※画像をhttps://time-sharing.jp/sharing/8476-2から引用させていただきました
梅雨は不調の方が多い
春と夏に挟まれた雨の季節、梅雨。街角に咲く、満開の紫陽花が美しく、つい足を止めて眺めてしまいます。
この季節ならではの風情がある一方で、しとしと降る雨やどんよりとしたはっきりとしない天気が続き、気持ちが晴れないだけではなく、カラダもなんだか重だるいなという方は少なくないのではないでしょうか。
実際、当院でも、毎年春から梅雨にかけて、首や肩の凝りだけでなく、頭痛、めまい、倦怠感、寝ても疲れが取れない などといった、病気ではないけれど生活の質を低下させてしまうような不調を訴えてご来院される方が増える傾向にあります。
秋から冬にかけて寒くなる季節なら、なんとなく想像しやすいですが、だんだんと暖かくなるこの時期になぜ不調に見舞われる方が増えてしまうのでしょうか。
「五月病」と言われるように、年度変わりの疲れが時間差で出るといった社会的な要因など、様々なことが関係しているとは思います。
加えて、春から初夏にかけては、寒い冬からだんだんと暖かくなるとはいえ、ポカポカ暖かくて過ごしやすい日もあれば急に冷え込む日があったり、一日のなかでも朝夕での気温差、外と屋内での気温差など、気圧の変化や寒暖差が大きく天候をはじめとした気象条件が不安定な時期となります。
梅雨は特に気圧の変化が著しいため、前述したような気象条件による影響を受けて、身体が不調をきたしてしまっているということもあるのかもしれません。
天気によって、体調が影響を受けるというのは昔から経験的にいわれてきました。「雨が降る前は古傷が疼く」「頭痛がつらいと思ったら台風がきていた」「自分の身体は天気予報より正確だ」という方はいらっしゃることでしょう。
このように、気圧、気温、湿度などといった気象条件に伴って不調が生じるものを「気象病」と総称し、天気が崩れる時に慢性的な痛みや症状が悪化するものを「天気痛」といいます。
天気痛の実態を調査するために「ロート製薬」と「ウェザーニューズ」によって、2020年6月15日〜21日に実施された、全国の16,482人を対象にしたアンケートによると、天気痛は平均週2日発症し、5人に1人が生活への支障あるという結果が出ています。
当調査では、女性の約8割は天気痛持ちという結果も出ており、日本全国に天気痛で困っている方が多数いることが伺えます。
※参考 https://jp.weathernews.com/news/32013/
なんで不調になるのか、どうすれば解消の手掛かりになるのか
以前から経験的にいわれていた気象条件によって体調が変化するという現象が、単なる気のせいではなく、きちんと理由があったということを医学的に解明したのが、医師で医学博士の佐藤純氏です。
佐藤氏は、気圧の変化による影響は内耳にある気圧感受システムが関与し、気温の変化による影響は皮膚に分布する神経の受容変化によって生じていることを明らかにしました。
また、慢性的な痛みを抱えている方の一部では、気圧や気温の変化に対して、自律神経が過剰に反応することがあるということを発見しました。
天気痛をはじめとした気象条件の変化による不調のメカニズムは、耳や皮膚に備わるセンサーが、気圧の変化や気温の変化をキャッチして、気象条件が変化するに伴って自律神経のバランスを変化させることで生じているのです。
そして、慢性的な痛みや症状を抱えている方の方が、自律神経のバランスが崩れやすいので、天気痛が生じやすくなります。
さて、天気痛をはじめとした梅雨時の不調に対して何か自分でできる対策はあるのでしょうか。心を込めて、てるてる坊主を量産しても、再現性のある対策にはなりそうもありません。
天気や気象条件をどうにかすることはできませんので、影響を受ける自身の身体に着目してみましょう。
上述しましたように、佐藤氏の研究により、慢性的に痛みを抱えている方の中には、気象条件の変化に伴い自律神経が過剰に反応しやすい(自律神経のバランスが崩れやすい)方がいるということがわかりました。
これが改善のための重要なポイントとなります。
実は、これは私たちも日々の治療のなかでしばしば経験します。
慢性的な首こり・肩こりや腰痛といった症状を抱えている方は、気象条件によって不調を訴える方がとても多いのです。
そして、このような天気痛を訴える方が、首こり・肩こりや腰痛といった慢性的な症状を改善させていくにつれて、気象条件による体調の変化が出にくくなり、天気痛が改善していくのです。
