肩こりは日本人特有の症状である!という説の真偽の検証

夏目漱石と肩こり

外国人は肩がこらない!!肩がこるのは日本人だけ!?

英語には「肩こり」に該当する単語がないという情報とあわせて、日本を始めとするアジア諸国の人々は欧米人に比べ、筋肉量が少ないがゆえに重い頭を弱い首・肩の筋肉で支えなければいけないため、肩こりが生じやすいという説明をたまに耳にしますが、そんなことはありません。オイルやパウダーをつかったマッサージの起源がヨーロッパ(主にはスウェーデンやドイツ)であるという事が欧米人にも昔から需要があったことを証明しています。

肩こりにおいて筋肉量はそこまで問題にはなりません。

筋肉量の違いが首肩こりの原因であれば、極端な話ボディービルダーやアメフトの選手は肩こりが無いこととなります。

実際には、そんなことはありません。

筋肉隆々の方でも肩こりの方はたくさんいます。つまり、肩こりがあるかないかは単に筋肉量の差ではないことを示しています。

アジア人(黄色人種)と欧米人(白人・黒人)を比べた場合、解剖学的な面にフォーカスを当てると、背骨のカーブに違いがあります。正常な背骨は、体を横から見たときS字状にカーブがあります。首は前に、背中は後ろに、腰は前に湾曲しているのです。この湾曲のはたらきは、頭という重量物(体重の約10%)が頂上にあり、その衝撃を緩衝させるためのスプリングのようなはたらきをしています。欧米人はこの背骨の湾曲がしっかりしているのに対して、アジア人はこの湾曲が少ない傾向にあります。それ故に、アジア人は欧米人にくらべて身体動作自体が不合理であり、頭の重さをうまく緩衝することが苦手で、代わりに首や肩の筋肉がその物理的負荷をカバーしていることから、肩まわりの筋肉に疲労が溜まりやすいと予測がつきます。スポーツパフォーマンスにおいて、アジア人がどうしても欧米人に劣ってしまうのは、このあたりが密接に関係しております。単純なパーツごとの筋力差ではないのです。では、この差をうむ要因は必ずしも骨格の違いかというと、完全にそうでもありません。ある程度骨格的な問題も事実ありますが、厳密には姿勢保持や動作時における脳から末端までの命令系統や、その際にどのような順序や流れ、組み合わせで筋肉作用するのかなどの体の機能面の差が最も大きな違いといえます。そのためアジア人アスリートでも瞬発系競技において、世界的に優秀な成績を修める方がいるのです。

アスリートの話にとんでしまいましたが、人体の構造はアスリートも一般人も同じです。つまり、筋力が足りないからといってやみくもに重りをつかった筋トレを行い、筋肥大=筋力をつけても体は良い方向に向かわず、むしろ逆効果となることさえあります。そのため、肩こりを治すためには単なる筋力を上げるトレーニングではなく、機能を改善するトレーニング(Functional Training)が必要です。もちろんファンクショナルトレーニングを行えば良いというわけではなく、時に筋肉を強くするトレーニング(Strength Training)も必要です。あくまでも欠点に対してそれを補う処置が必要となるわけですね。

男性よりも女性に肩こりが多いのは筋肉量が少ないから?

同じアジア人であり、体の使い方もほぼ同じという条件であれば、筋肉量の差は注目しなければなりません。もちろん男性と女性では、男性のほうが筋力量としては優っているため重力にあらがい体を支えるという面では有利でしょう。ただ、男女では体格自体の差や、支えるべき重量、そして「体の使い方」も異なります。ですから、一般論として男女の筋肉量の差が肩がコリやすさに関係しているとは言い切れません。

男女の決定的な違いは月経の有無

男女で最も差があるのは、生殖器の違い、つまり月経の有無です。月経の有無というのは、言い換えますと、女性は男性よりもモルモンバランスが変化しやすいということです。ホルモンは自律神経と密接な関係があるため、ホルモンバランスが乱れると、自律神経の乱れも起こりやすくなります。月経に伴い精神状況にも変化がでることは珍しくありません。

つまり、男女の差は単純に筋肉量だけではなく、ホルモン変動による体の機能の変化が女性の方が生じやすく、それに伴い肩こりが生じやすいものと考えられます。低気圧や前線の来襲によって心身ともに体調が優れなくなるのが男性に比べて女性に多いのは、このあたりが関与しているためと推測できます。