前回の記事では、胸の背骨(胸椎)の動きに左右差があると、肩の高さや首の筋肉の使われ方に影響し、首の痛みが「いつも同じ側に出やすくなる」ことについてお伝えしました。
「なるほど!胸椎が関係しているのは分かったけれど、普段の生活では何に気をつけたらいいの?」
「自分でできることはあるの?」
そんな疑問を感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、首の痛みを繰り返さないために、日常生活の中で気をつけたいポイントと、胸椎の動きを整えるための簡単なエクササイズについてご紹介していきます。
特別な運動ができなくても大丈夫です。
普段の動きや姿勢を少し見直すだけでも、首への負担は変わってきます。
「首を頑張ってほぐす」前に、首が頑張らなくて済む体の使い方を、一緒に確認していきましょう。
首の痛みが繰り返される背景にある「体の使い方」
首の痛みを繰り返している方のお話を伺っていると、「首に対して何かしらのケアを行うことで、その場では楽になるけれど、しばらくするとまたつらくなる」という声を耳にすることがあります。
このような場合、首そのものだけに原因を求めるのではなく、「体の使い方に目を向けてみること」が大切になります。
私たちの体は、本来いくつもの関節が分担しながら動いています。
しかし、日常生活の偏りなどによって、「よく動く関節」と「あまり動かなくなる関節」の差が生まれてくることがあります。
座る・立つ・振り向くといった何気ない動作の中でも、動きにくい関節があると、その動きにくさを別の関節が補おうとします。
その結果、首や肩が必要以上に頑張り続けてしまうケースは少なくありません。
特に胸椎は、自分では動いているつもりでも、実際には動きが小さくなりやすい部分です。
この「本来動くはずの胸椎」があまり使われない状態が続くと、首や肩が無自覚にその役割を担い、その結果として首、肩への負担が集中しやすくなってしまいます。
日常生活で見直したい胸椎の使い方
胸椎は関節の特性上、伸展(胸を張る)、回旋(体を捻る)、側屈(横に倒す)という動きを担う大切な部分です。
しかし日常生活を振り返ってみると、胸椎が本来の可動性を発揮する場面は多くはありません。
生活が便利になる現代の生活様式では、意識しないと動かす機会が減り、胸椎は固くなりやすい部分でもあります。
座っている時間が長いほど、胸椎は動きにくくなる
デスクワークやスマートフォンの操作など、長時間座った姿勢が続くと、胸椎はほとんど動かない状態になります。
特に、
・背中を丸めたまま座る
・骨盤が後ろに倒れた姿勢が続く
といった状態では、胸椎は「固定されたまま」になりやすくなります。
この状態が習慣化すると、胸椎を伸展させることが難しくなり、いわゆる背中が丸まった姿勢として定着しやすくなります。
その結果、体をひねる・上を向くなどの何気ない日常動作において、胸椎の動きが減り、首や肩の負担が大きくなってしまいます。
日常動作の中で「いつも同じ向き」を使っている
もうひとつ見落とされやすいのが、日常生活での動きの偏りです。
・いつも同じ方向を向いてテレビやパソコンの画面を見る
・決まった側でバッグを持つ
・同じ方向に体をひねる動作が多い
こうした一つひとつは小さな動きの左右差でも、毎日繰り返されることで、体の動きには少しずつ左右差が生まれていきます。
動きやすい方ばかりが使われ、反対側は動かされないままになると、胸椎の動きに偏りが生じ、左右差のある状態が定着しやすくなります。
振り向く動作を「首だけ」で行ってしまう
後ろを確認する時や、人に呼ばれて振り向く時、首だけを素早く動かす状況になっていませんか?
首の可動域が狭くなっていたり、痛みがある方の多くは、首だけを動かしていることが非常に多いです。
「後ろを見る、振り向く=首を動かすこと」と思われがちですが、本来は首だけでなく、胸椎も一緒に動くことで、無理のないひねり動作が可能になります。
しかし、
・長時間の座り姿勢
・動きの偏った生活習慣
によって胸椎が動きにくくなっていると、その分の動きを首が補うことになります。
このような状態が続くと、頭や首を動かすたびに首や肩への負担が集中することになります。
さらに、決まった方向への動きが多い場合は、左右で筋肉の使われ方に差が生じ、片側だけに負担が偏りやすくなります。
その結果、
・いつも同じ側の首が張る
・振り向く方向によって痛みが出る
といった、左右差のある首の不調につながっていきます。
首の負担を減らすために行いたい胸椎の使い方とエクササイズ
ここまで、日常生活の中で胸椎が動きにくくなりやすい場面や、その結果として首に負担が集中しやすくなる流れについてお伝えしてきました。
では、「首の痛みを繰り返さないために、具体的に何をすればいいのか?」
ここで大切なのは、首を一生懸命ほぐすことではなく、首が頑張らなくて済む体の使い方を取り戻すことです。
まず意識したいのは「首を頑張らせすぎない」こと
首に違和感があると、
・首を回す
・首を伸ばす
・首をマッサージする
といったケアを行う方は多いと思います。
実際、ケアを行うことによって筋肉がゆるみ、その場で楽になることも少なくありません。
ただ、首の痛みの背景に胸椎の動きの少なさが関わっている場合、首の筋肉だけを緩めても、体の使い方そのものが変わらないため、しばらくすると首には再び同じ負担がかかります。
そこで大切になるのが、「首を一生懸命動かす・ほぐす」ことよりも、首が頑張らなくて良い体の使い方を取り戻すことです。
その第一歩として意識したいのが、
首の力を抜いたまま、胸の背骨(胸椎)を動かすという考え方です。
首を使いすぎないための胸椎エクササイズ
ここでご紹介するエクササイズは、胸椎が本来担っている「伸びる」「ひねる」「横に動く」といった動きを取り戻していくものになります。
首を大きく動かしたり、力を入れていくものではありません。
むしろ、首の力は抜いたまま、背骨が動いている感覚を感じ取ることを大切にしていきます。
胸椎を動かすエクササイズを行った後は、振り向く・上を向くといった動作が、これまでより楽に感じられることがあります。
首に負担を感じずに動けるということは、それまで首に集中していた負担が減ったと捉えることができます。
その結果、首や肩の筋肉が必要以上に頑張らなくても、体全体でスムーズに動ける状態へとつながっていきます。
①マーメイド(側屈の運動)

