投稿者「肩こりラボ」のアーカイブ

「首肩が疲れやすい人」に共通する姿勢、頭部前方位を徹底解説

首がすぐに疲れる、肩がこる、頭痛や眼精疲労を感じやすい。

そんな方に共通してよく見られるのが頭部前方位(Forward Head Posture) です。

「自分は頭が前に出ているかもしれない」と自覚されている方も多く、比較的イメージがしやすい姿勢の一つです。

頭部前方位の基準としては、「耳たぶが肩より前に出ている状態」を指します。

スマートフォンやパソコンの使用が増えた現代人には特に多く、首や肩はもちろんですが、胸・背中・腰、さらには呼吸や自律神経にも影響を与えます。

今回は、体の専門家の視点から、

  • ・頭部前方位による体への影響
  • ・なぜ頭は前に出てしまうのか
  • ・改善するための具体的なアプローチ

について、わかりやすく解説していきます。

頭部前方位とは?

頭部前方位とは、簡単に言うと 「頭が肩より前に出ている姿勢」 です。

頭が前に出ることで、首の自然なカーブ(頚椎の前弯)が減少し、顎が前に突き出たり、肩が丸まったりしやすくなります。

その結果、頚椎全体で頭の重さを支えることができなくなり、頚椎や首肩の筋肉、椎間板などの組織に大きな負荷がかかりやすくなります。

頭の重さはおよそ4.5~5.5kgあります。

これは2リットルのペットボトルを2〜3本持っているのとほぼ同じ重さです。

本来は頚椎の自然なカーブによりこの重さをうまく分散していますが、頭の位置がわずかに前へずれるだけで、負担のかかり方が大きく変わります。

たとえば、5kgのお米を購入し、その袋を腕を伸ばしたまま長時間持っているところを想像してみてください。

最初はそれほど重く感じなくても、時間が経つにつれて腕や肩がどんどん疲れてくるのは想像できるのではないでしょうか。

それと同じで、頭が前に出た姿勢では、首肩にとっては、「重い頭を無理やり支えていること」を強いられることになります。

さらに、頭が 1インチ(約2.5cm)前方へ移動するごとに、首の負荷は約4〜5kg増える とされています。

例として、

  • ・頭が5cm前に出る → 負荷が 8〜10kg増加 → 合計14〜15kgの負荷(頭の重さと合わせて)
  • ・頭が7.5cm前に出る → 負荷が 12〜15kg増加 → 合計17〜20kgの負荷

となり、理想的な姿勢と比べると首肩にかかる負担は 2〜4倍 に増加します。

普段は自分の頭の重さを意識することはありませんが、こうして見ると、少し頭が前に出ているだけで首肩がどれほど頑張っているかがよく分かります。

「なんとなく続く首こりや肩の張り」は、実は小さな姿勢のズレが大きな原因になっていることが多いのです。

頭部前方位が起こる原因

デジタルデバイスの過使用による姿勢不良

現代ではスマートフォンやパソコンを長時間使うことが多くなっています。

長時間見続けることで、どうしても頭が前に出やすくなります。

画面に集中すればするほど背中は丸まりやすく、胸もつぶれ、首にかかる負担はさらに増加していきます。

毎日の習慣が積み重なることで、頭部前方位は「その人の標準姿勢」として定着し、肩こりや慢性的な首の張りも起こりやすくなります。

首(頚椎)周囲の筋力低下

頭が前に出た姿勢では、顎が上がりやすく、首の前後の深層筋である後頭下筋群や椎前筋が十分に働きにくくなります。

これらの筋肉は頭を正しい位置に保つ役割があるため、弱くなると頭を支えることがより難しくなり、頭部前方位をさらに助長します。

背中(胸椎伸展)の可動域低下

頭が前に出ると、背中の中でも特に胸椎上部が丸まりやすくなります。

背中が丸く硬くなると、胸を開いて伸ばす動き(胸椎伸展)が制限されます。

その結果、頭を後ろに戻すことが難しくなります。

「背中が丸い → 頭が前に出る」の悪循環になるため、常に負担がかかり続けてしまうことになります。

体幹の筋力低下による骨盤の後傾位

体幹の筋力が低下すると、骨盤が後傾しやすくなり、結果として背骨全体が丸まり、頭は自然と前へ移動します。

以前のブログで「骨盤後傾位の必要性」に触れた通り、「骨盤後傾は良いことではないの?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

以前のブログはこちら

日常生活で無意識に出てしまう骨盤後傾は、姿勢を維持できない代償的な状態であり、改善が必要です。

トレーニング中に意図的に骨盤後傾をコントロールする場合とは、意味が異なります。

座位・立位といった日常姿勢では、骨盤はニュートラル〜前傾位の方が楽に姿勢をキープでき、効率良く体を使うことができます。

そのための姿勢保持に必要な体幹の深層筋群の働きは欠かせません。

頭部前方位の改善のアプローチ

前項で出てきた首周囲の筋力強化、背中の可動域獲得、体幹筋力の獲得を含めてのアプローチ方法をご紹介していきます。

エクササイズの順番としては、首の筋力強化は後半に持ってきた方が良いと考えています。首より下の部分をある程度整えてからの方が、首のトレーニングが効果的になりやすいです。

