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肩こり・首こりが気になる方が意識すべき、パソコン作業時の適切な姿勢とデスク環境とは? 厚生労働省のガイドラインをふまえて解説します。

昨今リモートワークが急激に普及し、パソコンを自宅で使う機会が多くなりました。

通勤時間の減少などメリットも多い一方で、運動不足に陥り、首こり・肩こりなどの慢性的な不調を訴える方が増えてきていると実感しております。当院の患者さんも、自宅でテレワークを行うことで、今まで通勤やオフィス内の移動が運動になっていたことに気がついたとおっしゃる方が少なくありません。

これまでは普段仕事をする環境ではなかった場所で、長時間のデスクワークを余儀無くされているわけですから、負担が増大するのも頷けます。

今回は、首こり・肩こりの予防を目的として、自宅で簡単に実践できる「パソコン作業時の適切なデスク環境」をご紹介していきたいと思います。
是非参考にしていただけたらと思います。

なぜデスク環境が大事なのか?

デスク環境

それではまず、首こり・肩こりの予防としてデスク環境を整えることがなぜ大事なのか?
以下3点を理由に挙げます。

  • 首こり・肩こりでお悩みの患者さんは座り仕事の方が圧倒的に多い。
  • 長時間過ごすため、少しの負担がチリツモになりやすい。
  • 首こり・肩こりの軽減として即効性が高い。

首こり・肩こりでお悩みの患者さんは座り仕事の方が圧倒的に多い。

座っている姿勢は、立っている姿勢と比べると疲れにくいし、楽に感じる方も多いと思います。

しかし、実際は座り姿勢の方が正しい姿勢を保ちにくく、首肩や腰に関しては負荷がかかりやすい状態となります。

長時間過ごすため、少しの負担がチリツモになりやすい。

デスクワーカーなど、仕事でパソコンを使う方などにとっては、1日のほぼ大半をデスクで過ごすことになります。

重い物を持つなどの重労働と比べると、短い時間にかかる負担の量は少ないです。

しかし、「塵も積もれば山となる」というように、少しの負担でも1日8時間以上ともなると、蓄積される負荷量はかなりのものになるでしょう。

首こり・肩こりの軽減として即効性が高い。

首こり、肩こりを軽減させるために、トレーニングやストレッチなどの運動は大切です。

しかし、筋力や柔軟性は一朝一夕で改善されるものではなく、効果の実感までに時間を要することが大半です。(今まで使えていなかった筋の使い方を覚えることで、一回のトレーニングで劇的に変化する方も中にはいらっしゃいます。)

その点デスク環境など、環境要因を改善することは、負担の軽減に即効性があり、一度整えてしまえば半永久的にその恩恵が受けられます。

以上の理由からデスク環境を整えることは、治療をすることと同等に首こり・肩こりの軽減に必要なことと考えます。

むしろ環境要因の改善そのものが治療の一部といっても過言ではありません。

厚生労働省のガイドライン

厚生労働省では、パソコン等の作業における労働衛生管理のためのガイドラインを公表しています。

平成14年4月5日「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が発表されました。

その後、基本的な考え方は維持しつつ、多様な作業形態に対応するため、改定版として令和元年7月12日「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が発表されました。

情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて(基発0712第3号)[PDF形式:1464KB]


このような公的機関のガイドラインは一定の基準と考えて良いでしょう。

ただ、個々のおかれている状況は異なりますし、作業環境を改善させるにも限界があるというのも実際のところです。

また、公的なガイドラインがあるものの、デスクワークにより、不調をきたす方が多いのも事実です。

今回は厚生労働省のガイドラインをふまえた上で、私たち肩こりラボが、肩こりや首こりの治療に取り組む中で見出した、より実践的なデスク環境をご紹介させていただきます。

一部、ガイドラインに記載されている内容と異なる箇所がありますが、実際をふまえたうえでの肩こりラボ独自のノウハウとなります。

この点をご了承いただきますよう、よろしくお願いいたします。

肩こりラボ推奨のデスクワーク環境設定

まずは早速、首肩に負担のかかりにくい理想の姿勢をご覧ください。

上記の姿勢を取る上で重要なポイントを大きく3つに分けました。

机と椅子の高さの調整

椅子の高さは、座って脇を閉じたまま机に手を置いた時に、肘の角度が概ね90°となるようにしましょう。

机が高すぎる場合、あるいは椅子が低すぎる場合、多くは肘の角度が90°以下になります。
すると肩がすくんで、腕が力みやすくなるため、負担が大きくなります。

また、机の高さはJIS規格により、多くが床から70cmとなっています。

これは1971年頃に成人男性の一般的な体格に合うように作られた規格です。

小柄な方ですと、前述の方法で机を基準に椅子の高さを合わせると、足が浮いてしまい不安定になってしまいます。
成人男性の平均身長を元にしているので、当然ながら女性には適しにくいです。

昇降デスクであれば高さの調節が可能ですが、そうでない場合、足元に台を置いて足裏が床に付くようにすると安定しやすいです。

こちらの記事で、自分に合った机と椅子の選び方について解説しています。
よろしければ参考にしてみてください。

〜関連記事〜

自分の体に適した机と椅子の高さとは?人間工学に基づいた計算方法をご紹介。デスクワークで肩こり・首こりにお悩みの方は是非ご一読ください。

ディスプレイやキーボードの置き方

デスクトップ型パソコンの場合

デスクトップ型のパソコンの場合、ディスプレイとキーボードが分かれています。
そのため、それぞれを最適な位置にセットしやすく、身体への負担は一番かかりにくいです。

●ディスプレイ
上端が目の高さと同じ、もしくはやや下となるように高さを合わせます。

●キーボード
肘や腕を机に乗せるスペースを確保しつつ、なるべく自分に近づけましょう。
肘掛けのある椅子を使用すると、肘を身体の近くに置くことができ、キーボードを身体の近くに置きやすくなります。

ノートパソコンの場合

ノートパソコンは持ち運びに優れる反面、ディスプレイとキーボードが一体となっています。
ディスプレイを適切な高さに合わせるとキーボードの位置が高すぎてしまい、その逆もまた然りです。

一番良い方法は外付けキーボードかディスプレイを使用し、デスクトップ型と同じ環境にすることです。

このようにすると体への負担は減りますが、用意する物品が増やしたくない方もいらっしゃると思います。
そこで、もう少し手軽な方法を推奨します。

それはキーボードに傾斜をつけることです。

ノートパソコンの奥が高くなるように傾斜をつけると、ディスプレイの高さを出しつつ、快適なキーボード操作が可能となります。

この傾斜をつける方法は、専用のスタンドも市販されていますが、雑誌などで簡易的に対応もできるため、誰でもすぐに実行でき、ディスプレイを高くして首肩の負担を減らすことができる利点があります。

一方で、キーボードを打つ際に、手首の背屈角度(反らす角度)が増すというデメリットもあります。手首の背屈が増すと、腕の甲側の筋肉(前腕伸筋群)の負担が増えることになり、手首や肘の痛みにつながる可能性もあります。

この方法は、外出時やどうしても外付けキーボードやモニターを用意できない場合など、あくまでも短時間の作業時に留めておくことが良いでしょう。

日々ノートパソコンで長時間の作業を行う方は、多少のコストは発生しますが、一回マッサージに行くよりも、肩こりや首こりに対して長期的にプラスにはたらきます。

ぜひ外付けキーボードかモニターをご用意していただけたらと思います。

姿勢の意識

最後は姿勢、座り方のコツです。

重心位置

頑張りすぎず、効率的に姿勢を保つために、重心をどこに置くかが重要です。

猫背で丸まってしまっている時は尾骨や仙骨あたりに体重が乗っていることが多いです。
このような座り方が「良くない姿勢」ということはお分かりだと思います。

問題は「良い姿勢」をとった時にどこに重心があるかです。

試しに良い姿勢をとってみましょう。どこに一番体重が乗っているでしょうか。

おそらくですが、多くの方が「坐骨」というお尻の出っ張っている骨の部分に体重が乗っているのではないでしょうか。

坐骨を示す骨模型

実はこの「坐骨座り」は、キープして姿勢を支えるのに、たくさんの筋力が必要です。
ですから良い姿勢をキープしようとしてもすぐに疲れてしまい維持できないのです。

「坐骨座り」でピッと背すじを伸ばしている姿勢は見た目はキレイですが、とても力を必要としますので、長時間のデスクワークを考えると現実的ではありません。良い姿勢をとりたくても、維持できなかったり、かえってつらいという方はこの「坐骨座り」が原因かもしれません。

