投稿者「肩こりラボ」のアーカイブ

首肩腰でお悩みの方を迷わせない!病院・鍼灸院・整骨院・サロン選びのコツ

つらいんだけど、症状をうまく説明できない、病院に行っても何科に行けばいいか分からないし、待たされるのもイヤ。

病院以外でどこに行けば・・・街を歩けば、肩こり〜腰痛の改善、歪みを矯正すれば治るといった効果をアピールするお店、整骨院が至る所に・・・なんとコンビニの数より多いのです。そして鍼灸・マッサージだけではなく、リンパマッサージ、アロマやリフレ、整体、 整骨やカイロプラクティックなど種類も多い!!

そんな肩こり・腰痛で、どこに行くのが正解なのかがわからない方のために、詳しく解説します。

失敗しない整骨院の選び方、鍼灸院選びのコツといった内容のホームページがたくさんございますが、みな内容は同じ・文章もどっかでみたころあるものばかりです。

風邪をひいた、頭痛がひどい、熱っぽい、といったカラダの不調を感じた場合、とにかくすぐになんとかしたいレベルであれば、まず近くの病院へいくことを考えるはずです。

これが「ギックリ腰」だったらどうでしょう?

病院へいきたいけど、腰を痛めると立つのも座るのもキツいので、横になって痛みが治まるまで待つしかない、そうせざるを得ない場合がほとんどかもしれません。

では「肩こり」だったら?

近所の整体・マッサージ店・整骨院にいってみようかな、と思うでしょう。

病院・クリニックに行ってみようと思う人は、極めて少ないはずです。

実は「腰痛」も「肩こり」も背中の筋肉の問題という意味では同じ括りなのでですが「腰痛」であれば治したい、と誰もが思うのに、「肩こり」となるとコリをほぐしたいと思うのです。

もちろん、腰痛は生活に支障をきたしますが、肩こりは我慢できてしまいます。

我慢は日本人の美徳でもあります。ですが、我慢のし過ぎは身体にとってよくありません。

医療費の増大が社会問題となる中、我慢よりも「予防」が大切です。

我慢しすぎて悪化するよりも、軽度なうちに対処して悪化するのを防ぐのも立派な「予防」です。

カラダの不調を感じたら、何をすべきか、どこに相談にいくべきか・・・そんな生活の知恵のご紹介です。

病院・医師・鍼灸院・整骨院の選び方

長文で恐縮ですが、ツライけどどこにいけばいいか分からない、どこにいっても同じ、と思われている方に「治したい」「治療を受けてみよう」という前向きな気持ちになっていただければ幸いです。

整体・マッサージに通う目的が曖昧になってませんか?まず目的を明確にしてみましょう!!

マッサージや整体に通われている方の目的は、大きく2つに分けられます。

あなたはどちらでしょうか?

  1. ヒーリング目的

    症状の緩和や気持ち良さを希望

  2. セラピー目的

    とにかくツライ症状を治したい!

くつろぎ・心地よさによる心身のリラクセーション目的の方は良いのです。

本当は治したいのに、治療に見せかけたリラクセーションでしかないお店に疑問に思いながらも通い続けている、心当たりございませんか?

言われるがまま、通い続けているけど、一向に良くならないし、良くならないのは私のせいにされる・・・そして、職業柄仕方ない、もう年齢だから・・・と治療自体を最初から諦めてしまわれている方が多いのです。

なぜ、そのように思ってしまうのでしょうか?

ひょっとしたら、ただの思い込みかもしれません。

ここで、質問です。

「時間や費用の問題は気にしないでください。時間は少しかかりますが必ずよくなります。治療受けますか?」

こう言われたら、どう答えますか?

今、このページを読まれているあなたは、もちろん、誰もがYESと答えるでしょう。

問題は、時間や費用です。

時間や費用を無駄にしたくない!であれば、自ずと行き先は決まります。

肩こり・腰痛を根本的に改善するには、どこに行けばよいの?病院?整体?

肩こりが酷いから病院へ行こうと思われる方は少ないと思います。

これは、凝りというものを、運動しすぎて筋肉痛になった、という一過性の症状と同じように捉えている人が多いためです。

病院へ行くほどでもない、もめば良くなる、ゆっくりお風呂につかれば・・・という認識が大半です。

治療が必要な酷い肩こりになると、いくら患部を温めても、温泉にいくら入っても緩和程度ですぐにまたつらくなります。

一時的ではなく、ゆっくり体を休めれば良いと考えて休暇をとっても、体が休まらないばかりか睡眠を長時間とっているのに、かえって首がツラくなってしまいます。

放置はいけないとネットやテレビなどで紹介されているセルフケアを様々試しても一向に前に進まない。

これを解決するには、適切な治療を受けなければ解決はしません。

となると、まず病院を検討されるでしょう。肩こり外来の専門の病院というのはほとんどありません。では、病院以外の選択肢となると、整体、整骨、接骨、鍼灸、マッサージ、骨盤矯正、カイロプラクティック、ほぐし・・・いくらでも思いつくことでしょう。

それらの中で、治療できるところは限られるのですが、それは一旦置いておきます。

ネット上の情報の見極め方

インターネット上で治療院を探される場合、スマホの検索窓やGoogle、口コミサイトで、症状+地名、整体+駅名などで検索して探すことでしょう。MAPアプリで、症状を入れて一番近いところをとりあえず探す場合も多いと思います。いずれにせよ、画面に出てくる情報で、最初に注目するのは、★の数でしょう。

口コミや評判を参考にする際に、見方を変えてみてください。

マッサージや整体、カイロプラクティックのお店の口コミで「長いことお世話になっています。」「3年通い続けています。」といった絶賛するコメントを目にされたはずです。多くの方が好印象を抱くはずです。一方で、どうせサクラでしょ?とお思いの方もいらっしゃるでしょう。

実際、サクラは多く、本当の利用者の口コミを見分けるのは難しいかもしれません。大手口コミサイトでは、そもそもネガティブな投稿は掲載されないことが大半です。なぜなら多くの人に利用してもらうことが目的なので、すべてがよいところ、であったほうが都合がよいのです。

不自然に絶賛されている口コミが多いところは、投稿者の口コミ一覧をみてみましょう。普通は行動範囲はある程度限定されるものですが、そうでない投稿の場合、要注意です。そして、他の投稿者の口コミ一覧もみてみましょう。面白いことに、投稿先がかぶっているケースが多いのです。このような口コミがいくつか発見できてしまった場合は、そこの口コミはどんなにたくさんあっても・・・信じるか信じないかはあなた次第、となります。

話を、通い続けてます、といった口コミの話に戻します。

単純に気持ちいいから、通うこと自体が好きだから、そして、スポーツをされている方や、日々の身体のメンテナンス目的ならよいのです。予防のために定期的に通うことは必要です。ですが、肩コリや腰痛を何とかしたい人が通い続ける必要がある治療院というのは、治せない、または敢えて治さない、治療とは名前だけの治療院です。

その理由は、そのような治療院の目的が「通い続けてもらうこと」、つまり「お金」のためです。

お金のためというと悪く聞こえるかもしれませんが、仕事である以上当たり前のことです。

ですが、医療という人の身体・健康を扱う場合、第一目的は絶対に治すことであるべきです。売上や儲けというのは、何事においても「結果」でしかないはずです。

本来、病院は、予防目的や定期検診以外でしたら、通う回数が少なければ少ないほうがよいはずです。

「治したい」「治療を受けたい」方へ

生活範囲内で通える病院・整体院・整骨院・鍼灸院・お店・・・たくさんありますよね。効率よく治して時間とお金を無駄にしないためにも「選び方」が肝心です!

整形外科ではなにをしてくれるの?整骨院と整体は何が違うの?

答えは、それぞれの役割・働きを知ればカンタンに出てきます!!

 

病院・治療院・お店が、具体的に何をする施設なのかをきちんと知ること

とりあえず病院にいけばよい、とりあえずクスリ飲んでおけば良い、ではこれからの時代は乗り切れません。

友だちが言ってた、Twitterでみた、TVで見た、といった情報は、きっかけは何であれ、その情報の本質を理解することが大切です。

デマの拡散。これは情報を理解せずに鵜呑みにしてしまう、さらに人に伝えてしまうことで発生します。

スマホを誰もが持つ現代、誰もが情報発信者です。間違った情報を拡散しない・自己責任で泣き寝入りしないようにするためにも、お店・治療院・病院では具体的に何をしてくれるおか?どのような効果があるのかを正しく知って意味のある選択をしましょう。

 

整形外科

まず検討すべきは病院です。首・肩・腰・足の不調の場合、整形外科で診てもらいましょう。

慢性的な肩こり・腰痛を治すためには、骨の問題・重大な病気が隠れていないかどうかの確認が必要です。

体の内部の状況を正確に把握するためには、医療機関での画像検査(レントゲン・CT・MRI・エコーなど)を受けなくてはなりません。

整骨院・接骨院・鍼灸院・カイロプラクティックで機材による検査を売りにしている所がございますが、それらはあくまでも「参考」でしかなく、身体内部の確実なことは整形外科でしか判らないという点をご理解ください。

そのため、まず病院の整形外科での受診する、診断を受ける、これはマストです。

整形外科で受診をして、特に大きな異常が見当たらない(「関節と関節の間が狭くなっている」を含む)状態であれば、多くは痛み止めか湿布を処方され、リハビリをすすめられます。

ここが、とても重要なポイントです。

異常が見つかれば、その整形外科で治療できます。異常が見当たらない場合、いわゆる「とりあえずお薬出しておきますね」「様子をみましょう」「とりあえず電気でも流してみましょうか」というありきたりな対応がほとんどです。

何もしてくれないのか!と納得のいかない方も多いと思いますが、決められた制約の中、決められた治療法しかできないのが保険内の医療です。

社会人の方は毎月社会保険料を支払っているわけですが、多くの方が給与から天引きされています。そこで支払われている保険料で賄われる保険を使った医療というのは、最低限の健康を保証する医療です。働いて税金を納めてもらわないと国が機能しません。そのため健康でいてもらうための制度、それが保険という制度です。

病院での受診は、治療だけが目的ではありません。人間ドックや健康診断のように、異常がないか確認するための機関でもあります。整形外科で異常がないという診断は、骨に異常はない、という1つの安心を得られたということです。整形外科的な異常ではないからここでは治療はできないんだ、選択肢がひとつ減ったんだという前向きな捉え方をしましょう。

とはいえ、その病院にそのまま通い続けるか、他をあたってみるか、という判断になるのですが、判断して選択するのはあなた自身です。その判断材料としての情報が以下になります。

病院で異常が特に見つからない場合、病院は何をしてくれるのでしょうか?

厚生労働省による調査(日本臨床整形外科学会協力)では、腰痛の8割は原因不明で痛み止めを処方という残念な結果になっています。これは腰痛に関してのレポートですが、肩や首の痛みも、程度の差はあれ、病院の整形外科における治療現場の実態に近いと思います。

痛み止めを処方というのは、つらい症状を抑えるために、痛み止めの注射や薬、湿布(市販されていないモーラステープ等)の処方を意味します。これらの処置はあくまでも、その時の症状をおさえる手段です。つまり対症療法です。痛みが治まる=治る、ではございません。

対症療法以外の治療手段として代表的なものはリハビリです。病院における健康保険の適用範囲内のリハビリは、ホットパックなどの温熱療法、低周波などの電気療法がメインとなり、5~10分程度のストレッチやマッサージになります。

リハビリ室にいらっしゃる理学療法士(PT)さんは身体動作を改善するスペシャリストです。肩こりを治すにあたって、姿勢や動作の改善は必須です。理学療法士は、本来、慢性的な肩こりを治す力を持ち合わせているのですが、医師の指示のもと健康保険適用内のリハビリしか行えません。

健康保険の利用は治療方法が限定されることを意味します。健康保険の意味する健康とは「生活して働くことができる最低限の健康」です。理学療法士さんが本来持っている実力を発揮できないという現状があるのです。

それ故に、医療機関である整形外科のリハビリに通ったとしても「その時は気持ち良いけど・・・」というケースがほとんどというのが現実です。保険を適用しない自由診療であれば、治療方法は広がりますが、費用は全て自己負担となり、かなり高額になります。

医療機関を上手に利用しましょう

まず、医療機関にて体の内部チェックを受けることは必須です。問題が隠れていないかどうかの確認のためにも、まずは医療機関を受診しましょう。

整形外科選びのコツ

検討している病院やクリニックの医師の情報を把握しましょう。

出身大学や経歴で選ぶのではなく、整形外科医の先生の肩書に、整形外科専門医という記載があるかどうか?

大切なポイントは整形外科医でなく整形外科専門医です。

認定医という似たような名称もございますが、専門医の方が上ですのでご注意ください。整形外科専門医は、医師として6年間、主に整形外科を中心に研修を納めて専門医試験をパスした医師の証です(2020年から新しい専門医制度が始まります)。ですので、間違いのない整形外科選びの参考にしてください。

専門医だから間違いないというわけではないでしょうし、まだ専門医になっていないだけで若い優秀な先生もたくさんいらっしゃいます。迷った時の参考になさっていただければと思います。

保険適用という制限の中では、病院で治療できることとできないことがあります。これらを踏まえて、病院で治療を受け続けるか、他を選択するか、という判断は、以下の情報を参考にしていただいて、お考えください。

整骨院・接骨院

整骨院・接骨院を営む柔道整復師は、急性期(傷めてすぐ)の応急手当のスペシャリストです。簡単にいうとケガをした時に行く所が整骨院・接骨院です。

実は健康保険適用も骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷(いわゆる肉離れ含む)に対する処置に限定されています。

※参考:厚生労働省

肩こりで受診したのに捻挫をした事にしてと依頼された…心あたりはないでしょうか…?

肩こりで受診した方は実際にはどのような疾患にて保険請求されているかご存知でしょうか…?

厳密には肩こり治療には保険適用はされませんし、慢性の症状になりますので柔道整復師の範疇外の疾患となります。この業界が保険の不正請求の温床になっているとしばしば問題にされ不信感を持つ方が少なくないのは、これが理由です。

きちんと保険が適用できるケースもあります。医師の同意書があれば、肩こりでも「療養費」として健康保険の対象として治療を受けることができます。ただし保険適用ですので、保険で決められた治療に限定されるという制約があります。保険適用の治療というのは、必要最低限の健康維持のための治療です。『治すために必要十分な治療』ではないのが現状です。(当院では、治すために必要十分な治療を行うため、あえて保険診療は一切行わず完全自費診療とさせていただいております。)。

肩こりについてのお話でしたが、例えばムチ打ちになってしまってすぐの場合などは正式に保険も適用となりますし、すぐ近くに病院がない場合は、整骨院に足を運ぶのが望ましいと思います。

参考:整形外科と整骨院(接骨院)Q.「整体」なども整形外科の一分野なのでしょうか?

A.日本整形外科学会による回答

歪み=肩こりの原因、と説明する整体(整骨院・鍼灸院も含む)

肩こりの原因は「歪み」ではない。

骨盤矯正という言葉は、誰でも見たことある・聞いたことはあるはずです。骨盤の歪みを矯正すれば、体の不調の回復はもちろん、ダイエット効果までうたわれています。骨盤に限らず、骨の歪みを諸悪の根源とする「ゆがみ理論」はもっともらしいのですが、少なくとも肩こりは歪みから生じるものではございません。なんでもかんでも「歪んでますね」と歪みのせいにしている施術者がいますが、間違いです。

肩こりを引き起こす原因は歪みではありません。肩こりの原因は、あくまで筋肉の問題が主です。ですから骨格矯正や歪みを肩こりの根拠としている所は、そもそも肩こりを引き起こしている原因へのアプローチができておりません。つまり、わざわざ足を運んでも治る見込みはまずありません。

カイロはたしかに気持ちよいでしょう。ですが首の骨をボキッと鳴らす施術は大変危険です。

特に骨をボキっとするカイロプラクティックでおなじみの矯正術などは、 直後はスッキリしますが、その音は過剰に関節が動くことによって生じるため、その後時間が経つと周囲の緊張が増してきます。骨ボキ施術を受けた後に、かえってつらくなってしまったという方、ムチ打ちのようになって悪化したという方は少なくないと思います。

「ソフトカイロ」「無痛整体」といった、骨ボキをやらない、痛くない施術もありますが、ベースとなる理論は「骨のゆがみ」です。ですので、これをいくら追究しても治ることは100%ありませんし、無痛であろうと有痛であろうと整体は無資格者による施術であるため、治療ですらありません。

首の骨と椎骨動脈解離の正しい知識。自分の体は自分で守りましょう。

海外では認められている、WHOが認めている、よくわからないけど凄そうな民間資格を誇示するところが多いのですが、ここは日本です。もし、何かあっても、対応するのは施術者ではなく日本の医師です。

このような治療ではない行為は、無資格ですので誰でもできますし勝手に名乗れます。自称ゴッドハンドが良い例です。その結果、整体やカイロでの施術が原因による事故も起こっております。

体がおかしくなったらどこに行きますか?

病院ですよね。

治療して無事に治っても、あとから整体やカイロで受けた施術が原因だったと証明することは困難です。だからこそ、好き放題やっている側面もあります。無資格者なのに一般の方から見てさも有資格者のような表記をしていること(ここでいう有資格者とは国家資格である厚生労働大臣免許を保有している者という意味で民間資格保持者を意味しません)、そして治療ではないのにさも治療のように見せかけた表現をしていること、この二点が本当に治したい方を惑わす大きな要因であり、問題であると当院では考えております。

人は、どうしても、ニュースや話題にでもならない限り、問題意識、危機感を持ちません。ひとつ言えるのは、近い将来、必ず大きな問題になります。

急増する『整体師による骨折』

国民生活センターでは、「マッサージを受けて骨折、もしくは健康被害を受けた件数は2007年度以降の5年間で825件が発生しており、報告件数は年々増加している」と発表しています。参照: 国民生活センター-手技による医業類似行為の危害-

柔道整復師がいる接骨院や整骨院で、健康保険が使えます、各種保険取り扱い、ということをアピールしている治療院が多いですが、健康保険が適用できるのは、健康保険適用も骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷(いわゆる肉離れ含む)に対する治療のみです。つまり、整体も行っている整骨院がある以上、整体も保険が適用されるように錯覚してしまいます。整体には保険は適用できません。

国の医療費の増大が社会問題になっています。安いから、薦められたから、という理由で、安易に保険を使うのは不正請求に手を貸すことになります。不正請求は遡ってバレます。何もかも捻挫ということにしているので捻挫する人が統計上多すぎなのが今の国の現状です。ですので法律も変わり厳しい状況になってきています。不正請求によって潰れる整骨院がありますが、当然、利用者の情報も筒抜けです。国の保険だけでなく、民間の保険会社からの信用を失うと大変なことになります。

街頭での呼びかけ、ポストに大量に投函されるチラシ、オープニングキャンペーン、初回無料、先着○○名さま限定、無料治療体験?といった囲い込み・呼び込みに必死な整骨院には特に気をつけて下さい。

参考:整形外科とカイロプラクティックQ.カイロプラクティックとはどのような治療法でしょうか?

 

A.日本整形外科学会による回答

カイロプラクティックは、海外の医療現場で行われていますが、理論・方法は、国内のそれとはだいぶ異なるものです。それを本物といってしまっていいのかわかりませんが、国内でも真面目な本物のカイロプラクティックを行なっているところはあると思います。ただし数はかなり少ないと思われます。

少しずつですが歪み原因説を否定する整体・治療院は確実に増えてきています

ここ最近になってようやく歪みを直しても意味がないと説明する整体・治療院が増えてきました。中には当院のホームページ上のテキストをそのまま使って説明していて実際どのようなことを行っているのかは定かではないところもございますが、少なくとも選択肢の幅は広がってきています。「その痛みの原因は歪みかも?」といった手書き看板を掲げているようなところは治療の選択肢から除外するだけで、かなり絞り込めるはずです。

 

リンパの流れを良くする、身体をほぐすことを目的とするマッサージ屋さん

マッサージという言葉を使ってよいのは「あん摩指圧マッサージ師」という厚生労働大臣免許を保有している者のみです。つまり「お店」では使えません。ですから、リンパマッサージのように○○マッサージという名前にすることで法律の隙間をついているのです。マッサージという言葉を使わずドレナージュといっているところも見かけます。

リンパの流れを良くして、内側から綺麗にする、リンパの流れを改善すると毒素が消える、肌荒れやむくみが解消する、などといいますが・・・残念ながら、医学的根拠に乏しいです。

そもそも毒素ってなんでしょうか?そして、リンパの流れをよくすると免疫力を高めるともいいますが、免疫の主役は白血球。白血球というと血液の中にあるもの、というイメージがありますが、血液の中だけではないのです。白血球にも種類があり、それらの総称です。そのうちのひとつがリンパ球であり、それはリンパ液の中に存在します。ただ、それだけのことです。

ところでリンパって何なのですか?どこにあるんですか?

リンパの流れ・免疫というワードがもっている、なんとなく良さげなイメージ・雰囲気。実際、きちんと説明できる人自体少ないでしょう。マッサージ屋さんでもほとんどいないと思われます。もし通われているのなら、リンパ・毒素・老廃物ってなんなのか質問してみて下さい。

クイックマッサージ・リフレなどいわゆるマッサージ屋さんは基本的に凝っている所を揉んで快楽を提供する所なので、治しにいく所ではありません。当然治りません。気持ちよさ、安らぎを求める人のためのお店です。ですから、カラダを治すことを目的としているのでしたら、オススメしません。

人間の身体は刺激に慣れていく順応性があります。

コリは刺激に慣れていきます。お店に通う頻度が増し、行くたびに強さを求めてしまうようになりますと、コリは悪化しているということです。そうなると治療にも時間を要するので、身に覚えがある方は治療を早めに検討しましょう。あくまでも目的次第でございます。

ペインクリニック

「何をやっても治らない!!」方の中にはペインクリニックへの受診を検討している方も少なからずいらっしゃると思います。

ペインクリニックとは、その名の通り「痛み(=pain)をとる」「症状を緩和する」ための医療機関です。主に麻酔科の医師がいらっしゃいます。

ペインクリニックで主に行っている肩こり治療は2つあります。

  1. 痛み・症状を感じさせる神経をブロックする

    圧痛点の局所神経ブロック(トリガーポイント注射)・肩甲上神経ブロック→症状を自覚しているその部分に対して直接アプローチして痛みや疼きを感じなくさせます。

  2. 首肩への血流を妨げている神経をブロックする

    星状神経節ブロック→首の付け根にある頭と肩、上腕を支配する自律神経のうちの交感神経の塊です。この神経をブロックすると肩全体の血流を改善します。

神経ブロック治療を受けますと、今までマッサージ・整体・一般的な鍼(ハリ)を行っても数日内で元通りになってしまっていた方でも、一定期間はその苦痛から解放されます。

これは治療を行う上で、とても良いことです。

注意点として、薬の効果は一定期間で確実に切れます。つまり投薬をずっと繰り返し行わなければいけません。

これは仕方のないことですが、繰り返しているうちにだんだん効きが悪くなり、少しずつ量を増やしていく必要があります。

ブロック注射は一定期間効果はあっても、あくまでも対症療法。首肩の筋肉へ物理的負担をかけている原因、首肩の筋肉が疲労し硬くなる原因に対する効能はないということは覚えておいてください。

星状神経節ブロックによって血流を改善はできますが、肩こりの原因が血行不良だけではないことは以下の記事で詳しく解説しています。

苦痛からの即時的な解放はとても素晴らしいことである反面、これは、痛み止め・消炎鎮痛剤を服用し続けること本質的には変わりはないのではないかと考えております。

 

 

ボトックス注射

美容クリニックで有名なボトックスをコリの感じる部分に注射する施術があります。

ボトックスにはボツリヌス菌から作られた成分があり、筋肉の動きを止める作用があるのです。いわゆる筋弛緩作用です。つまりボトックスは筋肉を収縮できない状態にするため、硬くなっている筋肉を一定期間弛緩させることができます。

これは一見血流改善よりは理に適っていることになりますが、注意が必要です。

例えばA、B、Cの3つの筋肉が相互関係にある場合、Aにボトックス注射を打ちますと、ボトックスによってAの筋肉は収縮できないようになります。そうしますと、B、Cの筋肉がそれに代わって頑張って働くようになります。すると別の所にコリが発生します。

繰り返しボトックスを使用しますと、その筋肉は退化してきます。筋肉が退化しますと、他の筋肉で補う状態となります。つまり、また別の箇所がコリ、ボトックスを打ちますと、悪循環になります。

筋肉を緩めることで、血流を改善と聞けば聞こえはよいのですが、筋肉の内側の血流は筋収縮によって促されます。ボトックスによって収縮できない状態ということは該当する筋肉内の血流は悪くなっているのです。

そのため、ボトックスを使えば頑固なコリを絶対に弛めることはできますが、それが治るということにつながるかといいますと、ケースバイケース、むしろ、かなり限定的な場合のみ有効といえます。

ボトックス注射は、ボツリヌス菌から作られた成分です。ボツリヌス菌は食中毒の代表的な原因菌のひとつです。どんなクスリにも副作用がありますが、ボトックス注射は、動物実験で妊娠や胎児への影響が認められており、妊活・妊娠中の女性はもちろんのこと男性も受けてはいけないとされています。

神経ブロック治療は有効な場合はもちろんございますし、根本治療と併用できれば理想の治療方法のひとつです

上記ではネガティブな見解となってしまいましたが、ペインクリニックでの神経ブロック治療は治療の選択肢のひとつとして必要です。

鍼灸・マッサージ含めてどんな施術・治療を受けても楽にならないという方の症状を即時的に解消できる手段は本当に大切です。疼痛の管理はQOL(生活の質)の向上のために欠かせません。

兎にも角にも一刻も早く、今ある痛み・こりから解放されたいというお考えでありましたらペインクリニックに足を運ぶのが良いです。注射技術によってバラつきはあるもの、ほぼ確実に一定期間の痛みからの解放という希望は叶うはずです。

忘れてはいけないのは「痛み・コリを感じなくなる=治った」ではないということ。この点を患者さんご自身で認識しなくてはいけません。

ペインクリニックにて神経ブロック治療を行い、症状が緩和している期間に、筋肉バランス・姿勢・動作など体を造り変えることで根本治療を行うことができれば理想です。ブロック注射の効果がある内に根本治療が行うことができれば、ブロック注射の効果が切れた後に元通りになるというサイクルを断ち切ることができます。

 

ストレッチ店

最近はストレッチ店も目立ちますが、ストレッチのみで肩こりは治りません!!ここでいう「治る」というのは、一時的な症状の緩和を意味しません。

肩こりがストレッチでは治らない理由

肩こりでつらくなる部分は、不良姿勢によって常に引き伸ばされてしまっているのです。ストレッチは、引っ張って伸ばす、という意味ですが、肩こり=つらい部分がストレッチされてしまっているという状態なのです。

その引き伸ばされた状態はつらいので体は反発しようとします。そのために筋肉が疲労して硬くなり、血流が悪くなり、症状が出現するのです。

整理しましょう。

凝っている部分は日頃から常にストレッチ・引き伸ばされてしまっている状態なので、その部分をさらにいくらストレッチしても、一時的には楽になったような気がしても、根本の解消には決してならないのです。

え・・・?こっている部分が日頃からストレッチされている・・・?

