新たな筋膜リリース法【ハイドロリリース注射】とは

新たな筋膜リリース法【ハイドロリリース注射】とは

 

新たな筋膜リリース法「ハイドロリリース注射」

ハイドロリリース注射は、2012年頃、局所麻酔薬の代わりに生理食塩水を注入でもFascia(※)に由来する症状に関して、同等以上の効果を得られることが報告されております。(続MPSに対する新しい治療法.第10回MPS研究会学術集会. (2012.11))。

 

近年、徐々に普及し始めているため、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

※Faciaとは

Fasciaは日本語でいう「筋膜」にとどまらず、内臓の膜・骨を覆っている骨膜・関節を連結している靭帯や筋肉を骨とくっつける腱までも含まれます。筋肉に関する筋膜だけでも、筋内膜・筋周膜・筋外膜・筋上膜といった種類があります。

本来、筋肉の筋膜を意味するmyofasciaという単語があり、日本語で「筋筋膜」といいます。

myofasciaのmyoは筋肉のという接頭辞で筋肉の膜(fascia)ということです。「筋肉の筋膜」=「筋筋膜」、これがいわゆる筋膜を指す単語として正解・最適です。このページでは筋肉を覆っている・包んでいる膜=筋筋膜(myofascia)を筋膜として解説していきます。

 

今回は、普及し始めてまだ10年ほどの新しい治療法「ハイドロリリース注射」についてご紹介していきます。

ハイドロリリース注射とは

ハイドロリリース注射とは、主に生理食塩水を用いて、筋肉、筋膜、腱・靱帯、神経などの各組織を液性(ハイドロ)剥離(リリース)する手技のことを指します。

 

超音波診断装置(エコー)を使って、異常なFasciaに対して、アプローチすることから「エコーガイド下Fasciaリリース」とも言われることもあります。

 

従来の局所注射との違い

 

痛みなどの症状がある場所への局所注射は、痛み止めや麻酔薬などを使ってその薬剤の効果で痛みを緩和する治療となります。ハイドロリリース注射では、痛みなどの症状を引き起こす「Fasciaの癒着」を剥がすことを目的に行いますので、主に生理食塩水を注射しています。

また、局所注射の場合は薬剤の効果がなくなれば症状が再び戻りますが、ハイドロリリースでは原因になっている癒着が解消できるため、局所注射と比べ、改善効果が比較的長続きすることが期待されます。

 

 

なぜ生理食塩水で痛みが無くなるか

筋膜リリース(筋膜fasciaリリース)注射とは、超音波ガイド下でこの筋膜や結合組織の癒着によって厚く重積した白い部分を確認し生理食塩水などを神経ブロックで使用する薬液の倍以上の量を注入して癒着を剥がして動きを良くするとともに痛み物質を洗い流して痛みを改善させます。

神田痛みのクリニック引用

 

つまり、ハイドロリリースにより痛みが解消されるメカニズムは

 

  • 水圧でFascia同士の癒着を剥がしていく
  • 結合組織の周りに蓄積されていた痛み物質を洗い流す

 

この過程により、Fascia同士の癒着を取り除き、また、癒着によって滞ってしまっていた痛み物質までも押し流していくことで痛みを緩和できるのです。

 

尚、医療機関によっては、生理食塩水に微量の麻酔薬・鎮痛薬を混合させている場合もあります。薬にアレルギーや過敏症などがある場合は受診される前に、あらかじめ医師に相談しましょう。

 

 

どこで受けられるか

ハイドロリリース注射は、医療機関で医師によって行われる医療行為です。

治療院や整骨院、マッサージ院で施術を受けることはできません。

 

具体的には、整形外科、ペインクリニックなどで施術を受けられます。

 

料金について

Fasciaや筋筋膜に対して生理食塩水を注入することが保険診療で認められていないため現時点では自費診療となります。

 

医療機関により、ひらきがありますが概ね 約6,000円〜(1部位) が多いようです。

 

詳細は、施術をおこなっている医療機関へお問い合わせください。

 

「凝り」の実態

Fasciaおよび筋筋膜が痛みを感じる

日本整形外科学会HPより写真を引用させていただきました。

冒頭の説明にもあったように、Fasciaの中でも特に、筋肉を包んでいる膜を筋筋膜と言います。

以前から筋硬結(しこり)を触れると感じる圧痛点「トリガーポイント」は主として筋筋膜の上にあることが判ってましたが、最近の研究ではそれ以外にも腱や靭帯、脂肪などのFasciaにもあることが判明しました。

 

