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遠方からの通院で慢性的な首こり・肩こりが解消したケース|ケースレポート

概要

Y様 / 静岡県在住 / 33歳 / 女性 / 会社員

症状

肩こり

首こり

頭痛

状態

肩こり、首こりは高校生の頃からあったが、1年前くらいから特にひどくなってきた。

ひどい時は頭痛や吐き気を伴うこともある。

頭痛外来にて精密検査などを行ったが、これといった異常所見はみられなかった。

はっきりとした原因が特定できないまま、徐々に症状が悪化してきたためご来院された。

頭痛が特にひどいときは痛み止めを飲みながら緩和している。

マッサージや鍼を受けると一時的に緩和するが、数日すると元のつらい状態に戻ってしまう。

仕事はデスクワークが中心で、長時間座りながらパソコン作業をしていることが多い。

見立て

まず、首や肩のつらい部分と一致して、頭半棘筋、頭板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋に強い筋緊張がみられる。そして頭半棘筋や僧帽筋を圧迫した際に、普段の頭痛に近い痛みが再現された。

このことから、頭痛は首や肩の筋緊張により、引き起こされている可能性が高いと考えた。

 

そして各関節可動域や筋力を検査したところ、股関節や胸椎の可動域の低さ、姿勢維持のために適した筋(脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋)の筋力が十分ではないことがわかった。

 

上記の関節可動域の低下や筋力低下があると、良い姿勢を長時間キープすることが困難となる。

仕事では長時間座るため、適した筋肉で支えられていないことで首や肩にかなりの負担を強いることとなる。

 

まずは鍼やマッサージで筋緊張を緩和し、自覚症状をできるだけ少なくするよう努める。

次に根本的な部分の改善として運動療法をメインに進めていき、治療期間をあけても大丈夫な状態を目指すこととなった。

治療

初期治療

初期治療では通常一週間に一度ほどの頻度で集中的に治療をしていくが、静岡県からご来院されるため、二週間に一度のペースで行っていくこととなった。

そして次回の治療までに、なるべくこりの少ない状態をキープしていただくために、セルフケアとしてストレッチや体操を通常よりも多く行ってもらった。

治療を開始して約3ヶ月、7回の治療でこりや頭痛の程度がNRS3まで落ち着いたため、運動療法がメインとなる中期治療へ移行した。

※NRS:Numeric Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

まずは治療開始前のような強いこりや頭痛が出ないようにすること。(鍼やマッサージによるほぐし)

そして姿勢改善のため、可動域改善と筋力強化をメイン課題として運動療法を中心に治療を進めた。

まずは脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など姿勢維持のために必要な筋を個々にトレーニング。

それぞれが十分に使えるようになったら、徐々に連動性をもたせるトレーニングへと発展。

トレーニング開始してから間もない頃は、背中の筋を使おうとすると首や肩など、上半身に力が入ってしまっていた。

腹横筋や大殿筋など体幹や下肢の筋肉が使えるようになると、徐々に上半身の余計な力みがなくなり、目的の筋を選択的に収縮できるようになった。

治療を開始してから約1年。治療回数は26回。良好姿勢が定着したため、後期治療へ移行した。

後期治療

Y様とのご相談により、3ヶ月に一度の治療頻度で良好な状態がキープできるようにすることを目標に、徐々に治療間隔をあけていった。

肩や肩甲骨、鎖骨周りが張ることもしばしばあったが、大きく調子を崩すこともなく、良好姿勢やセルフケアの習慣化なども出来ており、3ヶ月あけても問題ない状態となったため、治療はゴール。

治療期間は約1年9ヶ月。総治療回数は31回。

コメント

当院には、北海道から九州までさまざまな地域から治療を受けにいらっしゃいます。

遠方からご来院される方や、さまざまな事情により当院が推奨している頻度で通うことが難しい場合でも、セルフケアや治療内容のカスタマイズにより、根本的改善に向かっていくことは十分可能です。

 

Y様も静岡県からのご来院ということもあり、平均よりも長期間となることを見据えての治療計画となりました。

セルフケアなど地道に続けていただいた結果、着実に身体が改善していき、ゴールへと到達することができました。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首・肩・背中のひどい凝りと痛みが慢性化して約7年間も続いてしまっているケース|ケースレポート

概要

仕事柄うつむく姿勢を長時間しなければならず、元々首肩の疲れや凝りを自覚していたが、年々ひどくなってきており、ある時背中を傷めてしまったことがきっかけで状態が悪化して、痛みや可動域制限等も生じるようになってしまった。

H様 / 東京都在住 / 39歳 / 女性 / 会社員(研究職)

症状

・首こり、肩こり、背中こり
・頭痛
・首から背中の痛み
・首が回らない(首の可動域が狭い)
・手の痺れ、握力低下

 状態

もともと肩こりはあったが約7年前から徐々に悪化してきて、年に2~3回はとてもつらい状態になり、頭痛も出てしまう。仕事は研究職で、顕微鏡を眺めることが多く、加えて長時間のPC作業。

半年くらい前、カバンを持った時に背中がピキッとして痛くなった。以前から、首の動きはよくなかったが、背中を傷めてから痛みでさらに可動域が狭くなってしまった。横を向くことと、上を向くのが制限されている。

整形外科に行ったところ、レントゲンでは異常がなく、湿布と痛み止めを処方された。しばらく様子をみたが、良くならなかった。

とてもつらかったため、マッサージや鍼に行くようになった。

鍼やマッサージを受けると、治療後はラクになるが、翌日にはつらい状態に戻るということを繰り返している。現在は、背中の痛みは最初よりはマシにはなったが、まだ完全に治ってはいない。

首肩背中の広範囲が慢性的に凝っていて、首の可動域も相変わらずせまく、痛みが出る。最近、腕から手にかけてしびれが出てきて、力が入りにくくなったため、再度整形外科にいった。レントゲンとMRI検査を受けて目立った異常はなかったため、リハビリをするように勧められた。

リハビリに、週2回、1ヶ月通ったが、状況に変化はない。

このままだとダメだと思い、根本的に治すために治療院を探していた。

見立て

病気が元になっている症状ではないかの確認

今回のケースは、肩から背中の痛み、首の可動域制限、腕の痺れや握力低下といった症状があったため、頚椎椎間板ヘルニア・頚椎神経根症といった整形外科的な疾患や脳神経外科領域の疾患が元になって症状が出ているのでないかの確認が必要となる。

当院受診の前に医療機関を受診して、疾患が無いことが確認されていたため鍼灸マッサージ治療の適用とした。

診察にて、以下5つを確認

  1. 問診
  2. 触診(炎症所見の確認、圧痛部位の特定、筋緊張の確認、筋肉量の確認)
  3. 可動域
  4. 筋力
  5. 姿勢

1.問診

症状が出たきっかけ、思い当たる原因、発症から現在までの経過、生活習慣と症状の関連性、日常生活動作 等 過去から現在の状況について詳しくお伺いした。

2. 触診

自覚部位の僧帽筋、肩甲挙筋、頭半棘筋、胸鎖乳突筋、板状筋の硬さが顕著であった。症状を自覚する部位に、筋硬結と圧痛を確認することができた。

その他、ハムストリングス、大腿前面、肩甲骨外側筋群、胸筋群、上腕二頭筋の過緊張が見受けられた。

ハムストリングス、大腿前面の硬化は股関節の可動域低下を招き、不良姿勢を招く要因となり、上半身の力みに繋がると考えられる。

上腕二頭筋や胸筋群の過緊張は肩甲骨を外転・前傾させ、肩甲骨外側筋群の過緊張は肩関節が内旋させてしまうため、「巻き肩」を招くことになる。

3. 可動域

頚椎、股関節、胸椎、肩甲胸郭関節の可動域が、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の定める参考可動域に満たないことが確認できた。

  • 頚椎:屈曲、伸展、側屈、回旋、全ての動きで10°動かすと首から背中までの痛みが出現し、再現できる。
  • 股関節:両足屈曲45°、伸展0° 。曲げるのも伸ばすのもどちらも可動域が低い。
  • 胸椎:他動運動、自動運動どちらも伸展が不可。
  • 肩甲胸郭関節:常時外転挙上位、自分自身で内転が不可。内転させようとすると頚部と上肢が過剰に緊張する。

 

Joint by joint theory によると、関節には「可動性(Mobility)」と「安定性(stability)」という役割があるとされています。

  • モビリティ関節 (Mobility joint)   : 動作の際に主に可動する関節
  • スタビリティ関節 (Stability joint): モビリティ関節が可動するのを支える、モビリティ関節に伴って可動する関節

たとえば、胸椎や股関節はモビリティ関節に該当する。H様の場合は、本来可動するべき胸椎や股関節の可動域が著しく低下してしまっており、その代償としてスタビリティ関節である頚椎に可動を強いることになり、過負荷が生じてしまっていることが推測された。

4. 筋力

各種筋力テストにより、腹筋群(特に腹横筋)、大殿筋、上背部の脊柱起立筋の筋力低下が確認された。これらは姿勢を保持するのに重要な役割を持つ。

5. 姿勢

立位、座位の姿勢を確認した。

立位姿勢は、Kendall姿勢の分類における Sway back(後弯平背姿勢)が見受けられた。スウェイバック姿勢とは、横から見ると、頭部が前方に移動し、頚部は軽度伸展位、胸椎は丸まり上半身の後方移動を伴い、骨盤後傾位の状態。

