骨盤後傾位は悪なのか?骨盤後傾位の重要性を解説いたします。

前回までのブログでは、日常生活を快適に送るためには骨盤前傾位での大殿筋の活動が大切であることをお伝えしました。

骨盤前傾位にスポットを当ててお伝えしましたので、「骨盤後傾位は良くないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

また、「骨盤後傾位は姿勢が悪くなるから良くない」と感じている方も多いと思いますので、骨盤後傾位が作れることのメリットを今回はお伝えしていきます。

骨盤後傾位とは?

「骨盤後傾位」の基準を明確にしたいので、定義をお伝えしていきます。


左右の上前腸骨棘(骨盤の前側にある出っ張った骨)と恥骨(2つの上前腸骨棘を結んで股下まで下がった所にある骨の出っ張り部分)が作り出す三角形(写真1)の傾きが骨盤前後傾を確認する際の指標となります。

写真1

「骨盤中間位」は三角形が床と垂直に位置する状態、「骨盤後傾位」は三角形が斜め上を向いた状態、「骨盤前傾位」は三角形が斜め下を向いた状態になります(写真2〜4)

写真2
写真3
写真4

以前は上前腸骨棘と上後腸骨棘(骨盤の後ろの出っ張り部分)の高さの差を基準にしていましたが、骨の個体差があるため正確な測定は難しいと言われており、現在は三角形を基準に骨盤の前後傾を評価することがスタンダードになっております。

骨盤後傾位が取れることでのメリット

人の体は活動量の低下や緊張状態が長期に続くと、骨盤前傾位での反り腰となることが多く、腰背部が硬くなったり、太ももの前側が疲れやすくなります。

前回までのブログでは骨盤前傾位が作れることの重要性をお伝えしましたので、混乱してしまう方がいらっしゃるかもしれませんが、骨盤前傾位が作れることと意図せずに骨盤前傾位になってしまうことは意味合いが異なります。

意図しない骨盤前傾位の方は、意図的に骨盤を後傾させることが難しいです。

そのため、今回の骨盤前傾位は日頃から腰背部の張り感、もも前に疲れが出やすい方へ、特に届けたいメッセージとなります。

骨盤後傾位が作れることで得られるメリットは主に以下の2つです。

腰まわりの筋肉、股関節の前側の筋肉のリラクゼーション、ストレッチ

 骨盤後傾位により腰の筋肉と股関節の前側の筋肉を引き伸ばした状態にすることができます。

腰の硬さ、股関節前側の硬さを感じている人は、うまく後傾位が取れるとスッキリ感を感じられるはずです。

下部腹筋、ハムストリングスの活性化

骨盤後傾位により下部腹筋とハムストリングスは収縮された状態になります。

腹筋の中でもおへそ周囲の下部腹筋は、骨盤をコントロールする上で大切になります。

腰まわりの筋肉、股関節前側の筋肉の硬さは痛みにつながることが多々ありますので、いつでも伸ばせる状況を作っておきたいです。

下部腹筋、ハムストリングスは現代の生活習慣では、弱くなりやすい筋肉です。

そのため、トレーニングではしっかりと鍛えていくことが大切です。

この2つの筋肉を鍛えることで、結果的に骨盤後傾位の誘導がしやすくなり、腰まわりの筋肉、股関節前側の筋肉を伸ばしていける状況になります。

実際のエクササイズ方法

以下に骨盤後傾位を誘導しやすいエクササイズを2つご紹介いたします。

ペルビックチルト

①膝を立てて仰向けになります。

②骨盤を手前に転がすイメージで、腰の下の隙間を潰すように骨盤を持ち上げます。

キャット&ドッグ

①四つ這いになります。

②坐骨を膝に近づけるイメージで骨盤を天井に持ち上げます。

上記2つのエクササイズは器具を必要としないため、ご自宅で行うことが可能です。

ぜひ一度、試しに行ってみてください。

日常生活動作での骨盤後傾位(中間位)

 ここで取り上げる骨盤後傾位は、骨盤前傾位を基準とした際の後傾位(中間位)と捉えていただきたいと思います。

基本は前傾しすぎでもなく、後傾しすぎでもなく、中間位(真ん中)に居続けられ、必要に応じて前傾と後傾のどちらにもいけるという形が理想です。

体幹の安定性の部分から考えると、過度な骨盤前傾位は横隔膜と骨盤底筋の平行状態が崩れます。

この平行状態が崩れると体幹の安定性を得ることが難しくなります。

そのため、反り腰でお腹に力が入りにくい方は骨盤をやや後傾位に誘導して、横隔膜と骨盤底筋を平行にする必要があります。

腰痛や股関節の痛みで悩んでいる方は、骨盤後傾位の誘導が難しくなっていることが多いと日々感じております。

このような方々にとっては、トレーニング中に骨盤後傾位を作れることが症状解決の糸口になる可能性があります。

まとめ

今回は骨盤後傾位の重要性について説明させていただきました。

「前傾位の方が良い」「後傾位の方が良い」という絶対的なものはなく、その局面によって求められる動作は変わります。

また、どちらかだけに固定され続けた姿勢も良くありません。

固定された姿勢は、局面ごとに求められる効率的な動きに適応できなくなるからです。

どちらも必要な時に自然と行えることが理想です。

そのためにはまずは簡単な動作での骨盤コントロールを練習して、徐々に複雑な運動に変えても同じようにコントロールできることを目指します。

一つずつ階段を登っていくようにトレーニングを積み上げて行くことが大切です。

次回は骨盤と連動して動く腰椎(腰の骨)について解説していきます。


執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo

湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach

目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。