チェストオープナー

横向きになり、上側の胸を開いて胸の筋肉を伸ばしていきます。

胸が開きにくい場合は腰の反りが出やすいので、股関節をしっかり曲げておくことで腰の反りを減らすことができます。

リバースプランク

後ろに手を当てて、膝を立てた状態で座ります。

腕に体重を乗せるイメージで、胸を張りながら持ち上げていきます。

胸のストレッチ感、肩甲骨内側の筋肉の収縮感を感じます。

顎引きエクササイズ

壁にお尻、背中、頭を付けてあぐらをかいて座ります。

後頭部で軽く壁を押しながら、顎を引いていきます。

強い力で行うと首の外側の胸鎖乳突筋の疲労感を感じますので、その疲労感が感じないように行ってください。

まとめ

現代では頭部前方位の姿勢の方が非常に多く、頭が前に出るだけで首肩へ想像以上の負担がかかっています。

症状が出てはじめて気づくことがほとんどですが、具体的な数字で見るとその影響の大きさがとても分かりやすいかと思います。

デジタルデバイスを使う時間が長い現代だからこそ、症状改善だけでなく、予防の観点からも日々の運動習慣は重要です。「頭が前に出ている気がする」

「背中が硬い」

「骨盤が後傾してしまう」

このような心当たりがある方は、ぜひ今回のエクササイズを試してみてください。

何をしたら良いかわからない場合や、自分の状態を一度しっかり見てもらいたい方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。


執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo

湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach

目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。


気合いや根性はいりません!肩こり・首こり改善の本質は“力を抜ける身体”を取り戻すこと。筋力アップより先に必要なのは“力を抜く技術”です。

体の慢性的な不調を抱える方でしたら、「力を抜いてください」という言われた経験が一度はあるのではないでしょうか?

「自分では力を入れているつもりはないのに…」そのように感じる方は意外と多いように感じています。

実際、慢性的な首肩こりや腰痛、不良姿勢に悩まされている方の多くは、気がつかないうちに常にどこかに力が入っている状態で生活をしています。

たとえば、肩をすくめたまま仕事をしていたり、立っているだけでお尻や太もも、ふくらはぎに余計な力が入っていたりするなど、無意識の「力み」が習慣化してしまっているのです。

この無意識の力みがある状態でトレーニングをしても、力みがある箇所を強化することにつながることもあるため、場合によっては力を抜いてからトレーニングをしていく方が良いこともあります。

「トレーニングを頑張っているのに症状が改善しない」という方は、必要以上に力んで動こうとしてしまっている習慣が影響しているかもしれません。

そのために今回は「力を抜く=リラックス」の必要性についてお伝えしていきます。

力を抜くとは

 力を抜くと言われても、自分自身に力が入っているかどうかに気がついていない方が圧倒的に多いです。

日常生活での偏った体の使い方により、体にアンバランスが生じ、それが日常化されることで力んでいる状態が「普通」になってしまっています。

「力を抜く」ための第一歩は、“自分が力んでいること”に気がつくこと

力みの多くは無意識に起こっているため、まずは「自分は今、どこに力が入っているだろう?」と意識を向けることが大切です。

たとえば、こんな場面を思い出してみてください:

• 電車の中で立っているとき、足に力が入りすぎていないか?
吊り革をつかんでる腕や肩、指先に力みが出ていないか?

• パソコン作業中、肩がすくんでいたり、腕に無駄な力が入っていないか?

• 座っているとき、腰や太ももを必要以上に緊張させていないか?

日常生活で無意識的に身についてしまった力みの習慣なので、ご自分では気がつけないことも多いです。

そんな時は他者から気づきの助言をいただけることで、発見しやすくなることもあります。

私たちは運動を通じて、力みの気づきに対してもお伝えさせていただいております。

力み過ぎの代償について

アウターマッスルが優位になる

人間の体は大きな力を発揮させようとするとアウターマッスル(二関節筋)が優位に働きます。

これ自体は自然な反応ですが、日常的にこの状態が長期に続くと、身体の動きは硬くなってしまいます。

今回は脊柱(背骨)を例に取り上げます。

背骨には計24個の骨(頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個)がS字状に連なり、それぞれが細かく動くことでしなやかな動きや楽な姿勢をとることが可能になります。

この細かな動きの実現にあたっては、インナーマッスルがしっかりと機能していることが大切になります。

それでは、アウターマッスルが優位になると背骨はどうなるのでしょうか?