ではどうすれば良いかといいますと、重心位置を坐骨よりもさらに前方にします。
坐骨よりも前側、太もものつけねです。


首肩に優しい重心のポジションを意識した座り方は「太もも座り」です。

慣れないうちは少し前傾すぎに感じると思いますが、鏡で横から見ると思いのほか姿勢がまっすぐになっているのが確認できると思います。

ただし「太もも座り」にも欠点があります。
それは、反り腰になりやすいことです。
場合によっては腰に痛みや負担感をご自覚する方もいらっしゃるかもしれません。

その場合は無理に「太もも座り」を維持しようとしないでください。

「首肩こりと腰痛のどちらもある…。」という方の場合は、個別に適切な重心位置を調整する必要がありますので、専門家に診てもらうのがいいでしょう。

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上半身の使い方/ポイントは「胸」

重心位置が整ったら次は上半身を整えていきます。

ポイントは「胸」です。
胸を前上方に突き出すように意識してみましょう。

良い姿勢を取ろうと無理に「肩を引く」のではなく、「胸を突き出す(引き上げる)」ようにすることで、「脊柱起立筋」という姿勢維持に適した筋肉が収縮しやすくなり、長時間の座り姿勢を少ない負担で支えることができます。

良い姿勢と言うと、肩甲骨をグッと後ろに引いた状態をイメージしがちですが、実は努力して肩を後ろに引こうとすると、アウターマッスルである僧帽筋や広背筋がメインで働きます。

僧帽筋は肩こりで硬直しやすい筋肉であることは多くの方がご存知だと思いますが、その僧帽筋自体に負荷をかけてしまいます。

また、広背筋がたくさん収縮することで、肩関節が内側に巻いてしまい、いわゆる「巻き肩」の状態になりやすくなり、さらに僧帽筋に負荷がかかります。

また、肩甲骨は僧帽筋や肩甲挙筋で、首と連結しています。(首からぶら下がっている様な状態)

広背筋は肩甲骨を下に引っ張るはたらきもありますので、過剰に収縮することで、肩甲骨を上から支えている僧帽筋や肩甲挙筋に負荷をかけることになります。

肩関節を動かしたり体幹を支える上で、僧帽筋や広背筋はとても重要な筋肉ですが、そればかりが過剰に働いてしまうと悪影響もあります。

丸まっているのを直そうとして肩をグッと後ろにひこうとすることで、効果が無いだけでなくかえって状況が悪くなってしまう可能性もありますので、注意をしてくださいね。

サポートアイテムの利用

上記2つ「太もも座り」と「胸出し」を意識して座ると、大腿部と背部の筋肉を使えるようになり、首肩への負担軽減につながります。

ですが、この姿勢をキープするにもある程度体幹の筋力が必要であり、最初のうちは短い時間で疲れてしまうかと思います。

そこである道具を使うことで、姿勢のキープがとても楽になります。

正しい姿勢を理想論ではなく、今日から実際に活かしていただくためのとっておきの方法です。

それは、クッションです。ただしその使い方が特殊です。

世の中に、姿勢をサポートするクッションなどのグッズはごまんとありますが、その多くは座面や背もたれに設置するタイプのものです。

肩こりラボが推奨するクッションの使い方は、座面や背もたれに挟むのではなく、クッションを太ももの上に置き、お腹と机で挟み込むように座りましょう。

クッションを前方に設置することで、背もたれ側ではなく、お腹の方に寄りかかることができます。このようにすることで、自然と太もも座りや胸出しを促すことになり、無意識に背中が丸まってしまうのを防ぐことができます。

また、ここで使うクッションは、ソファ用クッションや座布団、あるういはタオルや掛け布団を丸めたものでも代用できます。今現在ご自宅にあるもので代用できますので、新たなものも購入する必要はございません。

市販されている、骨盤が立つように座面をサポートしてくれるシートなどと併せて行っていただいてもよいでしょう。

まとめ

首・肩に負担をかけにくいデスク環境を以下にまとめます。

椅子と机の高さは肘が概ね90°になるように調節する。

※足が浮いてしまう場合は足置き台などを使用。

昇降式のデスクと椅子を使用するのがベスト。

ディスプレイ上端が目と同じ高さ、キーボードはなるべく近くに寄せる。

※ノートパソコンの場合
外付けのディスプレイかキーボードを使用
もしくはキーボードに傾斜をつける

理想の姿勢は重心が太もものつけね、胸を突き出した状態。

※長時間キープが疲れてしまう場合

クッションを太ももの上に置き、机とお腹で挟む

現在使用しているパソコンがノートパソコンの場合は上の図のようにサポートアイテムを使うことで、首や肩の負担を減らすことができます。

家にあるもので代用しやすいので、新たに周辺機器を購入する必要がないのがメリットです。

厚生労働省のガイドラインは学術的知見を踏まえて、適切なデスク環境への措置方法が網羅されています。

本記事も厚生労働省のガイドラインに基づいた内容となっておりますが、中には会社の規定や個人的な事情により、ベストな状況にしたくてもできない方も多いと思います。

そのため、家にあるもので代用できる案も、合わせてご紹介をさせていただきました。

まずは簡単に実践できるものから試してみてはいかがでしょうか。

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執筆者:須藤 大登
Hiroto Sudo

呉竹鍼灸柔整専門学校 柔整科卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
柔道整復師

学生の頃、大きな怪我で部活が出来ない時期がありました。
全治2~3ヶ月と診断を受けた時、リハビリ担当の先生が「大丈夫。しっかり治すために一緒に頑張ろう」と声をかけてくれました。
なんでもない言葉ですが、当時の私にはすごく心強く、前向きになれたことを覚えています。
治療する立場となった現在、かつて私がしてもらったように、少しでも前向きに思えるような治療や言葉を届けられる存在となれるよう日々精進いたします。


肩こりと鎖骨の関係性|鎖骨をつまむだけで肩こりが解消するって本当!?

鎖骨と肩こりの関係性を詳しく解説していきます

鎖骨をつまむと肩こりに効くって聞いたのですが、本当ですか?

はい。結論からいいますと本当です。正確には鎖骨そのものではなく鎖骨周辺をつまんだりマッサージが効果的です。

鎖骨へのアプローチで期待できる効果は2つあります。1つ目は、今のつらい症状を緩和する効果。2つ目は、姿勢を改善して首や肩の負担を減らす効果。とにかくつらいから何とかしてほしい場合の対症療法だけでなく姿勢の改善といった原因療法にも有効ですので首や肩の不調と鎖骨へのアプローチは切っても切れない関係にあります。ですから当院の肩こり治療でも鎖骨へのアプローチは基本的な施術として行っています。

鎖骨は見た目ではなく、その機能性にも注目してほしい!

きっと多くの方が、毎朝・毎晩鏡で自身の鎖骨を目にしているはずです。ですが、鎖骨の見た目を意識することはあっても、意識して動かしている方はほとんどいらっしゃらないと思います。

鎖骨ってどんな骨?

人間の骨の中で唯一水平に位置しています。ゆるいS字カーブをもつ棒状の形をした長骨です。人間が腕を自由に動かせるのは鎖骨のおかげです。四足歩行の動物には鎖骨はありません。人が体を動かす際にとても重要な骨ですが、人体の骨の中でもっとも折れやすい骨でもあります。そんな鎖骨を「肩こり」の面から掘り下げていきます。この記事を読んで、鎖骨を意識して動かしたくなってもらえたら幸いです。

なんで鎖骨をつまむと肩が楽になるの?