いまいちピンとこない方がいらっしゃると思います。もっとわかりやすく解説いたします。

例えば下を向いて作業をしていると首の後ろの筋肉が引き伸ばされている状態となり、それが長時間に及ぶとコリになります。コリがひどい部分はそもそもストレッチしても伸びないし、楽にならない、という点を重症の方はご理解いただけると思います。

そして、多くの方にはあまり実感がわかないかもしれませんが、中には体が非常に柔らかい、つまり関節可動域が非常に優れているにも関わらず首肩こりにお悩みでいらっしゃる方がいます。

実はこのような方の場合、ただほぐせば良い、やわらかくすれば良いとはいきません。関節可動域は正常、もしくはそれ以上あるわけなので当然ストレッチによって改善は見込めないのです。

また、ストレッチ店にお勤めでいらっしゃる方は基本的には民間資格保持者で国家資格を有しているケースは少数です。国家資格を取得していなければ法律上治療行為は行えません!!違法行為となります。

そのため「体を変える」ことをうたっていたとしてもストレッチ店は整体と同様、無資格者が行うリラクセーションの範疇であり、肩こりを治すために行く所ではないのです。

当院でもストレッチは関節可動域を改善するためにしばしば行いますが、あくまでも一つの手技でしかありません。ストレッチのみで肩こりを根本的に改善することは現実的には不可能に近いと思います。しかし、裏を返せば、関節可動域の改善にはストレッチが特に有効といえます。

ストレッチ店ならではのメリット

「肩こりを治す」「腰痛を治す」という限定的な面に限ってはストレッチ店を否定するような文章になってしまいますが、ストレッチ店ならではのメリットもあります。

まず、ストレッチは無資格者が行ったとしてもマッサージと比べて有害事象は比較的起こりにくいといえます。

そのため、無資格マッサージや整体で硬い所をひたすら揉まれた結果、揉み返しに苦しむといったことはストレッチ店ではまず起こりません。この点は安心です。

ストレッチ店には、NATA- ATC、NSCA-CSCSといった資格を保持しているトレーナーが在籍しているお店がります。このようなプロのトレーナーの資格を有している方は、単に固い所を伸ばすというだけではなく、体のバランスを整えるという意味での施術をしてくれる可能性が高いです。きっと何よりも効果的な筋トレやセルフケア方法の指導も受けることができるでしょう。

体の硬さでお悩みの場合や、健康な方がさらに健康増進を図るためにはストレッチ店に足を運んでいただくメリットはとても大きいと思います。これはヨガ教室も同様です。ストレッチ店もヨガ教室も、体を治してからいくべきところです。治しにいくところではありません。

 

 

健康な人が健康を維持するための場所

フィットネスジムはあくまで健康な方が健康増進をはかるための場所です。ヨガも同様です。単にマニュアルに則っての筋肉トレや、やみくもに体を動かすことでかえって負担となり状況が悪化してしまう場合もございますのでこれには注意が必要です。体を変えるには患者さんの個々のお体状況に応じた対処が必要になります。そしてお体状況をきちんと把握するためには専門的な知識が必要になります。
西洋医学的な鍼灸・マッサージ院や、NATA-ATC・PT(理学療法士)・NSCA-CSCS・日本体育協会認定ATなどの資格保持者が属するパーソナルトレーニングジムとなります。数々の民間トレーナー資格がありますが、この四つの資格いずれかの有無を参考にしていただくとよいでしょう。あくまでも個人的な見解ですが、日本国内でみられるトレーナー資格の信頼度としては「①NATA-ATC・PT(理学療法士)→②NSCA-CSCS→③日本体育協会認定AT」となります。

体造りを目的としたトレーニングを行う、もしくは現在行っている場合「お体状況が常に前進しているかどうか」これを第一のチェック項目にしてください。前進していなければ、見立て、もしくは対処方法(トレーニング内容)のいずれかがエラーとなっているためなので、今一度検討していただけましたらと存じます。体を変えるという事は容易な事ではありませんが、お体状況に最適化された処置を行えば体は必ず変わりますよ。

ストレッチをすると疲労解消にも効果があるとされています。たしかに、スッキリして精神的疲労を緩和する効果はあるでしょう。ここで大切なのは精神的な疲労を解消という点です!!ストレッチには肉体的な疲労を解消する効果はございません。

血行がよくなるからという、いかにもな理由による説明をされているところも多いですが、血行良くしたいのでしたら温める方がずーっと効果的です。お風呂で湯船にゆっくり浸かりましょう。

東洋医学に基づく鍼灸・マッサージ院

東洋医学では、伝統的で特徴的な診察法が用いられます。脈・舌・腹などの状況を観察して、施術者の主観的観測のもと「気」「血」「津液」「経絡」 などの異常をみつけ、独自の診断が出されます。そしてその診断に則り、ツボと呼ばれる定点に鍼やお灸といった施術を行います。

東洋医学において、基本的に適応できない疾患は無いとされています。様々な。ただし、「治療方法はあります。でも効果は保証できません。」というのが実際のところです。

実は、 東洋医学はあくまでも考え方であり思想なのです。

数千年前、まだ人体解剖学が体系化されていなかった時代に人体を構成するものは「気」「血」「津液」だとされ、「経絡」というルートがあることが仮定されました。そこの異常を見出して治療を行うので、今現在では実体が確認されていないものに対して施術を行いま す。

よくわからないから定義して仮定しただけなのです。

人は、よくわからなくても、シンプルな因果関係さえ示されれば、すんなり受け入れてしまいがちです。

人体にはまだまだ未知な部分があります。今後新たに気や経絡などが確認される可能性はありますが、万人が眼で見て触れることができる西洋医学的な解剖学と比較すると「不確か」と言わざるをえません。施術者のセンス(直観)がとても問われる治療です。

例えば肩こり治療の場合、症状を自覚しているのが首や肩だとしてもその部分にはあまり触れず、手や足に対して処置を行うケースが多いです。

もちろん全てがそうではありません。ほとんどの場合がそうなのです。

その理由は、首肩がつらくなるのは「気」「血」「津液」の過不足や滞りが原因とされるためです。その通路となる「経絡」の流れを良くすることを目的としています。「経絡」と呼ばれているルートの主要部分やツボが手足に多いため手や足に対して処置を行うのです。東洋医学では「刺しているか、刺していないかわからない鍼」や「お灸」がしばしば行われます。

当院ではリスク対効果という面からお灸は一切行っておりません。

あらゆる病院に通って診療受けたのに改善しなかったのに、東洋医学で救われたという方も少なくないと思いますが、それは、たまたま、その人には効果があった、というのが現実です。自分に効果あったから人に薦めたくなる気持ちはよく分かりますが、東洋医学=誰にでも効果がある、万能である、ということではないという点だけご留意ください。

当記事は、10人中1人に効果があるものと10人中3人に効果があるものがあれば、後者をオススメする、という視点であるという点を、どうぞご理解ください。

西洋医学に基づく鍼灸・マッサージ院

東洋医学とは言葉としては対をなす西洋医学ですが、一般的な医学、現代医学を指します。

現代医学の特徴でもあり欠点でもあるのですが、とにかく明確です。

現在の医療では治りません、現在処方できるのはこの薬のみです、決まった日数分しかお薬は出せません、といったようにとにかく融通がききません。もちろん医学というよりは健康保険制度による制約のせいもあるでしょう。

現代医学というのはより高い確率で、効率よく治すこと、生命を救うこと、を突き詰めていく学問なのです。

これだけですと、東洋医学の方が良いと思われるかもしれません。1%でも望みがあるなら、希望がもてる方が良いにきまっています。

西洋学的な医療に100%はありえませんが、再現性や一定の確率が担保されているのは間違いありません。

効果はあるかもしれないし、ないのかもしれない、という確率自体が担保されていないのが東洋医学です。わかりやすく説明するためにあえて極端な例を挙げます。1万人に対して1人に効果があれば、効果あったとする のが東洋医学、あまりに数が少ないので効果なし、とするのが西洋医学(現代医学)です。

現代医学的な肩こり施術の流れとは?

西洋医学では、解剖学をベースとし、まず問題を起こしている部分、つまり解剖学的な異常がある部分に直接アプローチします。

肩こりでしたら、首肩周辺の筋肉です。

症状を引き起こしている首肩の筋肉そのものに対して処置を行います。いわゆる対症療法です。

次に症状を引き起こしている筋肉に負担をかけている他の部分の筋肉に対してもアプローチを行います。これは、首肩にかかる物理学的な負担を減らすことが目的です。首や肩へ負担をかけている原因は人それぞれとはいえ、首肩自体にその原因がありません。例えば姿勢が悪いから、となれば足腰に問題があるわけです。体全体へのアプローチが必要なのです。

肩こりや腰痛を確実に治したい方は、まず整形外科にて基礎疾患の有無をチェックしましょう。問題がなければ、上記の例のように西洋医学的な視点のもと全身へのアプローチが望ましいのです。原因を究明し、一つ一つ解消していくという論理的なアプローチ、これをきちんと実践できればよいのです。

ですので、西洋医学的理論のもと筋肉に対する施術を行い、姿勢と動作を改善してくれる鍼灸・マッサージ院をオススメします。

それでも、治らなかった、よくならなかったのでしたら、東洋医学の鍼灸・マッサージが効果あるかもしれません。この順番が本当に大切なポイントで す。つまり「東洋医学は第一選択肢であるべきではない」のです。

東洋医学と西洋医学の融合をうたう鍼灸・マッサージ院

世の中には、西洋・東洋医学の良い所を合わせた施術をする折衷治療を行う治療院がありますが、これはあまりおすすめできません。「良い所だけを合わせた・・・」と聞くと響きが良いですが、裏を返せば、どちらにも特化していない、中途半端である可能性が高いです。もし、東洋医学的治療をご希 望されるようであれば、完全に東洋医学的理論の元、治療を行う治療所に足を運んでいただきたいと思います。この業界の宣伝におきまして、耳触りの よいキャッチコピーには必ず裏があるとお考え頂いて良いと思います。

肩こりに効果的なのは、鍼・マッサージ、ストレッチ、トレーニングの3つ

治療院やお店が何を行うかについて、解説しましたが、メリットとデメリットが混在しているケースがあります。混乱されるといけませんので、上記解説を、肩こり治療を行う上で効果的な「方法」の面から、整理します。

肩こりを治すためには、鍼・マッサージ、ストレッチ、トレーニングの3つが大切です。

マッサージ・鍼硬くなった筋肉を弛めることができる=局所症状の解消に対しては効果的。対症療法に特化しているので、これだけだですと「施術を受けても時間がたてば元通り」から抜け出せません。 ストレッチ・関節モビリゼーション硬くなって動きづらい関節の可動域の改善ができます。首肩腰に負担をかける不良姿勢を改善できますが、局所の症状(コリ)を解消することは難しいです。運動療法・トレーニング体を動かすことで筋肉がゆるんだり、スッキリする感じを得ることができます。筋力の向上はとても大切なこと。根本改善には運動は必須ですが、局所の症状(コリ)を解消するには不十分です。症状が低下して、関節可動域が確保されている状態での運動が重要です。

このように、それぞれの方法には一長一短があるため、首肩こりを治すためには、これが一番いい、これだけやれば良いといった、最良の唯一の方法はないという点をご理解いただけると思います。

つまり、これら3つを全て行うことができるところが、肩こりでお悩みの方にとって最適です。

肩こりや腰痛を治すためにどこに行けばよいのかという質問に対する回答

長々と解説しましたので、最後に、どこに行けばよいのか?という点についてまとめます。

まず、整形外科にて骨の問題や病気がかくれていないか、チェックを受けてください。そして、異常が無い、もしくは原因がはっきりしないようであれば、東洋医学ではなく現代医学的理論のもと筋肉に対する処置を行い、姿勢と動作を改善してくれるNATA-ATCまたはNSCA-CSCSといったトレーナーライセンスを保持したセラピストか理学療法士が在籍する鍼灸・マッサージ院に足を運んでください。(リハビリにて電気や温熱療法を続けていても、直後には緩和されても一時しのぎであるということをどうかご理解くださいませ)

そして、鍼灸師、按摩・マッサージ・指圧師という国家資格を有している者が施術を行っているかどうかを確認してください(事前に電話で確認する、ホームページなどでスタッフの情報をチェックしましょう)。

鍼灸・マッサージという言葉が院名に入っていても国家資格者が施術をしているとは限らない

鍼灸・マッサージ・整体院、整体・鍼灸・マッサージ院といった名称も目にされることでしょう。

整体は無資格者が行い、鍼灸・マッサージは有資格者が行うもの。

つまり、有資格者が、整体も行うんだ、と思われるはずです。

ここで、ひとつタネ明かしをしておきます。

国家資格を持っているのに整体という言葉を使う理由

国家資格には、接骨を行う柔道整復師以外に以下の種類があります。

  1. 鍼灸師

    鍼とお灸

  2. 按摩マッサージ指圧師

    マッサージ

鍼灸師は、鍼師と灸師の2つの資格を一緒にとる人がほとんどなので、1つにまとめられて呼ばれます。

ポイントは「按摩マッサージ指圧師」という資格です。

鍼灸師の資格はもっていても、按摩マッサージ指圧師の資格は持っていない方がとても多いのです。これは、学校の数の差という現実的な問題も大きいのです。両方持っているから偉い、優秀ということではございません。

ですが、整体・鍼灸・マッサージ院といった名前のところは高確率で、按摩マッサージ指圧師の資格を持ったセラピストがいません。鍼灸師資格のみを有する者しかいないということです。

これが、「整体・鍼灸・マッサージ」というネーミングのカラクリです。

繰り返し強調しておきたいのは按摩マッサージ指圧師の有無が全てではございません。有していなくても素晴らしい技術をもったセラピストはたくさんいらっしゃいます。

技術ではなく国家資格を持っている・持っていない、という点での判断というのは、腕の良し悪しとは無関係ですし、患者さんからすれば、治るの?治らないの?という点がもっとも重要です。

本気で患者さんを治すことに取り組んでいる鍼灸師、鍼灸師であることに強いプライドを持っているならば「整体」という言葉は使いません。

ただ、整体という単語がこれだけ一般に認知されてしまっている以上、資格があろうがなかろうが「整体」でひとくくりにされてしまうわけです。ですから、分かりやすさに重きをおいて整体やってますというスタイルの鍼灸・マッサージの存在の否定はできません。按摩マッサージ指圧師の資格がないから、整体という言葉を使う鍼灸師と、整体という言葉を使わない鍼灸師がいます。そして按摩マッサージ指圧師の資格を持っていても整体という言葉が一般受けがいいから使っている人もいるのです。

整体やスポーツマッサージ・〇〇マッサージといった類のリラクセーション施術ではなく、本物のマッサージを受けたい場合は、按摩マッサージ指圧師かどうかを確認してください。これだけで、かなり絞り込めるはずです。

整体やゆがみ理論については、先に説明したとおりです。施術内容の説明やコース名に「ゆがみ」という言葉が入っている場合は、治療という意味ではまったくもって無意味です。「リンパ」という言葉を使っているところも同様です。効果はまったく期待できません。

「整体」「ゆがみ」「リンパ」・・・この3つのうち1つでも入っている治療院・お店で期待できるのはリラクセーション効果のみです。

良い鍼灸院の選び方を知りたい方へ

鍼灸・マッサージ院の名前や施術メニューに「整体」という単語の有無がひとつの判断基準になります。

数は限られると思いますが、NATA-ATCまたはNSCA-CSCSといったトレーナーライセンスを保持した施術者か理学療法士が在籍する鍼灸・マッサージ院が理想です。

そして、西洋医学的な鍼灸・マッサージ院でも、もちろん技術力には差がございます。もし、改善しない、効果を感じないようでしたら、他の西洋医学的な鍼灸・マッサージ院に思い切って変えましょう。それでも、どこにいっても効果がないようでしたら・・・東洋医学的な鍼灸・マッサージ院を検討なさってください。

実際問題、当記事で推奨しているような治療院は少ないです。

業界現状を見渡してみると、ご推奨させていただきましたような治療施設の数は多くはありません。探したけれども見つからない、行きたい所が見つかったけれど遠方により行くことができないという方もいらっしゃることでしょう。

いい治療院が見つからない・・・目的を明確にして、施設を使い分けましょう!!

希望の治療院が見つからない、見つけたけど通うのが困難な場合は、目的をはっきりさせて施設を使い分けることをお勧めします。

あなたの目的のうち、「今つらい症状をどうにかしたい」「コリをほぐしたい」「筋肉を柔らかくする」「関節をやわらかくする」といった事に関しては西洋医学的な理論のもとで治療を行う鍼灸・マッサージ院をご利用ください。

そして、「筋肉を強化する」「体のつかい方を改善する」「姿勢や動きを改善する」といった体造りに関しては、NATA-ATCまたはNSCA-CSCSといった資格をもったトレーナーか理学療法士が在籍するパーソナルトレーニングを受けてください。パーソナルトレーニングを受ける際「体幹機能を回復させてほしい」とオーダーするのがポイントです。

トレーニングジム選びのポイント

トレーニングジムを選ぶ際のの留意点は大きなフィットネスジムやチェーン展開しているお店のパーソナルトレーニングではなく、なるべく小さい規模のジムや個人で開業されているトレーナーさんのほうが良いです。そして、必ず確認していただきたいのは、それは、NATA-ATCまたはNSCA-CSCSのトレーナーのライセンス、または国家資格である理学療法士を保持している方が在籍しているかという点です。これはとても重要です。

ライセンス・国家資格の有無を確認しなければならない理由

理学療法士・NATA-ATC・NSCA-CSCSといった資格は、お金払って講習受ければ取れる類のものではございません。取得するのは簡単ではなく、何より資格を取得するためには、一定の医学的知識があることが担保とされています。専門トレーナーといいながら、実際は研修2週間受けただけのただの素人といったケースが多い業界ですので、資格の有無の確認は必須です。

肩こりを治すためにはフィットネスの知識では不十分です。肩こりを治すためには、医学的な知識が必要不可欠なのです。

掛け持ちするのは良くないのでは?と思われた方へ

理想であれば、これらを一つの施設で一貫して行うことが慢性的な肩こりや腰痛を最短での根治につながりますが、実際はそのような施設はそう多くはありませんので、読者様のおかれている状況によってはこのように目的に応じて使いわけていただければと思います。

「掛け持ちするのは良くないのでは・・・」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。患者さんを治すということやメリットを最優先することを貫いているセラピストやトレーナーは、自らの専門分野や適応範疇を熟知しており、それぞれの領域のプロフェッショナルと連携を組むことが可能です。

何を掛け持ちするかにもよりますが、それが目的を達成することに医学的観点から適しているということであればむしろ連携を推奨するでしょう。決して、自らの領域にしばりつけようといたしません。患者さんにとって最も有効な手段、方針、意志を優先するはずです。(目的に応じた使い分けや連携を拒むか否か、それに対する説明でその治療担当者の資質を判断する目安にもなるでしょう。)

当記事はkatakori LABSが実践していることを踏まえ、患者さんを治す、助けになるはず、という信念を持って書きました。冒頭で述べましたように当院に治療にお越しになれない方のお役に立てれば幸いです。そして、もし疑問点やご質問がございましたら、できる限りの対応をさせていただきます。

1点だけ注意点がございます。

実際に体を診てみないことには判断はできません。責任のもてない適当なアドバイス・回答はできませんし曖昧な答えは双方にとってよくありません。回答できる範囲はどうしても限定されてしまうという点だけは、どうぞご了承ください。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩甲骨ダイエットの嘘・ホント「褐色脂肪を増やせば痩せるの!?」褐色脂肪細胞を冷やして活性化説の検証

ダイエットは、食事制限をしつつ運動を行って体重を落とす「痩身」を意味します。

食事制限はつらいし、運動も面倒だし、やる気がでない。

でも、どうしても痩せたい!

簡単にダイエットできるのなら、誰もがその方法に興味を示すはずです。

「褐色脂肪(BAT)を燃やせば簡単に痩せる」説は、簡単にできるダイエット方法として、度々メディアに取り上げられています。当記事ではその説について「肩甲骨ダイエットの嘘」と題しまして解説いたします。

この記事をお読みいただければ、何度もメディアに取り上げられるのはなぜか?そして、褐色脂肪になぜダイエット業界が興味を示したのか?その理由をきっとご理解いただけるでしょう。

以下の3点を軸に解説させていただきます。

  • 非常に大きなダイエット効果があるとされている肩甲骨周辺の褐色脂肪細胞(BAT)についての情報の間違っている点(冷やしても意味はない)
  • 肩甲骨ダイエットとされる運動の本当の効果とは…実はダイエット効果はない
  • 肩甲骨エクササイズ・肩甲骨ストレッチで肩甲骨を動かすことはとても大切である!!

肩甲骨といえば肩甲骨はがし。多くの方が好まれ、興味をお持ちと思われる「肩甲骨はがし」についても、きちんと解説しております(肩甲骨はがし自体は非常に効果的です!!)。

ダイエットに興味をお持ちの方には、とても意味のある内容だと自負しております。特に褐色脂肪細胞とは異なる「ベージュ脂肪細胞」についての内容は、是非知っていただきたいポイントです。

 

脂肪と聞いてイメージするのは皮下脂肪、内臓脂肪、そして贅肉

脂肪って何色ですか?

「白」と答える方がほとんどだと思います。

脂肪というと、体脂肪、皮下脂肪、そして贅肉をイメージする方が大半ではないでしょうか。これらは白色脂肪細胞と呼ばれています。そのまんまの名称ですね。

太る=脂肪がつく・・・痩せたい人にとって脂肪は天敵のようなものです。しかし、脂肪がエネルギー源として必要である、体を守る役割もある、ということは、いくら天敵とはいえ、納得されていることでしょう。

女性にとって、ダイエットという言葉は常に頭の片隅にあるもの。コレを食べれば痩せる、こんな簡単な運動でらくらく減量、といった耳障りのよい言葉の誘惑は強烈です。

定期的にテレビや雑誌で『肩甲骨ダイエット』が話題になります。首・肩の治療において肩甲骨は本当に大切なので、肩甲骨に注目が集まること自体は肩こりのセラピストとして喜ばしいことなのですが、ダイエットとセットになると話は大分変わってきます。

このブログをたまたま読まれた方にだけでも、肩甲骨ダイエットに関して正しい情報をお伝えしたいと思います。

褐色脂肪細胞を刺激すると脂肪燃焼するのか?

まず、結論から申し上げます。

肩甲骨ダイエットによる痩身は不可能ですが、肩甲骨を動かす運動によって体のラインを美しくすることは可能です。そして、肩甲骨の刺激による褐色脂肪細胞の活性化は確認されておりません!!褐色脂肪細胞は、冷えることで活性化するのは事実ですが、それは体温が下がり生命の危機に陥ることから身を守るためです。したがって、人為的に冷やせば良いということではないのです。

肩甲骨ダイエットとは、肩甲骨付近の筋肉を動かす運動やストレッチを行うことで、肩甲骨付近に多く分布しているとされる褐色脂肪細胞を刺激し、脂肪の燃焼を促進させる→痩せる、というものです。

「褐色脂肪細胞」これがキーワードです。この褐色脂肪細胞は、雑誌やテレビでも度々取り上げられてますので、耳にしたことある方は多いかもしれません。

この褐色脂肪細胞(BAT)は身体が冷え切ってしまい低体温になると激しく脂肪燃焼する性質があるのです。ですから身体を冷やせば痩せる、というインパクトの強いトンデモ説が出てきてしまいました。じゃあ、寒い地方の人で太っている人はなんで痩せないの?と子供でも疑問に思うのが普通です。

残念ながら、専門家でも一部の方は間違った情報を発信しています。なぜ専門家でも間違えてしまったのか・・・それにもしっかりとした理由があるのです。

筋肉か脂肪か分からない謎の組織が発見される

褐色脂肪細胞がなぜ注目されるようになったのでしょうか?

まず、脂肪には2種類あるとされています。誰もが脂肪ときいて思い浮かべる白い脂肪と、茶色い脂肪です。この茶色い脂肪は褐色脂肪(組織)といい英語でBAT(Brown adipose tissue)、白色のいわゆる脂肪はWAT(White adipose tissue)または普通にwhite fatといいます。皮下脂肪・内臓脂肪などは主にWATです。

脂肪を燃やすためには・・・運動が一番です。運動するため、生きていくためのエネルギー源として脂肪は必要です。脂肪が燃焼するためには、脳からの指令で交感神経末端からノルアドレナリンが分泌される必要があります。ノルアドレナリンによって脂肪がまず分解されます。分解されたあとにエネルギーとして使われるのです。ノルアドレナリンが分泌されるためにもっとも効果的なのが運動なのです。必要以上に脂肪をとって、ノルアドレナリンが分泌されることが少なければ、脂肪は蓄えられていきます。それが行き過ぎると肥満となるわけです。

ところが、運動せず何も食べず眠り続けているのに脂肪を燃焼することができる動物がいます。それは冬眠する動物です。残念ながら人間は冬眠はできませんが、1日の大半を寝て過ごす赤ちゃんは冬眠する動物と似ているともいえます。

この冬眠する動物や赤ちゃんが生きるためにどうやってエネルギーを生み出しているのか?運動せずにどうやって熱を発生させているのか?という疑問に対する答えが「褐色脂肪細胞の存在」です。

褐色脂肪細胞の発見のきっかけはマーモット

スイスの博物学者であったコンラート・ゲスナーが1551年に著書『動物誌Historia Animalium』においてマーモットの背中に脂肪とも肉とも異なる中間的な組織が存在するとの観察を記載したのが褐色脂肪細胞の存在を最初に示唆したものとされています。

marmot2

マーモットは、リスの一種で冬は冬眠します。冬眠する動物って、なんで死なないの?という子供の頃誰もがもつ疑問だと思いますが、その答えが、この筋肉でもあり脂肪でもあるとされた褐色脂肪細胞だったのです。

そして、筋肉のような働きはするものの、脂肪である、として数百年という長い間扱われてきたのです。人間の褐色脂肪細胞の研究が活発化したのは1970年代からです。

冬眠する動物や人間の赤ちゃんの体内には褐色脂肪が豊富

冬眠する動物や人間の赤ちゃんの体内には、沢山の褐色脂肪が存在しています。

褐色脂肪細胞は、多くのミトコンドリアを含有しているため褐色にみえます。このミトコンドリアはエネルギーを利用して熱を生み出す細胞です。褐色脂肪細胞は、白い脂肪と異なり、ノルアドレナリンの刺激により熱を作り出します。それも褐色脂肪細胞は、筋肉の何十倍もの熱を生み出すのです。

さらに褐色脂肪細胞(BAT)は、熱を生み出すだけでなく、白い脂肪(WAT)の燃焼も手伝います。これは事実です。

そこで、褐色脂肪細胞(BAT)をうまく利用すれば、簡単に痩せることができるのではないか?と誰もが考えるわけです。

残念ながら、この褐色脂肪、赤ちゃんには豊富にあるのですが年齢とともに減少していきます。

楽してダイエットしたいと考える年齢の時には・・・うまく活用するには無意味なくらいの量しか残っていないのです。

褐色脂肪細胞(BAT)の正確ではない情報をうまく利用するダイエット業界

褐色脂肪がダイエットには使えないというのが専門家の中では一般的だったのですが、2007年に転機が訪れます。「Developmental Origin of Fat: Tracking Obesity to Its Source」(Volume 131, Issue 2, p242–256, 19 October 2007)という論文が医学専門誌「Cell」に掲載されたのです。

この論文の内容はともかく、褐色脂肪を刺激すれば簡単に痩せることができる!!医学的に証明されている!!という非常にキャッチーなフレーズだけがメディアを賑わすことになってしまいました。そもそも褐色脂肪は大人の体内には少ないのにもかかわらずです。

後ほど詳しく解説しますが、褐色脂肪細胞は加齢と共に減っていくものです。増やす方法があれば人間にとって素晴らしいことではありますが、残念ながらそんな夢のような方法はございません。年齢と共に減っていくもの、それを、刺激して痩せる、ということ自体がナンセンスなのです。

近年研究が進み褐色脂肪細胞について多くのことが分かってきました。しかし、まだまだ不明な点が多くダイエット業界に都合よく利用されている現状です。

専門用語には、なんだかよくわからないけれども、そうなんだ!!と信じこませるパワーがあります。恥ずかしながら、私も自分の専門分野以外では、専門用語を何となく雰囲気で理解していたり、説明できないのに使っていたりします。無意識でそうなってしまっています。しかし、今回は専門分野。使命感、義務感を感じています。

ネット上、雑誌、テレビなどで取り上げられている褐色脂肪細胞は凄い、という情報で、間違っている情報と現在わかっている正しい情報をしっかりとお伝えしたいと思います。

ダイエット、褐色脂肪細胞に興味お持ちの方に、なるほど!!そういうことだったのか、と思っていただけるような内容だと自負しておりますので、長い記事で恐縮ですが、お付き合いいただければ幸いです。

体温の調整が褐色脂肪細胞の機能。脂肪燃焼は体温の調整が目的

褐色脂肪細胞は筋肉のような働きをすると申し上げました。これは発熱する、脂肪の燃焼を促すという機能を意味します。簡潔に言うならば、体温を調節する機能です。体温が低下すれば体は機能しなくなり死に至ります。体を守るためにある重要な脂肪細胞です。そのため冬眠する動物が多く持っているのです。人間の場合、誕生したばかりの赤ちゃんは褐色脂肪細胞によって守られています。新生児の体重の内、なんと数%も褐色脂肪細胞が占めるのです!!!!

赤ちゃんの体の分布する褐色脂肪細胞

生命の危険に瀕したとき、褐色脂肪細胞は活発に機能する

褐色脂肪細胞は、体温を調節する機能を持っています。赤ちゃんに褐色脂肪が多いのはこれが理由です。赤ちゃん、特に新生児の場合、最重要事項のひとつが体温の維持です。体温調節や、体の機能を維持するために褐色脂肪細胞が働き新生児の体を守っているわけです。

大人の場合、例えば極寒の中で遭難したとすると、生命維持のために褐色脂肪細胞は活動的になります。では、普段の生活において、褐色脂肪細胞を刺激するとどうなるのか・・・食事をとる時に、しっかりと噛んで味わうことで刺激される、辛い食べ物で働きが活発になるという説もありますが、刺激する方法が研究段階です。

鎖骨・肩甲骨・椎骨を冷やしてダイエット?

