突然ですが、首の横や、肩甲骨の内側の上の部分にこりがあり、つらいと感じることはありませんか?
以下の写真の赤丸の部分です。
上記症状が当てはまる方、是非最後までお付き合い下さいませ。
今回は「僧帽筋」と同様、肩こりと関係が深い「肩甲挙筋」について解説していきます。
「僧帽筋」の記事はこちらをご覧ください。
【筋肉解説シリーズ第1回】 肩こりの代表格「僧帽筋」とはどんな筋肉?
このブログを最後までお読みいただくことで、「肩甲挙筋」がなぜこってしまうのか、セルフケアの方法などをお伝えしたいと思います。
肩甲挙筋とは
「肩甲挙筋」は肩甲骨を挙げる筋肉と名前から想像できますが、実際はどうなんでしょう。
肩甲挙筋の解剖学
まずは写真を見ていきましょう。
矢印でも示した通り、首の横から肩甲骨の上まで繋がっています。
また、前回解説しました「僧帽筋」よりカラダの深い部分(深層)に存在しています。
浅層にある「僧帽筋」は「アウターマッスル」と呼ばれ、強く大きな力を瞬間的に発揮することに長けています。
長時間働くことには長けていないため、「僧帽筋」の負荷が大きいと肩こりにつながります。
その「僧帽筋」のすぐ下に存在するのが「肩甲挙筋」で、「僧帽筋の上部線維」と似たような働きがあります。
そのため、同様に肩こりにつながりやすいのです。
実際の肩こりとの関係性については、また後ほどお話しします。
起始 | 停止 | 支配神経 | |
肩甲挙筋 | 第 1~4頸椎横突起 | 肩甲骨上角 | 肩甲背神経(第5頸神経) |
(解剖学 第2版/医歯薬出版/東洋療法学校協会)
「肩甲挙筋」は「頸椎(首の骨)の横突起」に付着しています。
一方、「僧帽筋」は「棘突起」に付着しています。
分かりやすく言いますと、「僧帽筋」は背中の真ん中、「肩甲挙筋」は首の横に付いていると言うわけです。
また「肩甲挙筋」は肩甲骨、腕を支えています。
片腕の重さは体重の約6%であると言われています。
50kgある方ですと腕の重さは約3kgです。
3kgというとパイプ椅子1脚と同じくらいの重さですね。
70kgある方ですと腕の重さは約4.2kgです。
2Lのペットボトル2本分より重いことになります。
これだけの重量のある上肢をぶら下げているわけですので、
「肩甲挙筋」には何もしなくても、常時大きな負担がかかっているのです。
作用
「肩甲挙筋」の作用は名前の通り、肩甲骨を引き挙げることです。
肩甲骨を引き挙げる筋肉には「僧帽筋」もありますが、「肩甲挙筋」と「僧帽筋」には大きな違いがあります。
先程、「肩甲挙筋」の解剖学でもお話しした通り筋肉の付着部が異なります。
そのため、肩甲骨を引き挙げるという作用は同じですが、「肩甲挙筋」では肩甲骨が固定されていると収縮した側の首を傾けたり、横を向いたり振り返るという動作ができるのです。
肩甲挙筋と肩こりとの関係性
日常生活での酷使
「肩甲挙筋」は先ほどもお話した通り、肩甲骨を引き挙げる、つまり肩をすくめるような動きをします。
日常生活の中でどんな動きで酷使されるかと言いますと、長時間の運転やタイピング動作、重いリュックサックや斜め掛けのカバンの使用などがあります。
運転やタイピング動作では首が前に出てしまい、頭が下を向きます。
そうすることで後ろ側にある「肩甲挙筋」が伸ばされ、大きな負荷がかかります。
また重いリュックサックや斜め掛けのカバンを使うと肩甲骨が下がります。
その力に拮抗するため、必要以上に「肩甲挙筋」が働いてしまい、こりや痛みが起こります。
「なで肩」の方も、同様に「肩甲挙筋」に負担をかけやすいです。
ストレスの影響
ストレスが溜まり、「いかり肩」になってしまうことで肩をすくめることになり、「肩甲挙筋」が過度に収縮します。
またストレスを感じて顔が下へ向いてしまうことで、「肩甲挙筋」が伸ばされ負担がかかります。
以上のことから、「肩甲挙筋」のこりや痛みにつながることがあります。
デスクワークが多い方、ストレスを溜めやすい方はこの「肩甲挙筋」がこっているかもしれませんね。
僧帽筋上部のこりとの違い
「僧帽筋上部」の肩こりとの違いについてもお話しします。
どちらの筋肉も肩の上のラインがよくこります。
違いとしては、「僧帽筋上部」の肩こりでは後頭部や首の後ろにこりや痛みを感じます。
「肩甲挙筋」では後ろを振り返る時の痛みや首の横、肩甲骨内側上方の深部にこりや痛みを感じます。
それも筋肉の付着部が異なるためで、頸椎(首の骨)のどこに付いているかで運動の方向も変わってくるのです。
肩甲挙筋のこりへの対処法
では、対処法についてお話しします。
動的ストレッチ
一つ目は「動的ストレッチ」です。
まずは動かすことで筋肉を伸び縮みさせ、筋緊張を低下させます。
また血流の増加にもつながるため、血行が悪くこりを感じる方におすすめです。
「肩甲挙筋」の動的ストレッチ方法はこちらの動画を参考にしてみて下さい。
「シュラッグ」は肩をすくめる動作で意図的に血液を滞らせ、元の状態に戻すことでより血液を流していきます。
鍼/マッサージ
ストレッチをしても、つらいこりがよくならないという方は、「鍼」や「マッサージ」でこりが起きている筋肉そのものをほぐすことも必要です。
血流を良くしたり、カラダをコントロールする神経の乱れを調整します。
当院では筋肉1つ1つを3次元で捉え、こりに対して様々な角度からアプローチします。
→3D鍼/IDマッサージ
当院で実際に行なっている鍼治療の一例をご覧ください。
このような治療を行い、こりのレベルを落とすお手伝いをしています。
まとめ
「肩甲挙筋」についてまとめます。
・何もしなくても、常時大きな負担がかかっている
・長時間の運転やタイピング動作など、首を前に出すような動作で伸ばされ負担がかかる。
・リュックを背負うといった、肩をすくめる動作で過剰に働いてしまう。
以上のことから「肩甲挙筋」は日常生活の中で負担のかかりやすい筋肉といえます。
先程紹介したストレッチを試していただいたり、「マッサージ」、「鍼治療」を受けていただくことをおすすめします。
また根本的な解決のためには正しい姿勢を維持することが大切になってきます。
そのためには「インナーマッスル」を鍛えることが必要です。
「インナーマッスル」につきましては別のブログで解説しますので、そちらもご覧いただければと思います。
参考文献
(解剖学 第2版/医歯薬出版/東洋療法学校協会)
(筋骨格系のキネシオロジー)
執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome
帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業
鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者
私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。