自分の体に適した机と椅子の高さとは?人間工学に基づいた計算方法をご紹介。デスクワークで肩こり・首こりにお悩みの方は是非ご一読ください。

はじめに

 

先日投稿したこちらのブログでは、パソコン作業をする上で、首や肩の負担を軽減するために重要な以下の3つのポイントをお伝えしました。

  1. 机と椅子の高さの調整
  2. ディスプレイやキーボードの置き方
  3. 姿勢の意識

 

ブログはこちらから↓↓↓

肩こり・首こりが気になる方が意識すべき、パソコン作業時の適切な姿勢とデスク環境とは? 厚生労働省のガイドラインをふまえて解説します。

 

 

今回は、その中でも「机と椅子の高さの調整」に関して、少し掘り下げていきたいと思います。

具体的には、自分できる人間工学に基づいた机と椅子の高さの算出方法についてです。

 

 

さて、机や椅子に限らず、私たちが普段何気なく使っている様々なインテリアや道具には、多くの人が安全に自然な動作で使えるようデザインされています。

 

このように人間の骨格や動作の特徴などのデータを集め分析し、より機能的なデザインへ実用化する学問のことを「人間工学」と呼びます。

 

机や椅子も人間工学に基づきデザインされたものがありますが、個人の体格差により適切な寸法は異なるため、最大限活かすには適切な寸法をご自身で把握し、調節する必要があります。

 

そこで今回は日本建築学会編集の書籍より、人間工学に基づいた机と椅子の理想の高さの計算方法を、筆者が実際に体験した所感と併せてご紹介します。

 

 

机と椅子の高さの調整方法の目安をおさらいします

 

以前投稿したブログの内容から、机と椅子の高さの調整方法の目安をおさらいしていきましょう。

 

椅子の高さは、座って脇を閉じたまま机に手を置いた時に、肘の角度が概ね90°となるようにしましょう。

90°より角度が狭くなると肩がすくみやすくなり、負担が大きくなります。

 

また、机の高さはJIS規格により、その多くが床から70cmとなっていることが多いです。

これは1971年頃に成人男性の一般的な体格に合うように作られた規格です。

 

よって小柄な方ですと、前述の方法で椅子の高さを合わせると、足が浮いてしまい不安定になってしまいます。

 

高さの調節が可能な昇降デスクであればベストですが、そうでない場合、足元に足置き台などを置いて足がしっかり床に付くようにすると安定します。

 

 

机の高さが調節できないケースが多いため、机に対して椅子の高さをあわせるという方法をご紹介しました。

 

しかし、前述のように机の高さに椅子の高さを合わせると、小柄な方だと足が床から浮いてしまいます。

 

そのため足置きを使い、足底がしっかりと地についた状態を作ることが最も簡易的で誰でも実践しやすい方法となります。

 

 

しかしもし仮に、昇降デスクなど高さを自由に調節できる机を持っているとしましょう。

 

その場合、よりベストなのは、個人の体格に合わせて、まずは最適な椅子を選び、椅子と自分の体格に応じて机の高さをあわせる方法です。

 

つまり、机→椅子の順ではなく、椅子→机の順に調節をすることで、より一層負担の少ないデスク環境を実現することができます。

 

 

計測・計算方法

 

適切な座り姿勢(デスクワーク時)を取る上で、以下の3つの寸法を順に導き出します。

 

  • 座面高(下記の図のいすの高さ)
  • 差尺
  • 机面高(下記の図の机の高さ)

 

 

 

 

 

 

理想的な座面高とは?

 

それではまず座面高から調節をしていきましょう。

 

 

座面高とは床から座面までの高さを表した寸法のことを指します。

 

まずは足底が踵までしっかりと床に着いた状態で大腿部が水平になるように座ります。

 

床からもも裏までの距離(=下腿高)を採寸しましょう。

その寸法が理想の座面高となります。

 

今後新たに椅子を購入される際は、その高さの範囲内で調節可能な椅子を選ぶ必要があります。

 

 

差尺とは?

