【力を抜きたくても抜けない人必読!】人はなぜ、無意識に力んでしまうのか?その原因を深掘りします。力みを減らすだけで、体はもっと楽に動けます。

以前のブログで、「力み」が生まれる仕組みとしてアウターマッスル優位・インナーが働きにくい状態について触れていきました。



しかし、力みの問題はそれだけではありません。

力みは、

  • ・心の緊張や不安
  • ・日常の動きの癖
  • ・「力を抜く方法を知らない」まま頑張ること

など、さまざまな要因が複雑に絡み合って生まれます。

たとえば、集中すると肩が上がる、緊張すると呼吸が浅くなる、忙しいと体が固まっている。

「力を抜いた方が良い」と頭で分かっていても、いざ動くと勝手に力が入ってしまう…。

これは誰にでも起こり得る、いわば「脳の防御反応」です。

そして厄介なのは、この力みが「無意識の習慣」として体に染みつき、気づかないうちに「常にどこかに余計な力が入っている状態」になってしまうこと。

そこで本記事では、以前の内容を踏まえながら、

  • なぜ人は力んでしまうのか?
  • 力みが身体や動作にどんな悪影響を与えるのか?
  • 今日からできる、力みを減らすための改善ポイント

を「心理・習慣・脳の働き」という視点から深掘りしていきます。

力みとは何か? — ただの「がんばり」ではない

多くの方が「力み=がんばりすぎ」というイメージを持っています。

しかし実際には、力みはもっと複雑で、体が持っている 「防御反応」が関わっています。

人間の体は、危険を感じたり不安を抱いたりすると、自動的に筋肉を固めて身を守ろうとする「防御反応」が備わっています。

これは生命を守るために必要な反応ですが、現代ではこの防御反応がストレス、緊張、人間関係のプレッシャー、姿勢不良などによって過剰に働き、体を必要以上に固めてしまうことがあります。

また、日常の動きの癖や、長年の姿勢習慣によって、特定の筋肉が常に働きすぎている人もいます。

このような状態が積み重なることで、本人の自覚とは関係なく 「いつもどこかに余計な力が入っている」 状態が作られるのです。

なぜ人は力んでしまうのか? その代表的な理由

不安・緊張などの心理的要因

誰しもが一度や二度は、不安や緊張を感じたことがあるのではないでしょうか?

その時の体の状態を振り返ってみると、歯を食いしばっていたり、手足の指がグッと握ってしまっていたりするのではないでしょうか?

