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タワシで背中や肩甲骨をゴシゴシ洗うと、血液やリンパの流れが良くなるだけでなく痩せるって本当?

タワシで背中・肩甲骨をゴシゴシ洗うと、褐色脂肪細胞が活性化されるんですか?

背中を入念に洗うことは、気持ちが良いということで、心の健康という意味でプラスに働くでしょう。

そもそもお風呂に入るわけですから血行は良くなります。褐色脂肪細胞については、医学的な観点から申し上げますと、肉体的な健康や美容との関連性があるとはいえません。

血液やリンパの流れが良くなって、健康や美容に良さそうなお風呂での背中洗いですが、肌をゴシゴシ洗うのは美容的にNGです。

ただ、洗い方次第で良い効果が期待できます。

 

褐色脂肪細胞について

まず、結論から申し上げますと皮膚への刺激と褐色脂肪細胞の活性化には関連性はありません!!

現時点で関連性を証明する研究報告はされておりません。

褐色脂肪は、脂肪であって脂肪ではない

褐色脂肪細胞は、”脂肪細胞”という名前ですが、あなたがイメージする皮下脂肪や内臓脂肪といった「脂肪=脂身」とは違うのです。褐色脂肪細胞は代謝高めて大きな熱を生み出す特殊な脂肪です。

脂肪は筋肉と相反する存在と思われていませんか?

褐色脂肪細胞は、機能的には「筋肉」に近いのです。

乾布摩擦やお風呂上りに冷水を浴びると体が暖かくなる理由

乾布摩擦や風呂上りに冷水浴びると体がポカポカしてきます。

乾布摩擦で体があったかくなるのは、背中をこすることによって褐色脂肪細胞が活性化されたからではありません。皮膚をこすることによって摩擦熱が生じるからです。熱で血流が増すということもあるでしょう。

冷水を浴びた後にポカポカするのは、冷水で急激に収縮した血管が、その後に拡張して血流が増えるからです。これは体本来に備わっている反射のひとつです。

褐色脂肪細胞が発動するのは生命の危機に瀕した時

褐色脂肪細胞がはたらくのは、体温が低下して生命の危険にさらされたときです。

冷水や冷気などの寒冷刺激が加わることではなく、低体温が活性化のスイッチとなるのです。

生活のなかで、褐色脂肪細胞が存在する肩甲骨付近を刺激して、「温かい」感じの何らかの反応が出るかもしれませんが、それらは褐色脂肪細胞とは全く関係がないのです。

褐色脂肪が豊富なのは赤ちゃんの時だけ

そんな褐色脂肪細胞ですが、これが体内に多く存在しているのは乳幼児です。生命を守るための細胞なのです。

赤ちゃんには褐色脂肪細胞が豊富
赤ちゃんには褐色脂肪がいっぱい

褐色脂肪細胞は、成長するに従って減少していき、成人とくに男性にはほとんど存在しないということがわかっています。完全に無くなるわけではないのですが極めて微量です。ですから増やしたり活性化できれば良いのですが(研究は進んでいます・・・)現時点での医学研究では、皮膚に刺激しても褐色脂肪細胞が増えるということは確認されていません。

注目すべき「色」は褐色ではなくベージュ

近年の研究により、褐色脂肪細胞と似た働きをもつベージュ細胞なるものがあるというがわかりました。ポイントは、褐色脂肪細胞とベージュ細胞は別物だということです。現時点で「ベージュ細胞は運動によって増加する可能性がある」とされています。ただ、これもあくまで可能性です。

動かずして代謝を高められればそれは理想的ですが、現実は甘くありません。

タワシなどで背中をこすることによって、褐色脂肪細胞やベージュ細胞にはたらきかけて、代謝を高めるといった説は間違いと言わざるをえません。

どんなに背中を刺激しても、疲れるのは腕ですから、腕の筋肉の運動には効果的といえるかもしれません。

katakori LABS study session 2018

本セミナーは、たくさんの鍼灸師の方々にご参加いただき無事終了しました。

人の健康に携わる仕事をされている方へ

ミライを想像できければ創造はできない

癒やしの本質ってなんでしょう?

マッサージ系の仕事をされている方は、その仕事を選んだ理由はなんでしょう?

簡単そうだから・・・きっとあるでしょう。でも「人々を癒やしたい」という目的は必ずあったはずです。

癒やしという言葉は、「癒やされる」に代表されるように、気持ちいい・安らぐ、といった意味合いで使われます。

実は「癒やし」という言葉は、割と最近出てきた新しい言葉

癒やすという動詞は昔からありますが、もともとは、癒えるという自動詞です。傷が癒えた、という言い方です。治癒やしたという表現も使いますね。

つまり「癒える」というのは「治る」とほとんど同じ意味です。

ただ、心の傷が癒えたという表現の場合、悲しみ・苦しみ・悩みなどが消えたという意味で、この場合は、「なおる」ではなく「おさまる」が妥当でしょう。

このように、癒やし系といった言葉が意味するようなニュアンスは、本来の「癒やし」とはちょっと違います。

「人々を癒やしたい」を突き詰めると・・・

必ず、壁にぶつかります。

癒やしを求めている人は、心・身体に何かしらの不調を抱えています。

その不調を取り除いてあげたい・・・

治してあげたいと思うのは自然なことです。

ですから、リラクセーションを追求されている方の多くは、身体に関する勉強をします。セミナーもたくさん開催されています。ですが、実際問題、現実は厳しいでしょう。

最終手段として資格取得のために学校にいくという選択もありますが、時間もお金もかかりますし、人生を左右する大きな決断ですから、あきらめる人の方が多いのではないでしょうか。

人を癒やすということを、一人で抱え込む必要はないし、抱え込むことはできない

人は一人では生きていけません。

生きるということは、社会の中で生きるということです。

自分自身の存在意義や個性は、まわりの環境がなければ無意味です。

世界は誰かの仕事でできている。

これは少し前のテレビCMでのキャッチコピーですが、人ひとりを癒やすためには、多くの人の力が必要なのです。

専門職の人はどうしても、なんでもかんでもやりたくなってしまいがちです。「専門」職なのにです。

これは、見てる世界・景色が狭いせいではないでしょうか。

なんでも抱え込もうとすれば、たいてい失敗・挫折してしまいます。

自分の無力さを知ることは素晴らしい

誰もが、自分で自分を褒めたい欲があります。

頑張ったから、できた!

自分のおかげで、うまくいった!

私ってすごい!

・・・これを仕事でやってしまうと危険です。

仕事は自分でなく「人のため」にするものです。

仕事で得られるものは自分のもの。

自分のためにするのは仕事ではありません。

何をやってもうまくいかないのは必要以上に自分を大きく見せたいから

挫折が人を成長させる、これは正しいと思います。

これは、自分自身の無力さを受け入れる、ということではないでしょうか。

こんな無力な自分でも、支えてくれる人がいる、頼りにしてくれる人がいる。

そう思えた時、人への感謝の気持ちが生まれます。

そして、相手が自分よりも大きな存在に感じるはずです。

人への感謝の気持ちがあれば、自分のすべきことがわかる

ありがとう・・・・というのは感謝ではなく、お礼です。

感謝とは、あって当たり前のことに対する気持ちで、お礼は人にしてもらったことに対するリアクション。

感謝の気持ちを持つことは、人の気持ちを理解するということなのです。

私たちひとりひとりがすべきこと

自分自身の力・能力をきちんと把握して、できる限り最大限の正しい努力をする。

それだけでよいのです。

つまり、最善を尽くすということ。

正しい努力をすれば、自分自身で大切なものが明確になり、今まで見えなかった人のよいところが見えてきます。

ただし、間違った努力は報われません。

正しく努力すれば、必ず結果はついてきます。

では、正しく努力するには何が必要でしょうか?

それは「考え方」です。

技術・スキルではありません。

知識・情報でもありません。

見たり聞いたりした情報、触れて感じたことの中にヒントはあります。

「考え方」は教わるものではない。

ここでいう「考え方」とはあなた自身のあなた独自の考え方です。

あなたが導き出すものです。

人を癒やすために何をすればいいのか、どんな技術・知識が必要なのか、そして、自分でできることは何なのか?それをきちんと把握しなくてはいけません。

癒やしに関わる様々な業種があります。

それぞれが役割分担をするべきと思いませんか?

鍼灸・マッサージ院として当院が行なっている「癒やし」とはフィジカル面、特に筋肉の問題の解決です。

当院ではリラクセーションの提供はできません。

痩身や美容効果のある施術もできません。

それらはその道のプロがやるべきです。

当院は、筋肉のプロフェッショナルとして、首肩の慢性的なコリを治すために、具体的に何を考え、何をしているのか、をお伝えします。

あなたが鍼灸師でしたら、きっと鍼灸師の持つ可能性が広がるはずです。

あなたが鍼灸師でなくても、鍼灸師にできることが理解できるでしょう。

そして、あなただけの「癒やし」を構築する上での「あなたの考え方」のヒントになるはずです。

私たちは肩こりをこう治す

Study Sessionプログラム

私たちは、肩こりをこう治す

  • 肩こりの定義
  • 肩こりの原因
  • 肩こりの病態生理学
  • 肩こりの評価法★
  • 肩こりを改善する方法(施術プラン・治療方法)

全て現代医学に則った内容となります。東洋医学的な内容やスピリチュアルな内容は一切ございません。

このページに記載してある「人はどう生きるべきか」といった自己啓発的な内容は本講演では触れませんのでご安心ください。具体的な内容のみとなります。

内容は若干変更となる場合がございます。

日程2018年11月22日(木)17:30開場 18:00-20:30
講師丸山太地(株式会社肩こり研究所 代表)
場所鷹番住区センター 第1会議室
東京都目黒区鷹番3-17-20
東急東横線学芸大学駅 西口徒歩3分
受講資格資格は特にございません。

 

 

医師・理学療法士・鍼灸師・あん摩指圧マッサージ師・柔道整復師をはじめとした医療従事者ならびに、目指している学生、リラクセーション・整体・トレーナーといった人の身体を良くするために仕事をされている方向けの内容です。

費用一般 3,000円
学生 2,000円(当日学生証をご提示ください)
※飲み物をご用意してます
参加方法先着順となります。
参加を希望される方は、下のボタンを押してメール送信してください。

 

 

定員になり次第締め切りますのでお早目にお申し込みください。

 
 
 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


大学の英語教科書の題材として肩こりラボのストレッチが取り上げられました。

以前、読売新聞にて「スマホ 時々ストレッチ」という記事で紹介された内容が、読売新聞の海外版であるThe Japan Newsで「Stretches for the digital age」として紹介されました。

The Japan Newsにkatakori LABSのストレッチが掲載されました

その英語の記事が、この度「ソーシャル・キーワード -メディア英語で社会を読み解く-Social Keywords」 (深山晶子 編著 三修社)という大学の英語教材のテキストで取り上げられました。

三修社 英字新聞を読めるようになるための教科書

現代っぽいテイストかつ海外の書籍のようなクールなデザインですが、なんと教科書です。一昔まえの教科書のイメージと随分違っていたので驚きました。

メディア英語で社会を読み解くというテーマの中で選出していただけたということは、スマホ時代だからこそストレッチの重要性が高まっている、便利になった分カラダへの負担が増していることが大きな社会問題であることの現れだと思います。

ソーシャル・キーワード -メディア英語で社会を読み解く-

ストレッチに興味のない学生さんでも、この教材をきっかけに、実際にやってみてほしいと思います。じっと座って勉強するよりは、声に出しながら書いてみたり、歩きながらやってみたりするほうが効果的と言われていますが、英語を聞きながら体を動かす、これは間違いなく効果的でしょう。

新聞社からの取材から始まり、このような形になるとは想像できませんでした。できるわけがありませんよね。だからこそ、治療はもちろんなのですが、時々いただく取材の機会も一回一回真剣に取り組まないといけません。機会はすべて繋がっています。

将来のためにできることは、結局、目の前のこと・現在できることを真剣に考えそして取り組むしかありません。

読売新聞社ならびに三修社の関係者の方々に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

三修社 大学教科書

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりのウソ!?ホント??

