前回のブログでは、「姿勢を支える3つの感覚」のうち、体の内側の情報である「体性感覚(足裏の感覚など)」についてお伝えしてきました。
「足裏や関節、筋肉からの情報をもとに、体は無意識のうちにバランスを調整している」という内容でした。
では、「目(視覚)と姿勢」は関係しているのでしょうか。
今回のテーマは、もう一つの重要な要素である「視覚(目の情報)」です。
ここでいう「視覚」とは、単に“目が見える”という意味ではありません。
⚫︎周囲との距離感
⚫︎空間の広がり
⚫︎動きと景色の変化
などを捉えながら、体のバランスを調整する働きまで含まれています。
つまり今回は、「目そのもの」や「ランドルト環(視力検査でよく見るCの形をした輪っか)で計測するいわゆる視力」ではなく、“見え方”と体の関係についてのお話です。
一見するとあまり関係がないように感じるかもしれません。
しかし、実際には私たちは見えている景色をもとに、無意識のうちに姿勢や動きを調整しています。
今回は、視覚と姿勢の関係について、見え方が体のバランスや姿勢にどのような影響を与えているのかという視点から解説していきます。
視覚は体の位置を決める「基準」
私たちは、ただ目で物を見ているだけではありません。
無意識のうちに、
▪️周囲との距離
▪️空間の広がりや奥行き
▪️自分の位置
といった情報を処理しています。
そしてその情報をもとに、
▪️体の傾き
▪️重心の位置
▪️筋肉の使い方
を調整しています。
視覚は、体の位置を決めるための「基準」として働いています。
例えば、
・障害物が近いと動きが慎重になる
・狭い場所で体を小さくする
・天井が低いと少しかがむ
こうした反応は、見えている空間に体が自然と合わせている状態です。
私たちは「見えている世界」を基準に、姿勢や体の位置を調整しています。
つまり、姿勢は体の内側の感覚だけでなく、視覚からの情報によっても作られているということです。
距離感が姿勢を変える

私たちは、見えているものとの「距離」をもとに、無意識に体の使い方を変えています。
この距離感は、単に目で見ているだけではなく、視覚の働きによって作られています。
目は、
[どのくらい近いのか] [どのくらい遠いのか] [どこまで自分は動けるのか]
といった情報をもとに、空間の中での位置関係を判断しています。
例えば、
・机の下に入る時は、頭をぶつけないように背中を丸めて体を小さくする
・人が混み合っている電車内では、肩や体をすぼめる
・エスカレーターに乗る直前に、エスカレーターの動きに足の動きを合わせる
こうした反応は、視覚によって距離が認識されているからこそ起こる変化です。
ここで重要になるのが、距離を正確に捉える視覚機能です。
もしこの働きがうまくいかないと、
1.距離がはっきりしない
2.空間の広さがつかみにくい
3.どこまで動いてよいかわからない
といった状態になります。
すると体は、安心安全を保つ手段として、
「必要以上に力を入れて体を固める」といった過緊張を起こりやすくなります。
一方で、距離感がはっきりと捉えられていると、体は安心して動くことができ、力みがなく、動きに滑らかさが出るという状態になります。
このように距離感は、単なる「近い・遠い」ではなく、視覚によってどれだけ正確に捉えられているかによって、姿勢や動き、体の緊張に影響を与えています。
景色と動きの関係
体を動かすと、景色は必ず変化します。
前に進めば景色は後ろに流れ、右に動けば左へ、左に動けば右へ流れていきます。
私たちはこの「景色の変化」をもとに、
[自分はどのくらい動いているのか][スピードは適切なのか]
といったことを無意識に判断しています。
このときに大切なのが、「動き」と「見え方」が一致しているかどうかです。
例えば、
[想像していたよりも景色が大きく動く][動いているのに景色があまり変わらない]
こうしたズレがあると、余計な力みが入ったり、動きにくさを感じるといったことが起こります。
逆に、動きと景色の変化が一致していると体はスムーズに動きやすくなります。
一つわかりやすい例が、スポーツジムにあるランニングマシン(トレッドミル)です。
通常、前に走ると景色は後ろへ流れていきます。
しかしランニングマシンの上では、体は動いているのに景色はほとんど変わりません。
つまり、
「自分は前に進んでいる」という体の感覚と、
「景色が変化していない」という視覚情報にズレが生じている状態です。
そのため、トレッドミルから降りた後に、少しフラッとしたり違和感を覚えたりすることがあります。
このように視覚は、景色の変化を通して「自分の動き」を把握し、姿勢やバランスの調整に関わっています。
周辺視と体の緊張

私たちは、見たいものを中心で見るだけでなく、周囲の景色も同時に捉えています。
例えば、目の前の人と話をしている時でも、
[後ろの壁の色や模様][周囲を歩いている人の動き]
などを無意識に認識しています。
このように周囲の状況を見る力を、「周辺視」と呼びます。
周辺視は、
⚫︎周囲との距離感
⚫︎空間の広がり
⚫︎動いているものの位置
などを把握するために使われています。
つまり、体にとっての「安心・安全」を確認するための大切な機能です。
そのため、周囲の情報がうまく入ってこなくなると、体は無意識に警戒しやすくなります。
例えば、
⚠️ 一点を集中して見続ける
⚠️ 長時間のデスクワークを行う
といった状況では、周辺視が狭くなりやすくなります。
その状態では、人や物との距離感がつかみにくくなり、ぶつかりやすくなることがあります。
体は、「周囲の状況が把握しにくい=安全が確認しにくい」状態になります。
そのため、体の緊張を高めて、
・肩や首に力が入る
・呼吸が浅くなる
・体が固まりやすくなる
といった状態につながることがあります。
一方で、周囲まで自然に見えている状態では体は安心しやすくなり、
・力が抜ける
・呼吸が深くなる
・動きに滑らかさが出る
といった変化が起こりやすくなります。
まとめ
視覚は、空間の中での自分の位置、周囲との距離感、動きと景色の関係などをもとに、姿勢や動きを調整しています。
もし視覚からの情報にズレや偏りがあると、【必要以上に力が入る、体が固まりやすくなる、動きにくさが出る】といった反応につながることがあります。
私たちは普段、姿勢というと筋肉や骨格をイメージしやすいですが、どのように周囲を見ているか、距離をどう捉えているか、動きと景色が一致しているかといった「見え方」も、体の使い方に影響している可能性があります。
もし、姿勢が安定しない、力みやすい、左右差が気になるといった状態がある場合には、筋肉だけでなく“視覚”という視点から体を見直してみることも、一つのヒントになるかもしれません。

執筆者:進藤 孝大
Takahiro Shindo
湘南医療福祉専門学校 アスレティックトレーナー科卒業
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業
鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
A-Yoga Movement coach
目の前にいる人の体のお悩み解決に全力を尽くす。
その想いだけで活動してまいりました。
スポーツトレーナーとして培ってきたノウハウと経験を活かして、
運動療法と鍼灸マッサージを組み合わせた治療を提案。
ご自身に合った適切なケア方法等、皆様のお悩み解決に向けて徹底サポートを行います。


