鎖骨ほぐしは肩こりへの対症療法としてなぜ効果的なのか?その理由を解剖学に則り解説していきます。

肩こりと鎖骨ほぐしを繋ぐカギは「僧帽筋」

僧帽筋(そうぼうきん、英語: trapezius)は、肩こりにお悩みの方でしたら、きっと一度くらいは耳にしたりテレビ番組でご覧になられたことがあると思います。

僧帽筋とは頭の後ろの頚椎の中央からはじまり、首・肩・背中を広範囲に覆っている筋肉です。

僧帽筋の場所

 

 

※オレンジ色部分が僧帽筋です

この僧帽筋の過緊張や筋膜異常が、肩こりのつらい症状を引き起こしている大きな要因です。

僧帽筋は背中にありますが「鎖骨」と繋がっています

首や肩のつらい症状は背中側です。僧帽筋も背中の上半分近くを覆っている筋肉ですが、なんと鎖骨と繋がっているのです。

僧帽筋と鎖骨

 

 

鎖骨と僧帽筋は繋がっています

鎖骨は脂肪がつくと見えにくくなる、痩せている人は鎖骨が綺麗といったイメージをきっとお持ちだと思います。ですから筋肉のイメージがない方がほとんどでしょう。

実際は上の画像のように僧帽筋とくっついているのです。

つまり鎖骨をつまむと僧帽筋に影響します。

僧帽筋への影響を考えて上手に鎖骨をつまむ・鎖骨周辺をほぐすことで、肩こりの症状に効果がでるのです。これは直接背中側からアプローチするよりも鎖骨からアプローチしたほうが効果的なケースがあり、鎖骨側だけが全てではございません。

もう少し具体的に詳しく説明します。

僧帽筋は、首・肩・背中といった広いエリアを覆う大きな筋肉です。僧帽筋はひとつではなく、解剖学的には上部、中部、下部の3つのパートにわかれていて、それぞれ異なった役割があります。鎖骨と関係が深いのは上部の僧帽筋です。

僧帽筋の場所

 

 

つらいのは上部の僧帽筋

一般的につらい肩こりは首から肩の関節に向かってのラインです。このラインがまさに僧帽筋の上部にあたります。僧帽筋の上部は、後頭部や頚椎の中央部分からはじまり、鎖骨(正確には、鎖骨の外側1/3の後縁)に至ります。

ストレッチでほぐれる理由・ほぐれない理由

僧帽筋と鎖骨の関係を語る上で、なぜ、ストレッチをすると凝りがほぐれるのか?この理由を簡単に知っておく必要があります。

筋肉は骨とくっついています。くっついている箇所を「付着部」といいます。付着部には、筋膜や腱といった組織があり、筋肉と骨を結びつけています。この付着部には刺激を感知する受容体や神経といった様々なセンサーが密に分布しています。みなさんにとってお馴染みのストレッチですがそのセンサーを上手く利用するのがストレッチの本質です。

ストレッチは可動域改善の代表的手法。ひとことでストレッチといっても様々で、反動をつけずにゆっくりと筋肉を引き伸ばす「静的ストレッチ」の場合、付着部付近に存在するゴルジ腱器官というセンサーに刺激を与え、その反射で筋肉の弛みを誘導して可動域を広げます。

おそらく多くの方がストレッチを物理的な手段・自分でできる・誰でもできる簡単な方法と思われているはずです。

本当に効果のあるストレッチ・プロが人に対して行うストレッチというのは、神経系に働きかけて筋緊張をコントロールするのです。

軽いコリでしたら物理的なほぐしで十分ですが、ひどい緊張状態にある強張った筋肉に対しては物理的なほぐしが通用しないことが多いのです。

緊張が生じている部分を物理的にほぐすだけでなく、解剖学的な筋肉の走行と付着部、そして筋肉を支配する神経の機能を意識した対処が必要なのです。

僧帽筋上部の過緊張を解く鍵が鎖骨

僧帽筋上部の過緊張を改善したい場合、ダイレクトに問題の筋繊維や筋膜へのアプローチはもちろん必要ですが、僧帽筋の付着部である鎖骨へのアプローチが効果を発揮します。僧帽筋の付着部は鎖骨だけではありません。後頭部や頚椎の際にもございます。ですので首や頭へのアプローチは普通に行われています。首や頭と同じように鎖骨が大切なのです。

鎖骨をつまむと僧帽筋は緩む・肩こり解消に効果的というのは正確には鎖骨だけではなく後頭部や頚椎の際といった僧帽筋の付着部へのアプローチが肩こり症状に効果的ということなのです。

首こりと鎖骨ほぐしの関連性

肩こりだけでなく首こりに鎖骨ほぐしの効果はあるの?という方もいらっしゃると思います。もちろん効果あります。

実は鎖骨には、僧帽筋以外にも首や肩の凝りに関係のある筋肉が付着します。

胸鎖乳突筋です。きょうさにゅうとつきんと読みます。

胸鎖乳突筋は、首の横から前に走行する筋肉です。名前の由来は、胸骨・鎖骨から側頭骨の乳様突起を結んでいることからです。いわゆるつらい首筋の痛み・凝りは、まさにこの胸鎖乳突筋のトラブルであることが多いです。

僧帽筋と鎖骨

 

 

胸と鎖骨と頭を繋ぐ胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋は、下を向く時、顎を引く時、首をかしげる時、歯を食いしばる時にはたらく筋肉です。猫背で丸まってパソコン作業をしている時や、下を向いてスマホ操作をしている時は、自覚はなくとも胸鎖乳突筋は過緊張状態となってしまっていることが少なくありません。

凝りだけでなく息苦しさや喉の違和感といった症状を引き起こす胸鎖乳突筋の過緊張

一般的な首こりは、首の後面に症状が出ますが、中には首の横や前につらさを自覚される方がいらっしゃいます。このようなタイプの首こりの方は、凝りだけでなく、息苦しさや喉の違和感などを自覚する傾向があり、お悩み度が高い方が多いです。このような一見イレギュラーパターンと思われる首こりの方が当院にはたくさん来院されるのですが、1つ共通点があるのです。胸鎖乳突筋が過緊張状態に陥ってしまっているのです。

首の前をほぐすと後ろが楽になる?

一方、首の後ろに症状がある場合は胸鎖乳突筋が緊張していないかというとそうではありません。首の後ろ側がつらくて、つらい箇所をいくらほぐしても楽にならない時、胸鎖乳突筋をほぐすことで急激に後面の症状が軽減するということは多々あります。

首の前側にある胸鎖乳突筋をほぐすと首の後ろ側が楽になるのです。

これは不思議なことではなく解剖学的には理にかなっています。

後頭部の胸鎖乳突筋の付着部と僧帽筋の付着部は筋膜でつながっているのです。

ですから鎖骨をつまむことで、胸鎖乳突筋をほぐすことになり、結果首こりの症状緩和につながります。

この胸鎖乳突筋は、首の前や横はもちろん、一般的な後ろ側の凝り解消においてもとっても重要なポイントです。

胸鎖乳突筋以外の鎖骨との関連性が高い筋肉

首の横や前には胸鎖乳突筋以外にも、首肩凝りに関与するたくさんの筋肉があります。

たとえば、広頚筋、斜角筋、肩甲挙筋、舌骨下筋群、舌骨上筋群などがあります。

なかでも鎖骨の関連性が高い、広頚筋に着目してみましょう。

広頚筋

 

 

鎖骨と関連性の高い広頚筋

広頚筋は、首の前面の最表層で、名前通り下顎か胸にかけて薄く広がる筋肉です。

多くの方が気にされている猫背ですが、慢性的な猫背状態ですと、この広頚筋が緊張状態になります。広頚筋が緊張状態になると、凝りの症状に加えて、フェイスラインがぼやける、二重アゴにみえる、首の横シワができる、などといった見た目上の問題が生じます。

上の画像のように広頚筋は鎖骨を覆っています。つまり鎖骨をつまむと広頚筋も同時につまむことになります。

鎖骨をつまむことで、広頚筋をほぐすことができますので、首肩こりの改善のための鎖骨へのアプローチは美的な要素の改善にもつながるのです。

鎖骨への意識変わってきましたか?

