その症状、肩こりではなく『首こり』かも?首こりの特徴を知ろう

『首こり』という言葉を耳にする機会が増えてきました。従来は首のこりも肩こりの一部と見なされており、整形外科でも肩こりと首こりのとらえ方に様々な意見が交わされてきました。しかしさまざまな科学的検査や研究により、首こりと肩こりの違いもわかってきています。

この記事では、首こりの特徴や、首こりを防ぐポイントなどをチェックしましょう。

 

 

首こりの特徴

ここでは肩や首にこりが発生する背景をふまえ、首こりの特徴をご紹介しましょう。

 

肩こりや首こりが起こる背景

人間の肩は全身の関節のなかで唯一、骨がぶら下がった構造となっています。その上、重い頭部も支えています。つまり肩には負荷がかかりやすいのです。

肩関節の周辺は、複数の役割の異なる筋肉が組み合わさり、重い腕を支えていますが、加齢により筋肉や骨がもろくなってくれば当然支える力も弱まります。筋力や関節の可動域が低下すると、その部分の負荷を補うために、ほかの筋肉に緊張が生じて“こりや張り”を引き起こす要因にもなります。肩こり=お年寄り、という日本でいえば昭和頃までの広いイメージはこのような現象が下敷きになってでき上ったものではないでしょうか。組織の劣化や運動機能の低下は、もっともシンプルな肩こりの原因と言えるでしょう。

しかし近年では、肩こりは高齢者だけのものではありません。むしろIT機器を駆使する現役世代、子どもからお年寄りまで肩こりを訴える年代層が広がっているのです。その大きな原因として、スマホやPCの長時間使用があげられています。悪い姿勢を常態化させ、眼も酷使した結果、頸椎と頭蓋骨をつないでいる筋肉群が凝り固まってしまい、肩だけでなく首のこりをも引き起こす可能性があります。

 

神経症状を伴ったら首こりの可能性を考えよう

首含め肩の周りが重い・つらいといった症状が出た場合、一般的には肩こりと呼ぶケースが多いのではないでしょうか。ですが厳密にいえば首こりと肩こりは異なります。それは「首こりには神経症状がある」という点です。

関連ページ:肩こりと首こりの決定的な違い(解剖学・生理学の視点から徹底解説)

首の骨の内側にある脊椎からは、頭部の感覚を司る人体にとって大切な神経が出ており、首のこりによってこれらが圧迫されると頭痛が誘発されることがあります。また、首にはさまざまな神経節も存在しています。

神経節は交感神経と副交感神経をコントロールして自律神経のバランスを保っているのですが、凝り固まった筋肉により神経節が圧迫されると、偏頭痛や吐き気、めまいなどの自律神経失調状態を引き起こすこともあるのです。自律神経は血圧や内臓機能、情緒の安定など全身のさまざまな場面に影響を与えることも予測できます。

さまざまな症状を全身に及ぼす可能性があるという点でも、神経症状を伴う首こりには注意が必要です。

 

首こりや肩こりには、どんな原因が考えられる?

慢性的、あるいは重症の肩こりにお悩みの方からは、よく「肩こりがひどくて背中や首までカチカチだ」とか、「肩こりのせいで頭痛がする」などということを聞きます。なぜ肩こりは発生するのでしょうか。

結果から言えば首こりや肩こりは、専門医でも原因がわからないケースが少なくありません。こりの原因というのは非常に多岐に渡っているだけでなく、多くの場合においていくつかの原因が複雑に絡み合っていることが珍しくないからです。

関連ページ:肩こりの原因と分類

例えば「痛みやしびれが現われる」、「関節が動かなくなる」といった症状の悪化を伴う方が診察を受けた結果、ある病気が判明。治療を受けたところ合わせて肩こりも治まったというケースもあります。こうした場合は、肩こりが病気のひとつの症状だったと考えられるでしょう。

首こりや肩こりの原因としては、他にも日々の生活習慣や運動不足なども考えられます。メカニズムはある程度判明しているものの、そこに至るまでの「なぜ」は千差万別であり、身体のどこで何が起こった結果肩こりを発症したのかを解明するのは容易ではないということです。

関連ページ:肩こりの原因(2)|どうして肩こり・首こりが発生するの?

 

スマホ首について

首こりの大きな要因のひとつとして、スマホやPCを長時間使用することで起こる姿勢の問題についてお伝えしました。ここでは「スマホ首(スマホネック/ストレートネック)」に注目してみましょう。

スマホ首とは、下を向いて背中を丸めた状態でスマホやタブレット、PCなどを長時間使用し続けることによって起こる首の症状です。

試しに背中とお尻を壁につけて立ってみてください。このとき、後頭部、肩甲骨、お尻、かかとの4か所が自然に壁についていれば問題はありません。そうでない場合は、スマホ首かもしれません。

前傾姿勢により首の前側にある胸鎖乳突筋が前に引っ張られ、固く縮みます。逆に首の後ろの筋肉は伸びてしまい、首が肩よりも前に出てしまいます。継続することでこの姿勢が固まってしまい、そうなると運動機能や自律神経にも影響を及ぼし、また目も酷使するため眼精疲労も誘発するとされています。1日に5時間以上スマホやPCを使用する、首や肩の凝りが慢性的である、猫背などが思い当たる方は何らかの対応をとることをおすすめします。

スマホ首はそれ自体の症状の辛さもありますが、放置すると悪化する可能性があるという点にも注意が必要です。人間の正常な頸椎は緩やかなカーブを描いていますが、スマホ首によって筋肉が固まり、そのまま関節が変形して首のカーブが失われ、まっすぐになってしまう状態からストレートネックと呼ばれることもあります。肩や首の張りやこりのほか、重症化するとしびれや痛み、頭痛、めまいや吐き気などの不定愁訴症状に発展するかもしれません。

 

 

首こりから解放されるために

首こりの有無を判断する際に、首の回転や上下の動きをチェックする方法があります。日本整形外科学会が発表している健全な首の回転角度の目安は、左右それぞれ60度です。

あわせて簡単な確認方法を紹介します。

首こりチェックの例

 

壁に背中をつけて立ち、正面を向きます。
片手を壁に沿って持ち上げ、壁からだいたい30度の位置に固定します。

正面を向いた首を、手を上げた方の壁に向かってゆっくり回します。
腕の位置を超えれば60度以上回転したとみなします。
このとき肩は壁につけて動かさないようにしましょう。
痛ければ無理に回さないこと。

これを左右の首で行い、首の動きをチェックしてください。
もし、60度を超えないようでしたらケアをおすすめします。

首こりを誘発する首の奥の筋肉群のこりをほぐす運動なども、SNSなどでさまざまに紹介されていますので自分に合ったものを試してみたいものです。激しい動きでなくとも、毎日少しずつ軽めに行い、続けていけることで凝りを蓄積させないことが大切です。

 

首こりを防ぎやすくなるスマホやPCの利用法

首こりの原因となるスマホやPCの利用方法についても守りたいポイントがいくつかあります。

  • 前傾姿勢や横向きはNG
  • スマホの画面は目線の高さに
  • PCのディスプレイ(特にノートPC)の高さに注意
  • 目から画面の距離は40cm程度話すのが理想的

 

まとめ

今回は首こりに着目しました。首こりも肩こりと同じく悪い姿勢や誤った対症療法が慢性化を引き起こす可能性があります。

こりや張りだけが継続し、湿布やマッサージなどの対処療法で一時的に改善してもすぐに元に戻ってしまうなどの慢性的な症状を抱えている場合、専門機関へ早めにご相談ください。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

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