様々な肩こり対策の中でも今回は運動に注目。「肩こり解消を目指す方運動を始める時」に知っておきたいトレーニングの原理と原則などについてご紹介していきたいと思います。
トレーニングの原理と原則
運動におけるトレーニングとは、体が運動刺激に適応するという性質を利用して、運動を行うことで意志力を含めた体力を高めることや、その過程自体をさしています。
行うには専用の器具を使ったり、ジムに通ったり、有酸素運動を行ったりと様々な方法があります。
トレーニングの種類(目的別)
1、筋力を鍛える(レジスタンストレーニング)
2、敏捷性を鍛える(スピードトレーニング)
3、瞬発力を鍛える(パワートレーニング)
4、持久力を鍛える(持久力トレーニング)
5、バランスを鍛える(バランストレーニング)
6、柔軟性を鍛える(柔軟性トレーニング)
健康維持の観点では、「持久力トレーニング(スタミナ・全身の持久性向上を目的にしており、心肺機能強化に繋がりやすい)」、「バランストレーニング(日常生活において重要な体のバランス強化を目指している)」、「柔軟性トレーニング(ストレッチなど、身体の関節や筋肉などを柔らかくすることを目指している)」が推奨されることが多いでしょう。
どんな目的であれトレーニングを行う場合、安全にかつ効果的に行うことが大切です。
厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」では、「トレーニングの原理と原則」に従うことを推奨しています。
参考:運動プログラム作成のための原理原則 -安全で効果的な運動を行うために | e-ヘルスネット(厚生労働省)
ここでは「e-ヘルスネット」の内容をもとに「トレーニングの原理と原則」を紹介しつつ、肩こり予防へ活かすヒントについてもお話していきたいと思います。
トレーニング原理は3つ
まずは、トレーニングの原理から見ていきましょう。
1、過負荷の原理
2、特異性の原理
3、可逆性の原理
1、過負荷の原理
効果を得るためには、体にある程度の負荷をかけなければいけない、ということです。効果を期待できる負荷の強度は「日常生活で使う力」が最低ラインであり、それ以上の強度を目指す必要があります。ただし負荷が強ければよいというものではないため、専門家の監修のもとでトレーニングするのが無難でしょう。
肩こりは筋力が低下して、正しい姿勢を保持できないことが原因の1つです。そのため、適度な負荷を体に与え筋力アップを狙うことが解消に繋げられる可能性があります。負荷とあわせて正しい姿勢で行うこともポイントです。無理したり間違った姿勢で行ったりすると、体を痛めることにもなるため注意しましょう。
2、特異性の原理
運動中に使われるエネルギー・筋肉活動と関係する能力が増す現象のことです。たとえば、一か所だけトレーニングで筋肉をつけても、他の部分には筋肉は付きません。特異性の原理をふまえ、鍛えたい箇所を意識しながら行う必要があります。
なお肩こりを予防したい場合は特定の筋肉も大切ですが、全身の筋肉バランスも重要です。筋肉バランスを整えることで、正しい姿勢もキープしやすくなります。
3、可逆性の原理
獲得済みの筋肉であっても、トレーニングを止めると失われてしまうということをいいます。筋肉は運動を継続しなければキープすることができません。
運動を中止した方が肩こりになったと感じた場合、この可逆性の原理により筋肉が落ちた可能性もあるでしょう。少しずつでも定期的に続けることが大切です。
トレーニングの原則は6つ
トレーニングを行うときに意識するといいことや、実施する際のポイントをトレーニングの原則として6つご紹介します。トレーニングの原理と合わせて実践することで効果も期待しやすくなるはずです。
1、意識性の原則
2、全面性の原則
3、専門性の原則
4、個別性の原則
5、漸進性の原則
6、反復性・周期性の原則
1、意識性の原則
トレーニングの内容や意義や目的を理解してポジティブに取り組むことをさします。意義や目的を理解することで自分に必要な運動を選びやすくなり、期待する効果を生み出しやすくなるでしょう。
またトレーニングを行うことに疑問があったり目的がわからなかったりすると、辛い時間として感じます。そのため意義などを理解することでモチベーションにつなげやすくなります。
