投稿者「肩こりラボ」のアーカイブ

ひどい肩こりや首こりが整骨院・整体に通い続けても一向に改善しない方は「東洋医学と西洋医学の違い」を知りましょう

「リンパが詰まっているのが原因です。」

「痛みの原因は、老廃物がたまっているからです。

「骨が歪んでいますね。これを直せば楽になります。」

「背骨が歪んでいますので直します。」

このように自信満々に言われ、言われるがまま施術を受けられる方が多いと思います。実際に良くなられている方はよいのですが、そうでない方、疑問をお持ちの方が今このページをご覧になられていると思います。

この記事が、悩みや今抱えていらっしゃる疑問を解決するヒントになれば幸いです。

当記事での東洋医学とは鍼・灸・マッサージを指すこととさせていただきます。漢方は含みません。

医学的根拠は皆無なのに東洋医学的には正しいという謎

 

冒頭に上げた例は、街中に溢れている整体、カイロ、足つぼマッサージなどのお店や整骨院等でよく使われる言葉です。本当によく使われています。

結論から申し上げますが、医学的根拠は皆無です。

東洋医学的に・・・という説明をするところもあることでしょう。(西洋)医学的に説明できないことだけど、東洋医学的には正しい、効果がある、こんな風に言われたら、よく分からないけど信じてみるのは無理もありません。

ひどい肩こりで痛くてつらいと、痛みをすぐにでもなんとかしてほしいわけですから、説明とかはいいから!!となってしまうのが普通です。

分からないから不安になる。その不安を「知識」で解消しましょう。

もし、ご自身またはご家族が大きな手術をする、となった時、それが緊急事態ならやむを得ませんが、時間に余裕がある場合「とりあえずお願いします」となりますか?

きっと説明をよく聞くと思います。それが大切な人の場合でしたら自分の場合よりも理解しようとするはずです。ひとりだと不安だから誰かを同伴してお話をきく場合もあるでしょう。

肩こり・首こり・腰痛の場合は、どうしても大きな怪我・大病と比べれば緊急性が低い上に我慢もできてしまいます。ですから、正しい情報を一生懸命求めるよりも、どうしても受け身になりがちです。テレビでみた、雑誌で目にした、友達がいってた、といった情報、その情報の中でも「楽そう」「簡単そう」な情報に流されてしまいます。

すごく効くよって聞いて東洋医学系の施術を受けてみたものの一向に良くならない、それどころか悪化した・・・何ヶ月も予約でいっぱい、全国から訪れる評判のところにいったけど全然よくならない・・・このような方はかなりいらっしゃるはずです。

「わからない」「先が見えない」これは不安です。とてつもないストレスです。

不安やストレスを少しでも減らためには、正しい知識を身につけることです。仕組みや意味がわかるだけでストレスや悩みはぐっと減るはずです。

今、あなたは、このページ自体信用できるの?と思われたかもしれません。

少しだけお時間ください。読んでご判断ください。

鍼(はり)・お灸(きゅう)・マッサージといった東洋医学として世間一般で認識されている方法が、どのような考えをもとに行われているのか?それが西洋医学的な根拠に基づいた方法とどう違うのか?という点にフォーカスしていきます。

西洋医学と東洋医学のちがい

東洋医学という言葉を耳にして連想されるのはどのようなイメージでしょうか?

 

東洋医学というと、まず連想されるのが、中国4000年(最近では5000年に延長されています)の歴史、ツボ、気(気功)、ハリ、漢方・・・だと思います。漢方はさておき、肩こりに代表される体の不調を治す東洋医学のイメージは鍼や灸でツボ(経穴)を刺激し、気や経絡を整え、血流を改善することで自然治癒力を高め、体質改善を行うといった内容を想像されるのではないでしょうか。

上記に挙げた東洋医学らしい文言の中で、医学的根拠(EBM)に基づいているのは「血流を改善する」という部分のみです。

● 西洋医学では不可能とされた病でも東洋医学なら可能。

● 不治の病、難病を治した。

などといった宣伝文句をしばしば目の当たりにします。世の中には科学的に説明できないこともまだまだ多いですし、不思議なことだらけですから、東洋医学に不思議な力があると信じてしまう人もいれば、胡散臭く思う人もいることでしょう。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

東洋医学の世界では

  • 症例数に関わらず、1人でも改善すれば効果有り
    • 有効率の検討がなされておらず施術者の主観をよりどころとされている
  • 良いことしかアピールされない
    • 施術者から発信される情報にバイアス(偏り)がかかっている、施術者自身が信者となっている
  • 効果の判定が定量化されていない
    • 客観化数値化されていない、する努力をしない、あえてしない
  • 東洋医学的療法(鍼・灸・マッサージ等)を行ったから効果があったのか、たまたまだったのかの比較検討がなされていない
    • 二重設盲検法(Double Blind Test)、ランダム化比較試験(RCT::Randomized Controlled Tria)、がなされていない
  • 東洋医学の文献の大部分が筆者に都合の良い結論付けとなっている場合が多い
    • プール解析メタ分析(メタアナリシス)がなされていない

二重盲検法

二重盲検法(にじゅうもうけんほう、英: Double blind test)とは、特に医学の試験・研究で、実施している薬や治療法などの性質を、医師(観察者)からも患者からも不明にして行う方法である。プラセボ効果や観察者バイアスの影響を防ぐ意味がある。この考え方は一般的な科学的方法としても重要であり、人間を対象とする心理学、社会科学や法医学などにも応用されている。

行為の性質を対象である人間(患者)から見て不明にして行う試験・研究の方法を、単盲検法という。これにより真の薬効をプラセボ効果(偽薬であってもそれを薬として期待することで効果が現れる)と区別することを期待する。しかしこの方法では観察者(医師)には区別がつくので、観察者が無意識であっても薬効を実際より高くまたは低く評価する可能性(観察者バイアス)や、患者に薬効があるかどうかのヒントを無意識的に与えてしまう可能性が排除できない。そこでこれをも防ぐために、観察者からもその性質を不明にする方法が二重盲検法である。

ランダム化比較試験

ランダム化比較試験(ランダムかひかくしけん、RCT:Randomized Controlled Trial)とは、評価のバイアス(偏り)を避け、客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法である。従って根拠に基づく医療において、このランダム化比較試験を複数集め解析したメタアナリシスに次ぐ、根拠の質の高い研究手法である。主に医療分野で用いられる。略称はRCTである。

メタアナリシス

メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。メタ分析、メタ解析とも言う。ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは、根拠に基づく医療において、最も質の高い根拠とされる。

出典:Wikipedia

このように非常に曖昧な要素が根幹を成してしまっています。

ここで、読者の方にご確認しておいてほしいことがございます。これを書いている著者自身ははり師・灸師・あんま指圧マッサージ師の資格をもっております。これら3つの資格は国家資格であり、資格取得のためには東洋医学を最低3年間勉強し国家試験を受けて合格しなければなりません。

私自身、鍼灸師として仕事をはじめた最初の数年間は、東洋医学的な考え・方法を実践しました。西洋医学的な解釈からすれば無茶苦茶な理論でも結果は出るのかもしれないという期待はありました。しかし結局、自信をもってプラセボ以上といえる効果はあげるには至りませんでした。これは私自身の経験不足・知識不足のせいかもしれません。

確かなことは、特別な感性・才能をもったセラピストでなければ、東洋医学で効果をあげることは困難=再現性が低いのは間違いないと思います。

そして、私は過敏性腸症候群を患っていたことから、ゴッドハンドと呼ばれる有名な東洋医学的施術者のところへ通いました。今このブログをご覧のあなたと同じく、治療方法が解明されていない・病院で治らないなら、可能性があるとされる方法を信じたい、すがりたい気持ちは・・・きっと同じだったと思います。ですが、私自身は残念ながら東洋医学の神秘にふれることはできませんでした。

東洋医学をモットーとする施術者に「何を根拠に行っているのか?」とお尋ねすると「自分の感覚では・・・」「私は〇〇と考える」「何千年も前から伝えられている経験医学だ」などと答えます。よりどころとするのは経験であり、何千年も前に書かれた書物とのことです。

東洋医学関連の文献は数多く出典されてはいますが、その試験方法、解析方法に穴があり、症例報告の域を出ることがなく、信頼度の高いものが少ないという状況なのです。

鍼灸マッサージの裏事情(2) 医業類似行為による事故をふまえて、まぎらわしい業界事情・用語・資格についての解説

この記事は鍼灸師・マッサージ師による記事ですが、鍼灸・マッサージを擁護・推奨することを目的としたものではございません。この点に関して公平な目線で詳しく説明している記事が執筆時点でみつからなかったため、当記事では細かい部分まで明記することを意識しました。

そのため少し長くなってしまいましたが、つらい症状にお困りで、様々な整骨院・鍼灸院・整体院を巡っていらっしゃる方は是非最後までお付き合いください。

今後の判断材料の一つとしていただければ幸いです。

肩こり・首こりを解消するために、あなたはどこに足を運んでいますか?

鍼灸(はりきゅう)

マッサージ

按摩

指圧

リフレ(リフレクソロジー)

足つぼ

アロマ(アロマテラピー)

整体

整骨院

接骨院

カイロ(カイロプラクティック)

骨格矯正

骨盤矯正

理学療法

リハビリテーション

機能訓練

トレーニングジム

パーソナルジム

ストレッチ店

ヨガ教室

このように街を見渡せば、いたるところで目にすることができます。コンビニよりもたくさんあります。これらはどれも、痛みや煩わしい症状を抱えていらっしゃる方がそれを解消しようとして足を運ぶ所です。

上記の項目中、法律により規定されているもの、つまり厚生労働が正式に認可しているものはどれ?とお尋ねして解答できる方は少ないのではないでしょうか。

このように、巷には一般の方からみてはその差がよくわからない用語が氾濫しております。今回はこれらをひいき目無しで解説、検討したいと思います。

 

医療行為と医療類似行為の二つに分けることができます。一番肝心な所です。

①医療行為(医業)

医療行為とは、人の傷病の治療・診断又は予防のために、医学に基づいて行われる行為のことをいいます。

日本では、医療行為について医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と規定されており、医師(医師免許を持つ者)以外が行うことを禁止しています。医療行為は医師の業務独占です(業務独占については下記をご覧ください。)

看護師・理学療法士・作業療法士・聴覚言語療法士・薬剤師・放射線技士などはそれぞれ法律により、医師の処方の元、医療行為の一部分を行うことができることを規定されています。

②医業類似行為(医療類似行為)

医師が行う医療行為以外は全て医業類似行為となります

冒頭の用語は全てこちらに該当します。しかし全てが同じではなく区別されます。

国家資格である鍼灸師、按摩マッサージ指圧師、柔道整復師は医療行為ではなくあくまで医業類似行為です。

鍼灸師、按摩マッサージ指圧師は“按摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律”第1条により、医師以外で他者に鍼・灸・マッサージ施術を行うことを許可されています。これは医師法の特例であり、医師の行う医療行為の内、鍼・灸・マッサージに限定して許可をされています。

しかし注意が必要なのは許可しているのはあくまで「鍼を刺す」「お灸を行う」「マッサージを行う」という施術行為のみ

なので、診断や投薬の指示を行うことはもちろん違法行為ですし、その他医療行為を行うことは医師法に違反することとなります。

経験を積んだ鍼灸師・あんま指圧マッサージ師は何を勘違いするのか、医師の真似ことをするようになる場合が非常に多いのでこれは大きな問題点だと思います。鍼灸師・あんま指圧マッサージ師は独立開業権があり、東洋医学という医師が立ち入ってこないグレーゾーンにいつでも逃げ込むことができるため、医学的におかしいことやつじつまが合わないことでも自らに都合の良い理論を唱えるようになります。

そして客観性や再現性といったが医療として肝心な部分が欠如しており、施術者当人の経験や勘に頼る施術がほとんどとなります。(99%と言っても過言ではありません。)

そのため「他者に鍼を刺す」という通常ありえない行為を法律上許可されているにもかかわらず、いつまでたっても医業類似行為の域を出ることができないのではないでしょうか。

毎年数千人もの新しい鍼灸師が生まれてきています。この問題を鍼灸師・あんま指圧マッサージ師それぞれが心真摯に受け止め考えなければ、我々に明るい未来は無いのではと私は考えております。

 

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(http://caresapo.com/acupuncture_column_2.htmlさんからお借りしました)

一方、柔道整復師は柔道整復師法第15条により医師以外で急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲および捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)に限り施術を行うことが許されています肩こり・首こり・腰痛など慢性の疼痛疾患はその対象になりません。このうち骨折および脱臼については、緊急の場合を除きあらかじめ医師の同意を得ることとなります。

