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肩こりや首こりを慢性化させないでほしい理由と慢性化させないための日常生活の工夫

テレワークで、慣れない環境や仕事に適していない環境で作業をしている方、オンラインでの仕事をはじめたことにより、以前よりもPC作業、タブレットやスマホでの作業が増えている、という方は少なくないでしょう。

 

新たな生活様式を構築してうまく折り合いをつけて生活できている方がいらっしゃる一方で、ストレスと運動不足が相まって、不調を自覚する方も少なくないと思います。

 

仕事や生活様式の変化によって、平時よりも首や肩への負担が増え、肩こりや首こりがつらくなってしまっているという方はいらっしゃるのではないでしょうか。

 

病気であれば、病院で診てもらうのが普通ですが、肩こりや首こりの場合はいかがでしょう。

 

全てではありませんが、多くの場合は、病院では異常がないとされる本態性肩こり(=病気が元ではない肩こり)ということで、おそらくほとんどの方は我慢か放置となってしまっているかもしれません。

 

また、平時であれば、つらくなったらマッサージに行ってほぐしていた方も、今は自粛しているという方もいらっしゃるかもしれません。

 

ほとんどの場合、肩こりや首こりは今すぐに命を脅かすものではありませんし、今すぐ生活に支障をきたすものでもありません。

 

ですが、はじめはたいしたことのなかった肩こりや首こりが慢性化、重症化することで思わぬ不調に陥ってしまうことがあります。

 

それを防ぐためには、軽症の時に、きちんと対処をすることです。

 

本格的な不調に陥る前に対処すれば、治療に費やさなけばならない経済的、時間的な負担軽減、情報収集のための労力軽減にもつながります。

 

何よりも、つらい思いをしなくて済みます。治療を受けなくてもよいのです。

 

ですので、是非この機会に、肩こり・首こりのイメージ、もっといえば筋肉や筋膜の過緊張という状態に対する考え方を改めていただきたいのです。

 

本記事では、主に以下2点をお伝えいたします。

1)肩こりや首こりを慢性化させないでいただきたい理由

2)慢性化・重症化を防ぐための2つのポイント

 

首や肩が凝ったな、重いな、なんだか不調だな・・・と思われた方は是非ご一読いただけましたら幸いです。

 

肩こりや首こりを慢性化させないでいただきたい理由

筋肉や筋膜の過緊張が生じるということ。これ自体は生理的な反応ですので、異常ではありません。

ではどのような状態が異常なのでしょうか。

まずはここからご説明いたします。

 

なにが正常で、なにが異常なのか?

誰でも筋肉を酷使すれば疲労します。

筋肉痛もおこります。

 

たとえば・・・

長い階段を登れば、太ももの筋肉に痛みが出るでしょう。

運動をすれば、翌日以降に筋肉痛が生じるでしょう。

長時間仕事をすれば、疲れるでしょう。

 

筋肉を酷使して疲労や筋肉痛が生じても、普通は、しばらく休めば元に戻ります。

負担を受けて、それに見合った疲労や痛みが一時的に出ることは、生きている限り自然なことです。

これは正常な状態です。

 

一方、いくら体を休めても、マッサージなどを受けても回復しない、あるいはすぐに再びつらくなってしまう場合があります。

また、たいして負担をかけていないにも関わらず、疲労や痛みが生じてしまうこともあります。

 

これは慢性化してしまっている状態です。

つまり、異常な状態といえます。

慢性化した肩こり・首こりは、カラダの自然治癒力が及ばない状態、つまり治療が必要といえます。

 

「治療って、そんな大げさな・・・」

「とにかく、ほぐしたいだけなんだけど」

「とりあえずラクになれればそれでいい」

 

肩こりや首こりで治療なんて・・・と敬遠されることでしょう。

 

でも、それは、おそらくそこまでヒドくない方だからこそです。

 

肩こりが慢性化すると病気のような症状を招く!?

肩こりを軽視してはいけない理由として一般的なのは、病気が元になっている肩こり(症候性肩こり)の可能性があり、命に関わる問題かもしれない、ということです。

 

これに関しては、メディアでも再三取り上げられていますし、ご存知の方も少なくないでしょう。

 

病気が元になっている肩こりがあるのは事実ではありますが、実際のところは、病気ではない肩こり(本態性肩こり)がほとんどなので実感がわかない方も多いと思います。

ですので、本記事では別角度からのお伝えをさせていただきます。

 

肩こりや首こりが慢性化すると、自律神経やメンタルにも影響が出てしまい、日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。

 

首や肩の筋肉の過緊張が継続することで、筋肉の痛みや不快感以外の諸症状が生じてしまうのです。

 

凝りに伴う「凝り」以外の症状は、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、倦怠感、胃腸の不具合、精神症状(気分の落ち込み、イライラ、不安感 等) などがしばしば見受けられますが、定型的なものではなく個々によって異なります。

 

一般的に、このような症状があれば、病院で治療を受けるのが普通でしょう。

 

ところが、凝りが元の諸症状であった場合、病院にいって診察を受けても決定的な診断がでない、あるいは原因がわからないということになります。

 

そして、凝りに伴う諸症状は、うつ病やパニック障害等の精神の不調や、自律神経失調症と呼ばれる状態と類似していることから、症状の対処として、精神安定剤や抗うつ剤などを処方されるということが少なくありません。

誤解しないで頂きたいこと。強調したいこと。

二つあります。

一つ目は、病院受診についてです。

凝りが元になった不調である可能性があったとしても、病院に行っても意味がないということではありません。まずは必ず病院に行きましょう。

病院に行き、診断名がつく病気が元で生じている症状なのかどうかをはじめに確認することが何よりも大切なのです。

安易に自己判断せず、医師の診察を受けるようにしてください。

病気ではないということが確認されて、はじめて凝りによる不調ではないかということになります。

二つ目は、服薬についてです。

薬を飲まないで健康であることに越したことはありませんし、生命を維持するうえに必要不可欠な場合を除き、極力長期的な服用は避けるべきだと考えておりますが、本記事は服薬を否定し、鍼灸マッサージ治療を推奨するということを目的としていません。

たとえば、侵害可塑性疼痛(nociplastic pain)のような慢性疼痛であれば、普通の消炎鎮痛剤(たとえばロキソンなどのNSAIDs)よりも、抗うつ剤の方が効果的であるといわれています。

この場合であれば、精神症状改善のためではなく、痛みの治療のために抗うつ剤を利用することになります。

痛みが痛みを呼ぶという観点からも、とにかく症状の緩和(鎮痛)を行うということは治療において意味のあることです。

 

ここでお伝えしたいのは、

  • 一般的に病気ではないとされる「肩こり」や「首こり」が元になり、様々な不調が引き起こされることがある
  • 肩こり首こりがひどくなり、日常生活に支障をきたし、社会生活が困難になってしまうことがある

この二つです。

 

何よりも、こういった実態があることを知っていただきたいのです。

 

病気ではないからといって、肩こりや首こりを軽視しないでいただきたいと切に願います。

 

もし周囲に「肩こりがつらい」とお悩み方がいらっしゃいましたら、「気のせいだ」「気持ちの持ちようだ」「病気ではないでしょ」と思わず、是非親身になってお考えいただけたらと思います。

 

お悩みの方は少なくありません

首や肩の凝りが元で、様々な不調が生じてしまう状態を「頚性神経筋症候群」や「首こり病」と呼ぶことがあります。

 

「症候群」や「病」とつきますが、これらは医学的に正式な病名ではありません。ですが、実態としてこのような症状で苦しんでいる方がいらっしゃるということを知っていただきたいのです。

なかには、凝りとそれに伴う諸症状により、仕事が手につかなくなり、休職を余儀なくされ、社会生活が送れなくなってしまっているという方もいらっしゃいます。

 

つらい。身動きがとれない。自覚的には異常事態なのに、医学的には病気ではないとされます。(現代医学が悪いわけではなく、現時点の医学ではカバーしていない範疇であるというだけです)

 

ある病院で目立った異常は無いとされたとしても、症状があって自覚的には具合が悪いわけなので、複数の病院で検査を受けます。

複数の病院で同様の結果を受け、病院ではなく、治療院や施術所に足を運ぶようになるというという方が少なくありません。

 

複数の病院受診、複数の治療院・施術所へ通院し、施術を受けるということは、多大な労力と時間、費用がかかります。

医療者・施術者に対して、自分の状態を説明すること、これ自体もとてもたいへんなことです。

 

首や肩こりが慢性化、重症化すると、社会生活に支障をきたしてしまうことがあるのです。

 

ですので、肩こりや首こりを慢性化させないでいただきたいのです。

 

当院にいらっしゃる、重度の首こり・肩こりを患った方々を治療するなかで切に感じること。

それは、最も重要なのは、頚性神経筋症候群や首こり病といわれるような、慢性的かつ病的な凝りの状態にならないようにするということ。

 

つまり予防です。

 

