投稿者「肩こりラボ」のアーカイブ

首・肩・背中のひどい凝りと痛みが慢性化して約7年間も続いてしまっているケース|ケースレポート

概要

仕事柄うつむく姿勢を長時間しなければならず、元々首肩の疲れや凝りを自覚していたが、年々ひどくなってきており、ある時背中を傷めてしまったことがきっかけで状態が悪化して、痛みや可動域制限等も生じるようになってしまった。

H様 / 東京都在住 / 39歳 / 女性 / 会社員(研究職)

症状

・首こり、肩こり、背中こり
・頭痛
・首から背中の痛み
・首が回らない(首の可動域が狭い)
・手の痺れ、握力低下

 状態

もともと肩こりはあったが約7年前から徐々に悪化してきて、年に2~3回はとてもつらい状態になり、頭痛も出てしまう。仕事は研究職で、顕微鏡を眺めることが多く、加えて長時間のPC作業。

半年くらい前、カバンを持った時に背中がピキッとして痛くなった。以前から、首の動きはよくなかったが、背中を傷めてから痛みでさらに可動域が狭くなってしまった。横を向くことと、上を向くのが制限されている。

整形外科に行ったところ、レントゲンでは異常がなく、湿布と痛み止めを処方された。しばらく様子をみたが、良くならなかった。

とてもつらかったため、マッサージや鍼に行くようになった。

鍼やマッサージを受けると、治療後はラクになるが、翌日にはつらい状態に戻るということを繰り返している。現在は、背中の痛みは最初よりはマシにはなったが、まだ完全に治ってはいない。

首肩背中の広範囲が慢性的に凝っていて、首の可動域も相変わらずせまく、痛みが出る。最近、腕から手にかけてしびれが出てきて、力が入りにくくなったため、再度整形外科にいった。レントゲンとMRI検査を受けて目立った異常はなかったため、リハビリをするように勧められた。

リハビリに、週2回、1ヶ月通ったが、状況に変化はない。

このままだとダメだと思い、根本的に治すために治療院を探していた。

見立て

病気が元になっている症状ではないかの確認

今回のケースは、肩から背中の痛み、首の可動域制限、腕の痺れや握力低下といった症状があったため、頚椎椎間板ヘルニア・頚椎神経根症といった整形外科的な疾患や脳神経外科領域の疾患が元になって症状が出ているのでないかの確認が必要となる。

当院受診の前に医療機関を受診して、疾患が無いことが確認されていたため鍼灸マッサージ治療の適用とした。

診察にて、以下5つを確認

  1. 問診
  2. 触診(炎症所見の確認、圧痛部位の特定、筋緊張の確認、筋肉量の確認)
  3. 可動域
  4. 筋力
  5. 姿勢

1.問診

症状が出たきっかけ、思い当たる原因、発症から現在までの経過、生活習慣と症状の関連性、日常生活動作 等 過去から現在の状況について詳しくお伺いした。

2. 触診

自覚部位の僧帽筋、肩甲挙筋、頭半棘筋、胸鎖乳突筋、板状筋の硬さが顕著であった。症状を自覚する部位に、筋硬結と圧痛を確認することができた。

その他、ハムストリングス、大腿前面、肩甲骨外側筋群、胸筋群、上腕二頭筋の過緊張が見受けられた。

ハムストリングス、大腿前面の硬化は股関節の可動域低下を招き、不良姿勢を招く要因となり、上半身の力みに繋がると考えられる。

上腕二頭筋や胸筋群の過緊張は肩甲骨を外転・前傾させ、肩甲骨外側筋群の過緊張は肩関節が内旋させてしまうため、「巻き肩」を招くことになる。

3. 可動域

頚椎、股関節、胸椎、肩甲胸郭関節の可動域が、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の定める参考可動域に満たないことが確認できた。

  • 頚椎:屈曲、伸展、側屈、回旋、全ての動きで10°動かすと首から背中までの痛みが出現し、再現できる。
  • 股関節:両足屈曲45°、伸展0° 。曲げるのも伸ばすのもどちらも可動域が低い。
  • 胸椎:他動運動、自動運動どちらも伸展が不可。
  • 肩甲胸郭関節:常時外転挙上位、自分自身で内転が不可。内転させようとすると頚部と上肢が過剰に緊張する。

 

Joint by joint theory によると、関節には「可動性(Mobility)」と「安定性(stability)」という役割があるとされています。

  • モビリティ関節 (Mobility joint)   : 動作の際に主に可動する関節
  • スタビリティ関節 (Stability joint): モビリティ関節が可動するのを支える、モビリティ関節に伴って可動する関節

たとえば、胸椎や股関節はモビリティ関節に該当する。H様の場合は、本来可動するべき胸椎や股関節の可動域が著しく低下してしまっており、その代償としてスタビリティ関節である頚椎に可動を強いることになり、過負荷が生じてしまっていることが推測された。

4. 筋力

各種筋力テストにより、腹筋群(特に腹横筋)、大殿筋、上背部の脊柱起立筋の筋力低下が確認された。これらは姿勢を保持するのに重要な役割を持つ。

5. 姿勢

立位、座位の姿勢を確認した。

立位姿勢は、Kendall姿勢の分類における Sway back(後弯平背姿勢)が見受けられた。スウェイバック姿勢とは、横から見ると、頭部が前方に移動し、頚部は軽度伸展位、胸椎は丸まり上半身の後方移動を伴い、骨盤後傾位の状態。

一方、座位は、骨盤が後傾し、頭部前方位。横から見ると、C字に丸まってしまっている姿勢が見受けられた。

しびれと握力低下についての考察

頚部の動きと痛みを観察したところ、動きに伴い首から背中にかけての痛みは再現されるが、全動作を通して腕の痺れは再現することはできない。また、診察時は握力低下も見受けられなかった。

腕の痺れや握力低下は、実際に物も落としたり手作業ができなくなるというわけではなく「動かしづらさ」を自覚する状態。仕事が忙しくなり、肩こりや首こりが酷くなると出現するとのことで、「凝り」に伴って出現するという特徴がある。

診察時に握力を確認したところ、特に減弱している所見は見受けられなかった。整形外科にてMRI検査を踏まえて器質的な疾患(頚椎椎間板ヘルニアや変形性頚椎症 等)や他の病気ではないことが確認されているため、身体所見、徒手検査、経過をふまえて、手のしびれ感と握力低下は、首から上肢にかけての筋疲労や筋の過緊張による「しびれ感」「握力低下感」であると予想した。

首・肩・背中にかけての凝りや痛み、首の可動域制限についての考察

自動運動と他動運動の際の、可動域の違いや痛みの出方を調べた。
※自動運動は、患者さん自分自身で動かすこと。他動運動は、セラピストが動かすこと。

自動運動に比べ、他動運動では痛みは少し軽減した。このことから痛みが軽減したことから頚椎の椎間関節の問題である可能性は低いと予想した。

しかし、わずかながら痛みが出現することから頚椎の椎間関節の問題が完全に除外できたわけではなかった。現段階では筋肉硬化による問題、関節の問題が考えられた。

整形外科で画像検査をふまえて構造的な異常がないことが確認されていること。
今まで鍼やマッサージを行なって悪化はしていないこと。
頚椎が動かせないほどの激痛ではないこと。

