巷で「インナーマッスル」という言葉をよく見かけたり聞くことはありませんか?
この「インナーマッスル」について、実際具体的にどこの筋肉なのか、何をしているのか、
よくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は「インナーマッスル」と「アウターマッスル」についてお話しするとともに、「インナーマッスル」を鍛えた方が良い理由やどのようなことに気をつけていくべきかについてお伝えしたいと思います。
インナーマッスル、アウターマッスルとは?
インナーマッスルと言うと体幹の筋肉と想像される方もいるのではないでしょうか?
実は「ローテーターカフ」とよばれる肩にある4つの小さな筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)もインナーマッスルであり、インナーマッスルは体幹の筋肉だけでなく上半身、下半身にも存在します。
インナーマッスルとは、深層筋とも呼ばれ、カラダの深部にある筋肉のことです。
インナーマッスルは、特定の筋肉の名称ではありません。解剖学的にみて、筋肉の存在する位置(表層なのか深層なのか)を指す呼び方です。インナーマッスル、つまり深層に存在する筋肉には特徴的な機能があるので、重要視されるのです。
具体的には「腹横筋」や「脊柱起立筋」「多裂筋」「腸腰筋」などがあります。
アウターマッスルは表層筋とも呼ばれ、カラダの外側を覆うようにしてついている筋肉のことです。
具体的には「僧帽筋」「大胸筋」「腹直筋」などがあります。
インナーマッスルは、長時間姿勢を維持することや細かい運動に優れています。
アウターマッスルは、瞬発的に強く大きな力を発揮することに優れています。
どちらが重要かどうかにつきましては、両方重要です。インナーマッスルだけあってもだめですし、その逆も然りです。
インナーマッスルとアウターマッスル、この2つがきちんと機能し、協力することが何よりも重要で、だからこそ様々な動きができるのです。
色分けから見る筋肉
赤身と白身
魚に赤身と白身があるのはご存知だと思います。
赤身はマグロやカツオといった回遊魚、白身はカレイやヒラメ、タイなどです。
ではなぜ赤、白と色に違いがあるのでしょうか。
答えは「ミオグロビン」の量です。
ミオグロビンは赤色の色素であり、筋肉の中に酸素を蓄える役割をしています。
持久的な運動には酸素が必要不可欠です。
ミオグロビンが多いということは、より多くの酸素を蓄えることができるということです。
酸素の蓄えが多い方が、より長時間の運動に優れています。
ミオグロビンが少ないということは、酸素の蓄えが少なく酸素をあまり必要としない瞬発的な運動に優れています。
そのため、ミオグロビンが多く含まれる赤身の魚は常に泳ぎ回っていて運動量が多く、
ミオグロビンの量が少ない白身の魚はあまり動かず獲物に飛びついて食べる時に瞬発的に動くのです。
ヒトのカラダにも赤白?
人間の筋肉にも同じように赤白があります。
先程インナーマッスル、アウターマッスルの特徴をそれぞれ挙げました。
インナーマッスルは長時間の姿勢維持や細かい動きに優れていました。
ミオグロビンの量が多い、赤身の魚と同じですね。
それもそのはずインナーマッスルはミオグロビンの量が多い赤筋の要素が多いのです。
インナーマッスルは別名(赤筋、遅筋)とも言い、発揮できる最大の力は弱いものの細かい調整や姿勢の維持・バランスをとる時に使い、持続力に優れ、様々な動きへの対応が可能です。
アウターマッスルは別名(白筋、速筋)とも言い、強く大きな力や発揮する時に使い、持続力が低く、短時間で力を発揮する筋肉です。
マラソン選手などの持久性のスポーツ選手では赤筋の割合が多く、短距離走や砲丸投げなど、瞬発的な運動が多いスポーツ選手には白筋の割合が多いです。
赤筋、白筋の特徴
ここで赤筋、白筋の説明を見ていきましょう。
“筋線維は組織化学的な性質の違い、代謝や機能の相違によって3種類に分けられる。
(基礎運動学第6版)
typeI線維はミトコンドリア酵素活性が高く、ホスホリラーゼ(phosphorylase :リン酸基を有機受容体に転換する酵素の一般用語)活性は低く、脂肪顆粒を多く含む。この筋線維は直径が細く収縮時間が長いことから遅筋(sIow muscle, sluggish muscle, tonic muscle)あるいはその色から赤筋(red muscle)と呼ばれる。typeII線維はミトコンドリア酵素活性が低く、ホスホリラ一ゼ活性が高く、脂肪顆粒が少ない。直径は太く収縮時間が短いことから速筋(fast muscle,quick muscle, phasic muscle)、色では白筋(white muscle)と呼ばれる。赤筋・白筋の区分は筋線維内の可溶性蛋白であるミオグロビン(myoglobin :ヘモグロビンに類似した筋肉内にある酸素運搬蛋白)の色に由来し、赤筋にはミオグロビンが多い。typeI線維とtypeII線維の中間的なものとして、ミトコンドリア含有量の異なる中間線維(intermediate fiber)がある。筋線維を単収縮の性質と代謝の相違から、SO(sIow-twitch oxidative)、FG(fast-twitch glycolytic) , FOG(fast-twitch oxida- tive-glycolytic)の3種類に分けることも多い(表3-7). FG線維やFOG線維の割合が多い筋を速筋、SO線維が多い筋を遅筋という。
