「日常生活に大きな変化はないはずなのにだんだん太ってきた気がする」
このように、年齢を重ねることで体の変化を感じている方も多いでしょう。
原因としてはいろいろなことが考えられますが、もしかすると代謝が落ちたことが大きいかもしれません。代謝とは簡単に言うと体内で消費するエネルギーのことです。体内に取り込まれた栄養素は体内で分解され、活動するためのエネルギーとして利用されます。
代謝には「基礎代謝」と「生活活動代謝」の2種類があります。基礎代謝は人が生きる上で最低限必要な生命の活動に関する代謝で、心臓や内臓の活動、体温の維持などに使われるエネルギーです。特に何もしなくてもこの基礎代謝によるエネルギーは消費されます。もう一つの生活活動代謝は、体を動かすことによる消費エネルギーで、動けば動くほどその代謝量は上がっていきます。
この2つの代謝のうち、特に基礎代謝は筋肉の量によって大きく左右されることが分かっています。筋肉量が多い人は基礎代謝が高くなり、筋肉量が少ない人は基礎代謝が低くなる傾向にあります。つまり筋肉量が多ければエネルギーが自然と消費されやすくなるため太りにくい体質になるのです。冒頭での体質の変化の原因がここにあります。
また年々少しずつ筋肉量が落ちてしまうことにより、肩こりや筋肉痛など様々な症状に繋がっている可能性もあります。生活に無理なく運動を取り入れ筋肉量を戻すことで、これらの改善を見込める可能性もあるでしょう。
有酸素運動で脂肪を減らす
脂肪を燃やして痩せるには有酸素運動が良い、と耳にしたことがあるのではないでしょうか。
体を動かすエネルギーは、体内にあるATP(アデノシン三リン酸)という物質がキーポイントです。このATPがADP(クレアチン二リン酸)とPi(無機リン酸)に分解されるときに発生するエネルギーを利用することで人間は体を動かすことができます。
しかしATPは体内には少ししかないことから、長時間動き続けるためにはADPとPiを再合成させる必要があります。その再合成のために必要な材料を補うために糖などを消費する必要があります。
運動を始めてから時間が経つと次はエネルギーを生み出す過程で脂肪が活躍をしだします。脂肪は1g当たりのエネルギーが糖の2倍以上あり、脂肪を活用することで長時間運動することが可能になります。
脂肪からエネルギーをつくり出すためには、脂肪がTCA回路へ取り込まれる必要があり、脂肪はこのTCA回路の中で形を変えていき、最後には二酸化炭素と水へと分解されていきます。
その過程で生み出されたエネルギーをもとにATPの再合成が行われていくのです。そして、TCA回路の働きを維持するうえで大切なのが酸素です。酸素の供給が足りないとこの回路は機能が滞ってしまい、脂肪をエネルギーとして利用することができなくなってしまうのです。運動中に酸素をしっかりと取り入れTCA回路の機能を維持し、脂肪を効率的にエネルギーに変換する。
これが、有酸素運動と呼ばれる仕組みです。
スロートレーニング
筋肉を成長させるには筋肉に対し刺激を与える必要があります。刺激を与えるには主に日常生活の中で適度に運動するよう心掛けたり、意識的に負荷をかけてトレーニングしたりする方法があります。
筋肉に負荷をかけるトレーニングの1つが「スロートレーニング」です。
スロートレーニングの特徴は、その名の通り動作をゆっくりと行うことで筋肉を長く緊張させ血流を制限させることにあります。血流が制限されることにより筋肉へ酸素が届きにくくなり、無酸素で働く速筋がトレーニングの中で使われ強度の高いトレーニングをした時と同様に筋肉に乳酸が溜まります。
その乳酸の濃度を下げるために筋肉は水分を取り込み筋肉がパンパンに張るパンプアップ状態になります。このパンプアップは基本的に強度の高いトレーニングで起こる現象ですが、トレーニングをスローにすることで比較的強度の低いトレーニングでも激しいトレーニングをしたと筋肉に思い込ませることができ、パンプアップを達成することが可能です。
重い負荷を体にかけないので怪我のリスクが低く、トレーニング初心者でも比較的取り組みやすいトレーニング方法です。
ただし負荷のかけ方が適切でない場合、例えスロートレーニングであっても怪我に繋がる可能性があります。特に普段運動をしていない方、肩こりをはじめ慢性的な症状をお持ちの方の場合、無理のない範囲でトレーニングを行うのが無難です。また体に違和感を覚えた場合はすぐにトレーニングを中止し、専門家に相談することをおすすめします。
部分痩せはできる?
