当院では、ランナーの方々の治療を頻繁にやらせていただいております。その中で少し気になったことがあったのでブログ記事としてアップさせていただきます。(ランナーを例にあげさせていただいていますが、どの競技においても共通していえることです)
ランナーは疲労や痛みがあっても休まずにジョグでつなごうとしますが、理由を説明できますか?
ランナーの方々は痛みや疲労があるとジョグでつなごうとします。(ジョギングはウォーキングとランニングの中間を意味します。)
問題が生じているならば、普通に考えれば完全オフにするべきではないでしょうか?
どんな競技でも、競技に限らず楽器演奏でも、一日でも休むと鈍ると妄信的に信じられています。
そこで、調べてみた所、2~3日の完全休息で有酸素性代謝能力や持久性筋力が低下する、つまりパフォーマンスが低下するという文献はどこにも見当たりません。
例えば、よくあるシンスプリントやアキレス腱周囲炎、膝蓋靭帯炎、腸脛靭帯炎などといったオーバーユースによるスポーツ障害になってウォークやジョグでつなぐということを聞きますが、これも疑問が残ります。オーバーユース(使いすぎ)ならば完全に休ませなければいつまでたっても治らないし、中途半端に行うのが一番マイナスになると思います。
ウォークやジョグはランよりは低負荷ですが、結局は傷んでいる部分に負荷がかかるため治りは悪くなります。そればかりか、かえって慢性炎症と化し難治性のものへと変化していく可能性も高いです。
体を動かさないことによる不安と、なるべく身体能力を落としたくないがためにそのように「つなぐ」ということを行うのだと思いますが、結局痛みが長引きそれに伴いパフォーマンスは低下してしまいます。良かれと思ってやっていても却ってマイナスとなってしまうのです。
疲労と痛みはイコールではないということ
痛みがなくても疲労は科学的な面からみて、間違いなく蓄積します。そして筋の収縮能力や代謝の低下を招きます。(疲労を感じさせ身体機能を低下させるセロトニン・ブラジギニン・水素イオン・カリウムイオンなどといった化学物質が蓄積していきます)
練習した分だけ競技力が上がるというのは残念ながら正の相関関係にはないのです(スキルやエクスペリエンスは別です)。
各競技によって根拠の無い慣習はつきものですが、「陸上長距離」「武道」「バレエ」においては特に多い印象があります。
筋肉だけがすべてではありません。
勘違いがないようにしていただきたいのが、筋肉だけが重要ではないということです。
靭帯・腱・関節包・滑膜などには身体活動を調整するセンサーがつまっており、これらは一定の物理的刺激に非常にもろいのです。そして損傷した場合、基本的に元通りには戻りません。意識の無い部分が合理的に働いてくれることによって、初めて機能的な身体活動が生まれます。機能的な身体活動があるからこそ、ケガが減り、競技力が向上し、良い結果が生まれます。これは非常に重要なことです。
完全な休息をとることは、トレーニングにおいてとても大切です。
以上により、高強度のトレーニング後や、痛みの初期のうちに短期に完全休息を行うことが何にも増してメリットが高いのでは無いでしょうか。ちなみに、急性炎症というのは生理学上48~72時間、つまり約3日間で落ち着きます。言い換えると早い段階で3日間オフをとれば長引くケガとならずに済んでしまうのです。早い段階で3日間のオフをとる勇気が、一年後のあなたのパフォーマンスを大きく左右するでしょう。ケガを繰り返したり、長引いてしまっている場合は、治療の内容うんぬんの前にまずは練習計画を今一度見直す必要があります。
結論
「心・技・体」をまとめて考えると同時に、別々にも考えなければなりません。特にアスリートならば『慣習=良い』 と安直に考えずに、しっかりと自身が噛み砕いて本質を理解した上で行動しなければならないと思います。痛みの感覚が個人個人によって違うように、刺激に対する感受性も千差万別です。仲間が大丈夫だから・・・、有名選手がやっているから・・・ではなく、あくまでもあなたに適しているかどうかが一番のポイントです。
恐らく現状で「損」をしているアスリートは相当数におよぶでしょう。治療の本質は、単に痛みを取ることではなく、その軌道修正を行い善の循環に乗せることだと考えています。
競技パフォーマンス向上に必要なのはメリハリです。
アスリートが、心身共に充実した調子の良い期間が短いのは、個々のオリジナルのリズムを把握できていないケースが多いと思います。
調子が良いとついつい頑張りすぎてしまう。結果的にオーバーワークになり疲労やケガとなり、逆にパフォーマンスが後退してしまうということを繰り返しは本当に多いです。
短期的ではなく常に長い目でみたビジョンをもつこと
短期的ではなく、長期のビジョンをもって、「目的は何なのか?」「どこに照準をあわせるのか?」を常に問いながら体造りと競技力向上が図ることが大切です。
一度決めたら、かたくなにそれに従うのではなく、柔軟な計画性が肝心です。常に目標・ビジョンは変えていく・アップデートする必要があるのです。
目標や計画を柔軟に変更すること、これは強くするべきところは強くし、弱くするべきところは弱くするというメリハリをつける、に通ずると思います。
競技力向上のキーワードは『メリハリ』です。
最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございます。
今回の記事はお役に立ちましたでしょうか?パフォーマンスアップについてお悩みの方、なんとかしたいとお思いの方、是非、一度ご相談ください。
SNSにて他の方にシェア頂けると励みになります。
TOPページに戻る:肩こりや首こりの治療や解消なら専門情報サイト肩こりラボ
執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。