一方、座位は、骨盤が後傾し、頭部前方位。横から見ると、C字に丸まってしまっている姿勢が見受けられた。

しびれと握力低下についての考察

頚部の動きと痛みを観察したところ、動きに伴い首から背中にかけての痛みは再現されるが、全動作を通して腕の痺れは再現することはできない。また、診察時は握力低下も見受けられなかった。

腕の痺れや握力低下は、実際に物も落としたり手作業ができなくなるというわけではなく「動かしづらさ」を自覚する状態。仕事が忙しくなり、肩こりや首こりが酷くなると出現するとのことで、「凝り」に伴って出現するという特徴がある。

診察時に握力を確認したところ、特に減弱している所見は見受けられなかった。整形外科にてMRI検査を踏まえて器質的な疾患(頚椎椎間板ヘルニアや変形性頚椎症 等)や他の病気ではないことが確認されているため、身体所見、徒手検査、経過をふまえて、手のしびれ感と握力低下は、首から上肢にかけての筋疲労や筋の過緊張による「しびれ感」「握力低下感」であると予想した。

首・肩・背中にかけての凝りや痛み、首の可動域制限についての考察

自動運動と他動運動の際の、可動域の違いや痛みの出方を調べた。
※自動運動は、患者さん自分自身で動かすこと。他動運動は、セラピストが動かすこと。

自動運動に比べ、他動運動では痛みは少し軽減した。このことから痛みが軽減したことから頚椎の椎間関節の問題である可能性は低いと予想した。

しかし、わずかながら痛みが出現することから頚椎の椎間関節の問題が完全に除外できたわけではなかった。現段階では筋肉硬化による問題、関節の問題が考えられた。

整形外科で画像検査をふまえて構造的な異常がないことが確認されていること。
今まで鍼やマッサージを行なって悪化はしていないこと。
頚椎が動かせないほどの激痛ではないこと。

上記3点に加えて、当院での検査所見をふまえて総合的に考慮し、頚部周辺の筋緊張、頚椎周囲のインナーマッスル機能低下、頚椎椎間関節の機能低下が痛みや症状を招いている可能性があると考えた。

首こり・肩こり・背中こりについての考察

関節機能の低下や体幹筋力の低下によって、不良姿勢と不良動作を招き、安静時・業務時問わず反復継続的に首肩の筋肉に負担がかかってしまっていることが慢性的な凝りの原因であると推測した。

痛みに関しては、こりが酷くなるにつれて生じることから、筋筋膜性疼痛症候群 (Myofascial Pain Syndrome:MPS)や、頚椎や胸椎の椎間関節の機能不全(関節の動きの不調)の状態と推測した。

動作時に痛みがある場合は身体の使い方を根本から解決しないと良くならない傾向があるため、治療は通常よりも長期的になることが予想できた。仮説を説明し、同意を得られたため、治療を開始した。

治療

初期治療:主な目的は症状緩和。頻度は7~10日に一回。

初回の治療

しばらく鍼やマッサージにいっていないため、自覚症状として、今非常につらい状態。(NRS 10)
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

自覚症状部位に対して3D鍼、IDマッサージを行った。続いて姿勢改善のために、姿勢を崩していると考えられる胸筋群、上腕二頭筋、ハムストリングスにIDマッサージを行った。

セルフケア(日常生活の意識)として、座位時、立位時の不良姿勢改善を試みたが、関節可動域不足と筋力不足で正しい姿勢自体をとることが困難だったため、正しい姿勢をとる前段階と判断した。

そのため、初回のセルフケアは、胸椎の伸展可動域が向上させるためのタオルを用いたストレッチ、座位時の骨盤後傾姿勢の改善のための良好姿勢保持の要点とコツをお伝えした。

2回目の治療

初回治療から1週間後のご来院。前回治療後、少しラクになったが少しずつ元に戻っていき、完全に元どおおりでははいが、前回受診前に近い状態。(NRS 10→9.5)

処置は、初回よりも、患部に対して少し多めに3D鍼を行ない、本日から原因療法として運動療法を開始した。

正しい立位姿勢・座位姿勢をとるのに必要な関節可動域を出す為に背中(胸椎)、もも裏(股関節伸筋群)の静的ストレッチと動的ストレッチを行なった。また、体幹筋力強化のため、お腹(腹横筋)と臀筋(大殿筋)の筋力強化を行った。

セルフケアは同じ。鍼やマッサージでほぐして症状が緩和した状態をキープできるよう、とにかく立位、座位を、力むことなくラクにとれるようにすることが課題である。

3回目の治療

前回から10日後のご来院。1週間は効果がもったが、その後、段々戻ってきた。(NRS 8)

症状緩和に変化が出たことから、3回目の治療も2回目同様、患部に対して多めに鍼治療を行なった。

運動療法では、腹部(腹横筋)と臀部(大殿筋)を入念に筋力トレーニングを行なった。運動療法の時間は、前回は10分間だったが、今回は15分間行なった。

セルフケアストレッチの効果で関節可動域が改善したため、正しい姿勢をとった際の力みが軽減した。そのため日常生活で、なるべく正しい姿勢(立位、座位)を保つよう意識をしていただくことをお願いした。

4回目の治療

前回と同様の経過で本日に至る。悪くはなっていないが状況は大きく変わらない。(NRS 8)

首肩の症状を抱えている箇所だけでなく、筋膜の連結のある背中から腰、上肢にかけても鍼治療を行った。

運動療法は、20分間行なった。

セルフケアは、細かい修正をしたが、おおきく変えず今行なっていることをきちんと定着させることとした。

5回目の治療

この時も大きく状況が変わらなかった(NRS 8)ため、鍼治療の刺激を強めにすることを決断。

この日は、これまで以上に首肩に対して入念に鍼治療を行った。首肩への3D鍼はいつもの倍、時間かけた。

本日運動療法は、セルフケアの確認のみで、105分間ほぼすべて鍼とマッサージにて全身をほぐすことに特化した治療を行なった。

6回目の治療

前回後、二日間「揉み返し」のような筋肉痛が続いたが、その後、これまでと異なり、とてもラクになったのを実感した。

10日経った今の時点でも状態は良好で、痛みは無い状態。こりが少し気になるが、当初と比べると格段にラクな状態まで症状の程度が下がった。可動域制限やしびれ、握力低下、頭痛も無し。(NRS 2~3)

前回同様、3D鍼で入念に首肩背中をほぐし、下肢や上肢はマッサージとストレッチを組み合わせた処置を行なった。

中期治療:主な目的は体幹筋力強化・身体の使い方・姿勢と動作の改善。頻度は2週に一度(セルフケアができる場合)。

7~18回目の治療

前回の治療でさらにもう一段階ラクになった実感あり。症状を感じない時間が増えてきた。前回からの期間を通して、低水準で安定(NRS 0~3)。

症状の緩和とコントロールが可能になったため、今回から中期治療に移行する。

運動療法に重きを起き、筋力強化、可動域改善、使い方改善を図る。

 

処置の内容として以下をH様の治療の基本形式とした。

  • 鍼マッサージ治療は75分間(上半身へのアプローチはほぼ3D鍼のみ、股関節から脚にかけてはIDマッサージ)
  • 運動療法は30分間(体幹の強化)

セルフケアは、症状解消目的のものから、身体造りのためのメニューの割合を増やした。

 

今回以降、中期治療として、約2週間の頻度で12回の治療を行なった。

後期治療:主な目的は自己管理能力の体得・治療からの卒業準備。頻度は段階的に拡大。

19回目の治療

症状は安定(NRS 0~3)しており、つらくない時間の方が長くなってきた。仕事が立て込むと、一時的につらくなるが、セルフケアをして就寝することで、翌日に持ち越さなくなった。

H様の自覚的にはとても良好が状態をキープできているとのこと。

客観的に見ても、姿勢が改善し、首肩の負担が軽減していることが見受けられる。セルフケアも日々行うことができているため、今回以降、後期治療に移行することになった。

後期治療は、自己管理と治療からの離脱が目的となる。

次回は、3週間後とし、問題がなければ、段階的に頻度を拡大していく。

20~22回目の治療

3週間、治療の間隔をあけて問題なし。(NRS 0~3)

セルフケアをきちんと実行できているため、以後治療の間隔を21回目は4週、22回目は5週、23回目は6週と段階的に間隔をあけていく。

23回目の治療

治療の間隔が1ヶ月以上になると、途中、疲労がでることはあったが、セルフケアで解消することができ、以前のようなひどい痛みや凝りにでつらくなることはなかった。(つらくなった時にセルフケアをやろうと思えたこと、セルフケアで症状を解消できたことがこれまでと違った)

次回は2ヶ月後。

24回目の治療

問題ない状況。ゴールの相談をしたが、念のためもう一度、2ヶ月あけてみることになった。

25回目の治療(ゴール)