柔道整復師は、その業務範囲内で自ら負傷の状態を把握し、自らが施術できる疾病又は負傷であるか否か等を判断して施術を行うことを許可されています。この点で看護師や理学療法士など、業務の開始に医師の指示が必要とされる職種と異なるといえます。

ですが、例え知識があってもレントゲンやMRIなどの画像を撮ることや、それを元に診断することはできません。エコーを用いることは違法ではありませんが、それで診断をしてはいけないのです。

柔道整復師は急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲および捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)に限り健康保険を用いて施術を行うことが許されています。

しかし実際には、本来業務範囲外である肩こり・首こり・腰痛など慢性疾患を骨折、脱臼、打撲として虚偽の申請にて健康保険適用としている場合が圧倒的多数です。(厳密には違法ではあるものの、数があまりにも多いため取り締まることができない現状というのが正しいです。)

しかしこの点に関して患者さんは一切知らされることはありません。施術者側はこれらを明瞭にする必要がありますし、肩こり・首こり・腰痛など慢性の疼痛疾患を抱える患者さんはこの事実を知った上で自ら判断し、整骨院・接骨院にて施術を受けたほうが良いのではないでしょうか。

ここまでをまとめると・・・

医療行為(医業)を行うことができるのは医師に限定されています。また、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第12条に「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。」とあり、法律上、鍼師・灸師・灸按摩マッサージ指圧師・柔道整復師のみが医業類似行為を行うことを許可されています。これは医師法の特例です。

ところで、鍼灸按摩マッサージ指圧師の行う施術を「治療」と呼べるか否かは考えが分かれる所です。法令として規定されてはおらず、この点に関して厚生労働省も明確に言及しておりません。

これはあくまでも私の考察ですが、鍼灸按摩マッサージ指圧師が施術所開設するにあたり名称を保健所に申請する際に「〇〇治療院」ということが認可されるため(実際には推奨される)、また、柔道整復師の場合は「治療院」ではない用語を用いるように推奨されるため、厚生労働省の判断として鍼灸按摩マッサージ指圧師の施術を「治療」と呼ぶと判断しているのではないでしょうか。

医療類似行為に関する資格についてご説明いたします。資格には2種類ございます。

これも大きく二つに分けることができます。簡単に言うと厚生労働省(国)によって認可されているか否かです。

①国家資格

厚生労働省によって認可された資格です。国家資格の場合は業務独占である場合が多いです。

業務独占とは「資格を取得していないとその行為をすることができない」ということです。例えば、他者に鍼を刺すことを法律上許可されているのは医師と鍼師のみということです。

業務独占の類義語で名称独占がありますが、これは「資格を取得していないとその資格名や行為名を名乗ってはいけない」ということです。

例えば病院でリハビリを行う理学療法士・作業療法士という国家資格があります。これらは名称独占です。ということは理学療法士・作業療法士の国家資格を保持していない方がリハビリの業務を行っても違法ではありません。しかし無資格者が「理学療法士」「作業療法士」と名乗るとそれは違法となります。

また「リハビリテーション」「機能訓練」などといった用語を用いるのも違法と判断されるようです。(前者は間違いなく違法ですが、後者はグレーな部分でもあり司法の判断によりけりとなります。)

あくまでも一例ですが、整形外科クリニックのリハビリテーション室には理学療法士が数名いてあとはトレーナーが大まかな業務を行う、という形態をとっています。(全ての整形外科クリニックのリハビリテーション室がそうではありません)

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(Wikipediaから引用させていただきました)

②民間資格

各民間団体や企業が独自に認定している資格です。法律で規定されている資格ではないため、医療という立場では効力を発揮しません

例えばリラクセーションの店舗を経営する企業が一定の講習を受講した人に認定する「整体師」「セラピスト」などといったものがあります。また、海外では国家資各や公的ライセンスであったとしても厚生労働省が認可していなければ、日本では無資格者と同じ扱いとなります。

例を挙げれば、アメリカの大学で一定のカリキュラムと試験にパスしなければ取得できないカイロプラクティック(D.C.=Doctor of Chiropractic)やトレーナー(ATC / NSCA-CSCS 等)の資格も日本では厚生労働省が認めていないため、どんなに優秀な施術者であったとしても日本では無資格者と同じ扱いとなってしまいます。

冒頭の項目で国家資格なのは・・・

柔整整骨接骨 → 柔道整復師による業務独占

鍼灸 → 鍼灸師による業務独占

按摩マッサージ指圧 → 按摩マッサージ指圧師による業務独占

[注]これらの施術は国家資格保持者でなければ行うことができません。無資格者が行うのは違法です。しかし、これらが看板に記載してあっても有資格者だとは言い切れません。なぜならば鍼灸師、按摩マッサージ指圧師・柔道整復師は名称独占ではないからです。

巷で良くあるパターン → 無資格者による施術所であっても上記の用語が看板に書いてあることがあります。ここまでは違法ではありません。もし役所などから指摘された場合は行っている施術は有資格者の行う「マッサージ」ではなくリラクセーションの手技であると回答するという逃げ道があります。つまり、一般人からはさも「治療」を行っているように見せているが、中身は非国家資格保持者による施術である場合があるのです。

理学療法リハビリ機能訓練 → 理学療法士による名称独占

[注]これらの施術は無資格者が行っても違法ではありませんが、無資格者が理学療法士と名乗るのは違法です。

医業類似行為に該当する各資格のまとめ

①国家資格のもの

柔整」「整骨」「接骨」 → 国家資格である柔道整復師によって行われます。”打撲””捻挫”など急性のケガをした時に行く所です。”骨折””脱臼”は応急処置でない限り、整形外科を受診することを厚生労働省は推奨しています。巷には整骨院や接骨院といった看板がありますが、中身は同じです。

鍼灸」 → 鍼師・灸師という別々の国家資格が存在し、それぞれ試験を受ける必要があります。鍼師は医師以外で唯一患者さんに鍼を刺すことを許可されています。

マッサージ」「按摩」「指圧」 → 正式には按摩マッサージ指圧師という国家資格に合格した者が行うことができます。マッサージ・按摩・指圧はそれぞれ別途に定義があり区別されます。

理学療法」「リハビリテーション」「機能訓練」 → 国家資格である理学療法士が得意とする分野です。とても専門的知識が必要な業務ですが法律的には名称独占のみなので、用語を使わなければ誰が行っても違法ではありません。 (効果があるかどうかは別問題です。)

②民間資格・無資格のもの

整体」「骨格(骨盤)矯正」「ボディケア」「リフレ(リフレクソロジー)」「足つぼ」「アロマ(アロマテラピー)

→ 按摩マッサージ指圧師の国家資格を持っていない方が施術を行う際に使う名称です。これらは医療行為ではなく、あくまでもリラクセーションの範疇です。 「〇〇療法」「〇〇矯正」「〇〇整体」はよく耳にすることができますが、これらはすべてリラクセーションです

柔道整復師や理学療法士、その他アメリカの公式ライセンスを保持していても日本でマッサージの施術を行うことを許されているのは按摩マッサージ指圧師の国家資格を取得した者のみです。

(厳密には、柔道整復師は骨折・脱臼・打撲の後療法として患部周囲に限りケガが治るまでの間マッサージの様な手技を行うことが可能です。理学療法士・看護師は医師の処方の下、マッサージを行うことが可能です。)

根拠となる厚生労働省のホームページです→ http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1.html

カイロ(カイロプラクティック)→ アメリカの4年生大学にて取得できる資格でD.C.=Doctor of Chiropracticと呼ばれます。(Doctorとつきますが医師ではありません) アメリカでは公式ライセンスですが日本では国家資格ではありません。 アメリカで正式な手順を踏んでおらず、簡単な研修を終えただけの自称カイロプラクターが激増し、施術による事故が多発している現状があります。そのようなことから、厚生労働省からはカイロプラクティックによる首の骨を鳴らす事の危険性、誇大広告の注意が示唆されており、(特に首の施術においては)国内では医業類似行為として推奨されているのもではない、という現状があります。 D.C.の先生方からは反論があがりそうですが、厚生労働省のホームページに明記されている通り、あくまで日本国内ではこのような解釈となっております。

根拠となる厚生労働省のホームページです→ http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1a.html

「トレーニング」→ 上記各項目とは別ジャンルですがトレーナーが整体やカイロを合わせて行っている場合があるので、記載させていただきます。トレーナーにおいて日本にて正式な資格や規定はありません。裏返せば誰でも自称トレーナーで成り立ってしまうとも言えます。そのため本当に優秀な方とそうでない方がとてもはっきりとしているので見極めが大切です。そういった意味で以下のトレーナーライセンスはとても有用な指標となります。

国内で最も有名なのは日本体育協会認定アスレチックトレーナー(AT)ですが、こちらもあくまで民間資格となります。指定の大学や専門学校を卒業することで受験資格が得られます。

アメリカの大学・大学院にてのみ取得可能な、全米アスレティックトレーナーズ協会(The National Athletic Trainers’ Association: NATA公認アスレティックトレーナー(Certified Athletic Trainer; ATC)は、1990年アメリカ医学会(American Medical Association; AMA)によって認定された、理学療法士や看護士などと同じ準医療従事者です。公認アスレティックトレーナー(ATC)は、スポーツ選手の急性および慢性の外傷・障害に対する処置やその他の健康管理分野において、高度な教育を受けており、かつ十分な経験を有しています。しかし、準医療従事者の扱いとなるのはあくまでもアメリカでの話です。あくまで国内では正式な資格免許ではなく、どんなに優秀で優れた技術をもってしてもこちらのカテゴリーとなってしまいます。

その他、National Strength and Conditioning Association (NSCA)認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(Certified Strength & Conditioning Specialist:CSCS)といった資格も学士を取得していないと受験できないということから知名度はありますが、あくまでも民間資格です。

混沌とするマッサージ業界・・・施設の乱立と意図的な誤情報蔓延によるトラブル、事故多発

なぜこのような文章を書いたかというと、業界の現状があまりにも混乱しているからです。決して鍼灸按摩マッサージ指圧師を擁護推奨するためではありません。

業界を見渡してみると無資格者(国家資格非取得者)はさも正式な治療のように見せかけようとする一方、有資格者(国家資格取得者)は国からライセンスを頂いているにも関わらず無資格者とたいして変わらない知識・技術しか持ち合わせていない、という現状があります。このような状態が「医療類似行為による事故」を招き、結果的に一番迷惑をこうむるのは本当につらくてお困りの患者さんです。

20130805-00000074-san-000-9-view

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130805-00000074-san-sociから引用させていただきました

誤解していただきたくないのですがリラクセーションは必要であるということです。処置方法のひとつとして自律神経やメンタルのケアとしてリラックスは非常に重要な要素ですし、リラクセーションというカテゴリー特化し、追及し、プロ意識を持ちユーザーのメリットをとことん追求している方々はたくさんいらっしゃいます。

また、国家資格を取得していなくとも有資格者よりも高い技術を持ち合わせている方々も大勢います。同時に、治療ができない、ということにジレンマを覚えている方々が多数います。独学で人体のメカニズムを学び、知識を活かしてリラクセーションを行っている方はとても多いです。

むしろ、国家資格を持っているというだけで技術・知識の向上させることをしない、つまり資格取得で終わってしまっている鍼灸師・柔整師が多く、無資格とはいえリラクセーションを真剣に行っている方で有資格者以上の技術・知識を有している方のほうがひょっとしたら多いかもしれません。

慢性疼痛疾患・不定愁訴の治療は、世間一般でいうリラクセーションとは違うかもしれませんが、リラクセーションなしでは本当の治療はできません。心身ともにリラックスすること、これは治療を行う上でとても重要です。

リラクセーションと治療を目的に応じて使い分けることが必要

反面、医業類似行為の国家資格取得者は、大部分が「資格を取れば食いっぱぐれがない」「職にはこまらない」「独立開業権がある」「国家試験の合格率が高い」という安易な動機から資格取得を志した者が多く、国からライセンスを頂いているという自覚が圧倒的に欠如してしまっています。そのため事実上、国家資格がただの紙切れ化してしまっています。

国家資格取得ということを主張され施術を受けたら、むしろリラクセーションでの施術の方が効いたなどという話はしばしば耳にします。有資格者としては悲しい話ですが、これが現実です。