慢性化・重症化を防ぐための2つのポイント

肩こり・首こりの慢性化や重症化の予防において大切なのは以下2点です。

  1. 首や肩の疲労を蓄積させないこと
  2. 首や肩への負担を減らすこと

 

当然のことだと思われるかもしれませんが、生活のなかでいざ実行しようとすると、簡単ではありません。

そこで、肩こりラボでの実際の治療でも取り入れている肩こりラボが推奨する方法とポイントをご紹介させていただきます。

 

【1】首や肩の疲労を蓄積させないこと → こまめな解消

疲労解消法は様々ありますが、日頃デスクワークが多い方におきまして、特にオススメしたいのは、カラダを動かすことです。

 

ただ、闇雲に動かせば良いというわけではありません。

日頃、ジムでのトレーニングや、スポーツをされている方でも首肩こりにお悩みの方は少なくないように、「体を動かす」ことにおいては要点があります。

 

ポイントは3つです。

  1. つらい箇所(首や肩)のストレッチはやりすぎないこと。※傷めてしまうことがあるため
  2. 肩甲骨や体幹を動かすこと。※痛みを伴わなければ静的よりも動的ストレッチの方がオススメ
  3. 体の前面をほぐして、後ろに反れるようにすること。 ※特に背中と股関節が後ろに反れるようにする

 

具体的に「何をやるか」におきましては、既に何らかの対処を行っていて自分に適しているものがあるようでしたら是非それを継続し、その際に上記のポイントを意識してみてください。

 

もし効果的なストレッチ方法をお探しであれば、こちらのストレッチ(YouTubeにとびます)をお試しいただけたらと思います。

 

こちらのストレッチは、肩こりラボの治療でも、実際に行うことがある7つのストレッチをご紹介しています。

※動かすと痛い場合は、痛みや違和感が出ないもののみ行ってください。特に背骨や肩関節の問題のある方(ヘルニア、四十肩・五十肩、反復性肩関節脱臼 等)の方は決して無理のないようにしてください。

 

「肩こりはあるが、日時生活に支障あるわけではない」という方におきまして、症状解消と慢性化予防として、お役にたてることでしょう。多くの方は、このストレッチで、十分な緩和・メンテナンスになります。

 

【2】首や肩への負担を減らすこと → 根本改善に重要

現代の生活においてPCやスマホを使わないということは不可能なように、首や肩の負担を完全に無くすということは不可能です。

 

でも日常生活の中でちょっとした工夫をすることで、首や肩の負担を軽減させることはできます。

塵も積もれば山となるように、ちょっとした工夫でも、積み重ねれば大きな違いになります。

 

本稿では首や肩の負担を減らすためのスマートフォンとパソコンの操作方法をご紹介いたします。

 

実際の患者さんに行っていただき成果をあげている方法です。

 

PC操作の工夫

厚労省の VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン では、休憩の頻度や環境について等、心身の負担を減らすための指針が記載されています。

 

たとえば休憩ですが、ガイドラインによると、一連続作業時間は1時間を超えないようにして、連続作業と連続作業の間に10-15分の作業休止時間を設け、かつ一連続作業時間内において1-2回程度の小休止を設けることとされています。

 

これらがきちんと実行できれば、おそらく疲労は軽減されることでしょう。ですが、理想を現実は異なります。

ガイドラインに記載されていることをすべて実行することは実際は難しい・・・・という方は少なくないでしょう。

 

そこで、様々改善は必要だが、実際のはなかなか難しいという現状をふまえて、実践的な首や肩の負担を減らすための方法をご紹介します。

 

それは、PCのディスプレイの高さ調整です。

 

みなさんは、PCのディスプレイはどのような高さの設定するのが望ましいか、ご存知でしょうか。

 

上述した”厚労省の VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン”によると、「ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。」とされています。

 

姿勢を正した姿勢で、ディスプレイの位置が下にありすぎると、背中は伸ばしていても、頭がうつむく形になってしまうと首には負担がかかってしまいます。

一方、ディスプレイの位置が高く、目線を上に向けすぎると眼精疲労の元になりますし、首を反らせて見上げる状態になってしまうと首にも負担になってしまうので位置が高すぎるのも要注意です。

 

体感として、適切な位置は、ディスプレイの大きさによっても異なりますので、厳格に画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにするのではなく、これを目安に、ご自身の首肩や眼の疲労感の感覚とみながら微調整していただけたらと思います。

 

ちょうどよい高さは個々によって異なりますので、中には、画面中の作業スペースが目線にあるのがちょうど良いという方もいらっしゃるかもしれません。

ですので、当院の患者さんには、眼の疲労感と首の緊張の程度みながら、なるべく下を向かないで無理なく作業ができる位置に調整していただくようにしています。

 

当記事をお読みの方も、ガイドラインを参考に、是非微調整をしてみていただけたらと思います。

 

 

さて、デスクトップPCは、ほとんどの場合、モニターの高さ調整が可能です。

調整の幅が少なくてちょうど良いところにできない場合は、モニターの下に台を置いたり、椅子の高さを調整してみましょう。

 

一方、ノートPCをメインに作業をする方モニターの高さ調整が困難に思えます。

「自分は普段ノートPCだから液晶画面を高くするのはムリ!」とあきらめないでくださいね。ノートPCの方が下を向く程度がおおきくなりますので、日頃ノートPCを使用するほど、トライしていただきたいのです。

 

ノートPCの方を使う方にお願いしているのは、外付けのキーボード、あるいは外付けモニターをご用意していただくことです。

ブランドに拘らなければ、安価なものが多数販売されています。モニターも、モバイルモニターとして持ち運び可能なものがあります。

 

外付けキーボードを使う場合は、ノートPCを台に載せて、画面を高くあげるようにしましょう。

画面の高さは、上記デスクトップの時と同様、画面内の頻繁に使用する作業領域が眼の高さとほぼ同じか、やや下になるようにします。

 

外付けのキーボードか、モニターどちらが良いのか、それぞれの作業環境によりますので、自らが実際に使える方をお選びいただけたらと思います。

ノートPCの場合、オフィスや出先など異なった環境で作業することもあると思いますので、場合によっては両方用意するのもありかと思います。

 

PC作業におきましては、極力下を向かないで作業できるよう環境を整えるということがポイントです。マッサージにいくのを一回我慢したとしても、中長期的には体には首や肩には良い影響がありますので、是非購入をご検討いただきたいと思います。

 

スマホ操作の工夫

まず一番のポイントはスマートフォンを保持する高さです。スマートフォンの操作で一番の問題は下を向き続けることにあります。

ですので、なるべく画面を目線の高さに持ち上げて保持し、操作をしてほしいのです。

 

例えば、スマートフォンを片手で持ち、持っている手の肘の下にもう一方の手を入れて支えると、目線の高さに保持することの負担は軽減できます。

電車での移動中など座位であれば、膝の上に荷物やクッションを置き、肘を荷物に乗せてスマートフォンを保持すると負担を軽減することができます。

 

次のポイントは目と画面の距離です。もちろん「目」に対しては近くない方がよいのですが、あくまでも姿勢の改善という点に限りますと、画面は遠いよりは近いほうがよいです。

 

なぜかというと、目線の高さで、画面を顔から遠くに離して操作するというのは、実際のところ困難です。

スマホを目線の高さに保ち、顔から話して操作しようとすると、テコの原理でスマホがとても重く感じますし、さらには上肢の重みも加わり、このような状態で操作は困難であることに気がつきます。

 

すると数分も経たずに、懐に端末を保持することになり、下を向く姿勢となってしまいます。首や肩の負担を減らすためには下をなるべく向かないようにすることが大切です。

眼の負担と首肩の負担を考慮しますと、スマホを長時間操作するということを見直し、別の方法に代用するか、使用時間を自己管理するのが良いかもしれませんね。

 

スマートフォンの機種選びも重要です。近年では液晶大画面化の傾向にありますが、視覚的に見やすい反面、片手で操作ができないことや重量があることによって丸まった姿勢で操作せざるを得ない状況にもなっています。

肩こりにお悩みの方は、軽量で、かつ片手で操作できる端末を選ぶことが望ましいといえます。

 

なお、この「首や肩に負担のかかりにくいスマートフォンの持ち方」は、読書や書類閲覧の際にも共通していえることですので是非生活に取り入れていただけましたらと思います。

 

治療を検討する目安

今現在、さほどひどくない方は、上述した「重症化予防のポイント」にご留意して生活いただき、症状がつらくない状態を維持できるようであれば治療は必要ありません。

日常生活のなかで、首や肩の負担を減らすことを意識して生活をしてください。

 

一方、もし既に首肩こりがひどくつらい状態であれば、改善のために、適切な対処が必要です。

まずは、ご自身にとって、治療が必要か不要か、それを判断していただきたいのです。

 

首肩がガチガチでひどくつらい方で、治療が必要かどうかは、まず、セルフケア動画で紹介したストレッチ(YouTubeにとびます)ができるかどうか? そして、楽になる実感があるかどうか? これで見極めてください。