さらに2ヶ月あけても、症状安定。一過性に症状がでてもつらい状態にはならい。

忙しくて少し気になってもセルフケアでリカバリーができる状態。

症状に悩まされることがなくなり、自己管理できる状態となったので、治療をゴールとした。

コメント

本症例は、凝りだけでなく痛みもあり、非常に慢性化してしまっていました。またお仕事柄とても簡単に負担を減らすことができないということもあり、数回で完治するような軽症例ではありませんでした。

ゴールまで約2年(治療回数25回)かかりましたが、あきらめずに継続したことで、日に日にひどくなって約7年間も続いてしまっていた「つらい凝りと痛みのある生活」から脱することができました。

様々な施術を受けてきたが良くならなかった慢性的な症状が、なぜ完治に至ることができたのでしょうか。

治療の要点は2つあると考えられます。

1)しっかりとした刺激の鍼治療を行った

ひとつめは、中途半端な刺激ではなく、しっかりとした刺激で鍼治療を行い、徹底的に筋肉をほぐしたことです。

当初から鍼を用いて、筋肉をほぐしておりましたが、「かえし」とよばれる副作用面とのバランスを考慮して、極端に強い治療は行なっておりませんでした。

中程度の強さの鍼治療によって、一定の効果はあるものの、症状の緩和という観点からすると前進できていない状況でした。

そこで5回目の治療時に、「かえし」が強く出る可能性があることを説明し、H様の同意が得られたため、強めの鍼治療で、しっかりと首肩背中の筋肉へアプローチを行いました。

この強めの鍼が功を奏して、症状が急激に解消されました。これが転機となり、治療を進めることができました。

 

対症療法はネガティヴな印象をもたれがちですが、根本的な改善のための第一歩として、重要です。

H様におかれましても、H様に適した対症療法がきちんとなされていなかったために、症状がすぐにぶりかえしてしまうなど慢性化してしまっていたのだと考えられます。

症状が解消されたために、姿勢も維持しやすくなり、セルフエクササイズに取り組みやすくなったということもあるでしょう。

 

このようなことから、思い切って強い治療に踏み切って、症状の解消をできたことが、一つ目の要点と考えられます。

誤解のないように付け足しますと、誰でも強い治療をすれば良いというわけではございません。H様にとっては、今回行なった強さが「適した刺激」であったということです。

大切になのは、個々の患者さんにとっての「適した刺激」を行うことです。

2)姿勢意識を徹底していただいた

H様は、お仕事柄首や肩に負担がかかりやすい状況で、仕事中はうつむく姿勢を取らざるを得ず、理想的な姿勢を維持することは症状や身体のコンデションに関係なく困難でした。

そのため仕事以外のシーンにて姿勢に気をつけてお過ごしいただくことをご提案させていただきました。

一日の仕事が約10~12時間、睡眠を6時間とすると、残りの約6時間は移動やプライベートの時間となります。今までは仕事以外のこの約6時間も、常に不良姿勢で首や肩に負担をかけ続けてしまっていました。

この約6時間だけでも、首肩に負担へかかりにくい姿勢を意識して生活していただくことで、今まで16~18時間負担をかけていたものが、10~12時間になります。すると単純計算ではありますが、3〜4割程度の負担が軽減することになります。

仕事中柄、うつむかないということは不可能なわけなので、これならば出来そうということで、H様も納得してくださり、ご協力くださいました。

これによって常にかかっていた負担が軽減していき、症状がすぐに戻ってしまうということの抑制につながりました。

そして、はじめは強く意識しなければできなかった理想的な姿勢が無意識でもできる状態に定着していきました。するといつのまにか、仕事中もうつむかないで良い時間は良い姿勢になっていることに気がついたそうです。

 

生活スタイルは個々で違うのが当然なように、皆一様に生活全てで姿勢を気をつけるべき(姿勢が維持できないから治らない)と決めつけるのではなく、個々の生活を考慮してそれにアジャストさせることが大切だと考えております。

このように、できることからスタートし、まずは仕事以外での負担を徹底的に減らす方針で原因療法を行ないました。H様はとても努力してくださり、改善につながりました。

完治に至れた理由

ひとつ確かなことがあります。

それは、完治できたのはH様の「治したい」という気持ちと努力のおかげということです。

慢性的な症状を改善させるためには、(現時点では)手っ取り早く手間をかけずにやることは困難で、患者さんの努力が少なからず必要となります。

今回の治療は、はじめはなかなかわかりやすい効果を感じることができませんでしたが、そこであきらめず、約2年間という長い期間、しっかりと計画に則り、治療に取り組んでくださいました。

当初はとてもおつらい状態で、大変だったと思います。お伝えしたことを毎日地道に行なってくださりありがとうございました。

約2年間の治療、本当にお疲れ様でした。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


20年来の慢性的な首こりと、凝りに伴う頭痛がでゴールに至ったケース|ケースレポート

概要

整体とパーソナルトレーニングにより、一時のひどい状態からは改善したが、頭痛を伴う首こりによって仕事や日常生活に支障をきたしてしまっている。

O様 / 東京都在住 /  52歳 / 男性 / 会社員(管理職)

症状

・慢性的な首こり
・頭痛

状態

20年くらい前から肩こりと首こりで、様々な施術を受けてきた。

様々受けたなかで、肩こりや首こりを専門とする整体と、整体とは別のトレーナーによるパーソナルトレーニングに行き着き、この二つを併せて行うことで、かなり改善した(NRS 10→5)。
※NRS:Numerical Rating Scale 痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

今は、もうほとんど肩こりの自覚はなく、姿勢も改善したという自覚がある。

姿勢はいつも気をつけているし、ゴルフやウォーキングなどの運動、日々のストレッチも行っているため、日常生活は特に問題がないと自覚している。

最も悪かった時から比べると今は5割ほどの状態だが、首こりだけがどうしても改善しない。肩こりは無いが、首がつらい。

首こりがひどい時は頭痛がして、仕事や日常生活に支障が出てしまう。頭痛は主に右の後頭部から頭頂部、両側のコメカミに生じる。

いくつかの病院で脳や首の検査を受けたが、異常は見つからず、おそらく凝りのせいだろうといわれた。整体で、強く押してもらうと気持ちが良いが、奥の芯の様な凝りが解消されず、改善には至らない。

見立て

【頭痛について】

まず、頭痛があるということで、命に影響を及ぼす疾患の可能性を考慮しなければならないが、当院初診一ヶ月前に、医療機関を受診して専門医の診察を受けて特に病気は無いといわれており、この間も症状に変化がないということから、再度の医療機関受診の必要性は低いと判断した。

触診により、首の後ろから横にかけての筋肉(僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋)や、頭部の筋肉(側頭筋、前頭筋、後頭筋)が緊張していることがわかった。

頭の感覚を担う神経は、首に由来するものがある。大後頭神経、大耳介神経、小後頭神経である。これらは頚椎から出て、首の筋肉を貫いて、頭にむかうため、首こりによって頭痛になることがある。首こりによる大後頭神経痛はその一つである。

また、頭部にも筋肉(前頭筋、側頭筋、後頭筋)があるため、眼、顎、首の酷使によって、これらの頭の筋肉自体が硬くなり、頭痛を招くことがある。このような頭痛が緊張性頭痛である。

本件の場合は、複数の医療機関で検査を受けて、脳や首に異常がないことが確認されており、且つ、症状のある部位の筋緊張が見受けられたため、頭痛は首こりや頭こりによるもの(頭部の筋肉自体が緊張して生じる頭痛と首こりによって大後頭神経が圧迫されて生じる頭痛の混合)である可能性が高いと推測した。

【首こりを招く要因について】

診察時の様子からも、とても姿勢には気をつけていることがうかがえた。

ところが、背スジをピンと伸ばしてはいるが、顎を強く引きすぎてしまっていた。顎を引くと見た目は美しく見えるが、首は力んでしまう。喰いしばりも強くなり、側頭筋が緊張し、頭こりや顔こりにつながってしまう。

真っ直ぐに伸びることを強く意識しているため、見た目は美しいが、力みが強い姿勢といえる。この力みにより、首や頭の筋肉に負担がかかり、凝りが生じてしまっていると考えた。

仕事のストレスが多いことから、ストレスによる凝りもあると思われるが、肉体的な負担がかかっていることも明らかなので、まずは肉体的なものを改善させる方針とした。

治療

慢性的な首こりの解消のために、今まで強いマッサージを受けても解消しきれなかったため、初回から鍼治療を行った。

3D鍼で首の浅層から深層まで筋肉(僧帽筋、半棘筋、板状筋、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋)をひとつひとつほぐした。特に緊張が強い部分(半棘筋、板状筋)は、3D電気鍼(低周波鍼通電療法)も行った。

頭こりや顔こりは、マッサージで丁寧にほぐした。加えて、首と関連性が高い、背中や腰筋肉、肩甲骨の筋肉をマッサージで入念にほぐし、股関節と肩甲骨柔軟性改善のために、ストレッチを行った。

首こりは、1回の治療で、奥に芯となっているように感じていた慢性的な凝りが解消されたとのこと(NRS 1以下)。これにより、これまで週に2~3回は頭痛があったが、2回目の治療までの1週間で、一度も頭痛が出なかった。

首こりの解消も一時的なものではなく、一週間経過時点でも楽な状態が続いている。

 