雑学編

当ページをご覧の方は、肩こり首こりで心底お悩みの方が多いと思いますが、肩こり“ぐらい”で・・・なんて思ってしまっているであろう多くの方が勘違いしている肩こり情報を、当記事で一回リセットしてください。

 

肩こりくらいじゃ死なない説

軽視は禁物です!肩こりという症状は、椎骨動脈解離をはじめとした様々な病気の症状としても表れます。まずは、病気か、ただのコリなのか判断することが重要です。

骨の異常や内科的な病気が元になっていないどうか確認するためにも、肩こりを自覚している方は必ず病院を受診してください。

特に、命を左右するような重大な病気が隠れている肩こりのサインとして気を付けてほしいのは以下5点です。

  • 急激に発症したひどい頭痛
  • 嘔吐(吐き気だけでなく実際に吐いてしまう)
  • 呂律がまわらない
  • 手足が自由に動かない
  • めまいで立っていられない

このような症状が出た場合には、緊急で医療機関を受診してください。

肩こりに悩むようになったのは戦後?

厚生労働省の調査によれば、20年ほど前から肩こりに悩む人が明らかに増えています。ですが、すでに江戸時代に「肩癖」という現在の肩こりに該当する言葉が存在していました。そして肩こり治療で用いられる鍼(ハリ)は、なんと安土桃山時代に始まっています。この歴史的事実から、おそらくその頃から症状があったと考えるのが自然でしょう。

厚労省による国民生活基礎調査を過去に遡って確認したところ、少なくとも平成4年から国民のかかえている自覚症状の上位三位以内に肩こりが入っていることがわかりました。スマートフォンの普及が、首肩への負担を増大させたのは間違いないでしょう。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21kekka.html

肩こりで悩むのは日本人だけ?アメリカ人には肩こり知らずって本当?外国人は本当に肩がこらない?

肩こりは日本人だけのものでなく外国人ももちろん肩がこります。たしかに日本人に比べれば少ないかもしれません。近年のスマートフォンの普及で海外でも肩こりが増えてきているとも言われています。

肩こりという言葉は海外にはないという情報から、肩こりは日本人だけという間違った認識が広がってしまいましたが、オイルマッサージやスパなどの文化がヨーロッパ発祥であるように、筋肉が疲労してコリを訴えるのは昔から世界共通です。

詳しくは下の記事をご参照ください。

肩こりは日本人特有の症状である!という説の真偽の検証

肩こりは体質or遺伝だから治らない説

体質や遺伝的になりやすい人は確かにいるかもしれません。ですが、猫背の人ならコリが出るのは当たり前です。いくら休んでも回復しない、疲れていないのにコリを感じるといった症状は、明らかに体の状態は異常なのです。これは体質・遺伝の問題ではありません。

一口に「肩こり」といっても様々あります。中には病気が元になっている肩こりもあります。病気が元になっている肩こりを症候性肩こりといいます。症候性肩こりは中には、脳卒中、心筋梗塞、悪性腫瘍、動脈解離など命に支障をきたす疾患が元になっていることもあります。このように重大な病気もあれば、風邪の諸症状として生じることもあります。ですので、首や肩の凝りがつらいなと感じたら、まずは医療機関を受診して症候性肩こりではないか医師に診断してもらいましょう。

症候性肩こりではない場合、つまり病気が元になっていないものを本態性肩こりといいます。

本態性肩こりの原因は大きく3つあります。

  1. 姿勢や筋肉バランスなどフィジカル面の不具合
  2. 自律神経の乱れ
  3. 精神的ストレス

本態性肩こりの多くはフィジカル面の不具合に起因しています。自律神経のバランスやストレスへの耐性は少なからず体質によるものもあるでしょう。骨格は遺伝や先天的なものによる影響が強いです。これらはなかなか改善しづらい部分があるのは事実です。

ですが、姿勢や筋バランスは後天的な要素が大きく、日常生活による影響が強いです。つまり、働きかけ次第で十分改善できます。

マッサージは強ければ強いほどいい?痛ければ痛いほど効果ある?

強い・痛い=効いていると考えるのはよくある勘違いです。マッサージで痛みを感じるほどの強い刺激を与えると、炎症が起き筋肉が強張ってしまうので逆効果です。

それを見越した上で、一時的に強いマッサージを取り入れることもありますが、ただひたすら刺激の強いマッサージや施術を受けるのは、常習化し悪化する危険が大いにあります。

強さや刺激を求めすぎてしまっている人は、その思い込みをリセットしましょう。

マッサージの強さは、絶対的な圧力の指標があるわけでなく、受け手である患者さんが「心地よい」と感じる程度が適した強さになります。「イタ気持ちよい」というように、多少のマッサージ特有の痛みや響きがあるのが心地よいと感じる方はいますが、これが苦手な方もいます。ですので、マッサージの適正な強さは個々によって異なるのです。

原則として「イタ気持ちよい」を超えて「痛い」のを我慢しながら処置を受けてもよい結果にはつながりにくいです。かえってつらくなってしまったり、傷めてしまうこともありますので痛いのを我慢して受けることは絶対に避けましょう。

慢性的な凝りにお悩みの方のなかには、強いマッサージを受けるとスッキリするという方はいらっしゃることでしょう。ですが、人は刺激に慣れてしまいます。だんだんとより強い刺激を求めていき・・・終わりがないばかりか、楽になる時間も少なくなってしまいます。鎮痛剤を常用しているうちにだんだんと効かなくなってしいいつのまにか量が増えてしまうといのと同じです。これは一時的な緩和の繰り返しによって、かえって慢性化してしまっている状態です。

肩こり治療において、症状を解消すること=対症療法は必要なことです。ですが対症療法だけでおわるのではなく、原因療法も併せて行うことが大切です。

ひどく慢性化してしまっている方を実際に治療する場合、早期に症状緩和をするために仕方なく一時的に強い刺激をいれなければないことは確かにあります。(治療方法や方針は事前に相談をしてから行います。弱い刺激で治療をすすめる方法もあります。)当然のことですが、慢性の度合いが増すほど治療はたいへんになります。だからといってすでに慢性化してしまっている方はあきらめないでください。どうせ治らないからとあきらめて一時しのぎを繰り返すことをやめ、一日でも早くに根本的な改善を考えてみましょう。

まださほど悩ましくない方は是非予防に努めていただきたいと思います。

肩こりになるのは働き世代だけ?

デスクワークや接客などの仕事による肩こりだけでなく、ここ数年におけるスマートフォンの普及により子供や学生さんにも慢性的な首肩こりが増えています。退職された方でも、慢性的な首肩こりで悩まれている方は多く、決して働き盛り特有のものではございません。

肩こりは「中高年の方がなるもの」「歳のせい」では片づけられない状況です。たしかに、働き盛りである30~40代が多い傾向にはあります。肩こりは、老若男女誰しもがなり得るものです。

注目すべきは10代の肩こり患者さんが増えているということです。実際当院にも親御さんから相談されることは増えてきています。具体例として、首こりに伴う重度の緊張性頭痛によって登校ができなくなってしまっていた小学校6年生の患者さんがいらっしゃいました。複数の病院でも異常が見当たらず、緊張性頭痛という結論にいたった経緯があります。12歳なのに体がとても固く、姿勢も乱れていました。治療では、凝りをくまなく解消し、正しい姿勢がとれるよう体幹のコンディションを整える治療、セルフケア指導を行ったところ頭痛は解消し学校にも通えるようになりました。

もしお子さんが首肩の不調を訴えたら「子供なのに何をいっているの?」ではなくまずは親身に話をきいてあげてください。

まずは病院へ行きましょう。たとえ整形外科的な異常がなかったとしても、姿勢や筋力バランスなどによる本態性肩こりの可能性があります。

「子供なのに」という大人の偏見によって重症化させてしまうこともありますので、肩こりがもつ従来のイメージにとらわれないようにしましょう。

今の子供たちは、昔よりも格段に首肩に負担がかかっています。教科書の大きさもA4サイズへと大型化、つまり重さが増え、ランドセルも大きくなりました。「自分が子供の頃は・・・・」という経験や思い込みは今の子供達には当てはまらないことが多いのです。

スマホは画面を正面から見れば首肩に負担がない?

姿勢だけでなく、眼精疲労からも肩こりにはなります。持ち方以前に、まずスマホの使いすぎる習慣を見直しましょう。スマホを持つ時は、持っていない手を持っている腕の脇の下にいれて支え、画面は目線の高さが理想です。

画面の大型化で、両手で操作が必要な機種が増えてきていますが、両手での操作はどうしても下を向きやすいので、片手で操作できる小ぶりな機種を選ぶのはカラダのことを考えれば賢い選択です。また、バンカーリングなどの便利グッズも利用しましょう。

いま、このテキストをお読みのあなた、横になりながらスマホを操作していませんか?

寝ながらのスマホ操作は、本当に体にはよくありません。

スマホに限らず読書もよくありません。

きっと誰もが、最初は楽なのに、だんだんツラくなってくる症状を自覚しているはずです。

横になっていることで頭部の重量が免荷される分、猫背姿勢や下を向いてのスマホ操作に比べると首や肩の筋肉にかかる負担は軽減されます。この点は良いのですが、仰向けの場合は腕を持ち上げて保持しなければならず肩に負担がかかります。さらに横向きの場合は体が丸まって巻き肩姿勢をつくってしまいます。うつ伏せの場合は首で頭を支えなければならず、首肩の筋肉へ負担がかかります。加えて、このような姿勢としての問題だけでなく、暗い部屋で液晶画面を見ることで眼への負担が懸念されます。眼精疲労から首や肩の凝りが生じてしまうことは少なくありません。

いいことが何一つありません。

とはいえ、小さなお子さんがいる方であれば、子供の寝かしつけのさいに早くに床に就かなければならず、良くないとわかっていたとしても寝ながらスマホ操作をせざるを得ないという方もいらっしゃることでしょう。そのような方はなるべく長時間にならないように意識をするようにしてください。

肩こりが原因で頭痛になる?肩こりが原因で顔がむくんでしまう?血行不良が肩こりの原因?といった肩こりを引き起こす原因、逆に肩こりが原因で引き起こす症状にまつわるQ&Aを以下にまとめましたので、そちらも是非ご覧ください。

肩こりが○○の原因?○○が肩こりの原因?