 

今現在、ひどくつらい状態だとしても、このセルフケアを日常的に行なうことで調子が良くなれば治療の必要はございません。

 

つまり、動画でご紹介しているストレッチが効くなら、あなたの肩こりや首こりは治療の必要がない状態いうことです。

このストレッチで効果が感じられない場合は、肩こり・首こりの治療を受けることをご検討いただけたらと思います。

 

治療を検討するにあたっては、治療院、マッサージ、整体に行く前に、まずは医療機関の受診をするようにしてください

 

医療機関を受診し、病気が元で凝りが生じているようであれば、診断が出て、病院で治療が行われます。

診断が出ず、病院で治療が必要な状態でない場合は、治療院の受診をご検討ください。

 

肩こり・首こりの根本的な改善を目指すための治療院を探すには、こちらの記事【治療院の選び方】を参考にしていただけたらと思います。

 

 

【 参考 】

Pain Relief ー痛みと鎮痛の基礎知識

Recently introduced definition of “nociplastic pain” by the International Association for the Study of Pain needs better formulation

Wikipedia(頚性神経筋症候群)

厚生労働省労働基準局/VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首こりと首の痛みによって不眠になり日常生活に支障をきたしてしまったケース|ケースレポート

概要

首こりと首の痛みが慢性化して、つらさのあまり、寝付きが悪い、眠りが浅い、寝ても疲れがとれない、頻繁に起きてしまうといった睡眠障害に陥ってしまい、心身ともに疲弊してしまった。

S様 / 東京都在住 / 29歳 / 女性 / 会社員

症状

首こり
首の痛み

状態

社会人になってから、首こりを自覚するようになった。仕事の忙しさと比例して、首の凝りが気になる状態だったが、デスクワークなので仕方がないと思っていた。首が凝っても、一晩休めば治るので、特に生活に支障はなかった。

ところが、一年ほど前に転職して仕事がかわった頃から急激にひどくなり、痛みも出るようになってしまった。これまでであれば 首が凝っても一晩寝れば回復していたが、最近は体を休めても回復しない。

つらい状態が続き、痛みも出てしまっていたため、整形外科を受診した。特に異常は見つからず、ストレートネックだといわれ、湿布と痛み止めを処方された。ところが鎮痛剤を飲んでも楽にならなかった。知人に鍼と整体を紹介されて何度か行ったが、効果を感じることができなかった。

首がつらくて、寝付けないこともある。眠れたとしても、何度も起きてしまったり、寝ても疲れがとれない状態になり、日中ぼーっとするようにもなってしまい、今が最もひどい状態。仕事に集中できなくなり、本格的に日常生活に支障をきたしてしまうようになってしまったので治療にきた。

見立て

首を触診したところ、表層の僧帽筋だけでなく、深層の半棘筋や板状筋まで過緊張状態にあることがわかった。首の緊張が最も強いが、頭から腰まで上半身全体の筋肉が硬くなってしまっていた。上下に首を動かすと、痛みが出る。(上を向く動作、下を向く動作共に痛みが出るためうがいができない状態)

整形外科で診察を受けて、骨や椎間板に異常や、病気がない事が確認されているため、筋肉や筋膜による痛み(筋筋膜性疼痛症候群:Myofascial Pain Syndrome:MPS)や、頚椎の機能不全(関節の動きの不調)の状態と推測した。

姿勢にも問題が見受けられた。立位だと反り腰となり、頭が前方に出ていた。座位では骨盤が後傾し、背中が丸まっており、猫背の状態となっていた。座位、立位いずれの場合も、頭が体よりも前方に出てしまっていた。丸まっている姿勢でパソコン作業をすることで首に負担がかかるが、立位姿勢も崩れているため、仕事以外の時間も首に負担がかかっており、回復できなくなってしまっていると考えられた。

首に負担をかけている要因として体幹部の機能不全が考えられるため、体幹に着目してさらに分析する。まず、背中が丸まっている(胸椎の後弯増強)ことから、胸郭の動きが少なくなり、胸式呼吸ができない状態となっていた。このため、頭が前方に出ている姿勢による首の筋肉に負担がかっていることに加えて、呼吸をすることでも首を力ませてしまっていた。

また、長時間のパソコン作業で胸や腕の緊張が強く、巻き肩になってしまっているため、仰向けで寝ても肩が浮いてしまう状態だった。その結果、就寝中も首や肩の緊張が抜けない状態となり、寝ても凝ってしまうことになる。首肩の緊張が最も高いが、手や足、頭を含める全身の筋肉の緊張が高まってしまっていた。

姿勢が崩れてしまう要因は、股関節の柔軟性不足、大殿筋・腹横筋・脊柱起立筋の筋力不足が主な要因と考えられる。筋力が低いため、身体造りの期間が長くかかることが予想される。セルフケアがどれだけできるかによってゴールまでの期間や回数がかわるだろう。

治療

首を中心に、全身の筋緊張を緩和するためにマッサージをしたが、首の緊張だけがどうしても緩和されなかった。そのため、深層筋に直接刺激を与えるために、3D鍼で、僧帽筋、半棘筋、板状筋、肩甲挙筋にアプローチをした。

深層筋への鍼が奏功し、1回で首の痛みが約半分(首痛のNRS 10→5)になり、3回の治療終了時点で首の動きに伴う痛みが無くなった(首痛のNRS 0)。
※NRS:Numerical Rating Scale 痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

痛みが改善したので、残るは凝りの症状緩和となる。凝りは、治療後は楽になるが、時間の経過と共につらくなってしまう状態なので、体幹のコンディション改善と、日常生活の姿勢改善が必要となる。

初診時からマッサージに加えて、ストレッチを続けていることから、股関節の柔軟性は概ね良好になったので、今後は、筋力強化が課題となる。セルフケアを筋トレをメインとした。大殿筋強化はクラムシェルとヒップリフト、腹横筋強化は四つ這いドローイン、脊柱起立筋強化は肘つき、全体のためにスクワット、を行っていただいた。

鍼、マッサージ、ストレッチにて筋肉をほぐして症状を緩和するのと、関節可動域の改善を図り、筋トレで姿勢を保つための筋力と、正しい体の使い方の体得する治療を行った。

計7回の治療で、首の痛みと凝りがほぼ全て解消されて[首痛のNRS 0、首こりのNRS 1]、2週間経っても良い状態をキープできるようになった。その後、3週、4週と期間をあけても具合が悪くなることはなく、セルフケアも習慣化できていたため計9回の治療でゴールとなった。

コメント

首こりが慢性化し、ひどくなり、睡眠障害にまで発展してしまったケースです。一年前に、急激に悪化しましたが、それより以前から首や肩の筋肉に負担がかかりやすいお体であったたと推測でき、仕事が変わる前からの蓄積はあったと考えらます。

肩こりラボでは、肩こりという症状を客観的に診て、治療をするために、筋肉が硬いだけでは凝りではなく、症状を自覚してはじめて「凝り」である、と定義しています。

触診状の筋肉の硬さと症状の程度には、必ずしも相関関係はありませんが、硬くなっているということは、血行障害が生じやすく、筋肉や筋膜のコンディションが低下しやすい状況といえます。慢性的に筋肉の緊張が高く、硬くなっているという基盤があり、その上に心身のストレスや負担が加わることで、突如発症したり、悪化するという例は珍しくありません。本件もこのようなパターンであったと考えられます。

以前は自覚症状は強くは無かったとはいえ、コンディションが良いとはいえない状況のなか、仕事がかわって慣れない環境や作業により心身の負担が増えて、急に症状が顕在化したのではないかと考えらます。

痛み止めが効かないほど、強い症状が出ていましたが、対症療法としての3D鍼が著効し、早期に症状が解消しました。加えて、原因療法としてのセルフケアにもしっかりと取り組んでくださったおかげで、当初の予想よりも早くゴールに至ることができました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


頭痛を伴う慢性的な肩こり・首こりに20年以上お悩みのケース|ケースレポート

概要

幼少期から首こり・肩こり、凝りに伴う頭痛に悩んでいて、最近では吐き気を伴うほど頭痛がひどくなってきてしまっている。

H様/ 東京都在住 / 35歳 /女性 / 会社員

症状

肩こり・首こり
首が前に出ている(ストレートネック)
慢性的に上半身の疲労感がある

状態

小学校高学年の頃から20年以上慢性的な肩こりと首こりに悩まされている。

高校生になってからは上半身の疲労感が抜けず、毎朝起きるのがつらい。
学生の頃に鍼治療を受けたことがあるが、楽になるのは一時的だった。

以前から月に1~2回ほど、こめかみの頭痛や、吐き気がすることがある。

ここ数年では、吐き気を催すほどひどい頭痛になってしまうことがある。脳神経外科を受診したところ緊張性頭痛だろうといわれ、痛み止めの処方と凝りをほぐすことを推奨された。