肩こりに効く鎖骨つまみは一時的なもの?それとも根本的な改善につながる?

対症療法として鎖骨へのアプローチが首や肩のコリに対して効果的であることはご理解いただけたかと思います。

慢性的な首肩こりでお悩みの方は、対症療法だけではどうしようもない状態にあります。対症療法ではなく原因療法として、鎖骨へのアプローチは意味あるのか?という点について解説させてください。

姿勢が悪いのは結果でもあり原因でもある

まず、首こりや肩こりの原因は様々ですが、多くの方に共通しいるのは不良姿勢です。

良い姿勢に絶対的なものはありません。時と場合によって変わります。

首肩こりの観点からの「良い姿勢」の条件は、頭の重みをいかに首や肩の筋肉に負担をかけずに支えることができるかどうか?負担を軽ければ軽いほど良い姿勢です。

ですから、首肩こりを改善・予防における「良い姿勢」とは、「首や肩の筋肉への負担が最小となる姿勢」です。

具体的には、頭が体の重心線上にあって、筋肉をあまり使わなくてもバランスがとれている状態です。猫背がいけないのは、頭が体の重心線上になく頭を支えるために首肩に大きな負担をかけているためです。

姿勢と鎖骨の関係

そんな不良姿勢と鎖骨の関係性をみてみましょう。

上述しましたように、胸鎖乳突筋は、下を向く、顎を引く、首をかしげる、歯を食いしばるなどの動きに関与します。日常生活で何気なく行っている首や顎の動きと密接な関係があります。そのため日々の動作のなかで、胸鎖乳突筋は負担を受けやすいのです。

胸鎖乳突筋が緊張してしまうと頭を前に傾けてしまいます。横からみて頭が前方へ突き出た姿勢です。頭が前方にあると、僧帽筋をはじめとした首や肩の後面にある筋肉が、頭を支えるために頑張らなければなりません。この状態が続くことで、首や肩の筋肉に凝りが生じます。このような流れから、胸鎖乳突筋の過緊張は凝りを招く元ともいえます。

胸鎖乳突筋をほぐすことによって頭の位置が改善すれば、首や肩にかかる負担そのものが減少しますので、鎖骨つまみは原因療法としての意義もあるのです。

鎖骨を語る上でどうしても外せない肩甲骨

もう一つ、鎖骨を語る上でどうしても外せないのが、肩甲骨との関連性です。肩甲骨は背中にある左右一対の骨ですが、この肩甲骨、骨格という観点でみると、胴体部分と鎖骨のみで連結しています。

僧帽筋と鎖骨

 

 

緑色部分が肩甲骨です。肩関節付近で鎖骨と連結しています。

肩甲骨と上腕骨(腕の骨)の連結部分が肩関節ですので、鎖骨は「上肢と体幹を結びつける唯一の骨」なのです。

その鎖骨ですが、上肢を動かす「機能」として重要なはたらきを担っています。鎖骨は、胴体と肩甲骨を連結させているパーツなので、鎖骨の両端は、胴体と鎖骨の間、鎖骨と肩甲骨の間で関節になっています。

胴体と鎖骨の連結部分を胸鎖関節(胸骨と鎖骨の連結)、鎖骨と肩甲骨の連結部分を肩鎖関節といいます。

実は、胸鎖関節と肩鎖関節の二つの関節の動きの和が、肩甲骨の動きとなるのです。

上肢の動き、つまり肩や肘の動きには肩甲骨の動きが密接に関わります。

たとえば肩関節ですと、天井に向かって真上にバンザイ(180°挙上)をした時、厳密には動作方向によって若干異なりますが、総じて180°の1/3となる約60°は肩甲骨による動きであるのが正常とされています。肩甲骨がきちんと動かない状態ですと、他の関節に負担がいき、それが繰り返されることで炎症や痛みにつながってしまいます。

肩甲骨をきちんと動かせるようにするために鎖骨を意識してほしい

肩甲骨の動きを改善する手段として代表的なのは肩甲骨はがしです。

ご存知、肩甲骨はがしは、肩甲骨に付着する筋肉をほぐすのに効果的です。剥がすのではなく「ほぐす」のです。剥がれたら大変です。肩甲骨はがしで肩甲骨の動きは改善できますが、鎖骨にもアプローチすることでさらなる改善を目指すことができます。

鎖骨がきちんと動くということは、胸鎖関節と肩鎖関節が正しく機能している証拠です。つまり肩甲骨は正常に動きます。筋肉をほぐしても、実際に動く関節部分が動かなければ、肩甲骨はスムーズに動きません。肩甲骨の動きを改善するためには鎖骨の動きも改善することが大切です。

肩甲骨は体の後ろ側、鎖骨は前側にありますので、まさか肩甲骨の動きを改善するために鎖骨が重要とは思いませんよね。女性でしたらデコルテをキレイにみせるために鎖骨を意識されている方は多いかもしれませんが、日頃、ほとんどの方は「鎖骨の動き」を意識されていないと思います。

これからはぜひ、鎖骨・鎖骨の動きを意識してください。

肩関節の痛みや可動域制限がある方は肩甲骨の動きを改善することが大切です。その肩甲骨の動き改善のために、鎖骨にも着目してみましょう。肩関節に不調がなくても、肩甲骨の動きがぎこちないなと感じた場合、鎖骨を意識して対処するのがオススメです。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


東京理科大学オープンカレッジにて講義を行いました

2018年6月3日(日)に「ひとりで出来る肩こり改善方法」と題して講義を行いました。

東京理科大学オープンカレッジは、東京理科大学が、生涯現役であり続けたい方、社会人として豊かな教養を身に付けたい方、ビジネスパーソンとして見識を深めたい方をはじめとした一般の方向けの「社会人教育・リカレント教育」の場として開講しています。

 

iPad用の解剖学アプリの画面をプロジェクタースクリーンに投影しつつ、肩周辺の筋肉はどうなっているのか?肩こりの仕組みについて解説。

 

今回の受講者全員でセルフケアを実際に行っていただきました。多くの方に効果を実感していただけたようです。ぜひ今後ご家庭で行っていただけたら幸いです。

 

一般的な方法ではどうにもならない場合でも、お試しいただきたいタオルを使ったストレッチも紹介しました。

 

受講者の方から積極的な質問も多く、講義する側としてはとても助けられました。そして大変参考になりました。

ネットだけの情報発信だけではダメ

当院はネット上でのみ情報の発信を行っております。

雑誌やテレビ・他のWebメディアからの取材依頼には出来る限り応えてはいますが、いわゆる宣伝・有料広告は行っておりません。

今回、はじめて一般の方向けの講義を行い、情報化社会がゆえの迷い・悩みの増加を実感しました。

今後も一般向けのこのような場を増やしていかなければいけない、積極的に治療院の外でも「治療」につながる活動をしなければいけない、そう強く思いました。

肩こりの概念を再定義する

これは、大げさかもしれませんが世の中の常識を変えるということです。

実現に向けて、一人でも多くの患者さんを治す、という治療現場と並行して、活動の場を広げていきたいと思います。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりが○○の原因?○○が肩こりの原因?