無資格者と有資格者の差が極めてわかりづらく、この状況を招いてしまっている原因は無資格者が有資格者に見せかけようとする経営的な要素というのは実は些細なことでしかなく、有資格者の知識・技術のレベルの低さが最大の問題と考えています。国家資格取得者は改めて厳しい現状を自覚する必要があります。

患者さんは、業界の現状とそれぞれの業務内容を認識した上で、リラクセーションなのか、健康維持なのか、治療なのか、その目的に応じて使い分けをして頂ければ幸いです。

治療をご希望の場合にチェックすべき3つのポイント

「治療」をご希望の場合は、受ける施術者をご自身で見極める必要があります。治療・治療かのように称しているものを提供する側に問題がある以上、受ける側の自己判断が極めて大切なのです。

  1. 見立て

    現状とその後の予測説明がなされているか

  2. 言動

    施術のメリット・デメリットが明確にされ、患者さんがわかる用語で完璧に理解できる説明がなされているか

  3. 技術

    言わずともポイントをしっかりと触れることができるか

すくなくともこれら3点をチェックしていただきたいと思います。

[参考]

厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/

Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%AD%E5%8B%99%E7%8B%AC%E5%8D%A0%E8%B3%87%E6%A0%BC http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E6%A5%AD http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E6%A5%AD%E9%A1%9E%E4%BC%BC%E8%A1%8C%E7%82%BA

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


継続してもパフォーマンス(競技力)が向上しない/故障が減らない/腰痛が治らない・・・共通する理由を知っておきましょう

体幹という言葉は、誰しもが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 雑誌やインターネット上には、お決まりのエクササイズがいくらでも掲載されています。しかしそれを行っている方の中で、体幹とはいったい何なのか?体幹トレーニングとは何なのか?目的は何なのか?その効果は?といったことを正確に認識している方は極々少数だと思います。

体幹トレーニングの“体幹”の本当の意味

 

体幹という言葉は、誰しもが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 雑誌やインターネット上には、お決まりのエクササイズがいくらでも掲載されています。しかしそれを行っている方の中で、体幹とはいったい何なのか?体幹トレーニングとは何なのか?目的は何なのか?その効果は?といったことを正確に認識している方は極々少数だと思います。

なんとなく、体幹を鍛えると良いらしいから、みんなやっているから、雑誌に書いてあるから、決められたメニューだから・・・といった方が多いのではないでしょうか。では体幹トレーニングとはいったい何のために行うのでしょうか。

体幹トレーニングを日々行っている方は、少なくとも何かしらの目的意識をもっていると思います。しかしそれを行い十分な効果の実感と目的を達成した方はいないのではないでしょうか。

世には体幹トレーニングの方法論は溢れています。しかし、突き詰めた本質的部分は解説されてはいません。その本質的部分がしっかりと理解されていないからこそ、結果の出ないことを行い続けてしまっているのです。トレーニングは、正しく行えば必ず目的への距離は縮まります。その距離が変化しないということはどこかにエラーが生じている証拠です。

そこで今回は、多くの方々がなんとなく行っている体幹トレーニングの技術やメニューといった表面的な部分ではなく、不透明な本質的な部分を解説します。

行い続けても先に進まずお悩みの方へ、少しでも参考になれれば幸いです。

そもそも体幹とは何を意味するのかご説明いたします。

 

体幹という言葉は、実は部位を示す正確な解剖学用語ではありません。解剖学書を隅々までくまなく探しても詳細な記述はありませんでした。体幹とは人体の特定の部位をさす名称ではなく、あくまで「おおまかなエリア」を指す用語でしかありません。ですから、どの骨・どの筋肉と詳細に断定することができないのです。具体的にどこを示すかは諸説あり、定まっておりません。

また、以下で解説しておりますが、体幹トレーニングを考える上で骨や筋肉など個々の部分に着目するのは二の次です。そのため、解剖学的な解説はここでは割愛させていただきます。

当記事では、体幹=腕・大腿・頭以外の胴体部分とさせていただきます。

 

身体運動と体幹部分の関連性とは

 

故障せず高いパフォーマンスを発揮するためには単に筋力やパワー(この二つは違うもの)ではなく身体活動のベースとなる可動性(mobility)と安定性(stability)が必要です。

  • 身体活動のエネルギーは、胴体がしなることで生まれます。(誤解のないように補足します。体をしならせるためには筋力が必要です。しかし筋力だけでなく伸長反射などの反射機構も同時に行われる必要があります。)
  • 生まれたエネルギーは主要な関節を可動させ、末端方向へ伝わっていきます。
  • 最後に手や足を介して外部へ伝えられパフォーマンスとして発現します。
  • そして忘れてならないのは発生したエネルギーを制御する動きの制動能力です。
走り方の解説図

(https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/limedio/dlam/B23/B2366992/1.pdf内から引用させていただきました)

 

これらをふまえてアスリートが高いパフォーマンスを発揮するためには

  1. 上記一連の流れがスムーズであること
  2. 初動の大きなエネルギーを生むために背骨と大きな関節が十分にしなること(可動性=mobility)
  3. 末端に伝わったエネルギーが外部へ伝達される際に胴体や大きな関節がしっかりと固定されぶれないこと(安定性=stability)
  4. 末端に伝わったエネルギーは手や足を胴体から引き離そうとするためそれを制御し次の動きへ繋げるための制動能力(能力としたのは単純に筋力だけではないから。これが欠如すると故障へつながる。)

が求められます。つまり、体幹トレーニングの本来の目的とは「動くこと」と「静止すること」といった相反する作用を両立させることなのです。

 

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(http://www.re-studio.jpさんのHPからお借りしました)

体幹トレーニングの本質

 

多くの方が「体幹トレーニング」と認識しているフロントブリッヂやサイドブリッヂ、バランスボールを用いたメニューの目的は主に腹部の筋肉の強化です。腹部の筋肉強化は、体幹に求められる機能のほんの一部でしかありません。

そもそも、体幹の強化するために腹部の筋肉を強化すべきなのかどうか?人によって強化すべきポイントは様々です。たとえばフロントブリッヂなどのお決まりのポーズを30秒→1分→2分と長時間できるようになっても体幹が強化された・問題が解決した方はいないのではないでしょうか?そして、パフォーマンスが飛躍的に向上したということもないのではないでしょう。

自覚的に安定感が増したなどといった効果の実感はあったとしても、記録や結果として効果が反映されることは極めて少ないのです。

体幹トレーニングを行う本当の目的

技量不足のトレーナーが多く、そんなトレーナーがメディアに多く登場するによって、やたらに体幹という用語が使われるようになりました。体幹という言葉を耳にしたことがない方はいないでしょう。

体幹の本来の肝心な意味(本質)が置き去りにされてしまっているのが現状です。そればかりか、体幹=腹部、体幹トレーニング=腹部筋力強化、体幹トレーニング=一定のポーズを長時間維持すること、といった誤った認識をしている方が非常に多いです。

体幹トレーニングとは、上記①~④中の不具合を見つけ修正することです。 最も重要なので繰り返します。

トレーニングと聞くと筋力強化をイメージしがちですが、それはあくまでもほんの一部分です。肝心なのは体幹本来の機能のエラーを見つけ修正することです。

体幹トレーニングの間違った認識と内容の誤り、これがいくら行っても一向にパフォーマンスアップしない、腰痛が治らない、故障を繰り返す理由です。

事実、トレーニングを全てセルフで行うのは限界があります。ルーティンワークとしてお決まりのメニューを行い続けることによって返ってマイナスに作用する可能性があります。

トレーニングに何らかの効果を求めている方は、『体幹トレーニング』においては是非専門化に相談し、あなた様のエラーを見つけてもらうことを是非おすすめします。(もちろん私でなくてもかまいません。しっかりと本質を理解した専門家に診てもらうことが大切です。) 日々のトレーニングはご自身で行うにしても、定点ごとに現在の体の状態を把握し、それにあわせたトレーニング計画を修正していく必要性を強くお伝えしたいです。

[参考文献]

1、http://jn.physiology.org/content/95/6/3426.full

2、http://jap.physiology.org/content/97/6/2266.full

3、https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/limedio/dlam/B23/B2366992/1.pdf(デッドリンク)

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

首や肩がこる原因は血行が悪いから?

多くの方々が「血行が悪いから肩こり・首こりが起こる」という解釈をしておりますが、以前から私はそれに疑問を抱いていました。

確かに血行不良を起こしているとその部分は痛みや違和感を覚えます。慢性的な肩こり・首こりを自覚している方は、肩甲骨から上部の広範囲にわたって不快感や痛みを感じています。

その部分を温熱療法により血行を良くする処置を行うと、気持ち良く、一時的には症状が軽減されます。

大事なことですので、もう一度言います。あくまで“一時的”なのです。

なぜ、血行を良くしても効果ないのか?

温熱療法といっても、ずっと温め続けるわけにはいきません。皮膚温度が戻るやいなや、症状はすぐに元通りとなってしまいます。

慢性的な症状に対して温熱療法が一時的にしか効かない理由、それは、温熱刺激により痛みを感じる境界線(疼痛閾値:とうつういきち,Pain Thresholdを引き上げているにすぎないからです。

肩こり・首こりは筋肉の硬さと相関関係があるわけではない

以下に3つの根拠を挙げます。

筋肉がやわらかくても猛烈な症状を自覚している方がいる。反対にとても硬くなっていても、症状を全く自覚していらっしゃらない方もいる。

筋肉を徹底的に弛緩させる施術を行い、物理的な“硬さ”が減少している状態でも、発作的に症状が出現してしまう方がいる。

慢性的な症状を自覚している場合、その筋肉に対して様々な刺激を加えても、反応性が鈍く、緊張、弛緩共に変化が起こらない(起こりにくい)方が多いという事実。

身近で分かりやすい例でいいますと、猫背などで姿勢が見るからに悪い方でも、全く肩こり知らずの方はいます。逆に、とても姿勢がよく、体のバランスがよいのに、肩こりで悩まれているという方もいます。力学的に良好な姿勢を維持しても症状を自覚する場合もあれば、逆に力学的によろしくない姿勢でも症状が出ない場合もあるということは、ご理解いただけると思います。

私のたてた仮説

肩こり・首こりの“ジンジンするような痛み、不快感”という症状そのものは、血行不良により蓄積する疲労物が感覚神経を刺激して生じる。

しかし、その根本的な原因は『血行を調整する機能』『筋肉の動きを調整する機能』の異常にあるのではないか?

この仮説を、もう少し具体的に説明いたします。

『自律神経系の異常』と『運動神経系の異常』の2つが「肩こり」の原因である説を検証した結果

まず、血液の流れは、生命を維持する上での根幹のひとつです。血液の流れのことを血流または血行といいます。

そして、自律神経。自律神経という言葉は広く認知されています。自律神経は、常に働いている神経です。起きている時も寝ている時もです。自ら律する神経という名前の通り、人が意識しなくても自ら機能しています。

神経というとイメージは掴めるけど具体的にはよくわからないという方が多いと思います。ごくごく簡単に説明いたしますと、脳や脊髄にある神経(中枢神経)とそれ以外の体の各所にある神経(末梢神経)に便宜的に分けられています。抹消神経も、体性神経と自律神経の2つに分けられます。運動神経というのは体性神経のひとつです。ここで注意していただきたいのが、運動神経という言葉です。スポーツ万能の人を運動神経が良い、と表現しますが、それではありません。筋肉の動きを調整する神経のことを解剖・生理学的には運動神経と呼びます。

血行と自律神経は、密接な関係にあります。血行が悪くなれば、自律神経が乱れます。自律神経が乱れると血行が悪くなります。

ですので

『血行を調整する機能』の異常 ⇔ 自律神経系の異常

が自然な考えだと思います。

さらに、

『筋肉の緊張(硬さ)を調整する機能』の異常 ⇔ 運動神経系の異常

も存在するのではないか?と考えました。 こちらにつきましては当ブログの別記事「鍼灸・マッサージ裏事情(1) 硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説」をご覧ください。)

この2つを合わせてまとめますと、

慢性的で治らない肩こり・首こりの根本原因は「姿勢が悪い」「筋肉が硬い」「体のゆがみ」「血行が悪い」「冷えている」といった表面的な問題だけではなく、体を調整する“機能の異常”である。

という考え(仮説)に辿り着いたわけです。

この考えが確実かどうか検証するために様々な研究論文を読み漁りました。

そして、この仮設を裏付ける研究論文を発見しました。

首ポキ解消法の真相|首を鳴らす施術やポキポキ鳴らす行為の危険性。脳卒中や死亡リスクとの関連性。

このブログ記事は専門用語が多く、一般の方には読みにくいと思い、

Q&Aの会話形式で分かりやすく解説した記事「首ポキは肩こり解消になるの?ネットやテレビで喧伝される説への疑問にお答えします。」別途ご用意しました。

まず、最初にリンク先の記事をお読みいただければ、幸いです。

肩こり解消のために、ついつい首をポキポキ鳴らしていませんか?

