「Quality Of Life」の略である「QOL」は、日本語でいうところの「生活の質」「人生の質」などを表します。近年では様々な場面でこの言葉が聞かれるようになったのではないでしょうか。
健康関連もまたQOLと切っても切り離せない分野です。医療の現場ではただ症状を改善するだけでなく、「その後の日常生活の質」という観点も求められています。
今回は肩こりとQOLの関係を解説するほか、厚生労働省が提供する情報を元にQOLの維持・向上も視野に入れた筋肉づくりについて考えていきましょう。
参考:QOLの維持・向上に大切な筋肉は? | e-ヘルスネット(厚生労働省)
肩こりが原因でQOLが低下する?
肩こりというのは、ただ肩が硬くなるだけではありません。痛みや不快感・頭痛・めまい・目の疲れ・吐き気・集中力の低下など多様な症状を招くケースも少なくないでしょう。さらに肩だけにとどまらず首や背中が凝ったり、同時に腰痛が発症したりすることもあります。
こういった体調不良が重なると日常生活での機能低下・活力低下などに繋がる傾向にあることから、結果としてQOLも低下しやすくなるでしょう。
加齢と肩こり
肩こりの原因としてはストレス・運動不足・偏った姿勢を続けているなどが挙げられます。合わせて加齢も関係していると考えられています。
人間の背骨は緩やかなS字カーブになっています。これは、頭や腕を支えるために必要な構造です。背骨の骨と骨の間には衝撃を受けても緩和できるように、椎間板というクッションの役割を果たす部分があります。
ですが椎間板は加齢とともに潰れる傾向にあります。この変化が首や肩のこりを引き起こす可能性があるのです。
肩こり予防とQOL向上を意識する
肩こり対策としては、日頃の姿勢や生活習慣の見直し・ストレス解消などと合わせ、継続的にセルフケアを心掛けることも大切です。
あわせて肩こりの予防法として、適度な運動が推奨されています。原因が運動不足や血行不良である可能性も考えられるため、体を動かすことで解消できることがあるのです。
急に体を動かすとなると、抵抗を感じる方もいるでしょう。ですが体を動かすとは大々的に運動することだけを指すわけではありません。日常生活の行動を少し大きな動作にするだけでも違ってきますます。たとえば、少し大きな動作でいつもの家事をしてみるのもいいでしょう。
なお加齢による肩こりや腰痛などは完全に防ぐことが難しいのが現状ですが、状態によっては適切に筋肉を鍛えることである程度は予防可能な場合もあります。
肩こりを予防できれば、QOLの維持や向上に繋がります。また肩こり予防の過程であわせて他のQOL低下要因を解消できる可能性もあるでしょう
関連ページ:肩こりの予防にも!筋トレ(筋肉トレーニング)で健康づくり
筋肉を鍛えてQOL維持・向上を目指す
QOLの維持・向上を視野に入れた場合、意識すべき筋肉や、筋肉の仕組みを知った状態で運動することで、より効果を期待しやすくなるでしょう。
特に重要な筋肉
筋肉と言っても、さまざまな筋肉がありその数は大小合わせておよそ400個。その中でも、QOLに関係しやすい筋肉は以下の4つです。
・太腿前の大腿四頭筋
太ももの前面の大きな筋肉で、主な役割は膝を伸ばすことです。 ・腹筋群/背筋群 それぞれお腹の筋肉と背中の筋肉で、上半身を支えるのが主な役割です。 ・お尻の大臀筋 お尻にある大きな筋肉で、主な役割は太ももを歩くときに後ろ側に振ることです。 |
この筋肉は、立つ・座る・歩くといった当たり前に行っている動作をするためにも欠かせない筋肉です。どの動作も意識せずに行っていますが、これはさまざまな筋肉がそれぞれの役割をしっかりと果たすことでトラブルなく行うことができているからだと言えます。これらの筋肉は姿勢を維持したり、重力に逆らって動かしたりすることに役立つことから、『姿勢維持筋』または『抗重力筋』とも呼ばれています。
肩こり予防を考える場合、あわせて意識したいのが、肩回りの筋肉である僧帽筋と肩甲拳筋でしょう。肩もまた様々な筋肉で支えられている部位です。
僧帽筋の主な役割は、胴体を固定したり頭を一定の角度に保ったりします。肩甲拳筋は腕を持ち上げることが主な役割です。これらの筋肉が硬くなったり血行が悪くなったりすることが肩こりを招く可能性もあります。
これらの日常生活にとって重要な筋肉が衰えていくことは、様々な不調に繋がりやすくなることから、QOLが低下する原因の1つになります。
そのためこういった部位に特に注目して鍛えることでQOLを維持・向上させやすくなるでしょう。あわせてその他の筋肉を鍛えることでさらに効果を期待できる場合もあります。様子を見ながら鍛える範囲を調整していきましょう。
筋肉を鍛えないとどうなる?