首への負担を減らすために、原因療法として、同時に姿勢の改善も行った。

運動を行っているため、個々の筋力は十分だったので、それらを効率よく連動させる使い方の練習をした。姿勢の要点も確認して、首や肩に負担をかけない姿勢を体得していただいた。

一週間頻度で3回の治療で症状がほぼ無くなり、治療の内容を姿勢改善に重きをおくようシフトした。

4回目は2週間後。5回目は4週間後としたが、症状でつらくなることはなく、計5回の治療でゴールに至った。

コメント

本ケースの要点は二つあります。

一つ目は、対症療法。首こりや頭痛の元となっていた首の深層筋の凝りをくまなく解消することです。

O様は、これまでもマッサージ等の手技療法により、体の表面からは凝りのポイントに対処をしていました。実際、つらいところを強いマッサージでほぐしてもらうと、少しは楽になっていました。

ですが、いくら首を集中的にマッサージしても完全にすっきりすることはなく、翌日には戻ってしまう状態でした。一方、鍼治療も受けてはいましたが、翌日には戻ってしまうということに変わりはありませんでした。(鍼治療は、ツボや経絡に対して鍼をうつ東洋医学的な手法だったため、患部には直接的に刺してはいなかったとのことです。)

O様がこれまで受けてきた、凝りをほぐすための治療は、凝りのある皮膚上や、遠隔部から間接的には患部に対して対処をしていましたが、皮下にある「凝り」そのものに対して直接的なアプローチがなされていなかったということが想定されました。

そのため、対処を繰り返しても、凝りの「芯」が解消しきれず残ったままだったので、治療を受けてもすぐにぶり返してしまう状態だったのではないかと考えました。

全てではありませんが、慢性化している深層筋の凝りは、マッサージなどの体外からのアプローチでは解消しきれない場合が少なくありません。マッサージで解消しきれず慢性化してしまっている場合は、直接的にアプローチが可能な鍼が有効です。

鍼治療の技法は様々ありますが、このような筋肉性の場合は、ツボや経絡ではなく、対象となる筋肉に直接刺す手法が功を奏することが少なくありません。

O様の場合は、凝り固まってしまっている筋肉を鍼で直接ほぐしたところ、すぐに慢性的な状態から脱することができました。

O様の状態をひとことで言うと、ほぐし不足により慢性化してしまっていた、といえます。

 

二つめは、原因療法。首や肩に負担をかけない姿勢を理解し、体得することです。

実は、背筋をピンと伸ばして顎を引くという見た目が美しい姿勢と、首や肩に負担をかけない姿勢は、異なるものなのです。

O様は、姿勢を正そうと、とても意識をしてくださっていましたが、それが裏目に出てしまっていました。姿勢を正そうとすることで、かえって首を力ませてしまい、良かれと思って行っていたことが、かえって負担となってしまっていたのです。

O様は、日々運動をしていることから、柔軟性や筋力など基本的な要素が概ね良い状態でした。それ故に、簡単な補強運動と、体の使い方を練習し、姿勢のコツをお伝えすることで、すぐに正しい姿勢を身につけることができました

とはいえ、新しいことを体得するということはたいへんなことです。日常生活にて意識を続けてくださったことで、原因療法がスムーズに進み、早期にゴールに至ったと考えられます。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりと鎖骨の関係性|鎖骨をつまむだけで肩こりが解消するって本当!?

鎖骨と肩こりの関係性を詳しく解説していきます

鎖骨をつまむと肩こりに効くって聞いたのですが、本当ですか?

はい。結論からいいますと本当です。正確には鎖骨そのものではなく鎖骨周辺をつまんだりマッサージが効果的です。

鎖骨へのアプローチで期待できる効果は2つあります。1つ目は、今のつらい症状を緩和する効果。2つ目は、姿勢を改善して首や肩の負担を減らす効果。とにかくつらいから何とかしてほしい場合の対症療法だけでなく姿勢の改善といった原因療法にも有効ですので首や肩の不調と鎖骨へのアプローチは切っても切れない関係にあります。ですから当院の肩こり治療でも鎖骨へのアプローチは基本的な施術として行っています。

鎖骨は見た目ではなく、その機能性にも注目してほしい!

きっと多くの方が、毎朝・毎晩鏡で自身の鎖骨を目にしているはずです。ですが、鎖骨の見た目を意識することはあっても、意識して動かしている方はほとんどいらっしゃらないと思います。

鎖骨ってどんな骨?

人間の骨の中で唯一水平に位置しています。ゆるいS字カーブをもつ棒状の形をした長骨です。人間が腕を自由に動かせるのは鎖骨のおかげです。四足歩行の動物には鎖骨はありません。人が体を動かす際にとても重要な骨ですが、人体の骨の中でもっとも折れやすい骨でもあります。そんな鎖骨を「肩こり」の面から掘り下げていきます。この記事を読んで、鎖骨を意識して動かしたくなってもらえたら幸いです。

なんで鎖骨をつまむと肩が楽になるの?

鎖骨ほぐしは肩こりへの対症療法としてなぜ効果的なのか?その理由を解剖学に則り解説していきます。

肩こりと鎖骨ほぐしを繋ぐカギは「僧帽筋」

僧帽筋(そうぼうきん、英語: trapezius)は、肩こりにお悩みの方でしたら、きっと一度くらいは耳にしたりテレビ番組でご覧になられたことがあると思います。

僧帽筋とは頭の後ろの頚椎の中央からはじまり、首・肩・背中を広範囲に覆っている筋肉です。

僧帽筋の場所

 

 

※オレンジ色部分が僧帽筋です

この僧帽筋の過緊張や筋膜異常が、肩こりのつらい症状を引き起こしている大きな要因です。

僧帽筋は背中にありますが「鎖骨」と繋がっています

首や肩のつらい症状は背中側です。僧帽筋も背中の上半分近くを覆っている筋肉ですが、なんと鎖骨と繋がっているのです。

僧帽筋と鎖骨

 

 

鎖骨と僧帽筋は繋がっています

鎖骨は脂肪がつくと見えにくくなる、痩せている人は鎖骨が綺麗といったイメージをきっとお持ちだと思います。ですから筋肉のイメージがない方がほとんどでしょう。

実際は上の画像のように僧帽筋とくっついているのです。

つまり鎖骨をつまむと僧帽筋に影響します。

僧帽筋への影響を考えて上手に鎖骨をつまむ・鎖骨周辺をほぐすことで、肩こりの症状に効果がでるのです。これは直接背中側からアプローチするよりも鎖骨からアプローチしたほうが効果的なケースがあり、鎖骨側だけが全てではございません。

もう少し具体的に詳しく説明します。

僧帽筋は、首・肩・背中といった広いエリアを覆う大きな筋肉です。僧帽筋はひとつではなく、解剖学的には上部、中部、下部の3つのパートにわかれていて、それぞれ異なった役割があります。鎖骨と関係が深いのは上部の僧帽筋です。

僧帽筋の場所

 

 

つらいのは上部の僧帽筋

一般的につらい肩こりは首から肩の関節に向かってのラインです。このラインがまさに僧帽筋の上部にあたります。僧帽筋の上部は、後頭部や頚椎の中央部分からはじまり、鎖骨(正確には、鎖骨の外側1/3の後縁)に至ります。

ストレッチでほぐれる理由・ほぐれない理由

僧帽筋と鎖骨の関係を語る上で、なぜ、ストレッチをすると凝りがほぐれるのか?この理由を簡単に知っておく必要があります。

筋肉は骨とくっついています。くっついている箇所を「付着部」といいます。付着部には、筋膜や腱といった組織があり、筋肉と骨を結びつけています。この付着部には刺激を感知する受容体や神経といった様々なセンサーが密に分布しています。みなさんにとってお馴染みのストレッチですがそのセンサーを上手く利用するのがストレッチの本質です。

ストレッチは可動域改善の代表的手法。ひとことでストレッチといっても様々で、反動をつけずにゆっくりと筋肉を引き伸ばす「静的ストレッチ」の場合、付着部付近に存在するゴルジ腱器官というセンサーに刺激を与え、その反射で筋肉の弛みを誘導して可動域を広げます。

おそらく多くの方がストレッチを物理的な手段・自分でできる・誰でもできる簡単な方法と思われているはずです。

本当に効果のあるストレッチ・プロが人に対して行うストレッチというのは、神経系に働きかけて筋緊張をコントロールするのです。

軽いコリでしたら物理的なほぐしで十分ですが、ひどい緊張状態にある強張った筋肉に対しては物理的なほぐしが通用しないことが多いのです。

緊張が生じている部分を物理的にほぐすだけでなく、解剖学的な筋肉の走行と付着部、そして筋肉を支配する神経の機能を意識した対処が必要なのです。

僧帽筋上部の過緊張を解く鍵が鎖骨

僧帽筋上部の過緊張を改善したい場合、ダイレクトに問題の筋繊維や筋膜へのアプローチはもちろん必要ですが、僧帽筋の付着部である鎖骨へのアプローチが効果を発揮します。僧帽筋の付着部は鎖骨だけではありません。後頭部や頚椎の際にもございます。ですので首や頭へのアプローチは普通に行われています。首や頭と同じように鎖骨が大切なのです。