鎮痛剤が手放せない状況だった方が、多少症状は出るが薬に頼らないで過ごすことができるようになったという方は少なくありません。
運動が解消の手段の一つ
肩こりや首こり、背中や腰の筋肉のこわばりに伴う重だるさ、なども痛覚神経によって知覚されるわけですので、広義には慢性的な痛みと考えてよいでしょう。
肩こり・首こり、腰痛といった生活習慣による諸症状に心当たりがあるという方は、日頃から筋肉の硬直や疲れを溜め込まないようにするということ、蓄積させないで日々解消することが大切です。
そのために、オススメなのは身体を動かすことです。マッサージでほぐすのも良いのですが、ほぐすことに加えて、可能ならば是非ストレッチや運動など、能動的に動かしていただきたいのです。
自らの力で筋肉を使って動かすことで、固くなっている部分の血行も良くなり、筋線維や筋膜も伸びやすくなっていきます。筋肉を動かし、使うことで筋ポンプ作用が働き結構の改善につながります。筋肉がきちんと機能していないから、力が入りにくく、身体が重く感じるということもあります。
また、運動には自律神経を整えるはたらきもあります。天気痛をはじめとした気象病の本態は自律神経の乱れですので、日頃から自律神経のバランスを整えるようにすること、そして乱れてしまった時に整える術を体得することは意味のあることです。
運動は、体力や体調に応じて行っていただきたいのですが、低負荷の有酸素運動で、可能ならば汗ばむくらい体を動かしてみましょう。
日頃運動習慣が無いという方は、いきなりジョギングをするのではなくウォーキングがよいです。息が上がる程度の、できる限り速めのウォーキングにしましょう。はじめは15分程度の短い運動でも良いので、生活習慣の中に組み込んで、無理なく続けられそうなことからはじめていただけたらと思います。
コロナ禍の影響によって、以前よりも外出する機会や運動量が減ってしまったという方は少なくないでしょう。心身ともに重だるくて動く気がしない・・・という時こそ、是非、積極的に身体を動かして汗をかいてみましょう!!
身体が重だるく、固まってしまっていて運動などできない・・・という方は、マッサージなど何らかの方法でほぐして、症状を緩和し、身体を動かせる状態に整えたうえで、少しずつでも身体を動かすようにして、運動の習慣をつくっていってみましょう。
どうしようもない時以外は、極力セルフケアで対処して自己管理できる術を身につけていっていただけたらと思います。
注意!病院に行かないといけないパターンもあります
ここまで梅雨時の体調不良対策として、多少体や気持ちが重だるくても、運動をして汗をかくことをおすすめしてきました。
ですが、天気痛にお悩みの方の中には、激しい頭痛や眩暈、吐き気で寝込んでしまうという方もいらっしゃいます。このような方の場合は、我慢をして運動することで悪化してしまうこともありますので、無理をしないようにしてください。
そのような方は、痛みや不調に耐え、天気が良くなるのをただ待つだけでなく、天気痛外来/気象病外来を一度受診して、きちんと検査をしたうえで、医学的かつ専門的な対策をするようにしてみましょう。
また、気象病や天気痛はあくまでも慢性的な症状です。急激に、日常生活に支障が出るほどの強い症状が出た場合は、速やかに専門の医療機関を受診するようにしましょう。
頭痛の場合は脳神経外科、眩暈や耳鳴りの場合は耳鼻咽喉科、をまずは受診してください。
激しい頭痛と共に嘔吐してしまう場合、手足がうまく動かせない、呂律がまわらないといった症状が出る場合は緊急性が高いので、救急車を利用することも考慮して、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
併せてこちらの記事もご覧いただけますと幸いです。天気痛対策のセルフケアを記載しています。
『 低気圧による体調不良の仕組みを知って気象病・天気痛・気圧痛を解消!!病院いくなら何科?という疑問にもお答えします! 』
参考文献
1)佐藤純・ 気象変化と痛み 脊椎外科 29:153-156, 2015
2)佐藤純・ 天候変化と慢性疼痛. ペインクリニック 27 : 603-609, 2006
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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。