特定の筋肉を発達させたい場合は、その筋肉をピンポイントで鍛えることで実現できます。腕を鍛えたいならアームカールを行い、胸板を鍛えるためにはベンチプレスや腕立て伏せを行えば、狙った筋肉を成長させることが可能です。では鍛えるのとは反対に、狙った場所を細くさせることはできるのかというと、これはノーです。
腕を引き締めるためにはただ腕の筋トレをすればいいとわけではありません。筋肉だけの話で言えば鍛えて太くなることはあっても細くなることはないのです。
また大変誤解されやすいのがたるみの原因についてです。腕やふくらはぎなどがたるんでいるように見えるのは筋肉が弛んで締まりがなくなってしまったからではなく、筋肉が減ったと同時にその周りに脂肪がつき、その結果プヨプヨとたるんでしまっていることが主な原因です。そのため狙った場所を引き締めたいのであればその狙った筋肉を鍛えつつ、同時に周囲の脂肪を減らす必要があります。
しかし気を付けたいのは、特定の部位の脂肪だけを減少させるのは基本できないということです。
運動中に体内のエネルギーが足りなくなると、体脂肪を分解してエネルギーのもとにするためのホルモンが分泌されます。このホルモンは血液に入り全身を巡るため、全身のすべての脂肪のもとに届けられます。脂肪細胞はそのホルモンによりほぼ均等に分解され、遊離脂肪酸になり血液中に流れます。筋肉はこの遊離脂肪酸をエネルギーとして利用するので、特定の部位にある脂肪のみを直接使うことはないのです。
またそもそも筋トレは有酸素運動やスポーツに比べて消費エネルギーが大きくないため、直接脂肪を減らす効果はあまり期待できません。筋トレで狙えるのは筋量を増やすことで基礎代謝をアップさせること。これによりエネルギー消費をしやすい身体を作って体脂肪を減らしたり、日常生活におけるケガなどを防止したりすることに繋がるでしょう。
筋肉が脂肪に変わる?
筋肉は筋トレや強度の高い運動により強く太くなっていきます。そして筋トレや運動をやめてしまうと、筋肉はだんだんと細くなっていってしまいます。
例えば、骨折により手や足にギプスを付けて固定していると、約6週間で筋肉は25%ほど減少してしまうと言われています。また、無重力状態ではカラダにかかる負担が限りなく0に近くなるため、宇宙へ飛び立つ宇宙飛行士の人たちは船内でトレーニングを行っていないと地球に帰還した時に立つこともできなくなってしまうとも言われるくらいに筋肉は減少してしまうのです。
「筋肉は使わないと脂肪に変わる」などと耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。確かに筋肉は使わないと細く弱くなってしまいますが、実際に筋肉が脂肪に変わるということはまず無いと言ってよいです。トレーニングを止めてしまうと筋肉に張りがなくなりプヨプヨしてしまうために、筋肉が脂肪に変わってしまうという勘違いをさせてしまっているのかもしれません。
筋トレをやめて筋肉が減少すると基礎代謝も落ちてしまい、また筋力の低下により疲れやすくなってしまい日常での運動量自体も減ってしまいます。その一方で、日々の食生活があまり変わることがなく過ごしていると、結果として一日の摂取エネルギーの収支がプラスの方向に傾くことで体脂肪が増えていってしまいます。筋肉が細くなり、逆に脂肪が増えることで、さらに筋肉が脂肪に変わったしまったと錯覚をすることになってしまうのです。
筋トレをして手に入れた筋肉がいつか脂肪に変わってしまうということはありませんから、なるべく長くトレーニングを継続していくのが望ましいでしょう。
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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。