鎖骨をつまむと僧帽筋は緩む・肩こり解消に効果的というのは正確には鎖骨だけではなく後頭部や頚椎の際といった僧帽筋の付着部へのアプローチが肩こり症状に効果的ということなのです。

首こりと鎖骨ほぐしの関連性

肩こりだけでなく首こりに鎖骨ほぐしの効果はあるの?という方もいらっしゃると思います。もちろん効果あります。

実は鎖骨には、僧帽筋以外にも首や肩の凝りに関係のある筋肉が付着します。

胸鎖乳突筋です。きょうさにゅうとつきんと読みます。

胸鎖乳突筋は、首の横から前に走行する筋肉です。名前の由来は、胸骨・鎖骨から側頭骨の乳様突起を結んでいることからです。いわゆるつらい首筋の痛み・凝りは、まさにこの胸鎖乳突筋のトラブルであることが多いです。

僧帽筋と鎖骨

 

 

胸と鎖骨と頭を繋ぐ胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋は、下を向く時、顎を引く時、首をかしげる時、歯を食いしばる時にはたらく筋肉です。猫背で丸まってパソコン作業をしている時や、下を向いてスマホ操作をしている時は、自覚はなくとも胸鎖乳突筋は過緊張状態となってしまっていることが少なくありません。

凝りだけでなく息苦しさや喉の違和感といった症状を引き起こす胸鎖乳突筋の過緊張

一般的な首こりは、首の後面に症状が出ますが、中には首の横や前につらさを自覚される方がいらっしゃいます。このようなタイプの首こりの方は、凝りだけでなく、息苦しさや喉の違和感などを自覚する傾向があり、お悩み度が高い方が多いです。このような一見イレギュラーパターンと思われる首こりの方が当院にはたくさん来院されるのですが、1つ共通点があるのです。胸鎖乳突筋が過緊張状態に陥ってしまっているのです。

首の前をほぐすと後ろが楽になる?

一方、首の後ろに症状がある場合は胸鎖乳突筋が緊張していないかというとそうではありません。首の後ろ側がつらくて、つらい箇所をいくらほぐしても楽にならない時、胸鎖乳突筋をほぐすことで急激に後面の症状が軽減するということは多々あります。

首の前側にある胸鎖乳突筋をほぐすと首の後ろ側が楽になるのです。

これは不思議なことではなく解剖学的には理にかなっています。

後頭部の胸鎖乳突筋の付着部と僧帽筋の付着部は筋膜でつながっているのです。

ですから鎖骨をつまむことで、胸鎖乳突筋をほぐすことになり、結果首こりの症状緩和につながります。

この胸鎖乳突筋は、首の前や横はもちろん、一般的な後ろ側の凝り解消においてもとっても重要なポイントです。

胸鎖乳突筋以外の鎖骨との関連性が高い筋肉

首の横や前には胸鎖乳突筋以外にも、首肩凝りに関与するたくさんの筋肉があります。

たとえば、広頚筋、斜角筋、肩甲挙筋、舌骨下筋群、舌骨上筋群などがあります。

なかでも鎖骨の関連性が高い、広頚筋に着目してみましょう。

広頚筋

 

 

鎖骨と関連性の高い広頚筋

広頚筋は、首の前面の最表層で、名前通り下顎か胸にかけて薄く広がる筋肉です。

多くの方が気にされている猫背ですが、慢性的な猫背状態ですと、この広頚筋が緊張状態になります。広頚筋が緊張状態になると、凝りの症状に加えて、フェイスラインがぼやける、二重アゴにみえる、首の横シワができる、などといった見た目上の問題が生じます。

上の画像のように広頚筋は鎖骨を覆っています。つまり鎖骨をつまむと広頚筋も同時につまむことになります。

鎖骨をつまむことで、広頚筋をほぐすことができますので、首肩こりの改善のための鎖骨へのアプローチは美的な要素の改善にもつながるのです。

鎖骨への意識変わってきましたか?

肩こりに効く鎖骨つまみは一時的なもの?それとも根本的な改善につながる?

対症療法として鎖骨へのアプローチが首や肩のコリに対して効果的であることはご理解いただけたかと思います。

慢性的な首肩こりでお悩みの方は、対症療法だけではどうしようもない状態にあります。対症療法ではなく原因療法として、鎖骨へのアプローチは意味あるのか?という点について解説させてください。

姿勢が悪いのは結果でもあり原因でもある

まず、首こりや肩こりの原因は様々ですが、多くの方に共通しいるのは不良姿勢です。

良い姿勢に絶対的なものはありません。時と場合によって変わります。

首肩こりの観点からの「良い姿勢」の条件は、頭の重みをいかに首や肩の筋肉に負担をかけずに支えることができるかどうか?負担を軽ければ軽いほど良い姿勢です。

ですから、首肩こりを改善・予防における「良い姿勢」とは、「首や肩の筋肉への負担が最小となる姿勢」です。

具体的には、頭が体の重心線上にあって、筋肉をあまり使わなくてもバランスがとれている状態です。猫背がいけないのは、頭が体の重心線上になく頭を支えるために首肩に大きな負担をかけているためです。

姿勢と鎖骨の関係

そんな不良姿勢と鎖骨の関係性をみてみましょう。

上述しましたように、胸鎖乳突筋は、下を向く、顎を引く、首をかしげる、歯を食いしばるなどの動きに関与します。日常生活で何気なく行っている首や顎の動きと密接な関係があります。そのため日々の動作のなかで、胸鎖乳突筋は負担を受けやすいのです。

胸鎖乳突筋が緊張してしまうと頭を前に傾けてしまいます。横からみて頭が前方へ突き出た姿勢です。頭が前方にあると、僧帽筋をはじめとした首や肩の後面にある筋肉が、頭を支えるために頑張らなければなりません。この状態が続くことで、首や肩の筋肉に凝りが生じます。このような流れから、胸鎖乳突筋の過緊張は凝りを招く元ともいえます。

胸鎖乳突筋をほぐすことによって頭の位置が改善すれば、首や肩にかかる負担そのものが減少しますので、鎖骨つまみは原因療法としての意義もあるのです。

鎖骨を語る上でどうしても外せない肩甲骨

もう一つ、鎖骨を語る上でどうしても外せないのが、肩甲骨との関連性です。肩甲骨は背中にある左右一対の骨ですが、この肩甲骨、骨格という観点でみると、胴体部分と鎖骨のみで連結しています。

僧帽筋と鎖骨

 

 

緑色部分が肩甲骨です。肩関節付近で鎖骨と連結しています。

肩甲骨と上腕骨(腕の骨)の連結部分が肩関節ですので、鎖骨は「上肢と体幹を結びつける唯一の骨」なのです。

その鎖骨ですが、上肢を動かす「機能」として重要なはたらきを担っています。鎖骨は、胴体と肩甲骨を連結させているパーツなので、鎖骨の両端は、胴体と鎖骨の間、鎖骨と肩甲骨の間で関節になっています。

胴体と鎖骨の連結部分を胸鎖関節(胸骨と鎖骨の連結)、鎖骨と肩甲骨の連結部分を肩鎖関節といいます。

実は、胸鎖関節と肩鎖関節の二つの関節の動きの和が、肩甲骨の動きとなるのです。

上肢の動き、つまり肩や肘の動きには肩甲骨の動きが密接に関わります。

たとえば肩関節ですと、天井に向かって真上にバンザイ(180°挙上)をした時、厳密には動作方向によって若干異なりますが、総じて180°の1/3となる約60°は肩甲骨による動きであるのが正常とされています。肩甲骨がきちんと動かない状態ですと、他の関節に負担がいき、それが繰り返されることで炎症や痛みにつながってしまいます。

肩甲骨をきちんと動かせるようにするために鎖骨を意識してほしい

肩甲骨の動きを改善する手段として代表的なのは肩甲骨はがしです。

ご存知、肩甲骨はがしは、肩甲骨に付着する筋肉をほぐすのに効果的です。剥がすのではなく「ほぐす」のです。剥がれたら大変です。肩甲骨はがしで肩甲骨の動きは改善できますが、鎖骨にもアプローチすることでさらなる改善を目指すことができます。

鎖骨がきちんと動くということは、胸鎖関節と肩鎖関節が正しく機能している証拠です。つまり肩甲骨は正常に動きます。筋肉をほぐしても、実際に動く関節部分が動かなければ、肩甲骨はスムーズに動きません。肩甲骨の動きを改善するためには鎖骨の動きも改善することが大切です。

肩甲骨は体の後ろ側、鎖骨は前側にありますので、まさか肩甲骨の動きを改善するために鎖骨が重要とは思いませんよね。女性でしたらデコルテをキレイにみせるために鎖骨を意識されている方は多いかもしれませんが、日頃、ほとんどの方は「鎖骨の動き」を意識されていないと思います。

これからはぜひ、鎖骨・鎖骨の動きを意識してください。

肩関節の痛みや可動域制限がある方は肩甲骨の動きを改善することが大切です。その肩甲骨の動き改善のために、鎖骨にも着目してみましょう。肩関節に不調がなくても、肩甲骨の動きがぎこちないなと感じた場合、鎖骨を意識して対処するのがオススメです。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


NHKガッテン「“新原因”発見!衝撃の肩・首のこり改善SP」で取り上げていただきました

後頭下筋群への鍼

当院で施術を行い現在もメンテナンスでサポートをしているバレエダンサーの杉山周子さんと当院が行なった鍼とその効果についてのVTRが放送されました。

放送スケジュール

2019年2月13日(水)午後7時30分〜

再放送2019年2月16日(土)午前0時25分〜

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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肩こりが○○の原因?○○が肩こりの原因?