・背骨全体を縦方向に伸ばすイメージを持ちながら、体を横に倒します
・背中が側屈するようなイメージで動かし、脇の下〜お腹の伸びを感じてみます
NG


②レッグプル(胸椎伸展の運動)
・手を後ろに付いて、足を伸ばして座ります
・肩をすくめないように意識しながら、床をしっかり押してお尻を持ち上げていきます
・床を押せてくると肩が下がり、二の腕の裏、背中、もも裏の筋肉の収縮感を感じられるようになります。

NG

レッグプルは最初は筋力的にきつく感じるかもしれません。
ただ、姿勢を保つための筋肉をまとめて使うことができるとても有効なエクササイズの一つです。
首や肩だけに頼らない体の使い方を身につけるためにも、ぜひ日常のエクササイズの中に取り入れてみてください。
まとめ
首や肩に痛みや違和感があると、どうしてもその部分ばかりに意識が向きやすくなります。
マッサージやケアによって楽になることも多く、「首や肩が悪いのではないか」と感じるのは、とても自然なことです。
ただ、今回お伝えしてきたように、首や肩にかかる負担の背景には、日常生活の中で胸椎が十分に動かなくなっている状態や、体の使い方の偏りが関係しているケースも少なくありません。
胸椎は本来、体を伸ばす・ひねる・横に倒すといった動きを担う重要な部分です。
この胸椎の動きが小さくなると、その分を首や肩が補おうとし、結果として負担が集中しやすくなってしまいます。
首の痛みを繰り返さないためには、首だけを頑張って整えるのではなく、
「首が頑張らなくても良い体の使い方」を取り戻していくことが大切です。
日常生活での姿勢や動きに少し意識を向けること、そして胸椎の動きを引き出すエクササイズを取り入れることは、首や肩への負担を減らす大きな助けになります。
首の不調をきっかけに、体の中心である胸椎の動きにも目を向けてみる。
その視点が、症状改善へのヒントになるかもしれません。

執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo
湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業
鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach
目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。


