この背景には 「脳が安心・安全を確保しようとする働き」 が強く関わっています。

脳は常に、「いま体に危険が及んでいないか」を監視し続けています。

そのため「不安、緊張、慣れない状況、痛みの記憶など」を感知すると、脳は体を守るために筋肉を固めて動かないようにしようとします。

これは本能的な防御反応で、原始的な生存戦略とも言えます。

このとき起こっているのは、「危険かもしれない → とりあえず固めて守ろう」という脳の判断です。

つまり、力みとは「脳が安心・安全を感じていない状態のサイン」でもあります。

動きの癖・習慣によるもの

力みには「癖」が深く関係しています。

脳は生存戦略として、「過去に何度も使った動き方を安全だと認識する」性質があります。

たとえ、その動きが効率的でなくても、体に負担があっても、脳にとっては 「見慣れた動き=安心」 なのです。

そのため、

  • • 腰を反らせて立つ
  • • 肩をすくめて、頭を前に出して作業をする
  • • 背中を丸めて目線を下げて歩く
  • • お尻を締め続けて立つ

こういった癖が染みついていると、脳はその動きを「正しいもの」として採用し続けます。

しかし、その癖が身体の一部に負担をかけていたり、本来の動き方とズレていたりすると、

身体が「不自然さ」を補うために余計な力を入れる=力む動作 が生まれます。

アウターマッスルの過剰使用

アウターマッスルが過剰に働く背景にも、「脳の安全確保」が関係しています。

脳は、「大きくて強い筋肉を使った方が安定する」と判断しやすい傾向があります。

そのため、細かい調整を行うインナーマッスルが弱かったり、感覚が鈍くなっていたりすると、「ひとまず強い筋肉で固める」という選択をとります。

これを例えるなら、

ビスが緩んで蝶番がガタついている扉を、本来はビスを締め直して直すべきなのに、扉そのものを強く押さえつけて無理やり固定しようとしている状態に近いものです。

一時的には止まっているように見えますが、根本のビスの調整ができていないため、扉の開閉がスムーズにいかなったり、衝突してしまう部分が出てきて、ある特定の箇所に負担が集中したりします。

同じように体でも、インナーマッスル(=ビスを微調整する役目)が働かないと、アウターマッスル(=強く押さえつける力)が必要以上に頑張ることになります。

その結果、

  • ・二関節筋(首肩の付け根、腰、太ももの前、ふくらはぎ)に負担が集中
  • ・動きが「しなやかさを失い、力任せ」になりやすい

という「力みのループ」に入ってしまいます。

そもそも「力を抜く方法」を知らない

多くの人は、力を「入れる」練習はしてきましたが、

力を「抜く」練習をしたことがありません。

部活動・体育・仕事…

どれも「がんばる」「力を入れる」ことを求められる場面ばかりで、脱力を高める教育はほとんどされていません。

さらに現代は、

  • • スマートフォン、パソコン作業で姿勢が固まりやすい
  • • 長時間の座位姿勢
  • • ストレス社会
  • • ブルーライトにさらされることが多いため、脳への刺激が多い

といった背景から、脳が「警戒モード」になりやすく、脱力の経験自体がありません。

そのため、力を抜こうとしても、どうして良いかがわからない人がほとんどです。

力みが招くデメリット

力むことは「頑張っている証拠」のように感じますが、実際には体の動作効率的を低下させ、痛みや不調の原因になることが少なくありません。

ここでは、力みが引き起こす3つの代表的なデメリットについて解説します。

身体が硬くなる

力みがある状態では筋肉が常に収縮し続けてしまい、本来あるべき 「収縮-弛緩のリズム」 が失われます。

弛緩の時間がなくなることで、筋肉は徐々に縮こまり、伸びにくい状態になります。

その結果、ストレッチなどで体を伸ばそうとしても十分に伸ばすことができず、「ほぐしているのに、すぐ元に戻ってしまう」「硬いまま変わらない」という感覚につながります。