肩甲骨ダイエットの解説に記されているような、外部からの刺激によって活性化されるというデータも存在しませんし、医学的な根拠は確認されておりません。成人で褐色脂肪細胞の活性化が確認されたのは、体温の低下によるものです(2009年に発見)。

そのため、褐色脂肪がある部分を冷やして楽々ダイエットも当然のように出てくるわけです。鎖骨・肩甲骨・椎骨を冷やすだけで簡単に痩せる・海外セレブも行っている最新ダイエットといった紹介がされることも。痛みを抑えるための冷却は応急処置として必要なケースはありますが、基本的には体を冷やすことはよくありません。話が脱線しますが、うっかり火傷してしまった時、誰もが冷やしますよね。良かれと思ってジンジンした痛みを我慢してずっと冷やし続けるのは却って悪化してしまいます。冷やすのは最初だけで後は常温が基本です。

ダイエットのために、無理に冷やすのは絶対に避けるべき

無理なダイエットはカラダによくありません。ダイエットのために冷やしすぎるのはもってのほかです。

特に気をつけていただきたいのは【首】です!!

首を冷やしたらダメということではございません。熱中症対策で首を冷やすといった簡易的な冷却は必要です。無理な冷却・冷やしすぎはNGという意味です。

首は脳と身体を結ぶ神経が集まっている重要かつ大変デリケートな部位です。ダイエットのためにと無茶な冷却の仕方によってはどんな悪影響が出るかわかりません。

繰り返しになりますが、体が極端に冷えれば生命を維持するために発熱します。危機的状況・緊急事態に発動するのが褐色脂肪細胞です。だからといって首や肩甲骨まわりを冷やせば良いというのは身体を騙そうという安易な発想です。いくら身体を冷やしても脳は騙されません。生命の危機に瀕していると強烈に思い込むことができ、仮に痩せたとしても・・・それは健全な方法ではないということはご理解いただけると思います。

アスリートがよく行う水風呂や美容で行われる全身冷却があるし何がいけないんだ!!大げさだ!という意見があるかもしれません。それらは、冷却によって血管を収縮させた後の膨張による血流促進とそれによる活性化が目的です。ダイエットにも効果的ともいえるかもしれませんが、全身の血流の改善が目的です。

褐色脂肪細胞は明らかでないことが多いのですが、体温調節機能を持っていることは確かな事実です。これだけは間違いありません。

褐色脂肪細胞は年齢と共に減少します。そして男女差があります。

褐色脂肪細胞は幼児期までは沢山ありますが、その後加齢と共に徐々に減少していくことは昔から知られていました。しかし、新しい研究によると、男女の間で減少の仕方に差が出ていることが判明しました。男性の40代以降の急激な減少は特に注目すべき点です。

ですので、中年太りと関係があるのではないか?とも言われています。中年以降の男性には、褐色細胞によるダイエット効果はほぼ望めないということは明確に言えます。しかし、女性の褐色細胞は加齢とともに減少するとはいうものの、割と残っています。そこで褐色脂肪細胞を増やす、活性化することで、肥満解消に繋がるのでは‥‥?という点をついているのが褐色脂肪細胞によるダイエット効果です。しかし、残念ながら褐色脂肪の働きを回復させる方法は現時点では開発されておりません。

ここで、ちょっと考えてみましょう。

褐色脂肪細胞は、大人にはほぼ残っていないとされていましたが、女性には結構残っていることが最近の研究によって判明しました。ですが、その量はわずか数十グラムです。大変少なく、人体から取り出すことも容易ではありません。2012年にiPS細胞から褐色脂肪細胞の作成に成功したことが話題になりました。年齢と共に減少する、機能は分かっているけど体温の低下といった危機的な状況以外での活性化の方法が明らかではない。こういった現実とiPS細胞から作成ということを合わせて考えてみれば・・・褐色脂肪細胞の研究は発展途上であり、ダイエット効果がある!なんて軽々しく言ってはいけないのです。それは、昔から研究されている方への冒涜ともいえるのではないでしょうか?そして、褐色脂肪細胞を増やす、活性化させることで期待できるのは糖尿病の治療への活用でしょう。

しかし、「褐色脂肪細胞が増えるって小耳に挟んだのだけど・・・」「肩甲骨を刺激すると褐色脂肪細胞が活性化するって読んだんだけど・・・」「テレビで専門家が解説しているのを見たけど」という方は沢山いらしゃると思います。

断言します。それらの情報は「間違い」です。

ですが、安心してください。運動で活性化される脂肪細胞は・・・あります!!

ただし、肩甲骨を動かすことによるものではなく、一般論です。

そして、その脂肪細胞は褐色脂肪細胞ではありません

脂肪は、白色と褐色の2種類ではないのです。もう1種類あるのです。これが非常に重要なポイントです。

褐色脂肪細胞と似た脂肪細胞の存在と、褐色脂肪細胞が実は筋肉と兄弟であるという新発見

古くから脂肪細胞には白色と褐色の2種類あるというのが定説でした。そして、生まれたての子供には多く存在するが、成人ではほとんど残っていないとされてきました。先の褐色脂肪細胞の説明でも近年分かったことを述べているように、分からないこと、説明がつかないことがたくさんあります。

2008年に白色脂肪細胞から「褐色脂肪細胞のような脂肪細胞」に変化するという研究結果が発表されました。ポイントは、褐色脂肪細胞と似ているのだけど発生するプロセスが異なるため、果たして同じなのか?という点でした。

さらに、褐色脂肪細胞は筋肉にもなることができる共通の幹細胞から造られるということもわかったのです。機能としては筋肉と類似しておりますが、それだけではなくルーツも同じだったのです。1551年のコンラート・ゲスナーの推測が正しかったわけです!!

つまり、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞は色味は異なるものの見た目は類似しているにもかかわらず、まったく異なる起源と働きを持つ細胞であること、そして、その発生過程がそもそも異なっていたという事なのですね。肉眼上類似している事から脂肪細胞と名称がつけられていますが、中身は全く異なるものだと認識する必要があります。

2008年の褐色脂肪細胞に関する研究発表

では、この褐色脂肪細胞みたいな脂肪細胞は何なのでしょうか?発生プロセスが異なっていますが、構造は似ています。はたして同じ褐色脂肪細胞なのか?という新たな課題が生まれたのです。

PRDM16 controls a brown fat/skeletal muscle switchNature 454, 961-967

[参考URL]  http://shinka3.exblog.jp/9516298/

褐色脂肪細胞とは異なる「ベージュ脂肪細胞」の発見

2012年に転機が訪れました。ハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所のBruce Spiegelman博士の研究チームによって褐色脂肪細胞みたいな脂肪細胞が白色、褐色に続く第3の脂肪細胞「ベージュ脂肪細胞」として存在が明示され、医学専門誌「Cell」で発表されたのです。

[参考文献] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22796012

褐色脂肪細胞には2種類ありその違いに関する表

ベージュ脂肪細胞は褐色脂肪細胞のそっくりさんのようなものですが、発生が異なりますし、働き自体も多少異なります。

褐色脂肪細胞は体の体温の低下を抑える働きを持っていますが、ベージュ脂肪細胞の場合、体温より低い27~33度の冷気をあてたら活性化します。ですが、この条件では褐色脂肪細胞は活性化しないのです。褐色脂肪細胞は、もっと緊急事態にならないと働かないのか、または他のプロセスが必要なようです。脳からの緊急事態の指令が必要なのかもしれません。この辺はまだ研究の段階です。

[参考文献]  http://www.pnas.org/content/early/2013/06/26/1310261110.abstract

そして、ベージュ脂肪細胞は、運動によって白色脂肪細胞が変化したものであるということが明らか日になりました。このベージュから白色への変化を促進するのがイリシンというホルモンです。これもベージュ脂肪細胞の存在の研究発表の中で示され、新しいホルモンとして名付けられたものです。ホルモンは脳や臓器から分泌されると考えられていますが、筋肉からも分泌されるのです。ですから昨今、運動ホルモン、筋肉ホルモンとも呼ばれています。このイリシンは、運動によって分泌され、白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変化させる因子の1つなのです。

ベージュ脂肪細胞の生成には、他のプロセスの報告もあります。今後どんどん解明されていくことでしょう。

[参考文献]
http://www.joslin.org/news/study-shows-exercise-creates-good-fat.html

つまり、ベージュ脂肪細胞を増やせばダイエット効果が期待できますが、あくまでベージュ脂肪細胞であって、褐色脂肪細胞ではないということがお分かりいただけたかと思います。

ベージュ脂肪細胞ってどこにあるの?

褐色脂肪細胞は、先に赤ちゃんの図で示したとおり、肩甲骨周囲・首・わきの下・腎臓周囲・心臓内膜などに分布しているとされています。

褐色脂肪細胞はある程度の塊で存在するのですが、ベージュ脂肪細胞は小さな豆ほどの大きさで白色脂肪細胞組織の中に散在しています。ですから白色からベージュに変化するのであれば、ごく自然なことといえますね。ベージュ脂肪細胞が含まれている白色脂肪細胞ですが、皮下脂肪と内臓脂肪に大きく分けることができます。この内、内臓脂肪よりも皮下脂肪にベージュ細胞は多いとされています。

ベージュ脂肪細胞は、白色脂肪細胞組織の中にあるので”brown-in-white” をもじって「ブライト(brite)脂肪細胞」とも呼ばれます。

ベージュ脂肪細胞を増やすには

体温より低い27-33度においてベージュ脂肪細胞は活性化します。ですから、ベージュ脂肪細胞を増やして冷やせば痩せる・・・テレビなどのメディアではこの部分がインパクトあるために強調され多くの勘違いを生みます。

今、このテキストをお読みのあなたも、どうすれば簡単に痩せるのか?という答えが欲しいのかもしれません。

悲しいお知らせかもしれませんが、ベージュ脂肪細胞を増やすためには、運動することしか方法がありません。しっかりと激しい運動をすれば増えるのはもちろん、沢山運動をすると普通に痩せていきます。つまり、簡単に痩せる方法などでも何でもなく、至って当たり前のことでしかないのです。

ですが、これまで分からなかった仕組みが明らかにされつつありますので、いくら運動してもやせない人、体質の問題は、このベージュ脂肪細胞を薬などで増やせるのか?移植できるのか?といった医療の進歩が解決してくれるかもしれません。

結論:肩甲骨ダイエットは嘘

ようやく本題でございます。

Googleで「肩甲骨ダイエット 褐色脂肪細胞」で検索してみました。

検索結果

2014年6月現在の検索結果1ページ目はこのようになっております。ここまで当ブログ記事をお読みになられた方でしたら、ひどい検索結果だと思われることでしょう。

最近では、いわゆる「まとめサイト」の情報が検索上位にきますが、「体脂肪を減らす“褐色脂肪細胞”を増やす方法」まとめも、このような間違った情報の寄せ集めです。

痩せるために必要であろうとされる脂肪細胞のカラーは、褐色ではなくベージュ色です。

ベージュだって薄い褐色だから、いいじゃないか、という意見もあるかもしれません。ベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞は、種類が明確に異なります。そして、ベージュ脂肪細胞が肩甲骨付近に多く分布しているというデータはございません。多く分布しているとされるのは褐色脂肪細胞です。

先にご説明したとおり、40代以降の男性では褐色脂肪細胞はほとんど残っておりませんし、女性でも少ないという事実もあります。

さらに、褐色脂肪細胞を、運動で刺激しても活性化するということは確認されておりません。

褐色脂肪細胞は、まだ分かっていないことが多いのですが、生命の危機を感じたときに機能するカラダを守る脂肪細胞であるということは分かっています。

読者の方には、もはや説明不要かもしれませんが、このような誤った情報が蔓延しているのは、これまでの説明中のベージュ脂肪細胞を褐色脂肪細胞に置き換えてみれば分かりますね。

つまり、ベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞を混同しているために、もっともらしい効果があるように感じられてしまうのです。

一部の専門家が誤った情報を発信してしまったのも誤解の大きな原因

まず、脂肪には白色と褐色の2種類という定説があったことが大きいです。そして、海外の研究発表が大元なのですが、それが日本語訳された時に誤訳したために、専門家の情報がおかしなことになりました。さらに、その日本の専門家の情報を鵜呑みにして拡散されたわけです。

ただ、本当に単純な間違いなのです。

ネット上の情報発信者が英語論文の本文中の「browner fat」と「Brown fat cell」の解釈を混同したことが原因だと思われます。browner fatは、「より茶色い脂肪」です。これはベージュ脂肪細胞のことなのです。そして「Brown fat cell」は褐色脂肪細胞です。先ほど、ベージュ脂肪細胞が”brown-in-white” をもじってブライト(brite)脂肪細胞とも呼ばれているという点も誤解を招いた可能性もあると思います。ベージュも薄い茶色ですから。

困ったことに、有名女性向け雑誌・健康雑誌・健康がテーマのテレビ番組・インターネット上の生活お役立ち情報サイト・まとめサイトの多くは、この間違った解釈のまま情報発信しております。もちろん中には正しい情報を発信しているメディアもありますが、比較すると少数と言わざるを得ません。

だったら、肩甲骨ダイエットって意味ないじゃん、と思わないでください。冒頭で申し上げましたように、肩甲骨を動かす運動によって、ボディラインを綺麗にする、姿勢をよくするといった効果はあります。そして、肩こりの治療においても肩甲骨はとても大切なのです!!これまでの長い文章は、肩甲骨によるシェイプアップ効果の解説の長い前振りでございます。

 

肩甲骨を動かしても痩せることはないが、シェイプアップ効果はあり!肩甲骨ストレッチは全ての方にオススメします。

ダイエットの目的は大きく2つあります。

  • 体重を減らす
  • 体のライン・シルエットを美しくする

まず、肩甲骨を動かすことで体重を減少させることは出来ません。

体重を減らすには摂取エネルギーに対し、消費エネルギーを増やすということが必要になります。肩甲骨をどう操作しても摂取エネルギーを減らすことは出来ませんし、消費エネルギーを増やすことも出来ません。またリンパの流れを良くすることでムクミをとっても本質的な体重減少には至りません。

以上のことから体重の減少を目的とした場合、肩甲骨ダイエットではダイエットは不可能といえます。

では体のラインを美しくするという点についてはいかがでしょうか。

結論からいいますとこれは可能です!!

肩甲骨ダイエットは脂肪を減らして体を細くスリムにする、いわゆる痩身ではありません。あくまでも体を本来あるべき正しい状態へ戻し、姿勢を良くすることで、結果的に体のラインがスッキリ見えるようになるということなのです。肩甲骨ダイエットにおいて、ダイエット効果に必要なことは、リンパやムクミ、ゆがみなどではなく、筋肉です。筋肉を良好な状態にすることが必要なのです。

肩甲骨は実は特殊な存在。なんと関節なのです。

肩甲骨って何ですか?と問われたら、背中の肩の下にある骨とお答えになると思います。

肩甲骨はその名のとおり骨ですが、実は関節でもあるのです。

解剖学上、肩甲骨は肋骨の上に筋肉で貼りつけられている状態です。一般的に、骨と骨の連結部分のことを関節と言い、肩甲骨と肋骨と同様に、肩甲胸郭関節けんこうきょうかくかんせつといいます。肩甲胸郭関節は関節の中でも特殊な存在で、通常、関節は靭帯・関節包などいった結合組織という関節の連結を強める組織によってつながれていますが、なんと肩甲胸郭関節にはそのようなものがありません。筋肉のみで連結されているのです!!これは人体で最も可動性の高い肩関節の動きに関与するためです。すなわち肩甲骨のコンディションは筋肉の状態によって左右されるのです。

話をもどしますね。

現代人はデスクワークや立ち仕事など同一姿勢を続けることが多いです。長い時間同じ姿勢でいると大変疲れますよね。そのため楽な姿勢、力を抜いた姿勢を自然と続けるようになり、いわゆる丸まった姿勢=猫背の姿勢になります。また、見たときの姿勢が、背中はまっすぐ伸びていても、肩が丸まっている方が沢山いるのです。このような方が肩甲骨ダイエット(体のシルエットを美しくする)の対象となります。

猫背は、肩甲骨が外側に移動してしまっていることが原因です。

猫背の姿勢や背すじがのびても肩が前に入っている姿勢ですと、たとえどんなに体重が軽く、横から見たら細くても、正面や後方から見た姿が横に膨張して見えてしまいます。肩幅が広く、背中が丸く、首が短く、さらには二の腕が太く見えてしまいます。これは肩甲骨が外側に移動(外転)してしまっているのが原因なのです。

このような状態
↓↓↓

肩甲骨シェイプアップ1

なぜ、このように肩甲骨が外側に移動してしまうのでしょう?

  1. 肩甲骨を外側に引っ張る(外転)作用のある筋肉の緊張

    大胸筋・僧帽筋上部線維・広背筋・大円筋・前鋸筋・上腕二頭筋・上腕三 頭筋長頭・烏口腕筋など

  2. 肩甲骨を内側に寄せる(内転)作用のある筋肉の弱体化

    僧帽筋中部線維・僧帽筋下部線維・菱形筋など

の二つがあげられます。(厳密には首・腰・股関節の状態も影響しますがここでは話が複雑になってくるので割愛します。)

このように例をあげると、肩甲骨を外側に引っ張る働きを持つ筋肉がそもそも沢山あるのです。したがって、何も意識せず脱力した姿勢で生活を続けていると、知らぬ間に丸まっていってしまうというのも納得出来ます。

外転してしまっている肩甲骨をどうすれば良いのでしょうか?

逆にする、つまり、内転している状態にすれば良いのです。

このような状態
↓↓↓

肩甲骨シェイプアップ2

この記事をご覧になった方は今すぐにこの画像のように肩甲骨を、そして背骨を中心に寄せるイメージで力をいれてみてください。

・・・恐らくすぐに疲れてしまうと思います。(きちんと対処法をご紹介しますのでまだ諦めないでください!!)

すぐに疲れてしまうのは、外に引っ張る力がまだ解除されていないためです。ここで「緊張を解除するためには治療に来てください」という面白くないオチではありません。しっかりと効果のあるセルフケア方法をご紹介します。

肩甲骨の緊張を解消するkatakori LABSオリジナル肩甲骨ストレッチの解説動画をYouTubeで公開しましたのでご覧ください。(必ず痛みや違和感のない範囲で行ってください)

 

 

※ブログ記事でも紹介しています→[セルフケアブログと同じストレッチ方法

この肩甲骨ストレッチを行ったあと、上記画像のように肩甲骨を内側に寄せてみましょう。きっと変化を実感していただけるはずです!!エクササイズとして行う場合は、先にストレッチを行い柔らかくなってから、肩甲骨寄せ運動を30秒×2セット目安に行ってみてください。ストレッチと合わせてトータル2分で完結です。

夏に向けて、体のラインは気になっているけれど、ハードな食事制限や運動を行う高いモチベーションは持てないという方にオススメです。驚くほどの効果が実感できるわけではありませんが、簡単で、それなりの効果が見込めます。是非、朝・昼休み・夜の一日3回、夏までの1ヶ月間の日課にしてみてください。(簡単で確実な効果のあるダイエットということならば美容医療という選択肢があります。根本から細くしたい、脂肪そのものを取り除きたいということであれば、最も効果が期待できる選択肢であるといえます。)

もしかすると、体のラインが美しくなるだけではなく、肩こりが酷かったけど最近あまり気にならない!なんて嬉しい効果があるかもしれません(^^)

肩甲骨を動かしたくても動かせないひどい肩こりの方は「肩甲骨はがし」が効果的

重度の肩こり・肩甲骨こりをお持ちの方の中には、硬くなりすぎて動かしたくても動かすことが出来ないという方もいらっしゃいます。そればかりか動かしているのかそうでないのか、コリすぎてその部分の感覚すらない方が実際にはいらっしゃいます。

このような方々に特にお勧めしたいのが「肩甲骨はがし」です。巷でも流行っておりますので、ご存じの方も多いと思いますが、肩甲骨と背中の間に指をいれてグイッと引き上げて肩甲骨の内側の筋肉を刺激する技です。

肩甲骨はがし

解剖学用語では、肩甲骨と肋骨の連結部分のことを、肩甲胸郭関節けんこうきょうかくかんせつといいます。そう、あまりピンと来ませんが「関節」なのです。ここで注目すべきなのが、この肩甲胸郭関節は人体の中でも特殊な存在であるという点です。普通、関節は関節包(関節を包む袋)や靭帯(関節を連結するヒモ)で連結を強めています。それに加えて筋肉があって関節を作り上げています。肩や膝、股関節など、皆さんがイメージできるほぼ全ての関節も同じようにこのような構造となっています。

ところが、肩甲胸郭関節だけは筋肉のみで連結されているのです。すなわち、他の補助が無い分、筋肉は非常に大きな負担が掛かることになります。ですから肩甲骨周囲の筋肉は疲労しやすく、硬くなりやすいのです。

一般的には肩甲骨の内側の筋肉、僧帽筋そうぼうきん菱形筋りょうけいきん脊柱起立筋せきちゅうきりつきんなどが硬くなり症状を自覚する場合が多いです。肩甲骨はがしを行うと、ちょうどその部分に手を当てることによって引き伸ばすため、指圧とストレッチが合わさり、大変心地良くすっきりした感じが直後に出ます。ですが、効果は持続せず、すぐに元通りとなることが殆どです。その理由は、該当する筋肉に対する負担が解消されていないからです。つまり、肩甲骨がこる方の大きな特徴として、肩甲骨が外転してしまっているということがあげられます。

このような状態
↓↓↓

肩甲骨シェイプアップ1

つまり、肩甲骨を外側に引っ張る(外転させる)筋肉が硬くなってしまっており、内側の筋肉(僧帽筋・菱形筋など)が引き延ばされてしまうために肩甲骨の内側にコリを感じるのです。

そのため「肩甲骨はがし」という何とも特殊な技のように感じますが、それだけを行うのであればコッている部分をひたすら揉んで心地よいというリラクセーションと大きな差はないのです。

肩甲骨はがしだけならリラクセーション。+αで肩甲骨こりを解消!

もうお分かりですね。

肩甲骨はがしと同時に肩甲骨の外転作用のある筋肉をほぐせば良いのです。

ここまで行って初めて肩甲骨こりが解消できます。

肩こりラボでも、肩甲骨はがしは処置方法の1つとして行いますが、外転作用のある筋肉に対する処置とセットで行うのが鉄則です。加えて、通常の肩甲骨はがしにさらに特殊な技を加えることで、従来の肩甲骨はがしで届かなかった部分の筋肉を弛めることもできます。

つらい部分をひたすらマッサージすれば、その時は楽になるかもしれませんが、楽なのはその時のみですぐに元通り・・・そしてまたマッサージを受けて・・・という繰り返し、断ち切りたいと思いませんか?

この繰り返しを変えるには、やはり根本的な原因を明らかにして解決するしかありません。ある部分がきまっていつもつらくなるのであれば、そこに負担をかけている原因が必ず存在します。その原因を生むさらに原因もあるはずです。こういった原因を追究して、ひとつひとつ解決することではじめて「施術を受けてもすぐに元通り」という悪循環を断ち切ることができるのです。

もし、あなたが「骨がゆがんでいますね」といわれたら、気をつけてください。それは「治らない宣言」です。「治せませんので繰り返し通ってくださいね」ということです。

今通われている治療院、今後通われる治療院の良し悪しを見極めるポイント

肩甲骨はがしは確かに気持ち良いですし、直後は楽になります。しかしそれがリラクセーションなのか治療なのかは別問題なので、それは患者さんが見極めなければなりません。

せっかくお金と時間をかけているわけですし、何より治したいという気持ちに沿った治療院でないと救われません。

見極めるポイントは「“肩甲骨をはがす事”が目的となっているのか否か」という点です。
そして次のようにお尋ねください。

「肩甲骨はがしを行っても良くはならないとネットで見たのですが本当ですか?」

この質問に対して「そんなことはありません。よくなりますよ」という返答でしたら、肩甲骨はがしが目的となってしまっています。その場合は高確率でリラクセーションの場合が多いです。(上記でご説明しましたように、肩甲骨の内側がつらくなる原因を解消しなければ治療をうたっていたとしてもこれでは治る見込みはないからです)

今現在通われているところが信頼できるかどうか?は上記でご説明させていただきました一連のメカニズムと相違のない内容の解説してくれるかどうかでご判断ください。理解できない専門用語だけ並べられて難解な説明をされたのでしたら、今後も通うべきか否かを判断する一つの材料になると思います。

「肩甲骨はがし」は確かに気持ち良いのですが、あくまで手技の一つでしかありません。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


【検証】薬で五十肩・四十肩はよくなるの?五十肩に効くとされるクスリの効果と意味を解説

最近、テレビCMや広告で四十肩・五十肩がつらい方へといった市販薬の宣伝を見かけます。五十肩は日常生活に支障をきたしますし、夜眠れないほど痛かったりします。

しかし、病院へ行くのが億劫であったり、とりあえずすぐにでも痛み止めがほしい!!バファリンやロキソニンは効くのかよくわからない、そこで、ご近所の薬局で五十肩の痛みに効くとされる市販薬に手を出してしまうのは、仕方のないことです。

しかも「体の中から効く・・」「痛みにズバリ」といった飲めば治るかのようなキャッチコピーに心動かされ、先の見えない痛みに苦しむ患者さんの中には藁をもつかむ思いで購入を考えている方もきっと多いことでしょう。

「痛みが取れなければ、病院へ」なんていうCMもありますが、最初から病院に行けばいいのでは?と思われる方も多いことでしょう。そこで、薬を飲む事で五十肩が改善するものなのか、果たして治るものなのか、その成分と効能を元に検証してみます。

最初にはっきりと申し上げておきますが、一般的な五十肩向けの市販薬の説明には「五十肩が治る」とはどこにも書いてありません。たいてい「諸症状の緩和」と書かれています。なお、痛みが収まる=五十肩が治る、ではありません。

しかし、服用すれば治る、と思ってしまうような宣伝がなされています。

 

大事なポイント四十肩や五十肩は、放っておいても1-2年ほどで痛みだけは自然と治まることが多いです。痛みを感じなくなるまでの間、痛み止め注射を打ったり、鎮痛剤を服用してしのげば良いと思いがちですが、痛みだけ抑えていても、五十肩自体は治らないのです。

痛みが治まっても五十肩が治ったことにはなりません。

現代医学的には、原則再発はしないとされていますが、以前四十肩患い、再び五十肩になってしまったので今回はきちんと治療をしたいと訴えてご来院される患者さんが、当院には一定数いらっしゃいます。

治療せずに痛みが自然と感じなくなった時、残念ながら肩の関節は確実に動かしにくくなります。日常生活に支障はない動きはできても、発症以前の動きは確実にできなくなります。これは“年齢のせい”ではありません。四十肩や五十肩は、きちんと治療を行えば、肩の関節が正常に機能するよう元に戻ります。

 

今回は、四十肩や五十肩の薬について、肩関節痛の治療を行う者として、患者さんの悩みを少しでもスッキリしてもらいたいという思いでこの記事を書いていきます。

現在お悩みの方だけでなく、お父さん、お母さんをはじめ身の回りで四十肩・五十肩で悩んでいらっしゃる方のお役に立てましたら幸いです。

五十肩に効くクスリの本当の効果について

五十肩に効くという市販薬がアピールする効能は3つ。

お手元にクスリがある、または、クスリのホームページをご覧の方、説明やキャッチコピーをよく読んでみてください。

「痛みを解消」「痛みを緩和」「つらい症状を緩和」「体の中から改善」etc…実はすごく曖昧だと思いませんか?痛みが緩和されるとはいっても、五十肩がよくなる、とはどこにも書かれていません。

とはいえ、何よりもまず痛みをなんとかしたい!!と思われますよね。実際の五十肩(肩関節周囲炎)のクスリの効能について説明いたします。

五十肩に効くとされているクスリの効能は大きく分けると以下の3点です。

  1. 鎮痛作用
  2. 血流改善作用
  3. 軟骨修復作用(?)

