慢性的な首こりが、運動を続けながら改善したケース|ケースレポート

概要

D様/東京都在住/51歳/男性/会社員

症状

  • ・約1年前から、起床時に首の上部に痛み
  • ・朝に頭が重く感じ、頭痛が出ることがある
  • ・ストレッチや入浴で一時的に症状が軽減するものの、時間が経つと戻りやすい
  • ・姿勢が悪い自覚がある
  • ・NRS:7〜8

状態

  • ・後頭部(後頭下筋群)・頸部(頭半棘筋、板状筋)・肩上部(僧帽筋)の筋緊張
  • ・胸椎の伸展・回旋可動性の低下
  • ・肩甲骨の可動性低下
  • ・大胸筋・広背筋など、胸や背中まわりの筋の緊張
  • ・座位で円背になりやすい
  • ・下肢では、ふくらはぎやハムストリングスにも張りがみられた

見立て

今回の症状には、首や肩の筋肉の緊張だけでなく、背中や肩甲骨の動きにくさと、それによって首・肩に負担が偏りやすくなっていることが関係していると考えた。

特に、座っていると背中が丸まりやすく、胸椎や肩甲骨が動きにくい状態であったため、腕を動かす際に首や肩まわりの筋肉が補助的に働き、負担が集中している可能性がある。

週2回のジムトレーニングと週1回のテニスを継続されていることから、日常生活だけでなく、繰り返し行う腕の動作の中でも首や肩に負担がかかりやすい状態であるとみられた。

そのため、首や肩の筋肉をほぐして症状を軽減するだけではなく、背中や肩甲骨の動き、腕を動かす際の身体の使い方まで含めてみていくことを治療の軸とした。

また、朝にみられる頭痛についても、後頭部や首まわりの筋緊張が関係している可能性があるため、首・肩の状態とあわせて経過をみていくこととした。

治療

1回目

鍼の経験がなかったため、まずはマッサージを中心に行った。

後頭部・肩上部だけでなく、背部・腰部・ハムストリングスなども含めて全身をほぐした。

そのうえで、首や肩だけに負担が集中しないよう、背中や肩甲骨を動かしやすくすることを目的に、大胸筋・広背筋のストレッチと肩甲骨のモビライゼーションを行った。

運動では、胸椎を伸ばすタオルストレッチと、普段行っているトレーニングの中からラットプルダウンを実施した。

ラットプルダウンでは、肩をすくめて腕だけで引くのではなく、肩甲骨を動かしながら背中を使って引く感覚を確認した。

治療直後には、肩を上げやすくなり、肩甲骨も動かしやすくなったとのこと。

2回目

初回から約1週間後に来院。

治療後は楽な状態が約4日間続き、テニス・トレーニングも痛みなく行えていた。

この段階では、治療後の変化を普段の生活でも維持できるよう、身体の使い方を確認した。

座位では浅めに座り、背中が丸まりすぎない位置を確認するなど、日常の姿勢についても取り組んだ。

3回目

その後もジムとテニスを継続しながら、首・肩の症状はNRS 0〜1まで改善した。

朝の頭痛も出なくなり、テニスではフォアハンドをより力を抜いて振れる感覚が得られていた。

姿勢についても日常生活の中で意識できるようになり、背中を動かしながら肩甲骨を使う感覚が徐々に身についてきた。

ここでは胸を張って姿勢を良くするのではなく、背中を自然に動かせる状態を保ちながら、肩甲骨をスムーズに動かすことを意識した。

4〜5回目

治療間隔を徐々に延ばしていったが、首・肩のつらさや頭痛は大きく出ることなく、状態を維持できるようになった。

日常生活でも姿勢を意識する機会が増え、徐々に姿勢を意識してつくる段階から、自然に身体の位置を修正できる段階へ変化していった。

また、会議や長時間の移動があった際にも大きく状態を崩すことなく、テニスやジムを継続できていた。

テニスではフォアハンドの振りやすさも維持できており、症状だけでなく、運動時の身体の使いやすさにも変化がみられた。

症状を抑えるだけでなく、実際に負荷がかかる生活や運動の中でも、身体の使い方を維持できるようになってきた。

6回目

6回目の時点で、首・肩の違和感や朝の頭痛はほとんどみられず、NRS 0〜1の状態を維持できていた。

テニス・ジムともに問題なく継続できている。

姿勢についてもご自身で身体の位置を調整できるようになり、肩をすくめずに背中を使って腕を動かす感覚も定着してきた。

症状を改善するという当初の目標を達成し、6回の治療を一区切りとしてゴールに到達した。

今後は治療頻度を月1回程度とし、症状改善を目的とした治療から、テニス・筋力トレーニング・ハイキングなど、趣味を楽しく継続できるためのコンディショニング・メンテナンスを続けていく。

コメント

今回の改善では、首や肩の筋肉をほぐすだけではなく、背中や肩甲骨を動かしやすくすることと、その動きを実際に使えるようにすることを並行して行ったことが重要だったと考えています。

腕を動かすときは、腕だけで動かしているわけではありません。

背中が伸びたり、ひねったりしながら肩甲骨が一緒に動くことで、腕をスムーズに動かすことができます。

反対に、背中や肩甲骨が動きにくい状態では、腕を動かす際に首や肩の筋肉が頑張りすぎてしまうことがあります。

今回のケースでは、まずマッサージやストレッチ、モビライゼーションによって身体を動かしやすい状態をつくることから始めました。

そのうえで、ラットプルダウンなどのトレーニングを通して、動きやすくなった背中や肩甲骨を実際の動作の中で使う練習を行いました。

さらに、日常生活での姿勢やテニスのフォアハンドでも同じ身体の使い方を意識していただくことで、

「身体を動かしやすくする」

→「その状態で身体の使い方を練習する」

→「日常生活やスポーツの中でも使えるようにする」

という段階を踏んでいきました。

その結果、首や肩の症状が改善しただけでなく、テニスやジムを継続しながらも症状が戻りにくくなり、ご自身でも身体の位置や動かし方を調整できるようになりました。

今回の症例からも、症状のある部分だけにアプローチするのではなく、「なぜそこに負担がかかっているのか」を動き全体から考え、改善した動きを実際の生活やスポーツにつなげていくことが大切だと感じています。


執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome

帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者

私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。