結論として、背骨が「1本の棒」のように動き、一つ一つの骨の動きが小さくなります。

その結果、背中や腰の硬さ・首肩のこり、全身の疲れやすさにつながっていきます。

インナーマッスルが使いにくくなる

アウターマッスルが過剰に働くと、インナーマッスルが機能しにくい状態となります。

インナーマッスルは、関節や背骨を安定させる「支えの筋肉」です。

しかし、表層の筋肉であるアウターマッスルが常に緊張していると、インナーマッスルの働きが相対的に弱くなり、体の安定性や繊細な動きが失われてしまいます。

その結果、「常に力を入れて姿勢を保つ」「楽にゆっくり動かすことが苦手」という状態になります。

力を抜いて、楽に動かすことを意識することで、アウターマッスルの働きを抑えて、インナーマッスルが自然に機能しやすくなります。

そのためには力が抜けることが第一歩となります。

体の燃費が悪くなる

常にどこかに力が入っていると、動作のたびに余計なエネルギーを使ってしまいます。

本来ならもっと楽にできる動きでも、必要以上に力を入れてしまう。

いわば、「エネルギーの無駄遣い=燃費の悪い状態」となります。

このような状態では疲れやすく、呼吸が浅く、回復しにくい状態となります。

特に肩や胸、背中の緊張は呼吸を浅くし、体を常に戦闘モード(交感神経優位)にしてしまいます。

リラックスしたい場面でも力が抜けず、体を固めていることが多くなってしまいます。

当然、首肩こりや腰痛の慢性化との結びつきは強くなってきます。

一方で、しっかりと力を抜けるようになると、必要なときに必要な分だけ力を発揮できる「省エネで動ける体」になります。

力を抜くことは、無理なく効率よく動くために必要不可欠なこととなるのです。

力を抜くために必要なこと

「力を抜きましょう」と言われても、実際にどうすれば良いか分からない方も多いと思います。

ここでは、日常生活やトレーニングの中で実践しやすい3つのポイントを紹介します。

呼吸を整える

力んでいる時ほど、呼吸は浅くて速くなり、息を吐く量が少なくなります。

「5秒で息を吸って、5秒で息を吐き、5秒息を止める」というリズムで呼吸してみましょう。 (1サイクル15秒、1分で4呼吸のゆったりペース)

仰向けで行うと、背中〜腰が少しずつ床に沈むように緩んでいく感覚が出てくるはずです。

床に触れる面積が増えていくのは、力が抜けてきたサインです。

この「緩んでいく感覚」を是非、丁寧に味わってみてください。少しずつ心地よさを感じてくると思います。

自分の体に意識を向ける

力みが強い人ほど、自分の体の状態を感じ取ることが苦手な傾向があります。

まずは「今、自分の体のどこに力が入っているか?」に気がつくことから始めましょう。

立っているとき、足の裏の感覚はどうか?

足の指先の輪郭までイメージできるか?