上記3点に加えて、当院での検査所見をふまえて総合的に考慮し、頚部周辺の筋緊張、頚椎周囲のインナーマッスル機能低下、頚椎椎間関節の機能低下が痛みや症状を招いている可能性があると考えた。

首こり・肩こり・背中こりについての考察

関節機能の低下や体幹筋力の低下によって、不良姿勢と不良動作を招き、安静時・業務時問わず反復継続的に首肩の筋肉に負担がかかってしまっていることが慢性的な凝りの原因であると推測した。

痛みに関しては、こりが酷くなるにつれて生じることから、筋筋膜性疼痛症候群 (Myofascial Pain Syndrome:MPS)や、頚椎や胸椎の椎間関節の機能不全(関節の動きの不調)の状態と推測した。

動作時に痛みがある場合は身体の使い方を根本から解決しないと良くならない傾向があるため、治療は通常よりも長期的になることが予想できた。仮説を説明し、同意を得られたため、治療を開始した。

治療

初期治療:主な目的は症状緩和。頻度は7~10日に一回。

初回の治療

しばらく鍼やマッサージにいっていないため、自覚症状として、今非常につらい状態。(NRS 10)
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

自覚症状部位に対して3D鍼、IDマッサージを行った。続いて姿勢改善のために、姿勢を崩していると考えられる胸筋群、上腕二頭筋、ハムストリングスにIDマッサージを行った。

セルフケア(日常生活の意識)として、座位時、立位時の不良姿勢改善を試みたが、関節可動域不足と筋力不足で正しい姿勢自体をとることが困難だったため、正しい姿勢をとる前段階と判断した。

そのため、初回のセルフケアは、胸椎の伸展可動域が向上させるためのタオルを用いたストレッチ、座位時の骨盤後傾姿勢の改善のための良好姿勢保持の要点とコツをお伝えした。

2回目の治療

初回治療から1週間後のご来院。前回治療後、少しラクになったが少しずつ元に戻っていき、完全に元どおおりでははいが、前回受診前に近い状態。(NRS 10→9.5)

処置は、初回よりも、患部に対して少し多めに3D鍼を行ない、本日から原因療法として運動療法を開始した。

正しい立位姿勢・座位姿勢をとるのに必要な関節可動域を出す為に背中(胸椎)、もも裏(股関節伸筋群)の静的ストレッチと動的ストレッチを行なった。また、体幹筋力強化のため、お腹(腹横筋)と臀筋(大殿筋)の筋力強化を行った。

セルフケアは同じ。鍼やマッサージでほぐして症状が緩和した状態をキープできるよう、とにかく立位、座位を、力むことなくラクにとれるようにすることが課題である。

3回目の治療

前回から10日後のご来院。1週間は効果がもったが、その後、段々戻ってきた。(NRS 8)

症状緩和に変化が出たことから、3回目の治療も2回目同様、患部に対して多めに鍼治療を行なった。

運動療法では、腹部(腹横筋)と臀部(大殿筋)を入念に筋力トレーニングを行なった。運動療法の時間は、前回は10分間だったが、今回は15分間行なった。

セルフケアストレッチの効果で関節可動域が改善したため、正しい姿勢をとった際の力みが軽減した。そのため日常生活で、なるべく正しい姿勢(立位、座位)を保つよう意識をしていただくことをお願いした。

4回目の治療

前回と同様の経過で本日に至る。悪くはなっていないが状況は大きく変わらない。(NRS 8)

首肩の症状を抱えている箇所だけでなく、筋膜の連結のある背中から腰、上肢にかけても鍼治療を行った。

運動療法は、20分間行なった。

セルフケアは、細かい修正をしたが、おおきく変えず今行なっていることをきちんと定着させることとした。

5回目の治療

この時も大きく状況が変わらなかった(NRS 8)ため、鍼治療の刺激を強めにすることを決断。

この日は、これまで以上に首肩に対して入念に鍼治療を行った。首肩への3D鍼はいつもの倍、時間かけた。

本日運動療法は、セルフケアの確認のみで、105分間ほぼすべて鍼とマッサージにて全身をほぐすことに特化した治療を行なった。

6回目の治療

前回後、二日間「揉み返し」のような筋肉痛が続いたが、その後、これまでと異なり、とてもラクになったのを実感した。

10日経った今の時点でも状態は良好で、痛みは無い状態。こりが少し気になるが、当初と比べると格段にラクな状態まで症状の程度が下がった。可動域制限やしびれ、握力低下、頭痛も無し。(NRS 2~3)

前回同様、3D鍼で入念に首肩背中をほぐし、下肢や上肢はマッサージとストレッチを組み合わせた処置を行なった。

中期治療:主な目的は体幹筋力強化・身体の使い方・姿勢と動作の改善。頻度は2週に一度(セルフケアができる場合)。

7~18回目の治療

前回の治療でさらにもう一段階ラクになった実感あり。症状を感じない時間が増えてきた。前回からの期間を通して、低水準で安定(NRS 0~3)。

症状の緩和とコントロールが可能になったため、今回から中期治療に移行する。

運動療法に重きを起き、筋力強化、可動域改善、使い方改善を図る。

 

処置の内容として以下をH様の治療の基本形式とした。

  • 鍼マッサージ治療は75分間(上半身へのアプローチはほぼ3D鍼のみ、股関節から脚にかけてはIDマッサージ)
  • 運動療法は30分間(体幹の強化)

セルフケアは、症状解消目的のものから、身体造りのためのメニューの割合を増やした。

 

今回以降、中期治療として、約2週間の頻度で12回の治療を行なった。

後期治療:主な目的は自己管理能力の体得・治療からの卒業準備。頻度は段階的に拡大。

19回目の治療

症状は安定(NRS 0~3)しており、つらくない時間の方が長くなってきた。仕事が立て込むと、一時的につらくなるが、セルフケアをして就寝することで、翌日に持ち越さなくなった。

H様の自覚的にはとても良好が状態をキープできているとのこと。

客観的に見ても、姿勢が改善し、首肩の負担が軽減していることが見受けられる。セルフケアも日々行うことができているため、今回以降、後期治療に移行することになった。

後期治療は、自己管理と治療からの離脱が目的となる。

次回は、3週間後とし、問題がなければ、段階的に頻度を拡大していく。

20~22回目の治療

3週間、治療の間隔をあけて問題なし。(NRS 0~3)

セルフケアをきちんと実行できているため、以後治療の間隔を21回目は4週、22回目は5週、23回目は6週と段階的に間隔をあけていく。

23回目の治療

治療の間隔が1ヶ月以上になると、途中、疲労がでることはあったが、セルフケアで解消することができ、以前のようなひどい痛みや凝りにでつらくなることはなかった。(つらくなった時にセルフケアをやろうと思えたこと、セルフケアで症状を解消できたことがこれまでと違った)

次回は2ヶ月後。

24回目の治療

問題ない状況。ゴールの相談をしたが、念のためもう一度、2ヶ月あけてみることになった。

25回目の治療(ゴール)