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


katakori LABS Study Session 2017.08.03

鍼灸師の皆さまへ

現在、日本には約17万人の鍼灸師がいます。

「肩こりは治ります」

17万人の中で、こう言い切れるセラピストはどれくらいいるでしょう。

肩こりを治すということ、それは凝りをほぐして一時的な症状の緩和をすることではなく、治療を必要としない体にかえることです。

もちろん凝りをほぐすということは大切なことですし、気持ちの良いマッサージも必要です。

ですが、肩こりを治したいと願う患者さんに対しては、それだけでは応えられないという現状が実際のところあるのではないかと思います。

治したいという気持ちを強くお持ちのセラピストの方と当院が培ってきた技術・見解・未来を共有できれば幸いです。

Study Sessionプログラム

学校では教えてくれない肩こりを改善する方法

  • 肩こりの定義
  • 肩こりの原因
  • 肩こりの病態生理学
  • 肩こりの評価法
  • 肩こりを改善する方法(施術プラン・治療方法・セルフケア)
  • 肩こりラボの施術技術紹介(IDマッサージ・3D鍼・運動療法)

全て現代医学に則った内容となります。東洋医学的な内容はございません。

内容は若干変更となる場合がございます。

 

学校では、凝りのほぐし方は教えてくれても治し方は教えてくれません。

鍼をうつ、灸をすえる、揉みほぐすという従来の鍼灸・マッサージだけでは、一時的な緩和はできても慢性的な肩こりを治すことは極めて困難です。もちろん運動療法のみでも困難です。

では、何をすればよいのか?

肩こりの根本治療において肝心なことは、何をするか?ではありません。

患者さん個々によって異なる原因を見極めること。これが最も大切なことです。原因を見極めた上で、一貫した方向性をもって鍼灸・マッサージと運動療法を組み合わせることができれば根本治療は可能です。

根本治療の第一歩は、まず患者さんの「病態の把握(見立て)」、そして「施術プラン(内容や頻度)」です。これを実践するための大前提として、そもそも肩こりとはどういった状態なのか(定義)、そして肩こり発症のメカニズム(原因)を身につけている必要があります。

近年の研究により、慢性的な肩こりは単なる筋疲労や血行障害ではないということもわかってきています。第1回となる今回は肩こり治療の土台となる部分を解説します。受講後は「肩こり」がこれまでとは違ったものにみえてくるでしょう。

理論の元、然るべきアプローチをすれば、肩こりを治すことは誰にでも可能なことです。

多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。

次回は、2018年11月中の開催を予定しております。

katakori LABS study session 2018

 
 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


筋膜リリースを解説します。

筋膜の正しい知識を知り、筋膜リリースの本質を理解する

筋膜きんまくリリース筋膜きんまくはがしといった言葉を目にする・耳にする機会が増えてきました。筋膜へのアプローチ自体は古くから実践されてますしはり・マッサージにおいては基本なので、新しいものではないのですが、ここ10年で一気に有名になりました。当院の患者さんからも「筋膜リリースをしてほしい」という要望をいただく機会は大変多いです。

肩こりの原因は筋膜にあり、筋膜のシワ・たるみ・癒着が問題である→筋肉をいくらほぐしても筋膜にシワやたるみがあれば肩こりは治らない、といった説明がガッテン・金スマといった人気テレビ番組で紹介されネット上にも情報が拡散されています。また、それと同時に肩こりの原因は肩以外にあるという説明も多くなりました。

肩こりの原因は肩以外にある説は正しいです。ただし筋膜だけで全てが解決されません。肩こりの原因は筋肉ではなく筋膜であるという説明が多いのですが筋膜は筋肉の一部です。筋膜のみへのアプローチは根本的な解決にはなりません。筋膜と筋肉を分けるべきではありません。筋膜と筋肉はセットです。これはとても大切なポイントです。

日本語の筋膜という単語の定義は定まっていない

筋膜はラテン語のFasciaを日本語にしたものです。ファシィアまたはフェィシャと発音するこのラテン語の単語は、ドイツ語でいうbunde、すなわち物を包んだり結び合わせたりする帯を意味します。Fasciaは日本語でいう筋膜にとどまらず、内臓の膜・骨を覆っている骨膜・関節を連結している靭帯じんたいや筋肉を骨とくっつけるけんまでも含まれます。筋肉に関する筋膜だけでも、筋内膜・筋周膜・筋外膜・筋上膜といった種類があります。これらも筋膜という一言で説明されてしまっています。

筋膜は魔法の言葉?

最近では四十肩・五十肩といった症状も筋膜に原因があるといった説明が目立つようになってきました。筋膜とよべる組織が多岐に渡りすぎているため、何から何まで筋膜という単語ひとつで説明されてしまっている、つまり間違ってはいないけど正確でもない。マスメディアで取り上げられることで誤解を与えていることだけは確かです。

今までと何も変わらないストレッチや体操もいつのまにか筋膜ストレッチ、筋膜体操といった名前に変わっています。筋膜は身体のあらゆる組織に存在しています。どんなストレッチでも運動でも筋膜は使われています。つまり何をするにしても筋膜へのアプローチはあるわけですから、嘘偽りではないのです。

Myofasciaは筋筋膜と訳されているのに、頭の筋がとれて筋膜リリースという言葉が広まってしまった

筋肉の筋膜を意味するmyofasciaという単語があり、日本語で筋筋膜といいます。myofasciamyoは筋肉のという接頭辞で筋肉の膜(fascia)ということです。「筋肉の筋膜」=「筋筋膜」、これがいわゆる筋膜を指す単語として正解・最適なのですが、筋筋膜は筋・筋膜となぜか分離された表記が少なくありません。筋肉と筋膜という並列の意味で説明している専門家もいらっしゃいます。

筋膜リリースという言葉はMyofascial releaseを日本語にしたものです。本来であれば筋筋膜リリースと訳されるべきだったのです。

このページでは筋肉を覆っている・包んでいる膜=筋筋膜(myofascia)を筋膜として解説していきます。

筋膜は古くからある人体解剖図に存在していない

残念ながら医学界では「筋膜」は無視されてきました。なぜ無視されてきてしまったのかといいますと、医学でもっとも重要なのは内臓・骨・筋肉といった“体の中身”だったからです。

人体の構造を学ぶ上での根幹は解剖です。筋膜は解剖の際に取っ払って捨てられてしまうものでした。

ですが人体についてはまだまだ解明されていない不明点が数え切れないほど多く、あまり注目されていなかった筋膜についての研究を進めてきた研究者たちがいました。その研究者たちのおかげで、近年、病気との関連が判明してきたのです。

これは鍼灸しんきゅう・マッサージにおいても大変意義があります。鍼灸・マッサージにおける筋膜へのアプローチは基本ではあるのですが、医学的な根拠・裏付けに欠けており経験則にしたがっている(これの最たるものが、当院では取り入れていませんが、いわゆるツボや経路といった考え方)部分が大きく、曖昧かつ確実でない情報をもとに行われているのが現実です。

はりを刺す・打つ、といった行為は鍼灸・マッサージの基本です。鍼は鍼師と医師のみが打つことができます。この鍼を打つ目的のひとつが、硬くなった筋膜の緩和です。

鍼を打つと筋膜が緩和する仕組み

硬くなった筋膜に鍼を刺すことで一時的に筋膜を壊します。膜に傷がつくわけですから出血します。出血するということは、その部分の血流が増します。血流が増すと硬くなった部分が柔らかくなります(たびたびテレビ番組などで紹介される筋膜リリース注射・ハイドロリリース注射は生理食塩水を注入して筋膜を柔らかくする方法ですが根本原理は同じ)。壊れた筋膜は新たに作られますが、硬くなっていない正常な筋膜が作られます(リモデル)。もちろんそれだけではないのですが、筋膜含めて「筋肉」であり、筋肉の外側・内側問わず必要な箇所に打つのが鍼です。

筋膜リリースは新発見ではないし画期的な方法でもない

硬くなった筋膜へ鍼を打つ基本的な処置以外にも筋膜へのアプローチ方法は、いろいろな方法があります。それこそマッサージやストレッチにも当然ながら筋膜リリースは含まれています。つまりアプローチ自体は新発見でもなんでもありません。あくまで、今まで分かっていなかった筋膜の果たす役割・機能が医学的に新発見であって、筋膜リリース自体は新発見ではないことをご理解ください。

今までわからなかったことが分かってきたということは、鍼の有効性が医学的に意味づけされる・理論づけされて認められる可能性があり、今後の研究に大いに期待しています。

筋膜が注目を集めるようになった理由を理解するために必要な知識

筋膜は「第二の骨格」「ボディスーツ」といった表現をされます。それはそれで正しいのですが、実際は分かりやすいシンプルなものではありません。

浅筋膜はボディスーツ

このような皮膚みたいなイメージをお持ちの方は多いかもしれませんが、厳密には違います。たしかにこのように皮膚のように体全体を覆っている筋膜はあります。その体全体を覆っている筋膜は、「浅筋膜せんきんまく」という名前の筋膜です。浅筋膜は皮下脂肪の中にあるので全身を覆っているといえるわけです。

人間の体は以下のように様々な筋肉があります。表から見えない部分にもたくさんの筋肉があります。

筋肉図

筋肉の数は膨大で、一つ一つ「○○筋」と名称があります。これらひとつひとつがそれぞれ膜で覆われています。これこそがメインとなる筋膜です。さらに、これらの筋肉同士も筋膜で連結されていたり、まとまったグループごとに筋膜で覆われ、そのグループ同士も連続性をもって繋がっています。浅筋膜ほどではないのですが、ある程度全身を包んでいるともいえます。

筋肉を包み込んでいる膜が筋膜と述べましたが、これを浅筋膜と分けるために深筋膜しんきんまくと呼びます。深筋膜の捉え方・定義は実際はバラバラです。深筋膜を筋内膜・筋外膜・筋周膜・筋上膜と名前がついているものの総称として解説されていたりしますが、ここではひとつのまとまった筋肉を覆っている外側の膜(筋上膜とも呼ばれます)を深筋膜とします。

筋筋膜の構造図

上図は、二の腕部分の断面図になります。赤い筋肉の塊の境界線となっている白い部分が深筋膜です。この図では6つの筋肉の境界線のように見えますが、6つそれぞれを深筋膜が覆っていており、隣接していることを表しています。骨も骨膜で覆われています。骨膜と深筋膜も隣接しているわけです。

実はこの深筋膜、一枚の膜のように見えますが、体の部位によって構造が異なるのです。

浅筋膜と深筋膜の違い

薄いピンクの層が深筋膜です。一つ前の二の腕の断面図で白くなっていた部分のうち皮膚に近い部分では3層になっているのです。手や足の深筋膜は3層構造となっていますが、胴体の胸やお腹では1枚の膜になっています。このように深筋膜といっても場所によって構造が異なります。

水色の層が深筋膜同士の滑りに欠かせない潤滑剤の働きをします。ヒアルロン酸を多く含んでいます。筋膜同士が滑ることで筋肉の収縮ができるわけです。筋膜は滑るものという認識はとても大切なポイントです。

先に示した筋肉の図のように筋肉の数は膨大です。膜といえば分かりやすいですが、実際はそれぞれを包んでいる膜の構造も複雑です。深筋膜は、筋肉一つ一つを包んでいるものの、部位によっては構造が異なる上に、それぞれの膜同士も繋がっている箇所が多く、シンプルに構造を説明するのは困難です。ですから膜という一枚のペラっとしたものよりはfasciaの原義である帯・包むものの方がイメージに近いといえます。

解剖学上、存在していないことになっている筋連結

筋肉だけを示している人体図は、実は深筋膜がない状態の図なのです。あくまで筋肉本体をわかりやすく示しているにすぎません。

このように筋膜は実在はするものの、昔からある解剖学の教科書にはきちんと載っていないのです。筋肉と筋肉のつながりは、筋膜同士の繋がりです。その繋がり(筋連結)が明示どころか一切排除された筋肉だけの図が、皆さまが目にする筋肉図です。ですから、筋膜に関することは現時点では「医学的根拠がない」とされてしまうのは致し方ないことなのです。

これが筋膜が整形外科の世界で「シンデレラ」に例えられるような「新発見」とされる理由です。また、病院にいっても治らないとされる要因のひとつともいえるかもしれません。

「筋膜リリース」とは筋膜をどのようにすること?