 

デスクワークなどで、前傾姿勢を長時間続けますと、首や肩が疲れてしまいます。ですから首を回したり、伸びをしたりする人がほとんどではないでしょうか。その際に首の関節をボキボキ鳴らす人も少なくないでしょう。関節を鳴らすことが気持ちいいと感じる方もいらっしゃいます。

このような動作は、たしかに一瞬楽になったと感じるかもしれません。しかし、コリを解消する効果は残念ながらありません。凝った→ほぐす、の繰り返しでしかないのですが、これは実は悪循環です。

首をボキボキならすことを「首ポキ」と呼ばせていただきます。

 

2019年5月3日にCNNでこちらのニュース『「首ポキ」で脳卒中、左半身まひで入院 米男性』が報じられ、”首ポキが、実は危険な行為である”、ということがSNSを中心に話題になりましたが、情報が錯綜しています。

首をよく鳴らす人は脳卒中になりやすいという話を耳にした方も少なくないと思います。肩こり・首こりの専門院を開設している者として、詳しく解説したいと思います。

肩こりは、女性の体の悩み第1位、男性では第2位です。

 

厚生労働省発表の「平成22年 国民生活基礎調査の概況」によりますと、国民の13%、約1200万人の方が肩こり・首こりを訴えています。以下の表の有訴者というのは自覚症状をもっている人を意味します。

出典:厚生労働省国民生活基礎調査

肩こりは男性よりも女性に顕著で、肩こりで悩んでいる人は、なんと腰痛よりも多いのです。

「首ポキ」は患者さんから受ける質問、第1位です。

 

当院は肩こり・首こりを専門としておりますが、中でも患者さんから受ける質問で特に多いのが「首ポキ」です。

慢性的な肩こりや首こりにお悩みの方は少なくとも一回は首をポキっと鳴らしたことがあるのではないでしょうか?または、鳴らす目的はなくとも、首を曲げていたらポキっと鳴ってしまった経験がおありだと思います。

また、街中に溢れている整体やカイロプラクティックなどで施術を受けると、決まって「骨のゆがみ」を指摘され関節をポキポキと関節を鳴らされます。

 

首ポキ

出典:wikiHow

インターネット上で検索してみると、どれも大元の情報ソースが同じであろうと考えられる引用文章ばかりで「首を鳴らすと死ぬ」「1トンの圧力がかかる」などといった情報が流れており医学的な立場からの解説が乏しいです。

そこで今回は「首ポキ」について医学的な見解と解説をします。

首ポキに纏わるウワサを医学的に検証

① 関節ってなぜ鳴るのでしょうか?

関節の隙間内の空気が、風船が割れるような感じで鳴る、というイメージをお持ちの方が大半だと思います。

ポキポキという音の正体は、関節内に生じるキャビテーションです。キャビテーションとは耳慣れない言葉だと思いますので説明いたします。キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象です。余談ですがこの現象は19世紀末に、高速の舶用プロペラが、予想された性能を発揮しなかったことから発見されました。

関節が鳴る仕組みについては、昔から仮説・推測で説明されてきたのですが、2015年になって初めて実証されました。なんと、MRI撮影により、ポキッと鳴った瞬間の関節内部で起きていることが映像で記録できたのです!!Real-Time Visualization of Joint Cavitation PLOS ONE

人体の関節は骨と骨が関節包という袋のような物に覆われています。そして骨と骨の間には関節腔という僅かな隙間があるのですが、そこには滑液という一種の潤滑油で満たされています。大雑把にいいますと、関節は液体なのです。

普段動かさない範囲に関節を急に曲げたり伸ばしたりすると、関節腔の容積が一気に増すことになります。その時関節内で何が起きるかと言いますと空洞ができます。この空洞の正体は、滑液に溶けている窒素や二酸化炭素といった気体です。関節内の圧力が急に下がったために(陰圧)、滑液に溶けきれなくなった気体が気化するのです。といっても気化する量はごくわずかです。ですから、下がった圧力を戻す働きが作用し、反対側から滑液が一気に流入して空洞は消滅します。これらが消滅するときの衝撃により音が発生し、関節内で共鳴することであの「ポキッ」という音が鳴るのです。

 

関節 クラッキング
出典:http://www.wikihow.com/Crack-Your-Neck

つまり「ポキッ」と鳴る音は、骨や軟骨そのものが摩擦を起こすことで鳴っているのではないのです。なので「ポキッ」と鳴った後は通常数十分ほど時間が経たないと鳴りません。

肩や膝を動かすと常時パキパキ・ゴリゴリ・ジャリジャリと音がするのは関節の適合性や安定性が悪いがため発生する音なので別物です。 以下はキャビテーションにより発生する「ポキッ」を題材に話を進めます。

② 「1トンの衝撃」・・・鵜呑みは禁物です!!

様々な所で、首の骨を鳴らすと「1トンの衝撃」がかかると言われています。しかしこれには一考が必要です。

まず、「トン」は重量の単位であり衝撃力を表す単位ではありません。衝撃とは物理的には急激な速度変化の度合いのことをさします。

速度変化の大きさ(加速度)の単位は[m/s^2]が基本ですが、衝撃の場合は重力加速度との比をとって[G]が使われます。衝撃力はこの加速度に物体の質量を乗じたもので単位は[N]が基本ですが、重力加速度で割って[kgf]やこれを1000分の1にした[重量トン]が使われることが多いのです。

つまり、衝撃力を表す時に、直接その重量が負荷としてかかるわけではないのに慣用的に「〇〇キロの衝撃」や「〇〇トンの衝撃」と表現されることが多いのです。衝撃力には時間の概念が必須なため、力が作用する時間次第でがらりとイメージが変わってしまいます。

これらをふまえると、まず重量としての1トン(1000kg)が首にのしかかるというのは間違いです。仮に1トンという数値が本当だとして、衝撃力に換算にしても1000分の1秒で瞬間的に1kgがかかったら1トンの衝撃となるので、1トン(1000kg)の重さがのしかかるというイメージは間違っています。

そのため首ポキッにより1トンの衝撃がかかり即死亡したり、即重度の障害を生むことは考え辛いですが、上記の計算では少なくとも1キロの負荷はかかっていることになるので、例え1キロだとしても組織の微細な損傷は少なからず生じるものと考えられます。

そもそも、この「1トンの衝撃力」という根拠を調べてみても出所がわからず、クラッキング時の衝撃力を正確に計測したデータや実験についての文献が見つからないため、「歪みが原因の理論」と同様、マーケティングの一貫で患者さん方に恐怖を植え付けるためにどこかのセラピストが言い出したことなのかもしれません。

とはいえ、ものすごい破壊力のある衝撃が加わるわけではないものの、「ポキッ」は空気の破裂という現象により生じると考えられているため、その程度はわからずとも少なからずの衝撃があることには変わりはありません。関節内は非常にデリケートな部分であるが故に関節包という袋で守られていることもあり、小さな衝撃による組織損傷も十分に考えられるため軽視はできません。

③ 首ポキで死んでしまう可能性について

[1] インターネット上では「首をポキッと鳴らすと首に1トンもの衝撃が加わり、頚動脈破裂したり脊髄損傷が起こり死亡したり半身麻痺となる」などと書き込まれています。

果たしてその真相は・・・

まず、「1トンもの衝撃・・・」というのは≪2≫で解説しました。軽視はしてはいけませんが、みなさんがご想像する“1000kgの重量がのしかかる”という意味ではなく、即刻首の骨が折れるような負荷ではないことはお伝えさせていただきました。

[2] 続いて「頚動脈が破裂したり脊髄損傷が起こり・・・」という点です。

外から大きな力が加わり、首を傷めることによって生命に影響を及ぼすのは、

延髄(えんずい)損傷  …  脊髄と脳の移行部に存在し、呼吸や脈拍など生命維持に不可欠な機能を支配する中枢神経です。中枢神経と末梢神経を合わせて神経系といい体の機能や動きを調整します。中枢神経とは神経系の親玉のことです。例えば絞首刑では首を縄で絞めて呼吸できないようにするのではなく、落下時の衝撃で上部の頚椎を脱臼骨折させ延髄を破壊することを行います。延髄が破壊されたら人間は生きることはできません。

 

延髄
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz2/a-cg/a-800/a-830/IPA-acg430.htmから引用させていただきました。
 

頚髄(けいずい)損傷  …  頚椎、つまり首の骨の中に納まる中枢神経のことをいいます。より頭に近い上部の頚髄(第1~4頚髄)と、下部(第5~7頚髄)を損傷するのでは生命維持という点で大きな差があります。上部の頚髄は横隔膜を支配するため、損傷すると自分で呼吸ができなくなり人口呼吸器無しでは生きることはできません。下部の頚髄ではその程度により、動きだけでなく様々な内臓諸器官の機能不全がおこりますが、基本的には首から下が麻痺します(損傷頚髄以下の神経伝達が途絶えて運動が不可となります)。

 

頚髄

http://infoseek_rip.g.ribbon.to/bunseiri.hp.infoseek.co.jp/sekizui.htmから引用させていただきました

 

この二点が考えられます。

しかしこれらは交通事故や極限状態のスポーツによる日常生活では計りしれない衝撃が加わった際に、頚椎(首の骨)の脱臼骨折が起こり、その中に納まる延髄や頚髄が損傷します。「首ポキ」と交通事故などの衝撃をくらべると・・・答えは明らかです。お年寄りや、重症の骨粗鬆症を患っていない限り、自らの力でそこまで首の骨に負荷を与え、内部の中枢神経に負荷を与えることは不可能です。

ただし、カイロプラクティックや整体などでしばしば行われる首をお急激に動かす手技には危険が潜みます。

そのような手技を受ける際に患者は仰向けで脱力し筋肉や靭帯が緩む肢位、つまりとても無防備な状態で動かされることとなります。この状態で無理な力が加えられることにより、頚椎の脱臼骨折が起こる可能性は十分に考えられます。“首ポキ施術”による事故はこのような可能性があるので、他人によって力を加えられて行うのは避けるべきです。そのような危険をおかしてまで“首ポキ施術”を行っても、お悩みの症状は解決しませんし、「首ポキ」をしなくても治すことは可能だからです。

[3]  「頚動脈が破裂する・・・」においても解剖学上明らかに矛盾があります。

首に手を当てて拍動を触知できる、みなさんがご想像するいわゆる頚動脈は、首の骨・関節とは離れた部分にあます。また、動脈は生命活動に重要な血液を循環させているため非常に頑丈な構造となっています。“いわゆる頚動脈”の太さはタピオカの吸えるストローくらいですが、触った感じは例えるならば庭の水まきをするホースをご想像ください。あの硬さ・弾力が主要な動脈です。私は実際に人体解剖にて触知しましたが、引きちぎろうとしてもびくともしませんでした。それほど動脈とは強固な構造なのです。

なので「首ポキ」の衝撃の程度も前述しておりますが、即刻頚動脈が敗れる心配はありません。また、百歩譲って「首ポキ」が動脈を損傷可能な衝撃を持ち合わせていたとしても“いわゆる頚動脈”は首の骨の関節内にあるわけではないので、その衝撃をまともに受けるわけではありません。

しかし!!!!軽視はできません。

首の主要な動脈は2つあります。一つは“いわゆる頚動脈”と言われる総頚動脈です。総頚動脈はノド仏のあたりで外頚動脈内頚動脈に分かれます。その名の通り、外頚動脈は主に頭部の表面部分を栄養し、内頚動脈は頭の深部、つまり脳を栄養します。この総頚動脈からの流れは上記で説明しましたように、首の骨とは離れた部分にあるため首ポキ衝撃による影響は考え辛いです。しかしあまり知られていない首のもう一つの主要な動脈が椎骨動脈が論点となります。

 

椎骨動脈
出典:http://www.painneck.com/blog/neck-cracking-and-neck-popping/
 

椎骨動脈とは総頚動脈(内頚動脈)とは別ルートで脳を栄養する重要な血管です。解剖学的には、左右一対の椎骨動脈は首の骨の中(横突孔)を貫いて上行し、脳に入るとやがて一つに合わさり脳底動脈となり、脳の深部を栄養します。脳底動脈は脳の内部で内頚動脈と合流し脳の中で血管のループ(大脳動脈輪=ウィリスの動脈輪)を形成します。つまり、脳は重要な臓器であるため総頚動脈(内頚動脈)1つではなくサブルートをもって栄養されているのです。