さらに2ヶ月あけても、症状安定。一過性に症状がでてもつらい状態にはならい。

忙しくて少し気になってもセルフケアでリカバリーができる状態。

症状に悩まされることがなくなり、自己管理できる状態となったので、治療をゴールとした。

コメント

本症例は、凝りだけでなく痛みもあり、非常に慢性化してしまっていました。またお仕事柄とても簡単に負担を減らすことができないということもあり、数回で完治するような軽症例ではありませんでした。

ゴールまで約2年(治療回数25回)かかりましたが、あきらめずに継続したことで、日に日にひどくなって約7年間も続いてしまっていた「つらい凝りと痛みのある生活」から脱することができました。

様々な施術を受けてきたが良くならなかった慢性的な症状が、なぜ完治に至ることができたのでしょうか。

治療の要点は2つあると考えられます。

1)しっかりとした刺激の鍼治療を行った

ひとつめは、中途半端な刺激ではなく、しっかりとした刺激で鍼治療を行い、徹底的に筋肉をほぐしたことです。

当初から鍼を用いて、筋肉をほぐしておりましたが、「かえし」とよばれる副作用面とのバランスを考慮して、極端に強い治療は行なっておりませんでした。

中程度の強さの鍼治療によって、一定の効果はあるものの、症状の緩和という観点からすると前進できていない状況でした。

そこで5回目の治療時に、「かえし」が強く出る可能性があることを説明し、H様の同意が得られたため、強めの鍼治療で、しっかりと首肩背中の筋肉へアプローチを行いました。

この強めの鍼が功を奏して、症状が急激に解消されました。これが転機となり、治療を進めることができました。

 

対症療法はネガティヴな印象をもたれがちですが、根本的な改善のための第一歩として、重要です。

H様におかれましても、H様に適した対症療法がきちんとなされていなかったために、症状がすぐにぶりかえしてしまうなど慢性化してしまっていたのだと考えられます。

症状が解消されたために、姿勢も維持しやすくなり、セルフエクササイズに取り組みやすくなったということもあるでしょう。

 

このようなことから、思い切って強い治療に踏み切って、症状の解消をできたことが、一つ目の要点と考えられます。

誤解のないように付け足しますと、誰でも強い治療をすれば良いというわけではございません。H様にとっては、今回行なった強さが「適した刺激」であったということです。

大切になのは、個々の患者さんにとっての「適した刺激」を行うことです。

2)姿勢意識を徹底していただいた

H様は、お仕事柄首や肩に負担がかかりやすい状況で、仕事中はうつむく姿勢を取らざるを得ず、理想的な姿勢を維持することは症状や身体のコンデションに関係なく困難でした。

そのため仕事以外のシーンにて姿勢に気をつけてお過ごしいただくことをご提案させていただきました。

一日の仕事が約10~12時間、睡眠を6時間とすると、残りの約6時間は移動やプライベートの時間となります。今までは仕事以外のこの約6時間も、常に不良姿勢で首や肩に負担をかけ続けてしまっていました。

この約6時間だけでも、首肩に負担へかかりにくい姿勢を意識して生活していただくことで、今まで16~18時間負担をかけていたものが、10~12時間になります。すると単純計算ではありますが、3〜4割程度の負担が軽減することになります。

仕事中柄、うつむかないということは不可能なわけなので、これならば出来そうということで、H様も納得してくださり、ご協力くださいました。

これによって常にかかっていた負担が軽減していき、症状がすぐに戻ってしまうということの抑制につながりました。

そして、はじめは強く意識しなければできなかった理想的な姿勢が無意識でもできる状態に定着していきました。するといつのまにか、仕事中もうつむかないで良い時間は良い姿勢になっていることに気がついたそうです。

 

生活スタイルは個々で違うのが当然なように、皆一様に生活全てで姿勢を気をつけるべき(姿勢が維持できないから治らない)と決めつけるのではなく、個々の生活を考慮してそれにアジャストさせることが大切だと考えております。

このように、できることからスタートし、まずは仕事以外での負担を徹底的に減らす方針で原因療法を行ないました。H様はとても努力してくださり、改善につながりました。

完治に至れた理由

ひとつ確かなことがあります。

それは、完治できたのはH様の「治したい」という気持ちと努力のおかげということです。

慢性的な症状を改善させるためには、(現時点では)手っ取り早く手間をかけずにやることは困難で、患者さんの努力が少なからず必要となります。

今回の治療は、はじめはなかなかわかりやすい効果を感じることができませんでしたが、そこであきらめず、約2年間という長い期間、しっかりと計画に則り、治療に取り組んでくださいました。

当初はとてもおつらい状態で、大変だったと思います。お伝えしたことを毎日地道に行なってくださりありがとうございました。

約2年間の治療、本当にお疲れ様でした。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


20年来の慢性的な首こりと、凝りに伴う頭痛がでゴールに至ったケース|ケースレポート

概要

整体とパーソナルトレーニングにより、一時のひどい状態からは改善したが、頭痛を伴う首こりによって仕事や日常生活に支障をきたしてしまっている。

O様 / 東京都在住 /  52歳 / 男性 / 会社員(管理職)

症状

・慢性的な首こり
・頭痛

状態

20年くらい前から肩こりと首こりで、様々な施術を受けてきた。

様々受けたなかで、肩こりや首こりを専門とする整体と、整体とは別のトレーナーによるパーソナルトレーニングに行き着き、この二つを併せて行うことで、かなり改善した(NRS 10→5)。
※NRS:Numerical Rating Scale 痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

今は、もうほとんど肩こりの自覚はなく、姿勢も改善したという自覚がある。

姿勢はいつも気をつけているし、ゴルフやウォーキングなどの運動、日々のストレッチも行っているため、日常生活は特に問題がないと自覚している。

最も悪かった時から比べると今は5割ほどの状態だが、首こりだけがどうしても改善しない。肩こりは無いが、首がつらい。

首こりがひどい時は頭痛がして、仕事や日常生活に支障が出てしまう。頭痛は主に右の後頭部から頭頂部、両側のコメカミに生じる。

いくつかの病院で脳や首の検査を受けたが、異常は見つからず、おそらく凝りのせいだろうといわれた。整体で、強く押してもらうと気持ちが良いが、奥の芯の様な凝りが解消されず、改善には至らない。

見立て

【頭痛について】

まず、頭痛があるということで、命に影響を及ぼす疾患の可能性を考慮しなければならないが、当院初診一ヶ月前に、医療機関を受診して専門医の診察を受けて特に病気は無いといわれており、この間も症状に変化がないということから、再度の医療機関受診の必要性は低いと判断した。

触診により、首の後ろから横にかけての筋肉(僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋)や、頭部の筋肉(側頭筋、前頭筋、後頭筋)が緊張していることがわかった。

頭の感覚を担う神経は、首に由来するものがある。大後頭神経、大耳介神経、小後頭神経である。これらは頚椎から出て、首の筋肉を貫いて、頭にむかうため、首こりによって頭痛になることがある。首こりによる大後頭神経痛はその一つである。

また、頭部にも筋肉(前頭筋、側頭筋、後頭筋)があるため、眼、顎、首の酷使によって、これらの頭の筋肉自体が硬くなり、頭痛を招くことがある。このような頭痛が緊張性頭痛である。

