「胸を張る=良い姿勢」と思っていませんか? 体の機能を損なわずに胸を張る方法をお伝えします。

姿勢を良くしようとすると、多くの方が「胸を張る」ことを意識します。

確かに見た目はシャキッとしますが、やり方を間違えると腰に余計な負担がかかり、疲れやすくなったり、ひどい場合には腰痛を引き起こすこともあります。

では、体に負担をかけずに「正しく胸を張る」にはどうすればいいのでしょうか?

ここでは、腰を痛めずに正しい姿勢を作るための「胸の張り方」をご紹介します。

良い姿勢とは

「良い姿勢」というと、多くの人が「背筋を伸ばして胸を張る」姿を思い浮かべます。

しかし、その良い姿勢を意識するあまり、反り腰を強くしてしまっている人が多くいらっしゃいます。

腰を必要以上に力ませずに胸を張れることが、良い姿勢を作るために必要なことになります。

また、日常生活を快適に過ごすという点で考えると、良い姿勢は意識し続けて獲得するのではなく、いろいろなエクササイズを行うことで様々な筋肉が動員されて、結果的に胸が張れている姿勢が作れるのが理想です。

それは、最小限の力で体を支えられる状態を指します。つまり、「頑張って作る姿勢」ではなく、「体の機能がうまく働いている状態」なのです。

体幹筋群が安定してこその背筋エクササイズ

胸を張るためには背筋トレーニングは必須になってくるのですが、その前段階の体幹トレーニングをしっかりと行うことで、安全かつ効果的に背筋を鍛えることができます。

体幹が不安定なまま背筋を鍛えようとすると、思うように背筋を使えないだけでなく、

• 腰が疲れやすい

• 首や肩に余計な力が入ってしまう

といった不調につながることもあります。

つまり、本来あまり頑張らなくていい箇所が、体幹の不安定さをカバーしようとして無理に頑張ってしまうのです。

背筋を効果的に鍛え、猫背を根本から改善していくためには、まずは体幹の安定性を高めることがとても重要です。

良い姿勢づくりのために取り入れたいエクササイズプログラム

前項でもお伝えした通り、背筋のトレーニングを効果的に行うには、腹筋の力が抜けていない状態で動作することがとても重要です。

背筋を使うとき、反対側にある腹筋がしっかり働いてくれていれば、体幹が安定し、背筋の力を無駄なく発揮できます。

そのための段階的エクササイズを、以下お伝えしていきます。

①デッドバグ・・・腹筋の伸張感を感じるエクササイズ。腹筋の力が抜けると腰の張り感が出やすくなるので、腹筋の力が抜けないように行うことが重要です。

②バードドッグ・・・デッドバグと同様に手足を伸ばした際に腹筋の力が抜けないこと、反り腰ができないことが重要です。

③ロールバック・・・腹筋の伸張感を感じながら背中を反らしていくエクササイズ。うまく力を抜くことで腹筋の伸張感を感じやすくなります。

④コブラ・・・床を押して腹筋を引き伸ばしながら背中を反らしていきます

⑤スワン・・・床を押して腹筋を引き伸ばしながら背中を反らしていきます。④コブラよりも体の反りが強くなります。

これら①〜⑤を段階的に取り入れることで、腹筋の力が抜けずにより大きな可動範囲で背筋を鍛えることができます。

最終段階であるスワンを行なっても、腰に違和感がなく、自分の体をコントロールできていれば、「背筋のトレーニングを行うと腰が痛い」というよくある問題を回避し、自然と良い姿勢を維持できるようになります。

良い姿勢を作る時に確認したい3つのチェックポイント

 お腹(腹筋)の力が抜けていないか?

立った時に、腰や背中に力が入っていることを感じる場合、お腹の力が抜けているサインかもしれません。

多くの場合、胸が後ろに下がり、反り腰の状態になっています。

この姿勢ではお腹に力が入りにくくなり、腰や背中で姿勢を保とうとします。

そんな時は、息をしっかりと吐きながら、前側の肋骨をおへその方向に引き下げられるように意識することでお腹に力が入りやすくなります。

息を吸った時、胸だけでなく背中や胸の横の膨らみを感じられるか?

 

胸が後ろに下がった姿勢では、息を吸った時に胸の前ばかりが膨らみ、背中や胸の横の膨らみを感じにくくなります。

理想的な呼吸では、胸の前だけでなく、背中側や胸の横にも膨らみを感じることが大切です。

息を吸ったときに、背中が広がる感覚や、胸の横が押し広げられる感覚があるかをチェックしてみてください。

これは、胸郭が制限なく動いている証拠であり、力みなく良い姿勢を支える上で大切な部分になります。

無理なく力が抜けた状態で姿勢維持ができているか?

良い姿勢は、頑張って「良い姿勢を作る」ものではなく、自然に保てる状態であることが理想です。「胸を張ろう」と意識した時に、肩や腰に力みが出たり、呼吸が浅くなる場合、それは力んで姿勢を作っている状態になります。

本来の良い姿勢は、必要最低限の力で、リラックスして保てる必要があります。そうでないと、長時間の姿勢維持は困難ですし、動き出しがスムーズにいかなくなります。

深呼吸をしながら、無理なく力が抜けた状態であるかをチェックしてみてください。

まとめ

「胸を張る=良い姿勢」となってしまうと、反り腰や体の力みなど、かえって体に負担をかける姿勢になりやすいです。

良い姿勢は、体の機能がしっかりと獲得されれば、自然とできてくるものです。

姿勢は作るものではなく、作られるものという認識でいると、無理な姿勢を取りにくくなります。

そのためには運動によって、適切に段階的に鍛えていくことが重要になります。

腹筋と背筋が協調して働くことで、体の前後左右から体幹を安定させることが可能になります。

そうすることで胸を頑張って反らせる必要がなくなります。

あなたもぜひ、「頑張らない胸の張り方」を実践して、快適で負担の少ない良い姿勢を手に入れてください。


執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo

湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach

目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。