 

鎮痛作用について

市販薬で鎮痛作用(痛みの緩和)が期待できるのは、消炎鎮痛剤が配合されているものです。消炎鎮痛剤(NSAIDs=Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)とは各種あり、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称でステロイドではない抗炎症薬すべてを含みます。

NASIDsに該当される場合は、痛みの緩和が期待できますが、痛みや諸症状の緩和をうたう市販薬全てがそうであるというわけではありません。

いわゆる解熱鎮痛剤、たとえば、ロキソニン、バファリン、ボルタレン、イブ  等はNSAIDsに該当します。

 

ペイン・スパズム・サイクルという考え方があります。

慢性的な痛みがある場合、痛みを感じる神経が過敏になる場合が多く、普段よりも痛みを感じやすくなってしまっているのです。これがさらに筋肉や精神の緊張を招き、新たな痛みを招いてしまうという悪循環を招きます。

この負のスパイラル[Pain-spasm cycle(ペイン・スパズム・サイクル)]を生んでしまうと、長期にわたって辛い状況から抜け出すことができなくなります。

Pain-Spasm-Cycle

出典: http://joshuaoliphantmassage.com/pain-spasm-cycle/

 

これを緩和するためには、痛みを感じ始めた時期(急性期)に鎮痛を図ることが大切なのです。

そこで、五十肩に効くとされている薬の中でよく宣伝されておりネット上でランキングされている上位の6種類を調べてみると、どれも消炎鎮痛剤(NSAIDs)は含まれていないことがわかりました。

代わりに痛み止めの成分として含まれているのはビタミンB群や各種の漢方でした。 神経痛の場合はビタミンB12が処方される場合がありますが五十肩は神経痛ではありません。厳密な意味での四十肩や五十肩は、関節の内部(滑膜)の炎症です。

また、漢方で血流を改善して痛みを緩和するとのことなのですが、痛みに苦しむ急性期は炎症が盛んなため温めたり血流を良くすると、かえって痛みが増してしまう可能性があるのでこの点は注意が必要です。

 

ビタミンB1、B6、B12が配合されたビタミン剤は、肉体疲労時の栄養補給、神経痛、筋肉痛、関節痛などの症状改善、眼精疲労に効果があるとされていて、転じてコリをほぐす効果があるとされていますが、ここで大切なのは、ビタミン自体は、あくまでも身体の代謝に必要な栄養素です。

ビタミン自体がコリをほぐすわけではありません!カラダの機能を補助する栄養素であって、普通の食生活をしていれば不足することはあまりありません。

 

では純粋に鎮痛薬という点に的をしぼってみます。 医師によって処方されるお薬(処方箋医薬品・医療用医薬品)には消炎鎮痛剤が十分に含まれているため鎮痛作用が確かにあります。

いわゆる頭痛・生理痛などのための市販の鎮痛薬は第一類医薬品・第二類医薬品に分類され、消炎鎮痛剤(NSAID)が含まれているため、ある程度痛みの緩和には有効です。そのため、急性期の鎮痛には有効と考えられます。

 

医薬品の分類と消炎鎮痛剤の含有量の表
分類 消炎鎮痛剤の含有量
医療用医薬品医師による処方せんが必要★★★★★
一般用医薬品 第1類・・・副作用に注意が必要薬剤師のみ扱える★★☆☆☆
 第2類・・・副作用が少ない薬剤師、登録販売者★☆☆☆☆
 第3類・・・副作用の心配をしなくても良い薬剤師、登録販売者☆☆☆☆☆

 

とはいえ病院で医師の処方による消炎鎮痛剤と比較すると含まれる成分の量の差は歴然で、その効能の差も明らかです。

病院でもらった薬、処方された薬は効きが全然違う、というのは一般的な認識だと思いますが、この理由の一つが、有効な成分の含有量の違いなのです。

 

血流改善作用について

市販薬で一般的に五十肩・肩関節周囲炎に効くとされている薬は第二類医薬品・第三類医薬品に分類されています。上記でもご説明させていただきましたが、五十肩の薬には消炎鎮痛剤はほとんど含まれておらず、含まれていても微量であり、鎮痛作用は非常にマイルドと思われます。

では、なぜそれらのクスリが五十肩に効くと謳っているのかといいますと、血流を改善することが効果ありとしているためです。配合されている漢方の成分やビタミン剤によって血流の改善を期待するようです。

急性期は炎症が盛んなため、血流が増す事で痛みが増してしまうことがありますが、拘縮期以降は血流を増すことで、痛みの緩和などにプラスに働くことは確かに考えられます。これは、服薬がプラスになるというよりは血流改善を促すということは確かに効果的であろう、という意味です。

しかし血流改善を求めるだけならば、クスリを服用するよりも、ホットパックや温水などを用いたご自身で行うことができる温熱療法にて直接患部を温めた方が、疼痛閾値を上げる働きもあり痛みの緩和作用としてずっと効果的です。

軟骨修復作用について

グルコサミン、コンドロイチン・・・誰もが名前だけは知っているという知名度抜群の成分です。コンドロイチンのような軟骨成分は五十肩の市販薬に含まれている場合が多いです。大量のCM、通販、さらにはドラマかと思ったらCMだったというように、あの手この手でテレビを見ている人を洗脳した結果、磨り減った軟骨が復活すると信じている人も少なからずいらっしゃいます。

そして、五十肩は加齢現象によるものいう認識が広まっているため、加齢 → 軟骨がすり減る → 痛み という図式を想像する方が多いと思います。

四十肩や五十肩は軟骨が磨り減って生じるものではないという事実

セラピストとして、はっきりと申し上げますが、四十肩や五十肩は軟骨がすり減るから生じるわけではありません。この点は多くの方に誤解されている点でございます。

先の記事内でご紹介させていただきましたが、レントゲン所見上異常がなく骨や関節軟骨など器質的な異常が見当たらないのに痛みがある場合、そして関節包などの軟部組織が異常を起こしてしまっている状態で、特徴的な病期を経る状態を厳密な意味での「五十肩」や「四十肩」といいます。

もし骨や軟骨に異常があれば他の診断名がつきます。

厳密な意味での四十肩や五十肩は、上腕骨と肩甲骨を連結する肩甲上腕関節の、関節包の内面の存在する滑膜が炎症を起こしている状態です。慢性例や重症例ですと、関節包と関連のある周囲の組織に炎症が波及したり、合併した炎症が見受けられることがありますが、原則、構造的な問題(骨や軟骨の問題)は無いものです。そのためレントゲン上は異常が無いとされるのです。

五十肩も四十肩も、医学的には肩関節周囲炎と呼ばれ、病態は同じものです。発症する年齢によって俗称として「四十肩」「五十肩」と使い分けています。ですので、「四十肩」や「五十肩」は正式な医学的な名称ではございません。本記事では、わかりやすやを優先して、肩関節周囲炎=(厳密な意味での)五十肩=(厳密な意味での)四十肩 として「五十肩」と表記させていただきます。

では、磨り減った軟骨が再生すると思われているコンドロイチンやグルコサミンって何の意味があるのでしょうか?

コラーゲン摂取→お肌プルプル・・・気のせいです。。効果ありません。

女性には悲しい事実ですが、コラーゲンを摂取しても肌に効果はありません。肌の上から塗っても浸透しません。ただ、コラーゲン自体に保湿成分があるので、化粧品としての効果はあるでしょう。

コラーゲンを摂取しても美肌効果はが無いのとコンドロイチン、グルコサミン摂取の効果はないというのは原理は同じです。それら軟骨成分を摂取しても、実際は消化吸収される際には軟骨としてではなく、分解されてコンドロイチンは乳糖、グルコサミンはブドウ糖として吸収されます。

仮に、軟骨成分が腸から吸収された後に体内に入って再び元に戻ったとしても、血液として流れていき関節内の滑液にまで運ばれ、都合よく軟骨がすり減っている部分に集まり、修復されるのを助長することができるかどうかは医学的に疑問が残る所であり、正直な所、疑似科学といわざるを得ない部分があります。

本来、軟骨には血液循環がほとんどありません。血液の代わりに関節内に存在する滑膜から分泌される滑液によって栄養が補給されています。残念ながら人体の中でも軟骨への栄養供給の優先度が低く、血液→滑膜→滑液→軟骨 となるため血液中にいくら栄養素が存在していても軟骨に到達するまで間に障壁が存在します。

これは生命維持において関節軟骨への栄養供給優先度は低いためです。さらに栄養が軟骨まで届いたとしても、その栄養素は限りなく微々たるものです。関節軟骨は、厳密に言えば若干は再生能力がありますが、画像検査にて観察できる肉眼で確認できるレベルの再生能力は基本的に持ち合わせていません。

学術的に「結論」はすでに出ています。

ところが、効果の有無を示した論文が多数出展されており、サプリメント会社やフィットネス関連の方々は推奨する一方、医療関係者は否定するといった形で議論されてきました。医療関係者が否定するので、サプリメントの訪問販売の業者などは「これを医学的に認めると、医者が儲からなくなるから医者は認めない。」などという陰謀論まで持ちだして高額な商品を販売することもしばしばです。

何が正しいのか?

2010年にメタアナリシスが発表されました。メタアナリシスとは複数の研究結果、研究データを計算してまとめて解析、分析したものです。これは、根拠に基づいた医療において、最も質の高い根拠とされます。様々な説がある中で、信頼のおける結果が出ているのです。

 

結論コンドロイチンとグルコサミンは例え二つを組み合わせて飲んだとしても変形性膝関節症、変形性股関節症への効果、つまり「すり減った骨や軟骨を修復する効果は期待できない

 

当文献では論文としての形式上膝と股関節に限定しておりますが、直接患部に注射するのではなく経口摂取である限り、成分は血中に入り全身を循環するため膝と股関節へ選択的・限定的に集まるという事は考えにくく、腰・肘・手などといった他の関節・軟骨にも同様と考えて差し支えないと思います。

この結論から、整形外科でしばしば言われる「背骨の間が狭まっている」「関節の隙間が狭くなっている」ことによる痛み・しびれなどに対する作用は全身どこの部位においてもあてはまる事と考えても良いのではないでしょうか。

つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどの軟骨修復作用をうたう成分は、例え「医薬品」という表示があったとしても経口摂取である限り、身体各所の変形性関節症・頚椎ヘルニア・腰椎椎間板ヘルニアなどの痛み・しびれを改善する効果(すり減った骨や軟骨を修復する効果=関節と関節の隙間が狭くなってしまっているのを回復させる効果)はプラセボ(心理的作用)以上のものは期待できないと考えて良いでしょう。

 

ただし、2018年に発表されたメタアナリシスでは、「グルコサミンやコンドロイチンのような広く使用されているサプリメントは、効果がないか、あるいは小さく臨床的に重要ではない」という結論とさてておりますが、実験結果としては、短期的な痛みの緩和において役に立つ可能性が示唆されています。

医学に絶対はありませんし、今の常識が数年後には非常識になるということは少なくありません。今後研究が進み、新たなことがわかってきて覆るという可能性はありますが、エビデンスを元に考えますと、現時点の結論としては、コンドロイチンやグルコサミンといったサプリメント・市販薬は、変形性関節症の長期的な改善において効果は低いと考えられます。また、同様に五十肩の根本的な改善にも効果は低いと考えて良いかと思います。

 

 

余談ではりますが・・・

 

ヘルニア=腰痛ではない

ヘルニアといいますと、腰の椎間板ヘルニアが一般的で、ヘルニア=腰痛と思われる方が大半かと思われます。椎間板ヘルニアは、ヘルニアの一種です。

ヘルニアという言葉は、ラテン語で「脱出」という意味です。そこから、体内の臓器などが、本来あるべき部位から脱出した状態を指します。

脱腸やでべそもヘルニアなのです。脱腸は鼠径(そけい)ヘルニアといい、でべそは臍(さい)ヘルニアといいます。

椎間板ヘルニアは、椎間板の中心部にあるゲル状の組織が外へ出てしまっている状態で、脊髄や神経を圧迫するため痛いのです。主に腰の部分にある椎間板(腰椎)で発症します。ぎっくり腰として発症することもあります。

肝心の椎間板ですが、これは背骨の一つ一つの骨と骨の間にある円形の線維軟骨です。中央部分は髄核と呼ばれるゲル状でその周囲をコラーゲンなどの線維輪が囲っています。骨と骨の衝撃を和らげるクッションのような役割なのです。人間の複雑な動き、運動ができるのは、この椎間板のおかげなのです。

五十肩の激痛に対する治療について

五十肩は症状によって3つの時期を経ます。これは、どんな五十肩であれ共通です。これを病期といい、以下の3つの病期となります。

急性期 → 拘縮期(慢性期) → 回復期

このうち最もつらいのは言わずもがな最初の急性期です。急性期の間は夜、痛くて眠れない、僅かでも動かすと激痛が走る、といった痛みのために心身ともに疲弊してしまいます。激痛に苦しむ患者さんには本当に心苦しいのですが、急性期にはどんな治療を施してもいきなり治るということはないというのが実状ですので鎮痛に重点をおく治療となります。

ですので、急性期は炎症をなるべく早く落ち着かせるために肩関節周囲の負担を減らし、余分に動かしたり治療するなど過度の刺激は避け、とにかく安静を図りつつ鎮痛を持続させながら、拘縮期(慢性期)へ移行するのを『待つ』期間です。安静が大事ということは・・・痛みを抑えて、肩が楽に動かせることをアピールしている薬がありますが、服用される方は気をつけてください。痛みが治まった=動かせる、ではないのです。

拘縮期に移行したらはじめて前向きな治療が可能となるのです。痛いからどうにかしようと様々な処置を行う事により、これが刺激となりかえって炎症を助長させてしまい、つらい急性期を長引ませてしまう可能性があるのでこれにも注意が必要です。我慢できず痛み止めやヒアルロン酸の注射をしたが、注射が刺激となって炎症を助長させかえって痛くなってしまったという例はめずらしくありません。

このため、五十肩の治療は病期に合わせて最適な処置を行う必要があります。 病期ごとにどうような治療が適切かはこちらをご参照ください。

【肩関節周囲炎】50肩の病期に応じた対症療法と原因療法とは?

はたして五十肩の薬を飲んで五十肩は治るのでしょうか?

五十肩に効くとされる市販薬に消炎鎮痛剤が含まれているようでしたら少なからず(1)急性期における鎮痛作用は期待できます。しかし、医師から処方される鎮痛剤と比べるとその量は微々たるものであり、効果も同様です。処方薬が効かないのに市販薬が効くということは理論上考えにくいです。 消炎鎮痛作用という点でみた場合、効果の程度を比較すると 「処方された消炎鎮痛剤薬 > 市販の消炎鎮痛薬 > 五十肩に効くとされる市販薬」 となります。

血流改善作用におきましては、炎症が盛んな急性期には返って痛みを助長させてしまう可能性がありますので注意が必要です。血流改善が効果的となる可能性があるのは (2)拘縮期以降となります。

軟骨修復作用においては・・・上記でご説明いたしました通り五十肩の治癒とは関係はないでしょう。

これらの事から、五十肩の痛みをどうにかしたくて服薬を検討する場合は「市販薬には医師から処方される消炎鎮痛剤以上の効果を期待することはできない。特に五十肩に効果的と宣伝されている薬の効果は非常にマイルドであることが予想される。」が私の見解です。

 

結論服薬という手段は急性期における鎮痛には有効だが、それは根本治療にはならない。

 

実際の効果はないけれども、調子よくなった気がするのならば効果あり

“体の内側から効く”というキャッチコピーは、とても効きそうですが、急性期で痛みに苦しむ場合、医師から処方された鎮痛剤以上の効果を市販薬に求めることはできないこととなります。現実問題として、急性期の激痛は処方された鎮痛剤や強いお薬、そして注射をうってもおさまらないことがあります。するとつい、「根拠が定かでなく、よくわからないけど効きそうなもの」に頼りたくなってしまう気持ちはとてもわかります。

一見、さも効きそうな効能がうたわれている市販薬やサプリが宣伝広告されていますが、五十肩の痛みをどうにかしたい場合、処方薬を服用することが最も痛みから解放される手段である事は変わらないでしょう。特に急性期の激痛においては藁をもすがる思いでどうにかしたいとお考えなのは重々承知ではありますが、処方された鎮痛剤が効かないのに鍼灸・マッサージはじめ、漢方やその他の療法が効くということはまずありえません。

ただ、クスリを服用することで、効いている気がする、クスリの影響でなかったとしても調子が良くなったのならば、それはラッキーなことです。病は気から・・・というように、精神的な影響は大きく、思い込みは決して馬鹿にできません。カラダの調子がよくなった!治ってしまった!これが一番です。

いくらクスリを信じて飲んでも効果がない場合は嫌かもしれませんが上記で述べた現実と向き合ってください。

五十肩の薬の効果を知ってガッカリされた方、とっておきの方法をお教えします。

安心してください。 そのような方にご自身でできる、とっておきのセルフケア方法があります。それはアイシングです。 古典的な方法ですが、正しく行うことで、意外な効果が期待できます。是非一度はお試しいただきたいと思います。

アイシングもあくまで鎮痛目的であるため、ずっと続ければ良いというものではありません。あくまで急性期の痛みをコントロールするための対症療法とお考えください。

五十肩の急性期における効果的なアイシング方法は 氷嚢(ビニール袋に氷と水を入れた簡易的なものでも良いです)にて痛い部分を20分間程冷やします。 もし、患部が熱感をもっていて何もしないでもジンジン痛いようでしたら、20分冷やした後一旦休憩し、患部の皮膚の温度が常温となるまで待ちます。皮膚の温度が元に戻ったら再度冷却を行います。この行程を痛みが気になる際に行ってください。一日1回、1セット行っていただくだけでもだいぶ楽になると思います。この時の注意点は、凍傷となる恐れがあるため、保冷剤や氷で直接冷やしてはいけないということです。アイシングとはいえ0℃以下で冷やしてはいけないのです。氷のうは薬局やスポーツ量販店にて安価でお買い求め可能です。

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また、アイシングのしすぎにも注意が必要です。急性期の痛みに苦しんでいる際に、アイシングを行うと、その効果に驚くと思います。するとついついアイシングをたくさん行えば良いと錯覚してしまいがちなのですが、過ぎたるは及ばざるが如しという言葉のとおり、アイシングの行いすぎには注意が必要です。アイシングを行う時間が過度に長いと例え氷のうを用いていても凍傷を起こす可能性がありますし、常に冷やす事によって返って血流が悪くなり他の痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしていただきまして、繰り返す場合は皮膚の温度が完全に元通りになってから行うようにしてください。

ただし、夜間痛があるようなひどい炎症がある場合、最も改善できるのは、肩関節専門医による治療です。五十肩の炎症期(急性期)は、関節方の内部に非常に強い炎症が生じています。そのため、適切な薬剤を用いた医学的な対処が最も効果的となります。

そのため、夜間痛や安静時痛のあるような状態であれば、セルフケアではなく、専門医の治療を受けることを強くご推奨いたします。

拘縮期(慢性期)以降の服薬の有効性について

一時の激痛や夜間痛などは落ち着いたが、まだ動かすと痛いという(2)慢性期に入ったら、肩甲骨周囲の緊張した筋肉を弛める事とインナーマッスルの強化など肩関節が動くことができる下地作りが根本治療には必要です。血流改善の目的はあくまでも鎮痛のためであり、動かしやすくするためです。つまり運動療法の補助的要素であり、拘縮期において、血流改善のみを行っていても五十肩が治ることはありません。

五十肩に効くとされる市販薬は拘縮期に入ってからでしたら、強い鎮痛作用を求めることもありませんので、血流改善目的で服用する意味は少なからずあるように思えますが、医学的にはどのような扱いなのでしょうか?

『今日の整形外科治療指針 第6版 医学書院』409ページには五十肩の治療において急性期は鎮痛剤を服用し安静を図るが、拘縮期には基本的に薬物療法の必要は無い。(要点を抜粋させていただきました)

また、『標準整形外科学 第11版 医学書院』420ページには 疼痛が強い時期(急性期)には安静と消炎鎮痛剤の服用や注射などが行われるが、可動域制限が主体の凍結期(拘縮期)に達したらリハビリを中心に行う。(要点を抜粋させていただきました)

このように二つの医学専門書おいて、拘縮期(慢性期=凍結期)には薬の服用が必要ないということが記載されておりました。

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【まとめ】五十肩には適切な対処方法があります!!

医学的根拠に基づいた治療という観点から申し上げると、四十肩・五十肩におきましては、急性期においてその場の痛み・辛さを抑えるために消炎鎮痛剤を服薬することは効果的です。拘縮期以降においては、お薬の服用は得てして必要ではないとされています。

最も肝心なのは、たとえ薬を飲み続けたとしても根本的に治ることはないということです。お薬の役目はあくまで、急性期の乗り切るための鎮痛目的です。拘縮期以降、本格的に肩関節の可動性を回復させる治療を受ける前までその場の痛みをしのぐものとして活用していただけたらと思います。

何よりも、五十肩を根治させるためには、病期に応じた適切な処置を行うことが大切です。

例えば、急性期は積極的な安静が必要ですが、拘縮期はたとえ痛くても積極的に動かさなければなりません。痛いからといっていつまでも安静を保ちすぎるのは返って治癒を遅らせてしまう要因となります。このあたりはとても詳細な見立てが必要となりますので、是非、自己判断で病期や状態を判定せず、お近くの専門家にご相談いただけたらと思います。

【補足】五十肩に限らず、肩こり、腰痛などの慢性的な症状でお悩みの方へ

慢性的な症状の解決には、ご自身でできる事や、行っていただかなければならない事はもちろんあります。 しかし慢性的な症状となればなるほど、ご自身では気が付かない部分に原因があったり、ご自身の力ではどうにもならないことが治るのを妨げているという場合がしばしばあります。

良かれと思って行っていただいている事や、○○改善本に書かれていることを自己判断で行う事によってかえってマイナスとなってしまっている事もよくあります。

どうしても「劇的な効果」や「自力でなんとかする」という点に着目されがちですが、確実な治療にはそれなりの手順や段階があります。

治療は魔法ではありません。こと東洋医学や鍼灸・マッサージは「即効性」や「魔法のような効果」を強調されますが、100人に1人たまたまそのような劇的な効果があったとしても、その1例だけを強調して効果有りとしてしまう良くない慣習があります。

今痛みに苦しんでいらっしゃる方には本当に心苦しいのですが、いきなり症状をゼロにするのは現実問題、困難です。 確実に改善していくためには、ある程度の施術回数や期間が必要なのです。

症状が安定し、セルフケアを体得し、ご自身で体調管理ができるようになるまで一定期間プロに体を任せるのも現状打開のための一つの手ではないかと思います。

もし、当院へ大切なお身体をお任せいただけるようでしたら、通ってもらうためではなく、一刻も早い最短でのゴールを目指します。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


フィガロジャポン(2014年6月号)にてご紹介いただきました。

フィガロジャポン6月号
アマゾンで注文

4月20日発売のFIGAROジャポン6月号の別冊付録「カラダにいいアドレス43&メソッド24」にkatakori LABSが掲載されました。

フィガロ6月号は「心とカラダに♥効くフィガロ」特集です。本体の特集「しあわせな部屋とヘルシーな暮らし」と併せてお読みいただければ幸いです。

別冊付録は「保存版  どこに通ってる? 何をやってる?」が1冊にまとめられたものです。

当院は、オススメするメソッドである「腹横筋呼吸法」を紹介していただきました。他にも様々な健康なカラダためになるセルフケア方法が掲載されておりますので、永久保存版として末永く活用できると思います。

フィガロに掲載

是非、チェックしてみください。

効果抜群1分でできるかんたん肩こりストレッチ

 

 
 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首肩の痛みに効く!!肩こり解消ストレッチ〜正しいストレッチ方法を解説

肩、首の痛み、寝違え、ぎっくり腰・・・といった急に現れる体の痛み。

悪天候や寒さの影響、そして疲労が溜まると決まって現れる「いつもの」痛み・・・憂鬱な気分になり頭痛も出てくる長引く首こり、肩こり、腰痛。慢性痛。

テレビでは、簡単かつ効果抜群と言われる体操やストレッチ方法がよく紹介されているけど・・・効果がない。沢山ありすぎてどれが正解なのか分からない!!そもそも動かすことに恐怖を感じる・・・

誰もが経験する急な痛みと慢性的なツラい症状を解消するための正しい対処方法を、肩こり・腰痛の専門コースを行っている専門家の立場から責任を持ってキッチリお教えします。

肩こり外来の受診を検討している方、楽になる場所を探し求め日々お悩みの方、まずはご自身で行うことのできる方法で少しでも楽になりましょう!!

今回ご紹介するのは、「今」つらくてお困りの方が、ご自身で行える効果抜群の「肩甲骨ストレッチ」と「セルフケアで押さえておくべきポイント」です。

肩こり対策から急な痛み対策、そして肩こり予防のために、正しい知識を是非とも身につけてください!!

肩こりが簡単に治ってしまう運動・体操・ストレッチは、存在しません!!

肩こりが一発で治るように思わせる情報がたくさんございます。本当にそんな方法があるのなら、世の中から肩こりで悩む人はいなくなります。湿布やピップエレキバンも売れません。

たびたび話題になる肩こり解消方法は、どれも一時的な緩和・解消法

応急処置・対症療法は必要です。頭痛薬や風邪薬が欠かせないように、一時的な解消方法は必要です。

一時的ではなく、きちんと肩こりを根本的に解決するには「原因」にアプローチしなくてはいけません。

痛み・辛い症状の一時的な緩和はまず最初に行う応急処置の一つですが、これらは「原因」ではなく「結果」へのアプローチです。

この記事で紹介するストレッチ方法は「結果」だけでなく「原因」に対するアプローチもしっかり含まれています。セルフケア方法は、肩こり・首こりに限らず、体のどこかを傷めた時にも使える方法です!!生きていく上で必ず役に立つ情報です。ぜひ身の回りの方にも教えてあげてください。

 

近くに救急外来の病院がない!!

祝日、日曜日は医療機関が休みなことが多いので、急に痛くなってしまった時は、ついつい近所のクイックマッサージや整体にいってみようと思われるかもしれません。

もちろんコリをほぐしてもらうという応急処置としてはよいかもしれないが、一時的な緩和ですので、それを繰り返しても決して症状が治まることはありません。

まずはご自身でできる、当ページで紹介のセルフケアを行ってみてください。

正しいセルフケア方法を行えば、十分症状は軽減されます!!

肩こり専門院が行なっているストレッチ

世の中には、肩こり解消を謳ったストレッチの方法がたくさん溢れかえっています。

もちろん効果を期待できるものもありますが、見よう見まねでやってみると、効果が出ないばかりか却って肩こりが悪化してしまうこともあります。

「プロにやってもらう」「プロに正しい方法を教わる」のが正解ですが、今回は誰もが簡単に、そして確実にできる方法をご紹介します。

このストレッチ方法は、患者さんがご自宅で無理なく実践でき、かつ効果のある方法として、試行錯誤を重ねて考えだしたkatakori LABSオリジナルの肩甲骨ストレッチです。肩こりを治すための鍼灸・マッサージにおいても活用しているストレッチですから効果は保証します◎。

katakori LABSオリジナル肩甲骨ストレッチの特徴

  • 誰でも簡単に行えます。
  • 所要時間、わずか1分!!
  • 確実に効果あります。

健康のコツは肩甲骨、というキャッチフレーズをリラクセーションのお店の立て看板でよく見かけますが、その肩甲骨が今回のストレッチの要です。体操よりも気軽にできます。すべての人に自信をもってオススメしたい肩甲骨ストレッチ!!ご自宅だけでなくオフィスでも行えます。

肩甲骨ストレッチの具体的な方法のご紹介の前に、まず、痛みと熱についての豆知識から解説いたします。

痛くなったら冷やすべき?温めるべき?

セルフケアの基本は、患部を温める、もしくは冷やす、というものです。これを間違えてしまうと逆効果、せっかくのストレッチも活きません。

痛みには冷やすべき痛みと温めるべき痛みがある

現場で特に多く受ける質問のひとつです。

痛みを緩和するために、冷やすべきか、温めるべきか、これは沢山の方が判断に迷う問題です。

古くより「首や腰は冷やしてはいけない」という言い伝えがありますが、サッカーや野球などで選手が負傷した時、応急処置としてスプレーで冷やしているのを見たことがありませんか?
湿布には、冷感湿布と温感湿布の2種類あるので、こういったことも混乱する原因の一つだと思います。

また、やり方によっては、冷やすことで血流の改善も可能なのです。
ですので、「首だから冷やしてはいけない」「腰だから冷やしてはいけない」と部位によってではなく、患部の状態によって、温めと冷却を使い分けることが大切です。

急な痛みは冷やし、慢性的な痛みは温める。

処置の方法として、「温める」「冷やす」この2パターンと考えられることが多いですが、「冷やしてから温める」というパターンも含め、基本的には3パターンあります。ただ、温めるべきなのに温めても改善がみられないという場合は「冷やしてみる」という方法もございます。これらについては、それぞれの症状に応じて、後に詳しく解説いたします。

まず、最初に覚えておいていただきたいのは以下の2つです。

  • 急に痛み出した場合は冷やす
  • 慢性的な痛みは温める

先に冷やしてから温める、またその逆の場合でも、最初にとるべき方法はこの2つの方法のどちらかです!!

肩や腰の急な痛みに効くセルフケア方法

寝違え・ギックリ腰など急に傷めた場合、まず冷やすことが大切です。

急な痛みの場合、炎症が生じていることが考えられますので、ストレッチやマッサージなど無理に動かしたり、温めを行ったりするとかえって逆効果となります。

急性の痛みに対しては基本的には冷却(アイシング)と安静が必要です。

市販の湿布の真実

知りたくなかった!!と思われるかもしれませんが、どのご家庭にもある湿布、ヒヤッとはしますが冷却効果はありません。あくまで冷感、文字通り冷たく感じるだけです。

冷感だけでなく温感湿布もございますが、いずれにせよ冷感湿布も温感湿布も効果に差はありません。

冷たく感じる成分、暖かく感じる成分の違いなだけで、冷やされているわけでも温めているわけでもありません。

ただし温感・冷感どちらの湿布にも血流を増加させる効果はあります。ですので寝ちがえやギックリ腰、打撲、捻挫などの急性の痛みの時には不適切であるばかりか、炎症が助長される可能性もあります。

急性の痛みの時には、氷のうで15−20分間のアイシングが有効です。

保冷剤や氷で直接冷やすと凍傷となる恐れがあるので、その点だけは気をつけてください。繰り返しになりますが、冷湿布には急性の痛みに対するアイシング作用はありません。

鎮痛効果という意味では、医師の処方箋が必要なモーラステープやロキソニンテープといった調剤薬局・薬剤師のいる薬局で購入できる湿布は有効です。塗るタイプも同様です。

効果的なアイシング方法と注意点

アイシングには昔からある氷嚢(アイスバッグ)がとても効果的です。

氷のう

お持ちでない場合、アマゾンなどはもちろん、お近くのドラッグストア・薬局に必ず置いてありますので、是非ご用意ください。

  1. 氷嚢で約20分間、患部を冷やします。
  2. 氷嚢を外して、患部の肌温度が元に戻るまで待ちます。
  3. 再び、氷嚢で約20分間冷やします。

このサイクルをできるだけ多く繰り返し、2−3日続けてください。安静を保つことも忘れずに!!