 

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そこで着目するのが、椎骨動脈の走行です。

先ほども述べましたが、椎骨動脈は第1~第6頚椎を貫いて脳に至ります。つまり頚椎に直にくっついて存在します。1で解説しましたように「首ポキ」は頚椎の関節での物理現象により起こるため、その衝撃は椎骨動脈に影響を及ぼすことは十分に考えられます。

これまでをふまえて「首ポキ」の血管系への影響を考察と共に以下にまとめてみます。

A)  “いわゆる頚動脈”つまり総頚動脈(内頚動脈)への影響は解剖学的にみて考え辛く、可能性があるとすれば椎骨動脈である。

B)  ≪2≫で解説しましたように「首ポキ」による衝撃一撃で血管が破れることは考え辛いが、頻回行うことで椎骨動脈には少なからず影響を与える可能性はある。

C)  首が鳴るためには日常的な可動域を超えて動かすことになるため、首の骨の間(横突孔)というとても狭い通路を通るため、椎骨動脈には過剰は進展や摩擦などの刺激が加わる可能性がある。

D)  衝撃・進展・摩擦=物理的刺激は組織を傷つける可能性があり、血管の内部が傷つくとそこが変性し動脈硬化が促進される。また血栓が形成されやすくなる。

E)  椎骨動脈にできた血栓が何らかの影響で流れた場合、脳に侵入し、塞栓となり脳梗塞となる可能性がある。

補足)上記は動脈のみに着目して解説してきましたが、首の骨の内部を通る椎骨静脈系というのも存在します。こちらは静脈なので心臓へ帰るほうのルートです。静脈は動脈より壁が脆弱なため物理的刺激には圧倒的に弱いです。余談ですが、鍼灸の針では静脈は刺すことができますが、動脈は弾かれて刺すことはできません。この椎骨静脈系は首の骨にまとわりつくように存在するため、B)C)等の負荷の影響は動脈よりも受けやすいです。静脈系で血栓が生じそれが流れると、塞栓症として肺梗塞心筋梗塞のリスクが考えられます。

首ポキについてのまとめ

キャビテーションによる「首ポキ」は関節の構造が造りだす物理現象であり、関節の形状にも個人差があるため、鳴りやすい方・鳴りにくい方がいるのは確実です。そのため、鳴ること自体は異常ではありませんが長期に渡って常習的に鳴らしたり、無理な力で鳴らすことによる弊害はあります。

上記のように分析してみると、自ら動かした時に鳴ってしまうのは直近で生命につながる問題となるのは考え辛いです。しかしそれが長期間にわたり常習的に行われると血管に影響が出て循環器領域で生命を脅かす疾患につながる可能性は十分に考えられます。こういった点では鳴らす癖がある方は早めに治した方が良いでしょう。

一方、施術の一貫として行われる「首ポキ」においては、それを行うにあたってのメリットとデメリットを考慮すると、上記で説明した中枢神経を損傷するというリスクを抱えてまで行うメリット、つまり施術による効果が考えられません。首ポキ施術をすることによって一生首にまつわる不快な症状が消えるならばまだしも、そうではないからです。したがって、施術の一貫としての安易な「首ポキ」を受けるのは絶対に避けるべきです。

ところで、

なぜ、ついつい常習的に首を鳴らしてしまうのでしょうか?

首を鳴らさなくていてもたっていられなくなってしまうのでしょうか?

それは「硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説」で解説しましたが、重症・慢性化し神経症状としての肩コリ・首こりとなってしまっているからです。このように

常に気になってムズムズしてしまう

首を捻じったり 動かさないと いてもたってもいられない

無意識のうちにいじっていたり 鳴らしてしまう

発作的に急激につらくなる

睡眠が充実していなく、朝一が一番つらい

首こりつらい

出典:http://www.huffingtonpost.com/2012/10/03/neck-cracking-dangerous-spinal-manipulation_n_1929690.html

 

というのに心当たりがあれば、それは肩こり・首こりの負のスパイラルにはまってしまっているサインです。この状態では放置していても絶対に治ることはありませんし、簡単な施術による“ほぐし”程度ではすぐに元通りとなります。

つらくて我慢できない時にとんぷくとして簡易的な施術を受けるが楽になるのはその時のみで結局つらい状態から解放されることはなく、徐々に悪化していきます。この状態を変えるには「根本的な原因の解決」が必要です。

肩こり・首こりは直近で生活や生命に支障がでるわけではありません。しかし放置や適切な処置を行わないことに確実に進行・悪化していきます。1日でもはやく対処しましょう。

実際に首をボキっとしての危険性は、カイロプラクティックや整体などで首ボキ施術を受けても10万人に一人くらいしか起こらない、と言われています。

しかし「45才未満で脳卒中を起こした人は一週間以内にカイロプラクティックで首ボキをやっていた人がやっていなかった人と比べて5倍多かった」というデータがアメリカ心臓病学会の2001年に出された報告にて示唆されています。

こちらの記事を参照しました→http://stroke.ahajournals.org/content/32/5/1054.full

首ボキ施術のリスクについては、イギリスのブルネル大学(Brunel University)のリハビリテーション研究室の報告によっても椎骨動脈解離や脳血管障害をはじめ重篤な神経疾患への可能性が示唆されているようです。

こちらの記事を参照しました→http://www.brunel.ac.uk/news-and-events/news/news-items/ne_190062

このように首ボキ施術にはリスクが伴うことから、日本では厚生労働省からは禁止するよう促されております。参照:厚労省ホームページ

おそらく・・・ 自ら首をポキッと鳴らしてしまう方は首や肩がどうしてもわずらわしくて、気になってしまい、仕方がなく鳴らしてしまっていることでしょう。

また、首ポキ施術を受けた方、受けている方は肩こり・首こりを治したくて整体やカイロプラクティックにかかられたことでしょう。それで、肩こり・首こりが治った方はおそらくいないと思います。

百歩譲って、首をボキッとして根治するようならば、行う価値はあるかもしれませんが、現実問題それはありえません。(肩こり・首こりの原因は”骨のゆがみ”ではないからです。詳しくはこちらの記事で解説しています)

どのような施術を受けるかは患者さんの自由ではあるのですが、少なくとも首ポキ施術を受けるにあたって、リスクと効果を比べてお勧めはできません。

自ら首ポキを行ってしまう癖がある方も、それを繰り返すことは何もプラスにはなりませんので、是非意識していただきたいと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。分かりにくいテキストだったと思います。当記事をより分かりやすく解説した記事を別途ご用意いたしました。

あべこべ体操の効果を検証
  • 肩こり・首こりの原因とは・・・
  • マッサージなどの施術を受け続けてもいっこうに解消されないのはなぜか・・・?
  • 確実に解消するために必要な事は・・・?

をこちらにまとめました→「確実に肩こりを解消するために必要なこと

あわせてこちらもご覧になっていただけましたら幸いです。

鍼灸・マッサージの裏事情(1) 硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説

鍼灸・マッサージの裏事情(3) 血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


硬ければ重症なの?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説

その肩コリは気のせいかもしれません

親子、夫婦、恋人同士の間で「肩もみ」「マッサージ」をする、される、のはごくありふれたこと、日常のいち風景でしょう。海外ではどうかわかりませんが、日本人にとって肩たたきは親孝行の代名詞(のはず)。

街中に整体・リラクセーションマッサージ店がたくさんあります。本当に多いです。ですがお店でマッサージを受けたことがない方でも、美容院でシャンプーのあとに「マッサージしてもよろしいですか?」と声をかけられたことがない方は恐らくいないでしょう。

「肩、凝ってますね〜」

とりあえず、凝っていると言われませんか?世の中の女性の半分以上が肩こりを抱えていると言われていますが、別に凝ってないのに凝っていると言われたことがある方はきっと少なくないはずです。

そして、整形外科、鍼灸院、整体、整骨院などで以下のように言われたことはありませんか?

「体がカタイですね。」

「筋肉がカタくなっていますね。」

体が硬い、筋肉が凝り固まっている、と言われたら『硬い=重症』と思うのは当然です

実は筋肉が硬い=重症であるという認識は大きな誤りです。

トップアスリート、一流のスポーツ選手の体は柔らかい、筋肉が柔らかい、ということを耳にしたことがある、そう信じていらっしゃる方は少なくないはずです。

 

このブログ記事では、これら通説について、正しい知識を身につけていただきたいという強い思いを込めて解説いたします。

筋肉の正常な機能とは?

骨格筋(内臓以外の筋肉)の作用は収縮と弛緩をスムーズに繰り返すことです。

つまり、“伸び”“縮み”を円滑に行うことが主な仕事となります。厳密には一定の緊張(トーヌス)を保ち続けるという働きや体温調節作用・血液循環補助作用・外的刺激からの内臓防御作用も重要ですが、これらは適切な“伸び”“縮み”が行われることによって機能します。

凝った筋肉とは、具体的にどのような状態なのか?

 

筋肉が凝っている状態は、筋肉の一部分が“縮み続けてしまっている状態”を意味します。

筋肉が縮み続けてしまっていると言われても、いまいちピンとこないと思います。

まず、ご理解いただきたいポイント、それはこの筋肉が収縮し続けている原因は血流が悪いからではないという点です。血行不良だけの単一原因ではなく神経生理学上の複雑な不具合が絡み合っているのです。

脳や脊髄などの中枢神経や代謝の異常が無い健常人において、筋肉は通常単独では伸び縮みすることができません。中枢神経(命令の出発地点)から発せられた信号が抹消神経(命令の通路)を伝わり、それが対象となる筋肉に到達して収縮が起こります。(実際は電気信号が伝わってから顕微鏡的な化学物質のやり取りが行われ反応が起こりますがここでは割愛します。)

そして、その命令が途絶えると筋肉は収縮するのを止めます。つまり、能動的に筋肉に作用するスイッチは“縮め”という命令しか無いのです。

一方、“伸び=弛緩”は受動的に起こります。“縮め”の命令が出ていない場合か、表の筋肉が収縮している時は裏の筋肉は弛緩します。例えば太ももの前(大腿四頭筋)が収縮した時は後面(ハムストリングス)が弛緩します。これを相反性抑制(=反回抑制=Ia抑制)と言い円滑な動作を行うために重要な反射機構です。

また、筋肉は両端部分のスジが引き伸ばされても反射的に弛緩します。これをIb抑制と言い、筋肉の収縮や外力によって急激に引き伸ばされスジが断裂するのを防ぐための防御機能です。この反射を応用したものがスタティックストレッチ(ゆっくり引き伸ばして行うストレッチ)となります。

特に急激に筋肉が引き伸ばされた時は伸長反射(脚気の検査で行う膝のお皿の下をたたくと膝が伸びる反射です)が起こり、引き伸ばされた筋肉が収縮します。これは関節が過剰に動き破壊されてしまうのを防ぐためです。伸長反射によって急激に収縮すると、収縮した筋肉のスジが強く引っ張られます。ここでIb抑制が働き、正常な状態に戻すのです。

実際の動きの中では裏表で明確に収縮と弛緩が分けられてはおらず、同時収縮や収縮しながら伸びるといったことが連続的におこります。上記の説明はあくまでも動きをあくまでも簡略化した場合です。

要するに、筋肉の仕事は収縮と弛緩のみであり、そのうち自発的な命令は“収縮”のみ。実際には無意識下での反射機構が複雑に組み合わさり動作を円滑に行わせる、ということなのです。

話が少し脱線しましたが、ここでお伝えしたいのは“筋肉”単体だけではダメで、神経が命令を出して・伝えて、初めて仕事を行うことができるということです。

 

これらをふまえて“コリができる=筋肉が固まってしまう”状態には3段階あります。

 

持続的に一定部位の筋を収縮し続けざるを得ない状態となっている

不良姿勢や不合理な動きを続けることにより、限られた筋肉が収縮し続けます。ここまでは筋疲労です。

例えば猫背でデスクワークを続けていると重い頭(体重の約10%)を支えるために首や胴体の後面の筋肉が収縮します。良好な姿勢でも重力に抗するために後面の筋肉は収縮しますが、猫背であるとテコのアームが伸びることとなり只でさえ重い頭部の重量が数倍となり背面の筋肉がそれを支えることとなるのです。

体重60kgの方の頭部重量は約6kg。2リットルのペットボトル3本をずっと片手に持っていたら腕が猛烈に疲れますが同様のことが首や肩周囲の筋肉で起こるので、疲労するのもうなずけます。