同じ「筋肉を鍛えていない」という状態でも、影響には個人差があります。
例えば年齢に着目すると、若い時の「鍛えていない状態」と、年齢を重ねてからの「鍛えていない状態」とでは意味合いが異なる傾向にあります。若い時には鍛えていなくても、体力がないな・スタミナがないな・疲れやすいななど少し実感する程度な方が多いでしょう。しかし年齢を重ねてから筋肉を鍛えずにいると、足腰の衰えをはじめとする体の不調を感じやすい人が増える傾向にあるのではないでしょうか。
特に先に紹介した “QOLに関連する筋肉4つ” は、衰えやすい筋肉です。厚生労働省が提供する情報によれば、80歳代の大腿前の大腿四頭筋の平均値は30歳代の半分程度に減ってしまいます。これは、30歳代のときは『困難』と思わなかった動作が、80歳代になると『困難』と感じるようになることに繋がりやすくなるということです。
自由に活動できなくなることは気分低下にも繋がります。動きが制限されることにより気分転換ができなくなったり、周囲の人とコミュニケーションを取りづらくなったりするからです。年齢を重ねると活動することが億劫になります。
ここで大切なことは「歳を取るから仕方がない」と諦めるのではなく、少しでもQOLを低下させず自分の筋肉で動き続けるために、自分の身体の状態でもできる範囲のトレーニングをすることではないでしょうか。運動に関して不安がある場合は、かかりつけ医などに相談するのもよいでしょう
運動するために必要な全身持久力
トレーニングを行う上でベースになるものの1つが全身持久力です。全身持久力が高いとは粘り強さやスタミナがある状態、つまり長い時間体を動かすことができる状態です。
ある程度、体を動かしたり続けたりしなければなかなか目に見える効果が出にくいでしょう。コツコツと運動を続けられるだけの全身持久力をつけていくと、肩こりだけではなく生活習慣病などの予防も視野に入れやすくなります。また精神的にも安定しやすくなり、精神面でのQOLの向上も期待できるでしょう。
ただし、特に運動をしていない状態からハードな運動をすると怪我をすることも。そのため、ハードな無酸素運動からではなく、ウォーキングなどほんのり汗をかく程度の有酸素運動から始めましょう。可能であれば専門家の監修のもとで行うのが理想です。
まとめ
肩こりはさまざまなことが原因で発生します。慢性的な肩こりになると肩の痛みだけではなく、背中がこったり首がこったり、さらに、頭痛や吐き気など別の症状も発生します。これらの症状があるとQOLが低下してしまうため、運動などの方法で改善していきましょう。
長期的にしっかりと改善するためには無理のない運動がおすすめです。運動が苦手・年齢的に運動は辛い・時間が確保できないなどの方であっても、工夫次第では無理なく運動を継続できる場合があります。体の状態によっても運動量やメニューを調整しましょう。
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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama
日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修
鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許
病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。