肩やお腹、太ももなど、どこかに「余分な力み」を感じたら、その部分の力みをなくすイメージを持ちながら、息を吐きながら緩めてみてください。

意識を向けることで、少しずつ「力が抜けた状態」がわかるようになります。

脊柱の分節運動

前述のように、背骨は24個の骨が連なってできています。

1つ1つの骨が順番に動く「分節運動」を意識することで、背骨の硬さを緩め、インナーマッスルを目覚めさせることができます。

キャット&ドッグ、ロールダウンのエクササイズではこの分節運動が意識しやすいです。

① キャット&ドッグ

・四つ這いの状態からお尻→腰→背中と順番に背骨を丸めていきます。

・丸められたら、一度息を吸って、吐きながらお尻→腰→背中と順番に背骨をまっすぐに戻していく。

②ロールダウン

・膝を立てて座り、両手を太もも後ろに置きます。

・お尻→腰→背中と順番に背骨を丸めながら、仰向けの状態になっていきます。

※勢いよく体が倒れてしまう場合は、両手で太もも裏を支えるように軽く把持してスピードをコントロールしながら行います。

どちらのエクササイズも丁寧にゆっくり行うほど、無駄な力が抜け、体が軽く感じられるようになります。

まとめ

「トレーニング=頑張る」「力を入れること=良いこと」と思われがちですが、実際には、過剰な力みが取れることで、体は本来の動かし方ができるようになります。

力を抜くことで、関節はスムーズに動き、体の軸を感じながら安定して楽に動けるようになっていきます。

つまり、脱力とは「悪い」ことではなく、必要な力だけを効率よく使うための準備なのです。

無意識に力を入れてしまう癖は、長年の習慣から生まれています。

「今、どこに力が入っているかな?」と気がつくことから始めるだけでも、体は少しずつ変わっていきます。

力を抜くことを意識できるようになると、

・動きが軽くなる

・姿勢が安定する

・疲れにくくなる

・呼吸が深くなる

といった良い変化が自然に現れます。

慢性的な痛みや不調を改善していく上でも欠かせない変化になります。

トレーニングは「力を入れる練習」だけではなく、「不必要な力を抜いて、最小限の力で動かすこと」も大切です。

まずは一度、深く息を吐き、体の力をふっと抜いて、自分の体の状態を確認してみてください。

それが、「省エネで楽に動ける体」をつくる第一歩です。

前回の記事はこちら

執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo

湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach

目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。


Yahoo!ニュース(2025/10/9)にもんでも治らない「肩こり」の原因についての記事が掲載されました。

もんでも治らない「肩こり」の原因に関する取材がYahoo!ニュースに記事として掲載されました。

肩をもんでも治らないことには肩そのものだけでなく、腹筋や股関節も関係している場合があります。

また、肩こりの原因だけでなく、なりやすい方やその対処法についても解説しております。
ご興味のある方は是非ご覧ください。

Yahoo!ニュース

呼吸のしづらさや首肩こりが4回の治療で改善したケース|ケースレポート

概要

呼吸のしづらさや首肩こりが4回の治療で改善したケース

Y様 / 東京都在住 / 43歳 / 女性 / 会社員

症状

• 半年前から就寝時の食いしばりと呼吸の浅さ

• 深呼吸しづらく、特に吸うことが難しい

・起床時に強い疲労感あり

• 首肩こり、頭を回すと首に痛みあり

• 頭痛

• 日常生活に支障を感じる状態

NRS:初診時 7

状態

• 咬筋・側頭筋・胸部(大胸筋)・頸部(胸鎖乳突筋、僧帽筋、頭半棘筋) の過緊張

• 胸椎柔軟性不足

• 骨盤後傾・太もも裏の支持不足

・もも裏の柔軟性不足

見立て

就寝時の食いしばりによって首や肩の筋肉(咬筋・側頭筋・胸鎖乳突筋・僧帽筋)に過緊張が生じ、頭痛を助長していると考えられる。

さらに胸椎の柔軟性が不足していることで胸郭の動きが制限され、浅い呼吸や疲労感を強めている。

また、日常生活で骨盤が後傾し、太もも裏の筋肉を十分に使えていないため、座位姿勢では頭部が前方に突き出やすく、首や肩への負担を慢性的に増加させている。

さらに、精神的なストレスと身体的な緊張が互いに影響し合い、頭痛や疲労感、不眠といった症状を助長していると考えた。

まずは呼吸の改善と首肩のこりの緩和を優先し、胸椎の柔軟性を高めるとともに、骨盤と太ももの支持性を取り戻すことで安定した座位姿勢を獲得し、根本的な改善を目指していく。

治療

1回目

もみ返しが出やすいことを考慮し、刺激量を抑えて行いました。

特に咬筋・側頭筋・胸鎖乳突筋・僧帽筋を中心に丁寧にマッサージを行い、さらに背部や下肢も含めて全身を緩めることでリラックスを促しました。

あわせて胸椎と胸部の可動性を高めるストレッチを実施し、セルフケアとしてタオルストレッチやチェストオープナーをお伝えしました。

治療後には「吸いやすくなった」と呼吸の改善を実感されていました。

2回目 

初回から1週間後のご来院。

ご自宅でストレッチを継続されていたこともあり、胸椎の柔軟性は初回よりも高まっていました。

その結果、呼吸のしやすさや首肩の辛さの軽減が見られ、NRSは7から5へと改善。

治療ではもも裏(ハムストリングス)や股関節周り(腸腰筋)を入念にほぐしました。

今回は座位での姿勢確認を行い、もも裏のストレッチを追加で指導しました。

3回目

さらに1週間後のご来院。

治療を重ねることで呼吸が背中に届く感覚を獲得され、頭痛の頻度や全身の疲労感も軽減。

NRSは4まで改善。

座位姿勢も日常から意識できており、安定性も向上。

日常生活における辛さが和らいできていることをご本人も実感されていました。

4回目

約3週間後のご来院。

頭痛はほとんど消失し、就寝時の食いしばりもなくなっていました。

起床時の疲労感もなく、呼吸も楽に行える状態に。

水分不足によって一時的にめまいが生じることはあったものの、日常生活にはほとんど支障をきたさなくなっていました。

総治療回数は4回、治療期間はおよそ1ヶ月で症状の大部分が解消され、治療のゴールに到達しました。

コメント

今回の改善につながった大きな要因は、セルフケアを早い段階から習慣にできたことです。

タオルストレッチやチェストオープナーを就寝前に取り入れたことで呼吸が深まり、首や肩の緊張が自然と和らいでいきました。

継続するうちに姿勢の意識も高まり、椅子に座るときに太もも裏で体重を支える習慣が身につきました。

その結果、首や肩への余計な負担が減り、頭痛や疲労感も和らいでいきました。

症状を改善していく上で大切なのは、特別なことではなく小さな工夫を毎日少しずつ続けることだと考えています。

こうした積み重ねが確実に体を変えていきます。


執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome

帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者

私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。


【テレビ出演のお知らせ】フジテレビ『かのサンド』

このたび、フジテレビ『かのサンド』にて、『肩こりラボ』が紹介されました!