本件の場合は、複数の医療機関で検査を受けて、脳や首に異常がないことが確認されており、且つ、症状のある部位の筋緊張が見受けられたため、頭痛は首こりや頭こりによるもの(頭部の筋肉自体が緊張して生じる頭痛と首こりによって大後頭神経が圧迫されて生じる頭痛の混合)である可能性が高いと推測した。

【首こりを招く要因について】

診察時の様子からも、とても姿勢には気をつけていることがうかがえた。

ところが、背スジをピンと伸ばしてはいるが、顎を強く引きすぎてしまっていた。顎を引くと見た目は美しく見えるが、首は力んでしまう。喰いしばりも強くなり、側頭筋が緊張し、頭こりや顔こりにつながってしまう。

真っ直ぐに伸びることを強く意識しているため、見た目は美しいが、力みが強い姿勢といえる。この力みにより、首や頭の筋肉に負担がかかり、凝りが生じてしまっていると考えた。

仕事のストレスが多いことから、ストレスによる凝りもあると思われるが、肉体的な負担がかかっていることも明らかなので、まずは肉体的なものを改善させる方針とした。

治療

慢性的な首こりの解消のために、今まで強いマッサージを受けても解消しきれなかったため、初回から鍼治療を行った。

3D鍼で首の浅層から深層まで筋肉(僧帽筋、半棘筋、板状筋、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋)をひとつひとつほぐした。特に緊張が強い部分(半棘筋、板状筋)は、3D電気鍼(低周波鍼通電療法)も行った。

頭こりや顔こりは、マッサージで丁寧にほぐした。加えて、首と関連性が高い、背中や腰筋肉、肩甲骨の筋肉をマッサージで入念にほぐし、股関節と肩甲骨柔軟性改善のために、ストレッチを行った。

首こりは、1回の治療で、奥に芯となっているように感じていた慢性的な凝りが解消されたとのこと(NRS 1以下)。これにより、これまで週に2~3回は頭痛があったが、2回目の治療までの1週間で、一度も頭痛が出なかった。

首こりの解消も一時的なものではなく、一週間経過時点でも楽な状態が続いている。

 

首への負担を減らすために、原因療法として、同時に姿勢の改善も行った。

運動を行っているため、個々の筋力は十分だったので、それらを効率よく連動させる使い方の練習をした。姿勢の要点も確認して、首や肩に負担をかけない姿勢を体得していただいた。

一週間頻度で3回の治療で症状がほぼ無くなり、治療の内容を姿勢改善に重きをおくようシフトした。

4回目は2週間後。5回目は4週間後としたが、症状でつらくなることはなく、計5回の治療でゴールに至った。

コメント

本ケースの要点は二つあります。

一つ目は、対症療法。首こりや頭痛の元となっていた首の深層筋の凝りをくまなく解消することです。

O様は、これまでもマッサージ等の手技療法により、体の表面からは凝りのポイントに対処をしていました。実際、つらいところを強いマッサージでほぐしてもらうと、少しは楽になっていました。

ですが、いくら首を集中的にマッサージしても完全にすっきりすることはなく、翌日には戻ってしまう状態でした。一方、鍼治療も受けてはいましたが、翌日には戻ってしまうということに変わりはありませんでした。(鍼治療は、ツボや経絡に対して鍼をうつ東洋医学的な手法だったため、患部には直接的に刺してはいなかったとのことです。)

O様がこれまで受けてきた、凝りをほぐすための治療は、凝りのある皮膚上や、遠隔部から間接的には患部に対して対処をしていましたが、皮下にある「凝り」そのものに対して直接的なアプローチがなされていなかったということが想定されました。

そのため、対処を繰り返しても、凝りの「芯」が解消しきれず残ったままだったので、治療を受けてもすぐにぶり返してしまう状態だったのではないかと考えました。

全てではありませんが、慢性化している深層筋の凝りは、マッサージなどの体外からのアプローチでは解消しきれない場合が少なくありません。マッサージで解消しきれず慢性化してしまっている場合は、直接的にアプローチが可能な鍼が有効です。

鍼治療の技法は様々ありますが、このような筋肉性の場合は、ツボや経絡ではなく、対象となる筋肉に直接刺す手法が功を奏することが少なくありません。

O様の場合は、凝り固まってしまっている筋肉を鍼で直接ほぐしたところ、すぐに慢性的な状態から脱することができました。

O様の状態をひとことで言うと、ほぐし不足により慢性化してしまっていた、といえます。

 

二つめは、原因療法。首や肩に負担をかけない姿勢を理解し、体得することです。

実は、背筋をピンと伸ばして顎を引くという見た目が美しい姿勢と、首や肩に負担をかけない姿勢は、異なるものなのです。

O様は、姿勢を正そうと、とても意識をしてくださっていましたが、それが裏目に出てしまっていました。姿勢を正そうとすることで、かえって首を力ませてしまい、良かれと思って行っていたことが、かえって負担となってしまっていたのです。

O様は、日々運動をしていることから、柔軟性や筋力など基本的な要素が概ね良い状態でした。それ故に、簡単な補強運動と、体の使い方を練習し、姿勢のコツをお伝えすることで、すぐに正しい姿勢を身につけることができました

とはいえ、新しいことを体得するということはたいへんなことです。日常生活にて意識を続けてくださったことで、原因療法がスムーズに進み、早期にゴールに至ったと考えられます。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりや首こりを慢性化させないでほしい理由と慢性化させないための日常生活の工夫

テレワークで、慣れない環境や仕事に適していない環境で作業をしている方、オンラインでの仕事をはじめたことにより、以前よりもPC作業、タブレットやスマホでの作業が増えている、という方は少なくないでしょう。

 

新たな生活様式を構築してうまく折り合いをつけて生活できている方がいらっしゃる一方で、ストレスと運動不足が相まって、不調を自覚する方も少なくないと思います。

 

仕事や生活様式の変化によって、平時よりも首や肩への負担が増え、肩こりや首こりがつらくなってしまっているという方はいらっしゃるのではないでしょうか。

 

病気であれば、病院で診てもらうのが普通ですが、肩こりや首こりの場合はいかがでしょう。

 

全てではありませんが、多くの場合は、病院では異常がないとされる本態性肩こり(=病気が元ではない肩こり)ということで、おそらくほとんどの方は我慢か放置となってしまっているかもしれません。

 

また、平時であれば、つらくなったらマッサージに行ってほぐしていた方も、今は自粛しているという方もいらっしゃるかもしれません。

 

ほとんどの場合、肩こりや首こりは今すぐに命を脅かすものではありませんし、今すぐ生活に支障をきたすものでもありません。

 

ですが、はじめはたいしたことのなかった肩こりや首こりが慢性化、重症化することで思わぬ不調に陥ってしまうことがあります。

 

それを防ぐためには、軽症の時に、きちんと対処をすることです。

 

本格的な不調に陥る前に対処すれば、治療に費やさなけばならない経済的、時間的な負担軽減、情報収集のための労力軽減にもつながります。

 

何よりも、つらい思いをしなくて済みます。治療を受けなくてもよいのです。

 

ですので、是非この機会に、肩こり・首こりのイメージ、もっといえば筋肉や筋膜の過緊張という状態に対する考え方を改めていただきたいのです。

 

本記事では、主に以下2点をお伝えいたします。

1)肩こりや首こりを慢性化させないでいただきたい理由

2)慢性化・重症化を防ぐための2つのポイント

 

首や肩が凝ったな、重いな、なんだか不調だな・・・と思われた方は是非ご一読いただけましたら幸いです。

 

肩こりや首こりを慢性化させないでいただきたい理由

筋肉や筋膜の過緊張が生じるということ。これ自体は生理的な反応ですので、異常ではありません。

ではどのような状態が異常なのでしょうか。

まずはここからご説明いたします。

 

なにが正常で、なにが異常なのか?

