肩こりは日本人特有の症状である!という説の真偽の検証

外国人は肩こり知らず!?肩が凝るのは日本人だけ!!肩こりは日本人特有の国民病・・・多くの方が耳にしたことがあると思います。
それらの説は間違いです。
長時間スマートフォンを操作していて首や肩が凝ったという経験は誰もがあるはずです。これは海外でも同じことです。いわゆるストレートネックはスマートフォンの普及に伴い海外でも増えています。ちなみに海外ではText Neckとも呼ばれています。首を擡げ背中を丸める体勢をとることで、首の骨自体が曲がってしまい、体全体の姿勢のみならず子供の体の成長にダメージを与える現代病のひとつとされています。
今、このテキストをお読みのあなた、背中を丸めて画面を見てしまっていませんか?
本題に戻ります。
肩こりが日本人特有でないにしても、日本人が肩が凝りやすい、これは紛れもない事実でもあります。
肩こりという言葉は、夏目漱石の小説「門」で使ったのが最初、肩こりという言葉に該当する言葉が海外には無い、といった説についても、肩こり治療専門家として丁寧に説明いたします。
そして、人体の構造上つまり本当の意味での正しい姿勢もお教えいたしますので、ぜひ、お読みください。

肩が凝るとはどういう症状なのでしょうか?
首から肩、背中、肩甲間部などの部分が、重い、だるい、動かすと痛いなどの症状があると「肩が凝っている」「肩こりが酷い」と認識されています。
肩がこるという表現は、文豪・夏目漱石が最初とされていますが、それよりも前から、肩が凝る、張るという表現は使われていたという記録は残っております。夏目漱石の作品が、肩こりという言葉を広めたというのは事実と思われます。それ以前の江戸時代には、肩こりに該当する言葉として、けんぺき(痃癖/肩癖)と呼ばれていたようですが、一般的ではなかったようです。
肩周辺の「筋肉」が凝っている症状が肩こりです。
肩こりは、肩周辺の凝りの症状全般の総称です。具体的に凝っている部分というのは、肩周辺の筋肉になります。
肩周辺には、「僧帽筋」「肩甲拳筋」「板状筋」「半棘筋」「後頭下筋群=深部に存在し首と頭を連結する四つの小さなインナーマッスルの総称」「胸鎖乳突筋」「斜角筋」「三角筋」「棘上筋」「棘下筋」など、大小さまざまな筋肉があるのです。一部だけですが、次の図をご覧ください。

僧帽筋や肩甲拳筋はしばしば着目されますのでご存じの方も多いと思いますが、実際はそれらだけでなく様々な筋肉が関与しています。筋肉は、数も多く複雑ですから、肩こりを訴える方で、具体的にどの筋肉が凝っているのかを把握できている人は、ごく一部の専門家を除けばゼロに等しいでしょう。
肩というと肩周辺全体を1つの部位として捉えてしまいますが、肩こりと一言でいいましても、人によって様々です。どの筋肉が凝っているかも人それぞれ。肩の筋肉といいましても、何が原因で凝っているのかということは単純にはいえないのです。
肩こりとは「結果」!!肩自体に問題があるから凝るのではありません。
肩が凝っているという症状は、あくまで結果です。肩こり解消にはコレが効く!!この運動すると楽になる、ほぐれる、といったことは、結果を誤魔化しているにすぎません。つまり原因はほったらかしということです。
今一度ご理解していただきたいことは、肩こりという症状は「結果」であるということです。凝った症状だけをいくら緩和しても、また凝ります。凝る→ほぐす→凝る→ほぐす・・・の終わりの無い繰り返しは、凝りをより強固なものにしてしまいます。肩こり解消に必要なことは、肩こりの原因をつきとめ、その原因をひとつひとつ解消していくことなのです。
肩こりという言葉に該当する英語がないという点について
日本語の「肩こり」に該当する単語が、英語には存在しない、という点ですが、日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字を組み合わせて、本当に多彩かつ細かい表現が可能な言語であるということは重要なポイントです。日本語での繊細な表現、ニュアンスを英語で正確に伝えるのは不可能なことが少なくないでしょう。
肩こりと似たような症状を表す英語表現はあります。
たしかに欧米では「肩こり」という単語はありません。しかし、肩こりのような症状を「stiff neck」つまり「首こり」と表現されます。肩を英語ではショルダー=shoulderといいますが、これは肩の関節を意味します。
肩こりというのは、肩周辺の筋肉の凝りです。海外では、首から腰までの筋肉全て「背中の筋肉」なのです。
例えば、腰痛を医学用語でlumbagoともいいますが、一般的にはpain in the lower back、もっと簡潔にlower back pain、またはbackacheと表現されます。backは背中です。背中の痛み、背中の低い部分の痛み、ということです。
ですから、肩周辺の筋肉は、背中の上の方の筋肉ですのでmuscles in upper backといいます。肩周辺の筋肉の凝りによる痛みはpain in the upper backやupper back painと表現されます。
背中の筋肉
肩周辺の筋肉だけでもたくさんの種類があることを先にご説明しました。背中全体となる相当な種類の筋肉があります。
背中の筋肉は、首〜肩〜腰まで全てです。この背中の筋肉の図では右半分が表の筋肉、左半分がその下にある深層部の筋肉の説明になっています。
この筋肉図をご覧いただければ、首の筋肉の影響で肩の筋肉が凝る、腰の影響で肩の筋肉が凝る、といったことは容易に想像できると思います。
つまり、肩が凝る、首が凝る、といっても、局所的ではなく、広い範囲で筋肉の構造を捉える必要があります。
冒頭で肩こりを訴える方で「具体的にどの筋肉が凝っているのかを把握できている人はほとんどいない」と申し上げました。凝った筋肉を特定するためにメスを入れるわけにはいきません。
体の動かし方、動作による痛み、症状から、問題のある筋肉を特定するには、解剖学的な専門知識はもちろんのこと多くの経験が必要なのです。
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