魚類、鳥類、ある種の哺乳類では筋全体が白筋あるいは赤筋に区分できるが、人間では両方の筋線維がひとつの筋に混在している。”
まとめますと、まず筋線維は赤筋、遅筋と呼ばれる「type I線維」、白筋、速筋と呼ばれる「typeⅡ線維」、この2つの線維の中間となる「中間線維」の3つに分けられます。
魚類、鳥類などでは筋全体が白筋、赤筋どちらか一方ですが、人間では一つの筋に白筋、赤筋どちらも存在します。
インナーマッスルのトレーニング
インナーマッスルを鍛えることのメリット
では次にインナーマッスルを鍛えていくことでどういったメリットがあるのかお話ししていきます。
先ほどもお伝えした通り、インナーマッスルは長時間の姿勢維持の時に働く筋肉であるため
鍛えることで良い姿勢の維持につながります。
また良い姿勢を維持できるということは、アウターマッスルに過剰な負荷をかけずに済む。
そう、こりの改善にもつながるのです。
インナーマッスルは関節の安定性を高めます。
実は腕を上げる時には主働となる三角筋よりも先に腹横筋(インナーマッスル)が働きます。
足を上げる時やジャンプをする時も同様で腹横筋が先に動き、力の伝達、円滑な運動制御も行っているのです。
これを「フィードフォワード機能」と言います。
インナーマッスルはいわば「土台」のようなものですね。
運動をスムーズに行うため、普段良い姿勢を維持するためにもインナーマッスルが重要なのです。
鍛える時の注意点
インナーマッスルは確かに重要です。
しかし、インナーマッスルだけを頑張って鍛え続ければいいというのは間違いです。
例えば、下半身のアウターは歩行など、日常生活において必須なのですが、大きなパワーを発揮できる分、大きな負荷をかけてやらないと自然と衰えていきます。
加齢に伴う筋肉の萎縮を「廃用性筋萎縮症(サルコペニア)」といい、日常生活に支障をきたすことから生活習慣病の一種として問題視されています。
筋肉は何歳になっても鍛えることで強く大きく発達させることが可能です。
つまり、筋肉に大きな負荷を与えて、アウターを強化することも健康を維持する上で必要不可欠なのです。
そして、アウターを正しいフォームでトレーニングすること自体が、インナーの強化にも繋がります。
正しいフォームが維持できない場合、個別にインナーのトレーニングが必要となるというわけです。
まとめ
・インナーマッスル(赤筋、遅筋)は長時間姿勢を維持することや細かい運動に優れ、アウターマッスル(白筋、速筋)は瞬発的に強く大きな力を発揮することに優れる。
・インナーマッスル、アウターはお互いに協力しており、どちらか一方でなくどちらも必要。
・正しいフォームでトレーニングすることでアウター、インナーどちらも強化される。
・インナーマッスルを鍛えることで良い姿勢の維持、こりの解消、正しいトレーニングフォームにつながる。
今回はインナーマッスル、アウターマッスルについてお話ししました。
良い姿勢の維持や正しいフォームでの筋トレに必要な具体的な筋肉については、また別のブログでお話しさせていただきます。
そちらもご一読いただきますと幸いです。
参考文献
(基礎運動学第6版)
(農林水産省)
( 体幹筋機能のエビデンスとアスレティックトレーニング (opens in a new tab)” rel=”noreferrer noopener”>日本アスレティックトレーニング学会誌 第5巻 第1号 3-11(2019)
特 集
<腰部・体幹のアスレティックトレーニング>
体幹筋機能のエビデンスとアスレティックトレーニング)
(QOLの維持・向上に必要な筋肉は? e-ヘルスネット 厚生労働省)
執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome
帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業
鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者
私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。