筋膜についての説明がながくなりましたが、本題の筋膜リリースについてです。筋膜リリースとは筋膜を異常な状態から正常な状態に戻すための技術です。

リリースという言葉から「筋膜を解き放つ」「筋膜を離す」といった膜をはがすかのようなイメージをお持ちになるかもしれませんが、異常な状態にある筋膜を正常な状態に戻すために行うのが筋膜リリースです。

筋膜を整えるといっても、元の状態を確認できない

よれたり、ねじれたりしている状態にある筋膜を整えるという説明も多く目にしますが、冷静になって考えてみて下さい。

どうやって確認しますか?

すっきりした!楽になった!という感覚で「効いている」「筋膜リリースすごい」と思い込んでいませんか?

普通のストレッチやマッサージ方法が、筋膜リリースという冠がつくだけで、特別な方法・画期的な方法ということになってしまっています。

そもそも、よれたりねじれたりしているとされる筋膜の状態自体を確認できません。よくテレビなどで紹介されるエコーによる筋膜の状態の確認は厚くなっている・硬くなっているといったざっくりしたレベルです。解剖しない限り筋膜の正確な状態はわかりません。筋膜の状態を確認するためだけに皮膚を剥がすわけにもいきません。

つまり現実問題、元の状態もよくなった状態も確認することは不可能です。確認は不可能でも、楽にはなったことは実感はできてしまいます。でもそれは一般的なストレッチや体操でも同じことです。

結合組織である筋膜の構造とは

筋膜は人体において「結合組織」に分類されます。結合組織の主な役割は、体の構造を支持すること、組織間の隙間を埋めること。筋膜は、筋肉と筋肉の連結・筋肉と骨の連結といった結合の主役なのです。筋肉を包み込むだけでなく配置を維持するために必要であることはイメージできるのではないでしょうか。

筋膜はメッシュ状の構造なのでセーターのようなものによく例えられます。ですが、セーターのような衣類の生地のように綺麗な均一なメッシュ状ではなく以下のような構造になっています。

筋膜はコラーゲンとエラスチンが主成分

よくある筋膜リリースの解説で、綺麗な格子状が崩れる・捻れる、といった説明がなされますが、それはあくまで分かりやすさに特化したイメージにすぎません。

上記画像のように筋膜は、コラーゲン線維とエラスチン線維が複雑に絡み合った構造で線維芽細胞せんいがさいぼうという細胞があります。線維芽細胞はコラーゲンなどを生み出す細胞です。コラーゲンはタンパク質で弾力をもっています。エラスチンもタンパク質でこちらは伸縮性があります。線維間はヒアルロン酸をたっぷり含んだ水分です。ですので膜という名前からサランラップのようなイメージを持たれるかもしれませんが、むしろ水分をたっぷり含んだ薄いシート状のスポンジとお考えください。女性が美容のためにお使いになるシートマスクに近いといえます。

ここで女性の方はお気付きの方もいらっしゃるかもしれません。筋膜の構造自体は皮膚の下にある真皮に近いのです。

筋膜が正常でない状態とはどんな状態?

筋膜が異常である場合、以下の3つの状態にあります。

  1. 潤滑剤(ヒアルロン酸)の凝縮化による膜間の滑走性不良→いわゆる「癒着」
  2. 細胞外基質中における糖タンパク質の脱水(ゲル化)と線維(コラーゲンとエラスチン)の高密度化による膜の圧縮→筋膜が硬くなる
  3. 組織損傷や慢性炎症、「癒着」と「硬化」の慢性化による膜の変性→筋膜が別の組織に変化(線維化)

このうち筋膜リリースによって改善が期待できるのは「癒着」と「硬化」の2つです。硬くなった筋膜を柔らかくするのはイメージできることでしょう。一方、癒着ですが、“筋膜はがし”という言葉や“リリース”という言葉から一般の方が連想するのはおそらく癒着の改善でしょう。ですが、恐らくほとんどの方がベリべりっと剥がすイメージを抱いているはずです。それは大きな誤解なのです。筋膜は滑るものです。癒着の改善とは、筋膜の滑りを良くすること、とご理解ください。

なお、線維化して別の組織に変性してしまったものは基本的には元には戻りません。

まとめますと、以下の2つが筋膜リリースの主な目的になります。

筋膜リリースの目的

  • 潤滑剤を元に戻して膜同士の滑走性を取り戻す
  • 線維の高密度化と基質のゲル化を解消して膜の伸縮性・弾力性を取り戻す

これらを達成するのために「水分補給」と「温度を高める」必要があります。

潤滑剤を元に戻して膜同士の滑走性を取り戻すために温度を高めます。潤滑剤であるヒアルロン酸は温度が上がれば潤滑機能が高まります。お風呂上がりに体の柔軟性が増すのはこのためです。運動前に体をあたためる・ウォーミングアップの目的も同じです。

いくら筋膜の滑りをよくしても、膜自体が硬くなっていてはいけません。筋膜の柔軟性・弾力性を維持するためには水分が必要不可欠です。水分を補給するために、筋膜に水分を届ける血液の流れが重要です。血流を増すことが水分補給になるのです。血流が増すと体温は上昇します。

モヤモヤ血管!病院で原因不明とされる身体の痛みの正体

しつこい痛みは血行不良が原因という常識が覆される新事実が発覚!!頑固な肩こり・腰痛にお悩みの方、セラピスト・トレーナーの方は必見です。

原因不明とされてきた慢性的な痛みの原因は「血管」にあった!!

慢性的な頭痛、肩や首の痛み、関節痛、怪我自体は治ったのに時々痛む、古傷がたまに疼く、と「痛み」でお悩みの方はとても多いのです。

痛みに耐えかねて病院にいったものの、整形外科でのレントゲンやMRI検査では異常なしという診断。原因不明ということで湿布や痛み止めを処方され、勧められたリハビリに通うも効果があるのか、ないのか分からない。はっきりしているのは抜本的な解決策が無いということ‥‥痛み止めの注射のためにペインクリニックに通い続ける‥‥そのようなどうしようもない痛みと向き合っている方々にとっては救いとなりうる方法があるのです。

それは「運動器カテーテル治療」です。

カテーテル自体は一般的なものですしご存知の方も多いと思いますが「運動器カテーテル」という言葉を耳にしたことがある方はそう多くはないでしょう。「運動器カテーテル治療」は横浜のOkuno Clinic院長の奥野祐次医師が第一人者として行っている治療方法です。海外からも大変注目されています。

長引く痛みの原因は血管が9割

奥野先生は次のように述べられています。

従来、血流は多ければ多いほど良い、血管はたくさんあった方がいいとされてきました。なぜなら血管は組織に栄養を届けてくれる良いものとしか考えられていなかったからです。しかし、第2章で紹介したように、血管はすべて役に立つわけではなく、正常な血管と病的な血管があります。モヤモヤ血管は役に立たない病的な血管です。役に立たないどころか、モヤモヤ血管そのものが組織の栄養を奪ってしまい、機能を障害します。このため、この病的な血管を減らすことができれば、病気の改善につながるのです。さらに血管周りには常に神経が寄り添って伸びる性質があり、この血管とその周りの神経が痛みの原因だとすると、異常な血管を減らすことは痛みを治療することにもつながります。

出典:「長引く痛みの原因は、血管が9割(奥野祐次氏著)」

「モヤモヤ血管(新生血管)」が最重要キーワード

モヤモヤ血管(新生血管)は、耳慣れない言葉だと思いますが、特定疾患である「もやもや病」は耳にされたことがある方もいらっしゃると思います。モヤモヤ血管(新生血管)はもやもや病とも関係があります。モヤモヤ血管(新生血管)が、具体的にどのような血管なのかについては、後ほど説明します。

まず押さえておいていただきたいポイントは、今まで原因不明とされてきた慢性的な痛みの原因が、モヤモヤ血管(新生血管)という血管の存在にある!!ことです。

もちろんモヤモヤ血管(新生血管)が100%の原因ではないでしょう。奥野先生の著書のタイトルにある「長引く痛みの原因は、血管が9割」とあるように、原因不明とされてきた痛みの原因の90%はモヤモヤ血管(新生血管)である、は人類にとって大変大きな価値ある発見であると思います。90%という数字は書籍を売るためのマーケティング的な数値でしかないかもしれませんが、原因不明の痛みの多くはモヤモヤ血管に由来しているケースが多いということだけは事実だと思います。

鍼灸師・あんま指圧マッサージ師誰もが抱えてきた疑問に対する一つの回答

鍼灸師・あんま指圧マッサージ師として臨床で疑問に感じてきたことの一つが、定説とされていることは本当に正しいのか?ということでした。

これまでの臨床経験を踏まえ、様々な試行錯誤を経て「肩こり」の専門院を開設したのは施術方法を確立できたからです。ですが、その裏付けとなる医学的な根拠の一部が世の中に存在しないという葛藤がありました。それが、奥野先生の著書、執筆論文を読み氷解したのです。

医道の日本 11月号の巻頭企画で当院の慢性肩こりの根本的な改善方法を紹介。

肩こりラボで行っている施術の紹介記事が「医道の日本 11月号」に掲載されました。

先月「医道の日本 10月号」では肩こりラボ開設にあたっての経緯や理念について取り上げていただきました。今号では具体的な施術の中身についてです。

施術の中身と聞くと「具体的にどんな方法?」「どんな特殊技術をやっているのだろう?」とお考えになるかもしれません。月刊「医道の日本」は鍼灸に携わる人・将来携わる人が読む専門誌です。一般の方向けの雑誌ではなく専門誌において特に私たち肩こりラボとして訴えたかったことは「治すために必要なこと」です。こんなすごいコトをしている!!といったテクニック自慢ではございません。