誰でも筋肉を酷使すれば疲労します。

筋肉痛もおこります。

 

たとえば・・・

長い階段を登れば、太ももの筋肉に痛みが出るでしょう。

運動をすれば、翌日以降に筋肉痛が生じるでしょう。

長時間仕事をすれば、疲れるでしょう。

 

筋肉を酷使して疲労や筋肉痛が生じても、普通は、しばらく休めば元に戻ります。

負担を受けて、それに見合った疲労や痛みが一時的に出ることは、生きている限り自然なことです。

これは正常な状態です。

 

一方、いくら体を休めても、マッサージなどを受けても回復しない、あるいはすぐに再びつらくなってしまう場合があります。

また、たいして負担をかけていないにも関わらず、疲労や痛みが生じてしまうこともあります。

 

これは慢性化してしまっている状態です。

つまり、異常な状態といえます。

慢性化した肩こり・首こりは、カラダの自然治癒力が及ばない状態、つまり治療が必要といえます。

 

「治療って、そんな大げさな・・・」

「とにかく、ほぐしたいだけなんだけど」

「とりあえずラクになれればそれでいい」

 

肩こりや首こりで治療なんて・・・と敬遠されることでしょう。

 

でも、それは、おそらくそこまでヒドくない方だからこそです。

 

肩こりが慢性化すると病気のような症状を招く!?

肩こりを軽視してはいけない理由として一般的なのは、病気が元になっている肩こり(症候性肩こり)の可能性があり、命に関わる問題かもしれない、ということです。

 

これに関しては、メディアでも再三取り上げられていますし、ご存知の方も少なくないでしょう。

 

病気が元になっている肩こりがあるのは事実ではありますが、実際のところは、病気ではない肩こり(本態性肩こり)がほとんどなので実感がわかない方も多いと思います。

ですので、本記事では別角度からのお伝えをさせていただきます。

 

肩こりや首こりが慢性化すると、自律神経やメンタルにも影響が出てしまい、日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。

 

首や肩の筋肉の過緊張が継続することで、筋肉の痛みや不快感以外の諸症状が生じてしまうのです。

 

凝りに伴う「凝り」以外の症状は、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、倦怠感、胃腸の不具合、精神症状(気分の落ち込み、イライラ、不安感 等) などがしばしば見受けられますが、定型的なものではなく個々によって異なります。

 

一般的に、このような症状があれば、病院で治療を受けるのが普通でしょう。

 

ところが、凝りが元の諸症状であった場合、病院にいって診察を受けても決定的な診断がでない、あるいは原因がわからないということになります。

 

そして、凝りに伴う諸症状は、うつ病やパニック障害等の精神の不調や、自律神経失調症と呼ばれる状態と類似していることから、症状の対処として、精神安定剤や抗うつ剤などを処方されるということが少なくありません。

誤解しないで頂きたいこと。強調したいこと。

二つあります。

一つ目は、病院受診についてです。

凝りが元になった不調である可能性があったとしても、病院に行っても意味がないということではありません。まずは必ず病院に行きましょう。

病院に行き、診断名がつく病気が元で生じている症状なのかどうかをはじめに確認することが何よりも大切なのです。

安易に自己判断せず、医師の診察を受けるようにしてください。

病気ではないということが確認されて、はじめて凝りによる不調ではないかということになります。

二つ目は、服薬についてです。

薬を飲まないで健康であることに越したことはありませんし、生命を維持するうえに必要不可欠な場合を除き、極力長期的な服用は避けるべきだと考えておりますが、本記事は服薬を否定し、鍼灸マッサージ治療を推奨するということを目的としていません。

たとえば、侵害可塑性疼痛(nociplastic pain)のような慢性疼痛であれば、普通の消炎鎮痛剤(たとえばロキソンなどのNSAIDs)よりも、抗うつ剤の方が効果的であるといわれています。

この場合であれば、精神症状改善のためではなく、痛みの治療のために抗うつ剤を利用することになります。

痛みが痛みを呼ぶという観点からも、とにかく症状の緩和(鎮痛)を行うということは治療において意味のあることです。

 

ここでお伝えしたいのは、

  • 一般的に病気ではないとされる「肩こり」や「首こり」が元になり、様々な不調が引き起こされることがある
  • 肩こり首こりがひどくなり、日常生活に支障をきたし、社会生活が困難になってしまうことがある

この二つです。

 

何よりも、こういった実態があることを知っていただきたいのです。

 

病気ではないからといって、肩こりや首こりを軽視しないでいただきたいと切に願います。

 

もし周囲に「肩こりがつらい」とお悩み方がいらっしゃいましたら、「気のせいだ」「気持ちの持ちようだ」「病気ではないでしょ」と思わず、是非親身になってお考えいただけたらと思います。

 

お悩みの方は少なくありません

首や肩の凝りが元で、様々な不調が生じてしまう状態を「頚性神経筋症候群」や「首こり病」と呼ぶことがあります。

 

「症候群」や「病」とつきますが、これらは医学的に正式な病名ではありません。ですが、実態としてこのような症状で苦しんでいる方がいらっしゃるということを知っていただきたいのです。

なかには、凝りとそれに伴う諸症状により、仕事が手につかなくなり、休職を余儀なくされ、社会生活が送れなくなってしまっているという方もいらっしゃいます。

 

つらい。身動きがとれない。自覚的には異常事態なのに、医学的には病気ではないとされます。(現代医学が悪いわけではなく、現時点の医学ではカバーしていない範疇であるというだけです)

 

ある病院で目立った異常は無いとされたとしても、症状があって自覚的には具合が悪いわけなので、複数の病院で検査を受けます。

複数の病院で同様の結果を受け、病院ではなく、治療院や施術所に足を運ぶようになるというという方が少なくありません。

 

複数の病院受診、複数の治療院・施術所へ通院し、施術を受けるということは、多大な労力と時間、費用がかかります。

医療者・施術者に対して、自分の状態を説明すること、これ自体もとてもたいへんなことです。

 

首や肩こりが慢性化、重症化すると、社会生活に支障をきたしてしまうことがあるのです。

 

ですので、肩こりや首こりを慢性化させないでいただきたいのです。

 

当院にいらっしゃる、重度の首こり・肩こりを患った方々を治療するなかで切に感じること。

それは、最も重要なのは、頚性神経筋症候群や首こり病といわれるような、慢性的かつ病的な凝りの状態にならないようにするということ。

 

つまり予防です。

 