筋筋膜については、過去の記事「筋膜リリースを解説します」も併せてご覧いただけますと幸いです。

 

 

トリガーポイントとMPS(筋膜性疼痛症候群)

「トリガーポイント」とは、Fasciaおよび硬くなった筋筋膜の上にある圧痛点のことをいいます。

 

トリガーポイントは、「ギターの弦のようであったり、米粒のような小さな粒状であったりする。それらの硬度は骨や腱に匹敵するほど硬い」とも表現されるように、正常の筋肉とは明確に異なる状態であることが触診でわかります。

 

そこを押したときに普段の肩こりなどの症状が再現される病態を「筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome: MPS)」と言います。

 

肩や腰など、普段辛い部位を指圧などで押した際にも「痛い」もしくは「痛気持ちいい」箇所はトリガーポイントが存在し、筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome: MPS)にあると言えます。

 

逆に、誰かに筋肉を揉まれて「硬いね」と言われれも、本人が「痛み」としての自覚症状がなければ筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome: MPS)ではないのです。

ハイドロリリース注射の適応

肩こり、首こり、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)、腰痛など、Fascia由来のものであれば特に効果が期待できると言われています。

逆に、肩関節の炎症(肩関節周囲炎)、頸椎や脊髄の病気(椎間板ヘルニアや頚椎症)、胸郭出口症候群、交感神経の過緊張などには効果が限られます。

 

上記のような疾患に対しては、痛みの根源の治療をメインに、補助的にFascia由来の痛みを合併している場合に筋膜リリース併用されることがあります。

筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome: MPS)の治療法

単純な筋膜性疼痛症候群(MPS)では、適切な局所治療(ハイドロリリース、トリガーポイント注射・鍼、徒手治療など)が実施されれば、1回の治療効果は数日から1週間は持続し、数回程度で改善することが多い傾向にあります。

 

ただし、局所的に凝りが改善されても、凝りを作ってしまう原因がそのままではまた繰り返し発症することが少なくありません。

 

従って、トリガーポイント周囲の局所的な改善と、使い過ぎている・または使えていない筋肉を改善する全身的な改善、両方のアプローチが必要となるわけです。

 

ハイドロリリース注射のメリット・デメリット

現在、筋肉の凝りに対してのアプローチ法は多岐に渡ります。

トリガーポイント注射、マッサージ、カイロプラクティック、鍼灸治療、超音波などを使用した温熱療法、低周波治療(EMS)、ストレッチ、ヨガ、ピラティス、運動療法等が挙げられます。

 

以下にて、ハイドロリリースを他の手法と比較した際のメリット・デメリットを紹介します。

 

 

他の手法と比較したメリット

・直後効果を実感しやすい

・エコーによる投影で的確な癒着ポイントへアプローチが可能

・他の疾患が疑われる場合、スムーズに医療的処置を受けられる

 

他の手法と比較したデメリット

・注射による注入痛が伴う

・稀に内出血ができることがある

・一度打った生理食塩水も1週間ほどで吸収されるため、一時的に痛みが消失しても、生活習慣や身体の使い方が変わらなければ症状は繰り返し出現する

・新しい治療法のため受けられる医療機関が少ない

 

 

 

フォームローラーやマッサージガンなどのアイテムも豊富になり、セルフケアでもある程度の症状の改善はおこないやすい反面、自分にどの手法が最も適しているか迷われている方も多いのではないでしょうか。

 

どの手法が最適なのかは状態や個人差によって異なります。

ハイドロリリース注射のメリット・デメリットも加味した上でご検討ください。

 

 

まとめ

ハイドロリリース注射について解説してまいりました。

 

ハイドロリリースは注射により患部のFasciaおよび筋筋膜の癒着を水圧で剥がしていく施術でありながら、副作用が少なく、直後効果を感じやすい新しい「凝り」に対する治療法です。

 

しかし、効果を保つためには、筋・筋膜、靭帯、などの状態を良好に保つことが大切です。そのため、注射で癒着が取れても、悪い姿勢や必要な筋力が獲得できていなければ、同じ部位に負担がかかり続け、容易に再発します。

再発をさせないためには、原因へのアプローチは必須となることを念頭に、ハイドロリリース注射も選択肢の一つと考えてみてはいかがでしょうか。

 

参考文献

一般社団法人 日本整形内科学研究会 H P

シンポジウム 「疼痛に対する理学療法の科学性を問う」

筋・ 筋膜性疼痛症候群の治療目的について

神田痛みのクリニックHP  TOP画像も神田痛みのクリニックHPより引用させていただきました。