番組では、肩こりラボの院長鴻崎が、狩野英孝さん・サンドウィッチマンさんに、パワープレートを使った運動指導を行う様子が放送されております。

芸能人も驚かれた、当院オリジナルのメニューをご来院の皆さまにもご体験いただけます!

ご興味ある方は、是非お気軽にスタッフまでお問い合わせくださいませ。

右肩の可動域制限にお悩みのケース|ケースレポート

概要

I様/東京都在住/45歳/女性/会社員

症状

• 髪を結ぶ・洗うなどの動作が困難

• 肩を90度以上あげられない

状態

2024年5月、マシンピラティス中に右肩をひねって痛めたのがきっかけ。

それより前から、四十肩のような違和感はあった。

整形外科でのMRI検査にて関節唇損傷が見つかり、薬やリハビリを受けたものの、肩の動きは改善せず、10月に当院を受診。

来院時には強い痛みはなく、肩の可動域制限が一番の悩み。

背中側の筋肉(広背筋・大円筋・僧帽筋上部・肩甲挙筋)の緊張が強い。

また、肩甲骨を正しい位置に安定させた状態「パッキング」ができず、

肩を上げようとすると力ませて肩をすくめる「シュラッグ」が出てしまっていた。

見立て

MRIによる画像診断にて関節唇損傷と診断。

炎症や痛みは落ち着いている。

そのため、可動域の制限は筋緊張・姿勢の崩れ・肩甲骨の使い方が主な原因と考えた。

GHJの安定性の再構築、肩甲帯および体幹との協調性の改善、ローテーターカフの強化を行うことで症状の改善を見込めると考えた。

治療

初期は鍼やマッサージを用いて筋肉の緊張を緩めつつ、肩がすくまないようインナーマッスルエクササイズを行った。

治療のペースは週1回で、自宅でのセルフトレーニングを併用していただいた。

肩を正しく動かすため、肩甲骨と腕の連動(肩甲上腕リズム)や肩甲骨パッキングも練習。

徐々に運動療法をメインに移行し、姿勢を安定させるためにお腹や背中の筋肉にもアプローチ。

肩のインナーマッスルが強くなってきたことで行うトレーニングもより高度なもの(胸より高い高さ)に移行。

以前のようなシュラッグや代償動作も自然と消え、髪を結ぶ・洗うなどの日常動作もスムーズにこなせるようになり、今回の治療はゴールとなった。

コメント

肩のトレーニングは、動きが地味で繊細な分、気づかないうちに自己流になってしまいがちです。

自己流で続けてしまうと、本来働かせたい筋肉がうまく使えず、かえって他の筋肉に負担がかかってしまうケースも多く見られます。

I様は週1回のペースで動きを丁寧に確認し、その都度修正しながら正しい使い方を身につけていかれました。

すぐに修正できる環境が整っていたことが大きな強みだったと思います。

地道な積み重ねが、肩の可動域とスムーズな動作の回復につながりました。

正しい動かし方をコツコツ習得できたことが、今回の回復の一番のポイントだったと感じています。


執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome

帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者

私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。


慢性的な腰痛にお悩みのケース|ケースレポート

概要

S様/東京都在住/45歳/男性/会社員(エンジニア)