慢性化・重症化を防ぐための2つのポイント

肩こり・首こりの慢性化や重症化の予防において大切なのは以下2点です。

  1. 首や肩の疲労を蓄積させないこと
  2. 首や肩への負担を減らすこと

 

当然のことだと思われるかもしれませんが、生活のなかでいざ実行しようとすると、簡単ではありません。

そこで、肩こりラボでの実際の治療でも取り入れている肩こりラボが推奨する方法とポイントをご紹介させていただきます。

 

【1】首や肩の疲労を蓄積させないこと → こまめな解消

疲労解消法は様々ありますが、日頃デスクワークが多い方におきまして、特にオススメしたいのは、カラダを動かすことです。

 

ただ、闇雲に動かせば良いというわけではありません。

日頃、ジムでのトレーニングや、スポーツをされている方でも首肩こりにお悩みの方は少なくないように、「体を動かす」ことにおいては要点があります。

 

ポイントは3つです。

  1. つらい箇所(首や肩)のストレッチはやりすぎないこと。※傷めてしまうことがあるため
  2. 肩甲骨や体幹を動かすこと。※痛みを伴わなければ静的よりも動的ストレッチの方がオススメ
  3. 体の前面をほぐして、後ろに反れるようにすること。 ※特に背中と股関節が後ろに反れるようにする

 

具体的に「何をやるか」におきましては、既に何らかの対処を行っていて自分に適しているものがあるようでしたら是非それを継続し、その際に上記のポイントを意識してみてください。

 

もし効果的なストレッチ方法をお探しであれば、こちらのストレッチ(YouTubeにとびます)をお試しいただけたらと思います。

 

こちらのストレッチは、肩こりラボの治療でも、実際に行うことがある7つのストレッチをご紹介しています。

※動かすと痛い場合は、痛みや違和感が出ないもののみ行ってください。特に背骨や肩関節の問題のある方(ヘルニア、四十肩・五十肩、反復性肩関節脱臼 等)の方は決して無理のないようにしてください。

 

「肩こりはあるが、日時生活に支障あるわけではない」という方におきまして、症状解消と慢性化予防として、お役にたてることでしょう。多くの方は、このストレッチで、十分な緩和・メンテナンスになります。

 

【2】首や肩への負担を減らすこと → 根本改善に重要

現代の生活においてPCやスマホを使わないということは不可能なように、首や肩の負担を完全に無くすということは不可能です。

 

でも日常生活の中でちょっとした工夫をすることで、首や肩の負担を軽減させることはできます。

塵も積もれば山となるように、ちょっとした工夫でも、積み重ねれば大きな違いになります。

 

本稿では首や肩の負担を減らすためのスマートフォンとパソコンの操作方法をご紹介いたします。

 

実際の患者さんに行っていただき成果をあげている方法です。

 

PC操作の工夫

厚労省の VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン では、休憩の頻度や環境について等、心身の負担を減らすための指針が記載されています。

 

たとえば休憩ですが、ガイドラインによると、一連続作業時間は1時間を超えないようにして、連続作業と連続作業の間に10-15分の作業休止時間を設け、かつ一連続作業時間内において1-2回程度の小休止を設けることとされています。

 

これらがきちんと実行できれば、おそらく疲労は軽減されることでしょう。ですが、理想を現実は異なります。

ガイドラインに記載されていることをすべて実行することは実際は難しい・・・・という方は少なくないでしょう。

 

そこで、様々改善は必要だが、実際のはなかなか難しいという現状をふまえて、実践的な首や肩の負担を減らすための方法をご紹介します。

 

それは、PCのディスプレイの高さ調整です。

 

みなさんは、PCのディスプレイはどのような高さの設定するのが望ましいか、ご存知でしょうか。

 

上述した”厚労省の VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン”によると、「ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。」とされています。

 

姿勢を正した姿勢で、ディスプレイの位置が下にありすぎると、背中は伸ばしていても、頭がうつむく形になってしまうと首には負担がかかってしまいます。

一方、ディスプレイの位置が高く、目線を上に向けすぎると眼精疲労の元になりますし、首を反らせて見上げる状態になってしまうと首にも負担になってしまうので位置が高すぎるのも要注意です。

 

体感として、適切な位置は、ディスプレイの大きさによっても異なりますので、厳格に画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにするのではなく、これを目安に、ご自身の首肩や眼の疲労感の感覚とみながら微調整していただけたらと思います。

 

ちょうどよい高さは個々によって異なりますので、中には、画面中の作業スペースが目線にあるのがちょうど良いという方もいらっしゃるかもしれません。

ですので、当院の患者さんには、眼の疲労感と首の緊張の程度みながら、なるべく下を向かないで無理なく作業ができる位置に調整していただくようにしています。

 

当記事をお読みの方も、ガイドラインを参考に、是非微調整をしてみていただけたらと思います。

 

 

さて、デスクトップPCは、ほとんどの場合、モニターの高さ調整が可能です。

調整の幅が少なくてちょうど良いところにできない場合は、モニターの下に台を置いたり、椅子の高さを調整してみましょう。

 

一方、ノートPCをメインに作業をする方モニターの高さ調整が困難に思えます。

「自分は普段ノートPCだから液晶画面を高くするのはムリ!」とあきらめないでくださいね。ノートPCの方が下を向く程度がおおきくなりますので、日頃ノートPCを使用するほど、トライしていただきたいのです。

 

ノートPCの方を使う方にお願いしているのは、外付けのキーボード、あるいは外付けモニターをご用意していただくことです。

ブランドに拘らなければ、安価なものが多数販売されています。モニターも、モバイルモニターとして持ち運び可能なものがあります。

 

外付けキーボードを使う場合は、ノートPCを台に載せて、画面を高くあげるようにしましょう。

画面の高さは、上記デスクトップの時と同様、画面内の頻繁に使用する作業領域が眼の高さとほぼ同じか、やや下になるようにします。

 

外付けのキーボードか、モニターどちらが良いのか、それぞれの作業環境によりますので、自らが実際に使える方をお選びいただけたらと思います。

ノートPCの場合、オフィスや出先など異なった環境で作業することもあると思いますので、場合によっては両方用意するのもありかと思います。

 

PC作業におきましては、極力下を向かないで作業できるよう環境を整えるということがポイントです。マッサージにいくのを一回我慢したとしても、中長期的には体には首や肩には良い影響がありますので、是非購入をご検討いただきたいと思います。

 

スマホ操作の工夫

まず一番のポイントはスマートフォンを保持する高さです。スマートフォンの操作で一番の問題は下を向き続けることにあります。

ですので、なるべく画面を目線の高さに持ち上げて保持し、操作をしてほしいのです。

 

例えば、スマートフォンを片手で持ち、持っている手の肘の下にもう一方の手を入れて支えると、目線の高さに保持することの負担は軽減できます。

電車での移動中など座位であれば、膝の上に荷物やクッションを置き、肘を荷物に乗せてスマートフォンを保持すると負担を軽減することができます。

 

次のポイントは目と画面の距離です。もちろん「目」に対しては近くない方がよいのですが、あくまでも姿勢の改善という点に限りますと、画面は遠いよりは近いほうがよいです。

 

