肩こり・首こりの根本解消に有効なエクササイズとは(運動学・バイオメカニクスの観点から)

【問題】以下4つの中から肩こり・首こり改善に最も効果的なエクササイズはどれでしょう?   答えは一つです。

  1. “力こぶ”の筋トレ [バイセップスカール、アームカール等]
  2. “腹筋”の筋トレ [一般的腹筋運動、シットアップ、ツイスト等]
  3. “お尻”の筋トレ [スクワット・デッドリフト等]
  4. “胸”の筋トレ [ベンチプレス・バタフライマシン等]
 

“力こぶ”の筋トレ

女性は二の腕の引き締めのために、男性はたくましい腕にするために  よくトレーニングが行われる部分です。力こぶの筋肉(=上腕二頭筋・烏口腕筋)を筋トレし続けると、肩甲骨が上・外方向に移動してきます。すると、いわゆるこる部分や首と肩甲骨をつなぐ部分の筋肉が引き伸ばされます。引き伸ばされた筋肉は縮まる性質があるため(=伸長反射)つらい部分の筋肉はどんどん固くなります。腕の筋トレを行うことによって首こり・肩こりはどんどん頑固になってしまいます。

“腹筋”の筋トレ

姿勢が悪いのは腹筋が無いからだと考え六つに割れた腹筋を目指していわゆる腹筋運動(仰向けになって膝を曲げて状態を引き起こす動作、仰向けに寝てツイストしながら状態や足を持ち上げる動作など)を繰り返し行うと腹直筋・内腹斜筋・外腹斜筋・腸腰筋・大腿筋膜張筋・大腿直筋 が負荷を受け硬化していきます。すると・・・姿勢を良くするための筋トレなのに、どんどん丸まっていき猫背を悪化させます。姿勢が悪い方が足りない腹筋はお腹のインナーマッスルである”腹横筋”です。腹横筋はいわゆる腹筋運動では鍛えることができません。

“胸”の筋トレ

女性はバストアップ、男性は厚い胸板のために高い頻度でトレーニングされる部分です。しかしこの部分の筋トレをやり続けると大胸筋だけでなく小胸筋・前鋸筋が硬化します。この3つが硬くなると、肩甲骨がこれも上・外方向に移動し①と同様の状態となります。加えて背骨も丸まりますし、肋骨の動きが悪くなるので呼吸も浅くなり肩こり・首こりだけでなく疲れやすい体と化してしまします。

正解について

正解は③の“お尻”の筋トレです。

二足歩行をすることにおいて猿と人間の差、赤子と大人の差は臀部の筋力です。つまり臀部の筋肉(大臀筋・中臀筋・小殿筋)や股関節をとりまく6つのインナーマッスル(梨状筋・大腿方形筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋・上双子筋・下双子筋)が発達し機能しているため二本足で立ち、安定した歩行が可能となります。

また、人間の重心は骨盤内に収まるため、いかに骨盤を安定させられるかどうかが重心を安定させることになり良い姿勢かどうかを決定づけます。

現代人はデスクワークによる座位姿勢を続けることが多いため、臀部の筋肉が衰えやすいです。立ち仕事の方は極端に立位時間が長いため臀部の筋肉は疲労しきってしまい、いつのまにかあまり使わないようになってしまいます。このような事から現代人は①臀筋が不足している ②臀筋はあるがうまく機能していない 状態の方が大多数です。

肩こり・首こりを根本的に改善するためには、局部をほぐしたり血行を良くするよりも、良好な姿勢を獲得すること何よりも重要です。多くの方は“良好な姿勢とはどのような姿勢なのか知らない”、または“とりたくてもとれない”状況にあります。それを打開するためのひとつの手段として臀部の筋力を活性化させることが有効です。

巷には様々な方法論が出回り体幹の重要性が示唆されておりますが、『体幹=腹筋』という間違った解釈が浸透してしまっています。筋トレにおいて最も肝心なのは「人体にとって“最少負荷となる姿勢”“合理的な動きができる姿勢”を維持するために不足している筋力を補う」ということです。前後・左右・上下で無理なく平衡がとれるようにすることが大切です。“体幹トレーニング”そのものが重要なわけではありませんし、腹筋が割れれば体幹の状態が良くなるわけではありません。アスリートは最低限これが充実した上で、パフォーマンスアップのためのトレーニングがありますが、大多数はこれに到達できていない状況です。だから、トレーニングをしてもいっこうにパフォーマンスが向上しない「見せかけの筋肉」となってしまうのです。

まとめると、①②④で対象となった筋肉と、相反する作用をする部分との相対的なバランスを整えることが成功する効果的な筋トレなのです。

【重要】   腕・胸・腹は自らの目に見える部分なのでつい強調したくなりますが、本当に大切なのは側面や後面からみたあなたの姿を美しくすることなのです。

肩こり・首こりとはどのようなものなのか、おおまかな全体像をとらえたい方はこちらをご覧ください。

ひどい肩こりを何とかしたい!病院いけば治る?そもそも病院で診てもらう必要は?

硬ければ重症なの?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。