 

本来備わる反射機構が円滑に行われない(筋肉の状態をキャッチするセンサーの不具合)

筋肉の緊張を調整する反射がスムーズに行われるためには、その伸び縮みをキャッチするセンサーが働かなければなりません。人間には様々なセンサーが存在しますが、それらは生体に変化が生じた瞬間を情報としてとらえます。

例えば血圧が高いとそれをキャッチするセンサーがありますが、慢性的に高血圧の方はそのセンサーが鈍ってしまい“血圧を下げる”という反応が起こりにくくなります。筋肉内のセンサーであれば引き伸ばされたり縮んだりする瞬間をキャッチして反応を起こします。ところが、持続的に一定の状態にあり続けるとセンサー鈍くなり、情報をキャッチできなくなります。

不良姿勢等により一定部位の筋肉が常に収縮しているとスジの伸びをキャッチするゴルジ腱器官というセンサーが鈍ってしまい、筋肉を弛緩させるための反射(Ib抑制)が起こりにくくなります。この段階になると、マッサージやストレッチを行ってもなかなか筋肉が弛緩してくれなくなります。(ゴルジ腱器官以外のセンサーも関わりますがここでは話を単純化するために割愛します)

この筋肉の緊張を調節する反射機構が鈍った状態が“つらいコリ”となるのです。この段階になるとちょっとやそっとのことでは筋肉は反応してくれず、マッサージや整体、ストレッチなどの施術を受けても1週間が良い所となります。こうなると生活の中で“つらい”時間が増えてきます。つらい時間が増えると常につらい部分を気にするようになり、首を動かしたり、ポキポキならしたり、いじったりするようになります。

 

筋肉への命令系統の不具合(常に“収縮しろ”という命令が出続けてしまう)

人間の運動調節機能のひとつに「γ環γ(ガンマ)ループ」というものがあります。筋肉を動かすための神経はγ運動神経α運動神経に分けられ、2つを合わせて運動神経と言います。αは動かそうと思った時の命令を伝える神経で、γはαを補足して微妙な動きの調節をするための命令を伝える神経です。

直接対象となる筋肉を動かそうとしなくても、γ運動神経を介した動きは“その部位に意識を向けると自然と筋肉の緊張が増す”という普段意識しない部分での運動調節なのです。例えば筋トレの時に鏡で鍛えたい部分を見て、意識を集中させたほうがより効果的となるのはこの作用を応用です。

筋肉の状態をキャッチするセンサーの不具合が長期化すると常につらい部分に意識が向きます。つらい箇所を頻繁に触ったり、首を動かすことでγ環の活動を促してしまうのです。これは、常に“収縮しろ”という命令が出続けてしまうわけで、かえって緊張が増加してしまうのです。

緊張をときたいのに緊張をするように筋肉へ無意識に命令してしまう、命令系統のバグが生じてしまっているこの第3段階までくると「24時間つらい」「発作的に急激につらくなる」「どんな解消方法を行っても3日以内に完全に元通り」という酷い肩こり・首こり状態です。筋肉がほぐれなくて心底お悩みの方はこの状態にあるのです。

たかがコリなのにそんな大げさなと、コリでお悩みでない方は誰もが思うことでしょう。このような酷いコリは自律神経を乱しさらなる緊張を生むと共に、精神症状へとつながります。さらに全身症状へと移行します。これは事実です。そして特に首こり患者さんに多い傾向があります

筋肉が硬ければ硬いほど重症なのか?

 

重症化するにつれて変化するのは“筋肉の硬さ”ではなく“神経の問題がどれだけあるのか?”という点です。つまり「筋肉の硬さを調整する機能がどれだけ鈍ってしまっているかどうか」が問題です。

その機能が侵されていればいるほど、頑固なコリ=ほぐれないコリ=すぐ元に戻るコリ なのです。

よって、触って硬い・硬くないは重症度とは必ずしも関係があるわけではなく「与えた刺激に対してどれだけ反応性があるかどうか」が重症度を判定する指標となります。  重症であるほど、筋肉だけに留まらず、神経系の異常へ移行していくのです。

トップアスリート、プロスポーツ選手の筋肉は一般人の筋肉と何が違うのか?

 

一般的に、一流アスリートの筋肉は柔らかいと認知されていますがこれは間違いです。上記に説明してきましたように筋肉の硬さはその質を図る上でたいして意味をなしません。関節の可動域は筋肉の硬度以外の要素が大きく関係していますし、関節が柔らかいと返って問題も生じます。関節は柔らかければよいということではありません。関節は硬い方が弾性を利用することができ、かえって有利に働く場合もあります。

ハードトレーニングをして、カチカチになった筋肉はそれだけ収縮力があるということなので、高いパフォーマンスがあることを示しています。重要なのは筋肉を動かす機能がどれだけ鋭敏に反応するかどうかです。言い換えると、神経と筋肉の反応がどれだけ充実しているかどうか、が一番の論点となります。

つまり、ハードトレーニングをしてカチカチになった筋肉が短時間・弱刺激でほぐれるほど、質の良い筋肉と言えるのです。往々にして一流アスリートの筋肉はどんなにカチカチになっていても短時間・弱刺激でほぐれて回復させることが可能なのです。

一般常識とされていることもいつかは非常識になることはたくさんあると思います。

一般常識として浸透している知識にも、よく考えてみると辻褄が合わないことがたくさんあります。一見気軽に感じる“コリ”においても心底苦しんでいらっしゃる方が実際にいます。生活に支障が出ている方々が実際にいます、本当に苦しんでいらっしゃる方々の参考になれば幸いです。 「〇〇と言われている」ではなく、医学的根拠のある知識を得て自身の体に何が起こっているのかを知る必要があるのではと思います。

肩こり・首こりとはどのようなものなのか??その、おおまかな全体像をとらえたい方は下の記事をご覧ください。

ひどい肩こりを何とかしたい!病院いけば治る?そもそも病院で診てもらう必要は?

最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございます。

もし当記事が、少しでもあなたのお役に立てたようでしたら、他の方にシェア頂ければ幸いです。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


鍼灸マッサージの嘘と本当

簡単に治る・・・そんな魔法のような方法は“ありません”!!

「鍼灸」「マッサージ」ときいてどのようなイメージを持ちますか?

一般的には胡散臭いイメージ、古臭いイメージかもしれません。

小顔効果の美容鍼のイメージから「凄いテクニック」、凄腕整体師やゴッドハンドのメディア出演から「何にでも効果がある魔法のようなもの」のように錯覚されがちでもあります。ちなみに整体師というのは鍼灸師・あんま指圧マッサージ師ではございません。

人は、どうしても、楽なもの、便利なもの、コストがかからないもの、無料・・・に惹かれがちです。

美味しいもの、好きなものを我慢せず食べていれば、肥満になりますが、痩せることはとても大変なことです。その大変なことを、最後までやりぬくことができるのは意志がとても強い人。そんな強い人はごく一部の人たちです。多くの人は簡単な方法、魔法のような方法が大好きで流行に流されやすいですし、飽きっぽいものです。そんな世の中に出ては消えていく消費されるものこそが大きなビジネスを産みます。私たちは消費者です。

ですが、医療は、そうしたビジネス上にあるべきではない、と思うのです。

病院にいく時、自分は客だと思いますか?

思いませんよね。

医者というと、ほとんどの人が「お金持ち」というイメージを抱くと思います。

お金のために医師になった人ももちろんいると思いますが、そうでない医師だってたくさんいます。

肩こりラボで働くスタッフは、肩こりや首こり、腰痛などで悩まれている方を本気で救いたい気持ちを持った人しかいません。医療に携わる端くれとして、初心や理想は、一生忘れず、追求していくことが使命であるべきです。自らを戒めることも必要でしょう。このようなブログを書き続けていくことには、その意味もあります。

前置きが長くなりましたが、肩こり・腰痛からはじまり各種スポーツ障害はもちろん花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患、胃痛や便秘などの内臓疾患、はたまたリフトアップやシワとりの美容鍼やダイエット目的の鍼など効能としてうたわれるものは本当に多岐にわたります。

でもこれらは「本当」なのでしょうか?

「本当のことが知りたい」

真実・事実だけが全てではありません。人生を楽しむ上では不要だという人もいらっしゃるはずです。

今回は本当のことを知りたいと思う方のための記事です。首肩腰の諸症状で悩まれている方、現在通っている治療院に疑問をお持ちの方だけでなく、セラピストを目指している方にも読んでいただきたいと思います。

鍼灸・マッサージはあくまで物理療法の中の手段でしかありません。

以下の解説は医療(西洋医学)の観点からのみの解釈となります。客観的な裏付けという意味でご覧ください。

例えば病院。ひどい下痢でいらっしゃった患者さんに医師が行う治療は

①下痢止めを処方して下痢を止める

②あえて薬で下痢を止めない

ということを行います。

①は、下痢により脱水が生じ二次的な問題が生じることを防ぐため

②は、下痢は異物除去のための正しい生体反応なので無理に止めるとかえって長引いてしまう

という意味があります。

これらは各医師独自の方法であっても医学的根拠に基づき実施されます。

では、鍼灸師・あんま指圧マッサージ師はどうでしょう?

ほとんどの鍼灸師・あんま指圧マッサージ師は患者さんが下痢だと訴えたら「下痢に効くツボにお灸(鍼)をしましょう」と言うでしょう・・・。この場合は上記①②のような根拠に基づいておりません。鍼灸が下痢に効くか効かないかは別として、何にでも鍼灸を適用させてしまいます。

鍼灸師・あんま指圧マッサージ師は独自の理論「自分がこう考えたから」「経験的に」「直観で」、そして著名・高名な人の方法論に則り「〇〇と言われているから」に頼る傾向があります。

なんでもかんでも鍼灸で治るかのような都合のいい勝手な考え方をする鍼灸師が多い理由

それは「東洋医学」という逃げ道があるからです。もし医療関係者に問われたとしても独自の東洋医学に逃げることができてしまうのです。ここがそもそもの問題点です。

東洋医学は伝統医学、経験医学と言われ昔からの言い伝えや慣習を元に構築されています。言い換えると「何故かわからないけれど、こうやると良くなると言われているから行う」ということです。そして東洋医学独特の「気」や「経絡」といった考え方がありますがこれらはあくまで考え方、思想であり理論ではありません。

東洋医学による診断方法で脈や舌を診て状態を判断する方法がありますがこれにも疑問が残ります。脈診は施術者が手で触れて腕の動脈の拍動を感知して行いますが、手の触れる圧力や触覚は人により異なり、感じ方は千差万別のはずです。舌を診る場合は、舌苔(ぜったい)や色や形を診て状態を判断しますが、それだけで体の状態が本当にわかるのでしょうか?

個人的な感性で自分の状態を決定されてしまい、あなたは不安ではありませんか?

