょう・動かさず様子をみましょう・薬のんで様子をみましょう、といった適切とはいえない「とりあえず」な方法では治るものも決して治りません。ですが、それが健康保険内でできることなのです。
肩の痛みが生じている原因が何なのか、原因をしっかりと見極めた上でそれにあわせた適切な処置を行う必要があります。
このような背景があるため、医療従事者はもちろんのこと、医療を受ける側も用語・意味をお互い共通認識としてもつ必要があります。
以下文章では、五十肩=狭義の五十肩=凍結肩=癒着性関節包炎とさせていただきます。
五十肩、四十肩になる原因についてご説明します。
五十肩発症のメカニズムはまだ解明されていない
狭義の五十肩になる原因は様々な説があり、いまだに原因不明とされています。歳を重ねると足腰が弱くなる、これは生物学的に時間の経過とともに体に起こる変化、いわゆる老化であり避けられないことです。狭義の五十肩は関節包の変性ですから、関節の老化によって引き起こされるケースは間違いないなくあります。ですが、20代で発症してしまう人もいます。老化以外にも確実に原因はあります。
発症のメカニズムは不明でも、発症以前の状態に戻すことはできまる
本当の意味でも五十肩の発症のメカニズムは不明でも、肩関節周辺の痛み、一般的な意味でも五十肩が発症しやすい条件・原因はわかっています。
肩関節周辺の痛みは背景に筋肉バランスの乱れや不合理な動作により、一定部位に負荷がかかることが蓄積され生じることが多いです。筋肉の量が少ないのに関節を酷使してしまっている、また、もともと運動をやっていたのにやめてから筋肉が落ちて発症といったことは少なくありません。
インピンジメント症候群や肩関節の不安定性(instability)は、しばしばそのきっかけとなります。インピンジメント症候群とは、骨と骨が衝突しあってその間に様々な組織が挟まって痛みを引き起こす状態です。
出典:http://www4.ocn.ne.jp/~miyanoue/shoul_pain.html
このように肩関節をとりまく筋肉の状態、負担のかかる不合理な使い方、インピンジメント症候群、肩関節の不安定性(instability)の状態が長期に持続することで、関節包のコンディションが低下し変性へと向かう可能性は高まります。
首・肩・背中は筋肉の連結が密になっているため、慢性的な肩こり・首こりの方は肩甲骨や肩関節をとりまく筋肉も硬くなる傾向にあります。(”傾向”としたのは、肩こり・首こりは筋肉の硬くなくても生じる場合があるからです)
首や肩だけでなく肩関節周囲の血流も悪くなり、関節包など肩を構成する組織へ十分な栄養がいかずに加齢という要因だけでなく、変性するのが促されてしまうということが推測できます。
このように五十肩によって、肩周辺にも影響が出るようなケースだけでなく、肩関節周辺の痛みから始まって五十肩になってしまうことも考えられ、それが発症する年齢を早めてしまうと思われます。
慢性的な肩こり・首こりは五十肩の発症を誘発する可能性があります。首肩こり+五十肩を二つ抱えますと相当つらいので、首肩こりでお悩みの方はできるだけ早く治療をはじめてほしいと思います。なお首こり・肩こりの治療は早い段階ではじめるにこしたことはありません。
次は五十肩を細かく分析して、みなさんが知りたい具体的な五十肩へのアプローチ方法を説明いたします。
執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。