整形外科で、こりがつらい部分に筋膜リリース注射(ハイドロリリース)を受けて少しほぐれた感覚はあったが、翌日には凝りでつらい状態に戻ってしまった。その後何度か受けたが、良くても2〜3日ほどしか効果が持続しなかった。

社会人になってからはたまにヨガやピラティスを受けに行っている。背中の筋肉を使うことで首肩こりが楽になる感覚がある。

見立て

吐き気を催すほどの頭痛が生じる状態だが、脳神経外科を受診して命に関わる状態ではないことが確認されており、首こり・肩こりにおいても整形外科を受診して病気が元ではないことが確認されている。また症状が急激に発症したものではなく、長期的にみて安定しているため、我々の行う治療の適応範疇であると判断した。

触診により、首の筋肉(頭半棘筋、頭板状筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋)や、肩の筋肉(僧帽筋)に強い緊張がみられた。首肩こりの症状を強く感じる部分と一致しているため、筋緊張が現在の症状を引き起こしている可能性が高い。

頭痛は、緊張性頭痛であると医療機関にて言われており、首肩こりの症状の程度に比例して起こっている。また、本人の自覚として、鍼、マッサージ、運動など血流改善により緩和されることから、首肩、頭の緊張をほぐすことが必要だと考えられる。

全身的に柔軟性に優れているが、脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など、姿勢を保持するための筋力や筋持久力が低く、姿勢が保持できずに背中が丸まりやすくなっていた。

筋力が低いために体幹で姿勢を保つことが困難で、頭の重みを首の筋肉で支えてしまっていることが見受けられた。

このことから、鍼や筋膜リリースなどの対症療法を行うと一時的につらさから解放されるが、首肩に負担がかかりやすい状況は変わらないので、すぐに再発してしまっていると考えられる。

対症療法と並行して筋力トレーニングを行い、姿勢保持に適した筋肉を長時間使えるようにすることで、今までの慢性的な状態から脱却できると考えた。

治療

初期治療

症状の解消に重きを置く治療フェイズ。頻度は5日~7日に一度。

自覚症状の強い部分である首や肩を中心に、全身的に鍼やマッサージを行い入念にほぐした。治療開始してから間もないうちは直後には少しは楽になるが、完全に解消されることはなく、今まで同様一週間ほど経つとこりが元に戻ってしまう状況だった。

当初は細い鍼(0.14mm)を使用していたが、症状の解消進度が緩やかだったため、段階的にやや太めに鍼(0.2mm)を使用するようにした。

また、角度や深さなどを調整して、こりのある部分にピンポイントで刺激を入れることに注力した。特に、仰向けで行なった首の鍼により、最もつらかった首のこりが解消し、首こりの解消に伴い頭の緊張感や頭重感も緩和した。これがきっかけとなり慢性化していた症状の改善につながった。

0.2mmの鍼で首や肩に鍼治療を行うのは、一般例と比べると強めの刺激ではあるが、H様にとっては適切な刺激となり、徐々に症状は下がっていき、105分の治療を6回行い、自覚症状が約8割改善された。NRSが10→2。

※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

原因療法に重きを置く治療フェイズ。頻度は10日〜14日に一度。

正しい姿勢を長時間キープできるように、脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋の筋力強化を目的としてトレーニングに重きを置いた治療に移行した。(治療内容の主な配分は、30分の筋力トレーニングと75分の鍼マッサージ治療)

中期治療に移行してはじめのうちは、治療後一週間が経過すると症状が出やすい状態であったが、筋力が向上するにつれて症状を低い水準に維持できるようになり、二週間間隔にしてもNRS 5 以上になることはなくなった。夕方には多少こりが出るが、翌朝にはリセットされるようになった。

筋力トレーニングの内容を適宜アップデートしながら、セルフケアとして自宅でも行なっていただいた。

6回の治療で、H様の自覚として日々の生活で問題を感じなくなり、客観的にも筋力向上と姿勢改善が見受けられたため、治療からの離脱のために後期治療に移行することとした。

後期治療

セルフケアによる自己管理を体得する治療フェイズ。頻度は3週〜8週に一度。

症状を低い水準にコントロールしつつ、筋力強化を継続、3週、4週と徐々に治療の間隔をあけていくようにした。

その間、仕事の忙しさやストレスによって一過性に症状が出ることがあったが、セルフケアでの対処ができるようになってきた。

後期治療4回で、8週あけても悩ましくない状態をキープできるようになり、日常生活に支障をきたさなくなったため、ゴールとなった。

ゴール後も、症状や疲労解消のためのセルフケアだけでなく、筋力維持のための筋力トレーニングも生活習慣にしていただいた。

ゴールしてから6ヶ月後にチェックとメンテナンスを行なったところ、セルフケアが習慣になり、良好な状態を維持できていたため、卒業となった。

治療開始から約1年、計16回の治療でゴールになり、17回の治療で卒業に至った。

コメント

H様と同じように、様々な施術を受けても慢性的な症状が改善しないという方は少なくありません。本件において、転機となったのは、仰向けで行なった首の鍼治療でした。

仰向けで鍼をうつことで、ピンポイントで患部にアプローチをすることができ、慢性化してしまったいた症状が解消され、改善のための良いサイクルをつくることができました。

適切な治療内容は個々によって異なります。一般的にはあまり行わない手法、一般的には強めの刺激、だとしてもH様にとっては「適切な治療」になりました。

肩こりや首こりの治療は、あくまでも自覚症状を改善させることなので、患者さんからの訴えを治療に反映することがとても重要となります。本件は、H様が的確に感想をおっしゃってくださったおかげで、治療者との相互理解が深まり、治療に活かすことがきました。

患者さんにとって適している治療内容(方法や刺激量)や治療計画は個々によって異なるため、治療はそれにフィットさせていくことがとても重要です。

中期治療では、筋力トレーニングを正しくかつ積極的に行えるかどうかが進捗を左右しますが、H様はセルフケアをとても頑張ってくださいました。その甲斐あって、停滞しやすい中期治療をスムーズに進めることができました。計画通りにゴールに至れたのはH 様の頑張りの賜物です。ありがとうございました。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こり・肩甲骨こりが慢性化して自律神経の乱れやイライラなどの精神症状をきたしたケース|ケースレポート

概要

肩こりと肩甲骨こりが、一時しのぎを続けるうちに慢性化し、日常生活に支障が出るほどになってしまった。

K様 / 東京都在住 / 38歳 / 男性 / システムエンジニア

症状

・重度の肩こり、肩甲骨こり
・怒りっぽい、イライラなどの精神症状

状態

学生時代から首や肩の凝りを自覚していたが、就職して、デスクワークの時間が長くなり、ひどくなってきた。つらくなると湿布や貼付型磁気治療器を貼り、どうしてもつらくなるとマッサージにいってほぐすということを続けてきた。(貼付型磁気治療器をと使うとラクにはなる)

マッサージの頻度は、はじめは月に1回程だったが、次第に間隔が短くなってきて、数年前からは週に1〜2回は行くようになってしまった。というよりも正確には、週に1〜2回通わないと仕事に集中できない状態だった。以前は、マッサージに行ってほぐしてもらうとしばらくは楽になっていたが、ここのところは、いくら揉んでも、押されているその時に気持ちが良いだけで、楽にならならないし改善もしない。

病院で診てもらったところ、特に異常はなく、ストレートネックであることを指摘されるだけで、解決法が見出されなかった。痛み止めと湿布を処方されて様子をみるように言われた。

効果的であるといわれている鍼、注射、ハイドロリリースなど様々な治療を受けても、凝りが緩和されるのはその日だけで、翌日には戻ってしまう。治療を受けてもすぐに戻ってしまうため、最近では、もう通うのをやめてしまった。

最近特につらいのは肩甲骨の内側の凝りで、つらくて気になってしまい仕事で座っていられないため、湿布やピップエレキバンを毎日貼らざるを得ず、時間があればテニスボールや柱などで肩甲骨の内側をゴリゴリするのが癖になってしまっている。

以前は、デスクワークの時間が長くなるにつれて凝りがつらくなっていたが、今は常に凝りがある状態。凝りが気になって寝付けないこともあるし、寝起きからひどく凝っていることもある。常時気になってしまうため、仕事に集中できず、ミスを繰り返してしまっている。ちょっとのことですぐにカッとなってしまい、家族にも申し訳ない。申し訳ないと思いつつも感情をおさえられない。

この先、一生このままなのか、と思うと気が滅入りそうになる。日常生活に支障をきたしてしまっていることから、治るものなら治したいと思って治療にきた。

見立て

まず、医療機関で異常がないことが確認されており、他の疾患が想定される症状ならびに所見が見受けられなかったため、病気が元になっている「肩こり・肩甲骨こり」ではないということを前提とした。