当ページをご覧の方は、肩こり首こりで心底お悩みの方が多いと思いますが、肩こり“ぐらい”で・・・なんて思ってしまっているであろう多くの方が勘違いしている肩こり情報を、いくつかに分けてQ&A形式で紹介していきます。

肩こりの仕組み編

 
 

顔のむくみも肩こりが原因説

顔のむくみを肩こりが引き起こしてしまうことはあります。

肩こりは首や頭、そして“顔こり”にも直結します。デスクワークやスマホを見ながらの下向きの姿勢は自然と歯を噛みしめるので顔がこり、血の巡りもわるくなってむくみだけでなく、くまやくすみの原因にもなります。ちなみに首の横ジワも肩こりからくる広頚筋の寄りジワです。

顔こりで悩む人は意外と多い

一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、慢性的な肩こりにお悩みの方は首や肩の凝りだけでなく「顔こり」「頭こり」「胸こり」「脇こり」などにお悩みの方もいらっしゃいます。

実際当院にはそのような患者さんが多数ご来院しています。みなさんもご存知のとおり、体は全部つながっています。解剖学的にいえば体は筋膜によって全身がひとつながりになっているのです。ですので一見離れているように思える箇所も実は関連性があるというのはごく自然なことなのです。

頭痛が原因で肩がこる

肩こりから頭痛になることは実際多いので、どちらとも言えませんが、偏頭痛から肩こりになるケースは確かに多いです。緊張性頭痛の症状として感じる人もいます。

慢性的な肩こりが、頭痛や吐き気を招くことも珍しくありません。肩こりは複合的な要因によって発症する不調症状のひとつです。自己判断や軽視せずに治療を受けましょう。

痛みにはペインスパズムサイクルという考え方があります。

ペインスパズムサイクルの説明図

慢性化する痛みは、このような負のスパイラルに陥っているケースがあります。この図にありますように、痛みから筋緊張、凝りへとつながってしまうことは実際にあります。

注意していただきたいのは、痛みというは体から異常事態を知らせるサインだということ。特に頭痛には重大な病気が隠れている可能性があります。いまはロキソニンをはじめ病院へいかなくても第1種の薬が手軽に購入できるようになりましたが、頭痛でお悩みの際はできるだけ医療機関を受診してください。

寒い時期ほどこりやすい説

寒いと前かがみになり肩をすくめがちなので、力が入りやすくなるのは確かです。

ですが、寒さに限りません。季節の変わり目である春や秋、梅雨入りも肩こりシーズンです。自律神経の乱れからくる肩こりもありますから、気圧に変動によって影響を受けやすい時期=こりやすい時期といえます。

夏は薄着で首肩が無防備な状態ですが、そこにエアコンの冷たい風があたり冷えて筋肉が硬直してしまうということがあります。また、患者さんから電車やショッピングモールのエアコンが強くて凍えてしまうという声をしばしば耳にします。夏は外にいたら熱中症、室内では寒すぎてしまうという温度調整の難しさがあり、そこから不調につながってしまいがちです。環境温度の寒暖差が大きいと自律神経の乱れも生じやすくなってしまいます。空調機能が発達した現代ならではともいえるでしょう。

人体は環境の変化に影響を受けやすいのです。気温だけでなく、気圧や湿度の「変化」に体は反応します。日本には四季もあり、外部環境に変化が生じやすいため、こういった観点からも私たち日本人に肩こりが多いのでしょう。

ストレスがたまると肩こりもひどくなる説

「病は気から」といわれるように、カラダに悪影響を及ぼすストレスが肩こりの原因になっているケースは多いです。

ストレスが高いと体は緊張状態になり、常に歯を食いしばるため、首や肩に大きな負担がかかります。ですので気持ちのリフレッシュはとても大切です。

肩こりの原因は3つありますが、それらは独立していない

肩こりの原因として肉体・自律神経・精神の3つがあります。これら3つはそれぞれが独立したものではなく、相互に関連し、影響しあっています。ストレスと肩こりを考えるうえで重要なのが自律神経です。

肉体の状況を絶えず監視して脳に連絡する自律神経は、体の恒常性維持機能としても働いています。肉体的な管理だけでなく、精神の状態を肉体に反映させる働きもあります。ですので、自律神経は肉体と精神を結び付けるはたらきがあるとも考えることができます。健全なる精神は健全なる身体に宿る、心身相関という言葉があるように、肉体の不調が精神の不調につながることはありますし、その逆もあります。

肩こりなんて気のせいであるという説

ストレスが元になっている肩こりは実際にあります。それ故「肩こりは気のせい」といわれることはあります。すべての肩こりが気のせいであるとは絶対に言えません。

精神と肉体はつながっていますから、はじめは精神の不調だったのが肉体の不調に波及してしまうということは多々あるわけです。

例えば、ストレスが元による胃潰瘍。これは精神的不調が肉体の不調として顕在化してしまう例です。

ストレス→胃酸分泌過多(攻撃因子増)・粘膜保護成分分泌低下(防御因子減)→胃粘膜損傷→潰瘍形成・・・という流れです。

さすがに胃潰瘍を「気のせい」とする人はいないでしょう。

胃潰瘍は胃粘膜の形状変化が目視で確認できるためわかりやすいのですが、肩こりはそのような確認が困難です。ですから「気のせい」と片付けられやすいのです。

肩こりは、姿勢や筋バランスといったフィジカル面の問題だけでなく、ストレス元となって生じることは少なくありません。肩こりを解消・予防するためには、ストレッチや体操といった肉体面への対処だけでなく、ストレスへの対処をすることも重要です。現代社会において、ストレスを完全に無くすということは不可能です。ですので、ストレスをため込まないための工夫やリフレッシュ方法の体得も併せて意識するようにしましょう。

肩こりは血行不良が原因?

血行不良による肩こりもありますが、最新の医学では、それだけではないことが分かってきました。血行不良を改善すれば治る説はもはや過去の話。常識が変わりつつあります。

これまでは肩こりの病態は血行不良、つまり形態的変化がないのもとされてきていましたが、近年では肩こりの部位に筋膜の形態的異常や異常な毛細血管の増殖が生じてしまっていることがわかってきています。

筋膜の形態的異常はレントゲンや一般的なMRIでは可視化できず、精度の高いエコーや特殊なMRIでないと観察できません。異常な毛細血管は血管造影という整形外科的には一般的用いられない手法によって可視化することができます。血行さえよくすれば肩こりは治るという考えはもう通用しないのです。肩こりを「気のせい」という精神的なものだけでは片づけられないように、肩こりには人によって異なるとはいえ明確な原因があります。それがハッキリすれば治るのです。

 

 

「外人は肩こり知らず?」「肩こりで死んでしまうことがあるって本当?」「肩こりは働き盛りの人特有?」「親が肩こりだから自分も肩こり?遺伝なの?」といった肩こりにまつわる噂や説についてのQ&Aを以下にまとめました。

肩こりのウソ!?ホント??

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりのウソ!?ホント??

雑学編

当ページをご覧の方は、肩こり首こりで心底お悩みの方が多いと思いますが、肩こり“ぐらい”で・・・なんて思ってしまっているであろう多くの方が勘違いしている肩こり情報を、当記事で一回リセットしてください。

 

肩こりくらいじゃ死なない説

軽視は禁物です!肩こりという症状は、椎骨動脈解離をはじめとした様々な病気の症状としても表れます。まずは、病気か、ただのコリなのか判断することが重要です。

骨の異常や内科的な病気が元になっていないどうか確認するためにも、肩こりを自覚している方は必ず病院を受診してください。

特に、命を左右するような重大な病気が隠れている肩こりのサインとして気を付けてほしいのは以下5点です。

  • 急激に発症したひどい頭痛
  • 嘔吐(吐き気だけでなく実際に吐いてしまう)
  • 呂律がまわらない
  • 手足が自由に動かない
  • めまいで立っていられない

このような症状が出た場合には、緊急で医療機関を受診してください。

肩こりに悩むようになったのは戦後?

厚生労働省の調査によれば、20年ほど前から肩こりに悩む人が明らかに増えています。ですが、すでに江戸時代に「肩癖」という現在の肩こりに該当する言葉が存在していました。そして肩こり治療で用いられる鍼(ハリ)は、なんと安土桃山時代に始まっています。この歴史的事実から、おそらくその頃から症状があったと考えるのが自然でしょう。

厚労省による国民生活基礎調査を過去に遡って確認したところ、少なくとも平成4年から国民のかかえている自覚症状の上位三位以内に肩こりが入っていることがわかりました。スマートフォンの普及が、首肩への負担を増大させたのは間違いないでしょう。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21kekka.html

肩こりで悩むのは日本人だけ?アメリカ人には肩こり知らずって本当?外国人は本当に肩がこらない?