足の裏や背中、お腹を触って内臓の良し悪しを判断する場合もありますが、これにもまったくもって客観的根拠はありません。

たしかに胃が痛い時は背中が痛くなったり反応が出ることはありますが、背中が痛いから胃が悪いわけではありません。足の裏と各内臓との関連経路は解剖学的に全く存在しません。

有名とされる鍼灸師・あんま指圧マッサージ師は脈や舌、触診等で内臓から体質・性格まで患者さんの全てを把握しますが、それは単なるパフォーマンスです。100年に一人くらいは第6感を持っていて直観で全てがわかるかもしれませんがそんな人はいないも同然です。現在毎年4000名程の国家資格取得者が輩出されていますが、それらがみんな第6感を持っている、または修行により養われるとは到底考えられません。

また、有名になればなるほど神秘的なイメージを演出するようになり、メディアを通して根拠のない独自の理論を大々的に叫ぶため、この業種が占い師や呪術師と変わりない印象を受けて与えてしまい、現代医療からますます隔離してしまっています。少なくとも筆者はこのような鍼灸師・あんま指圧マッサージ師像、現状に納得しておりません。若き鍼灸師・あんま指圧マッサージ師がカリスマを目標としてみんながみんな“100年に一人の逸材”を目指しているのはもはや滑稽な話です。

ですから、一般的な医療従事者は、東洋医学というだけで偏見をもったり相手にもしない人が少なくありません。悲しいことに鍼灸・マッサージ自体がイコール東洋医学と決めつけられてしまいがちです。

ここまでの話を以下にまとめます。

東洋医学の現状におけるネガティブな部分

  • 鍼灸・マッサージが万能治療と考え何にでも適応しようとする
  • 説明や会話の中で、つじつまが合わなくなったり、理解があやふやになると最後は「東洋医学的には・・・」というくくりで片づける施術者が多い
  • 根拠があやふやなものでも「良いと言われている」「良いのではないか」というレベルで患者さんに施術を行ってしまう
  • コンプレックスを持っており、開業すると高確率で「医師のまねごと」をするようになる
  • 施術に対する厳格な評価から逃げ、結果リラクセーションと同じになる

ということです。

このような現状が患者さんの期待を裏切り続けて我々鍼灸師・あんま指圧マッサージ師の信頼が失われつつあります。もはや失われてしまっているのかもしれません・・・

一応ポジティブな部分もあります。

病院は定められた検査項目が陽性とならなければ診断とならず治療対象とならないが、実際は検査値に現れない症状(肩こり・首こり・自律神経失調症などの不定愁訴)に悩まれている方が非常に多く、そういった方々には鍼灸・マッサージは適している → 緩和医療には適している

ということです。

これを読み「あれ、ポジティブな部分が少ないぞ」と思われた方が多いのではないでしょうか。

そうです。

鍼灸・マッサージは魔法ではありません。万能療法でもありません。あくまでも物理療法の一つでしかなく、適用範囲が限られています。

物理療法とは温熱や寒冷、電気、触覚といった外的刺激を与えて生体反応を起こさせる治療方法です。鍼は異物を挿入するという機械的刺激。灸は温熱刺激。マッサージは触圧覚を利用した機械的刺激。

そのため、鍼灸・マッサージを行うことによっておこる生体反応は決まっています。これにより鍼灸・マッサージの限界も同時に存在します。実は鍼灸・マッサージの適用範囲とは非常に狭いが本当なのです。

限界を知っていれば、鍼灸・マッサージの効果を最大限発揮する適応範囲が自ずと決まります。

あらゆる病に効果的だと思わせる・堂々と効果があるというのは、嘘か思い込みのいずれかです

「美容」「ダイエット鍼」「体質改善鍼」「冷えムクミ改善」「アレルギー改善」「神経痛改善」「うつ病克服」「自律神経失調症改善」「不妊治療」・・・・・などの鍼灸・マッサージを受けた方は心から満足いく結果は感じられましたか?

おそらくないと思います。

実はこれらには大きな嘘が潜んでいます。

これらを行う治療者に問います。

『100人の患者さん相手に説明をし、全員がその治療の内容とメカニズムをきちんと理解することは可能でしょうか?』

『他の現代医療従事者に治療の内容と作用機序を納得してもらえるように説明することができるでしょうか?』

おそらく、医学的根拠のない「言葉」「理論」による、一般人には理解できない閉鎖的な別世界の話として説明されるか、一人でも治った人がいるという事実だけを根拠にして治らないケースは患者さんのせいにすることでしょう。

今回は長くなりましたので解説はまた次回にさせていただきます。最後までお読み頂きましてありがとうございます。

 

肩こり・首こりとは具体的にどのようなものなのか、解消するためにはどうすればよいのかについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ひどい肩こりを何とかしたい!病院いけば治る?そもそも病院で診てもらう必要は?

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こり・首こりの根本解消に有効なエクササイズとは(運動学・バイオメカニクスの観点から)

【問題】以下4つの中から肩こり・首こり改善に最も効果的なエクササイズはどれでしょう?   答えは一つです。

  1. “力こぶ”の筋トレ [バイセップスカール、アームカール等]
  2. “腹筋”の筋トレ [一般的腹筋運動、シットアップ、ツイスト等]
  3. “お尻”の筋トレ [スクワット・デッドリフト等]
  4. “胸”の筋トレ [ベンチプレス・バタフライマシン等]
 

“力こぶ”の筋トレ

女性は二の腕の引き締めのために、男性はたくましい腕にするために  よくトレーニングが行われる部分です。力こぶの筋肉(=上腕二頭筋・烏口腕筋)を筋トレし続けると、肩甲骨が上・外方向に移動してきます。すると、いわゆるこる部分や首と肩甲骨をつなぐ部分の筋肉が引き伸ばされます。引き伸ばされた筋肉は縮まる性質があるため(=伸長反射)つらい部分の筋肉はどんどん固くなります。腕の筋トレを行うことによって首こり・肩こりはどんどん頑固になってしまいます。

“腹筋”の筋トレ

姿勢が悪いのは腹筋が無いからだと考え六つに割れた腹筋を目指していわゆる腹筋運動(仰向けになって膝を曲げて状態を引き起こす動作、仰向けに寝てツイストしながら状態や足を持ち上げる動作など)を繰り返し行うと腹直筋・内腹斜筋・外腹斜筋・腸腰筋・大腿筋膜張筋・大腿直筋 が負荷を受け硬化していきます。すると・・・姿勢を良くするための筋トレなのに、どんどん丸まっていき猫背を悪化させます。姿勢が悪い方が足りない腹筋はお腹のインナーマッスルである”腹横筋”です。腹横筋はいわゆる腹筋運動では鍛えることができません。

“胸”の筋トレ

女性はバストアップ、男性は厚い胸板のために高い頻度でトレーニングされる部分です。しかしこの部分の筋トレをやり続けると大胸筋だけでなく小胸筋・前鋸筋が硬化します。この3つが硬くなると、肩甲骨がこれも上・外方向に移動し①と同様の状態となります。加えて背骨も丸まりますし、肋骨の動きが悪くなるので呼吸も浅くなり肩こり・首こりだけでなく疲れやすい体と化してしまします。

正解について

正解は③の“お尻”の筋トレです。

二足歩行をすることにおいて猿と人間の差、赤子と大人の差は臀部の筋力です。つまり臀部の筋肉(大臀筋・中臀筋・小殿筋)や股関節をとりまく6つのインナーマッスル(梨状筋・大腿方形筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋・上双子筋・下双子筋)が発達し機能しているため二本足で立ち、安定した歩行が可能となります。

また、人間の重心は骨盤内に収まるため、いかに骨盤を安定させられるかどうかが重心を安定させることになり良い姿勢かどうかを決定づけます。

現代人はデスクワークによる座位姿勢を続けることが多いため、臀部の筋肉が衰えやすいです。立ち仕事の方は極端に立位時間が長いため臀部の筋肉は疲労しきってしまい、いつのまにかあまり使わないようになってしまいます。このような事から現代人は①臀筋が不足している ②臀筋はあるがうまく機能していない 状態の方が大多数です。

肩こり・首こりを根本的に改善するためには、局部をほぐしたり血行を良くするよりも、良好な姿勢を獲得すること何よりも重要です。多くの方は“良好な姿勢とはどのような姿勢なのか知らない”、または“とりたくてもとれない”状況にあります。それを打開するためのひとつの手段として臀部の筋力を活性化させることが有効です。

巷には様々な方法論が出回り体幹の重要性が示唆されておりますが、『体幹=腹筋』という間違った解釈が浸透してしまっています。筋トレにおいて最も肝心なのは「人体にとって“最少負荷となる姿勢”“合理的な動きができる姿勢”を維持するために不足している筋力を補う」ということです。前後・左右・上下で無理なく平衡がとれるようにすることが大切です。“体幹トレーニング”そのものが重要なわけではありませんし、腹筋が割れれば体幹の状態が良くなるわけではありません。アスリートは最低限これが充実した上で、パフォーマンスアップのためのトレーニングがありますが、大多数はこれに到達できていない状況です。だから、トレーニングをしてもいっこうにパフォーマンスが向上しない「見せかけの筋肉」となってしまうのです。

まとめると、①②④で対象となった筋肉と、相反する作用をする部分との相対的なバランスを整えることが成功する効果的な筋トレなのです。

【重要】   腕・胸・腹は自らの目に見える部分なのでつい強調したくなりますが、本当に大切なのは側面や後面からみたあなたの姿を美しくすることなのです。

肩こり・首こりとはどのようなものなのか、おおまかな全体像をとらえたい方はこちらをご覧ください。

ひどい肩こりを何とかしたい!病院いけば治る?そもそも病院で診てもらう必要は?

硬ければ重症なの?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりと首こりの決定的な違い(解剖学・生理学の視点から徹底解説)

首すじのコリで悩んでいらっしゃる方は大変多いのですが、「首こり」という言葉は、「肩こり」ほど一般的ではありません。

そんな「首こり」ですが、「肩こり」は同じようなものと思われがちです。

医学的にも「そもそも肩こりとは厳密には首こりである」と説明する医師も多くいらっしゃいます。

その根拠は、肩こりの原因が、首の筋肉にあるケースが多いためです。

ですから首こりと肩こりが混同されるのは、仕方ありません。

はっきりと結論から申し上げます。

「肩こり」と「首こり」には大きな違いがあります。

ほとんど肩こりと同じような首こりが多いのは事実です。

首こりにあって肩こりにはないもの、これが一般的に知られていないために、首こりで悩まされている人が救われない原因といえるでしょう。

 

肩こりと首こりを別物として捉える医師が少ないという現実

医療の専門家(整形外科医)の多くが、肩こりとは首こりであるという認識であり、違うものとして捉えている医師が少ないのです。病院にいっても肩こりが治らない、そして首こり肩こりを専門に扱っているような病院でも治らないケースが多いという残念な状況を作り出している理由のひとつだと思います。

そもそも、肩こり・首こりで悩まれている方で、病院を探す人自体少ないでしょう。近所の整体に行ってみる人、とりあえずピップエレキバン・マグネループ・湿布に頼ってみる、痛みがある場合でも、湿布や塗り薬に頼る人がほとんど。最初から、肩がこらないようにするには?という発想がないのです。

そして、四十肩・五十肩といった肩関節周囲炎にも言えることですが病院では「原因が分かりません」「痛みの原因はたぶん○○」と曖昧な回答をされた経験をお持ちの方は多いでしょう。様子をみましょうということで、症状の緩和のための痛み止めの薬・ブロック注射をされるというのが、典型的なパターンです。

風邪を引いたらクスリなどでつらい症状を緩和している間に自分自身の体が回復していきます。クスリはあくまでつらい症状の緩和、つまり対症療法です。

風邪とちがって、慢性的な首肩こり・四十肩・五十肩は、自己回復できないのです。自己回復できない状態にまでなってしまった=慢性化です。

対症療法の効果がない場合、それらを引き起こしている原因を解決しないといけません。正常であれば原因は自己解決できます。自己解決できなくなってしまった場合は、原因療法が必要になります。

首こりと肩こりは違います!!

首こりは、「首すじのこり」「首すじの痛み」といった表現をされることのほうが多いと思います。

首すじは漢字で書くと「首筋」または「頸筋」です。字の通り、首の筋肉を意味ですが、首すじというと、首の後ろの部分、いわゆる、くびねっこ・うなじを指します。

うなじって首ですか?それとも肩ですか?

首と答える方が多いと思いますが、肩と認識されている方も一定数いらっしゃるはずです。

ここで、本題に戻ります。

肩こりと首こりの違い、それは首と肩という筋肉の部位が違いでしょ?と誰もがお思いになるはずですが、違います。

ここで問題です。

首の筋肉が原因で肩が凝る、これは首こりですか?それとも肩こりですか?

正解は、肩こりです。

ツラい症状を感じる場所で、首こりと肩こりと言葉を分けるのが適切です。

症状を感じる場所が違う以外にも、肩こりと首こりとでは明確な違いがあります。肩こりと首こりの決定的な違い、それは神経症状として出るか出ないかです。

首こりは神経症状が出るのです。

「首こり」は神経に症状が出てしまう

首こりによる感覚神経の症状

首にはたくさんの神経が集中しています。

誰もが経験する頭痛。この頭痛は首と関係しているケースが多く「緊張性頭痛」という言葉はご存じの方も多いのではないでしょうか?

緊張性頭痛とは?