触診にて調べたところ、自覚症状と一致する部位、特に僧帽筋に非常に強い緊張が見受けられた。

また、関節可動域と筋力を調べたところ、背骨(胸椎)と股関節の可動性が低いこと、腹横筋と大殿筋が極めて弱っていることが判明した。特に大殿筋においては、自力で収縮させることが困難で、動かす感覚が全くない状態。

一方で、学生の頃にラグビーをやっていたということもあり、胸や上肢の筋肉は発達している。体を支える土台となる体幹下部の筋肉が弱ってしまっているために、効率良く姿勢をキープすることができない状態となってしまっていた。

K様の場合は、体幹で姿勢をキープすることができず、デスクワーク時に背中が丸まってしまい、負担が首、肩、肩甲骨付近に集中し、凝りが生じていると考えられた。

首や肩に負担をかけている原因への対処をせず、凝りのある箇所に限局したマッサージを常習的に受けていたことから、刺激に慣れてしまい、慢性化してしまったと推測できる。

また、慢性的な凝りによるつらさがストレスになり、イライラや情緒不安定等の精神症状につながってしまっていると考えられる。常時自覚する煩わしい症状、そして症状がつらいというということに加えて解決策の見出せないというストレスが、自律神経を乱し、さらなる凝りを招くという負のスパイラルに陥ってしまっていると考えられた。

症状が慢性化しており、自己回復が困難なため、治療が必要な状態と判断した。きちんと症状を解消することだけでなく、日常生活動作の改善含めて、原因療法が重要になると考えられる。

治療

症状のつらさからくるストレスや精神症状が、さらなる凝りを招く負のスパイラルを形成していたため、まずは慢性的な症状をきちんと解消することからスタートした。3D鍼にて首や肩の筋肉一つ一つにアプローチして、丁寧に凝りをほぐした。特に肩甲骨こりの症状を招いている僧帽筋中部と下部には積極的に3D鍼でアプローチをした。

また、同時並行して、運動療法にて、根本原因である体幹のコンディション改善を行った。具体的には、背中(胸椎)と股関節の可動性改善、体幹の筋力強化。特に、最も筋力低下が著しかった大殿筋の強化に注力した。

慢性的な症状の緩和のために、はじめは凝りを詳細にほぐすことを重きを置いた治療を行なった。初回は体の反応をみるために、3D鍼を弱めにうち、IDマッサージをメインで行ったところ、あまり効果を感じられなかった。

マッサージで効果が得られにくいということから、2回目にやや強めの3D鍼を行ったところ、症状が緩和[ NRS10→8 ]した。これまで施術を受けても全く楽にならなかったため、症状は依然としてあるが、わずかながらも変化がでたということに希望を感じたとのこと。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

3回目の治療も3D鍼で僧帽筋を集中的にアプローチしたところ、症状がおおきく改善[ NRS8→2 ]し、日常生活に支障をきたすひどい症状が緩和した。

4回目以降は、症状の緩和のための鍼マッサージと、原因解消のための運動療法を並行して行った。週一回の治療8回の時点で、悩ましい慢性的な症状は解消された[ NRS0〜1 ]。

症状のコントロールができるようになったので、9回目以降は、治療の頻度を2週間とし、セルフケアでのストレッチ(主に大腿部と背中)と筋力トレーニング(主に大殿筋と腹横筋)を積極的に行い、デスクワーク時の姿勢の改善と定着化を図った。2週間頻度の治療を4回行ない、症状の安定と筋力や関節可動域の改善が見受けられた。

13回目の治療を4週間隔としたところ問題なく過ごすことができ、一度も湿布や貼付型磁気治療器を使用することがなかった。仕事が忙しくなると、夕方に肩や肩甲骨の内側が多少重くなるが、セルフケア体操をして就寝すればリセットでき、翌日には持ち越さないようになった。

14回目、15回目は8週間隔としたが、問題なく過ごせた。日常生活において凝りに悩むということがなくなり、仕事の生産性があがり、休日も家族と楽しく過ごすことができるようなった。人柄も明るくなり、元気になった。

常時ストックしてあった湿布や貼付型磁気治療器にかかる費用面の負担がなくなり経済的にもプラスとなった。疲れることをして、然るべき疲労が生じることは正常である。凝りに悩むことがなくなり、セルフケアで自己管理ができるようになったため、計15回、約9ヶ月間の治療でゴールに至った。

コメント

本件は、一時をしのぐ対処を続けるうちに慢性化、重症化してしまった典型例といえます。はじめは効果があったマッサージも、続けるうちに効果が弱くなり、やがて全く効かなくなってしまう、という方は少なくありません。

痛みが痛みを呼ぶことがあるように、凝りが凝りを呼ぶこともあります。したがって、凝りをほぐすことは、とても大切なことではありますが、それだけでは同じことの繰り返しとなり、やがてひどくなっていってしまいます。肩こり・首こり・肩甲骨の改善のためには、「なぜ凝りが生じるのか?」を分析して、対症療法と同時に原因療法の行うことが大切です。

K様の場合、臀部や腹部といった下部体幹の筋力が低くなってしまっていたために、首肩・肩甲骨周囲の筋肉に過剰な負担がかかってしまっていました。そのため、一見、首や肩のこりと関係がなさそうな、お尻やお腹のトレーニングを行うことで負担が減り、こりが生じにくくなっていきました。

とても慢性的な状態で日常生活にも支障をきたしてしまっていましたが、セルフケアもきちんと行っていただいたことで早期に体が変わり、スムーズにゴールに至りました。つらくても諦めずに、本当によく頑張ってくださいました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりラボの新型コロナウイルス感染症対応ならびに予約受付につきまして

2020年4月18日 現在
肩こりラボは、新型コロナウイルス感染症対応として3つの「密」を防ぐために予約枠の制限縮小、標準予防策に准ずるできる限りの感染防止対策をしたうえで、現在も予約の受付を行なっております。

具体的な対応につきましては以下にて解説しております。

はじめに

首都圏を中心に、日本全国で新型コロナウイルス感染症が蔓延しています。4月7日に首都圏で発出された緊急事態宣言が、4月16日には全国に拡大されました。

大前提として、国や各都道府県からの要請に従い、不要不急の活動を自粛するというのが原則です。これ以上の感染拡大防止と早期収束のために、個々が意識を高くもって行動することが求められています。

 

一方で、医療、物流、生活必需品販売、金融、通信、消防などに従事する方々には、多大な負担がかかっているという実情があります。このような方々は、休みたくても休むことができず、疲労困憊でも仕事を続けなければなりません。仮にぎっくり腰になってしまったとしても、休むことができる状況ではないでしょう。

また、多くの人は、日々の活動を自粛していますが、このような状況下であっても個々には生活があり、在宅での仕事、家事、育児など一定の社会活動を続けなければなりません。

テレワークにより普段と異なる環境・PCで仕事をすることで「(普段はそこまでじゃなくても)今だからつらい!!」という声を、最近はしばしば耳にします。普段と異なる環境、仕事に適していない環境で仕事をしなければならないのは、普段以上に疲れますし、ストレスも溜まることでしょう。

 

凝りや痛みで命に関わることはありません。多くの方にとって治療はそこまで重要ではないかもしれません。ですが、一部の方の生活において筋肉や筋膜に対する治療は「重要」であり、今痛い方・今つらい方にとって治療は「急ぎ」で必要となります。

「コロナ疲れ」といわれるように、こような情勢によって心身共に疲労しまっているという方もいらっしゃると思います。疲労の蓄積による凝りの場合は、まずはYouTubeでご紹介しているセルフケア体操など、自宅でできる対処法をご提案しています。ところが、セルフケアではどうにも解消されないという方も一定数いらっしゃいます。

 

鍼灸・マッサージは「社会生活を維持するうえで必要な施設」に該当

東京都防災ホームページの「東京都緊急事態措置に関する情報(令和2年4月17日19時00分発表)」 におきまして、鍼灸・マッサージは「社会生活を維持するうえで必要な施設」に該当し、病院や診療所等と同様に適切な感染防止対策の協力を要請と発表がありました。

現在、肩こりラボは、休業要請施設には該当しておりません。

したがいまして、
人と人の接触を極力少なくし、3つの「密」を防ぐために予約枠の制限縮小、そして、標準予防策に従ったできる限りの感染防止対策をしたうえで、予約の受付を行なっております。

 

当院が行う感染防止対策9つ

治療院という特性上、感染症防止対策をするのは当然の義務と考えております。そのため、新型コロナウイルス感染症に対してだけでなく、平時から入念に行ってきたことではございますが、今一度見直しをし、強化徹底をしています。

 

最近になり「行きたいけど不安、どのような対策をしているか教えてほしい」というお声をいただくことがありましたので、この度WEBサイト上でもお知らせすることにいたしました。

 

当院では、予約枠の制限縮小と、標準予防策に准ずるできる限りの感染防止対策を行なっております。詳しくは以下となります。

  • 標準予防策(スタンダードプリコーション)とは、すべての人に分け隔てなく行う感染予防策で、感染症の有無にかかわらず、すべての人の汗を除く、血液、体液、排泄物、創傷のある皮膚、及び粘膜には感染性があると考えて扱うこと。具体的な実施事項としては、適切な手指衛生 、適切な防護用具(マスク等)の使用 、呼吸器衛生(咳エチケット)、周囲環境対策 などがある。