肩こりは日本人だけのものでなく外国人ももちろん肩がこります。たしかに日本人に比べれば少ないかもしれません。近年のスマートフォンの普及で海外でも肩こりが増えてきているとも言われています。

肩こりという言葉は海外にはないという情報から、肩こりは日本人だけという間違った認識が広がってしまいましたが、オイルマッサージやスパなどの文化がヨーロッパ発祥であるように、筋肉が疲労してコリを訴えるのは昔から世界共通です。

詳しくは下の記事をご参照ください。

肩こりは日本人特有の症状である!という説の真偽の検証

肩こりは体質or遺伝だから治らない説

体質や遺伝的になりやすい人は確かにいるかもしれません。ですが、猫背の人ならコリが出るのは当たり前です。いくら休んでも回復しない、疲れていないのにコリを感じるといった症状は、明らかに体の状態は異常なのです。これは体質・遺伝の問題ではありません。

一口に「肩こり」といっても様々あります。中には病気が元になっている肩こりもあります。病気が元になっている肩こりを症候性肩こりといいます。症候性肩こりは中には、脳卒中、心筋梗塞、悪性腫瘍、動脈解離など命に支障をきたす疾患が元になっていることもあります。このように重大な病気もあれば、風邪の諸症状として生じることもあります。ですので、首や肩の凝りがつらいなと感じたら、まずは医療機関を受診して症候性肩こりではないか医師に診断してもらいましょう。

症候性肩こりではない場合、つまり病気が元になっていないものを本態性肩こりといいます。

本態性肩こりの原因は大きく3つあります。

  1. 姿勢や筋肉バランスなどフィジカル面の不具合
  2. 自律神経の乱れ
  3. 精神的ストレス

本態性肩こりの多くはフィジカル面の不具合に起因しています。自律神経のバランスやストレスへの耐性は少なからず体質によるものもあるでしょう。骨格は遺伝や先天的なものによる影響が強いです。これらはなかなか改善しづらい部分があるのは事実です。

ですが、姿勢や筋バランスは後天的な要素が大きく、日常生活による影響が強いです。つまり、働きかけ次第で十分改善できます。

マッサージは強ければ強いほどいい?痛ければ痛いほど効果ある?

強い・痛い=効いていると考えるのはよくある勘違いです。マッサージで痛みを感じるほどの強い刺激を与えると、炎症が起き筋肉が強張ってしまうので逆効果です。

それを見越した上で、一時的に強いマッサージを取り入れることもありますが、ただひたすら刺激の強いマッサージや施術を受けるのは、常習化し悪化する危険が大いにあります。

強さや刺激を求めすぎてしまっている人は、その思い込みをリセットしましょう。

マッサージの強さは、絶対的な圧力の指標があるわけでなく、受け手である患者さんが「心地よい」と感じる程度が適した強さになります。「イタ気持ちよい」というように、多少のマッサージ特有の痛みや響きがあるのが心地よいと感じる方はいますが、これが苦手な方もいます。ですので、マッサージの適正な強さは個々によって異なるのです。

原則として「イタ気持ちよい」を超えて「痛い」のを我慢しながら処置を受けてもよい結果にはつながりにくいです。かえってつらくなってしまったり、傷めてしまうこともありますので痛いのを我慢して受けることは絶対に避けましょう。

慢性的な凝りにお悩みの方のなかには、強いマッサージを受けるとスッキリするという方はいらっしゃることでしょう。ですが、人は刺激に慣れてしまいます。だんだんとより強い刺激を求めていき・・・終わりがないばかりか、楽になる時間も少なくなってしまいます。鎮痛剤を常用しているうちにだんだんと効かなくなってしいいつのまにか量が増えてしまうといのと同じです。これは一時的な緩和の繰り返しによって、かえって慢性化してしまっている状態です。

肩こり治療において、症状を解消すること=対症療法は必要なことです。ですが対症療法だけでおわるのではなく、原因療法も併せて行うことが大切です。

ひどく慢性化してしまっている方を実際に治療する場合、早期に症状緩和をするために仕方なく一時的に強い刺激をいれなければないことは確かにあります。(治療方法や方針は事前に相談をしてから行います。弱い刺激で治療をすすめる方法もあります。)当然のことですが、慢性の度合いが増すほど治療はたいへんになります。だからといってすでに慢性化してしまっている方はあきらめないでください。どうせ治らないからとあきらめて一時しのぎを繰り返すことをやめ、一日でも早くに根本的な改善を考えてみましょう。

まださほど悩ましくない方は是非予防に努めていただきたいと思います。

肩こりになるのは働き世代だけ?

デスクワークや接客などの仕事による肩こりだけでなく、ここ数年におけるスマートフォンの普及により子供や学生さんにも慢性的な首肩こりが増えています。退職された方でも、慢性的な首肩こりで悩まれている方は多く、決して働き盛り特有のものではございません。

肩こりは「中高年の方がなるもの」「歳のせい」では片づけられない状況です。たしかに、働き盛りである30~40代が多い傾向にはあります。肩こりは、老若男女誰しもがなり得るものです。

注目すべきは10代の肩こり患者さんが増えているということです。実際当院にも親御さんから相談されることは増えてきています。具体例として、首こりに伴う重度の緊張性頭痛によって登校ができなくなってしまっていた小学校6年生の患者さんがいらっしゃいました。複数の病院でも異常が見当たらず、緊張性頭痛という結論にいたった経緯があります。12歳なのに体がとても固く、姿勢も乱れていました。治療では、凝りをくまなく解消し、正しい姿勢がとれるよう体幹のコンディションを整える治療、セルフケア指導を行ったところ頭痛は解消し学校にも通えるようになりました。

もしお子さんが首肩の不調を訴えたら「子供なのに何をいっているの?」ではなくまずは親身に話をきいてあげてください。

まずは病院へ行きましょう。たとえ整形外科的な異常がなかったとしても、姿勢や筋力バランスなどによる本態性肩こりの可能性があります。

「子供なのに」という大人の偏見によって重症化させてしまうこともありますので、肩こりがもつ従来のイメージにとらわれないようにしましょう。

今の子供たちは、昔よりも格段に首肩に負担がかかっています。教科書の大きさもA4サイズへと大型化、つまり重さが増え、ランドセルも大きくなりました。「自分が子供の頃は・・・・」という経験や思い込みは今の子供達には当てはまらないことが多いのです。

スマホは画面を正面から見れば首肩に負担がない?

姿勢だけでなく、眼精疲労からも肩こりにはなります。持ち方以前に、まずスマホの使いすぎる習慣を見直しましょう。スマホを持つ時は、持っていない手を持っている腕の脇の下にいれて支え、画面は目線の高さが理想です。

画面の大型化で、両手で操作が必要な機種が増えてきていますが、両手での操作はどうしても下を向きやすいので、片手で操作できる小ぶりな機種を選ぶのはカラダのことを考えれば賢い選択です。また、バンカーリングなどの便利グッズも利用しましょう。

いま、このテキストをお読みのあなた、横になりながらスマホを操作していませんか?

寝ながらのスマホ操作は、本当に体にはよくありません。

スマホに限らず読書もよくありません。

きっと誰もが、最初は楽なのに、だんだんツラくなってくる症状を自覚しているはずです。

横になっていることで頭部の重量が免荷される分、猫背姿勢や下を向いてのスマホ操作に比べると首や肩の筋肉にかかる負担は軽減されます。この点は良いのですが、仰向けの場合は腕を持ち上げて保持しなければならず肩に負担がかかります。さらに横向きの場合は体が丸まって巻き肩姿勢をつくってしまいます。うつ伏せの場合は首で頭を支えなければならず、首肩の筋肉へ負担がかかります。加えて、このような姿勢としての問題だけでなく、暗い部屋で液晶画面を見ることで眼への負担が懸念されます。眼精疲労から首や肩の凝りが生じてしまうことは少なくありません。

いいことが何一つありません。

とはいえ、小さなお子さんがいる方であれば、子供の寝かしつけのさいに早くに床に就かなければならず、良くないとわかっていたとしても寝ながらスマホ操作をせざるを得ないという方もいらっしゃることでしょう。そのような方はなるべく長時間にならないように意識をするようにしてください。

肩こりが原因で頭痛になる?肩こりが原因で顔がむくんでしまう?血行不良が肩こりの原因?といった肩こりを引き起こす原因、逆に肩こりが原因で引き起こす症状にまつわるQ&Aを以下にまとめましたので、そちらも是非ご覧ください。

肩こりが○○の原因?○○が肩こりの原因?