当ページをご覧の方は、肩こり首こりで心底お悩みの方が多いと思いますが、肩こり“ぐらい”で・・・なんて思ってしまっているであろう多くの方が勘違いしている肩こり情報を、いくつかに分けてQ&A形式で紹介していきます。

肩こりの仕組み編

 
 

顔のむくみも肩こりが原因説

顔のむくみを肩こりが引き起こしてしまうことはあります。

肩こりは首や頭、そして“顔こり”にも直結します。デスクワークやスマホを見ながらの下向きの姿勢は自然と歯を噛みしめるので顔がこり、血の巡りもわるくなってむくみだけでなく、くまやくすみの原因にもなります。ちなみに首の横ジワも肩こりからくる広頚筋の寄りジワです。

顔こりで悩む人は意外と多い

一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、慢性的な肩こりにお悩みの方は首や肩の凝りだけでなく「顔こり」「頭こり」「胸こり」「脇こり」などにお悩みの方もいらっしゃいます。

実際当院にはそのような患者さんが多数ご来院しています。みなさんもご存知のとおり、体は全部つながっています。解剖学的にいえば体は筋膜によって全身がひとつながりになっているのです。ですので一見離れているように思える箇所も実は関連性があるというのはごく自然なことなのです。

頭痛が原因で肩がこる

肩こりから頭痛になることは実際多いので、どちらとも言えませんが、偏頭痛から肩こりになるケースは確かに多いです。緊張性頭痛の症状として感じる人もいます。

慢性的な肩こりが、頭痛や吐き気を招くことも珍しくありません。肩こりは複合的な要因によって発症する不調症状のひとつです。自己判断や軽視せずに治療を受けましょう。

痛みにはペインスパズムサイクルという考え方があります。

ペインスパズムサイクルの説明図

慢性化する痛みは、このような負のスパイラルに陥っているケースがあります。この図にありますように、痛みから筋緊張、凝りへとつながってしまうことは実際にあります。

注意していただきたいのは、痛みというは体から異常事態を知らせるサインだということ。特に頭痛には重大な病気が隠れている可能性があります。いまはロキソニンをはじめ病院へいかなくても第1種の薬が手軽に購入できるようになりましたが、頭痛でお悩みの際はできるだけ医療機関を受診してください。

寒い時期ほどこりやすい説

寒いと前かがみになり肩をすくめがちなので、力が入りやすくなるのは確かです。

ですが、寒さに限りません。季節の変わり目である春や秋、梅雨入りも肩こりシーズンです。自律神経の乱れからくる肩こりもありますから、気圧に変動によって影響を受けやすい時期=こりやすい時期といえます。

夏は薄着で首肩が無防備な状態ですが、そこにエアコンの冷たい風があたり冷えて筋肉が硬直してしまうということがあります。また、患者さんから電車やショッピングモールのエアコンが強くて凍えてしまうという声をしばしば耳にします。夏は外にいたら熱中症、室内では寒すぎてしまうという温度調整の難しさがあり、そこから不調につながってしまいがちです。環境温度の寒暖差が大きいと自律神経の乱れも生じやすくなってしまいます。空調機能が発達した現代ならではともいえるでしょう。

人体は環境の変化に影響を受けやすいのです。気温だけでなく、気圧や湿度の「変化」に体は反応します。日本には四季もあり、外部環境に変化が生じやすいため、こういった観点からも私たち日本人に肩こりが多いのでしょう。

ストレスがたまると肩こりもひどくなる説

「病は気から」といわれるように、カラダに悪影響を及ぼすストレスが肩こりの原因になっているケースは多いです。

ストレスが高いと体は緊張状態になり、常に歯を食いしばるため、首や肩に大きな負担がかかります。ですので気持ちのリフレッシュはとても大切です。

肩こりの原因は3つありますが、それらは独立していない

肩こりの原因として肉体・自律神経・精神の3つがあります。これら3つはそれぞれが独立したものではなく、相互に関連し、影響しあっています。ストレスと肩こりを考えるうえで重要なのが自律神経です。

肉体の状況を絶えず監視して脳に連絡する自律神経は、体の恒常性維持機能としても働いています。肉体的な管理だけでなく、精神の状態を肉体に反映させる働きもあります。ですので、自律神経は肉体と精神を結び付けるはたらきがあるとも考えることができます。健全なる精神は健全なる身体に宿る、心身相関という言葉があるように、肉体の不調が精神の不調につながることはありますし、その逆もあります。

肩こりなんて気のせいであるという説

ストレスが元になっている肩こりは実際にあります。それ故「肩こりは気のせい」といわれることはあります。すべての肩こりが気のせいであるとは絶対に言えません。

精神と肉体はつながっていますから、はじめは精神の不調だったのが肉体の不調に波及してしまうということは多々あるわけです。

例えば、ストレスが元による胃潰瘍。これは精神的不調が肉体の不調として顕在化してしまう例です。

ストレス→胃酸分泌過多(攻撃因子増)・粘膜保護成分分泌低下(防御因子減)→胃粘膜損傷→潰瘍形成・・・という流れです。

さすがに胃潰瘍を「気のせい」とする人はいないでしょう。

胃潰瘍は胃粘膜の形状変化が目視で確認できるためわかりやすいのですが、肩こりはそのような確認が困難です。ですから「気のせい」と片付けられやすいのです。

肩こりは、姿勢や筋バランスといったフィジカル面の問題だけでなく、ストレス元となって生じることは少なくありません。肩こりを解消・予防するためには、ストレッチや体操といった肉体面への対処だけでなく、ストレスへの対処をすることも重要です。現代社会において、ストレスを完全に無くすということは不可能です。ですので、ストレスをため込まないための工夫やリフレッシュ方法の体得も併せて意識するようにしましょう。

肩こりは血行不良が原因?

血行不良による肩こりもありますが、最新の医学では、それだけではないことが分かってきました。血行不良を改善すれば治る説はもはや過去の話。常識が変わりつつあります。

これまでは肩こりの病態は血行不良、つまり形態的変化がないのもとされてきていましたが、近年では肩こりの部位に筋膜の形態的異常や異常な毛細血管の増殖が生じてしまっていることがわかってきています。

筋膜の形態的異常はレントゲンや一般的なMRIでは可視化できず、精度の高いエコーや特殊なMRIでないと観察できません。異常な毛細血管は血管造影という整形外科的には一般的用いられない手法によって可視化することができます。血行さえよくすれば肩こりは治るという考えはもう通用しないのです。肩こりを「気のせい」という精神的なものだけでは片づけられないように、肩こりには人によって異なるとはいえ明確な原因があります。それがハッキリすれば治るのです。

 

 

「外人は肩こり知らず?」「肩こりで死んでしまうことがあるって本当?」「肩こりは働き盛りの人特有?」「親が肩こりだから自分も肩こり?遺伝なの?」といった肩こりにまつわる噂や説についてのQ&Aを以下にまとめました。

肩こりのウソ!?ホント??

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


katakori LABS Study Session 2017.08.03

鍼灸師の皆さまへ

現在、日本には約17万人の鍼灸師がいます。

「肩こりは治ります」

17万人の中で、こう言い切れるセラピストはどれくらいいるでしょう。

肩こりを治すということ、それは凝りをほぐして一時的な症状の緩和をすることではなく、治療を必要としない体にかえることです。

もちろん凝りをほぐすということは大切なことですし、気持ちの良いマッサージも必要です。

ですが、肩こりを治したいと願う患者さんに対しては、それだけでは応えられないという現状が実際のところあるのではないかと思います。

治したいという気持ちを強くお持ちのセラピストの方と当院が培ってきた技術・見解・未来を共有できれば幸いです。

Study Sessionプログラム

学校では教えてくれない肩こりを改善する方法

  • 肩こりの定義
  • 肩こりの原因
  • 肩こりの病態生理学
  • 肩こりの評価法
  • 肩こりを改善する方法(施術プラン・治療方法・セルフケア)
  • 肩こりラボの施術技術紹介(IDマッサージ・3D鍼・運動療法)

全て現代医学に則った内容となります。東洋医学的な内容はございません。

内容は若干変更となる場合がございます。

 

学校では、凝りのほぐし方は教えてくれても治し方は教えてくれません。

鍼をうつ、灸をすえる、揉みほぐすという従来の鍼灸・マッサージだけでは、一時的な緩和はできても慢性的な肩こりを治すことは極めて困難です。もちろん運動療法のみでも困難です。

では、何をすればよいのか?