① スタッフの検温と体調管理

全スタッフが、毎朝出勤前に自宅で検温を行います。37.5℃以上ある場合は出勤を禁止しております。熱が無くても、体調不良を自覚する場合は出勤を停止します。現在、スタッフ内に該当者はおりません。

 

② 常時マスク着用

全スタッフが常時サージカルマスクを着用しております。マスクが感染経路とならないよう、取り扱いに細心の注意をしています。

原則患者さんもマスクを着用して治療をお受けいただいております。(マスクの提供は行っておりませんのでご了承くださいませ)

 

③ 手洗いならびに手指消毒の徹底

スタッフは、これまでよりも頻度を高め、丁寧に細部まで時間をかけて洗うようにしています。ハンドソープでの揉み洗い10秒以上+流水洗浄15秒以上を2クール。その後にエタノールでの消毒を行います。また、患者さんに触れる前にはエタノールにて手指消毒をします。

尚、患者さんにも入念に手洗いをお願いしております。ご来院いただきましたら、まずは手洗いにご協力いただいております。また、各所にエタノールを設置してありますので、随時手指消毒をお願いしております。

 

④ 手が触れる箇所の消毒

ドアノブ、ウォーターサーバーのコック、各スイッチ、各種備品、ベッド、枕、治療器具を、一度使用する度に70%エタノールで消毒しております。

 

⑤ 24時間換気

常時換気扇を稼働させており、定期的に窓と扉を開放しての換気を行なっております。

 

⑥ 予約枠の制限・縮小と「密閉」「密集」「密接」の防止

ソーシャルディスタンスを配慮し、極力、患者さん同士、スタッフ同士が密集対面しないよう、予約枠を制限かつ縮小し、導線を工夫しています。

  • 当院は、各治療ブースが独立しており壁で仕切られています。半個室(天井が空いておりそれ以外は完全個室同等)と完全個室(換気可)がございます。
  • 完全予約制のため平常時から基本的に患者さん同士が密集、密接する状況にはなりません。
  • ご予約時にお申し出いただくことで、治療を受ける環境(完全個室あるいは半個室)のご希望に応じてご案内することも可能です。ご来院後に、環境をご覧になってからご変更いただくことも可能です。(予約状況によります)

⑦ 直前のキャンセル・変更への対応

通常、ご予約のキャンセルや変更は、予約日前日の午前中までにお願いしておりますが、患者さんが体調不良をご自覚された場合は、当日または直前の場合でもキャンセル料や変更料は無しで承ります。

 

⑧ 患者さんの体調に応じた対応

ご来院いただいた際に、風邪症状が見受けられた場合には、検温をお願いしています。検温の結果、37.5℃以上の発熱が見受けられた場合は、治療を見送らせていただきます。尚、熱が無く、風邪症状のみの場合でも見送らさせていただく場合がございます。

 

⑨ 治療環境の見学可

はじめてご来院される方など、ご不安がある方は、院内の状態を実際にご覧になってから治療を受けるか検討していただくことも可能です。

突然のご来院にも極力お応えいたしますが、ソーシャルディスタンスの配慮や応対スタッフ確保の関係上、すぐのご対応ができないこともございます。ご来院に際しまして、電話・LINE・メールにて一度お問い合わせいただけますと幸いです。

 

肩こりラボでの治療状況

病院では異常がなくとも、「痛みや凝りがつらくてたまらない」「日常生活がままならない」という方、治療やリハビリの途中で、今が大切な時期という方 は少なくありません。

肩こりラボには、重度の凝りや痛みによって日常生活に支障をきたしている方、社会復帰のため・人生をかえるために治療をしている方、手術後のリハビリをしている方、プロアスリート、プロダンサーなど、”治療が必要な方”がご来院しています。

常に変化している状況に対して臨機応変に、私たちにできる限りの対策と対応をしていく所存です。

 

さいごに

繰り返しとなりますが、今は不要不急の外出を自粛すべき時です。

今のご自身の状態が”不要不急”である場合は、ご自宅でのセルフケアにてお過ごしください。新型コロナウイルス感染症問題が落ち着きましたら治療しましょう。

一方、医療、物流、生活必需品販売、金融、通信、消防などに従事する方々は、遠慮なくご連絡ください。皆さんが頑張ってくださっているおかげで今社会がまわっています。私たちのできることでお力になれたらと考えております。

今つらくてたまらない方、痛みがある方は、まずはセルフケア [ 首肩の痛みに効く!!肩こり解消ストレッチ〜正しいストレッチ方法を解説 ] をお試しください。

それでも緩和されない場合、仕事が手に付かない、眠れないなど日常生活に支障をきたしてしまっている場合は、それは不要不急な状態ではないでしょう。早期改善のために、一度お問い合わせいただけたらと思います。

どうぞよろしくお願いいいたします。

 

【参考】

東京都防災ホームページ

第20回 東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議資料

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


慢性的な肩こりが4回でゴールに至ったケース|ケースレポート

概要

就職して仕事をするようになってから肩こりに悩むようになった。はじめはマッサージで緩和されていたがだんだんと効果を感じられなくなってしまった。毎日肩こりがつらく、慢性化してしまっている。

S様 / 東京都在住 / 23歳 / 女性 / 事務職

 症状

首から背中にかけての広範囲のこり、痛み

状態

学生時代からバレエ、テニス、アーチェリーなど、様々な運動を行なっており、今までは肩こりとは無縁だった。

大学を卒業・就職し、身体を動かす習慣が少なくなり、デスクワーク中心の生活になった。仕事をはじめて1〜2ヶ月ほど経ってから、首の後ろから肩甲骨の間にかけて、こりや痛みを感じるようになった。

仕事では長時間パソコンと向き合っている。始業してすぐはまだましだが、時間の経過と共にだんだんと首から背中にかけてつらくなり、終業時には痛みに近い状態になってしまう。毎日このようなサイクルが続いている。ストレッチなどで体を動かすと少しは緩和するが、続けても改善はしていない。

だんだんとひどくなってきたので整形外科で診てもらったが特に異常はないと言われた。つらくなったらリラクセーション施設などで、ほぐしてもらうということを続けてきた。

リラクセーションに通い始めたころは施術を受けるとほぐれる感覚があり、ラクになっていたが、通っているうちにだんだんと効果を感じにくくなり、直後もあまり変わらなくなることが増えてきた。最近ではマッサージを受けている時は気持ちが良いが、症状が解消されなくなってきてしまった。

猫背になってパソコンをしているのがいけないと思い、姿勢を正すが、肩こりがラクになる感じがせず、かえって腰が痛くなってしまう。

このまま仕事や日常生活に支障をきたすと感じて治療を検討し、ご来院。鍼の経験はなく、少し恐怖感はあるが、治るならば挑戦してみたい。

見立て

まず、医療機関で異常がないことが確認されており、初診時にも神経症状や他の疾患が想定される症状が見受けられなかったため、病気が元の肩こり・首こりではないということを前提とした。

触診をしたところ、自覚症状のある後頚部 (首の後ろ)から 肩甲骨の内側の筋肉に、著しい過緊張が見受けられた。

全体の筋肉や関節可動域を調べたところ、臀部からハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)の緊張が強く、他の関節と比べて、股関節の可動域だけが著しく低いことが判明した。

股関節の可動域が低いと、座っている時に骨盤が後ろに倒れやすく(後傾しやすく)なり、正常な位置に保つことが困難となる。骨盤が後傾位になると、猫背となり、長時間のパソコン作業中に首が前に出た姿勢を続けることになってしまう。姿勢を正すと腰が痛くなってしまうのは、後傾位になっている骨盤を無理に前傾位(骨盤を立たせた状態)にさせようとして、腰に負担がかかってしまっているからと考えられる。

また、上背部の脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋の筋力が低く、正しい姿勢を保とうとしても、体幹で支えることができず、首や肩の筋肉を力ませてしまっていることも見受けられた。

このようなことから股関節の関節可動域の低下と体幹筋力の低下により正しい座位姿勢保持が困難になり、首や肩の筋肉に負担をかけてしまっていることが、T様の肩こり・首こりの主な原因ではないかと考えた。

デスクワークによる首肩の負担と症状の程度に関連性があるため、日中の仕事時にいかに首肩への疲労を減らせるかがポイントとなる。

首肩の筋肉個々にアプローチをしてきちんと凝りをほぐして症状の緩和を図ること。そして根本的な改善のためには、ほぐすだけではなく、正しい姿勢を長時間保つための運動療法が重要と見立てた。また仕事環境への工夫により負担軽減も必要であると考えた。

