運動器カテーテル治療以外でもモヤモヤ血管対策は可能です
運動器カテーテル治療は、モヤモヤ血管を直接目で確認しながら処置を行うため確実な治療法です。そして外科手術にくらべて簡便で負担の少ない治療方法です。ただ、体内の動脈の中に管を通すわけですから施術者の技術がとても問われる高度な治療です。そのためどの病院でも受けられる治療ではありません。少なからずリスクを伴いますし保険適用外のため費用も高額です。
運動器カテーテルでないとモヤモヤ血管を解消できないのでしょうか?そんなことはないのです!!著書内で奥野先生も様々な方法を紹介されています。
代表的なのは注射です。モヤモヤ血管が存在する場所によってステロイドやヒアルロン酸などを注射することでモヤモヤ血管を減少させる効果が期待できるようです。筆者個人的に興味深かったのは、局所にPRPを注射する方法です。PRPとはPlatelet(血小板)Rich(豊富な)Plasma(血漿)の略で日本語では「自己多血小板血漿」といいます。PRP療法は最近ではヤンキースの田中将大投手が肘の靭帯の治療のために行ったので耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。大リーグ・プロスポーツ界での定番化しつつある療法です。その他美容皮膚科領域でもシワ対策など肌を若返らせる治療としても行われています。
PRP療法は自分の血液から血小板を採取して目的とする部分へ再び注入する治療方法です。どういう効果があるのかというと、血小板には、体内の各成分に刺激を与えて活性化し、元気で若返りを促す成長因子という成分が含まれているため、成長因子を含んだ血小板を衰えた細胞に注入することで、細胞が活性化し若返りの効果が得られたり、注射の手技を組み合わせることで慢性化した炎症をあえて再び炎症を起こさせてそこからの治癒や細胞の生まれ変わりを期待する治療方法です。モヤモヤ血管のある部分、すなわち慢性炎症となってしまっている部分は回復が停滞してしまっているので、PRP療法用いることで炎症反応を再度喚起させて治癒に向かわせ、モヤモヤ血管の消褪を期待するということを目的としているわけですね。
鍼灸治療とPRP注射の共通点
モヤモヤ血管にPRPをなぜ使うのかといいますと意図的に炎症反応を生じさせるためです。これは私たち鍼灸師が行う鍼灸治療とリンクする部分があります。
鍼は意図的に傷をつくり、灸は意図的に火傷を生じさせ反射や生体の反応を喚起させる治療方法です。著書内で奥野先生は、圧痛(押して痛い所)のある部分にはほぼ確実にモヤモヤ血管が存在すると言及しています。そのため、的確に触診ができて、体の3D(三次元)構造を理解して正確に圧痛部分に鍼を刺入する技術が有れば、直接モヤモヤ血管が存在するであろう部分にアプローチし微細な組織損傷を生じさせることができます。つまり鍼(ハリ)でも、PRP療法と似たようなメカニズムによる効果を出すことは不可能ではありません。
ただし、これは筋肉に対してのみ有効です。関節を包み込む袋である関節包の内側は無菌に保たれているため鍼を深く刺入することは感染症を招いてしまうリスクがあるため絶対に行なってはなりません。
そして、浅い鍼やお灸でも血流を改善する効果、これはたしかにあります。血流を改善することによる効果は、その時の痛みの軽減のみです。浅い鍼やお灸は本質的には前述した温熱療法のメカニズムと同じであり、モヤモヤ血管を解消できません。よって筋肉内のモヤモヤ血管=頑固なコリに対しては、深く刺す鍼なら効果を期待することができそうです。とはいえ、鍼(ハリ)だけでモヤモヤ血管を根本的に解決することは難しいということは患者さん&治療を行う側の双方が理解しておくべきポイントです。
一人でもできるモヤモヤ血管対策
奥野先生はセルフケアとして、①運動 ②ストレッチ ③圧痛部分の持続的圧迫 ④喫煙や食生活など生活習慣の改善 を提唱されています。
基本的には痛みやコリを感じる部分をゆっくり動かしたり、ストレッチすると良いのですが、慢性痛を抱える方々の多くはそもそも動かしたくても動かせないし、ストレッチをしても伸びない、という状況となってしまっている方は少なくないと思います。
患部の圧迫については、特に首肩背中などは健康器具などでグイグイおしてしまうのはかえってマイナスに作用してしまう可能性がありますので、ほどほどにしておくのがベストと考えます。奥野先生は指で押して痛みのある箇所を15秒ほど爪が白くなる程度の力で指圧することをすすめております。
運動方法・ストレッチ方法は様々提唱されていますが、そもそもどれが自分にとってベストな方法なのか、効果があるのかを選別し抽出する作業が必要であり、患者さんが自らそれを行うことは極めて困難な状況といえます。
まずはつらい部分をあまり安静にしすぎず、無理のない範囲でできるかぎり自分で動かしてみましょう。それで改善するならばそれでOKです。しかし、2週間続けてみて変化が感じられない場合はやり方が間違っているか、自分には適していないことを行ってしまっている可能性が高いです。そんな時こそ専門家を利用すべきだと筆者は考えています。運動器カテーテルにてモヤモヤ血管を解消した後に、今後痛みを再発させないために根本的な体の改善を図る目的でセラピスト・治療院を利用するのも良いと思います。もしどこに行けば良いかわからずお困りの方はこちらをヒントにしていただけましたら幸いです。
肩こりラボでの治療とモヤモヤ血管
手前味噌とはなりますが、モヤモヤ血管の存在を知る前は、当たり前のことですが直接的な対処はできていませんでした。それでも肩こり・肩痛に対して結果を出せていたのは、根本的な原因に対してのアプローチを行う過程で知らず知らずのうちにモヤモヤ血管対策も行っていたためです。
奥野先生の研究を、より確実かつ効果的なアプローチ・患者さんへの分かりやすい説明に活かすことが「肩こりラボ」の使命であり、奥野先生への敬意だと思っています。
今後、多くの医療機関が運動器カテーテル治療を行っていくと予想されます。ひょっとしたらいずれ保険が適用となり、誰もが当たり前のように受けることができるようになるかもしれません。
医療は進歩しています。これまで解決策がなく、終わりの悩みと付き合い続けなければならない状況だった患者さんが一人でも多く救われていくでしょう。肩こりラボも、一人でも多くの方の力となれますよう、セラピストとして自らのできること、貢献できることに全力を注ぐ所存です。
当エントリーを投稿するきっかけになった奥野先生の著書「長引く痛みの原因は、血管が9割」は、モヤモヤ血管についてだけでなく「痛み」について、大変興味深い内容満載です。心の痛みと肉体的な痛みは実は同じ?痛くて仕方なくて病院いっても異常なし?冷淡に感じるお医者さんが多いのはなんで?そんな疑問にも分かりやすく解説されています。
ぜひ「長引く痛みの原因は、血管が9割」を読んでみて下さい。
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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。