これは柔軟性の問題というより、力みが抜けていない状態が続いていることによって起こるものです。

疲れやすい/パフォーマンスが落ちる

無意識の力みは、常にエネルギーを消費します。

立っているだけ、座っているだけの場面でも筋肉が働き続けるため、体は休む時間を失い、疲労が溜まりやすくなります。

その結果、

  • • 動きが重くなる
  • • 集中力が続かない
  • • 作業や運動の質が落ちる

といった状態が起こりやすくなり、スポーツだけでなく仕事や日常生活のパフォーマンスも低下していきます。

結果として、「頑張っているのになかなか成果が出にくい」状態に陥ってしまいます。

慢性的な痛みやケガのリスクが高まる

力みがあると、身体への負担は一部分に集中します。

本来、動作中の負荷は全身で分散されるべきですが、力んだ状態ではそれがうまく行えず、同じ場所にストレスがかかり続けます。

この状態が続くことで、

  • • 首や肩、腰などの慢性的な痛み
  • • 動作中の違和感
  • • 思わぬタイミングでのケガ

につながりやすくなります。

力みを減らすための改善のヒント

力みが出る多くの場合は、脳と体が 「安全を確保しようとした結果」 で起こる反応です。

だからこそ、無理に「力を抜こう」とするのではなく、体が自然と力を抜ける条件を整えてあげることが大切になります。

ここでは、日常生活の中で実践しやすい改善のヒントをお伝えします。

呼吸を整える

呼吸は、力みと深く関係しています。

力んでいる時ほど呼吸は浅くなり、息が吐けなくなってきます。

その結果、交感神経が優位になり、体はさらに緊張し、力みが抜けにくい負のスパイラルに陥ってしまいます。

そのため、まず意識したいのは、「吸うこと」よりも「しっかりと吐くこと」です。

息を吐き切れるようになると、体内のガス交換がスムーズになり、脳への酸素供給も安定します。

その結果、身体は自然とリラックスモードへ切り替わり、余計な力みが入りにくい状態が作られていきます。

インナーマッスルが働くポジションを作る

力みやすい人ほど、姿勢を「頑張って保とう」とする傾向にあります。

しかし本来、安定した姿勢とは、意識的に頑張らなくても必要最小限の力で保てる状態です。

例えば、

  • ・骨で支えられている感覚がある
  • ・余計な力を入れなくても、立つ・座ることができる
  • ・呼吸が楽に深く行える

こうした感覚が出てくると、アウターマッスルに過剰に頼らなくても、体は安定しやすくなります。

「正しい姿勢を意図的に作る」よりも、「楽に安定できる位置を見つける」という視点が、力みを減らす大きなポイントになります。

力まない感覚(脱力)を覚える練習

体の不調を訴えている方の多くは、力みがあることに気がついていないことが多いです。

そのため、「力を抜こう」としても、体はどうしていいのか分からず、結果的にまた力んでしまいます。

おすすめなのは、「自分の体を俯瞰的に観察し、動きを言語化してみること」です。

「体がどこにあり、どのように動いたのか」を認識できなければ、脳は安心・安全を感じることができません。

たとえば、

床に横になり、

  • ・体と床が触れている部分
  • ・左右の差
  • ・呼吸のしやすさ
  • ・手足の先までの感覚

こうした情報を丁寧に感じ取るだけでも、脳は「いまの体は大丈夫だ」と理解し始めます。

小さな動きで構いません。

自分の体を理解できるようになることで、自然と無駄な力は抜けていきます。

視線・重心など、力みを生む環境を整える

力みは、体の内側だけでなく、環境の影響でも生じます。

たとえば、

  • ・スマートフォンを見る時間が長く、視線が常に下を向いている
  • ・座るとき、いつも同じ側の足を組んでいる
  • ・ヒールやハイカットの靴を履く機会が多い

このような状態が続くと、関節のセントレーション(関節が無理なく真ん中に収まって動ける状態のこと)が崩れ、無意識のうちに体は緊張を強いられます。

姿勢評価の基準として「解剖学的基本肢位」がありますが、これは常にその姿勢を保つためのものではありません。

このポジションでは前後・左右の筋肉バランスが整いやすく、関節への負担が最小限になるという「基準点」です。

関節には多くの感覚受容器が存在しており、負担がかかる状態が続くと、脳に危険信号が送られます。

その結果、体は防御反応として緊張を高めてしまいます。

まずは視線・重心・生活環境を見直すこと。

それだけでも、力みは確実に減っていきます。

まとめ

力みは、「頑張りすぎ」でも「意識が低いから」でもありません。

多くの場合、これまでの生活習慣や姿勢、体の使い方の中で、無意識のうちに身についた体の反応 です。

しかし、その力みが続くことで、

  • ・身体は硬くなり
  • ・疲れやすくなり
  • ・痛みや不調が起こりやすくなる

という悪循環が生まれてしまいます。

大切なのは、無理に力を抜こうとすることではなく、身体が自然と力を抜ける状態を作ってあげることです。

「力を抜くこと」は、決して手を抜くことではありません。

むしろ、より効率的で、身体にやさしい使い方へ切り替えることです。

もし、

「いつも力が抜けない」

「気がつくと肩や首に力が入っている」

そんな感覚があるなら、

それは改善のサインかもしれません。

今回の記事が、ご自身の身体の使い方を見直すきっかけになれば幸いです。


執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo

湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach

目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。