その理由は、鍼灸に携わっている方・将来携わるであろう方々に「肩こりラボというところは、本気で肩こり患者をなくすことを目指している鍼灸院なんだ」と認識していただき、そしてkatakori LABSの「志」を知っていただいて、そこから広がる可能性に期待しているからです。

有資格者も含めて一般的には、知識技術があり、特に特殊技術を持ち合わせたいわゆる「ゴッドハンド」が優れたセラピストであるという認識をされる場合があります。しかし当院はそのように考えておりません。

もちろん、施術を行うにあたり一定以上の知識や技術は必要なことですし、患者さんの苦痛を一刻も早く取り除くために極力即効性がある理学療法を追究することはセラピストとして当然の考えです。しかしそれがいき過ぎて、知識技術偏重の思考に偏ってしまうと、セラピストとして大切な包括的で客観的な視点が弱まり「患者さんを診る」ということを見失ってしまうことになりかねないと私どもは危惧しています。

katakori LABSは「一人でも多くの方を、より高い確率で、かつ最短で治すこと」を命題と掲げています。

肩こりラボには「ゴッドハンド」はいません。

当院の施術者はそれぞれ性格・タイプがバラバラなのですが、個々によって施術の方法、方針が異なることはなく、「治す」という共通の目的に向かって皆同じ方向を向き、共通の思考、技術・方針のもと患者さんと向き合います。神がかった特殊技術は用いずとも、基本を忠実に行い貫くことで一定の成果をあげることができています。

その理由は、

  1. 疾患ではなく患者さんを診るに徹すること
  2. 見立て(専門用語では評価という)と計画に注力していること
  3. 問診などの患者さんとの意志疎通、コミュニケーションを大切にしていること

であると解釈しています。

セラピストであれば、知識技術をアップデートし続けていくのは前提で、それ以外の部分に意識を向けています。

私たちが考えるセラピストとして大切なこと

現在の鍼灸業界は全てではないにせよ、その多くは「施術者が自ら考え、やりたいことをやる」という状況といえるでしょう。

セラピストも人間ですしそれを全否定するつもりはありませんが・・・あくまでも施術を受けるのは患者さんです。施術を受けるのは患者さん、評価するのも患者さんです。

特殊技術を行うことができた、できるようになった喜びというのは施術者本位のものです。それは患者さんにとっての喜びとはまったく異なります。

患者さんは、目的があって通院されるということ、そして治したいという気持ちがあります。受け手である患者さんの心情や、本当の意味で求めることを汲み取り、精査し、伝え、実行するのがセラピストの責務であり資質です。これはすなわち患者さんを診る力ともいえるでしょう。

知識技術偏重思考の結果、この部分がおろそかになってしまっている場合がとても多いのです。結果が求められるのはその後です。

私たちkatakori LABSが期待する可能性

鍼灸業界全体が「治す」という方向へ視点を一斉に向けることができれば、患者さんは多大なメリットを享受することができます。私どもはそれを本当に心から望んでいます。

成果を上げられないからこそ、一時をしのぐことやリラクセーションにはしるなど表面的な部分へ力を注ぐようになってしまい、知識技術偏重の方向へも進んでいってしまっているかもしれません。

それは、施術者の利己的な自己満足の域から出ることはないですし、本当の意味では誰のメリットにもなっていないと思います。

可能ならば、できるかぎり当院の理学療法のノウハウをシェアしたい。

他院との違いをアピールしている以上、矛盾しているように思われるかもしれませんが、可能ならば、できるかぎり当院の理学療法のノウハウをシェアしたいという考えはあります。ただ、どんなに知識技術があっても、そもそもの思考の方向性がずれてしまっていては素材があっても活かすことができません。

高名な大学教授が優れた臨床医かというと必ずしもそうではないように、どんなに知識技術があってもそれが治すということに直結しないことはなんとなくイメージができるのではないでしょうか。

患者さんを治せるようになりたいというモチベーションは高いものの、あらぬ方向へ力を注いでしまっている例が本当に多いため、まずはセラピストとして大切なことがあるのだということ、それが治すためには必要なのだということを強く主張させていただきたいのです。

セラピストとは「治すこと」を生業とする者。

治せなければ、、、セラピストとはいえません。 「治すために必要ないこと」を深く考えて追求していただきたいと願っています。

「治す」という信念のもと、いかなる時もぶれることなく自らの役割を全うすること、そして常に向上心をもって取り組むセラピストはゴッドハンドではなくプロフェッショナルです。

前述したように、業界全体の方向性が変わるということ、そして一人でも多くの「プロフェッショナル」が増えること、「志」あるセラピストが増えることを私どもは本気で望んでいます。これらは患者さんにとってのメリットになると確信しているからです。

「医道の日本」への掲載は、自らのぞんで叶うことではありません。たいへん貴重でありがたい機会をいただき、私たちの信念に基づいて強い想いをこめて取材にのぞませていただきました。
当記事からわずかでもインスピレーションを受けた方がいて、そのような方々からの意志が増え、やがて大きな流れとなること。個の力は小さくとも、それらが集まることで大きな力へと転じ、業界が変わる可能性ともなりうるでしょう。これが私たちの抱く期待です。

katakori LABSは開設3周年

おかげさまで2015年11月1日で開設3周年をむかえることができました。

マンションの一室ベッド一台で気持ちだけは一人前でスタートしましたが、個の力は実に小さく儚いものだと学びました。

多くの方々からの支え、ご指導があったからこそ今があると認識しています。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

しかしまだたった三年・・・目標・夢はまだまだ遠く、手が届いておりませんが、ぼんやりしていたものが、はっきりしてきた実感はあります。

緒先輩方が培ってきた歴史は大切に、しかしそれに甘んじることなく常に進化し続けるよう、信念をぶらさずに、温故知新の精神で努めてまいる所存です。

改めて、この大きな機会を与えてくださった「医道の日本」社には心より感謝申し上げます。

医道の日本

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首の骨と椎骨動脈解離の正しい知識。自分の体は自分で守りましょう。

動脈解離という言葉は耳にしたことがある、ご存知の方は少なくないと思います。この動脈解離という病名を目にする・耳にするのは、芸能人や有名人の方が「動脈解離で入院」「大動脈解離で死去」といったニュースがもっとも多いのではないでしょうか。

解離と動脈というワードですと「解離性脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血」というのもよくありますね。

ついこの間まで元気だったのに・・・そんな突然の入院や訃報・・・そこで頻繁に出てくる「動脈解離」以外にも「脳梗塞」や「くも膜下出血」「脳内出血」もよくきく病名ですね。これらは、いわゆる脳卒中です。

脳卒中はなってしまったらどうしようもない、と思われていませんか?

実は、この脳卒中と動脈解離は深い関係にあります。

当記事は、脳卒中を防ぐための方法についてのブログではございませんが、身近にあるリスクを少しでも減らしてほしいのです。脳卒中は年配の方に限った病気ではございません。子供でも起こります。脳卒中に年齢は関係ございません。

誰もが正しい生活習慣が大切ということは分かっています。ですが、実際の所、正しい生活習慣って何でしょう?たとえば、食事の場合、朝昼晩と1日3食が正しいのでしょうか?正しい睡眠時間って何時間?

正解は人によって異なる、というよりも正解はない、のが正解なのではないでしょうか。

生活習慣に正解はなくても、してはいけないこと、気をつけないといけないこと、これは絶体にあります。

そこで今回お伝えしたいのは「首を大切にしよう」ということです。

スマホが生み出したストレートネック

スマホが子供の首に悪影響を及ぼす可能性via:ZDNet

ストレートネックは首の骨が真っ直ぐになってしまっている状態をさす言葉です。耳にしたことがある方も多いでしょう。これが一般的になってきたのはスマートフォンの普及による影響です。スマホ首、スマホッ首ともいうそうです。

海外ではテキストネックと呼ばれています。そう、勉強や読書をする際は、下を向いて長時間首が動かないことがしばしばです。下を向いたまま首を動かさない、これが問題なのです。仕事や勉強の場合、集中力の途切れたり眠くなったりと、合間合間で息抜きを自然といれますが、スマホの場合、楽しすぎたり熱中してしまったりで時間を忘れてしまうことが多いのと、片手で操作できてしまうが故に立っていても歩いていても横になっていても使えてしまうので、首を長時間動かさないリスクが非常に高いのです。

脳卒中は、首への高負荷と深い関係があります。

脳卒中ならびに動脈解離は、だれでにも起こりうることです。子供、大人関係ありません。当記事は、ぜひとも、知識としてあらゆる人に知っておいてほしい内容です。

椎骨動脈解離という病気をご存知ですか?

椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)という病名を耳にしたことがあるという方は多くはないと思います。

2014年、国家資格を持っていない無資格者が免疫力を高めるためと称した独自の手技で乳幼児が死亡させるという大変痛ましい事件がありました。「ずんずん運動」という名前を記憶されている方はきっと多いと思います。

 

「ずんずん運動」は変わった名称なのでフォーカスされがちですが、上記の新聞の紙面にある通り「首ひねり」が一番の問題です。

乳幼児の首を無理に捻ることで、何が起こるか・・・乳幼児に限らず成人でも危険なことは誰にでも想像つくはずです。人間の関節は、個人差はありますが動かせる範囲(可動域)は大体決まっています。可動域をトレーニングで多少広げることは可能ですが、可動域を超えた動きをすれば怪我します。首の場合は、命に関わる危険があります。

人間は自分一人の力では無理な動き・可動域を逸脱した動きは普通はできません。ただ、人にやってもらうとなると話は変わってきます。

厚生労働省が禁止にしている首ポキ施術

身体に無理な負荷をかければ怪我するのは当然のこと。肩・肘・膝などを痛めれば日常生活に支障をきたしますが、生命に別状はないことがほとんどです。

ただし、首となると話は別です。

人間が生きていく上で最も大切な部位は、心臓と脳です。心臓と脳つまり頭と体をつないでいるのが首です。首は背骨の一部で、背骨の中に脊髄があります。そして脳は脊髄と繋がっています。脳が機能するために必要な血液は首にある動脈を通って送り込まれます。

首へのダメージが命取りになりやすいことはご理解いただけると思います。

では自分で首を捻る・首の骨をポキポキ鳴らすといった行為で簡単に首がダメージを受けるかと言いますと、そこまで人間の体はもろくは出来ておりません。ただし人にやってもらう場合は要注意です。自分自身ではできない動き、つまり人間本来の動作ではない、つまり、そのような行為に耐えれるように体はできていないためです。

整骨院・カイロプラクティックでは首ポキを施術することが多々ありますが・・・

一部の危険な手技の禁止

カイロプラクティック療法の手技には様々なものがあり、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要があること。

出典:医業類似行為に対する取扱いについて 厚生労働省

国が禁止するよう通達しています。

当通知は平成3年、今から25年以上も前に、厚労省が当時の業界の氾濫状況を危惧し出されたものです。今と昔は違うから問題はない、という意見をネット上で散見しますが、厚労省サイト上にこの内容を撤回する新たな通知はありません。よって厚労省としては現在でもスラスト法などの首ポキ施術は危険なため自粛するようにという見解といえるでしょう。(スラスト法とはカイロプラクティックの用語です。アジャストメントの一種で関節をボキっとするときに瞬間的な圧を加える動作そのものの通称のことです。)

