姿勢改善、痛みの改善、ダイエット・・・いろいろな目的で運動をする時に外せないものになっているのが、「お尻のトレーニング」ではないでしょうか?
「お尻が使えていないから膝が痛む」「腰痛になるのは腹筋とお尻の筋肉で体を支えられていないから」「代謝を良くするためにまずはお尻を鍛えましょう」など、いろんな場面で登場する「お尻」という言葉。
人の体は、その運動方法に適応するように変化していきます。なので、日常生活で必要な動きの観点と照らし合わせながら、お尻のトレーニング方法を再度、見つめ直していきます。
「お尻のトレーニングをしたいが、何をやったら良いのかわからない方」
「お尻のトレーニングはしているが、イマイチ効果を感じられない方」・・・そんな方々に対してのヒントになりましたら幸いです。
お尻の筋肉を鍛えるとは
お尻を鍛えるメリット
①痛みに対してのメリット
人間は誰しもが重力下で生活をしており、ほとんどすべての人が歩行(走るも含めて)という移動手段を使っています。重力下での生活、歩行を行う上で骨盤が前傾位であることは効率の良い動作を行う上でとても重要となります。
写真1 骨盤後傾位の状態
写真2 骨盤前傾位の状態
実際に写真1、2の状態で30mくらい歩いてみてください。体感してみると、骨盤前傾位の方が姿勢を保つことも歩くことも楽な感じがするのではないでしょうか?楽な感覚で立てる、楽な感覚で歩けることは痛みを出さないためにも必要な体の使い方になります。
②美的要素へのメリット
写真1、2からもお分かりだと思いますが、見た目の美しさの観点からも骨盤前傾位の方が綺麗な姿勢だと感じることかと思います。もちろん、歩く姿勢も綺麗になります。
お尻を鍛えるデメリット
デメリットはないですが、強いてお伝えすると、お尻のトレーニングだけを行うよりは他の運動も一緒に行なっていく方が良いです。骨盤を下から支える大殿筋だけでなく、前から支える腸腰筋、体幹トレーニングで重要となっている腹横筋、多裂筋、あらゆる方向から骨盤を支えていくことが重要となります。
また、移動という観点で考えると下肢との関係性は低そうに見えますが、上肢の動きも大切になってきます。下肢の動きと緩衝し合うように動く上肢(歩く時に右足が前に出ると左手が前に出るという動き)と捉えると、全身満遍なく鍛えていけることが理想です。
お尻の筋肉の種類(大殿筋、中殿筋、小殿筋)
①大殿筋
お尻の一番表層にある大きな筋肉です。この大殿筋は骨盤を前傾させた際に、ハンモックのように骨盤の下から引き伸ばされるような形で収縮し続けてくれます。筋の収縮様式としては遠心性収縮で、骨盤前傾位保持のためにはとても重要な役割を担ってくれます。
②中殿筋
お尻のエリアの一番外側にある筋肉です。トレーニングを定期的に実施されている方なら、クラムシェルというエクササイズで鍛えたことがあるのではないでしょうか。
中殿筋の機能として重要なのは、足の裏が地面に接地した状態で同側の骨盤(右足で立っている状態なら右の骨盤)が天井方向に上がりすぎないことです[トレンデレンブルグ徴候]
足の裏が地面に接した状態での骨盤のコントロールが重要なポイントです。
③小殿筋
お尻の筋肉の一番深部に位置する筋肉です。骨盤と大腿骨をつなぎ合わせる関節包(関節を包む膜のようなもの)に付着し、大腿骨頚部軸と並走するように位置しているので、関節を安定させるために重要となります。
日常生活動作で必要なお尻の機能とは
骨盤前傾位を作るヒップヒンジ
お尻の筋肉(特に大殿筋)が自動的に使われる姿勢が骨盤前傾位になります。理由としては、体が前に倒れ過ぎないように支えるためです。重力下で生活をする以上、お尻の筋肉を縮めて使うというよりはハンモックのように引き伸ばしながら使えることが大切になってきます。この状態が作れることで、ヒップアップした見た目の美しさにも繋がります。
片足立位保持のためのヒップロック
片足立ちをした際に、同じ側の骨盤を地面方向に押して反体側の骨盤を持ち上げるような状態(右足で押すときは右側の骨盤を地面に近づける)になります。これにより中殿筋の収縮を強く感じることができ、骨盤が上がりすぎることを抑制することができます。お尻が左右にフリフリと過剰に動く方にとっては大切な動きになってきます。
トレーニング方法
スクワット
左右の股関節できれいなヒップヒンジを作ることが重要になります。
骨盤の後傾や腰が曲がってしまうなどの代償動作が出やすいので注意します。
下に沈み込んでいく際に、お尻の坐骨で筋肉が伸ばされるような感覚を感じられたら良いです。お尻(大殿筋)が引き伸ばされながら使えているサインです。
スプリットスクワット
スクワットよりも片側のお尻への負荷が上がるため、基本的にはスクワットのレベルアップトレーニングとの位置付けになります。
お尻を使う感覚が出せない方は、最初にスプリットスクワットを行ってみても良いです。片側のお尻への負荷を高めることで、「お尻を使う」という実感が得られやすいです。
片足ニーアップ
ヒップロックポジションを作ることが大切になります。
鏡を見ながら、足を上げている方の骨盤が高くなるように足を持ち上げてください。お尻の外側の筋肉の収縮感を強く感じることと思います。
まとめ
お尻の鍛え方はたくさんありますが、日常生活に必要となる動きと合わせながら考えていくと、トレーニングの優先順位は決まっていきます。
今回、取り上げた運動も一度は目にしたことはあるかと思いますが、意識する部分が変わることで効果も変わっていきますので、お尻の感覚を感じながら行ってみてください。
次回はスクワットとヒップスラストの2つの違いを深ぼりして解説させていただきたいと思います。