注意点は、凍傷となる恐れがあるため、保冷剤や氷で直接冷やしてはいけないということです。アイシングとはいえ0℃以下で冷やしてはいけないのです。

 

アイシングのしすぎに気をつけてください。

アイシングのしすぎにも注意が必要です。常に冷やす事によって、却って血流が悪くなり痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしていただきまして、繰り返す場合は皮膚の温度が完全に元通りになってから行うようにしてください。(上記の慢性症状の際にもアイシングを行う場合がありますが、その時とは目的が異なるためアイシング施行時間が異なります)

急に痛くなった時のストレッチやマッサージは禁物です。できるだけに安静に!!

無理なストレッチやマッサージ(整体や骨盤矯正含む)は控えて頂き、痛くない姿勢で安静を保ってください。

どうしても動かなければならない時は、コルセットやネックカラーを着用してください。寝違えやムチ打ちの場合で、ネックカラーが無い場合、簡易的な対処としてバスタオルをマフラーのように首に巻くと負担が軽減されます。

初期の処置をしっかり行えば、24~72時間で炎症が鎮静化しますので、初めの処置が肝心です。

アイシングはあくまで応急処置です。アイシング後は可能な限り早く医療機関を受診し、医師の診察を受け処置を行うことをおすすめします。

腕、足に痺れを感じたら、必ず整形外科へ!!

傷めた後から、手足(肘や膝より末端部分)にシビレ感がある場合は、必ず整形外科を受診し医師の診断を受けるようにしてください。

しびれなどの神経症状が無いようであれば、当院で対応できます。2~3回の施術で日常生活が問題なく送れるようになります。

慢性的な肩こりに効果抜群の肩甲骨ストレッチ!!

症状が慢性的で肩こり・首こりが徐々に痛く、つらくなった場合のセルフケア方法は、以下の手順になります。

  1. ストレッチ
  2. 温める
  3. 状況に応じて冷却する

超簡単かつ即効性の高い肩甲骨ストレッチ

肩こり解消に良いとされるストレッチや体操があらゆる所で沢山紹介されています。肩甲骨ダイエット(※ 肩甲骨ダイエットの嘘・ホント)も巷でよく話題に上がります。肩甲骨ダイエットには、残念ながらダイエット効果はないのですが、肩甲骨を動かしストレッチを行うことは大変意味のあることです。

お待たせいたしました。それでは肩こり解消ストレッチではベストな方法だと自負しております肩甲骨ストレッチをご紹介いたします。

所要時間は約1分です。

「肩こり」にお心当たりがある方は騙されたと思って1回試してみましょう。

Point
肩こり・首こりがつらい時は、肩甲骨の動きや位置が正しくない状態です。つらい部分にのみ目を向けるのではなく、その部分に負担をかけている原因、つまり肩甲骨の動きを改善するということが大切です。

step.1

ストレッチその1
肩をグーッと上にすぼめて力を入れて・・・(この時に顎を引かず、やや遠くを見るように少しだけ上を向くようにしましょう)
ストレッチその2
一気に脱力します。

 

これを2~3回行います。

step.2

ストレッチその3
グーッと背伸びをして手をなるべく上に伸ばすように力を込めます。この時もやや上を向く意識を持ちます。両腕を耳の後ろにつけるように力を込めると同時に肩甲骨の外側を伸ばしていきましょう。(肩関節が痛い場合は無理をしないでください。)
ストレッチその4
その後、両肘を後下方に寄せていき、左右の肩甲骨を近づけるように力をいれます。

 

これを2~3回程繰り返します。

step.3

ストレッチその5
脇の下から背中にかけての筋肉(図の赤い部分)をストレッチします。
back-stretch
四つ這いになって腕を頭上にあげていきます。この時も肩甲骨を中心に寄せるように意識します。腕の付け根と胸が伸びるのを感じてください。10秒を2~3セット程。
lat-stretch
デスクでは左の写真のように応用することもできます。ご家庭はもちろん、オフィスでのデスクワークの合間にお試しください。

 

この体勢はご存知の方、よくされている方も多いかもしれませんね

step.4

最後に腕を大きく回します。

前回し後ろ回し5回ずつです。この時も下向かず、やや上を向くくらいの意識で行ってください。

この時に、気をつけるべき大切なポイントがあります!!

  • 両腕同時に行う。
  • 肘を耳の高さまであげる。

この2点を抑えないと効果が期待できませんので注意してくださいね!!書籍や動画、テレビなどで紹介される様々な方法を見よう見まねで試しても効果がない場合は、抑えるべきポイントを抑えられていない、そしてそもそも説明されていないことが多いです。

  • この4つのメニューを行い、肩甲骨の周囲や背中がスッキリした感じがあればOKです。
  • このストレッチは、1日に何回行っても大丈夫な、メリットしかないストレッチです。

どうでしょう?少し楽になりましたか?

このストレッチ方法は以下のYouTube動画でもご紹介していますので、ご覧ください。

 

肩こり治療で行うストレッチ

 

ご紹介した肩甲骨ストレッチの目的と、肩こり解消ストレッチとして機能する理由を解説します。

首や肩のこり固まった筋肉をいくらストレッチしても、伸びませんし楽になりません。肩こりでつらくなる筋肉は頚椎と肩甲骨をつなぐ筋肉です。そのため、以下の図のように肩甲骨をあらゆる方向に動かすことが大切です。

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肩甲骨ストレッチが肩こり解消ストレッチとして効果的な理由

今回ご紹介したストレッチ方法は、首肩の筋肉への負担を減らしつつ肩甲骨を動かすことを目的としたストレッチなのです。これが、肩こり解消に効くのです!!

ストレッチには種類があります!!一般的なストレッチは静的ストレッチ

皆様がご存知のストレッチと呼ばれているものは、じっくりと筋肉を引き伸ばして行うストレッチ方法です。これは、ストレッチの中でも静的ストレッチ(=static stretch)と呼ばれているものです。

ストレッチには大きく分けて

  • 静的ストレッチ
  • 動的ストレッチ
  • PNFストレッチ

の3種類があります。

一般的なストレッチは静的ストレッチ、今回ご紹介したストレッチ方法は、動的ストレッチ(=dynamic stretch)+PNFストレッチになります。

動的ストレッチが効く理由

セラピストとしての経験から、動的ストレッチによる肩甲骨ストレッチを自信をもってオススメしています。実際に試して頂ければ効果を実感していただけるはずなのですが、本当に効果あるの?と試されていない方のために、動的ストレッチの有効性を示唆した論文を見つけてきました。

〜筋ストレッチング法の違いが筋血液量に与える影響〜

酸素化ヘモグロビン(新鮮な酸素が含まれたもの)変化量(安静時値とストレッチング後の値との差)は,ダイナミックストレッチではスタティックストレッチと比較して有意な増加を認めた。しかし,脱酸素化ヘモグロビン(酸素が含まれてないもの)の変化および頚部側屈可動域,筋硬度には有意な差を認めなかった。

筋ストレッチング法の違いが筋血液量に与える影響 公益社団法人 日本理学療法士協会

簡単にまとめると、じっくりと引き伸ばすストレッチ(スタティックストレッチ)と動きを伴ったストレッチ(ダイナミックストレッチ)を比べた所、筋肉の硬さや首の可動域には差が生じなかったが、動きを伴った方が「血流改善効果」が高かった、ということです。

肩こりでつらいその部分におきましては、筋肉が硬くなり血流が悪くなってしまっている状態です。よって・・・「今つらい!!」コリの症状に対処するためであれば、ゆっくり静かに伸ばすストレッチよりも、動きを伴ったもの方が効果的となるわけです。

動的ストレッチだけでなくPNFストレッチの要素も盛り込んだ肩甲骨ストレッチ

katakori LABSが実践・推奨している肩甲骨ストレッチは、動的ストレッチに加えPNFストレッチの要素を取り入れています。その理由は即効性を高めるためです。

PNFストレッチの要素を加えることでなぜ即効性が高まるのか?そもそもPNFとは何なのか?

以下に、ストレッチなのに力を込めるの?という疑問をお持ちの方への回答と合わせてPNFについて簡単にですが、まとめました。理論にご興味がある方はご覧ください。

 

筋肉が凝っている状態とは、筋肉が収縮したまま緩まない状態

人体に本来備わっている機能として、筋肉は力を入れる(収縮)とゆるむ(弛緩)の2つの性質があります。これは人体が円滑に動く上で必要不可欠な機能です。生理学用語でⅠb抑制(イチビー)といい、反射のひとつで意志とは関係なく生じます。時間がたっても戻らないひどい凝りとは、何らかの理由で筋肉が持続的に収縮してしまっていて、弛緩することができない状態にあります。つまり、こっている部分は本来備わっている正しい機能が失われてしまっているのです。

収縮して硬くなった筋肉を伸ばしても効果は期待できません。

肩こり・首こりに良いとされるストレッチは僧帽筋や肩甲挙筋など硬くなっている筋肉を伸ばそうとします。読者のみなさんはもうおわかりだと思いますが、こってつらくなっている部分をいくらストレッチしようとしても伸びないですし楽にならないのです。

その理由は、肩こりで硬くなっている筋肉は、疲労の機序が一般的な筋疲労(階段を上って足が疲労するなど)と異なるからです。具体的には、肩こりでつらくなる筋肉は能動的に収縮を行い疲労したのではなく、不良姿勢などで持続的に引き伸ばされる(ストレッチされ続けて)事によって、負荷を与えられているからなのです。

肩こり・首こりに効果的なストレッチとは?

Ⅰb抑制は筋肉のスジが引き伸ばされた時に生じます。ストレッチはⅠb抑制という反射を意図的に生じさせ、筋肉が弛緩することを望みます。しかし、肩こりでつらくなる筋肉は、引き伸ばされ続けてしまっている事から疲労が生じているため、Ⅰb抑制が生じにくくなっています。「引きのばされる」という刺激に慣れてしまっているのです。だから、慢性的に患っていらっしゃる方は、つらい部分を伸ばす肩こりに良いとされるストレッチをいくら行ってもほぐれないし楽にならないのです。

そこで、肩こり・首こりに対しては単なるストレッチではなく、一工夫したストレッチを行う必要があります。

Ⅰb抑制は筋肉が強く収縮した時にも生じます。そのため、『筋肉は最大収縮後に最大弛緩する』と格言のように言われることもあります。つまり、つらくこってしまっている筋肉をあえて収縮を促します。そうすることによってⅠb抑制を効果的に喚起して筋肉を弛めるのです。これを専門用語ではPNFストレッチと言います。

一人でもできるPNFストレッチを応用したセルフストレッチ

PNFはProprioceptive Neuromuscular Facilitationの略で、日本語では固有受容性神経筋促通法となります。 ・・・難しいですね。簡単に言うと、全身各所にあるセンサーを刺激して体の機能を改善するリハビリの手段です。とても専門的で難しい技術・理論なのですが、PNFストレッチとはその理論をストレッチに適用したものです。PNFストレッチは関節の可動域を大幅に改善することができるため、プロアスリートなど結果を求める方に対してしばしば行われる技術です。基本的には専門家がマンツーマンにて行う技なのですが、一般の方でも要点をおさえて行えば、自分自身で行ったとしても今まで以上の効果が期待できます。つまり、ご紹介させていただいたストレッチ方法はPNFストレッチを応用したものなのです。だからこそ従来のストレッチと比較して効果が期待できるのです。

当院推奨の肩甲骨ストレッチが、他のストレッチと比べて効果がある理由をまとめますと・・・

違い①
首ではなく肩甲骨を動かす事→ 安全。何回行ってもOK!
違い②
動きを伴ったストレッチ→ ゆっくり伸ばすストレッチよりも血流改善効果有り=症状解消に効果的
違い③
PNF理論を導入→ 単なるストレッチでは効かない方へも効果的

という3点が巷に広まっている方法と大きく異なる点であり、当記事の肩甲骨ストレッチが効果的である理由です。

辛くなった時にだけ試すのではなく、気分転換に行うなどと習慣にしていただくと肩こり対策にもなります。日々、肩甲骨を動かす、という意識を持ってください。

肩甲骨剥がしをセルフで行うのはNG!!なんちゃって肩甲骨剥がしは逆効果の可能性も・・・

肩甲骨を動かしたいけど痛くて動かせない場合に有効なのが「肩甲骨剥がし」です。一時期話題にもなりましたし、名前のインパクトが大きいのでご存知の方も多いと思いますが、実際どういうものかとなると、間違った認識が蔓延しているようです。

もともとは、肩甲骨の下に手を入れて剥がすと気持ちいい、ということから流行りました。当然、人にやってもらう方法です。

肩甲骨はがしところが“肩甲骨剥がし=肩甲骨ストレッチ”のように紹介されているホームページが多々ございます。専門知識のない方が、いろいろな情報をまとめたもの、その中には自称・専門家による情報もあります。

肩甲骨剥がしはセルフでできることではございません!!

人間の体は、自分自身で動かせる動作と、動かせない動作がございます。動かせない動作を無理に行おうとすれば、筋肉や筋を痛める可能性が高いです。それでは逆効果ですので、肩甲骨はがしをやってみようとお思いの方は、治療院にご相談ください。

なお、なお、肩甲骨はがしだけで行っても根本的な解決にはなりません。繰り返しで恐縮ですが、とても大切なポイントですので、ご留意ください。

全体的につらくて重だるい・慢性的な痛みのある方 → 温めてください

体を温める方法は多々あります。今回ご紹介する方法は、自宅で簡単にでき、ホッカイロや電気機器よりも確実に効果が高い方法です。

  1. 自作の簡易ホットパックを作ります。

    タオルを濡らしてビニール袋にいれ、レンジでチンをすると簡易ホットパックができます。(触れる際には火傷にご注意ください)

  2. ホットパックをさらにもう一枚タオルでくるみ、患部を数分温めます。
  3. 患部の皮膚の温度が元に戻ったら再度行います。

    低温火傷の可能性があるため行う際は皮膚の状態を常に観察し、くれぐれも注意を払って行ってください。

患部だけではなく、手足の冷えに対してもオススメです★

ホッカイロなどの懐炉の常用は避けましょう。

冷えを気にされて、使い捨てカイロ等を常に貼り付けている方がいらっしゃいますが、これには注意が必要です。良くも悪くも人体の感覚には慣れが生じます。常時カイロで温めていると、温熱刺激に慣れてしまい、温まらなくなってしまうばかりか、温度に体が慣れてしまい体を温める機能が低下してしまいます。つまり、常に温めているとそれに慣れてしまうため、自ら温める機能が低下して冷えを助長させてしまう可能性があります。そのため常にカイロで温めていないといられないという状態となってしまいます。常に温めるのではなく、メリハリをつけて行うことが良いです。

腰痛改善本などの情報は鵜呑みにしないでください。

腰痛改善本で大抵紹介されている体操にマッケンジー体操があります。これは“うつ伏せに寝て過度に体を反らせる運動”なのですが、マッケンジー体操を自己判断で行いますと却って悪化する可能性があります。同様に、あおむけに寝て膝を曲げて状態を起こす“腹筋運動=ウィリアムズ体操”もケースバイケースです。割れる腹筋(腹直筋・腹斜筋)を鍛えても腰痛は改善しません!むしろ首へも負担がかかります。

お体の状況は千差万別であり、形だけをまねるエクササイズを行っても効果が出ないばかりか、却って逆効果ともなりかねません。体造りをして根本的な改善をお考えの場合は専門家へご相談ください。プロのスポーツ選手に専属のトレーナーがつくように、あなたの体を専門家がみることが改善への近道なのです。

サポーターやコルセットの常時着用は避けましょう。

サポーター等を常時着用するのは避けましょう。例えば、慢性腰痛の場合のコルセット。コルセットを四六時中毎日着用していますと筋力低下を招きます。そうなるとコルセットが手放せない体となってしまい、さらに難治性となり慢性化させてしまうのです。サポーターなどは、どうしても必要な時のみ、ご使用ください。

慢性的なコリや痛みの原因は1つではないということ←重要

慢性的なコリ・痛みの原因は“骨盤・骨格のゆがみ”、“数センチの足の長さの違い”、“リンパ・血液の滞り”が根本原因ではありません。ひとつの原因だということで納得してしまいたい気持ちはわかります。シンプルな方が気持ちが楽です。しかし、痛みやコリなど慢性的な症状の原因は非常に複雑です。それによる不合理な動きや姿勢の及ぼす悪い影響が集約された結果なのです。そのため根本的に改善するためには、まずはしっかりと複数ある原因を見極めた上でひとつひとつ解消していく「原因療法」が必要です。その部分だけではなく全身の筋力・動作などを改める「体造り」も行わなければなりません。根本改善のためには根気はいりますが、きちんとした専門家と共に行えば必ず体は良くなります。

どうしてもつらいポイントがあり、いてもたってもいられない、強い力でグリグリ押したい感覚のある方(温めを行っても改善しない方) → 冷やしてください

押してダメなら引いてみよ、と同じで温めてダメなら冷やしてみようということなのですが、これは実はとても大事なことなのです。一般的に「コリは温めるべき」という認識されています。とにかくコリは温める、そう信じて疑うことすらしない施術者が大半なのです。

  • 温めて改善しない場合には冷やすことで効果が出ることが多い。

これは私の実体験・臨床経験から強く主張したいことです。今まで温めて効果が出なかった方は、先入観を一度お忘れていただき、ぜひとも冷やしてみてください。

冷やし方の手順

氷のう(ビニール袋に氷と水を入れた簡易的なものでも良いです)にて患部へ、10分程度アイシングを行ってください。冷湿布ではなく、氷のうを用いるのがポイントです。冷湿布は冷たく感じますが実際の冷却効果はほとんどないのです。アイシングを行って症状が改善しない場合は、アイシング後にさらに上述しました②の温めを行ってください。これにより血流改善効果が補足され、より効果的となります。

  1. 氷嚢で約10分間、患部を冷やします。
  2. 氷嚢を外して、患部の肌温度が元に戻るまで待ちます。
  3. 再び、氷嚢で約10分間冷やします。
  4. この繰り返しで改善すればOKですが、改善しない場合は、ホットパックを使って温めてみてください。

 

保冷剤や氷を直接肌につけないでください。

アイシングといえど0℃以下で冷やしてはいけないのです。またアイシングのしすぎにも注意が必要です。常に冷やす事によって、却って血流が悪くなり痛みを引き起こしてしまう恐れがあるため、行う時間に注意をしてください。(凍傷の生じ方は個人差がありますので、当記事にてご推奨しております時間内だとしても皮膚の状態を確認しながらくれぐれもご注意のうえ行うようにしてください。下記の急性症状の際にもアイシングを行いますが、その時とは目的が異なるためアイシング施行時間が異なることをご留意ください。)

あなたに肩こり専門家としてお伝えしたいこと

ご自宅などで、簡単にできるセルフケア方法は、多くの方が興味をお持ちのことだと思います。コンビニや書店には、そのような類の書籍、雑誌がたくさん販売されています。テレビやインターネットでも、○○体操がすごい!!と取り上げられることもしばしばです。しかし、それで治った方は、どれだけいるでしょうか?

簡単で楽なものに人はどうしても頼りがちです。しかし、生活が便利になったことによる代償は、最終的には少なからずとも体、健康にくると思います。

身近にあることをいくつか具体例としてあげ、問題点をまとめておきます。

クイックマッサージ・整体・カイロプラクティックについて

肩こりとなると多くの方がまず足を運ぶのはクイックマッサージ・整体・カイロプラクティックなどです。

つらい部分をグイグイ押して揉みほぐすのは、その時は気持ちが良いのですが、それは一時しのぎです。一時しのぎはそれはそれで必要ですが、注意しなければならないのは、人間の体は刺激に慣れていってしまうように出来ているという点です。

強い刺激に慣れてしまいますと、一層ほぐれにくくなり、慢性化してしまいます。そしてさらに強い刺激をもとめ・・・と悪循環が生まれてきてしまいます。これは、受ける側の問題というよりは行う側に問題があります。

首の関節をむやみに鳴らさないでください。

また、首をボキっとならすのは一時的には爽快感があり楽になったように感じますが、外から力を加えても骨を矯正する事はできませんし、反対に背骨を傷めたり、却って周囲の筋肉の緊張を増すことにもつながりかねません。首ボキ施術を受けて頚椎を傷めてしてしまい、当院に駆け込んでいらっしゃる方が本当に後を絶たないのです。なので「首ボキ施術」を受けるのだけは絶対にやめていただきたいと、これだけは強く主張させていただきます。整体やカイロプラクティックではしばしば気軽に背骨をボキっと鳴らしますが、患者さんからもそれを避けてもらうようお願いしても良いと思います。それに対して意味の分からない説明をされたら、通うのは止めるのが賢明な判断です。施術をうける側が理解できないことを話す施術者を信用できますか?

セルフケアは日常生活を送る上でよいことですが、応急処置でもあります。

ご紹介させていただきましたセルフケアは日頃のケアとして行っていただくのはとても良いストレッチ方法です。肩こり解消に効果的ですが、あくまでも応急処置の範疇です。

注意していただきたいのは、セルフケアに限界があるという点です。

症状や体の状態は千差万別ですし、肩こりの原因はとても複雑です。そのため全員が肩こりを自分で治すことはできないという事はご理解いただきたいと思います。

このストレッチ方法で改善されない場合は、残念ながらセルフケアで状況を変えるのは難しい、つまり原因に対する自己解決が難しいので、理学療法が必要といえます。

肩こり・首こりは直近で生活が危機となるものではないため、どうしようもなくつらくなるまで後回しとされがちですが、「心底困っているわけではない」という軽症の方ほど簡単な処置やセルフケアで治すことが可能です。

たくさん通ってもらうための施設があふれていますが・・・

実際、対症療法を繰り返すというとにかく通ってもらうことを目的とした治療や、慢性化し難治性となってから回数多く治療を行ったほうが、ビジネス上に限れば良いです。

外食産業やリラクセーション・旅行といったビジネスでは、たくさん利用してもらうことは絶対に必要です。

医療はそうであってはいけないはずです。

重症化してしまうと完全に治す事自体が難しくなりますし、患者さんの費用面や治療に費やす時間面の負担も大きくなります。

重症化を防ぐ、そして軽症のうちに治してしまうという意味も含めて、さほど悩ましくない初期のうちに根本治療を始めていただくのがベストであり、私たちセラピストが望むべきことです。そうすれば、少ない回数の治療とセルフケアのみで改善可能です。

肩こり解消や体幹トレーニングの目的でヨガ教室に通われている方も多いと思いますが、まず肩こりを治してからヨガ教室に行ってください。

効果が感じられなかったり、逆に疲れて体調が悪い、そんな悩みを抱えていらっしゃいませんか?

はっきり申し上げますが、ヨガ教室で慢性的な肩こりはよくなりません。ヨガを本気でやっている人・理解している人はそもそも肩が凝らなくなるなんてことは決して言いません。

ヨガは、健康な人が、より健康的な生活を送る上では効果があるのです。

予防対策の方法は、できるだけ専門家に相談しましょう。耳障りのよい安易な情報は鵜呑みは禁物!!

いま現在、症状の自覚がなくても、猫背・姿勢の悪さ、体の硬さ、ポッコリお腹に心あたりが有る方は肩こり予備軍です。

肩こりを発症する筋肉・骨格の条件だけは整っていることになります。

肩こりというのは自覚症状ですから、症状が出る前に一度はお体のチェックをしていただくことが、発症を未然に防ぐ、肩こり予防という意味で大切です。

要点をきちんとおさえたセルフケアなら、軽症であれば十分改善します。

無理なくできる範囲で行ってください。

お体のチェックや細かい部分の修正、体造りのための個々の状態に適したセルフケア方法など一歩進んだことをお求めの場合は専門家に相談しましょう。

postures1

中~重症の方は、どうしてもご自身で治すということに限界があるのも現実問題あります。そのため、「つらくなっては一時しのぎのマッサージでその時をやり過ごす」というのを繰り返すのではなく、根本原因をつきとめて対処する『治療』を行うことをご検討いただけたら幸いです。

もちろん、できる限りご自身でケアを行っていただく事は大切です。

慢性的な症状の根本的解決にはどうしても時間がかかってしまいます。ただ、原因に対する処置を行い、体を変えれば、現在のつらい状態から解放できる!!ということは覚えておいてください。

通ってもらうための施設を選ばない!!

いくら時間と費用をかけてマッサージに通ってもすぐに元通り・・・次第に悪化・・・という負のスパイラルから脱却するためには根本原因の解明と適切な処置が必要です。

一度、いつまで通い続ければいいんだろう?と冷静になってみましょう。

もし、あなたが心底肩こりに悩まされているのでしたら、まずはこちらで紹介したセルフケアを行ってみてください。それで効果が感じられない場合、お電話やメールでお問い合わせください。わかる範囲内で、できる限りのご対応をさせていただきます。

肩こり ラボは、通ってもらうための施設ではなく「通う必要のないカラダになる」ことを目的とした代替医療機関です。

当記事がひとつのきっかけとなりましたら幸いです。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


歯ぎしりが肩こり原因?咬み合わせが悪いと肩や首が凝るって本当?

むし歯がないのに歯が痛い!!

肩こりからくる歯痛??

歯が痛いと肩が凝る・・・?

肩こり・首こりが歯痛の原因?

噛み合わせを治せば、肩こりが治る?

肩こりと歯痛、そして咬み合わせや歯ぎしりといった咬合異常と肩こり・首こりは関係があるということはきっと聞いたことがあるはずです。

なぜか、その根拠は明確にされていません。

つまり噛み合わせと首肩こりの関連性の根拠が示されていないのです。

鍼灸・マッサージの現場においても「なんとなくみんなが言っているからそうなんだろう」という考えで発言している施術者ばかりです。

今回は論文・文献を基に、その関連性を探っていきます。また、ガムの噛みすぎの問題点、首や肩への影響、正しいガムの噛み方についても触れていますので、是非お読みください。

正しいガムの噛み方
 

記事内容において一部専門用語が入っておりますのではじめに解説させていただきます。



しゃく
口で物を噛むことです。摂取した食物を歯で咬み粉砕することです。

咀嚼
そしゃく
噛むのに顎を動かすための筋肉です。咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つをいいます。機能上、舌骨上筋群を含める場合もあります。

咀嚼
そしゃく
運動
モノを噛む動きのこと。

こう
ごう
上の歯と下の歯とのかみ合わせのこと。

モノを噛む時には首に力学的負荷がかかります

頚椎は高機能

動物実験ではありますが、意識とは関係なく、噛み合わせ・咬合時には頚椎(けいつい)に負荷がかかることがわかっています。頚椎というのは首の骨です。人間の頚椎は7つの骨で構成されていますが、哺乳類の頚椎は大体みんな7つあります。首の長いキリンも頚椎は7つです。

キリンも人間も首の骨は七つ

噛む力はとても強いということ

噛む力というのはとても大きく、例えば肉を噛む時は、1平方センチ当たり約10~14キロもあります。ですから歯の表面が人体でもっとも固いエナメル質で覆われているんですね。モノを噛むと頚椎に負荷がかかると申し上げましたが、これも大きなカであることは何となくご理解いただけると思います。

頚椎人間の体は上手くできていまして、大きな力による負荷をうまく分散させる構造になっています。人間の頭の重さは大体5kg。頭を上手く支える為に頚椎はまっすぐではなく緩やかにカーブしていて、7つの骨がスプリングのような構造をとっています。

これは、脳がきちんと働くようにするためです。つまり、どんな体勢でも脳がきちんと機能するように、体は頭をなるべく平衡に保とうとするのです。そして、モノを噛む時にかかる負荷も分散・吸収するようになっています。

具体的にどのように頚椎に負荷がかかるのか?