なぜかというと、目線の高さで、画面を顔から遠くに離して操作するというのは、実際のところ困難です。

スマホを目線の高さに保ち、顔から話して操作しようとすると、テコの原理でスマホがとても重く感じますし、さらには上肢の重みも加わり、このような状態で操作は困難であることに気がつきます。

 

すると数分も経たずに、懐に端末を保持することになり、下を向く姿勢となってしまいます。首や肩の負担を減らすためには下をなるべく向かないようにすることが大切です。

眼の負担と首肩の負担を考慮しますと、スマホを長時間操作するということを見直し、別の方法に代用するか、使用時間を自己管理するのが良いかもしれませんね。

 

スマートフォンの機種選びも重要です。近年では液晶大画面化の傾向にありますが、視覚的に見やすい反面、片手で操作ができないことや重量があることによって丸まった姿勢で操作せざるを得ない状況にもなっています。

肩こりにお悩みの方は、軽量で、かつ片手で操作できる端末を選ぶことが望ましいといえます。

 

なお、この「首や肩に負担のかかりにくいスマートフォンの持ち方」は、読書や書類閲覧の際にも共通していえることですので是非生活に取り入れていただけましたらと思います。

 

治療を検討する目安

今現在、さほどひどくない方は、上述した「重症化予防のポイント」にご留意して生活いただき、症状がつらくない状態を維持できるようであれば治療は必要ありません。

日常生活のなかで、首や肩の負担を減らすことを意識して生活をしてください。

 

一方、もし既に首肩こりがひどくつらい状態であれば、改善のために、適切な対処が必要です。

まずは、ご自身にとって、治療が必要か不要か、それを判断していただきたいのです。

 

首肩がガチガチでひどくつらい方で、治療が必要かどうかは、まず、セルフケア動画で紹介したストレッチ(YouTubeにとびます)ができるかどうか? そして、楽になる実感があるかどうか? これで見極めてください。

 

今現在、ひどくつらい状態だとしても、このセルフケアを日常的に行なうことで調子が良くなれば治療の必要はございません。

 

つまり、動画でご紹介しているストレッチが効くなら、あなたの肩こりや首こりは治療の必要がない状態いうことです。

このストレッチで効果が感じられない場合は、肩こり・首こりの治療を受けることをご検討いただけたらと思います。

 

治療を検討するにあたっては、治療院、マッサージ、整体に行く前に、まずは医療機関の受診をするようにしてください

 

医療機関を受診し、病気が元で凝りが生じているようであれば、診断が出て、病院で治療が行われます。

診断が出ず、病院で治療が必要な状態でない場合は、治療院の受診をご検討ください。

 

肩こり・首こりの根本的な改善を目指すための治療院を探すには、こちらの記事【治療院の選び方】を参考にしていただけたらと思います。

 

 

【 参考 】

Pain Relief ー痛みと鎮痛の基礎知識

Recently introduced definition of “nociplastic pain” by the International Association for the Study of Pain needs better formulation

Wikipedia(頚性神経筋症候群)

厚生労働省労働基準局/VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首こりと首の痛みによって不眠になり日常生活に支障をきたしてしまったケース|ケースレポート

概要

首こりと首の痛みが慢性化して、つらさのあまり、寝付きが悪い、眠りが浅い、寝ても疲れがとれない、頻繁に起きてしまうといった睡眠障害に陥ってしまい、心身ともに疲弊してしまった。

S様 / 東京都在住 / 29歳 / 女性 / 会社員

症状

首こり
首の痛み

状態

社会人になってから、首こりを自覚するようになった。仕事の忙しさと比例して、首の凝りが気になる状態だったが、デスクワークなので仕方がないと思っていた。首が凝っても、一晩休めば治るので、特に生活に支障はなかった。

ところが、一年ほど前に転職して仕事がかわった頃から急激にひどくなり、痛みも出るようになってしまった。これまでであれば 首が凝っても一晩寝れば回復していたが、最近は体を休めても回復しない。

つらい状態が続き、痛みも出てしまっていたため、整形外科を受診した。特に異常は見つからず、ストレートネックだといわれ、湿布と痛み止めを処方された。ところが鎮痛剤を飲んでも楽にならなかった。知人に鍼と整体を紹介されて何度か行ったが、効果を感じることができなかった。

首がつらくて、寝付けないこともある。眠れたとしても、何度も起きてしまったり、寝ても疲れがとれない状態になり、日中ぼーっとするようにもなってしまい、今が最もひどい状態。仕事に集中できなくなり、本格的に日常生活に支障をきたしてしまうようになってしまったので治療にきた。

見立て

首を触診したところ、表層の僧帽筋だけでなく、深層の半棘筋や板状筋まで過緊張状態にあることがわかった。首の緊張が最も強いが、頭から腰まで上半身全体の筋肉が硬くなってしまっていた。上下に首を動かすと、痛みが出る。(上を向く動作、下を向く動作共に痛みが出るためうがいができない状態)

整形外科で診察を受けて、骨や椎間板に異常や、病気がない事が確認されているため、筋肉や筋膜による痛み(筋筋膜性疼痛症候群:Myofascial Pain Syndrome:MPS)や、頚椎の機能不全(関節の動きの不調)の状態と推測した。

姿勢にも問題が見受けられた。立位だと反り腰となり、頭が前方に出ていた。座位では骨盤が後傾し、背中が丸まっており、猫背の状態となっていた。座位、立位いずれの場合も、頭が体よりも前方に出てしまっていた。丸まっている姿勢でパソコン作業をすることで首に負担がかかるが、立位姿勢も崩れているため、仕事以外の時間も首に負担がかかっており、回復できなくなってしまっていると考えられた。

首に負担をかけている要因として体幹部の機能不全が考えられるため、体幹に着目してさらに分析する。まず、背中が丸まっている(胸椎の後弯増強)ことから、胸郭の動きが少なくなり、胸式呼吸ができない状態となっていた。このため、頭が前方に出ている姿勢による首の筋肉に負担がかっていることに加えて、呼吸をすることでも首を力ませてしまっていた。

また、長時間のパソコン作業で胸や腕の緊張が強く、巻き肩になってしまっているため、仰向けで寝ても肩が浮いてしまう状態だった。その結果、就寝中も首や肩の緊張が抜けない状態となり、寝ても凝ってしまうことになる。首肩の緊張が最も高いが、手や足、頭を含める全身の筋肉の緊張が高まってしまっていた。

姿勢が崩れてしまう要因は、股関節の柔軟性不足、大殿筋・腹横筋・脊柱起立筋の筋力不足が主な要因と考えられる。筋力が低いため、身体造りの期間が長くかかることが予想される。セルフケアがどれだけできるかによってゴールまでの期間や回数がかわるだろう。

治療

首を中心に、全身の筋緊張を緩和するためにマッサージをしたが、首の緊張だけがどうしても緩和されなかった。そのため、深層筋に直接刺激を与えるために、3D鍼で、僧帽筋、半棘筋、板状筋、肩甲挙筋にアプローチをした。

深層筋への鍼が奏功し、1回で首の痛みが約半分(首痛のNRS 10→5)になり、3回の治療終了時点で首の動きに伴う痛みが無くなった(首痛のNRS 0)。
※NRS:Numerical Rating Scale 痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