肩こりの根本治療において肝心なことは、何をするか?ではありません。

患者さん個々によって異なる原因を見極めること。これが最も大切なことです。原因を見極めた上で、一貫した方向性をもって鍼灸・マッサージと運動療法を組み合わせることができれば根本治療は可能です。

根本治療の第一歩は、まず患者さんの「病態の把握(見立て)」、そして「施術プラン(内容や頻度)」です。これを実践するための大前提として、そもそも肩こりとはどういった状態なのか(定義)、そして肩こり発症のメカニズム(原因)を身につけている必要があります。

近年の研究により、慢性的な肩こりは単なる筋疲労や血行障害ではないということもわかってきています。第1回となる今回は肩こり治療の土台となる部分を解説します。受講後は「肩こり」がこれまでとは違ったものにみえてくるでしょう。

理論の元、然るべきアプローチをすれば、肩こりを治すことは誰にでも可能なことです。

多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。

次回は、2018年11月中の開催を予定しております。

katakori LABS study session 2018

 
 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

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VOGUE JAPAN 2017年7月号にて肩・首を楽にする、姿勢&ストレッチを紹介

デジタルと美容の危険な関係。

VOGUE JAPAN 2017年7月号に掲載

VOGUE JAPAN 2017年7月号の記事「Dangerous Liaisons デジタルと美容の危険な関係。」にて、デジタルストレスによるトラブル・不調の回避方法をSkin,Eye Care,Posture,Mentalの4つのテーマにわけて紹介しています。この4つの中の1つPosture(姿勢)にて肩こりラボで行なっている肩・首を楽にする姿勢とストレッチが紹介されました。

 

大切なのは使い方・距離の取り方

スマートフォン・タブレット・パソコンが仕事だけでなく生活に深く関わっている現代社会。身体・健康への悪影響が懸念されていますが、実際に体調不良の症状が表れている方は増加の一途をたどっています。たとえば多くの女性が悩む肩こり。男性ですとデスクワーク中心の方が多いのですが、今では子供から10代の学生が首や肩の不調を訴えることは珍しくありません。「まだ子供なのに肩こりなんて・・・」と思われる方がほとんどですが、これは深刻な問題です。年齢だからとされてきたものがそうではなくなってきています。

体を動かすこと・スポーツへの関心が高まっているのは自然の流れでしょう。そしてデジタル機器を生産する側もそのように誘導しています。Iot(Internet of Things: モノのインターネット)という単語もよく目にするようになり、体重計を筆頭にヘルスケア関係のデジタル製品も増えました。スマートフォンにはヘルスケアに関するアプリが最初から入っています。歩いた距離だけでなく運動量や脈拍、睡眠を測定するスマートウォッチも増えてきています。

デジタル機器で体調悪くなったから、逆にデジタル機器で体調をよくする!前に、まずデジタル機器との向き合い方を見直す必要があります。

デジタル機器に合わせるのではなく、あくまで利用しているんだという意識が大切です。

セルフケアやリラクセーションで改善する場合はよいのですが、何をしてもうまくいかない・徐々に悪化していると感じたら治療が必要です。早ければ早いほど治療はスムーズにすすみます。心当たりある方は是非お近くの医療機関・治療院にご相談ください。もちろん当院でも治療できますのでご相談いただければ幸いです。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

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産経新聞に「スマホ巻き肩」の記事が掲載されました。

産経新聞にkatakori LABSが取材を受けた記事が紹介されましたSANKEI DIGITAL INC.

あなたも危ない「スマホ巻き肩」って?

猫背に代表される姿勢の悪さ、気にしていませんか?

スマートフォンの普及で、ついつい背中を丸めてスマホの画面に長時間集中してしまうことが多くなりました。老若男女問わず、首・肩への負担が増しています。

単に首や肩がこる人が増えた・・・ときくと大きな問題には思えないかもしれませんが、事態は結構深刻です。

首は身体と脳をつなぐ重要な部位で、神経が密集しています。

身体の不調だけでなく精神的な不調にも影響します。

街のいたるところに、リラクセーションのお店・整骨院があるのは、時代を反映しているといえます。

スマートフォンの身体に与える影響について産経新聞から受けた取材が記事として掲載されましたので、ご興味ある方はご覧ください。

産経ニュース

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

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厚生労働省認定 臨床実習指導者
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VOGUE JAPAN 7月号にご紹介いただきました。

VOGUE
vogue-201507

女性のお体の悩みNo.1は「肩こり」です。

女性の大半は、肩がこっているという自覚がおありだと思います。

働く女性の場合、デスクワークの方は特に顕著でしょう。

ヴォーグ・ジャパンの7月号の特別付録は「働く女の磨き方」という特集です。

当院はあくまで治療院。肩こり・首こり・腰痛といった症状の根治を患者さんとともに目指す場所です。女磨きという言葉の面でいいますと、姿勢や歩き方の面ではお力になれると思います。何よりも、悩みを抱えていては輝くものも鈍ってしまいます。その悩みの1つを解消を全力でサポートいたします。

当院では施術者から患者さんへの一方的な治療・指導ではなく、個々の患者さんのおかれている状況やお考えを最大限尊重し共に治していこう!というスタンスです。

当院は、雑誌への有料広告・有料の掲載依頼は一切行っておりません。

肩こりラボでは、施術者が患者さんお一人お一人へ寄り添い親身な対応を心がけています。その結果、患者さんが「大切な人には紹介したい」、そう思っていただけることを目指しています。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
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上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
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肩こりの概念を再定義する

「肩こりがひどいの?だったら早く治療受けたら?」このような会話が日常になる日のために

こんにちは。肩こりラボの丸山太地です。

私は、一般の方からアスリートや歌手といったプロフェッショナルの方まで、コリや体のバランスで悩みを抱える方を一人でも多く救うべく日々治療に励んでいます。

治すことはもちろんなのですが、とにかく“苦痛満ちた患者さんに笑顔になっていただく”ことを目的とし、できるかぎり治療の頻度・効率をよくする、患者さんご自身の治療に対するモチベーションが上がるよう、治療の本質を追求し続ける鍼灸・マッサージ院、それが肩こりラボです。

世にはこれだけ治療院が存在するなかで、国内では肩こりで約1,200万人、腰痛で約2,000万人もの方が苦しんでいます。(厚生労働省調べ) その他の慢性的な「痛み」「つらい症状」を含めるとその数は計り知れません。 この理由は次のようなことが考えられます。

整形外科にて骨に異常が無いと診断された場合、多くは痛み止めと湿布という処置で様子をみることとなり、改善しない場合は治療院や整体などといった施術所へ足を運ぶこととなります。 そこでは、原因は「骨のゆがみ」や「骨盤のずれ」であり、整形外科で骨に異常が無いと言われたのにも関わらず、再び骨の問題を指摘され、処置としてはつらい部分を刺激して一時の快楽を与え、結局はすぐ元に戻り、これを繰り返すといったサイクルとなります。

やがて刺激にも慣れ、どんどん慢性化してしまいますがが、つらいことには変わりなく、対症療法を続けざるを得ない(依存)状態となってしまいます。つまり、今までの治療は「患者さんの状態分析(評価)」「原因の追究」が不十分であり、処置は「その時気持ちが良くて楽になれば良い」「直後に楽になれば良い」という対症療法のみであり、根本治療に至らなかったからです。

当院は、あくまでも「根本治療」にこだわり、頻繁に通っていただくためではなく、あくまで「治す」ため、 心底お悩みの方を「痛み」「つらい状態」から解放するためだけに開設されました。

業界の現状として

  1. 施術内容(技術・知識)がリラクセーションや整体と大差がなくなってしまっている
  2. ビジネス上患者さんを多く施術した方が良いため「治すこと」ではなく「通ってもらうこと」が第一優先とされてしまっている
  3. 養成学校の乱立により、有資格者の知識技術レベルが著しく低下している
  4. セラピスト同士で協力することができず、仲間同士で足の引っ張り合いをしてしまっている
  5. 多くの例では「〇〇と言われている」「東洋医学的には・・・」「自らの経験的に・・・」といった不確かなことを拠り所とし、医学的根拠に基づく治療が行われていない

これでは絶対に患者さんは救えません。治すこともできません。

何よりも、医療とはチームプレーであり、セラピスト独りよがりではなく、医師を中心に医療従事者やトレーナーなどが密に連絡をとり、またセラピスト同士の情報共有とディスカッションによりそれぞれの長所を最大限発揮して一人の患者さんを包括的にサポートしていくことが大切だと考えております。このチームプレーが、従来、点と点でしかなかった治療(ケア)が線となり、慢性化して生活に支障が出てしまうほど苦しんでいらっしゃる患者さんのお力へとなるのではないかと信じています。肩こりラボでの治療は根本治療であり、チームプレーに重きをおいております。

 

 

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執筆者:丸山 太地
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病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
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首ポキは肩こり解消になるの?ネットやテレビで喧伝される説への疑問にお答えします。

 

当院にいらっしゃる患者さんから受ける質問で、もっとも多いのが首の関節をボキボキと鳴らす「首ポキ」についての質問です。テレビ、雑誌、インターネット上で「首ポキは危険」と話題になりました。首をよく鳴らす人は脳卒中になりやすい、脳梗塞の危険性がある、という話も耳にしたことがある方も少なくないと思います。

首ポキって危ないの?