  • 片側で噛んだ場合、噛んでいない側に負担がかかる。つまり、右側の歯で噛んだ時は頚椎の左側へ負担がかかり、反対も然りとなる。
  • 片側で噛んだ場合、噛んでいない側に頭部を傾ける力が作用する事となる。
  • 噛んでいない側では、第3および第7頚椎は頭部が片側に傾斜するのを防ぐ支点となる。
  • 噛んでいる側では、犬歯で木片を噛ませたときには第2頚椎が、第1大臼歯で噛ませたときは第4頚椎が、片側に傾斜するのを防ぐ支点として働く。
  • 咀嚼運動において、頚椎にかかる力学的負荷は第6頚椎に最も集中する。

ちょっと複雑ですね。

もっと簡単で、わかりやすく説明します。

食事の際、両側同時や同じ配分でモノを噛む方はとても少ないと思います。ほとんどの方が左右どちらかの歯で噛むと思います。左右どちらかで噛むと いうことは、首が傾くような力が無意識に加わっているということです。それにも関わらず首が動かず直立を保っていることができるのは、首周囲の筋肉が働き、その動きを制御しているという事なのです。

つまり、癖や口の中の痛みなどでどちらか一方のみでモノを噛み続けると、頚椎や頚部の筋肉の一定部位にも継続的に負担がかかることとなります。

[参考文献1] 咬合力に対するサル頚椎の力学的反応 http://ci.nii.ac.jp/naid/110001723670/

噛む時だけではなく、口を開ける時にも首に負担がかかります

モノを食べている時の骨と筋肉の動きに着目してみると、一見、顎の関節のみが動いているように感じます。しかし、詳細に分析をしてみますと、その力学的運動軸は顎関節ではなく、7つある頚椎の骨の上から2番目に位置する第二頚椎の歯突起部にある、ということがわかっています。1番目と2番目の頚椎は以下の頭のようになっています。

第一頚椎と第二頚椎

第二頚椎は、このように特徴ある形状で軸椎とも言います。この歯突起というのは 「のど仏」(火葬場で拾うお骨の方です。喉にある膨らみも喉仏といいますが、あれは軟骨です。)です。その部位は本来、矢状面(体を横から見た面)上を回転するための構造はしておらず、顎の動きと同様に動く関節としての機能はもちあわせていませんが、回転する力が作用します。

あくびをする時など自然と顔面は上を向きますし、むちうち症などで頚椎を損傷すると口の開け閉めだけで頚部に痛みを感じることから、開閉口運動に上部頚椎が関与していることは間違いありません。

噛み合わせは閉口動作ばかりが着目されがちですが、実は開口動作も重要です。だらんと力を抜けば重力に引っ張られて口があくため、口を開くのに負担はないように思えますが、開口動作にも筋肉がしっかりと働いています。首に対する力学的負荷は、口の開け閉めともに考えなければなりません。

開口閉口

開口時、外側翼突筋・舌骨上筋群が働きますが、それに伴い頭が前方へ引っ張られることとなります。しかし、モノをたべている時に頭が前後に動いている方はいませんよね。これは、物理の法則上、力が作用しているのに関わらず動きが出現しないということは、それと同じ強さの力が相反する方向に作用していることを意味します。つまり、口を開ける時、頭が前方にいくのを後方へ引っ張る力が見えない所で作用しているということです。これを担っているのが、首の深部に存在する後頭下筋群です。後頭下筋群は、しばしば頭痛をまねく頑固な首こりの原因となる筋肉です。

 

後頭下筋郡

首の筋肉は、意識のない所で姿勢を保つために作用しているため、異常な状態でなくとも負担のかかりやすい部分なのです。すごく大雑把な言い方ですが、肩こりの原因は、この首の筋肉の問題であることが多いのです。

[参考文献2] 顎関節症 –生理的咬合の判定基準– (歯科ブックレットシリーズ35) 著者:藤田和也 出版元:株式会社デンタルフォーラム社

顎関節症持ちは姿勢も悪い?

顎関節症と姿勢の関連性について調査した結果、顎関節症の方が健常者と比べて、前のめり(猫背)の姿勢になっている傾向があることがわかりました。

猫背になれば、当然頭部を支えるために首肩の筋肉は必要以上に疲労する事となります。つまり、肩こり・首こりとなりやすいといえます。

猫背となる原因が顎関節症とはいえませんが、顎関節症を患っていると同時に首こりを自覚する方が多いという事のひとつの理由になるのではないでしょうか。

[参考文献3] The relationship between forward head posture and temporomandibular disorders. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7488986

ものを咬む筋肉と首には深い関係があります

咀嚼筋が緊張すると首の筋肉も緊張する

顎関節症の患者さんは顎を動かす咀嚼筋の硬化や痛みと同時に首こりや痛みを自覚することが多いため、咀嚼筋と首の筋肉の関連性を調べた所、咀嚼筋が 硬い人は僧帽筋と胸鎖乳突筋も同時に硬くなっていることがわかりました。

また、咀嚼筋を動かすと、同時に胸鎖乳突筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群、頭半棘筋、頚半棘筋、多裂筋が共同的に収縮を起こすことがわかっています。

顎関節を動かす咀嚼筋と、肩こり・首こりにお悩みの方が硬くなっている頚部の筋肉は密接な関係にあるようです。

[参考文献4]Influence of masticatory muscle pain on electromyographic activities of cervical muscles in patients with myogenous temporomandibular disorders http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2842.2004.01266.x/abstract?deniedAccessCustomisedMessage=&userIsAuthenticated=false

[参考文献5]Anterior and posterior neck muscle activation during a variety of biting tasks http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1600-0722.2012.00969.x/abstract?deniedAccessCustomisedMessage=&userIsAuthenticated=false

咀嚼筋は一般的な筋肉の中でも特殊な存在だった!?

北海道大学 大学院歯学研究科 北川 善政教授の研究では、顎を動かす働きをする咀嚼筋の特殊な性質を示しています。

咀嚼筋は骨格筋に分類されますが、特にヒトの咬筋は、手足の筋肉ではみられない心筋(心臓の筋肉)と同じ細胞の特徴を持っており、さらに咀嚼筋の興奮性には交感神経系の調節が関与していることがわかっています。

咀嚼筋

発生学上、咀嚼筋は鰓弓(さいきゅう)から分化するため、鰓弓筋ともいわれます。鰓弓筋は、他に呼吸や嚥下(えんげ:食物を飲み込むこと)に関わる筋肉、つ まり生命を維持するために重要度が高い部分を構成する筋肉が該当します。例えば呼吸は意識的(随意運動)に行うこともできますが、通常は無意識的 (不随意運動)に行われています。

嚥下も喉元までは舌による随意運動ですが、その先は不随意運動となり胃まで食物を運びます。 考察となりますが、無意識的に歯を喰いしばったり、歯ぎしりをしてしまうのも咀嚼筋が鰓弓由来であり不随意運動を行う要素を持ち合わせているからかもしれません。

そして、肩こり・首こりでつらくなる僧帽筋や胸鎖乳突筋なども鰓弓筋であるため、上記であげさせていただいたように、咀嚼運動と首の筋肉が同時に 興奮するなど密接な関係にあるのではないかと考えられます。鰓弓由来の筋肉は、手足に存在する一般的な骨格筋と分子レベルで構造が異なっていることがわかっています。

咬合異常(噛み合わせ・ブラキシズムなど)と肩こり・首こりが関連づけられるは、単に経験則ではなく解剖学・生理学・運動学の観点から考察すると あながち間違いではなさそうです。

[参考文献6]顎変形症の成因に関する咀嚼筋の筋病理学的研究 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/17659621.ja.html

[参考文献7]除神経嚥下筋におけるエネルギー代謝と筋病理学的解析 http://kaken.nii.ac.jp/pdf/2011/seika/C-19/10101/22659361seika.pdf

[参考文献8]鰓弓筋の発育と筋蛋白質の分化 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/12771094.ja.html

咀嚼筋を支配している神経も特殊である!

通常、骨格筋(手足など自らの動かすことのできる筋肉)は交感神経の働きによって血流が増加します。

ところが咬む筋肉は副交感神経性血管拡張神経の働きによって血流が支配されているのです。

これはどういうことかといいますと、ストレスがかかっていたり、体が冷えている状況では、顎の筋肉の血流が悪くなります。それが、痛みなどの原因 となる可能性があるということです。

また、咀嚼筋は交感神経が活発に働くと緊張が増すという研究結果もあり、自律神経と密接な関係にあることが示されています。

原因不明の歯痛や難治性の三叉神経痛・顔面神経麻痺、肩こりなどの処置として首肩を温めることが推奨されますが、これは単に局所の血流を良くする ためだけではなく、交感神経の働きを抑え、副交感神経を優位にすることも大きな目的です。ペインクリニックでは、そのような症状に対して星状神経 節ブロック(交感神経の働きを抑える注射)が行われる事もあります。

このような事から、顔・顎・首周辺の痛みやコリに関しても自律神経が非常に密接に関わっていることが考えられます。

[参考文献9]Evidence for parasympathetic vasodilator fibres in the rat masseter muscle http://jp.physoc.org/content/569/2/617.full

[参考文献10]咀嚼筋の分化と痛みに対する交感神経活動の影響 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/22592203.ja.html

ただし、これらは医学的根拠であるとは、まだ完全には言い切れません。

これまでは噛み合わせ・咀嚼運動と頚椎・首周囲の筋肉との関連性を示してきましたが、否定的な文献もあります。

[参考文献11]The association between the cervical spine, the stomatognathic system, and craniofacial pain: a critical review.

この文献では、数々の文献をまとめて総合的に評価するメタ分析(メタアナリシス)を行っています。総評として、当領域の各文献のエビデンスレベル が低いことがあげられており、歯科領域と首から上部の痛み・不快感との関連性は現段階の研究では必ずしも確定的とはいえないという結論に至っています。

痛み、症状の感じ方というのは、あくまで自覚症状です。自覚症状は錯覚や思い込みの影響が少なくないために、判定には聴取を行うことがとても大切なのです。信頼性を高めるためにはできるだけ多くのサンプル数が必要になりますが、それには大変な労力がかかります。時間も必要です。だからこそ、患者さんとの向き合う時間は、本当に大切です。

ガムを噛む=健康に良い・・・って思っていませんか?

難しい話が続いてしまいましたので、噛むことと首や肩との関連する話で、身近な話をしたいと思います。

よく噛んで食べなさい!!誰もが子供の頃言われることですが、よく噛んで食ことをすることはとても大切なことです。

最近ではなんと視力にも関係していて、噛む筋力が弱まると眼球の筋肉も弱まり視力が低下するということもわかってきました。

健康のためにガムを噛むということ

仕事中にリラックスや集中など何かしらのメリットを期待して長時間にわたってガムを噛み続けている方は多いと思います。

ところが、体に良いことをしているつもりが知らず知らずのうちにかえって首に負担をかけてしまっている可能性があります。

ガム噛みすぎ

噛むことはとても大切!!健康維持には絶対に必要です。

ガムを噛むことで健康増進に効果があるように宣伝されています。特保マークのついた商品もよく目にします。

一般的に提唱されているガムを噛むメリット

  1. 唾液分泌が増加する

    口臭予防・虫歯予防・免疫力アップ・癌予防

  2. 顎を動かすことによって血流が増加する

    脳の活性化

  3. 嗜好品として楽しむ

    ストレス解消・リラックス

  4. 満腹中枢が刺激される

    ダイエット

などがあげられます。

調査をしてみると、確かに咀嚼運動によって脳内血流が増加することや、自律神経の乱れが整うという文献が存在します。そして、唾液には免疫グロブリンや、殺菌・消毒効果のある酵素が含まれることもわかっています。これを単純に免疫力アップ・癌予防と結びつけるのは一考が必要です。

免疫力アップと聞くと病気にかからなくなるようなイメージを持つかもしれませんが、唾液によるものはあくまで「食物からの感染を防止する」という ことが主な目的となります。血液中の白血球数や免疫グロブリンの量が増え、全身的な免疫力が向上して感染症への耐性が増すのではないのです。

癌予防効果については、唾液に含まれる一部の酵素が発ガン物質の作用を低下させるのではないかと言われていますが、この真相は定かではありません。唾液の作用としてはあくまでも消化の補助と口の中の殺菌・消毒です。また、ガンは非常に複雑なメカニズムによって形成され、発ガン物質があれば必ずしも発症するわけではなく、反対に発ガン物質が体内に入らなくても発症します。ガムを噛み、唾液が分泌され、ガンを予防する効果がどれほどあるのか・・・医学的にはかなりあやふや状態です。

ガムを噛む事によって血流改善や唾液分泌量が増えるのは良い事です。だからといって免疫やガンにまで話が及ぶのは・・・行き過ぎだと思います。

インターネットで調べてみますと、ガムを噛むと良いことしかないといった宣伝広告が目立つので、つい否定的な側面を記してしまいましたが・・・多くの方がガムを噛む目的は「口臭予防」「虫歯予防」「リラックス」と思います。こういった効果は『顎を適度に動かして、なるべく多く唾液を分泌させる』ことによるものです。

噛みすぎは禁物!!頭痛の原因にも・・・

ガムは歯のためだけでなく、口臭予防、禁煙のため、噛む筋肉を鍛えての小顔効果を期待、満腹中枢を刺激して食事量を減らすダイエット目的で噛む人も多いでしょう。目的があると、どうしても必要以上に長時間ガムをかみ続けてしまうと思います。しかし、これは咀嚼筋を疲労させますし、首にも負担をかけることになります。咬みすぎるということは、歯ぎしりや食いしばりにも同じことがいえます。わかりやすい体への弊害としてこめかみ部分の頭痛(いわゆる緊張性頭痛)があります。これは側頭筋が疲労・硬化することに起因することが多いです。

日々、肩こり、首こりでお悩みの患者さんの治療を行っている者としての経験的な考えではありますが、咀嚼筋をほぐすと首の筋肉も緩みます。ですので、首肩こり治療においては、当院では必ず手を加える部分であります。

正しいガムの噛み方

“正しい”は過剰な表現ではありますが、せっかく健康のためにガムを噛むわけですから、長時間噛みつづけて顎や首に負担をかけたくはないはずです。顎や首への負担を抑え効率よく唾液を分泌させるようなガムの噛み方について考えてみました。

ガムを噛み始めて最も唾液が分泌するのは30~60秒で、その後150~180秒ほどで一定となるデータが出ています。「顎を鍛えるために積極的に噛むトレーニングをする必要がある」というのは下顎が成長する可能性のある20代までで、それ以降は必要以上に負担をかけてしまう方が問題点とされることが多いそうです。そのため子供から20代までは顎を鍛えるために積極的に咀嚼運動を促す必要があり、30代以降は長時間ガムを噛み続けて しまうのも注意が必要です。持続的な咀嚼運動に伴い周囲の筋肉が疲労するという点も考慮して、推奨するガムを噛む時間は、一般的なガムの味が無くなる5分間程度が望ましいといえます。しかし、歯科医が薦めるガムの噛む時間は10-20分のようです。

そこで、ここからが重要なポイントです。

味が無くなったガムは噛まずにそのまま口の中に残しておき、奥歯と頬の間に留めておきます。そして、会話をしない時などは、舌の上をコロコロと転がします。唾液は必ずしも咀嚼運動を伴わなくとも分泌されます。噛まずとも口の中ガムを留めておく事で、体がガムを異物と認識し唾液腺を刺激する 事となります。このように体の機能である反射を利用して唾液分泌を促すのです。

これで、筋肉を無駄に疲れさせることなく、効果的に長時間噛むことができます。そして静かに噛めます!!くちゃくちゃと音を立てて噛むことに嫌悪感を覚える方は多いですよね。

ガムの味でも効果の差があるのです。

実は、唾液を分泌させる効果は、味によっても差があります。

弱 ミント系 < フルーツ系 < 柑橘系 強

唾液分泌を促う効果が高いのは柑橘系の味なのです。興味深いのは、口臭予防にはミント系ガムが多いのですが、唾液による殺菌・消毒・自浄作用に着目した場合、柑橘系のガムの方が、口臭予防効果が高い事となります。もちろん、砂糖を使っていないガムのがお口には良いでしょうね。

 

自律神経のバランスを整える効果

シトラスはいわゆる柑橘類です。シトラス系の香りには、交感神経を抑えて副交感神経を優位にする中枢神経調整作用や交感神経鎮静作用があることが知られています。

自律神経には、交感神経系と副交感神経系の2つの神経系があります。自律神経のバランスは一般的によくいわれますが、具体的には2つの神経系のバランスを意味します。

一般的に、ストレスが多いというのは、交感神経過多であるということです。つまり、自律神経が乱れていることになります。

リラックスというのは、高ぶっている交感神経を抑えて、副交感神経とちょうどよいバランスを保つということです。

唾液を多く分泌させるガムの味は、シトラス系であると説明しましたが、リラックス効果も期待できるということです。ガム選びの際の参考にしてみください!!

このようにして、「咬む時間」「噛み方」「味」を工夫することによって、負担を適度にとどめながらも最大限唾液を分泌させ、ガムのメリットを引き出 せるのではないでしょうか。最近は長時間にわたって味が持続するミント系のガムがしばしば見られますが・・・健康と結びつけて考えてみると良し悪しが分かれる所です。

オーラルケアや嗜好品としてガムを噛むメリットは十分にあります。では、長時間噛み続けたらそれだけ良い効果が期待できるのかというと必ずしもそうではありません。「過ぎたるはなお及ばざるが如し」という言葉があるように、首こり、肩こりをご自覚している方は、是非とも心に留めておいていただきたいと思います。

[参考文献12]ガムの味の違いが唾液分泌に与える影響 http://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/2272/1/60_22.pdf

[参考文献13]味や香りに対する情動が咀嚼時の循環応答に与える影響 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/21791887.en.html

[参考文献14]顎口腔機能の回復が脳血流に及ぼす影響についての研究 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/19791433.ja.html

体の不調には全て原因があります。原因はひとつではなく様々です。

「頭が重い」「イライラする」「疲労感が取れない」「よく眠れない」などの、何となく体調が悪いという自覚症状を訴えて検査をしても原因となる病気が見つからない状態(不定愁訴)でお悩みの方は多いです。ですから「〇〇を治せば全て解決」という宣伝文句が溢れています。原因と結果、因果律が混同されてしまっている場合が多い上に、宣伝として利用されてしまっていることが患者さんを混乱させる問題点ではないかと考えております。

鍼灸師やマッサージ師がよく言う「背中がハっているから胃が悪い・・・」「足裏が痛いから内臓が悪い・・・」もその例です。胃が悪いと確かに背中 に反応が出ることがある、というだけにすぎません。足裏はもっとあやふやです。

その他「ふくらはぎを揉めば・・・」「尻を叩けば・・・」などからはじまり、中でも特に多いのが「噛み合わせ」「頚椎」「骨盤」の矯正です。たしかに、この3つは人体を構成するとても重要な部分です。しかし、徒手的な方法で本当に矯正されるかどうかは定かではありません。歯科専門医による噛み合わせ矯正は別ですが、カイロプラクティック・整体でボキッと行ったとしても咬合異常は治りません。肩こりも同じです。治りません。

歯ぎしりをしてしまうのには理由がある。つまり体が歯ぎしりを必要としている。このように考えてみましょう。

寝ている間に歯ぎしりをするということは、体が唾液を必要としているケースは確実にあるはずです。もちろん、それが全てではないでしょう。歯ぎしりの原因には諸説あり断定はできませんが、歯ぎしりと唾液についての関係は逆流性食道炎でもしばしば話題になる話でもあります。

消化器系に問題があって、そのために唾液が必要だから、睡眠中に歯ぎしりをする、となると、いくら歯ぎしりをしないようにしても、意味がありません。根本の原因の解決になっていません。

肩こりも同じことで、凝った肩周辺の筋肉をいくらほぐしても、それは一時的なもの。また、肩はこります。肩こりの原因は、複数あり、人によって様々なのです。

噛みあわせを治した結果、肩こりが治ってしまう場合はあります。

噛み合わせを治せば、肩こり・首こりが治るというのは、ケースバイケースです。肩こりの原因は複数あると申し上げましたが、具体的には大きく三つ(解剖学的な問題・神経生理学的な問題・心理学的な問題)あります。噛み合わせはその中の解剖学的な問題の一つですが、それでしかないのです。

現状、咀嚼筋と首肩の筋肉は関連性があることがわかっておりますが、咬合異常(噛み合わせ・歯ぎしりなど)を治せば首肩こりが治るとは言えないのです。

実際問題、歯科医師曰く、噛み合わせを完璧にしたのにも関わらず肩こりが改善されない方は多数いらっしゃるそうです。そして、鍼灸・マッサージにおいても筋肉・姿勢・動きの問題を解決したのに、肩こりから解放されない方も、もちろんいらっしゃいます。

1対1の分かりやすい原因と結果だけを追い求めてしまいがちです。単純な答えの追求は迷宮。振り回されないようにしましょう。

同じことの繰り返しで恐縮でございますが、原因の特定できない不快な症状(不定愁訴)は数々の要素が複雑に絡み合って生じます。肩こり・首こりも然りです。不定愁訴の治療は原因をひとつに 決めつけるのではなく、体を総合的にとらえて個人個人の状態に適切な治療を行う必要があります。

かといって当院は何でもかんでも行う治療院ではありません。

当院では医学的根拠に基づいて、

  1. 解剖学的要因である筋肉を良好な状態とする事(ゆるめるだけではなく鍛えることも含めて)
  2. 神経生理学的要因である自律神経の乱れを調整する事(体性-自律神経反射を利用して調整)、および運動神経を適切に働かせるように促す事(単なる 筋トレではない特殊な運動療法にて)

また、原因と結果、因果律に反した広告宣伝が氾濫している中、それらをしっかりと整理し、何でもありではなく 「できる事とできない事」を明確化し、患者さんにわかりやすくお伝えすることを常に意識して治療を行わせていただいております。

体に良いとされていることは、たくさんありますが、人によって効果の有無は異なります。ご自身でできることは、日々の生活の中で、適度に試してみましょう。要点をおさえ、正しく行えばセルフケアでも十分に効果が期待できるものはあります。

その正しい方法がわからない!良かれと思って実践したらかえって悪化した!

患者さんからいただく質問で「巷で噂の肩こり解消法は本当に効果があるんですか?」の類が大変多いです。当院では、解剖学・生理学に則って適時ご説明させていただいております。

肩こりや首こりの原因は、本当に様々です。

根本治療には少しお手間と時間がかかるかもしれませんが、原因を一緒に探求し、最適な治療法を決めて実践するという、オーダメイドの治療をするのが、肩こりラボです。

テレビやインターネット上の情報、雑誌、書籍での言われていることを試すのはもちろん自由ですが、様々な方法をいくら実践しても一向に症状が改善されないようでしたら、一度お近くの治療院に相談することをおすすめします(リラクセーションやカイロプラクティックではなく治療院、医院へお願いします!!)。

肩こり・首こりの根本治療を行うにあたっては、噛み合わせや、顎関節に関連する咀嚼筋ついても考える必要があるため、当院では、歯科医を含む医師 等と共同で治療方法の研究に努めております。

痛みなく健康であること・・何よりも大事なことですから。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


鴻崎国臣について

私が、肩こりラボでセラピストを目指したいきさつ

私はスポーツが大好きです。

本気でスポーツに打ち込んでいましたが、スポーツには怪我はつきもの。怪我をする度に、整形外科、整骨院などへ頻繁に通っておりました。

なぜ、頻繁に通わないといけなかったのか?

それは、どこへ行っても湿布、痛み止め、電気治療などマニュアル化された処置と対症療法に過ぎず、その時痛みは和らいだとしても同じような痛みを何度も繰り返しだったためです。

怪我が根治しないため、怪我を繰り返し負のサイクルから抜け出すことはできず、引退することになりました。
この悔しさは一生忘れることはないでしょう。そして、この悔しい経験をしてほしくない、という思いを、私自身が味わった悔しさ以上に強く持っています。

私は「治るかわからない、とりあえず試そう。」という世間一般の施術、治療に異を唱えます。

とりあえずの治療・施術は、惰性でしかなく、そのような施術を続けることで「治りにくい体」を作り上げてしまいます。

これは患者さんにとって、たまたま上手くいくことはあるかもしれませんが、デメリットでしかない場合がほとんどです。

本当に患者さんにとってのメリットを追求した治療には、原因を見極める「眼」と患者さん個々に適した「施術プラン」が必須です。いくら技術力があっても原因が分からなければ活かすことはできません。

肩こりや首こりの根本的な原因は、必ずしも首や肩にあるわけではありません。そして、とても複雑です。つらい部分である局所には筋肉一つ一つ、筋線維一本一本に着目する細かい視点を、一方、体は全身で一つの単位であるということを念頭に置き、教科書的ではなく患者さんの生活背景も考える幅広い視野を持ってトータル的な治療を行っています。

私事となりますが、私自身も頭痛で寝込んでしまうほどの猛烈な首こりに長年悩んでいました。

頭痛薬が手放せなく、良くないとわかっていながらも毎日飲まなくてはいられない状態からずっと抜け出すことができませんでした。また姿勢が悪い事から腰痛にも悩まされていました。それこそマッサージを受けても楽なのはその時のみというのを経験してきており、私も治るということを諦めていた一人でした。

まだ若いのに・・・と驚かれるのですが、本当の話です。

しかし、国家資格を取得し、研鑽を積み、肩こりラボの「凝っても元に戻る体造り」プログラムを実践したところ、いつの間にか症状が出現することがなくなりました。

体造りを始めることで、怪我でリタイヤせざるを得なかったスポーツ活動も再開することができ、「自己実現」の選択肢も広がりました。症状をなくすことでもっと色々なことにチャレンジできるということを、身をもって体験しました。教科書に書いてあることをそのまま行うのではなく、自分自身で試して結果が出た治療、納得できた治療だからこそ患者さんにご提供できるものと考えております。

痛みやコリによる辛さは当事者にしかわかりません。肉体的な辛さだけでなく精神的な辛さは、なかなか理解されません。

一人でも多くの患者さんを救うということ。患者さんを治すということが使命であるということ。そして、患者さんは私共に希望を持っていらしてくださるという気持ちを常にもち、いかなる時も親身に考え、治療を行わせていただきます。

 

 

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執筆者:鴻崎 国臣
Kuniomi Kouzaki

早稲田速記医療福祉専門学校 鍼灸医療科卒業
東京女子医科大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
ハワイ大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師
ストレッチナビ公認ストレッチ専門家コラムニスト

私は小学生のころから肩こり、首こり、頭痛に悩まされてました。
患者さんの症状と似ているので、辛さがとてもよくわかります。
自分自身が辛かったからこそ、「早く治したい」と思いますし、治療で何が必要かも身をもって体感しております。
「予防のための運動、姿勢改善」をして、カラダを変えていきましょう。


首こりと自律神経失調症・精神的不調との関係性・・・「首こり」が「肩こり」よりもツラい理由

はじめに
当記事は「首こり」が、うつ病・パニック障害・不眠などの原因であると決めつける内容ではございません。

頚性神経筋症候群・首こり病、首のこりを治せば、うつ病やパニック障害などの精神疾患や自律神経失調症が治ってしまうと謳っている東洋医学系の治療院が多数ございますが、ありえません!!

現代医学的に対症療法とならざるを得なくなっている症状が本当に治るならば、治ったという方が増えるはずです。

社会問題にもなりません。

原因がよくわからない不定愁訴は様々な原因が複雑に絡みあって生じます。原因がひとつであればよいのですが、残念ながら、そうではないのです。

自律神経の乱れや体調不良で心底お悩みで藁をもつかむ思いで、いまこのページをご覧の方には大変申し訳ないのですが、原因のよくわからない症状は「〇〇を治したら治る」という単純な図式では解決できないのです。「原因は○○だった!!○○を治せば・・・」というのは、ただのキャッチコピーです。

とにかく何をしても上手く行かない、何とかしたい、と強く思われる方は「答え」が欲しいはずです。

現代医学(西洋医学)的検査には出ない数々の不定愁訴のうち、おそらくもっとも多いであろう症状は「首のこり」です。

肩こりラボは、あくまで首の「こり」のための鍼灸院です。具体的には、首のこりの症状の緩和(対症療法)と「こり」を引き起こしているフィジカルの問題の解決(原因療法)を組み合わせた根本的な改善を行っています。

「首こり」が治れば何もかもよくなるわけではありません。少なくともフィジカルの問題のひとつは解決するわけですから、それに付随する悩み自体はなくなるでしょう。

この点をご留意の上、お読みください。

首こりには単純な首こりと慢性化した酷い首こりがあります。

首こりと一言で片付けることはできません。首すじのこりを何とかしたく、何をしても上手くいかない場合、まず、あなたの首こりはどんな首こりなのかを把握しましょう。

首こりは2つ種類があります

首こりを自覚されている方は、まず、あなたが悩まされている首のこりは、ただの首周辺の筋肉の一時的なこりなのか、それとも、慢性化してしまっている状態にあるのか、を知る必要があります。

あなたの首こりの状態をチェック

  • 連休で体を休めても、いつもより多く睡眠をとっても一向に疲れが抜けないし首・肩の具合が回復しない・・・
  • 体を休めようとしても緊張が抜けずに休まらない・・・
  • 頭痛がする・・・
  • 胃腸の調子が悪い・・・
  • 良くないとわかっていてもイライラしてしまう・・・

もし、このような状況が全てあてはまるようであれば、単純な首こりではなく、慢性化し全身症状へと波及してしまっている可能性があります。

普通の首こりであれば、首の筋肉の疲労・筋肉痛なので時間がたてば元に戻ります。慢性化した首こりは、時間がたっても元に戻らない・もしくはすぐに凝ってしまいます。

慢性化というのは自力でどうしようもならなくなってしまっている状態です。

首こりと自律神経の不調の関係性 http://irorio.jp/asteroid-b-612/20120710/17707/から引用させていただきました

悩ましい首こり・・・なぜ首が凝るのでしょうか?