首に無理な負荷がかかることが大変危険とはいえ、具体的に首の中では何が起こるのでしょうか?きっと「首の筋肉を痛める」「首の骨が折れる」といったことを想像されることでしょう。

首には頸動脈があります。頸動脈が切れたら死んでしまう、というのは、映画・漫画などでも度々描写されてきました。

首の血管に着目しますと、椎骨動脈解離・脳動脈解離を引き起こす可能性があるのです。

椎骨(ついこつ)とは、首から腰までの背骨の構成パーツとなっている骨です。首の骨、いわゆる頚椎(けいつい)とは7つの椎骨で構成されています。

頚椎の椎骨は7つ

椎骨動脈は、頚椎の椎骨の中にある動脈です。後ほど詳しく解説しますが、椎骨動脈は首にある動脈の1つであるとだけ心に留めておいてください。

日本人の死因の代表「脳卒中」

脳卒中は、頭(脳)に異常が起こり、突然、倒れる(卒倒する)という意味で、昔から使われてきている言葉ですが実は医学用語ではありません。一般用語です。正式には脳血管障害と言います。脳血管疾患と表記されることもあります。脳血管障害は、病名ではなく、脳をとりまく病気の総称です。脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血が代表的で、もやもや病・慢性硬膜下血腫も脳血管障害に分類されます。

最新の平成25年の人口動態統計では、脳血管要害は日本人の死因第4位に入っています。長年トップ3に鎮座していましたので、脳卒中はガンと同じくらい知名度あることでしょう。

動脈解離を理解するために必要な血管についての基礎知識

血管は大きく3つの種類に分かれます。

まず、この病気を理解するために血管の構造を理解していただきたいと思います。

血管は動脈・静脈・毛細血管に大別されます。

心臓から血液を送り出すのが動脈。心臓に血液を戻すのが静脈。動脈・静脈ともに末端の細い血管は細動脈・細静脈と呼びますが、その細動脈と細静脈を結んでいるのが毛細血管です。

血管は3層構造

下図をご参照ください。血管は単なる管のように見えますが、実はその構造は複雑です。血管の壁は、内側から外側にかけて、内膜、中膜、外膜の三つの層から出来ています。これは動脈・静脈共通の仕様です。

このように血管は動脈と静脈共に3層構造です。同じ3層構造ではありますが、動脈と静脈では構成する組織が異なります。動脈は静脈に比べて、より強力な組織でできています。動脈は、万が一破れてしまうと内臓に栄養を送れなくなってしまい生命に関わる一大事になってしまうため、めったなことでは破れたりしないような強固な構造になっています。

動脈が静脈と比較してどれくらい強固かと言いますと、動脈にははりが通りません。静脈には鍼は通ります。鍼を経験されたことない方は、鍼を刺すと血管を突き破るのでは?と不安に思われることでしょう。ご安心ください。毛細血管をはじめとする細い血管には損傷を与えますが、すぐに回復する問題のないレベルです。鍼が動脈に刺さることはありません。

 

鍼は動脈に刺さらない

筆者は中国でおこなった人体解剖実習にて、動脈と静脈に鍼を刺して感触の違いを学びました。

もちろん生きている人間で試すことはできません。実習で使用させていただいたご献体はホルマリンで細胞が変性しているとはいえ、その感触の差は歴然!!

なんとか動脈に刺してみるぞと意気込んでみるものの、通常に鍼灸用の鍼では刺すどころか逆に鍼が曲がってしまい負けてしまいます。

静脈は鍼を刺すことはできますが、動脈は刺すことができないほどその壁は強固なものなのです。

血管に鍼を刺さることを心配される方はたくさんいらっしゃいます。今一度強調しておきたいこと、それは鍼灸用の鍼で、重大な問題が起こり得る動脈に鍼を刺すことはそもそも物理的に困難であるという事実です。そして、ある程度の経験を積んだ鍼灸師ならば筋肉とそれ以外の組織の感触の差を感知できます。仮に誤って動脈に刺そうとしてしまう可能性そのものが極めて低いということをご理解いただけたらと存じます。

動脈解離の「解離」とは何が解き離れるのでしょうか?

動脈の構造の次は、イマイチわかりにくい「解離」を説明します。

動脈の管の壁は3層構造です。この層と層との間で避けてしまった状態を医学用語で「解離」と言います。

何らかの理由で動脈の壁が内側から破れて、動脈内を流れる血液がこの壁の中に入り、動脈の壁が層と層との間で裂けてしまった状態を指します。内膜・中膜・外膜と重層構造になってくっついている血管の壁がはがれてしまうことですね。

これには二つのタイプがあります。

狭窄型

内膜と中膜との間が裂けて、その間に入った血液が、裂けた内膜を内腔側に向かって膨らませてしまうタイプ

すると、その部分の動脈の通路は狭くなって、ひどい時には狭くなった部分が詰まってしまうこともあります。その結果、血液が流れなくなって、脳梗塞を引き起こしてしまうこともあります。

 

動脈瘤(どうみゃくりゅう)型

中膜と外膜との間が裂けて、その間に血液が入った場合で、外膜が動脈の外側に向かって膨らんで血管のコブ(瘤)のようになるタイプ

このタイプで重症の場合はコブが破れてくも膜下出血が起こることがあります。

 

動脈解離が生じる原因

動脈解離というと大動脈解離が有名ですが、動脈解離は全身の動脈で起こります。

動脈解離が何故起きるのか?残念ながら原因は一つではありません。高血圧・糖尿病・高脂血症といった生活習慣病や、喫煙・動脈硬化・血管の病気・外傷など様々な原因があります。複数の要因が合わさっていることの方が多いでしょう。そして原因が特定できない原因不明なことも珍しくありません。

椎骨動脈解離は椎骨動脈の動脈解離です。椎骨動脈とは?

椎骨(ついこつ)は、首の骨の名前です。

首の動脈は2種類。左右で1本ずつで合計4本。

当院は首こりの専門院ですので首の動脈に焦点を当てます。首の動脈と言っても頚動脈と首の骨の中にある椎骨動脈の2つあります。首の動脈といえば頸動脈。当記事では頸動脈解離ではなく「椎骨動脈解離」について取り上げます。

椎骨動脈は右と左に一本ずつあります。「未破裂左椎骨動脈解離」という病名の場合、左側の椎骨動脈に解離が生じているが破裂まではしていないということです。

椎骨動脈解離は大変危険です。

「椎骨動脈解離」とは、何らかの理由で、椎骨動脈の壁が破れてしまい、血流が妨げられてしまう病気です。椎骨動脈は脳の深部へ血液を送る重要な血管なので、ここからの血流が閉ざされてしまうと生命に重大な影響を及ぼします。

特に、動脈解離が生じ②のタイプにように、動脈瘤(血管のコブ)ができることを医学用語で解離性動脈瘤と呼びます。

解離性動脈瘤は、脳に関連する動脈の中でも特に頚部の回転の影響を受けやすい椎骨動脈から脳底動脈(椎骨動脈の延長にあり脳の深部へ到達する血管)に多く、発病の年齢は年齢も40歳代最も多いですがそれに限らず20~60歳代と幅広いです。一般的な脳血管障害は中高年者に多いという認識がありますが、解離性動脈瘤を起点とした脳血管障害は比較的若年者、働き盛りの年代に多いといえます。脳神経外科領域では、年齢の若い世代に起こった脳梗塞(のうこうそく)やくも膜下出血などの脳卒中の場合、まずこの病気を疑うといわれるほどです。

椎骨動脈の解離性動脈瘤は、脳梗塞やくも膜下出血といった症状が出現する前に、突然に起こる片側の項部(うなじ)や後頭部の痛みが出現することが多いです。これは動脈の壁が裂かれて解離するときに感じる痛みであろうと考えられています。それに続いて脳梗塞やくも膜下出血が起こるのです。

そこで、急に起こったひどい項部痛や後頭部の痛みがあれば、この病気を疑う必要があり、その場合、頚部~頭蓋内の椎骨動脈のMRA検査を実施するのが普通です。(MRAとはMRI検査の技術を応用した血管造影検査のことです)

また、動脈解離が原因でなくとも、先天的に無症状で動脈瘤をもっているという方もいらっしゃいます。その場所が椎骨動脈である可能性も考あります。動脈瘤は症状が無ければ検査を受けることもありません。危険かどうかの判別は、たまたま検査して見つかった場合くらいしかできないのが現実でしょう。そもそも症状がない場合、精密な検査は保険がきかず高額であり、さらに中規模以上の病院で行う必要があるため、ハードルが高いのです。

ここまでを簡単にまとめると、椎骨動脈解離が生じると、脳への血流が閉ざされて脳血管障害の元となる可能性があります。脳出血やクモ膜下出血などの前段階となる場合があるので、馴染みが薄いとはいえ軽視はできない重い病気といえるでしょう。

 

椎骨動脈解離が生じる原因

椎骨動脈解離を発病する原因、すなわち首の動脈が内側から裂けてしまう主な原因は、頚椎の捻転を伴う動きやスポーツや運動などによって頚椎の中を走行する椎骨動脈に対する軽微な外傷と考えられています。動脈硬化が進行していたり、高血圧の場合には、確実にリスクは高まるでしょう。残念ながら、明らかな原因が不明の特発性(非外傷性)の場合もあります。

横突孔に沿って椎骨動脈は走行

頚椎は7つの椎骨で構成されていますが、椎骨の両サイドにある小さい穴があり、横突孔(おうとつこう)と言います。椎骨動脈は、その7つの横突孔のうち6つの横突孔から成る狭いトンネルを通って首から脳へむかって走行しています。つまり、頚椎の動きに連動して椎骨動脈も動きます。

このように解剖学的な面からも、首を普段自分で動かすことができる可動域を超えて他者の力で急に捻転させてポキっと鳴らす行為は、少なくとも椎骨動脈にとって良い影響は期待できないこととなります。

ストレートネックの人が首ポキ施術を受けるとリスク増大

首ポキ施術は、ほとんどの場合、首・肩こりやそれに伴う頭痛などの症状を解消する目的で行われます。そのような症状を抱えている方は高い確率でストレートネックの状態であることが多いです。

スマホ首いわゆるストレートネック急増の原因はスマートフォン

ストレートネックは一昔前まではパソコンを使ったデスクワークの方が訴える症状でしたが、今ではスマホ症候群の一つとして有名で「スマホ首」とも呼ばれています。スマートフォンの普及の結果、スマホ首・ストレートネックで悩むのは大人だけではありません。むしろスマートフォンを長時間使っているのは子供です。ということは、国民の多くが、首や肩のこり・痛みといった症状を抱えており、首の骨を鳴らす行為を癖にしている方が少なくない、首ポキ施術でスッキリしたいと思っている方が増え続けているとも言えます。

