概要
慢性的な肩こり・首こりが、マッサージと運動療法を組み合わせた治療で改善した例。
M様 / 東京都在住 / 57歳 / 男性 / 営業職
症状
・首肩こり
・頭痛
状態
高校生くらいから、かれこれ40年ほど慢性的な首肩こりに悩まされている。マッサージを受けると楽になるが、効果が持続するのは2~3日。
一年前から特にひどくなり始め、頭痛も出るようになってしまった。頭痛が出て心配だったので、脳神経外科を受診したところ、異常はないと言われた。
整形外科に行き首のレントゲンを撮ったところ、頚椎の椎間板が少し潰れているが、他に目立った骨の異常はみられないと言われた。
運動が好きで、休日はアクティブに身体を動かしたり、長時間ウォーキングをすることが多い。
身体を動かしている時は首肩こりは気にならないことが多い。
鍼は経験がなく、恐怖心があるためできるだけやりたくない。
見立て
僧帽筋、頭板状筋、頭半棘筋、肩甲挙筋などの首・肩周りの筋肉の緊張が強く、これにより首肩こりの症状を引き起こしていると考えられた。
頭痛は医療機関での診察を経て異常がないことが確認されており、筋緊張と比例関係にあるので、緊張性頭痛の可能性が高い。
首肩こりを引き起こしている根本的な原因としては、股関節や胸椎の可動性が低いため、良い姿勢を保ちづらいことが大きい。
また、良い姿勢をとろうとしても首・肩周りを力ませるような使い方になってしまっている。
まずは不良姿勢を助長してしまう筋肉(ハムストリングス、大胸筋、広背筋、胸鎖乳突筋など)の緊張を和らげ、姿勢を支えるのに適している筋肉(脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など)を強化していくことで、根本的なこりの原因を改善できると考えた。
治療
初期治療
鍼治療を受けることに抵抗があるため、マッサージと体操により筋緊張を和らげることとなった。
また、初期治療では集中的につらさを減らしていきたいため、あまり通院間隔は開けすぎず、1週間に1回のペースで治療を行った。
マッサージをすることによる筋肉の緩みはよく、治療開始してから早い段階で筋緊張は緩和し、6回目の治療でNRS 2〜3まで下がった。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。
中期治療
中期治療では不良姿勢の原因となっている部分の改善のため、運動療法をメインに治療を行った。
運動療法の内容は、胸椎や股関節の可動域を改善するストレッチや、姿勢を効率よく支えるために脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋を強化するトレーニングなど。
通院の頻度は初期治療同様、一週間に1回のペース。
初期治療と違うところはマッサージ+トレーニングの日とトレーニングのみ行う日を隔週ずつ交互に行い、マッサージの頻度は減らすが、トレーニングの頻度は減らさないように治療計画を立てた。
まずは可動域が順調に改善し、各筋の筋力も徐々についてきたことで、NRS 2〜3からNRS 0〜1 (日常生活で肩こりをほとんど感じない状態)まで自覚症状が下がった。
中期治療終了で治療回数は13回目。
後期治療
後期治療では中期治療同様にトレーニングを行いつつも、マッサージの頻度を徐々にあけていった。
約2ヶ月間マッサージをしなくても、良い状態を保てるようになったため、首こり・肩こり治療はゴール。
ゴールまでの総治療回数は19回。
コメント
M様が順調に改善し、ゴールに至ったポイントは、停滞しやすい中期治療において高い頻度で運動療法を行えたことです。
通常は中期治療で通院間隔をあけていくのですが、M様は非常に意欲的にトレーニングに取り組んでいましたので、トレーニングの頻度を落とさずに治療を進めさせていただきました。
トレーニングの間隔が空きすぎてしまうと、正しいと思っていたフォームがいつの間にか自己流になっていたり、メニューの内容がマンネリ化してしまい、なかなか思うように前に進めないこともあります。
一週間ペースでマンツーマントレーニングを行うことで、フォームの修正やメニューのアップデートを随時行うことができ、非常に効率よく根本原因を改善することができました。
執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。