一般的に肩こり・首こりの原因は筋疲労や血流、姿勢、骨格のゆがみ等とされています。

実際は、そんな単純ではありません。

首こりを引き起こすメカニズムは非常に複雑です。

まず、肩こり・首こりの原因は大きく3つあります。

 

原因① 解剖学的な問題
筋肉バランス、骨格、姿勢、動きなど主に体の構造面
原因② 神経生理学的な問題
自律神経、運動神経(脳と筋肉の命令系統)など主に体の機能面
原因③ 心理学的な問題
ストレスやメンタルバランスなど主に精神面

どの要素からスタートとなるか、どの要素が主な原因となるかは個人によって違いがあるのですが、いずれにしてもこの三つが複雑に絡み合って慢性的な症状が出現します。

例1・解剖学的な問題からスタートする場合

長時間のデスクワーク・不良姿勢などで首肩の筋肉が疲労する → 凝りが神経を圧迫して頭痛を招く→つらさや痛み、凝りが自律神経を乱す(交感神経優位となる) → 全身の緊張が高まりリラックスできなくなる → 体を休めようとしても休まらなくなる → 体だけでなく精神も休まらなくなる → いくら施術をうけてもすぐに元通り・・・

例2・神経生理学的な問題からスタートする場合

天気や気圧など環境の変化で体調が悪くなりやすい → 自律神経が乱れやすい → 交感神経が優位になる → 心身共に緊張しやすい、イライラしてしまう、偏頭痛になりやすい、胃腸の調子が慢性的に良くない → 苦痛から体の硬直を招き、不良姿勢となる → 首こりとなる → 筋肉の緊張や痛み・こりがさらに自律神経のバランスを乱し状態を悪化させる・・・

例3・心理学的な問題からスタートする場合

仕事や日常生活など心理的にストレスがかかる状況 → 交感神経が活発に働き続ける → 自律神経が乱れる → 首から背中にかけて交感神経幹が存在するため、筋緊張が高まり血流も悪くなる →  凝り感や痛みの出現 → 痛み・凝り・不快感によって良い姿勢がとれない → 胃腸など内臓の調子も良くない → まとわりつく不快な症状がさらにストレスとなる、常につらい状態で対症療法をしてもすぐに元通りとなるためそれもストレスに・・・

体のハード面の問題が精神や自律神経というソフト面に悪影響を及ぼし、それが元でさらにハード面の不調を生んでしまうというサイクル

首のこり・首の痛みなど慢性的な不快感は、それを伝える神経回路の性質上、感情に影響を及ぼします。これは情緒不安定でいう情緒に悪影響といった方がわかりやすいかもしれません。精神状態を悪化させ、自律神経を乱すことにつながります。

情動と慢性疼痛 http://www.carenet.com/report/series/orthopae/pain_practice/14.htmlから引用させていただきました

「肩こり・首こり」という体のハード面の問題が慢性化することで、精神や自律神経というソフト面に影響を及ぼし、再び筋肉・血流・内臓というハード面の不調を生む事となります。

慢性的な痛み・苦痛は情動(感情・情緒)に影響します。あまりイメージがわかないかもしれませんが、慢性疼痛を心療内科で診ることは珍しくありません。肩こり・首こりが心療内科の範疇として扱われ、デパスなどの抗不安薬が心理的要素や自律神経の影響が深く絡んでいるためです。

このように、上記原因①~③の三つのどれからスタートするかは個人差がありますが、いずれもマイナスに作用しあって負のサイクルを形成してしまいます。

軽症の方は疲れたなと思った時に温めたり軽く揉んだりすればすぐ良くなりますが、重症の方・慢性化してしまっている方は一時しのぎにしかならないことでしょう。軽症の方は原因①の解剖学的な問題の場合であり、後者は三つの原因が強く絡みあってしまっています。つまり、負のサイクルが生じてしまっているか、否かの違いです。

この負のサイクルが形成されてしまっているからこそ、「いくら対処を行っても一向に前に進まないだけでなく、年々悪化していく」状態となってしまうのです。

当院では、原因の特定できない様々な不調(不定愁訴)を安易にストレスのせいにすることは禁じております。

現実問題、心身相関という言葉があるように人間である以上「精神」「自律神経」「解剖学的要素」は密接に関係しています。

単純に骨格のゆがみや姿勢・部分的な血流といった解剖学的要素だけでなく体を総合的にとらえて対処しなければなりません。

肩こり・首こりは直近で生命の危機が及ぶことがない故に軽視されがちです。世の中では軽視されてるとはいえ慢性化し負のサイクルが出来上がってしまっている方の生活はとてもつらく、そのつらさからの解放の一つの手段としてフィジカル面の改善を当院では行なっています。

ネット上の情報には「首こりを治せばうつ病やパニック障害が治る!!」とありますが、冒頭でも申し上げたようにありえません。

確かに精神疾患をお持ちの方は首こりを自覚されていらっしゃる場合が多いです。

一方、首こりがつらくて精神面に影響が出てしまうこともあります。

結果、治ってしまったという方はいらっしゃるかもしれませんが、それはあくまで患者さんの捉え方であり、患者さんご自身によって克服した結果です。

私たち施術者側が、首のこりを治せばうつ病・不眠症・パニック障害などが治るというのは医学的に間違っていますし、論理的におかしいのです。

ただ、患者さんに希望を持たせるために言っている可能性もあります。それによって勇気付けられた・元気になったというケースもあるので一概に否定はできないのも事実です。

ですが、それで結局治らなかった場合は残酷です。

精神疾患をお持ちの方にとって首こりはあくまで症状のひとつにすぎないので、首こりを治したら病が治るというのは根拠もありませんし、あまりにも軽率すぎます。

このような無責任で軽率な宣伝広告は、精神疾患に苦しみ、藁にもすがる思いの患者さんに対して失礼極まりない事です。

そのため、当記事ではあえて「精神的不調」という表現をさせていただいております。

原因と結果、病気の本質と症状などを混同せず、きちんと整理する必要があるはずです。

肩こりより首こりの方ががつらいのには理由があります。

肩こりの専門家とされる整形外科医は、肩こりは首こりである、としますが、その違いに言及することは稀でしょう。たしかに肩こりの原因の多くは首の筋肉です。ですので、肩こりと首こりは、よく混同されますが決定的な違いがございます。首こりと肩こりの違いは神経症状の程度の差にあります。

特に首こり・首周囲の痛みを自覚されていらっしゃる方は、自律神経失調症も併発しやすい傾向にあります。反対に、自律神経失調症の方は首こりも自覚している場合が多いです。

これは当院での理学療法の経験からくる理論だけではなく、100年以上の歴史があるイギリスのJRSM(Journal of the Royal Society of Medicine)という医学雑誌にも、首の痛みと自律神経失調症の関係性を示した文献[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9771493]が掲載されておりました。

論文引用 上記文献より引用させていただきました

(当文献はアンケート調査としては対照群数が少なく、被験者の主観をまとめたものであり、メタ分析されたエビデンスレベルの高いものではありませんがひとつの根拠として示させていただきます。)

首と自律神経の深い関係を示す3つの根拠

根拠その1

解剖学上、首と自律神経は密接な関係にあります。頚部には交感神経の重要な中継地点である上・中・星状神経節や、副交感神経である迷走神経が狭いエリアに存在しています。 首の筋肉が硬くなること(首こり)で二つの自律神経に物理的負荷や血流障害が起こり、正常な機能を全うできなくなり自律神経失調症の症状が出てしまうことが考えられます。

星状神経節・自律神経 http://www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatoka/anatomy/Rauber-Kopsch/2-57.htmlから引用させていただきました

根拠その2

頭部の感覚を担う大後頭神経・大耳介神経・小耳介神経は頚椎から出て、首の筋肉の間を貫き上部へ走行します。首の筋肉が硬くなり、これらの神経を圧迫することにより、後頭部や側頭部の頭痛を招くこととなります。

大後頭神経 http://shibukoz.exblog.jp/11287802/から引用させていただきました

根拠その3

上述しましたが、自律神経の乱れや頭痛など慢性的な苦痛によりイライラや不眠、うつ症状など精神的な症状にもつながってしまいます。

このように、自律神経失調症症状や頭痛が発生しやすいという点、そして精神症状の度合いからして肩こりと首こりを比較すると首こりの方がつらいと感じる場合が多いです。

読者様のうち、首こりだけではなく、イライラや過緊張といった症状・胃腸の不具合なども出ているようであれば、その原因はゆがみや血流だけでなく、他の要因も関与しており、少なくとも軽症ではない状態と推測できます。

自分でできる「首こり対処方法」はどれも一時しのぎ。割り切りが必要です。

今、この記事をご覧のあなたは肩こり・首こりがつらいということで市販薬や湿布、漢方をはじめ、マッサージやストレッチ、温熱療法などは既に様々行ってきたのではないでしょうか?

おそらく、楽になるのはその時のみ、または、変化が感じられない、のいずれかでしょう。

いま、このテキストをお読みのあなたは、きっと非常にお困りだからこそ、調べ、お読みでいただいていると思います。

そのため当記事では、よくある一時しのぎの首こり解消法を紹介しません。そのような方法を試されてダメだった方がお読みいただいているものと認識しております。

これらをふまえ、悩まれている方のことを真剣に考えますと、インターネット・テレビで紹介されているストレッチや体操、町の簡易的なもみほぐしや整体・カイロプラクティックなどでどうにかなるのは原因①の状態方で、つまりは軽症の方のみです。

原因①②③の要素が複雑に絡みあってしまっている重症の方は、残念ながら、セルフケアや簡易的な処置では一時しのぎであるだけではなく、いつまで経っても良くならない焦りやイライラが返って悪化を招き、先に進まず同じことを繰り返し行うことで慢性化させてしまいます。

軽症ではない方が根本的に改善したいようであれば、きちんと原因と状況を分析してもらう必要があります。

とはいえ、自ら行うことが全くないかというとそうではありません。

首こりでお悩みの方に是非試していただきたいセルフケア方法

よくあるツボ押し・ストレッチ・体操などの解消法は、こった部分に刺激を与えてほぐすことが目的です。

もうおわかりですね。

いくら続けても先に進むことはありません。

こっている部分はストレッチしても伸びませんし、無理をして伸ばすことによりかえって傷める可能性もあります。

首をいくらストレッチしても改善されることはありません。

慢性的にこっている部分は単なる筋疲労ではなく、神経系の不具合が生じています。

理想としては、第一に体の機能をつかさどる、自律神経のバランスを整える生活を意識していただき、それに加えて日頃に姿勢や筋肉バランスを整えていくことが良いのです。

セルフケアで大切なのは、こっている部分・つらい部分へのアプローチに執着しないことです。

自律神経が乱れやすいのは体質的な部分はもちろんありますが、特にマイナス要素は「不規則な生活」と「ストレス」です。

今すぐ実行できる対処としては、睡眠のリズム、食事のリズムはじめ、日常生活のリズムを規則正しくすることです。

自律神経は身体が不安定な状況となると、それを安定させるために活発に働き、それが慢性的になると負荷となります。

リラックス http://shibukoz.exblog.jp/11287802/から引用させていただきました

1)生活リズムに対する工夫

睡眠に関しては「長時間寝れば良い」「〇時間寝れば良い」というのではなく、できるだけ就寝時間と起床時間を一定にすることが自律神経にとって負担が少なくなります。極端なムラを無くすことが大切です。

例えば、日頃睡眠時間が少ないからといって休日は昼間まで寝るのではなく、あえてリズムを崩さずに起床し、昼寝や休日は早めに就寝し睡眠時間を確保する方が良いです。

食事においても、一日三食きっちり食べることが重要なのではなく、なるべく同時刻にムラなく食べることが自律神経には良い影響を与えます。嗜好品を無理に制限せず、栄養素や食材こだわったり、義務的に食べるのではなく、何よりも、食べることを楽しむということが重要です。

2)ストレスの対処について

生きている以上、ストレスを無くすことは不可能ですが、なるべくそれをため込まないようにすることは可能です。独自のストレス解消方法をお持ちの方はそれを意識的に実行していただくことが良いのですが、慢性的な不調を抱えていらっしゃる方は、その方法を持ち合わせていらっしゃらない場合が多いです。

レジャーにでかけると体は疲労しますが、メンタルの休息になるというのは良くあります。日頃の診療でも、体の休息とメンタルの休息を別個に考え、オフを管理する術を身に着けることを私はご推奨しております。

最適な方法は人によりけりですが、ひとつの手段として、適度な運動は効果的です。

ここでのポイントは少しでも良いので「汗」をかくことです。汗をかくことによりストレス解消や自律神経を安定させる効果が期待できます。

どんな運動・メニューを行えば良いか?というよりは、この場合は無理なく続けられる事なら何でも良いです。数回で終わるのではなく、あくまで習慣として細く長く続けられる、楽しく続けられることが一番肝心です。

例えば、好きな音楽を聴きながら20~30分早歩きするのも良いです。その準備運動の際に腕を頭上まで回すと肩甲骨のストレッチ効果となり、首こりに関連する筋肉に対して良い影響は期待できます。

また、入浴等で汗をかくよりも、運動によって体を能動的に動かすことによる発汗のほうが効果的です。筋肉の収縮と弛緩が交互に起こるため、筋ポンプ作用により全身の循環も促され、ムクミ対策にもなります。

適度な疲労を促すことにより、自律神経失調症の特徴である「寝つきが悪い」「眠りが浅い」などの睡眠に対する症状へも良い影響が期待できます。

ランニング

http://2ch-m.net/archives/545764.htmlから引用させていただきました

「ストレス解消=リラックス」という目的であればリラクセーションに行くことはよいことです。岩盤浴・温泉・スパ・アロマなどもリラックスを促し、ストレス解消の手段となります。

注意点しなければならないのは、リラクセーションはあくまでリラクセーション。クイックマッサージや整体は、肩こり・首こりが治るわけではない・心地よさ・気分のリフレッシュと割り切って利用しましょう。

また、たとえ気持ち良かったとしても、つらい部分をひたすらグイグイ押したり、関節をボキッとするような施術は返って状況を悪化させる可能性が高いので絶対におすすめできません

リラクセーションはあまり強くない力で全身をまんべんなく行うのがオススメです。とくに手や足への刺激は副交感神経を優位にします。リラックスは何事においてもとても大切な要素です。もし適度な強さで全身をまんべんなく施術受けても効果を実感できない場合、たとえ強く行ったり、その後その施術を続けても状況が変わることは考えられません。逆に悪化して慢性化してしまう可能性大です。

残念ながら、リラクセーションを肩こり・首こり解消だけでなく根本的な改善まであるかのように見せかけているケースが非常に多いです。ごく少数ではありますが、リラクセーションと医学的な効果・効能を明確に線引きしてお客様にきちんとお伝えしているお店は信頼度が高いといえます。

話が少しそれてしまいましたが、ツボ押しやストレッチなどセルフケアは数々の対処方法がありますが、それらのほとんどは不調となってしまった部分の対処法となります。

「不調になってしまってから対処する」のではなく、日頃から「自律神経に負担の少ない」「できるだけ乱れにくい」生活をし、全身へ目をむけることが肝心です。

(姿勢や筋肉バランスにおいてのセルフケア、筋力トレーニングはお体を拝見させていただかないと改善の見込みのある方法をご提案できませんので、ここでは割愛させていただきますことをご了承ください。)

 

まとめ

この長い文章を最後までお読みくださった読者様は、きっと今まで本当に様々な方法を試されてきたはずです。

そのため、セルフケアをお読みいただいて「規則正しい生活をしろって言われてもそれができないから困ってるのじゃないか。結局我慢するしかないんじゃないか。」と思われるかもしれません。

定期的に運動をしているし、ストレスもさほど自覚していない・・・  でもつらい。

そのような方もいらっしゃると思います。

「簡単肩こり解消マッサージ」「肩こり解消のツボ」「即効性のあるストレッチ」などインターネット上には様々な人が様々な「効果的な事」を提唱しています。それで本当に解消された方はどれくらいいるのでしょうか・・・?

正直に申し上げます。

現代社会において、セルフケアで全てを解決することは無理というのは言い過ぎではありません。

根本的な解決を目的とした場合、セルフケアには限界があります。

肩こり・首こりの仕組みは非常に複雑です。わたくしたち肩こりラボは、肩こり・首こり専門ですから、良くなります、と自信をお伝えしますが、施術自体は決して簡単ではありません。とても難しいことです。

とはいえ、根本を理解し、それに対する手立てを行うことは全く無意味ではありません。分かってはいるけど・・・という意識をするだけでも意味があります。

もし、「今のライフスタイル上、自分ではどうにもならない」「自分で頑張って色々やってみたけれど一向に改善されない」。しかし「なんとかしたい!!」という強い意志をお持ちでしたら、プロに相談してみることをご検討ください。

まずはセルフケアをためしてみる。もし、いろいろ試しても、効果がないならば専門家へ相談を。専門員とはそのような方のためにあるものと考えております。

肩こりラボによるセルフケア方法はこちらのYouTube動画でもご紹介していますので、ぜひお試しください。

 

肩こりの治療現場で行っているストレッチ

 

当記事が、迷走して困ってしまっている患者さんのヒントとなりましたら幸いです。

メンタルとフィジカルの問題は、どちらかを治せばよくなるわけではないということ。

ストレスや自律神経の乱れによる結果として、首や肩に負担がかかり頭痛などを引き起こすこともあれば、首や肩のこり・姿勢の悪さが自律神経に悪影響を与えることもあり、卵が先か鶏が先か問題のようなものともいえます。メンタルとフィジカルの問題は、どちらかを治せばよくなるわけではありません。肩こりラボでは、フィジカル面のサポートしかできません。フィジカル面の悩みが減ることでメンタル面に良い影響を与えるということは確実にあるはずです。

薬が手放せなくなってしまっている場合、現在の状態でよいとはおそらく誰も思っていないことでしょう。首や肩の治療だけで、あなたの悩みの全てを解決はできません。ですが、たくさんある悩みのひとつかふたつは解決できる可能性は間違いなくあると思います。

 

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首ポキは肩こり解消になるの?ネットやテレビで喧伝される説への疑問にお答えします。

 

当院にいらっしゃる患者さんから受ける質問で、もっとも多いのが首の関節をボキボキと鳴らす「首ポキ」についての質問です。テレビ、雑誌、インターネット上で「首ポキは危険」と話題になりました。首をよく鳴らす人は脳卒中になりやすい、脳梗塞の危険性がある、という話も耳にしたことがある方も少なくないと思います。

首ポキって危ないの?

そのウワサの真相を肩こり、首こり治療の専門家として責任をもって解説します。

 

首ポキに関する疑問・・・関節が鳴る仕組みについて

よく首をボキボキと鳴らすのですが、これは良くないことでしょうか?

首をポキポキ鳴らすことは、肩こり・首こりのセラピストとしては、良いことではない、とハッキリ申し上げます。

そもそも、関節が鳴るのは何故でしょうか? 関節の鳴る仕組みを教えてください。

関節が鳴る音の正体は気泡がはじける音です。わかりやすくいうと、関節の隙間に溜まった空気が弾ける音です。専門用語でキャビテーションといいます。実は、この関節の音の正体ですが、2015年になって初めて確認されました。関節の音が鳴る仕組みが映像として記録されたのです。

Pull my finger: Why joints crack

骨と骨が擦れたりして鳴っているわけではないということでしょうか?

関節がポキッと鳴るのは骨と骨の摩擦によって音が出るのではありません。骨と骨の間には隙間があります。その隙間は、滑液という液体で満たされているのです。ですので、関節は様々な動きが可能になります。潤滑油みたいなものですね。関節液とも言います。

液体が入っているとは驚きました。でも、ポキっていう音は空気が弾ける音なんですよね?

はい。液体なのですが、その中に溶けている空気があります。その空気が液体の中から気泡となって出てくるのです。

どうして、気泡が出てくるのでしょうか?すごく不思議です。

例えば、手の指の関節を鳴らす時、普段動かしている方向と逆に反るようにしていると思います。筋を伸ばすような感じです。そうすると、骨と骨の隙間が大きくなります。つまり関節内の容積が増えるのです。すると、液体の圧力、水でいうところの水圧、が低くなります。すると、液体の中に溶けていた空気が、溶けていられなくなります。気泡となって外に出ようとするのです。

ちょっと難しくて、よくわかりません。もう少し詳しく解説をお願いします。

身近な例をあげます。たとえばコーラなどの炭酸飲料。炭酸水でしたら、水に二酸化炭素を溶かしたものですが、むりやり溶かしています。この無理矢理というのは、圧力をかけるという意味です。その圧力を維持するために、密閉された状態で販売されています。

栓や蓋をあけると、どんどん炭酸が抜けていきます。コップに注ぐと泡がでていきます。

そうですね。それは、先ほどの関節内の液体の中の空気と同じことなのです。パッケージされた炭酸水の中の圧力は高いですが、開栓してしまうと、外の空気圧と同じになります。つまり圧力が下がってしまいます。高い圧力だから溶けていたものですから、溶けきれなくなり、外に出ていきます。それが気泡です。

関節の中の圧力が変わることで、溶けていた空気が出たり入ったりするということですか?

そのとおりです。ただ、一度出てしまったものが再び溶けるのには時間がかかります。ですので、一度鳴らした関節は、しばらくの間は音がなりません。

首ポキに関する間違った情報について

なんとか理解できました。ところで、首の関節を鳴らすと1トンの圧力がかかるのですか?

1トンというのは質量の単位です。圧力というのは、面を押す力です。面積あたりの大きさですので、1平方メートルあたりの大きさが通常用いられます。時速だったら、〇〇km/時と1時間あたりの速度で表現しますよね。トンという単位も用いないのですが、単純に速度でいうところの「/時」に当たる部分が抜け落ちていますし。つまり1トンの圧力という言葉そのものが間違いです。

1トンという数値は、何を表しているのでしょうか?あまりにも大きいと思います。

恐らく、不安を煽るために大きく見せた広告的な表現、もしくは、根本的に理解していないかのどちらかです。圧力というのは、たいていは1平方メートルあたりの数値です。1トンは1000kgです。1平方メートルというのは、100cm x 100cmですので、10,000平方センチメートルです。首の面積的には1平方センチメートルで考えると、0.1キログラム、つまり100グラムです。

たったの100gなんですか。別に大した大きさではないですよね・・・

それが、恐らく1トンの圧力という表現の正体です。この数字とセットで、半身不随になるとか、危険だという噂が広まったわけです。

首ポキの危険性を誇張してるわけですね。騙されたような気持ちで、腹立たしいです。デマということですよね。

この話は、テレビやネット上で広まったようですね。「関節をポキッと鳴らしているとき、骨には1トンもの圧力がかかっているんですよ」と整骨院の先生が話したことが原因です。この先生が本当にそう言われたのか、それを文字にしたマスコミの人が理解していなかったためなのかは定かではありません。私は、鍼灸師・あんま指圧マッサージ師ですが、一般的には、整体、整骨、マッサージは同じように捉えられています。この話を聞いた人の中には、「これだから、整骨やマッサージは信用できない」と思う人も少なくないと思います。残念なことです。

ただ、首をならす癖をやめさせたいという強い信念があって、敢えて誇張した表現を広めようとした可能性もあります・・・が、多分違うと思います。

首ポキは危険である、これは否定できません。

首の関節を鳴らすと脳卒中になったり、半身麻痺、最悪死んでしまうといった可能性は実際問題、あるのですか?

首は非常にデリケートな部分であるため、1回ポキっと鳴らしても大きなダメージとはならずとも、空気の破裂で少なからず刺激はされます。例えわずかな衝撃であったとしても、血管や神経などデリケートな組織に微細な損傷がおこることは十分に考えられます。

特に、頚椎の中を貫く椎骨動脈・椎骨静脈は関節の近くにあるので、衝撃を受けやすい部分です。その血管内部が傷つくとその場所が変性し動脈硬化や血栓などになりやすくなり、血栓が血流にのって流れていくと脳梗塞・肺梗塞・心筋梗塞などの重篤な疾患を招く可能性はないとは言えません。

整体やカイロが街中に氾濫しているが故に間違った認識が蔓延

整体やカイロプラクティックでよく骨をボキッとされますがあれはどうなのでしょうか?

整体やカイロプラクティックの先生にうかがうと、背骨のゆがみが様々な病の原因となり、特に頚椎は重要とのことです。そのゆがみをボキっとすることで元に戻すそうなのですが、これには多々疑問が残ります。

その疑問点について、詳しく教えてください。何回通っても結局治らなくて。

整体における頚椎の歪みを直すことについての疑問点は4つあります。

  1. レントゲンを使わない・使えない

    骨の問題を診るのにレントゲンを使わない点です。使うこと自体できません。レントゲンを使用して骨の問題を診断・処置できるのは整形外科医のみです。

  2. あらゆることを根拠なく歪みで説明する

    筋・骨格系の問題だけでなく様々な内臓病や癌までも背骨のゆがみが原因と理由づけしてしまう点は大問題です。医学的根拠があるならばよいのですがございません。

  3. 骨は動くもの。支えているのは筋肉・筋膜

    骨はあくまで筋肉の作用を受けて動く受動的なものなので、ボキっと外から力を加えて仮に正しい位置に戻ったとしても、筋肉の問題・または身体動作を改善しなければすぐに元通りとなってしまうということ。

  4. そもそも“歪み”は医学用語ではない

    “ゆがみ”とは医学用語ではありません。定義があやふやであるということ。

整体やカイロプラクティックの理論では“左右対称”“左右均等”が良いとされますが、人間は本来内臓の配置自体が左右非対称(右には肝臓、左には心臓や胃や膵臓など)ですし、利き手・利き足・効き目・効き顎もあるので対象となることは不可能です。それを目指すこと自体が終わりがなく机上の空論ではないでしょうか。

自分で鳴らすのはよくないけど、整体やカイロで鳴らすのはよいという主張もあります。

頚椎は7つあるのですが、整体やカイロでは、その7つのうちの〇番目だけを任意に鳴らすことができるそうです。しかし、誰もそれを確かめることができません。

肩こりラボで治療を受けている患者さんで、整体での骨格矯正を受けたものの、具体的な内容はわからない、症状がよくなるどころか逆につらくなった、という方が本当に多いのです。

歪みを直す=骨ボキ、というのは、施術する側が勝手に押し付けているだけだと常々感じています。

整体やカイロプラクティックで肩こりが治る可能性について

100%治らないと断言は出来ません。治る方もいらっしゃるとは思いますが、極めて稀だと思います。実際、当院に初めて来られる患者さんから、いつまでたっても治らない、整体などに通う頻度だけ増える、なんとかしてほしい、というご相談を非常に多く受けます。

カイロプラクティックや整体で行う首をゴキっとならす施術は、脱力した状態で頚椎を急激に伸ばしたり、曲げることは脊髄損傷など重篤な神経障害を引き起こす可能性がないとはいえませんし、何より椎骨動脈解離を起こす危険性があります。これは脳梗塞やくも膜下出血の原因となる可能性が極めて高いので、首を鳴らす施術は絶対に受けないでください。

事実、厚生労働省によって禁止するようにと20年以上前から通達されています。

これまでのお話から、首ポキはやらないほうがいいということですね?

現在ネットに書かれている内容は非科学的で信憑性がありません。実際のところ、自ら行う1回の骨ポキで生命につながる問題となる可能性は極めて低いです。しかし繰り返す事は確実に良いことではなく、塵も積もれば山となるで、小さな刺激が積み重なることによって後々重大は疾患につながってしまう可能性があります。

首ポキの危険性については、イギリスのブルネル大学(Brunel University)のリハビリテーション研究室の報告によっても椎骨動脈解離や脳血管障害をはじめ重篤な神経疾患への可能性が示唆されています。

また、首をボキっとする施術の危険性は、カイロプラクティックや整体などで首ボキ施術を受けても10万人に1人くらいしか起こらない、と言われています。しかし「45才未満で脳卒中を起こした人は一週間以内にカイロプラクティックで首ボキをやっていた人がやっていなかった人と比べて5倍多かった」というデータがアメリカ心臓病学会の2001年に出された報告にて示唆されています。実際はもっと多いと思います。

日本ではカイロプラクティックは無認可の民間療法です。それって違法では?と思われると思いますが、そもそも法律が存在しません。つまり誰でもカイロプラクターと自称できてしまいます。このようなグレーゾーンな状況である以上、首ポキの施術を受けるということは、素人が関節を鳴らしているだけ、という可能性もないとは言い切れません。

もちろん、ご自身で首の関節を鳴らすことも、極力避けていただきたいですね。

首ポキの癖を直すために必要なこと

首ポキやめたいです。でも、ついつい首を鳴らしてしまう癖は直りますか?