症状

・腰痛

状態

もともと慢性的に腰の張り感はあったが、直近3日で急激に悪化。

特にベッドから起き上がる動作が辛い状況。

ただし、しびれや放散痛はなく、歩行も可能。

仕事ではパソコンを使うデスクワークが中心で、長時間座っていることが多く、深夜まで作業が及ぶ日もある。

また、身長が高く体格も大きいため、職場の低いデスクが身体に合っておらず環境的なストレスとなっている。

見立て

腰の張りを訴える部分と一致して、最長筋・腸肋筋に顕著な緊張が確認された。

放散痛やしびれ、感覚異常はみられず、器質的な異常の可能性は低く、筋スパズムによる痛みと考えられる。

姿勢が崩れている要因として、以下の点が挙げられる。

•胸椎と股関節の柔軟性不足

•ハムストリングスの過緊張による骨盤の後傾


これらが相まって、腰部に慢性的なストレスがかかる姿勢が定着したと考えられる。

今後は、

•鍼やマッサージによる筋緊張の緩和

•胸椎・股関節の柔軟性改善

•環境に適した座り姿勢の体得


といったアプローチによって改善を図る。

治療

初回は、過緊張した筋肉を緩めることを最優先し、鍼とマッサージにて治療。

低いデスク環境により骨盤が後傾しやすくなり、その影響でハムストリングスが緊張し、姿勢不良を助長している状態だったため、

•胸椎と股関節の柔軟性を高めるエクササイズ

•骨盤を立てた正しい座位姿勢の感覚づくり


も同時進行で行い、体の使い方を再学習していった。

治療は1週間〜10日に1回のペースで継続。

5回目には腰痛の自覚症状はゼロに。

その後は、元々気になっていた首・肩の不調へのアプローチに治療の主軸を移行。

以降も腰痛が再発することはなく、良い状態を維持できているため、腰に対する治療はゴールとなった。

コメント

「骨盤を立てて、良い姿勢を保ちましょう」

簡単に聞こえるかもしれませんが、いざやってみると

「取りたくても取れない」「どうすればいいかわからない」「何が正解?」と、

頭に?マークが浮かぶ方も多いのではないしょうか。

長年染みついた体の使い方や癖は、頭で分かっていても身体がついてこないことも少なくありません。

姿勢改善に必要なのは、自分の体がどう動いているかを知り、正しい動かし方と、それを感じられる感覚を身につけることだと考えています。

それがわかれば、力で無理やりキープするのではなく、力みなく心地よく保てる姿勢へと変わっていきます。

体の使い方を一緒にひも解き、日常の動きの中で自然に実践できるよう、自分の体と会話するように整えていくお手伝いができればと思います。


執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome

帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者

私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。


長時間の座り姿勢による肩や腰、腕の慢性的な負担やこりが改善したケース|ケースレポート

概要

H様/東京都在住/30歳/女性/会社員

症状

背中・腰・肩・腕・手にかけての慢性的な筋緊張とこり

状態

仕事柄座り時間が長く、日常でも背中を丸めてスマートフォンを使っている。

レントゲン上での問題はなし。

お身体をみていくと

・胸椎伸展制限

・ヒップヒンジ機能の低下(腰椎過伸展)

・骨盤後傾位

・体幹筋群の弱化(腹横筋、臀筋、腸腰筋)および動作時にうまく働かない

といった状態だった。

見立て

体幹筋群(腹横筋・腸腰筋・臀筋)の弱化により、骨盤が後傾し、胸椎伸展機能も低下している。

また股関節可動制限のため、立ち座り・前屈動作を腰椎で代償。

その結果姿勢保持をうまくできず、首・肩・腕・腰などに過剰な負担がかかり、慢性的なこりにつながったと考えられる。

器質的異常はなく、体幹安定性と股関節・胸椎の可動域を高めることで改善が見込める状態であると考えた。

治療

まずは自覚症状の緩和を第一にマッサージ中心の治療を行った。

刺激に対しては敏感であるため、鍼や強圧は避け、徒手で首・肩・腰を中心に丁寧にほぐしていった。

運動では、胸椎や股関節の柔軟性向上を目的にストレッチを行い、骨盤の動き(前後傾)を体に覚えさせながら、座り姿勢の改善を図った。

可動域の改善ととともに、腸腰筋・腹横筋・大臀筋といった体幹筋のトレーニングを開始。

それに伴い、立ち上がりやスクワットなども導入し、下肢の安定性も高めていった。

治療を重ねる中で身体の反応が良くなり、マッサージの時間は徐々に短縮。

その分トレーニングに充てる時間を増やし、身体の機能的な改善をより深めていく流れをつくることができた。

継続的な治療と運動指導により、姿勢が安定し、日常生活での負担も軽減。

「安定した姿勢を無理なく保てる」ことをゴールとし、改善が見られた。

コメント

日常生活で何が身体に負担をかけているのかを一緒に見つけ、その原因に丁寧にアプローチしていくことが何より大切だと感じています。

こりは単なる筋肉の硬さだけでなく、職業や生活習慣、趣味、気候など、さまざまな要素が複雑に関係して生じています。

筋肉を緩める、関節の動きを良くする

それも大切ですが、なぜそうなってしまったのかという背景に目を向けることが、根本的な改善につながります。

一時的な対処ではなく、体と生活全体を見据えたサポートをこれからも大切にしていきたいと考えています。


執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome

帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者

私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。


デスクワーク姿勢が原因の肩こりが解消されたケース|ケースレポート

概要

K様/東京都在住/30歳/女性/会社員(プログラマー)

症状

肩こり

状態

以前(学生時代)から肩こりはあったが、任される仕事量の増加によって悪化。

PCに向かっている時間は1日8時間程度。

辛い箇所は僧帽筋上部で、重だるい感じがする。

治療院に行くこと、鍼マッサージを受けるのも初めて。

運動は得意ではない。

見立て

長期休暇で仕事がお休みの時は症状が落ち着いており、忙しさとともに自覚症状も強くなっていることから長時間のデスクワークでの不良姿勢が肩こりの主な原因と考えた。

お体を見ても、

・骨盤が後傾し、上体が前に崩れやすい

・胸椎の硬さが強く、胸が開きにくい

・首の前弯がやや強く、反らすと背中が丸まってしまう

・骨盤を前傾させる動きができず、体幹の安定性も弱い

・頭が垂れてしまい正しい姿勢がとれない

といった状態だった。

これらの要素により、首や肩周囲の筋緊張が強まり、特に僧帽筋上部のこりを引き起こしているものと考えた。

まずはマッサージと鍼で筋緊張を緩めることからスタート。

そのうえで、骨盤前傾や胸椎伸展、体幹・肩甲骨周囲筋の姿勢保持機能を高める運動を導入していく。

運動があまり得意ではないという点を考慮し、日常生活の中で無理なく取り入れられる動きからアプローチを進め、根本的な改善を目指す。

治療

初期治療(1〜5回)