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


医道の日本 10月号の巻頭企画で取り上げられました。

鍼灸師の方・目指している方なら知らない人はいない「医道の日本」

鍼師・灸師・あん摩指圧マッサージ師になるためには国家試験に合格しなければなりません。そのために学校で3年間勉強が必要ですが、学校で使用する教科書は、おそらく全て「医道の日本」社刊行のものです。教科書以外にも鍼灸・マッサージに関する書籍・DVDも数多く世に出ています。書籍・DVDに限らず、治療現場で扱う鍼灸用品・治療の備品をはじめとしてあらゆるものを「医道の日本」社で取り扱っています。

その「医道の日本」社が毎月発行している月刊「医道の日本」という雑誌があるのですが、2015年10月号と11月号の2号にわたってkatakori LABSが取り上げられました。

肩こり患者をなくすために専門コース院を開業

月刊「医道の日本」の10月号の巻頭特集が専門コース院で、肩こりに特化した専門コース院として先日、取材を受けました。

肩こりラボには、肩こりは治るものという「非常識」を「常識」にするという大きな目標があります。

世の中の一般の方の考えの変化には、まず、セラピスト自身が変わることが必要です。なぜなら、改善する方法なんて教わっていない、教科書に載っていない、治るなんて信じられない、治す必要なんてあるの?という施術者が殆どです。

治らないものという認識のもと確信をもって緩和に徹しているリラクセーションのプロフェッショナルもいますが・・・肩こり改善をうたっておきながらそもそも施術者自身が治らないものという認識をもっていて、コリをほぐして一時的な緩和と快楽を提供し良い状態をキープするという名目で繰り返し通ってもらうことを促す・・・促さざるを得ない状況に、その中途半端さに矛盾と葛藤を抱えていらっしゃるセラピストの方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

筆者も修行時代にこの矛盾と葛藤に悩んでいた一人です。katakori LABSの起源はそこからでした。

月刊「医道の日本」は、鍼灸に携わる人・将来携わる人が読む専門誌です。一般の方が目にする雑誌ではございません。鍼灸に携わっている方・将来携わるであろう方々に「肩こりラボというところは、肩こり患者をなくすために専門コース院なんだ」と認識していただき、そしてkatakori LABSの「志」を知っていただいて、そこから広がる可能性に期待しています。

この大きな機会を与えてくださった「医道の日本」社には大変感謝しております。

肩こりラボは、東洋医学ではなく、西洋医学的根拠に基づいた治療院です。鍼灸は東洋医学がベースではありますが、西洋・東洋に関係なく「治す」というゴールは共通のはずです。

医道の日本

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


健康 2015年7月号で「耳たぶマッサージ」を紹介。

丸山太地 耳たぶほぐし

天気痛へのセルフケア方法について取材が、6月2日発売の雑誌「健康」に掲載されました。

肩こりラボブログでよく読まれている記事のひとつに「今すぐできる天気痛解消法の紹介。」があるのですが、そこで紹介している耳たぶマッサージについて、先日取材を受けました。

誌面上では、耳たぶほぐしという名前での紹介になっております。

誰でも、いつでもどこでもできる便利な方法ですが、あくまでセルフでできる「対症療法」にすぎません。詳しくは「今すぐできる天気痛解消法の紹介。」をお読みください。

 

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりは日本人特有の症状である!という説の真偽の検証

外国人は肩こり知らず!?肩が凝るのは日本人だけ!!肩こりは日本人特有の国民病・・・これらは多くの方が一度は聞いたことがあるフレーズではないでしょうか。それらの説、実は間違っています。

誰しもスマートフォン操作の時間が長くなれば、首や肩が凝ってしまうという経験をしたことがあるはずです。これは海外でも同じことです。いわゆる「ストレートネック」と呼ばれる状態は、スマートフォンの普及が進むにつれ外国でも増加しており、海外ではText Neckとも呼ばれています。首を擡げ背中を丸める体勢をとることで、首の骨自体が曲がってしまい、体全体の悪い姿勢を助長するのみならず、子供の体の成長にも悪影響を及ぼす現代病のひとつと言われています。

このブログを今読んでくださっているそこのあなた、背中を丸めて画面を見てしまっていませんか?

本題に戻ります。

肩こりが海外の方も同様に起こりうるとはいえ、日本人は肩が凝りやすい、これは紛れもない事実でもあります。

肩こりという言葉は、夏目漱石の小説「門」で使ったのが最初、肩こりという言葉に該当する言葉が海外には無い、といった説についても、肩こり治療専門家として丁寧に説明いたします。

そして、人体の構造からみた本当の意味での正しい姿勢もお教えいたしますので、ぜひお読みください。

 

肩が凝るとはどういう症状なのでしょうか?

首から肩、背中、肩甲間部などの部分が、重い、だるい、動かすと痛いなどの症状があると「肩が凝っている」「肩こりがひどい」と表現されることが多いでしょう。

文豪・夏目漱石が「肩がこる」と表現をしたことが最初とされていますが、それ以前の江戸時代では、肩こりに該当する言葉として、けんぺき(痃癖/肩癖)と呼ばれていたようです。しかしこちらは一般的ではなかったようで、夏目漱石の作品が、肩こりという言葉を広めたという説は事実と思われます。

肩こりとは肩周辺の「筋肉」が凝ることにより現れる症状です。

肩こりは、肩周辺の凝りの症状全般の総称です。具体的に凝っている部分というのは、肩周辺の筋肉になります。

肩周辺には、「僧帽筋そうぼうきん」「肩甲拳筋けんこうきょきん」「板状筋ばんじょうきん」「半棘筋はんきょくきん」「後頭下筋群こうとうかきんぐん=深部に存在し首と頭を連結する四つの小さなインナーマッスルの総称」「胸鎖乳突筋きょうさにゅうとつきん」「斜角筋しゃかくきんしゃかくきん」「三角筋さんかくきん」「棘上筋きょくじょうきん」「棘下筋きょくかきん」など、大小さまざまな筋肉があるのです。一部だけですが、次の図をご覧ください。

肩周辺の筋肉

特に着目されることの多い僧帽筋や肩甲拳筋はご存じの方も多いことでしょう。しかし、実際はそれらだけでなく様々な筋肉が関与しており、肩まわりの筋肉は数も多く複雑がゆえに、肩こりを訴える方でも実際にどの筋肉が凝っているのかを認識できている人は、ごく一部の専門家を除けばほとんどいらっしゃらないでしょう。

肩こりと一言でいいましても、三者三様です。肩周辺全体を1つの部位として「肩」と捉えてしまいがちですが、どの筋肉が凝っているかも人によって異なります。肩の筋肉といいましても、何が原因でどこの筋肉が凝っているのかということは実際に細かくみていかなければわからないのです。

肩こりとは「結果」!!肩自体に問題が肩自体に問題はありません。

肩が凝っているという症状は、原因ではなくあくまでも結果です。肩こりを改善するにはコレが効果的!!この体操をするとラクになる、凝りがほぐれていく、といったフレーズは、結果を紛らわしているにすぎません。つまり原因はほったらかしということです。

今一度ご理解していただきたいことは、肩こりという症状は「結果」であるということです。凝りという症状だけを一生懸命ほぐしても、すぐにまた凝りは発生します。凝ってはほぐす・凝ってはほぐす・・・というゴールの無い繰り返しは、凝りをさらに強固なものにしてしまうのです。肩こり解消において重要なことは、肩こりの原因を見極め、その原因に対して個々にアプローチして解消していくことなのです。

肩こりという言葉に該当する英語がないという点について

日本語の「肩こり」に該当する単語が、英語には存在しない、という点ですが、日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字を組み合わせて、本当に多彩かつ細かい表現が可能な言語であるということは重要なポイントです。日本語での繊細な表現、ニュアンスを英語で正確に伝えるのは不可能なことが少なくないでしょう。

肩こりと似たような症状を表す英語表現はあります。

たしかに「肩こり」という単語は英語にはありません。しかし、肩こりのような症状を「stiff neck」つまり「首こり」という言いまわしがされています。英語では肩をshoulder(=ショルダー)といいますが、これは肩の関節自体を指します。

肩こりとは、肩周辺の筋肉が凝ることを指します。海外では、首から腰までの筋肉全て「背中の筋肉」なのです。

例えば、腰痛を医学用語でlumbagoともいいますが、一般的にはpain in the lower back、もっと簡潔にlower back pain、またはbackacheと表現されます。backは背中です。背中の痛み、背中の低い部分の痛み、ということです。

ですから、肩周辺の筋肉は、背中の上の方の筋肉ですのでmuscles in upper backといいます。肩周辺の筋肉の凝りによる痛みはpain in the upper backupper back painと表現されます。

背中の筋肉

背中の筋肉

先程、肩周辺の筋肉は複雑でたくさんの種類があることをご説明しました。背中全体となると相当な種類の筋肉があります。

背中の筋肉とは、首〜肩〜腰まで全てを指します。この背中の筋肉の図では右半分が表の筋肉、左半分がその下にある深層部の筋肉の説明になっています。

この筋肉図をご覧いただければ、首の影響により肩の筋肉が凝る、腰の影響により肩の筋肉が凝る、といったことは容易に想像できるでしょう。

つまり「肩が凝る」「首が凝る」を解決させるには、症状が出ている部分をみるのだけではなく、広い範囲で筋肉の構造を捉える必要があります。

冒頭で肩こりを訴える方で「具体的にどの筋肉が凝っているのかを把握できている人はほとんどいない」と申し上げました。凝った筋肉を特定するためにメスを入れるわけにはいきません。

体の動かし方、動作による痛み、症状から、問題のある筋肉を特定するには、解剖学的な専門知識はもちろんのこと多くの経験が必要なのです。