2、全面性の原則
トレーニングは行う種類によって、運動量やアプローチできる部分が異なります。筋力・柔軟性・有酸素能力などを意識してさまざまな方向からバランスが良くなるよう体を鍛えることが全面性の原則です。
全面性の原則は肩こり予防という観点においても効果的だといえます。
3、専門性の原則
トレーニングを行うときはそれぞれの目的にあった筋力・有酸素能力・筋パワーといった機能を高めることです。スポーツにおいて特定の競技で強くなるためにはその競技で必要となる筋肉を中心に行うことがポイントとなります。そして健康維持という観点ではストレッチ・有酸素運動といった内容を中心に行うことが多いです。
たとえば肩こりになる原因の1つに、正しい姿勢を保持できないことがあります。改善するためには、ストレッチで緊張した体をほぐしたり、体の姿勢を保つのに有効な抗重力筋のトレーニングを行ったりすることなどが考えられます。
4、個別性の原則
行う運動の内容は、それぞれ個人のスキルにあわせて決定する必要があるということです。運動能力は年齢だけではなく、元々の能力などでも異なります。そのため、すべての人が同じトレーニングのメニューを実施できたり、求めた結果を残したりできるわけではありません。
そこでメニューを個人のレベルに合わせ決定することが大切です。個人に合わせるのは効果を期待するだけではなく、安全性を高めるというのも目的でしょう。
5、漸進性の原則
状況に応じて運動の量や強さなどを徐々に高めることを言います。最初は苦手意識を持っていたり体力がなかったりしても、トレーニングをしていくことで徐々に運動能力が向上します。そのため、適切なタイミングでトレーニングのメニューを更新しましょう。
肩こりにアプローチをするトレーニングを続けている間に、体の状態が変わった場合、強度を高めるメニュー・異なる部位にアプローチするメニューに変更または追加することも必要かもしれません。
6、反復性・周期性の原則
個人差はありますが、トレーニングのメニューはある程度の期間をかけて繰り返すほうがよいということです。
肩こりは主に筋力が低下したり、血行が悪くなったりすることで引き起こされます。一度、肩こりが改善されても、ぶり返す可能性はゼロではありません。辛い肩こりにならないためには、トレーニングを続けていくことがポイントです。
トレーニングの順番
筋トレは全身の筋肉をバランスよく鍛えることでより効果が高まると言われています。そこで気になるのが、一度のトレーニングで全身の筋肉を鍛えるためにいくつもの種目を行うときは、どのような順番で進めていけばいいのかということです。
その答えは、まず下半身の種目、次に上半身の種目、そして最後に体幹という順番です。なぜこの順番になるのか、それは筋肉の大きさが関係しています。
最初に行うべき下半身のトレーニングですが、下半身の筋肉はその筋肉量が最も多く、運動時にたくさんのエネルギーを必要とします。そのため体にエネルギーが十分に残っている最初に行うのが効果的なのです。この理由に従い、次に上半身、そして最後に体幹という順番になります。
また、下半身や上半身のトレーニング時には姿勢を維持するために体幹の筋肉が同時に使われています。よってこの姿勢の維持の働きを持つ体幹を最初に鍛えてしまうと、下半身・上半身を鍛える際に体幹が疲れていて姿勢がうまく保てず、正しい姿勢で行うことができなくなってしまう可能性があります。そのような理由でも、体幹は最後に行うことで全身の筋肉をより効果的に鍛えることができると言えるでしょう。
まとめ
肩こりは年齢を問わない症状です。さまざまな対策がありますが、『適度な運動や体操で体を動かす』という対策を考えている場合、まずは肩こりになっている原因とトレーニングの原理と原則を知って正しく肩こり対策を行うことが大切です。
すぐに改善するのは難しい場合が多いため、継続しやすい方法で少しずつ運動やストレッチを続けていきましょう。
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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。