概要
Y様/東京都在住/55歳/女性/会社員
症状
* 30年以上続く首肩、背中のこり
* NRS:7〜8
状態
* 頸部(頭半棘筋・板状筋)、肩上部(僧帽筋)、背部の筋緊張
* 胸椎の伸展可動性の低下
* 骨盤後傾
* 座位で円背になりやすい
* 立位・座位で足の位置や重心のかけ方に偏りがみられた
見立て
長期間続く首・肩・背中のこりには、筋緊張だけでなく、胸椎の動きにくさや座位姿勢も関係していると考えた。
骨盤が後傾し、座位で背中が丸まりやすい状態では、胸椎を伸ばして身体を支えることが難しくなり、首・肩・背中まわりへの負担につながっている可能性がある。
また、立位・座位では足の位置や荷重にも偏りがみられたため、背中だけでなく、股関節や下肢を含めて身体全体でどのように身体を支えているかにも着目した。
そのため、背中のこりを一時的にほぐすだけではなく、胸椎や股関節を動かしやすくし、足や下肢を使って身体を支える感覚を身につけることを治療の軸とした。
治療
1回目
頸部・肩上部・背部だけでなく、腰部・ハムストリングス・ふくらはぎなども含め、全身の状態を確認しながらほぐしを行った。
そのうえで、胸椎を動かしやすくする背中のストレッチや、座位で股関節を使って身体を起こす動きを行い、身体を支えるための基本的な動きを確認した。
2回目
初回から約1週間後に来院。
座位・立位での姿勢を確認すると、初回よりも無理な力みが少なく、身体の位置を意識して保てるようになっていた。
セルフトレーニングでは、座位での背中のストレッチや脚への荷重、脚を閉じる運動などを取り入れ、日常生活の中でも身体の位置を意識できるようにした。
3回目
姿勢を意識することで、座位・立位ともに身体を起こしやすくなり、NRS4~5まで改善した。
後ろに身体を預けるのではなく、足で床を踏みながら身体を支える位置を確認した。
4回目
NRS2~3まで改善。
仕事中の座位や立位での身体の使い方を確認し、股関節を動かしながら身体を起こす感覚をさらに深めた。
また、スクワットでは踵側に重心をかけすぎず、足で床を捉えながら身体を支える動きを確認した。
この頃には、症状の軽減だけでなく、日常生活や運動の中で身体の支え方を意識できるようになってきた。
5〜7回目
症状が落ち着いてきたため、治療間隔を徐々に延ばした。
5回目には治療間隔を2週間に延ばしたが、大きく状態を崩すことなく、スポーツクラブにも通い始めた。
運動では、内もも・お尻・もも裏などを使いながら身体を支えることを意識し、上半身に力が入りすぎないよう動作を確認した。
その後も運動を継続し、週3回程度身体を動かす習慣ができていった。
6回目では、スポーツクラブでの運動を続ける中で肩まわりに張りがみられたため、肩・背中・首を中心に状態を確認した。
背中や肩甲骨まわりのエクササイズでは、余計な力みなく動かせているかを確認した。
7回目には片足でのスクワット動作まで進み、これまで確認してきた足の位置や重心のかけ方を意識しながら、片足でも安定して身体を支えられることを確認した。
8〜10回目
その後は治療間隔をさらに延ばし、日常生活や運動を続けながら状態を維持できるかを確認した。
8回目は約1ヶ月ぶりの来院。
普段の運動は週3回継続できており、股関節の動きも安定していた。
運動では、スクワットで上半身を起こしながらお腹も使って身体を支える感覚や、ヒンジ動作でお尻・もも裏を使って身体を動かす感覚を確認した。
10回目には約3ヶ月間隔が空いていたが、大きく状態を崩すことなく、運動習慣も継続できていた。
また、来院当初と比べて胸椎の可動性も改善し、背中を動かせる範囲が広がっていた。
ここで治療は一旦ゴールとし、その後は3ヶ月に1回程度の治療・メンテナンスを行いながら、身体の状態や運動習慣を確認している。
必要に応じて日常生活や運動での身体の使い方を見直すという形で継続している。
コメント
今回のケースでは、30年以上続いていた首・肩・背中のこりに対して、症状のある部分をほぐすだけではなく、日常生活で身体をどのように支えているかに着目して治療を行いました。
また、症状が改善してからもすぐに治療を終了するのではなく、治療間隔を延ばしながら、仕事や長時間の座位、運動などの負荷がかかる状況でも状態を維持できるかを確認しました。
その結果、週3回程度の運動習慣も定着し、最終的には3ヶ月間治療間隔が空いても大きく状態を崩すことなく、身体を動かせる状態を維持できるようになりました。
さらに、現在では身体の違和感にご自身で気づき、姿勢や荷重、日常生活での身体の使い方を見直せるようになっています。
今回の症例を通して、長期間続いている症状であっても、「症状のある場所をほぐす」だけでなく、「なぜそこに負担がかかりやすいのか」を身体全体の動きから考え、日常生活や運動の中で実際に使える身体の使い方につなげていくことが重要だと考えました。

執筆者:中込 優平
Yuhei Nakagome
帝京大学 医療技術学部スポーツ医療学科 健康スポーツコース卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業
鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
健康運動実践指導者
私は大学時代、 市営の体育館のトレーニングルームで運動指導をしていましたが、当時の自分にはお客様が肩や腰が痛いと仰っても解決する手立てがありませんでした。
そこから鍼灸あん摩マッサージ指圧師に興味を持ち始め、資格を取得しました。
日常生活の中で肩こりや腰痛などで悩み、 やりたいことができない方やもっと健康で良い生活をしていきたい方、 そんな方々のお力になりたいと考えています。


