そのウワサの真相を肩こり、首こり治療の専門家として責任をもって解説します。

 

首ポキに関する疑問・・・関節が鳴る仕組みについて

よく首をボキボキと鳴らすのですが、これは良くないことでしょうか?

首をポキポキ鳴らすことは、肩こり・首こりのセラピストとしては、良いことではない、とハッキリ申し上げます。

そもそも、関節が鳴るのは何故でしょうか? 関節の鳴る仕組みを教えてください。

関節が鳴る音の正体は気泡がはじける音です。わかりやすくいうと、関節の隙間に溜まった空気が弾ける音です。専門用語でキャビテーションといいます。実は、この関節の音の正体ですが、2015年になって初めて確認されました。関節の音が鳴る仕組みが映像として記録されたのです。

Pull my finger: Why joints crack

骨と骨が擦れたりして鳴っているわけではないということでしょうか?

関節がポキッと鳴るのは骨と骨の摩擦によって音が出るのではありません。骨と骨の間には隙間があります。その隙間は、滑液という液体で満たされているのです。ですので、関節は様々な動きが可能になります。潤滑油みたいなものですね。関節液とも言います。

液体が入っているとは驚きました。でも、ポキっていう音は空気が弾ける音なんですよね?

はい。液体なのですが、その中に溶けている空気があります。その空気が液体の中から気泡となって出てくるのです。

どうして、気泡が出てくるのでしょうか?すごく不思議です。

例えば、手の指の関節を鳴らす時、普段動かしている方向と逆に反るようにしていると思います。筋を伸ばすような感じです。そうすると、骨と骨の隙間が大きくなります。つまり関節内の容積が増えるのです。すると、液体の圧力、水でいうところの水圧、が低くなります。すると、液体の中に溶けていた空気が、溶けていられなくなります。気泡となって外に出ようとするのです。

ちょっと難しくて、よくわかりません。もう少し詳しく解説をお願いします。

身近な例をあげます。たとえばコーラなどの炭酸飲料。炭酸水でしたら、水に二酸化炭素を溶かしたものですが、むりやり溶かしています。この無理矢理というのは、圧力をかけるという意味です。その圧力を維持するために、密閉された状態で販売されています。

栓や蓋をあけると、どんどん炭酸が抜けていきます。コップに注ぐと泡がでていきます。

そうですね。それは、先ほどの関節内の液体の中の空気と同じことなのです。パッケージされた炭酸水の中の圧力は高いですが、開栓してしまうと、外の空気圧と同じになります。つまり圧力が下がってしまいます。高い圧力だから溶けていたものですから、溶けきれなくなり、外に出ていきます。それが気泡です。

関節の中の圧力が変わることで、溶けていた空気が出たり入ったりするということですか?

そのとおりです。ただ、一度出てしまったものが再び溶けるのには時間がかかります。ですので、一度鳴らした関節は、しばらくの間は音がなりません。

首ポキに関する間違った情報について

なんとか理解できました。ところで、首の関節を鳴らすと1トンの圧力がかかるのですか?

1トンというのは質量の単位です。圧力というのは、面を押す力です。面積あたりの大きさですので、1平方メートルあたりの大きさが通常用いられます。時速だったら、〇〇km/時と1時間あたりの速度で表現しますよね。トンという単位も用いないのですが、単純に速度でいうところの「/時」に当たる部分が抜け落ちていますし。つまり1トンの圧力という言葉そのものが間違いです。

1トンという数値は、何を表しているのでしょうか?あまりにも大きいと思います。

恐らく、不安を煽るために大きく見せた広告的な表現、もしくは、根本的に理解していないかのどちらかです。圧力というのは、たいていは1平方メートルあたりの数値です。1トンは1000kgです。1平方メートルというのは、100cm x 100cmですので、10,000平方センチメートルです。首の面積的には1平方センチメートルで考えると、0.1キログラム、つまり100グラムです。

たったの100gなんですか。別に大した大きさではないですよね・・・

それが、恐らく1トンの圧力という表現の正体です。この数字とセットで、半身不随になるとか、危険だという噂が広まったわけです。

首ポキの危険性を誇張してるわけですね。騙されたような気持ちで、腹立たしいです。デマということですよね。

この話は、テレビやネット上で広まったようですね。「関節をポキッと鳴らしているとき、骨には1トンもの圧力がかかっているんですよ」と整骨院の先生が話したことが原因です。この先生が本当にそう言われたのか、それを文字にしたマスコミの人が理解していなかったためなのかは定かではありません。私は、鍼灸師・あんま指圧マッサージ師ですが、一般的には、整体、整骨、マッサージは同じように捉えられています。この話を聞いた人の中には、「これだから、整骨やマッサージは信用できない」と思う人も少なくないと思います。残念なことです。

ただ、首をならす癖をやめさせたいという強い信念があって、敢えて誇張した表現を広めようとした可能性もあります・・・が、多分違うと思います。

首ポキは危険である、これは否定できません。

首の関節を鳴らすと脳卒中になったり、半身麻痺、最悪死んでしまうといった可能性は実際問題、あるのですか?

首は非常にデリケートな部分であるため、1回ポキっと鳴らしても大きなダメージとはならずとも、空気の破裂で少なからず刺激はされます。例えわずかな衝撃であったとしても、血管や神経などデリケートな組織に微細な損傷がおこることは十分に考えられます。

特に、頚椎の中を貫く椎骨動脈・椎骨静脈は関節の近くにあるので、衝撃を受けやすい部分です。その血管内部が傷つくとその場所が変性し動脈硬化や血栓などになりやすくなり、血栓が血流にのって流れていくと脳梗塞・肺梗塞・心筋梗塞などの重篤な疾患を招く可能性はないとは言えません。

整体やカイロが街中に氾濫しているが故に間違った認識が蔓延

整体やカイロプラクティックでよく骨をボキッとされますがあれはどうなのでしょうか?

整体やカイロプラクティックの先生にうかがうと、背骨のゆがみが様々な病の原因となり、特に頚椎は重要とのことです。そのゆがみをボキっとすることで元に戻すそうなのですが、これには多々疑問が残ります。

その疑問点について、詳しく教えてください。何回通っても結局治らなくて。

整体における頚椎の歪みを直すことについての疑問点は4つあります。

  1. レントゲンを使わない・使えない

    骨の問題を診るのにレントゲンを使わない点です。使うこと自体できません。レントゲンを使用して骨の問題を診断・処置できるのは整形外科医のみです。

  2. あらゆることを根拠なく歪みで説明する

    筋・骨格系の問題だけでなく様々な内臓病や癌までも背骨のゆがみが原因と理由づけしてしまう点は大問題です。医学的根拠があるならばよいのですがございません。

  3. 骨は動くもの。支えているのは筋肉・筋膜

    骨はあくまで筋肉の作用を受けて動く受動的なものなので、ボキっと外から力を加えて仮に正しい位置に戻ったとしても、筋肉の問題・または身体動作を改善しなければすぐに元通りとなってしまうということ。

  4. そもそも“歪み”は医学用語ではない

    “ゆがみ”とは医学用語ではありません。定義があやふやであるということ。

整体やカイロプラクティックの理論では“左右対称”“左右均等”が良いとされますが、人間は本来内臓の配置自体が左右非対称(右には肝臓、左には心臓や胃や膵臓など)ですし、利き手・利き足・効き目・効き顎もあるので対象となることは不可能です。それを目指すこと自体が終わりがなく机上の空論ではないでしょうか。