治療

慢性的な症状の解消のために、対症療法として、筋緊張が特に強い首肩の筋肉(頭半棘筋、僧帽筋)に対して3D鍼治療を行い、首肩以外の全身の緊張を緩めるために頭から足までIDマッサージを行った。

原因療法としては、姿勢改善のための運動療法を行った。

運動療法で改善したことは主には以下3点

  1. 座っている際に骨盤を正しい位置で保持できるようにすること。
  2. 首肩ではなく、背中の筋肉で姿勢を維持できるようにすること。
  3. 姿勢維持のために股関節と胸椎(背骨)の可動域改善と背部筋(脊柱起立筋)の強化

この3点を改善するために、ストレッチと自重での筋力トレーニングを行った。

 

1回目の治療で、一番つらい状態から半分以下まで症状の程度が軽減した。NRS 10→4。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

その後、一週間毎に治療を行い、順調に症状の程度が軽減し、4回の治療で常にあった自覚症状が無くなった。NRS 4→0。

4回治療を行い、日常生活に問題を感じなくなったため、T様の意向により肩こり治療はゴールとなり、卒業となった。

 

一ヶ月後、改めてT様から連絡があった。

その後具合は良好だが、今よりも仕事が忙しくなったとしても正しい姿勢をキープできる身体にしたい、そしてバレエ も再開したい、という気持ちになったため、さらなる改善を目指して治療を行いたいとのことだった。

症状がつらいということはないので、今回はトレーニング中心の治療にて再スタートをすることになった。トレーニングは7~10日に一度の頻度で一回30分間、自重負荷を中心とした内容のメニュー行なっている。

日々の生活のなかで肩こり・首こりに悩むことは無くなったが、疲労をためないよう、8週に一度全身のメンテナンス治療を行なっている。

初診から一年が経過した今も、良好な状態をキープしている。バレエ もはじめることができ充実した生活を送ることができている。

コメント

T様はつらい首肩こりに悩まされていましたが、わずか4回の治療でゴールとなりました。通常、慢性の肩こり・首こりでは半年〜1年ほどかけてゴールとなるケースが多いのですが、なぜこんなにも早くゴールに至ったのでしょうか。

T様は、首肩こりが慢性化し始めてから半年以内と早期に来院されました。そのため、ご自覚的にはとてもおつらい状態でしたが、他の慢性例と比較した場合、比較的具合が軽度であり、対症療法として鍼マッサージにて該当する筋肉にきちんと対処することで早期に症状が軽減したと考えられます。

言い換えれば、深層部の「こり」までくまなくほぐせていなかったために、常にこりが残ってしまっている状態になり、症状の慢性化につながってしまっていました。

マッサージで緩和しないほど慢性化してしまっていましたが、発症から早期に治療が開始できたこと、3D鍼治療が著効したこと、この2点が少ない回数でのゴール到達に至った要因であると考えられます。

原因療法として改善すべき関節可動域や筋力といった点では、4回終了時点ではまだ要改善な状態ではありましたが、数回のトレーニングで首肩に負担のかかりにくい身体の使い方のコツを掴めたため、正しい姿勢が身につき、日常生活での負担軽減に結びついたと考えられます。

4回終了時点では、特に原因療法がまだ不完全だったため、当院の定める「ゴール」には至っておりませんでした。ですが、T様にとっての問題だった「慢性的な状態」が解決されたため、ゴールになりました。私たちはこれで良いと考えております。治療は患者さんの抱える「問題」を解決するために行うものですから、ゴールは私たちの定めるものを強要するのではなく、個々によって異なるのが自然です。私たちは一日でも早く、一回でも少ない回数で患者さんにとってのゴールに到達できますよう力を尽くすのみです。

T様におかれましては、さらなる改善のために、一度卒業した後に、再スタートをすることになりました。慢性的な症状が改善し、気持ちも前向きになり、体を動かす意欲も湧いたようで何よりです。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


【制作協力】Nintendo Switch「Fit Boxing」× KatakoriLabs 〜肩こり改善効果アップのストレッチ YouTube動画公開〜

この度、Nintendo Switch用ソフト「Fit Boxing」を発売中のイマジニア株式会社と、肩こり改善効果アップの為のストレッチ動画を制作いたしました。
2020年4月16日より、イマジニア社の公式YouTubeにて無料公開されております。
当ページの最後から本動画をご覧いただけますので、是非チェックしてみてください。

 

Fit Boxingとは

「おうちで爽快、エクササイズ。」をキャッチコピーとしたNintendo Switch用ソフト。

人気声優がボイスを担当するゲーム内のインストラクターに直接指導を受けながら、Joy-Conを使用してリズムゲーム感覚でパンチを打ち分けるボクシングエクササイズゲーム。

Fit Boxing 公式HP

 

動画について

本動画では自宅にいながら、誰でも簡単に行うことができ、肩こり改善効果が期待されるストレッチをご紹介しています。

テレワークや外出自粛による慣れない環境での仕事やストレスで、肩こり・首こりがつらくなってしまっているという声を耳にする今、Fit Boxingのプログラムと本動画のストレッチを組み合わせて行うことで、肩こり・首こりの緩和、運動不足やストレス解消の一助となりましたら幸いです。

動画内のストレッチはどれも簡単に実践できますので、おうち時間に是非お試しください。

 

動画収録内容

<ストレッチ収録内容>

大腿四頭筋のストレッチ

ハムストリングスのストレッチ

背中のストレッチ

タオルストレッチ

体幹ひねり

 

ストレッチのほか、ヒップアップやぽっこりお腹改善に効果的な筋力トレーニングも収録。

<筋トレ収録内容>

ぽっこりおなか対策筋トレ

ヒップアップ筋トレ

大胸筋&全身を鍛える腕立て伏せ

 

ストレッチ動画のご案内

2020.4.16公開

IMAGINEER公式YouTube

Fit Boxing × katakoriLABS 肩こり治療のプロが解説する肩こり改善効果アップのストレッチ

 

 

 

Fit Boxing 公式Instagram

Fit Boxing 公式note

イマジニア株式会社 公式Twitter

フィットボクシングジャパン 公式Twitter

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


体が柔らかいのに慢性的な首こり・肩こりにお悩みのケース|ケースレポート

概要

柔軟性が高く、体が柔らかいにも関わらず、慢性的な首こり・肩こりが長年治らなかったケース

T様 / 東京都在住 / 女性 /54歳 / 専門職

症状

・首こり
・肩こり

状態

20年ほど前から慢性的に首こり・肩こりに悩まされている。

臨床心理士の仕事をしており、カウンセリング、セミナーなどで長時間座り続けたり、立ち続けることが多い。

これまで、つらい時は鍼やマッサージを受けに行っていた。首肩をほぐすと楽になるが、二週間ほどすると再びこりを感じ始める。施術を受ければ楽になるが、二週間以上は効果が持続しない。

モダンバレエ、テニスなど日常的に運動は行っている。運動すると首こり・肩こりは少し楽になる。

見立て

僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋など、つらさを感じている部分と一致して筋肉の緊張がみられる。

また、脇の下(広背筋など)や胸の筋肉が過緊張しており、それにより肩が前に出てしまう、いわゆる巻き肩の姿勢となっている。そのため、背中が丸まり首や肩の筋肉が持続的に伸ばされる状態となってしまい、負担が常にかかってしまう。

柔軟性が高く、各関節の可動域は広いが、姿勢を支えるための筋力(脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など)が不足しており、こりやすい僧帽筋や首の筋肉で支えてしまっている状況。

まずはしっかりとこりをほぐしつつ、徐々に原因部分の改善を行う。脇や胸の筋緊張を緩め、巻き肩の改善を目指す。次いで姿勢維持のための筋力強化を行う。

治療

初期治療

鍼やマッサージは日頃から受け慣れているので、より入念に様々な角度から刺激をいれてほぐしていった。

序盤はつらさが戻ってしまう前に1週間ペースで治療を重ねていき、4回の治療でこりの自覚症状はほとんど感じなくなった。NRS 10→1 。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

首肩こりの”こり”の自覚症状は感じなくなったが、首肩を触ったときの筋肉の硬さや、巻き肩により胸が開きづらい感覚がまだ残っている。

中期治療では初期治療よりも原因の改善をメインで行う。

巻き肩はこりの原因となっている部分のため、しっかりと緩めつつ、他の部分で身体を支えられるように運動療法を行った。

運動療法の方向性としては、脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋をまずは単独でしっかりと使えるようにし、徐々に複数の筋肉を同時に使えるように連動性を持たせていく。(スクワットなど)

