体のひねり(胸椎回旋)を高めるために知っておきたい胸椎の回旋と側屈の関係性について

以前の記事では、脊柱の曲げ伸ばし(屈曲と伸展)についてお話ししました。

今回はその続きとして、脊柱の回旋と側屈についてお伝えしていきます。

今回は特に、胸椎の「ひねる動き(回旋)」と「横に倒れる動き(側屈)」に焦点を当てていきます。

胸椎の下に位置する腰椎は、構造的な特徴から側屈や回旋の可動域が限られており、これらの動きは主に胸椎が担っています。

また、脊柱の動きには「カップリングモーション」と呼ばれる特徴があり、回旋と側屈は体の構造上、同時に起こりやすい関係にあります。

そのため今回は、細かな角度の話というよりも、「回旋と側屈がどのように連動しているのか?」ということを中心にお話ししていきます。

回旋動作は、日常生活の中でも多く使われますが、特にスポーツ動作では頻繁に求められます。

「ひねりの左右差」を感じている方や、「体のひねりにくさ」を感じている方にとって、体の考え方を見直すヒントになれば幸いです。

脊柱のカップリングモーションとは〜 胸椎の回旋と側屈が同時に起こる理由 〜

脊柱の動きには、「カップリングモーション」と呼ばれる特徴があります。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと  「体をある方向に動かそうとすると、別の動きも自然と一緒に起こる」という体の仕組みのことです。

胸椎では特に、

  • ・ひねる動き(回旋)
  • ・横に倒れる動き(側屈)

がセットになって起こりやすいという特徴があります。

たとえば、体を右にひねろうとしたとき、胸椎では

  • ・右への回旋
  • ・右への側屈

がセットで生じやすくなります。

これは「癖」や「使い方の問題」ではなく、「胸椎の関節の向きや肋骨との連結といった構造上の理由」によるものです。

そのため、胸椎の回旋を考える際には、側屈も頭に入れて考えておくとスムーズな胸椎の回旋につながりやすいです。

なぜ胸椎が「ひねり」の主役になるのか〜腰椎との構造的な違い〜

体をひねる動きというと、「腰でひねっている」イメージを持つ方も多いかもしれません。

しかし実際には、ひねり動作の主役は胸椎です。

腰椎は、体を前後に動かすことは得意ですが、ひねる動きはあまり大きく行えない構造になっています。

一方で胸椎は、背骨の形や肋骨とのつながりの影響で、ひねりや側屈が行いやすい作りになっています。

つまり、腰を守るためにも、ひねり動作は「腰ではなく胸椎で行われる」ことがとても大切なのです。

胸椎回旋が制限されている人に多い体の使い方〜側屈の可動性が少ない胸椎〜

「体がひねりにくい」「左右差を感じる」という方々を見ていくと、胸椎の回旋そのものが硬いことと合わせて、側屈がうまく出ていないことがあります。

本来、胸椎では「ひねる動き」と「同じ方向への側屈」が自然にセットで起こります。

しかし、首や肩に力が入りやすかったり、腰や首だけで無理にひねろうとすると、この自然な動きの組み合わせが失われてしまいます。

そのため、胸椎本来の動きの組み合わせを取り戻していく必要があります。

胸椎回旋の可動域を高めるために大切な考え方〜「同方向への側屈」というヒント〜

胸椎の回旋を高めたいとき、「体をひねる動き」だけを一生懸命行おうとしても、思うように動かないことがあります。


その背景には、「回旋とセットで起こるはずの側屈が使われていない」というケースが少なくありません。

ここで、日常生活の動きをひとつ例に挙げてみます。

たとえば、「少し後ろに置いてある物を取ろうとする場面」を想像してみてください。

右後ろにある物を取る時は、体を右にひねると同時に、体が少し右側に倒れることで自然と手を伸ばすことができます。

このとき体の中では、「右にひねる動き(回旋)」と「右に倒れる動き(側屈)」が、無意識のうちに同時に起こっています。

もし仮に、立った時点、座った時点ですでに体が左に倒れていたとしたらどうでしょうか?

右に倒れる余白が少ないため、右後ろへ体をひねる動きも、どこか窮屈になりやすいです。

回旋したい方向に、自然に側屈できる「動ける余白」があることが、しなやかな回旋にはとても大切になります。

そのため、胸椎の回旋を改善したい場合でも、「ひねる動き」だけに注目するのではなく、

同じ方向へ体を倒せるかどうかという視点を持つことで、回旋がスムーズに出てくることがあります。

回旋と側屈をセットで捉えることで、胸椎の動きの感覚は大きく変わってきます。

まとめ

今回は、背骨の動きの特徴である「カップリングモーション」に注目し、特に胸椎の回旋(ひねり)と側屈(横に倒れる動き)の関係についてお伝えしてきました。

胸の背骨(胸椎)は、体をひねるときに、ひねる方向と同じ方向へ自然に少し倒れながら動くという特徴があります。

そのため、「体がひねりにくい」と感じている場合でも、ひねる動きだけを頑張るのではなく、横への動きが一緒に使えているかという視点が、とても大切になってきます。

姿勢が崩れやすい方や、肩こり・背中の張りを感じやすい方では、この横への動きとひねりの連動がうまく使えず、動きがぎこちなくなっていることがあります。

その結果、本来は胸の背骨が担当するはずの動きを、首や腰が代わりに頑張ってしまい、負担がかかりやすくなってしまいます。

次回は、こうした胸椎の動きが、首や腰、肩の不調とどのようにつながっていくのかについて、もう少し具体的にお話ししていく予定です。


執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo

湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach

目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。