自分で鳴らすのはよくないけど、整体やカイロで鳴らすのはよいという主張もあります。

頚椎は7つあるのですが、整体やカイロでは、その7つのうちの〇番目だけを任意に鳴らすことができるそうです。しかし、誰もそれを確かめることができません。

肩こりラボで治療を受けている患者さんで、整体での骨格矯正を受けたものの、具体的な内容はわからない、症状がよくなるどころか逆につらくなった、という方が本当に多いのです。

歪みを直す=骨ボキ、というのは、施術する側が勝手に押し付けているだけだと常々感じています。

整体やカイロプラクティックで肩こりが治る可能性について

100%治らないと断言は出来ません。治る方もいらっしゃるとは思いますが、極めて稀だと思います。実際、当院に初めて来られる患者さんから、いつまでたっても治らない、整体などに通う頻度だけ増える、なんとかしてほしい、というご相談を非常に多く受けます。

カイロプラクティックや整体で行う首をゴキっとならす施術は、脱力した状態で頚椎を急激に伸ばしたり、曲げることは脊髄損傷など重篤な神経障害を引き起こす可能性がないとはいえませんし、何より椎骨動脈解離を起こす危険性があります。これは脳梗塞やくも膜下出血の原因となる可能性が極めて高いので、首を鳴らす施術は絶対に受けないでください。

事実、厚生労働省によって禁止するようにと20年以上前から通達されています。

これまでのお話から、首ポキはやらないほうがいいということですね?

現在ネットに書かれている内容は非科学的で信憑性がありません。実際のところ、自ら行う1回の骨ポキで生命につながる問題となる可能性は極めて低いです。しかし繰り返す事は確実に良いことではなく、塵も積もれば山となるで、小さな刺激が積み重なることによって後々重大は疾患につながってしまう可能性があります。

首ポキの危険性については、イギリスのブルネル大学(Brunel University)のリハビリテーション研究室の報告によっても椎骨動脈解離や脳血管障害をはじめ重篤な神経疾患への可能性が示唆されています。

また、首をボキっとする施術の危険性は、カイロプラクティックや整体などで首ボキ施術を受けても10万人に1人くらいしか起こらない、と言われています。しかし「45才未満で脳卒中を起こした人は一週間以内にカイロプラクティックで首ボキをやっていた人がやっていなかった人と比べて5倍多かった」というデータがアメリカ心臓病学会の2001年に出された報告にて示唆されています。実際はもっと多いと思います。

日本ではカイロプラクティックは無認可の民間療法です。それって違法では?と思われると思いますが、そもそも法律が存在しません。つまり誰でもカイロプラクターと自称できてしまいます。このようなグレーゾーンな状況である以上、首ポキの施術を受けるということは、素人が関節を鳴らしているだけ、という可能性もないとは言い切れません。

もちろん、ご自身で首の関節を鳴らすことも、極力避けていただきたいですね。

首ポキの癖を直すために必要なこと

首ポキやめたいです。でも、ついつい首を鳴らしてしまう癖は直りますか?

癖で行うのは、何かしらの症状があるためです。例えば「常に気になってムズムズしてしまう」「首を捻じったり 動かさないと いてもたってもいられない」「無意識のうちにいじっていたり 鳴らしてしまう」「発作的に急激につらくなる」「睡眠が充実していなく、朝一が一番つらい」といった事に心当たりはないでしょうか?もしこれらに該当するようでしたら、それは肩こり・首こりの負のスパイラルにはまってしまっているサインです。大げさに聞こえるかもしれませんが、首の関節を鳴らす癖があるということは、今後酷くなっていく前兆ともいえます。放置していては、絶対に治ることはありませんし、首ポキはもちろん、肩もみなどの簡単な施術による“ほぐし”程度ではすぐに元通りとなります。

つらくて我慢できない時に簡易的な施術を受ければ楽にはなるでしょう。それしか方法がない場合はもちろん仕方ありません。

しかし、楽になるのはその時のみの短期間であって、すぐに元に戻ってしまい、つらくなる度に施術を受けるという繰り返しになります。

しかも、施術の刺激に慣れていってしまうので、徐々に悪化していきます。施術を受ける間隔も短くなり、より強い施術を求めるようになります。完全に悪循環になります。得するのは簡易的な施術を提供する側ということです。

この状態を変えるには「治療」が必要なのです。

つまり、首ポキの癖を直すには、原因そのものを治す治療が必要ということですね。

そのとおりです。治療をすれば、癖は出なくなります。肩こり・首こりは直近で生活や生命に支障がでるわけではありません。しかし放置や適切な処置を行わないことに確実に進行・悪化していきます。首や肩のこりは、頭痛や目眩、倦怠感をはじめとする様々な体の不調の要因になりますし、最悪のケースとして、例えば脳梗塞といった重病の引き金になる可能性も否定はできません。

脳梗塞といえばアナウンサーの大橋未歩さんが若年性脳梗塞になったことは衝撃でした。

脳梗塞といえば高齢の方がかかるというイメージがどうしてもあります。しかし、若い方で脳梗塞にかかるケースは少ないとはいえ近年急増しています。特に脳動脈解離・椎骨動脈解離による脳梗塞です。大橋さんが患った若年性脳梗塞が首ポキが原因だったかどうかはわかりません。しかし、首こりや肩こりが脳梗塞に繋がる何かしらの原因であった可能性は高いと思います。

デスクワークでお忙しい方はもちろんのこと、スマートフォンの普及で「スマホ症候群」と呼ばれる首や肩への負荷による痛みや凝りも問題になっています。ストレートネックという言葉も普及していますね。若い方も首ポキをしてしまう人が多いようです。

現代の生活環境の利便性と体の健康はトレードオフ

スマホを長時間見ていると首が痛くなります。まさに「スマホ症候群」ですね。

スマートフォンやタブレット、ノートパソコンを使用する場合、うつむいて操作をしてしまう方が多いです。すると、首の骨が本来持っているゆるやかなカーブが、伸びて真っすぐになります。これが、ストレートネックです。首をまっすぐにした状態が長時間続くと凝ります。誰でも凝ります。特に女性は、男性に比べて首が細く筋肉が少ないので、負荷を受けやすいのです。

ですから、楽になろうと首を回したり、左右に振ってみたり、関節を鳴らしてみるわけですが・・・猫背って楽な姿勢だからついついとってしまう人は多いですよね。でも、猫背は良くない、姿勢が悪くなる、という認識は多分多くの方がお持ちだと思います。

他にも例えば、ふかふかのソファーに座ると楽で気持ちよくても、実際は腰に相当な負担をかけています。快適すぎて立ち上がる気をなくしてしまう「人をダメにするソファ」が人気ですが、腰への負担がとても心配です。

プラスなことがあればマイナスなことがあります。パソコンやスマートフォン、タブレットが普及し、生活になくてはならないものになっています。それによって首や肩の不調を訴える人は、激増しています。利便性故に本来やる必要のないことが増えてしまいストレスが増えた方も多いことでしょう。首ポキは、まさにその延長線上にあるといえます。

治療を真剣に考えたいと思います。最後に、他にアドバイスあればお聞かせください。

しつこいようで恐縮ですが、首ポキの癖は、首や肩の不調のサインです。そして、首ポキが重い疾患の引き金になる可能性は低いかもしれません。しかし、可能性は確実にある、ということだけはどうか覚えておいてください。

肩こりや首こりは、その場しのぎのほぐしでは治らないどころかむしろ徐々に悪化していきます。30秒で驚くほど効果がある体操やストレッチ方法などが定期的に話題にはなりますが、一時的には楽になっても治ることはありません。治る人がいないから、流行るのです。

まずは、首の関節を鳴らすのは、良くないことだと意識するようにしてください。ご家族やお友達で、首ポキをされている方がいたら、ぜひ注意してあげてください。

そして、できれば、早めに治療を受けてください。

これは、医療に携わる者としての切実な願いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。ご不明な点、ご質問等ありましたら、遠慮なくご連絡ください。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。