週に1回のペースで治療。

マッサージとこりの強い僧帽筋には鍼を併用し、筋緊張を緩和。

運動は負担の少ないストレッチからスタート。(タオルストレッチ・ブックオープニング)

5回目の治療で1週間間隔が空いてもこりを感じない状態になった。

中期治療(6~15回)

2週に1回のペースで治療。

仕事中の姿勢を確認し、正しい座り姿勢と腹横筋の意識づけを行う。

徐々に姿勢が安定し、「良い姿勢をつくる」感覚が定着。

「体が楽になった」と実感が出てきたことで、運動へのモチベーションも前向きに。

後期治療(21~27回)

背筋を使う「グッドモーニング」や骨盤・下肢の安定性を高める「ヒップリフト」といった姿勢保持のためのトレーニングを導入。

骨盤の後傾姿勢が改善し、正しい姿勢を長時間保つことが可能に。

最後は1ヶ月間隔でも症状の再発なし。

安定維持できているため、治療はゴール。

コメント

こりを根本から改善するには、運動は欠かせない要素の一つです。

でも「運動が苦手」、「やりたくない」と感じる方も多くいらっしゃいます。

辛さがある中で、苦手なことに取り組むのは大きなストレスです。

だからこそ重要なのは、“その人にとって無理のない運動”から始めることだと考えています。

どの動きなら取り組めそうか?

どうすれば日常生活に自然と取り入れられるか?

このような視点を大切にしながらご提案をしていくことが、継続と改善の鍵になるのだと改めて実感したケースでした。


執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome

帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者

私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。


整形外科での治療やリハビリで治らなかった肩関節の痛みと可動域制限が、3回の治療で挙上180°まで可動域が改善してゴールに至ったケース|ケースレポート

概要

Y様 / 東京都在住 / 56歳 / 女性 / 大学職員

症状

右肘外側の痛み

左肩関節の痛み、90°以上挙げられない

状態

右肘

2025年1月ごろから痛み出現。きっかけはなく気がついたら痛みが出ており、日常生活で手を使うたびに痛みが出ている。(お箸を使う動作でも出現)

痛みの数値(NRS)⑧⑨

※NRS(Numeric Rating Scale):患者さんの痛みの強さを0-10で表した数値。0は痛み無し、10は過去最大の痛み

左肩関節

2025年3月ごろから痛み出現。こちらもきっかけはなく気がついたら肩が挙がらなく、無理に挙げようとすると激痛が出る状態。

痛みの数値(NRS)⑨⑩

※NRS(Numeric Rating Scale):患者さんの痛みの強さを0-10で表した数値。0は痛み無し、10は過去最大の痛み

※屈曲90°(前の動き)で痛み

※肩甲骨面100°(斜め前の動き)で痛み

※外転90°(横の動き)で痛み

どちらも整形外科にて治療、リハビリも行っていたが症状が変わらず、当院を受診。

レントゲンでは異常なし。

見立て

右肘

肩のインナーマッスルのテストで力が入りずらいことや、肩甲骨の安定性も低下。

くわえて上腕の力も筋力テストで低下気味。

また触診にて前腕の筋肉の筋緊張もとても強いことがわかった。

これらの情報から肩よりも「肘に関与する筋肉」を優位に使ってしまい肘の痛みを出現させてしまっていると考えた。

必要なこと

→肩甲骨の機能改善、背中の柔軟性改善、前腕や上腕の筋スパズム解消

左肩

肩のインナーマッスルのテストで力が入りずらいことや、肩の動作時に肩甲骨や背骨の動きが悪いこと、これらを踏まえて肩関節インナーマッスルの低下、肩甲骨の機能低下により腕を上げた際の痛み、可動域制限が出現していると考えた。

※肩甲骨の動きや腕の骨の動きが本来の動きになっておらず、無理やり肩を動かしている状況。

また肩関節の他動運動で腕は180°まで挙がるため、関節拘縮は生じていない可能性が高いと判断。

必要なこと

→肩のインナーマッスル強化、肩甲骨の機能改善、背中の柔軟性改善

治療

1回目

治療内容

トレーニング45分

・肩インナーマッスルトレーニング(棘下筋、棘上筋、肩甲下筋)

・肩甲帯トレーニング(僧帽筋下部)

・ストレッチポールを使用した肩甲骨を動かす体操(※ベーシックセブン)

マッサージ45分

・筋緊張緩和、筋疲労解消目的

(背中、肩甲骨周囲、脇、胸筋、上腕、前腕、手)

初回の治療ということもあり、患部を積極的に動かすことは避けた。(肩や肘の痛みはとてもデリケートで、動かしすぎることで痛みが悪化する可能性があるため)