16回目の治療で各筋の筋力改善や連動性を持った動きが出来るようになったため、後期治療に移行した。

後期治療

後期治療では徐々にマッサージや鍼を行う頻度を減らしていき、治療から離れても大丈夫な状態を目指していく。

また、トレーニングのみのセッションを入れることで、トレーニングの頻度は2週ペースで保ち、メニューやフォームの見直しが随時行えるようにした。

約2ヶ月間、鍼やマッサージを受けない状態でも良い状態でキープ出来るようになったため首こり・肩こりの治療はゴールとなった。ゴールまでの総治療回数は27回。

コメント

T様のように日常的に運動を行っており、柔軟性もあるのになぜか首こり・肩こりが治らないという方は数多くいらっしゃいます。

正しい姿勢を保つためには柔軟性を高め、関節可動域を広く保つこともとても重要な要素の一つですが、それだけでは十分ではありません。

姿勢を維持することに適している筋肉がちゃんと働いているかどうか、それ以外の筋肉との筋バランスがとても重要になります。

T様は元々筋力がそこまで低いわけではなかったのですが、使うべき筋肉が眠っていたために、首や肩に負荷がかかりやすくなっていました。

トレーニング中のちょっとした気付きがきっかけとなり、眠っていた筋肉が呼び起こされ、首や肩に負担をかけない姿勢の取り方を習得したことで良い方向に向かうことが出来ました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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筋力は十分にあるのに肩こり・首こりにお悩みのケース|ケースレポート

概要

運動習慣があって一般の人よりも体を動かすことが多く、筋力も十分にあるにも関わらず慢性的な首や肩のこりにお悩みだった症例

N様 / 東京都在住 / 47歳 / 男性 / 会社員(デスクワーク)

症状

  • 右の首〜肩〜肩甲間部にかけてのこり
  • 頭痛

状態

7年ほど前から徐々に右の首・肩・肩甲間のあたりにかけてつらくなってきた。ひどい時は頭全体が何かに覆われているような感覚になり、頭頂部の頭痛が出る。

長時間のデスクワーク、その際の姿勢の悪さが原因ではないかと自覚している。

首肩のストレッチをしたり、お風呂などでしっかり温まると少し楽になる。鍼やマッサージの経験はあるが、あまり効果は感じなかった。病院で首肩のこりに対して筋膜リリース注射をした時は少し楽になったが、効果は一時的で、一週間ほどで再びこりを感じるようになってしまった。

趣味はマラソン。毎週ランニングを欠かさず、年に数回フルマラソンやハーフマラソンなどの大会に出場している。

見立て

姿勢は、少し肩が前に出て「巻き肩」の様な状態だが、猫背がひどいわけではない。各関節の可動域は特別低下していることもない。

筋力は全体的にしっかりあるが、相対的にみて大殿筋、腹横筋、脊柱起立筋などの筋肉があまり働いていない状態。

このことから、デスクワークなど長時間同じ姿勢をとらなければならない状況で、僧帽筋などのこりやすい筋肉を使って姿勢を支えようとしてしまっていることが、原因として大きいのではないかと考えた。

また、肩を前に巻いてしまっている筋肉である、大胸筋や広背筋などの筋肉をしっかりとほぐし、胸が開きやすいようにしていくことも重要だろう。

治療

鍼とマッサージを併用し、こりの強い部分である頭半棘筋、板状筋、僧帽筋と、不良姿勢の原因筋である大胸筋、広背筋、胸鎖乳突筋をメインに入念にほぐしていった。

週に1回ペースで治療を続けたところ、順調につらさが減っていき、9回目の治療でNRS 10→1まで楽になった。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

また、上記の対症療法と並行して、大殿筋、腹横筋、脊柱起立筋など姿勢を支えるのに適している筋のトレーニングを行なった。トレーニングは1週や2週に一度の間隔では不十分ため、セルフケアとしてご自宅でも行なっていただいた。

体幹筋力も十分になり、姿勢を維持するために非常に効率の良い身体の使い方ができるようになった。徐々に治療間隔があいてもこりを感じない状態になっていき、1ヶ月半慢性的な肩こりを感じることなくキープできるようになったため、ゴールとなった。

ゴールまでの総治療回数は27回。期間は約1年間。

コメント

運動は定期的に行なっていて、人並み以上に筋力がある方でも、慢性的な首肩こりになることは少なくありません。

N様の場合、全体として筋力は十分にあったのですが、筋力テストで調べてみたところ、相対的にみて大殿筋、腹横筋、脊柱起立筋など体幹の筋力が不足していました。

これらの筋肉は長時間持続的に身体を支えることに適しています。そのため、不足していると僧帽筋などのこりを生じやすい筋肉が過剰に働いてしまい、こりを生じやすい状態となってしまいます。

N様は優先的に使うべき筋肉をトレーニングし、過剰に働きすぎている筋をしっかりとほぐすことによって順調に改善に向かい、ゴールに至ることができました。

また、肩こりの治療は、スポーツの競技力向上においてもつながることがあります。N様の場合、肩こり治療で体幹の筋力向上を行なったことにより、ランニング中の体幹の動きが安定し、フォーム改善にもつながりました。これらによって推進力が強化され、タイムを伸ばすことができました。

肩こりに悩まされなくなったため、今後は趣味のマラソンのパフォーマンスアップを目標にして、さらなるコンデション改善に努めてまいります。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


40年来の慢性的な肩こり・首こりが解消されたケース|ケースレポート

概要

慢性的な肩こり・首こりが、マッサージと運動療法を組み合わせた治療で改善した例。

M様 / 東京都在住 / 57歳 / 男性 / 営業職

症状

・首肩こり
・頭痛

状態

高校生くらいから、かれこれ40年ほど慢性的な首肩こりに悩まされている。マッサージを受けると楽になるが、効果が持続するのは2~3日。

一年前から特にひどくなり始め、頭痛も出るようになってしまった。頭痛が出て心配だったので、脳神経外科を受診したところ、異常はないと言われた。

整形外科に行き首のレントゲンを撮ったところ、頚椎の椎間板が少し潰れているが、他に目立った骨の異常はみられないと言われた。

運動が好きで、休日はアクティブに身体を動かしたり、長時間ウォーキングをすることが多い。
身体を動かしている時は首肩こりは気にならないことが多い。

鍼は経験がなく、恐怖心があるためできるだけやりたくない。

見立て

僧帽筋、頭板状筋、頭半棘筋、肩甲挙筋などの首・肩周りの筋肉の緊張が強く、これにより首肩こりの症状を引き起こしていると考えられた。

頭痛は医療機関での診察を経て異常がないことが確認されており、筋緊張と比例関係にあるので、緊張性頭痛の可能性が高い。

首肩こりを引き起こしている根本的な原因としては、股関節や胸椎の可動性が低いため、良い姿勢を保ちづらいことが大きい。
また、良い姿勢をとろうとしても首・肩周りを力ませるような使い方になってしまっている。
まずは不良姿勢を助長してしまう筋肉(ハムストリングス、大胸筋、広背筋、胸鎖乳突筋など)の緊張を和らげ、姿勢を支えるのに適している筋肉(脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など)を強化していくことで、根本的なこりの原因を改善できると考えた。

治療

初期治療

鍼治療を受けることに抵抗があるため、マッサージと体操により筋緊張を和らげることとなった。
また、初期治療では集中的につらさを減らしていきたいため、あまり通院間隔は開けすぎず、1週間に1回のペースで治療を行った。

マッサージをすることによる筋肉の緩みはよく、治療開始してから早い段階で筋緊張は緩和し、6回目の治療でNRS 2〜3まで下がった。

※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

中期治療では不良姿勢の原因となっている部分の改善のため、運動療法をメインに治療を行った。

運動療法の内容は、胸椎や股関節の可動域を改善するストレッチや、姿勢を効率よく支えるために脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋を強化するトレーニングなど。

通院の頻度は初期治療同様、一週間に1回のペース。
初期治療と違うところはマッサージ+トレーニングの日とトレーニングのみ行う日を隔週ずつ交互に行い、マッサージの頻度は減らすが、トレーニングの頻度は減らさないように治療計画を立てた。

まずは可動域が順調に改善し、各筋の筋力も徐々についてきたことで、NRS 2〜3からNRS 0〜1 (日常生活で肩こりをほとんど感じない状態)まで自覚症状が下がった。
中期治療終了で治療回数は13回目。

後期治療

後期治療では中期治療同様にトレーニングを行いつつも、マッサージの頻度を徐々にあけていった。
約2ヶ月間マッサージをしなくても、良い状態を保てるようになったため、首こり・肩こり治療はゴール。

ゴールまでの総治療回数は19回。

コメント

M様が順調に改善し、ゴールに至ったポイントは、停滞しやすい中期治療において高い頻度で運動療法を行えたことです。

通常は中期治療で通院間隔をあけていくのですが、M様は非常に意欲的にトレーニングに取り組んでいましたので、トレーニングの頻度を落とさずに治療を進めさせていただきました。

トレーニングの間隔が空きすぎてしまうと、正しいと思っていたフォームがいつの間にか自己流になっていたり、メニューの内容がマンネリ化してしまい、なかなか思うように前に進めないこともあります。

一週間ペースでマンツーマントレーニングを行うことで、フォームの修正やメニューのアップデートを随時行うことができ、非常に効率よく根本原因を改善することができました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。