癖で行うのは、何かしらの症状があるためです。例えば「常に気になってムズムズしてしまう」「首を捻じったり 動かさないと いてもたってもいられない」「無意識のうちにいじっていたり 鳴らしてしまう」「発作的に急激につらくなる」「睡眠が充実していなく、朝一が一番つらい」といった事に心当たりはないでしょうか?もしこれらに該当するようでしたら、それは肩こり・首こりの負のスパイラルにはまってしまっているサインです。大げさに聞こえるかもしれませんが、首の関節を鳴らす癖があるということは、今後酷くなっていく前兆ともいえます。放置していては、絶対に治ることはありませんし、首ポキはもちろん、肩もみなどの簡単な施術による“ほぐし”程度ではすぐに元通りとなります。

つらくて我慢できない時に簡易的な施術を受ければ楽にはなるでしょう。それしか方法がない場合はもちろん仕方ありません。

しかし、楽になるのはその時のみの短期間であって、すぐに元に戻ってしまい、つらくなる度に施術を受けるという繰り返しになります。

しかも、施術の刺激に慣れていってしまうので、徐々に悪化していきます。施術を受ける間隔も短くなり、より強い施術を求めるようになります。完全に悪循環になります。得するのは簡易的な施術を提供する側ということです。

この状態を変えるには「治療」が必要なのです。

つまり、首ポキの癖を直すには、原因そのものを治す治療が必要ということですね。

そのとおりです。治療をすれば、癖は出なくなります。肩こり・首こりは直近で生活や生命に支障がでるわけではありません。しかし放置や適切な処置を行わないことに確実に進行・悪化していきます。首や肩のこりは、頭痛や目眩、倦怠感をはじめとする様々な体の不調の要因になりますし、最悪のケースとして、例えば脳梗塞といった重病の引き金になる可能性も否定はできません。

脳梗塞といえばアナウンサーの大橋未歩さんが若年性脳梗塞になったことは衝撃でした。

脳梗塞といえば高齢の方がかかるというイメージがどうしてもあります。しかし、若い方で脳梗塞にかかるケースは少ないとはいえ近年急増しています。特に脳動脈解離・椎骨動脈解離による脳梗塞です。大橋さんが患った若年性脳梗塞が首ポキが原因だったかどうかはわかりません。しかし、首こりや肩こりが脳梗塞に繋がる何かしらの原因であった可能性は高いと思います。

デスクワークでお忙しい方はもちろんのこと、スマートフォンの普及で「スマホ症候群」と呼ばれる首や肩への負荷による痛みや凝りも問題になっています。ストレートネックという言葉も普及していますね。若い方も首ポキをしてしまう人が多いようです。

現代の生活環境の利便性と体の健康はトレードオフ

スマホを長時間見ていると首が痛くなります。まさに「スマホ症候群」ですね。

スマートフォンやタブレット、ノートパソコンを使用する場合、うつむいて操作をしてしまう方が多いです。すると、首の骨が本来持っているゆるやかなカーブが、伸びて真っすぐになります。これが、ストレートネックです。首をまっすぐにした状態が長時間続くと凝ります。誰でも凝ります。特に女性は、男性に比べて首が細く筋肉が少ないので、負荷を受けやすいのです。

ですから、楽になろうと首を回したり、左右に振ってみたり、関節を鳴らしてみるわけですが・・・猫背って楽な姿勢だからついついとってしまう人は多いですよね。でも、猫背は良くない、姿勢が悪くなる、という認識は多分多くの方がお持ちだと思います。

他にも例えば、ふかふかのソファーに座ると楽で気持ちよくても、実際は腰に相当な負担をかけています。快適すぎて立ち上がる気をなくしてしまう「人をダメにするソファ」が人気ですが、腰への負担がとても心配です。

プラスなことがあればマイナスなことがあります。パソコンやスマートフォン、タブレットが普及し、生活になくてはならないものになっています。それによって首や肩の不調を訴える人は、激増しています。利便性故に本来やる必要のないことが増えてしまいストレスが増えた方も多いことでしょう。首ポキは、まさにその延長線上にあるといえます。

治療を真剣に考えたいと思います。最後に、他にアドバイスあればお聞かせください。

しつこいようで恐縮ですが、首ポキの癖は、首や肩の不調のサインです。そして、首ポキが重い疾患の引き金になる可能性は低いかもしれません。しかし、可能性は確実にある、ということだけはどうか覚えておいてください。

肩こりや首こりは、その場しのぎのほぐしでは治らないどころかむしろ徐々に悪化していきます。30秒で驚くほど効果がある体操やストレッチ方法などが定期的に話題にはなりますが、一時的には楽になっても治ることはありません。治る人がいないから、流行るのです。

まずは、首の関節を鳴らすのは、良くないことだと意識するようにしてください。ご家族やお友達で、首ポキをされている方がいたら、ぜひ注意してあげてください。

そして、できれば、早めに治療を受けてください。

これは、医療に携わる者としての切実な願いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。ご不明な点、ご質問等ありましたら、遠慮なくご連絡ください。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


ひどい肩こりを何とかしたい!病院いけば治る?そもそも病院で診てもらう必要は?

肩こりラボ

肩こりが治りません。なにをしてもダメです。どうすればよいですか?

 

何をしても効果が感じられないのは肩こりが慢性化しています。慢性化した肩こりは医師や専門家でなければ改善は困難です。

整体いったりマッサージうけたり骨盤矯正もしました

 

実は整体や骨盤矯正などは対症療法としては効果あるかもしれませんが慢性的な肩こりには効果はございません

えっ!?保険も使えましたよ?

 

肩こりに対して、いわゆる健康保険が適用できるのは、医師の同意が必要です。

医者にはかかっていませんし、医者はいませんでした。

 

医師の同意がなくても保険が適用となるのは、骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合に限られます。そして、これは柔道整復師に認められた権利です。保険が使えてしまっている場合のほとんどは、肩こりではなく捻挫といった急性の怪我ということにしているのです

たしかに捻挫ということにすれば、安くできると言われました

 

柔道整復師は鍼やマッサージはできません。ですが、柔道整復師のいる整骨院で、鍼灸師・マッサージ師が行う鍼・マッサージを捻挫への施術ということにして国を騙して保険適用させているのが現状です。度々摘発されている「医療費の不正請求」です。

不正な会計をしている会社の裏帳簿みたいなことですか?

 

はい。実際の問診票・カルテとは別に保険請求用のカルテを用意して、それを元に保険請求しているのです。

ただの金儲けということでしょうか?

 

お金儲けというより、そういうビジネスなのです。あなたのことを良くしたいのではなく、通ってもらいたいのです。今までお考えになられたことはないかもしれませんが、通う必要のない身体になりたいと思いませんか?

それができるなら、ぜひそうなりたいです。

慢性的な肩こりの根本的な問題を解決

まちなかに溢れかえっている肩こり腰痛の方向けのお店は、凝っている部分をほぐして楽になってもらうことを目的としています。

肩こりラボが開院した当初は、計画を立てる・原因へのアプローチといった方法を打ち出しているところはほとんどなかったのですが、現在では多くが当院と同じようなことを言っています。

残念なことに、当院で説明している内容を多くの整骨院・鍼灸院が無断でコピーして流用・転用しています。

情報はコピーできても、技術・ノウハウはコピーできませんので、放置していますが、結果として悩んでいる人を混乱させている・他所での低評価が当院にも当てはまるように捉えられてしまいます。

過去にこちらで公開した情報・記事は、常にアップデートしてまいります。

肩こりを根本的に改善するためには必要なのは対症療法+原因療法の2つです。

ここでいう「肩こり」とは、単に肩周辺の筋肉が凝ってツラいと感じる症状ではなく、以下のような慢性的な肩こり・ひどい肩こりを指します。

  • 特別なにかしたわけでもないのに、いつも首肩周辺が凝っている
  • 凝りをほぐしてもらっても、すぐ元に戻ってしまう
  • 体を休めても、症状がすぐに出る
  • 症状を感じない時間よりも感じる時間が長い・
  • 力を抜きたくても抜くことができない

このような「慢性的な肩こり」は、一時的な緩和すらできない状態にあり「お店」では手に負えません。

 

「肩こり」を治せる人が世の中に存在しなかった・・・

 

決して言い過ぎではございません。

仕事柄仕方ない、加齢による老化現象、肩もみや肩たたきが日本の家庭の一風景である、湿布やピップエレキバンが世の中に溢れている・・・肩こり=仕方ない、これは「常識」です。

肩こりを解消したい、肩こりを治したい、なんとかしたいと強く思う人はいても、本当の意味で治したいと思われる方は少ないのです。それも圧倒的に少ないのです。なぜ本当の意味でと申し上げたかといいますと「凝った部分をほぐす=治す」という勘違いしている施術者が大半なのに加えて、受ける側も「凝った部分をほぐれる=治った」という認識が一般的だからです。これらは大きな間違いです。

肩もみ・肩たたき、は子供が親に行う親孝行の定番です。日本の笑顔あふれる家庭・仲の良い家族を象徴する1シーンです。そして、湿布は家庭内の常備薬と同様なものとして扱われています。

もっともメジャーな湿布であるサロンパスを正露丸やバファリン・ロキソニン・オロナインと同じように常備していませんか?

日本人なら当たり前なことの延長線上に肩こりはあるが故の、誰もがなるもの、仕方のない症状という思い込み

医学的に「肩こり」という名称は、曖昧です。

日本人ならではの文化の影響もあり、肩こりという症状は古来より軽視されてきていると言えます。我慢・根性は現代の若者には疎まれるかもしれませんがやっぱり私たち日本人は大好きです。

肩が凝ったら生死に関わりますか?答えはNoです。

たかが肩こり、されど肩こり

世の中には、心底肩こりで悩まれて、人生の岐路に立たざるを得ない方もおられます。

腰痛は、歩けない、起き上がれない、ということで日常生活に大きな支障をきたすため心配される症状ですが、肩こりとなると話は別で、肩こりくらいで・・・という世の中の一般的な認識がありますから、精神的ストレスは相当なものでしょう。

肩こりって何?肩がこるってどういう症状なの?という恵まれた方も多くいらっしゃいます。軽度の肩こりの方でも、ひどい肩こりの辛さは、ひょっとしたら想像できないかもしれません。

ひどい肩こりは、ギックリ腰のように日常生活に支障をきたす場合もありますし、何よりも精神的に多大な悪影響がございます。慢性的な頭痛や耳鳴り・不眠と同じです。

肩こりの根本的な改善とは、肩こりで悩まないカラダづくり

 

「その場しのぎ」の一時的な肩こり解消でしたら、誰でもご自身で簡単にできる方法から一般的なリラクセーション店で可能です。

肩のコリをほぐす名人、ゴッドハンドと呼ばれている、もしくは自称されている方も数多くいらっしゃいます。

重症化していなければ一時的な緩和は難しいことではありません。

残念ながら肩こりで悩まなくなる魔法のようなお手軽な方法は存在しません。

病院では「その場しのぎ」さえもしてくれないことが多く、痛み止め・注射で様子を見るのが定番です。

筋膜リリースは画期的?

最近では、筋膜リリースを売りにしている病院もございますが、筋膜リリース自体は、鍼灸・マッサージ院ならどこでも行っている一般的な施術方法の一つです。

実際問題、鍼灸・マッサージの効果を認めない・認めたくない医師・理学療法士は多いのです。ちなみに鍼を打つことができるのは鍼師と医師のみです。

鍼灸・マッサージでは当たり前でも、医療の分野では注目されてこなかった・しようとしてこなかった中、注射という医療行為でできる新たな手法として売り出してきたのが筋膜リリース注射です。

筋膜リリース自体はいつかは廃れる流行りの方法ではなく昔から行われている方法であるということ。そしてあくまで対症療法でしかないということはとても大切なポイントです。

筋膜リリースとは?

繰り返しで恐縮ですが、肩のコリをほぐす方法・対症療法では、首肩を根本的な改善はできません。この勘違いが蔓延しているために、悩まれる方が増え続け、それをターゲットとしたビジネスがはびこっています。それこそがビジネス・お金儲けの真髄ともいえますが、その対象・手段として、人の身体・健康を使うべきではないと思います。

対症療法・一時的に症状を緩和することは勿論必要です。現在のつらい症状を緩和して、まずは楽になっていただくことは必須です。

根本的な改善のゴールとは、肩がたとえ凝っても少し休めば元通りになるという健全なカラダづくりです。

肩こりを放置すると内臓疾患だけでなく自律神経にも支障をきたす恐れ

肩が凝った・・・と感じる肩こりの初期症状は、肩の筋肉の問題です。肩の筋肉の問題ですが、肩のみならず、頭痛や頭が重いといった症状は身に覚えがある方も多いことでしょう。肩こりが慢性化していきますと、具体的には、神経や骨、内臓に影響が出るのです。さらに悪化すると・・・精神状態にも悪影響が出ることも多いのです。大切なことなので繰り返しますが、問題を起こしているのは筋肉です。骨ではないのです。

肩が凝ると、その痛みだけでなく、イライラしたり、眠れなくなったり、食欲が沸かなくなる、倦怠感で何もする気が起きなくなる方は少なくないと思います。これらは肩こりが原因で自律神経に悪影響がでているためです。

自律神経の問題となると、まず体を休ませようと思っても休まらない

リラックスしようとしても緊張が抜けなかったり、疲れているはずなのになかなか寝つけなかったり、寝ていても眠りが浅くすぐに起きてしまったり、長時間寝ているはずなのに全然つかれがぬけなかったり・・・。

加えて胃痛や胸やけ、便秘といった内臓の不調にも繋がり、内臓機能も含めた不調となり「つらい状態」の悪循環になります。また、血圧など循環器系へも影響を及ぼす可能性があります。

このように身体の様々なところに影響が出てしまうと、本当の原因がわからなくなる

病院で診てくれる医師には專門分野があります。専門外のところにも原因があるとしたら、どうでしょう?

つまり、部分的な症状で病院にいっても、根本の解決になる可能性は低いということ、肩こり解消は難しいということは、ご理解いただけると思います。

また、肩こり・首こりの方は常にその凝った部位の周囲が気になってしまい、ついついポキッと鳴らしてしまう方が多いと思います。関節の音を鳴らす感覚に近いかもしれません。

首ポキ

しかし首をポキッと鳴らすと寝違えやギックリ首になりやすくなるだけでなく、生命を脅かす脳血管障害(脳卒中など)となる可能性を高めることにもなります。

厚生労働省調べによると日本人の死因は、1位 ガン、2位 虚血性心疾患、3位が脳血管障害です。

首の関節を自ら鳴らす行為はもちろん、カイロプラクティックや整体などで鳴らされる場合が多いですが、本当に危険であるということを意識してください。

イギリスのブルネル大学(Brunel University)のリハビリテーション研究室の報告によっても「首ポキ」による脳血管障害や重篤な神経疾患へのリスクが示唆されているようです。

詳しくは、首ポキ解消法の真相(首をポキポキ鳴らすのは本当に危険なのか?脳血管障害・死亡リスクとの関連性)と題して別記事にまとめましたので是非ご覧ください。

首ポキ解消法の真相(首をポキポキ鳴らすのは本当に危険なのか?脳血管障害や死亡リスクとの関連性)

例えば腰痛になってしまった時、できるだけ痛くならないように普段はしないような体勢をとります。これは首や肩でも同じです。痛みを庇おうとして、無理な姿勢を長期間続けてしまいますと、一定の部位に負荷がかかり続けることになります。これは骨(主に頚椎・腰椎)を変形させ、神経を圧迫してしまうことがあり、痺れなどの症状を招く場合があります。

肩こり・首こりと聞くと、どうしても気軽に感じてしまいます。しかし、悪化すると日常生活を脅かす大変危険な症状の種でもあるということを、どうか覚えておいてください。そして、重症になればなるほど治りにくくなります。

「何回通ってもよくならない、むしろ通う頻度が増えた」・・・その理由を説明します。

肩こりの辛い痛みを何とかしようと、湿布や塗薬などを試される方は多いでしょう。それでも肩の痛みが解消されず、つらさがピークに達すると、たいていは近所のマッサージにいかれることでしょう。おそらく、つらい所を揉んでもらってその場をしのぐことはできますが、数日後には残念ながら元に戻ってしまうケースが多いはずです。

これは、その後も同じことの繰り返しになり、根本的な肩こりの解消にはなりません。

そればかりか回を重ねるごとに頑固になり、悪化していきます。最初は1~2週間効果があったのに最近は数時間~数日しか楽にならない・・・という話を度々耳にします。

辛い肩凝りを治したくてマッサージに通っているのに・・・原因はなんだと思いますか?

答えは「刺激に慣れてしまうため」です。

例えば、頭痛薬を頻繁に服用しているとだんだん効かなくなり次第に量や頻度が増えていってしまうのと同じことです。

鍼灸・マッサージは物理療法の一種です。生体へ刺激を与えて反射によって効果を得ます。その刺激への慣れが生じると、同じ強さの刺激では効かない(=満足できない)状況となります。

鍼の医学的根拠については別記事で解説しております。当院の鍼の使い方は、西洋医学(現代医学)的根拠に基づいております。ですので、一般的な鍼(東洋医学)との違いと合わせて解説しましたので、よろしければご覧ください。

ひどい肩こりや首こりが整骨院・整体に通い続けても一向に改善しない方は「東洋医学と西洋医学の違い」を知りましょう

刺激に対して体が慣れてしまう

「慣れって怖いよね」という言葉は、誰でも口にしたことがあるはずです。哺乳類は様々な環境に適応するため、外部からの刺激に順応する機能が備わっていますがこれがその「慣れ」を生じさせる原因となります。

刺激に慣れていってしまうと、通うごとに、施術者はどんどん刺激を強くしていきます。そうしないと、患者さんの満足感を得られないからです。そして、その刺激にも慣れてしまい・・・この繰り返しとなります。

この悪循環としかいえない施術の繰り返しは、頑固なコリへと進化(悪化)していくのです。終わりの無いサイクルができあがってしまいます。

何度も通ってもらえるから、マッサージをする側の人にとっては、よいサイクルでしょう。でも患者さんからすれば、たまったものではありません。肩や首の痛みは、腰痛と同じで、日常生活に支障をきたします。ちょっとした動きでも痛みがあるというのは本当につらいことです。精神的にも大きなストレスとなります。

このような酷い状況を招くのは100%施術者側の責任です。誠実な施術者であるならば、その場を楽にするだけではなく、リスクや副作用含め、刺激への感受性や慣れなど施術後のことまで考慮した上で計画を立て実行すべきです。

施術は相手の未来を想定して行うべきもの

「つらさから解放されるため」にいらしてくださっているわけですから、まず症状を落ち着かせること、これを常に念頭におきつつ、刺激に慣れさせないための管理も同時に行う必要があるのです。具体的には鍼の刺激の方法の選択・強弱のつけ方・鍼を打つ頻度の最適化を、未来を見据えて行わなければいけません。

施術を何回も受け続けても一向にお悩みの症状が解決しない!!そんな肩こり、首こりが治りにくい理由は3つ

一般的に肩こり・首こりの原因は、「姿勢」や「骨の歪み」である、とされています。

実際のところ、姿勢や骨の歪みを矯正するとされている施術を受け、肩こりが解消された方は極めて少ないはずです。そして肩がこらなくなった人は限りなくゼロに近いはずです。

良い姿勢を維持しようとすると返って疲れてしまい、それを持続することなどできない方も多いでしょう。肩が凝るのは姿勢が悪いから、ということはわかっていても、肝心な「良い姿勢が持続できない」「良い姿勢がわからない」という方が多数いらっしゃいます。

 

肩こりの原因はひとつではない

原因はひとつではなく、大きく分けて3つの要因があります。姿勢や筋肉の問題、いわゆる“ゆがみ”などはあくまでその一部分にすぎません。次項にて詳しく解説させていただきます。

 

本当に良い姿勢とはどのような姿勢か認識されていない

『良い姿勢=体への負荷が最小限となる姿勢=疲れない姿勢=首・肩に負担の少ない姿勢』です。大まかに 頚椎・肩甲骨・胸椎・腰椎・股関節・足首 の5つの要点があります。

 

骨盤・骨格の歪みは、そもそも徒手的に行う骨格矯正等では治らない

骨は受動的な構造物であり、単体のみでは動くことはできません。筋肉が作用して初めて動きが生じます。視覚的に見える骨のアンバランスは、不良姿勢・不合理な動作の結果であり、つまりは筋肉のアンバランスや脳から筋肉への命令系統の不備が原因となります。筋肉のバランスを整える事と命令系統である神経系を適切な状態とすることがいわゆる“骨のゆがみ”を解決する方法です。(変形など本当の意味での骨の問題を解決できるのは整形外科医による手術のみです)

以上が、なかなか治らない3つの理由です。

ただ、②、③で解説した形態的な部分を完璧にしたからといって必ずしも肩こり・首こりが解消するとは限りません。(ゆがみを治したら肩こりが治るという理論自体がそもそも根拠に乏しいです)

その理由は①の肩こりの原因は一つではない、にあります。詳しくは以下をご覧ください。

 

肩こりの原因は3つ

肩こりの原因はひとつではありません。大きくわけて3つあります。

  1. 解剖学的な問題

    筋肉バランス、骨格、姿勢、動きなど主に体の構造面

  2. 神経生理学的な問題

    自律神経、運動神経(脳と筋肉の命令系統)など主に体の機能面

  3. 心理学的な問題

    ストレスやメンタルバランスなど主に精神面

解剖学+神経学+心理学

この3つの要素が複雑に絡みあって首肩周囲の不快感が生じます。

解剖学的な問題点

ヒトは二足歩行により重い頭が最上部にありますが、反してそれを支える首や肩は構造上とても不安定であり、もともとの造り自体が、首肩へ過剰負荷とってしまうようにできています。

“動物”と書くようにヒトは動くのに適した構造をしています。 現代人は仕事や生活の中でも圧倒的に静止している時間が長いです。つまり構造的に不利な条件が合わさっているのです。

神経生理学的な問題点

ヒトは痛みや不快感、心身のストレスが持続すると、自律神経のうち交感神経が優位に働き、筋肉を固くします。さらに血液循環を滞らせ、感覚を過敏にしてしまうことから肩こりを増悪させます。

ツラいと感じていると無意識のうちに体はうつ向くため、知らず知らずのうちに姿勢が悪化します。そして、これも無意識で行ってしまうことなのですが、歯を噛みしめて食いしばってしまいます。さらに緊張が高まります。

このように不良姿勢が続くと、関節可動域も制限され本来の良い姿勢を取り戻せなくなります。

心理学的な問題点

加えて慢性的な肩こりは自律神経の乱れから内臓の不調につながることが多く、それがさらにストレスとなり悪化へとつながります。

施術を受けてもすぐに元通りになるので、いつまでたっても解消されないことに対する苛立ち・・・それもまた悪化要因です。

このように肩こりがどんどん悪化していってしまう負のスパイラルへ・・・抜け出すことができなくなってしまうのです。

 

肩こり・首こりへのアプローチ方法は、原因によって異なります。

 

肩こりの主な原因とそれぞれに対する方法の一覧です。

筋肉のトラブル ・・・
はり、マッサージ、ストレッチ
悪い姿勢・動作不良 ・・・
はり、マッサージ、ストレッチ、筋トレ、整体(?)、カイロプラクティック(?)
骨格・筋膜の歪み ・・・
マッサージ、ストレッチ、筋トレ、整体(?)、カイロプラクティック(?)
神経の不調 ・・・
投薬、はり、マッサージ
ストレス  ・・・
カウンセリング、リラックス

前述のとおり「肩こりの原因はコレ」といった分かりやすい説明はできません。そのような分かりやすい単純明快な「答え」を期待する方が多く、その需要に答えるべく「分かりやすいけど、実は意味のない回答」がインターネット上、メディア上に多くございます。

たまたま、その人にフィットした方法があったとしても、それは、他の人に当てはまるのかというと、大抵は当てはまりません。

ですから、様々な方法が、もてはやされては消え、のループになるのです。

効果のあるダイエット方法と同じですね。

肩こり解消方法も流行り・サイクルがあります。

整体や骨盤矯正で、なぜ肩こりが治らないのでしょうか?

整体で骨盤や肩甲骨のバランスを調整したとします。しかしそれだけで肩こりが生じているわけではないので、残りの原因を探り、対処しなければ全く先に進むことは出来ません。

整体で骨格を改善しても、マッサージや鍼で筋肉をゆるめても、運動で筋肉をつけても、薬を飲んでも、それだけでは原因の何割かしか改善されたことにはならないのです。

肩こりの原因が見えたら、あとはその一つ一つへ対処していき、負のサイクルを断ち切っていきます。

一つの方法には一長一短があり、各原因に対して最も効果的な手段を当てはめ、徹底的に行う必要があります。このようにして負のサイクルを断ち切り、正のサイクルを生み出すことで体は必然的に良い方向へ向かいます。

加えて常に同じ立ち位置ではなく、短期的・中期的・長期的な効果の予測をもって施術プランを考えなければならず、これが肝です。特定の施術方法に固執するのではなく、患者さんが抱える個々の問題に対して、それぞれ適切な処置を行わければなりません。

「マッサージ」や「鍼灸」を提供することが目的なのではなく「肩こりの苦しみから解放すること」が私どもへ与えられた使命と考えております。

どうも鍼灸・マッサージは“即効性”が強調され魔法のように考えられている場合が多いです。良くわからないけれども経験的に正しいとされていることを実践しているだけの鍼灸・マッサージもありますが、鍼灸・マッサージは決して魔法ではありません。長期的に蓄積された肩こりを一瞬できれいさっぱり無くすことは不可能です。

ゴッドハンドに代表されるようなあっという間に治るといったことはありえませんが、適切な見立てと計画の元、お体に最適な処置を行えば、さほど時間をかけず体が変わっていく兆候を実感して頂けます。

根本的に肩こりを改善するための肩こりラボ的考え方

例えば虫歯を想像してみてください。 これも直近で差し迫って命に関わる問題ではございません。

しかし放置し、症状が進行したら歯の根っこまで侵食し神経までおかされた場合は抜かなければなりません。

歯は抜くと二度と生えてきません。深く削れば二度と再生されません。

老後、自分の歯でしっかり噛んで食べるか否かで生活の充実度、さらには余命に多大な影響を及ぼします。それゆえに自分の歯を生涯にわたって守るために歯科検診や定期クリーニングといった予防歯科の大切さが叫ばれています。

では、次に身体について考えてみましょう。

内臓は定期的に健康診断を行いますが、その他は・・・おそらく痛くなければ気に止めることもないでしょう。

虫歯が進行して神経の問題となったらどうしようもないように、身体においても初期は筋肉の問題なのでどうにかなりますが進行し慢性化するにつれ、骨の問題に移行します。

骨の変形が生じるのです。

そうなってしまったら、残念ながら整形外科医による手術で骨を切ったり削ったり移植をしなければ治りません。背骨の手術となるとリスクが高い上につらいリハビリが待っています。無事手術は成功しても、今度は筋力低下などで二次的な痛みに悩まされる場合も多々あります。

ですから手術を断念し、その後一生つらい症状とともに生きていくという選択をせざるをえない方は多く、当院でも、このようにどうしようもない状況になってから来院される方は少なくありません。

鍼やマッサージは代替医療です。

代替といっても医療に取って代わるものではなく、一般的な医療でどうにもならない場合の別の手段としての代替であり、補完的な医療です。

ですから、どうしようもない状況になった方の救いになるような施術が求められるわけですが、どうしても限界があります。

理学療法の限界

正直なところ、骨の変形が問題となっているケースは、いくら治してほしいと言われても残念ながらそれは無理なのです。

抜いてしまった歯をまた生えさせて欲しいと言われても無理ですよね。

IPS細胞が整形外科領域で実用化されればこの限界を超えることが可能です。現実的にはまだ10年以上先になると思いますが未来は明るいといえます。

iPS細胞

骨の位置をきめているのは筋肉

骨の変形は無理でも、骨の位置・姿勢を正しくすることはできます。

よくある骨盤矯正・猫背矯正といった持続性のない一時的なものではございません。

骨を動かすのは筋肉であり、骨の位置を決めているのも筋肉です。内臓の位置もです。

痛みなどで筋肉が正常に動かせなくなると、骨の位置も変わってしまいます。筋肉は動かし方が重要で、しばらく使っていないと動かし方をカラダが忘れてしまいます。宇宙飛行士が地球にもどってきて歩けないのは、筋力の低下だけの問題ではありません。

つらい症状の緩和と筋力トレーニング・そして筋肉の使い方を覚える、これらを適切に行えば、首こり・肩こり・腰痛は理論的に治るということはご理解いただけると思います。

まだ治るうちに、手遅れとなる前のケアの重要性を訴え続けてまいります。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。