肩の関節や肘への負担に大きく関与する肩甲骨のコンディションを良くするため、ストレッチポールを使用した肩甲骨のストレッチを入念に行った。

また、マッサージでは痛みの防御反応で硬くなった筋肉を優先的にほぐし、疲労解消も行った。

※左肩は治療後、3方向全て90°→120°まで挙がるようになったが、120°まで挙げると痛み出現

2回目

右肘:NRS⑥→改善傾向。

たまに痛むが日常生活がしやすくなった。

左肩:NRS⑨⑩→変化なし。

まだ日常生活に支障が出ている。

※屈曲90°(前の動き)で痛み

※肩甲骨面100°(斜め前の動き)で痛み

※外転90°(横の動き)で痛み

治療内容

トレーニング45分

・体幹トレーニング(腹筋、臀筋、背筋)

・肩インナーマッスルトレーニング(棘下筋、棘上筋、肩甲下筋)

・肩甲骨パッキング(僧帽筋下部、前鋸筋、大菱形筋、小菱形筋)

マッサージ45分

・筋緊張緩和、筋疲労解消目的

(背中、肩甲骨周囲、脇、胸筋、上腕、前腕、手、腰、臀筋群)

前回の治療にて、右肘は改善がみられたが左肩は改善がみられなかったため、左肩のみの機能ではなく、肩甲骨の動きや体幹機能強化に着目し、トレーニング介入部位を増やした。

右肘は改善がみられたので、前回同様の処置を行った。

今回は肩甲骨の動きが良くなっており、「肩甲骨をいい位置に固定する」肩甲骨パッキングの体操も行えた。

トレーニング後、左腕は175°まで上がった。

まだ痛みは出るものの、どうしようもない痛みではなく、運動療法のみで改善。

運動後は変化があるものの、持続できていないことが大きな問題と捉えた。

痛みの期間が長かった分、肩を動かすことを忘れてしまっている状況だったので、少しでも肩を動かして「動作を思い出す」ことが課題であった。

3回目

右肘:NRS③→改善傾向。

ほぼ気にならなくなった。

左肩:NRS⑤→改善した。

痛む回数は少なくなったが、まだ痛むことはある。

※屈曲90°(前の動き)で痛み

※肩甲骨面100°(斜め前の動き)で痛み

※外転90°(横の動き)で痛み

治療内容

トレーニング45分

・体幹トレーニング(腹筋、臀筋、背筋)

・肩インナーマッスルトレーニング(棘下筋、棘上筋、肩甲下筋)

・肩甲骨パッキング(僧帽筋下部、前鋸筋、大菱形筋、小菱形筋)

・立位で腕を挙げる動作確認

マッサージ45分

・筋緊張緩和、筋疲労解消目的

(背中、肩甲骨周囲、脇、胸筋、上腕、前腕、手、腰、臀筋群)

肘は前回同様改善傾向。このまま治療を進めれば問題なしと判断。

左肩においては、治療後は改善するが1週間経つと動かし方を忘れてしまう傾向がある。

そのため、今回から「立位で腕を挙げる動作確認」を入念に行い、普段の状況に近い環境で運動療法を行った。

運動療法後には痛みなく3方向全部180°挙がった。

コメント

今回のケースは「ほぐし」だけでは改善せず、「運動」が必須の状況でした。

肩や肘の痛みは、多くの場合が「ほぐし」だけでは改善することが難しく、「運動」を行うことで改善傾向となります。

しかし、「運動」をしていても自己流になっていたり、必要な筋肉のトレーニング、正しい動きのための運動ができておらず、なかなか結果が出ないという方は少なくありません。

「体の痛み=運動が必要」という認識はされてきておりますが、本当に必要な運動ができているか、自分自身で確認することは難しいのが現実です。

そのため、Yさまが正しいホームケアを実施してくださったことも、症状改善の大きなポイントだったかと存じます。

また、もう一つのポイントは、2回目の治療段階で変化がない症状(左肩関節)に対して、より広い眼でみて「体幹」を強化したことを大きかったのではないかと考えます。

1度動かせるようになれば、それを繰り返して体に染み込ませることができます。

そのきっかけになったのが「体幹」です。※特に背中と臀筋です。

一見、肩や肘だけの問題に見えますが、それは結果に過ぎません。

原因は離れた部位にもあります。その部分をきちんと改善させたことで「肩関節」や「肘」の痛みが改善することができました。


執筆者:鴻崎 国臣
Kuniomi Kouzaki

早稲田速記医療福祉専門学校 鍼灸医療科卒業
東京女子医科大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
ハワイ大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師
ストレッチナビ公認ストレッチ専門家コラムニスト

私は小学生のころから肩こり、首こり、頭痛に悩まされてました。
患者さんの症状と似ているので、辛さがとてもよくわかります。
自分自身が辛かったからこそ、「早く治したい」と思いますし、治療で何が必要かも身をもって体感しております。
「予防のための運動、姿勢改善」をして、カラダを変えていきましょう。