頭部の感覚は、大後頭だいこうとう神経、大耳介だいじかい神経、小耳介しょうじかい神経等といった神経が感じます。これらの頭部の感覚を担う神経は、首の骨の内側にある脊髄から出ているのです。 首がこると首の神経を圧迫し、後頭部・側頭部・頭頂部の痛みを誘発します。これがいわゆる緊張性頭痛です。(もちろん後頭筋や側頭筋などといった頭部の筋肉のコリが直接神経を圧迫する場合もあります。)

頭だけでなく肩・腕の神経の問題も首がポイント

肩~腕~手の動きや感覚を担う神経、および血管も首に由来します。神経は頚椎から出るのでイメージがつきやすいのですが「心臓から出た血管が腕に行く前になぜ首へ?」と疑問をもたれる方は少なくありません。解剖学を紐解くことで、その疑問は解決します。

心臓をスタートとする血管は一度鎖骨の高さまで上に上ってからまた腕の方へ降ります。その首の前側の鎖骨近辺で、首の筋肉である斜角筋しゃかくきんを貫くため、首こりによってシビレや血流障害による冷えなどが生じます。正確には斜角筋しゃかくきんはその位置によって前・中・後の三つに分かれ、前と中の間を斜角筋隙しゃかくきんげきという狭い隙間があります。この隙間に神経(腕神経叢=腕を支配する神経群)と血管(鎖骨下動脈・鎖骨下静脈)があるのです。首こりで斜角筋しゃかくきんが硬くなるとこの隙間を圧迫するのです。

ですが、これらはレントゲンに写りません。ですから病院でレントゲン検査をしても異常なし、となります。

これが、肩こり・首こりの重症の方が、腕や肩甲骨周囲に放散する不快な症状を自覚して、病院で検査しても異常なしとされる理由です。首が原因による腕の症状のうち、病院で原因不明、異常なしとされてしまう例として「手の冷え」があります。手が冷えるのは血流が悪いためです。なぜ血流が悪くなるかといいますと、首のコリにより血管が元詮をされている状態だからです。つまり冷えてしまっている末端を温めても温めても改善はしません。元栓がしまっている以上、血行がよくならないのです。

この症状は、正式な病名として胸郭出口きょうかくでぐち症候群の一つともいえます。ただ、胸郭出口きょうかくでぐち症候群は、肩こり・首こりだけが原因ではありません。

胸郭出口きょうかくでぐち症候群かも?と思われたら・・・

胸郭出口きょうかくでぐち症候群が疑わしい場合は、まずは整形外科にて骨や内臓の問題(特に頚椎の状態ですね)をチェックしていただき、異常がないということの確認が必須です。というのも、シビレや冷えなどは神経系・循環器系の病気が隠れている可能性があるため、決して軽視はできないからです。

特に目立った異常が見当たらない、ということであれば胸郭出口きょうかくでぐち症候群への理学療法が適応できます。胸郭出口きょうかくでぐち症候群は単にマッサージや鍼灸、電気・温熱療法だけでは、その場しのぎ止まりで、改善は困難です。

その場しのぎとはいえ、まず、緊張が高まっている斜角筋しゃかくきんを中心とした首の筋肉を弛める必要があります。筋肉を緩めた後、首に負担のかからないようにする筋力を強化しなくてはいけません。筋力強化が胸郭出口きょうかくでぐち症候群に対して必要なのです。

胸郭出口きょうかくでぐち症候群に対して行う筋力トレーニング

胸郭出口きょうかくでぐち症候群になりやすいのは、痩せ形・なで肩の女性です。女性はどうしても筋力が弱いため、首周囲へ負担が強いられてしまうという背景があります。ですから、筋力強化はもちろん必要なのですが、その筋力強化とは単にダンベルや重りをもって筋肉を肥大させる運動ではございません。強化すべき筋肉は体幹とインナーマッスルなのです。体幹とよばれる胴体部分の筋肉とインナーマッスルを活性化させると、体を効率よく負担がするないように動かすことができるようになります。ここで強化ではなく「活性化」と表現したのは、強化というとどうしても単に筋肉をつけて「マッチョ」になることと思われるためです。そうではなく、あくまでも負担なく合理的に体を動かせるようになることが目的で、そのための筋力トレーニングは筋力の強化ではなく活性化なのです。イメージとしては、女性でいうと痩せすぎていない「健康美」、男性でいうと「細マッチョ」です。胸郭出口きょうかくでぐち症候群に対して行う筋力トレーニングは、これを目指した体造りを行っていきます。

繰り返しとなりますが、ここでいう筋力強化は、重量物を歯を喰いしばって持ち上げるようなハードなトレーニングの必要はまったくございません。

まずは整形外科で診てもらうましょう!

胸郭出口きょうかくでぐち症候群になりやすい方を上記であげましたが、あくまでそれは「教科書的になりやすい」例にすぎません。

たとえ体重が多くても、筋肉量が多いとは限りません。個人的には発症しやすい例として「痩せ形」と表現することに疑問をもっています。痩せている女性やなで肩の女性に多いとはいえ、デスクワーク中心の男性にも実際多く見られます。

話が少しそれましたが、そのため「首肩こり」「(常にではないけどたまに)手にがしびれる」「手が冷えやすい」ということに心当たりがある方は、本当に症状が重篤になる前に一度整形外科にて診ていただき、MRIやCTといった検査を受けてください。ヘルニアや頚椎症の可能性があります。ヘルニアというと腰のイメージが強いですが、腰も首も背骨という意味では同じです。首のヘルニアは、頚椎椎間板ヘルニアといいます。

整形外科での検査で異常が無いようでしたら、整形外科の範疇ではないということになります。問題は、骨ではなく筋肉です。是非、軽症のうちに治してしまいましょう。胸郭出口きょうかくでぐち症候群は、解剖学に基づいた筋肉、そして、その動作に対する施術が必要となります。基本的には肩こり・首こりへの対処と同じなのです。

整形外科に行って異常なしとされ、次にどうすればよいか分からなくてお困りの方は以下の記事をご覧ください。

首肩腰でお悩みの方を迷わせない!病院・鍼灸院・整骨院・サロン選びのコツ

 

首こりによる自律神経の症状

首には上神経節・中神経節、星状神経節という自律神経(交感神経)のツボのような要所が存在します。

これらが首こりによって、圧迫刺激されることによりバランスを乱し、偏頭痛や吐き気、めまい、睡眠障害といった自律神経失調症状が引き起こされます。

この神経のツボ(交感神経節)は左右一対あり、数珠のように首から腰まで背骨の際を一つながりになり、交感神経幹という組織を形成します。そのため、それらが不調となると肩甲骨や背中の不快感にもつながります。

さらには自律神経への影響として血圧の変動といった循環器・各内臓機能も不安定となり、イライラや情緒不安定などの精神症状にもつながります。

また、迷走神経という副交感神経も脳から出て首の筋肉間を通って内臓へと下降していくため首こりにより不要な刺激を受けることでバランスを乱し、内臓諸機関の機能を乱します。

首肩こりと自律神経の関係を検索して調べていくと、自律神経が乱れるという所までは同じだが、つきつめると交感神経に着目してる説と副交感神経に着目している説があり、とてもわかりにくいと思います。

実はこれらは表裏一体でシーソーのように均衡を保っており、一概にどちらか一方のみといういいきれないというのが実情なのです。

首肩こりにお悩みの方は元々精神的ストレスを抱えていらっしゃる方もいますし、首肩がつらくてストレスとなってしまっている方もいます。天候など気圧の影響を受けやすい方も自律神経は乱れやすい体質といえます。

このような方々は自律神経のシーソーのバランスがとりにくく、片方へ傾いたら戻れなくなってしまったり、戻ろうとしたら戻りすぎてかえって反対に傾いてしまったりとしてしまうわけです。これがいわゆる「自律神経が乱れた状態」です。

つまり、自律神経を考える場合、対をなす交感神経と副交感神経がどちらか一方が働いてもう一方が働かなくなるいうように絶対的に変化するのではなく、あくまでも相対的なものなのであるとうことを頭にいれていただきまして、どちらか一方に着目するのではなく、ある事象が起きることによって双方に影響が出ることがあり、それは個人差があるということをご理解いただきたいと存じます。

そのため当記事でも首こりによって交感神経・副交感神経療法への影響をご紹介させていただきました。

このように首こりは悪化・長期化すると自律神経系の異常をきたし全身症状へと移行していきます。 (交感神経と副交感神経を合わせて自律神経といいます)

肩こりは主にその局所のつらさに留まる一方、首こりは高い頻度で全身症状へ移行してしまうため、首こりのほうがつらいと感じる方が多い傾向にあるようです。

病状は

  • 肩こりから首こりに移行するパターン
  • 首こりの症状として肩こりを感じるパターン

の2パターンあります。

肩こりを放置して首こりへ移行してしまわないようにするには、悪化しないためのケアを行うか、できるだけ早く治してしまえば問題ありません。

首こりの方はのんびりしているとどんどん悪化していってしまうので早急に集中的な対処を推奨します。

これは多くの肩こり・首こりの患者さんを診てきたセラピストとしての経験的なものですが、「施術をしてもすぐに元通り」という方は、肩こりではなく「首こりが原因」の方が多いです。

「首こり」と「肩こり」は似て非なるもの、この見極めはとても重要です。

肩こり・首こりと聞くと気軽に感じるかもしれませんが、それらは体からの悲鳴です。

肩こりや首こりを根本的に改善するということは、つらい症状を引き起こしている原因をひとつひとつ解決することです。つらい部分の症状を緩和しても再発するだけで、薬、お店、病院に通い続けることになるだけです。時間やお金がかかるだけでなく、厄介なことに徐々に悪化していきます。

ですから、どこで診てもらうか?どこに通うか?がとても重要になります。

どこに行けば肩こりは治るの?

まずはご自身の体が”どのような状態”で”何が起こっているのか”を知りましょう。医療機関などでの説明を受け身ではなく、理解する、疑問に思ったら質問して信頼できるかどうか見極めましょう。そのためには、正しい知識・情報が必要です。

重要なことですので、繰り返し申し上げますが、肩こり・首こり・腰痛に対してでもっとも大切なことは、症状の見極め、原因の究明です。これを間違えると、どんなによい腕を持った医師・セラピストでも改善することはできません。

マッサージ業界では、ゴッドハンドと呼ばれる(自称?)人がもてはやされますが、つらい症状を緩和するだけなら、ある意味誰でもできるといえます。

本当の意味で腕のいいセラピストとは、つらい症状の原因を正確に把握して、その人その人にあった適切な処置ができる人である、そう私は思います。そして、そう思っていただくために、セラピストの道を前へ前へと進んでまいります。

体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

以下の記事では医学的根拠に基づき肩こり・首こりについて解説しています。

鍼灸・マッサージの裏事情(1) 硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説

鍼灸・マッサージの裏事情(2) 首ポキ解消法の真相 脳血管障害・死亡率との関連性

鍼灸・マッサージの裏事情(3) 血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


競技者のパフォーマンスコントロールに有効なバイオフィードバックとは

アスリートが最高のパフォーマンスを発揮していただくために

アスリートにとって「調子が良い」状態を維持することは非常に大切です。しかしながら様々な要因が絡み合い「調子の波」があることは避けられません。

そこで重要となるのが「調子が良い時をいかに長くして、悪い時をいかに減らすか」ということです。調子が落ち込むことを避けられないならば、その状態を極力短期間にすれば良いのです。

 

その手助けとなるのがバイオフィードバックです。

 

それは、様々な刺激や環境条件の元で自らの体がどのような反応を示すのかということを客観的に認識することです。

主には生体の反応を数値化して自分の現状を視覚的に認識できるようにします。

このようにして、ある一定の刺激に対して自分の体がどのように反応するか、それがプラスなのかマイナスなのか客観的なデータを元に知ることをバイオフィードバックといいます。

調子が悪い時にそれをいち早く回復させるために、調子が良くなる条件を客観的なデータを元に知ることです。

 

例えば、ある音楽や匂いを嗅ぐと血圧や心拍数が優位に減少したとします。この事実をデータとして自身が認識することで、試合直前で緊張してあがってしまいそうな時にそのような刺激を与えることで心身ともにコントロールすることができます。

また、スランプに陥ってしまい体の機能がうまく噛み合わなくなってしまった時にも、調子の良い時にのフォームや関節の動きをデータとして残しておくことで、いち早く軌道修正が可能となります。

国立科学スポーツセンターではトッププロのサポートとして、このように様々なデータ収集が常日頃から行われています。

 

 

バイオフィードバックと単なるジンクスとの違いは、客観性があるかないかです。とはいえ、正確なデータ収集はアマチュアアスリートにとって困難です。

しかし、自分が調子の良い時はどのような心拍数や血圧なのか、はたまたどのような音や匂いを嗅ぐと心身共に安定するのかを知っておくことは重要だと思います。調子の良い時の動きを動画で残し、それを視覚的に確認するだけでも十分効果的です。

人間の脳は視覚からの情報がかなり重要視されるので視覚として認識できる形として記録を残すことが大切です。これらによりパフォーマンスのムラを軽減することや、スランプの早期脱出ができるのではないでしょうか。

 

アスリートにとってのパフォーマンスのコントロール、しいては心身のコントロールは永遠の課題です。

最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございます。

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか?パフォーマンスアップについてお悩みの方、なんとかしたいとお思いの方、是非、一度ご相談ください。

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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