ストレートネックを引き起こす原因は筋肉。骨ではありません。これは肩こり・首こりにも言えます。

本来カーブあって然るべきものが、そのカーブがなくなってしまうと椎骨動脈の通るトンネルも不自然な形となってしまいます。すると中を通る椎骨動脈も不自然な走行となります。ストレートネックの状態で無理に首を動かそうとすると、頚椎に負担をかけ痛みにつながるだけでなく、椎骨動脈にも必要以上のストレスをかけてしまうことになるのは想像できると思います。

スマホ首という言葉が広まっているようで、ストレートネックは現代病の代表のひとつといえる状況になりつつあります。ですからストレートネックについては後日詳しく書きたいと思いますが・・・ストレートネックを引き起こす原因についてだけ押さえておいてください。ストレートネックは高齢者や一部の特殊な例を除いてほとんどが筋肉によって引き起こされます。骨ではなく「筋肉」です。骨の配列は筋バランス(アライメントと呼ばれることが多いです)や体の使い方によって生じます。長年、悪い姿勢が悪い状態が続くと筋肉がそれに合わせて変化していきます。ここはとても重要なポイントです。骨の配列が歪むのは、筋肉の変化による結果です。ですので、関節をボキボキ鳴らして矯正と呼ばれる施術を行っても一時的だったり、気分的によくなった感じがするだけで、配列そのものが根本的に改善されることは絶対にありえません。

脱臼してはずれてしまった関節を元に戻す「整復」というものがあります。これは柔道整復師の専門領域です。外れた関節を元に戻すわけですから、ボキっとやれば骨のゆがみが治るようなイメージをもたれる方は少なくないと思います。脱臼と骨の配列(アライメント)の矯正は根本的に異なるものです。脱臼は無理な力が関節に急激にかかったことで生じますが、アライメント異常は小さな力が持続的にかかり時間をかけて生じますので、発生の原因からして異なります。ですから、脱臼の整復と、ストレートネックなどのアライメント異常の矯正は、目的こそ骨も配列を整えるということで同じですが、内容としては全く別物です。

骨にアプローチしたところで歪みは一時的に矯正されるだけです。すぐに元に戻ります。

骨にアプローチするのではなく筋肉にアプローチすることで骨格を正す。これが正解です。姿勢という点では、納得していただけると思います。

とは言いましても、人は様々な不調を抱えています。関節の痛みや腰痛といった姿勢や動作と直接関係していると思われそうな症状以外で、最もポピュラーな悩みの代表は頭痛かもしれません。

業界の実状としましては「首から後頭部にかけての頭痛は椎骨動脈が原因であり、背骨のゆがみが椎骨動脈に負担をかけている・・・」という考え方があります。整体やカイロプラクティックの領域ではしばしば「〇〇矯正」「アジャストメント」といった施術によって関節をボキッと鳴らして「ゆがみ」を矯正することで頭痛が治るとされる行為が気軽に行われています。

ですが、ここで忘れてはいけない大事なことがあります。

頭痛は椎骨動脈解離の症状のひとつ!!

頭痛で病院にいって検査をして助かったという話はよくきくと思います。放置していたら手遅れになるところだったというのは割と身近な話であり、誰にでも起こりうることなのです。

頭痛は椎骨動脈解離の初期症状のひとつです。これが大事に至った結果、脳梗塞・クモ膜下出血といった脳卒中になる可能性が高いのです。脳動脈瘤・脳動脈かい離といった言葉が使われることが多いかもしれませんが、脳動脈は椎骨動脈と繋がっています。つまり椎骨動脈の上の部分からは脳動脈です。

頭痛の原因が椎骨動脈解離の症状かどうかを判断できるのは病院のMRIなどを使った検査のみです。頭痛の原因は、整体やカイロにいっても絶対にわかりません。

整体やカイロを体験したことがある方でしたら、一度くらいはボキっという施術を受けたことがあることでしょう。頭痛持ちの方でしたら自殺行為・ロシアンルーレットです。そして頭痛持ちでない場合でも、はっきりと申し上げますが、首ボキ施術はたいへん危険です。厚生労働省もとりわけスラスト法とよばれる首ポキ施術に関しては危険であり自粛するよう警笛をならしているということは首ポキ解消法の真相(首をポキポキ鳴らすのは本当に危険なのか?脳血管障害や死亡リスクとの関連性)でもお伝えさせていただきました。また、カイロプラクティックの本場であるアメリカにおいても、米国心臓協会と米国脳卒中学会は、スラスト法が脳卒中を引き起こす可能性があるとの声明を、2014年8月7日発行の米医学誌「Stroke」(電子版) に掲載しています。

首ポキ施術は受けないでください。そして、施術者も絶対に行わないでほしい。

自ら首を捻じってポキっと鳴らすのと、他者の力で動かして鳴らすのでは訳がちがいます。「首ポキ施術」は本当に危険なのです。スッキリ感が得られる以外のメリットはありません。一瞬の爽快感と引き換えに生命に関わる危険性を高めてしまうのはもはやデメリットの範疇を超えています。

アライメント異常は骨をボキボキしても治らない

前述しましたように、首肩周辺に症状をかかえている方はストレートネックなどの頚椎のアライメント異常をかかえている方が多いです。アライメント異常があると関節は正しく動くことができないため、そのような状態で急激に動かすことによってかえって傷めてしまうこともあります。

アライメントの異常はいくら骨をボキボキしても改善しません。それどころか骨の配列が正しくない状態で首を動かすことは椎骨動脈にも余分なストレスを与えてしまう可能性もあります。首ポキ施術は気軽に受けるべきではないですし、施術者は絶対に行うべきではないのです。

脳神経外科の医師も注意を呼びかけています

脳神経外科の第一人者である平山晃康教授は以下のように述べておられます。

痛みを主訴とする脳外科疾患の診断のポイント

椎骨動脈解離を診断する契機になる初発症状は、突発する片側の後頭部から後頚部にかけての痛みである。出血型では、解離による関連痛に加えて、くも膜下出血が頭痛の原因になっている。虚血型でも、同様の痛みが起きる。よって、中年の成人に片側の後頭部から後頚部にかけての頭痛が突発したときには、椎骨動脈解離を疑わなければならない。また、カイロプラクティックの頚部への施術や、美容院などでのシャンプー後(hairdresser’s salon syndrome or beauty parlor syndrome)にも起こる可能性があるので充分注意が必要である。

出典:痛みを主訴とする脳外科疾患の診断のポイント 日本大学病院脳神経外科 平山晃康教授

首ポキ施術は「一時的なスッキリ感」を得られます。そのスッキリ感とリスク・代償を天秤にかけたら・・・受けたいと思われる方は限りなく少ないのではないでしょうか。リスクを冒してまでの得られるメリットは無いため、首ポキ施術を受けるのだけは絶対にオススメしないと主張させていただきます。

誰にでもできる脳卒中予防方法

ここまで小難しい話・危険や不安を煽るような表現をしてしまいましたが、何ができる?どうすればいいの?とお思いでしょう。

首はデリケートだから大切にするという意識をもつ

コメカミや後頭部を強打したら死んでしまう可能性があることは多くの人がご存知のことですが、普段コメカミや後頭部を守ろうと意識されている方は少ないはずです。ですが、外部からの衝撃がありそうでしたら自然と守ろうとするはずです。

首に対しても同じような意識を持ちましょう。

女性なら見ず知らずの男性に髪の毛を触られるのはとっても嫌なことでしょう。首を勝手に触られるのを嫌!強い力で触らないで!くらいの意識でよいと思います。

首の骨を鳴らすのを目的としない

スマホが生活の一部になってしまい、首肩への負担は老若男女とわずどんどん増しています。

気づけば街中にストレッチ店がいっぱいあります。少し前までなかったと思いませんか?

首や肩が凝ったらストレッチするのは良いことです。が、首の骨を鳴らすことを目的になってしまっている人が結構います。

数年前に大橋未歩アナを襲った「若年性脳梗塞」・・・原因は首をボキボキ鳴らす癖だったそうです。

「若年性脳梗塞」でいう若年性とは45歳以下を指します。20代・30代・40代前半はみな若年として扱われます。

漫画「北斗の拳」のケンシロウのように拳をボキボキ鳴らしたりするのと同じ感覚で、首や肩の骨を鳴らしてしまうのはやめましょう。

首ポキ施術だけは受けない!

整体やカイロプラクティックに通っている方、通うことをご検討中の方に対して、整体やカイロプラクティックへ通わないで!!とは言いません。

首ポキ施術だけは遠慮する旨を、予めお伝えください!

脳卒中の100%予防するのは不可能です。

脳卒中になって、治って通常の生活に戻れる可能性は決して高くはありません。

脳卒中は年齢に関係ございません。リスクを避けることは簡単です。誰にでもできることです。知っているか、知らないか、だけです。

首ポキをしない・受けない・・・心よりお願い申し上げます。

カイロプラクティックや整体で救われた・救われている人がいるのも事実

ここまで首ポキ施術は危険だから受けるべきではない!!という一点ばりの主張でしたが、カイロプラクティックや整体を全否定しているわけではありません。当たり前のことですが否定はできません。これらの施術で救われた患者さんは実際にいらっしゃるわけです。

カイロや整体が果たす役割を明確にして民間療法としての責務をはたしている施術者がいないわけありません。現実には簡単な講習やセミナーを受けただけの整体師やカイロプラクターがほとんどかもしれません。カイロプラクターや整体師に関する法律自体が存在しないため、誰でも名乗りたければ名乗れます。

今、この記事をご覧のあなたも「カイロプラクターです」「整体師です」って自称できるのです。

ゴッドハンド多すぎる問題

それぞれがゴットハンドを自称しているという実状があります。ゴッドハンドと呼ばれている人、多すぎると思いませんか?真面目に堅実に標準医学に則っり信念を持って施術している施術者がいないわけでは決してないにせよ、それは極めて少ないのです。

医師でないのに医師であるかのごとくまたは医師や医療を連想させるような名称の表現を用いたり診断行為が実際行われていること、とにかく何回も通ってもらうことが第一に考えられているために利用者の混乱を招き、本当に困っている方が適切な処置を受けられない状況であったり、かえって難治性となってしまうということが実際に起こってしまっているという点です。

首や肩の調子が悪くてなんとかしたいと思っている方で、通りすがりのお店・整骨院になんとなく入ってみようとお思いになられる方は少なくないと思いますが、街中にはコンビニ以上に溢れています。ドラッグストアでも、薬剤師のいないところといるところがあるように(薬剤師がいなければ例えばロキソニンは買えません)、肩こり・腰痛に効きそうなお店・整骨院は、国家資格保持者が行っているところとそうでないところが混在しています。雰囲気・技術云々以前に、最低限国家資格者かどうかだけは確認しましょう。これは腕うんぬんの話ではなくトラブルにあう確率の話です。悪化してしまう・無駄なお金と時間を使ってしまう確率を下げたいのであれば、まず国家資格者を選びましょう。