 

次に適切な机の高さを求める上で「差尺」という寸法が重要なポイントとなります。あまり聞き慣れない言葉だと思います。

 

差尺とは、椅子の高さ(座面高)から机の作業面(机面高)までの垂直距離、つまり机の高さと椅子の高さの差を表した寸法のことです。

 

 

差尺は座高(身長)との相関が高く、

差尺=(座高×1/3)-1

の高さに設定することで、最適な机と椅子の高さの差を求めることができます。

 

ちなみに自分の座高がわからない方は身長×0.55で推定値を導き出すことができます。

 

 

机面高を導き出す

 

最後に机面高を求めます。

 

 

机面高は実際に採寸する必要はなく、計算で導き出していきます。

 

前項で適切な座面高と差尺の寸法が分かったら、その2つを足した数値が作業中の理想的な机面高となります。

 

机面高=座面高+差尺

 

 

それでは実践してみましょう

 

では早速例として、実際に筆者の体格を採寸し、理想の机の高さを導き出してみました。

 

 

座面高(=下腿高)は履物を含め43cm(①)

 

座高が99cm(②)なので

(99×1/3)-1

=32

となり、差尺は32cm(③)

 

座面高(43cm)+差尺(32cm)

=75cm

 

筆者の理想的な机面高は75cm(④)であることが判明しました。

 

日本製の一般的な事務用の机はJIS規格により、70cmであることが多いので、5cmも差があるという結果になりました。

 

 

実際の使用感

 

実際に導き出した椅子と机の高さに設定し、ノートパソコンを使用してみました。

 

腕を机に置いた際に肩がすくまない絶妙な高さであり、肩の緊張が抜けた状態でキーボードを使用できている実感がありました。

 

ただし、姿勢を正した状態でのちょうどいい高さであり、背中が丸まっている不良姿勢では、机が高く感じ、少々肩が上がってしまう状態となりました。

 

あくまでしっかりと良好姿勢が取れている前提での理想的な高さという印象でした。

 

またノートパソコンだとどうしてもディスプレイの位置は低くなってしまうため、「パソコン作業をするうえでの適切なデスク環境とは?」の記事でもご紹介した、キーボードに傾斜をつける方法と合わせると、非常に見やすい位置にディスプレイが配置され、格段に疲れにくくなりました。

 

また、書き仕事を行う際には机面高を更に約5cm高くした方が負担の少ない姿勢で行えるとのことです。

 

 

身長から計算する方法

 

これまでお伝えした方法では、座高と下腿高を採寸しなければなりません。

 

しかし、自分の身長を把握している方は多いと思いますが、座高や下腿高を把握している方はあまり多くないでしょう。

 

しかし身長さえ分かれば、略算比により必要な高さや寸法を類推することができます。

 

以下の表は日本建築学会編集「コンパクト建築設計資料集成 インテリア」より抜粋した略算表となります。

 

 

 

 

本記事の内容に関わる部分を抜粋します。

 

事務用机の高さ 0.41

事務用椅子の高さ 0.23

差尺 0.18

 

身長に履物の高さ(約2〜3cm)を加え、右に記載の数字をかけることで、おおよその理想値を導くことができます。

 

例えば筆者の身長180cmに履物の厚さ3cmを加え0.41倍すると

183×0.41=75.03

となり、実際に座高と下腿高を計測して導き出した事務用机の高さ75cmとほぼ同じ値となりました。

 

ただし同じ身長だとしても下腿の長さや座高など、体格に個人差はありますので、あくまで参考値と考えた方が良さそうです。

 

 

まとめ

 

①椅子の高さを基準に机の高さを調節すると良い。

②座面高、差尺、机面高の順に最適な寸法を導き出す。

・座面高=足底が床についた状態で大腿部が平行となる高さ

・差尺=(座高×1/3)-1

・机面高=座面高+差尺

③あくまで良好姿勢で使う際の理想の寸法である。

 

たとえ人間工学に基づいて設計された素晴らしい机や椅子だとしても、使い方によってはその効力を十分に発揮することはできません。

 

正しい調整と正しい座り姿勢をとることがとても重要です。

 

また、どのくらいの高さが適しているのかを知ることによって、今後机や椅子を購入する際の基準にもなりますのでぜひ参考にしてみてください。。

 

在宅ワークが普及し、自宅でPC作業をする時間が増えた方も少なくないと思います。

 

少しの時間であれば問題ないことも、長時間となると身体には大きな負担となります。

 

この機会に自宅のデスク環境を見直しみてはいかがでしょうか。

 

 

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執筆者:須藤 大登
Hiroto Sudo

呉竹鍼灸柔整専門学校 柔整科卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
柔道整復師

学生の頃、大きな怪我で部活が出来ない時期がありました。
全治2~3ヶ月と診断を受けた時、リハビリ担当の先生が「大丈夫。しっかり治すために一緒に頑張ろう」と声をかけてくれました。
なんでもない言葉ですが、当時の私にはすごく心強く、前向きになれたことを覚えています。
治療する立場となった現在、かつて私がしてもらったように、少しでも前向きに思えるような治療や言葉を届けられる存在となれるよう日々精進いたします。