首ポキは絶対に行わないでください。

筆者個人的には、医学的根拠として周知されるよう前向きな努力・研究を惜しまないということが前提であればの話ですが、現時点で厳格な統計学的処理をパスした医学的根拠に乏しくとも一定の規範や倫理観をもって受け手のメリットを追求した施術に徹することは、ある程度は許容されるものではないかと考えています。

 

海外では医療として認められている。WHOが・・・といったキャッチフレーズについて

カイロプラクティックを行っているところが日本では認められていないけど海外では医療として認められている・海外では医療である、と宣伝しているのを目にしたことある方は少なくないと思います。日本では認められていませんので、整体師・カイロプラクターは誰でも名乗れますし開業も可能です。国内で民間資格はありますが、国家資格ではありません。

「アメリカやヨーロッパ諸国では医者として認定されている。」や「カイロプラクティック医師」、「アメリカでは第一医療機関として認められている」等といった表現/主張は間違いである。これは先ず、アメリカにおいてのカイロプラクティックは、日本では医師のみが行うことが認められているX線撮影装置の使用による検査や診断・診察業務が法律により認められている事や、州によっては一部の外科的処置を行うことが法律により認められているという、我が国には前例のない専門職であることによるものだと考えられる。また、これはアメリカにおいてDoctor of Chiropracticという第一職業専門職学位が授与されることで、Doctorを医師と間違って訳しているまたは、広告のための誇張だと考えられる。アメリカにおいてはDoctor(Dr.)の敬称は医師にのみつかうものではなく、Doctorate degreesが授与される専門職、Ph.D.の学位をもつものを習慣的にDr.の敬称をつけて呼ぶ。

出典:カイロプラクティック wikipedia

ウィキペディアより引用しました。当然のことですが日本ではX線撮影装置の使用による検査や診断をカイロプラクターが行うことは出来ません。アメリカでいうドクターの呼び方と日本のドクターの意味が異なっているという事実。アメリカでドクターだから、日本では医師、とはなりません。これを恣意的に悪用しているケースが多いので、この点を踏まえてカイロに通うことを検討なさってください。

首ポキ施術行為の蔓延問題の本質

鍼灸・マッサージは一般的には「東洋医学」という認識されています。今では美容鍼ブームのおかげで美容にいいというイメージをお持ちの方が増えたかもしれませんが、まだまだ「気」や「ツボ」といったよくわからないけれど効くらしい・・・という得体のしれないイメージをお持ちの方が多いはずです。

鍼灸治療は今では多くの大学病院でも取り入れられておりますが、医療関係者の中には擬似科学、インチキだとお考えの方もいらっしゃいます。施術を行う側としても「曖昧さ」や「東洋医学」に甘んじて、「根拠のない見せかけの医学」を行ってしまっている施術者が少なくないのも事実。このようなことからも「鍼灸・マッサージは疑似科学・ニセ医学である」という考えを否定したくてもできない状況であるということが実際のところです。

首ポキ施術行為が蔓延していう本質的理由はこれらの業界の現状によるところが大きいと思います。

例えば、鍼ひとつとっても、ツボにうつという東洋医学的な手法が大半ですが、現代医学的に考えて的確に筋肉・筋膜にうつやり方もあります。世間一般では鍼=東洋医学ですが、西洋医学的に鍼を行っている人も、知らない人からみれば東洋医学やってる人と思われるわけです。一般の方ならそう思われても仕方ないのですが、医療関係者でも「はいはい、東洋医学ね」と理解しようとすらしてくれないことが割と普通です。

ですから、まして国家資格者でない人が、首の骨を鳴らす施術していても最初から眼中にすらないのです。医師が気にするのは眼の前の患者さんです。カイロや整体で首ポキをしている人たちではありません。だから好き勝手にやれてしまい、行政の指導も、結局は事件・事故で大きな社会問題にならない限り放置と一緒です。

あなた自身だけでなく、身の回りの人・大切な人に伝えてください

首ポキ施術蔓延の原因が業界自体の体質?にあるとはいえ、今は国民ひとりひとりが情報発信者のネット社会です。業界ではなく社会をつくっているのは私たちひとりひとりです。つまり誰にでも変えられる力があります。力の大きさは関係ありません。

脳卒中になると、意識が戻らずコミュニケーションとれないまま亡くなられるのはよくあることです。そして運良く生き残れたとしても障害を持ったまま生きていかないといけないケースも多いです。

一番大切な人が、寝たきりで意識が戻らない、そんな悲しい残酷な世界を想像してみてください。

知らなかった、そう言われたから・・・では後の祭りです。

「首の骨ならす癖やめなよ!死ぬかもしれないよ!!。」

たとえ、そう声かけたところで癖になっている人の癖を直すことなんて難しいのですが、少なくとも「え?死ぬ?」という意識を持ってもらうことは間違いなくできます。そんな小さな意識だけでも、全然ちがってきます。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりは日本人特有の症状である!という説の真偽の検証

外国人は肩こり知らず!?肩が凝るのは日本人だけ!!肩こりは日本人特有の国民病・・・これらは多くの方が一度は聞いたことがあるフレーズではないでしょうか。それらの説、実は間違っています。

誰しもスマートフォン操作の時間が長くなれば、首や肩が凝ってしまうという経験をしたことがあるはずです。これは海外でも同じことです。いわゆる「ストレートネック」と呼ばれる状態は、スマートフォンの普及が進むにつれ外国でも増加しており、海外ではText Neckとも呼ばれています。首を擡げ背中を丸める体勢をとることで、首の骨自体が曲がってしまい、体全体の悪い姿勢を助長するのみならず、子供の体の成長にも悪影響を及ぼす現代病のひとつと言われています。

このブログを今読んでくださっているそこのあなた、背中を丸めて画面を見てしまっていませんか?

本題に戻ります。

肩こりが海外の方も同様に起こりうるとはいえ、日本人は肩が凝りやすい、これは紛れもない事実でもあります。

肩こりという言葉は、夏目漱石の小説「門」で使ったのが最初、肩こりという言葉に該当する言葉が海外には無い、といった説についても、肩こり治療専門家として丁寧に説明いたします。

そして、人体の構造からみた本当の意味での正しい姿勢もお教えいたしますので、ぜひお読みください。

 

肩が凝るとはどういう症状なのでしょうか?

首から肩、背中、肩甲間部などの部分が、重い、だるい、動かすと痛いなどの症状があると「肩が凝っている」「肩こりがひどい」と表現されることが多いでしょう。

文豪・夏目漱石が「肩がこる」と表現をしたことが最初とされていますが、それ以前の江戸時代では、肩こりに該当する言葉として、けんぺき(痃癖/肩癖)と呼ばれていたようです。しかしこちらは一般的ではなかったようで、夏目漱石の作品が、肩こりという言葉を広めたという説は事実と思われます。

肩こりとは肩周辺の「筋肉」が凝ることにより現れる症状です。

肩こりは、肩周辺の凝りの症状全般の総称です。具体的に凝っている部分というのは、肩周辺の筋肉になります。

肩周辺には、「僧帽筋そうぼうきん」「肩甲拳筋けんこうきょきん」「板状筋ばんじょうきん」「半棘筋はんきょくきん」「後頭下筋群こうとうかきんぐん=深部に存在し首と頭を連結する四つの小さなインナーマッスルの総称」「胸鎖乳突筋きょうさにゅうとつきん」「斜角筋しゃかくきんしゃかくきん」「三角筋さんかくきん」「棘上筋きょくじょうきん」「棘下筋きょくかきん」など、大小さまざまな筋肉があるのです。一部だけですが、次の図をご覧ください。

肩周辺の筋肉

特に着目されることの多い僧帽筋や肩甲拳筋はご存じの方も多いことでしょう。しかし、実際はそれらだけでなく様々な筋肉が関与しており、肩まわりの筋肉は数も多く複雑がゆえに、肩こりを訴える方でも実際にどの筋肉が凝っているのかを認識できている人は、ごく一部の専門家を除けばほとんどいらっしゃらないでしょう。

肩こりと一言でいいましても、三者三様です。肩周辺全体を1つの部位として「肩」と捉えてしまいがちですが、どの筋肉が凝っているかも人によって異なります。肩の筋肉といいましても、何が原因でどこの筋肉が凝っているのかということは実際に細かくみていかなければわからないのです。

肩こりとは「結果」!!肩自体に問題が肩自体に問題はありません。

肩が凝っているという症状は、原因ではなくあくまでも結果です。肩こりを改善するにはコレが効果的!!この体操をするとラクになる、凝りがほぐれていく、といったフレーズは、結果を紛らわしているにすぎません。つまり原因はほったらかしということです。

今一度ご理解していただきたいことは、肩こりという症状は「結果」であるということです。凝りという症状だけを一生懸命ほぐしても、すぐにまた凝りは発生します。凝ってはほぐす・凝ってはほぐす・・・というゴールの無い繰り返しは、凝りをさらに強固なものにしてしまうのです。肩こり解消において重要なことは、肩こりの原因を見極め、その原因に対して個々にアプローチして解消していくことなのです。

肩こりという言葉に該当する英語がないという点について

日本語の「肩こり」に該当する単語が、英語には存在しない、という点ですが、日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字を組み合わせて、本当に多彩かつ細かい表現が可能な言語であるということは重要なポイントです。日本語での繊細な表現、ニュアンスを英語で正確に伝えるのは不可能なことが少なくないでしょう。

肩こりと似たような症状を表す英語表現はあります。

たしかに「肩こり」という単語は英語にはありません。しかし、肩こりのような症状を「stiff neck」つまり「首こり」という言いまわしがされています。英語では肩をshoulder(=ショルダー)といいますが、これは肩の関節自体を指します。

肩こりとは、肩周辺の筋肉が凝ることを指します。海外では、首から腰までの筋肉全て「背中の筋肉」なのです。

例えば、腰痛を医学用語でlumbagoともいいますが、一般的にはpain in the lower back、もっと簡潔にlower back pain、またはbackacheと表現されます。backは背中です。背中の痛み、背中の低い部分の痛み、ということです。

ですから、肩周辺の筋肉は、背中の上の方の筋肉ですのでmuscles in upper backといいます。肩周辺の筋肉の凝りによる痛みはpain in the upper backupper back painと表現されます。

背中の筋肉

背中の筋肉

先程、肩周辺の筋肉は複雑でたくさんの種類があることをご説明しました。背中全体となると相当な種類の筋肉があります。

背中の筋肉とは、首〜肩〜腰まで全てを指します。この背中の筋肉の図では右半分が表の筋肉、左半分がその下にある深層部の筋肉の説明になっています。

この筋肉図をご覧いただければ、首の影響により肩の筋肉が凝る、腰の影響により肩の筋肉が凝る、といったことは容易に想像できるでしょう。

つまり「肩が凝る」「首が凝る」を解決させるには、症状が出ている部分をみるのだけではなく、広い範囲で筋肉の構造を捉える必要があります。

冒頭で肩こりを訴える方で「具体的にどの筋肉が凝っているのかを把握できている人はほとんどいない」と申し上げました。凝った筋肉を特定するためにメスを入れるわけにはいきません。

体の動かし方、動作による痛み、症状から、問題のある筋肉を特定するには、解剖学的な専門知識はもちろんのこと多くの経験が必要なのです。