痛みが改善したので、残るは凝りの症状緩和となる。凝りは、治療後は楽になるが、時間の経過と共につらくなってしまう状態なので、体幹のコンディション改善と、日常生活の姿勢改善が必要となる。

初診時からマッサージに加えて、ストレッチを続けていることから、股関節の柔軟性は概ね良好になったので、今後は、筋力強化が課題となる。セルフケアを筋トレをメインとした。大殿筋強化はクラムシェルとヒップリフト、腹横筋強化は四つ這いドローイン、脊柱起立筋強化は肘つき、全体のためにスクワット、を行っていただいた。

鍼、マッサージ、ストレッチにて筋肉をほぐして症状を緩和するのと、関節可動域の改善を図り、筋トレで姿勢を保つための筋力と、正しい体の使い方の体得する治療を行った。

計7回の治療で、首の痛みと凝りがほぼ全て解消されて[首痛のNRS 0、首こりのNRS 1]、2週間経っても良い状態をキープできるようになった。その後、3週、4週と期間をあけても具合が悪くなることはなく、セルフケアも習慣化できていたため計9回の治療でゴールとなった。

コメント

首こりが慢性化し、ひどくなり、睡眠障害にまで発展してしまったケースです。一年前に、急激に悪化しましたが、それより以前から首や肩の筋肉に負担がかかりやすいお体であったたと推測でき、仕事が変わる前からの蓄積はあったと考えらます。

肩こりラボでは、肩こりという症状を客観的に診て、治療をするために、筋肉が硬いだけでは凝りではなく、症状を自覚してはじめて「凝り」である、と定義しています。

触診状の筋肉の硬さと症状の程度には、必ずしも相関関係はありませんが、硬くなっているということは、血行障害が生じやすく、筋肉や筋膜のコンディションが低下しやすい状況といえます。慢性的に筋肉の緊張が高く、硬くなっているという基盤があり、その上に心身のストレスや負担が加わることで、突如発症したり、悪化するという例は珍しくありません。本件もこのようなパターンであったと考えられます。

以前は自覚症状は強くは無かったとはいえ、コンディションが良いとはいえない状況のなか、仕事がかわって慣れない環境や作業により心身の負担が増えて、急に症状が顕在化したのではないかと考えらます。

痛み止めが効かないほど、強い症状が出ていましたが、対症療法としての3D鍼が著効し、早期に症状が解消しました。加えて、原因療法としてのセルフケアにもしっかりと取り組んでくださったおかげで、当初の予想よりも早くゴールに至ることができました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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頭痛を伴う慢性的な肩こり・首こりに20年以上お悩みのケース|ケースレポート

概要

幼少期から首こり・肩こり、凝りに伴う頭痛に悩んでいて、最近では吐き気を伴うほど頭痛がひどくなってきてしまっている。

H様/ 東京都在住 / 35歳 /女性 / 会社員

症状

肩こり・首こり
首が前に出ている(ストレートネック)
慢性的に上半身の疲労感がある

状態

小学校高学年の頃から20年以上慢性的な肩こりと首こりに悩まされている。

高校生になってからは上半身の疲労感が抜けず、毎朝起きるのがつらい。
学生の頃に鍼治療を受けたことがあるが、楽になるのは一時的だった。

以前から月に1~2回ほど、こめかみの頭痛や、吐き気がすることがある。

ここ数年では、吐き気を催すほどひどい頭痛になってしまうことがある。脳神経外科を受診したところ緊張性頭痛だろうといわれ、痛み止めの処方と凝りをほぐすことを推奨された。

整形外科で、こりがつらい部分に筋膜リリース注射(ハイドロリリース)を受けて少しほぐれた感覚はあったが、翌日には凝りでつらい状態に戻ってしまった。その後何度か受けたが、良くても2〜3日ほどしか効果が持続しなかった。

社会人になってからはたまにヨガやピラティスを受けに行っている。背中の筋肉を使うことで首肩こりが楽になる感覚がある。

見立て

吐き気を催すほどの頭痛が生じる状態だが、脳神経外科を受診して命に関わる状態ではないことが確認されており、首こり・肩こりにおいても整形外科を受診して病気が元ではないことが確認されている。また症状が急激に発症したものではなく、長期的にみて安定しているため、我々の行う治療の適応範疇であると判断した。

触診により、首の筋肉(頭半棘筋、頭板状筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋)や、肩の筋肉(僧帽筋)に強い緊張がみられた。首肩こりの症状を強く感じる部分と一致しているため、筋緊張が現在の症状を引き起こしている可能性が高い。

頭痛は、緊張性頭痛であると医療機関にて言われており、首肩こりの症状の程度に比例して起こっている。また、本人の自覚として、鍼、マッサージ、運動など血流改善により緩和されることから、首肩、頭の緊張をほぐすことが必要だと考えられる。

全身的に柔軟性に優れているが、脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など、姿勢を保持するための筋力や筋持久力が低く、姿勢が保持できずに背中が丸まりやすくなっていた。

筋力が低いために体幹で姿勢を保つことが困難で、頭の重みを首の筋肉で支えてしまっていることが見受けられた。

このことから、鍼や筋膜リリースなどの対症療法を行うと一時的につらさから解放されるが、首肩に負担がかかりやすい状況は変わらないので、すぐに再発してしまっていると考えられる。

対症療法と並行して筋力トレーニングを行い、姿勢保持に適した筋肉を長時間使えるようにすることで、今までの慢性的な状態から脱却できると考えた。

治療

初期治療

症状の解消に重きを置く治療フェイズ。頻度は5日~7日に一度。

自覚症状の強い部分である首や肩を中心に、全身的に鍼やマッサージを行い入念にほぐした。治療開始してから間もないうちは直後には少しは楽になるが、完全に解消されることはなく、今まで同様一週間ほど経つとこりが元に戻ってしまう状況だった。

当初は細い鍼(0.14mm)を使用していたが、症状の解消進度が緩やかだったため、段階的にやや太めに鍼(0.2mm)を使用するようにした。

また、角度や深さなどを調整して、こりのある部分にピンポイントで刺激を入れることに注力した。特に、仰向けで行なった首の鍼により、最もつらかった首のこりが解消し、首こりの解消に伴い頭の緊張感や頭重感も緩和した。これがきっかけとなり慢性化していた症状の改善につながった。

0.2mmの鍼で首や肩に鍼治療を行うのは、一般例と比べると強めの刺激ではあるが、H様にとっては適切な刺激となり、徐々に症状は下がっていき、105分の治療を6回行い、自覚症状が約8割改善された。NRSが10→2。

※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

原因療法に重きを置く治療フェイズ。頻度は10日〜14日に一度。

正しい姿勢を長時間キープできるように、脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋の筋力強化を目的としてトレーニングに重きを置いた治療に移行した。(治療内容の主な配分は、30分の筋力トレーニングと75分の鍼マッサージ治療)

中期治療に移行してはじめのうちは、治療後一週間が経過すると症状が出やすい状態であったが、筋力が向上するにつれて症状を低い水準に維持できるようになり、二週間間隔にしてもNRS 5 以上になることはなくなった。夕方には多少こりが出るが、翌朝にはリセットされるようになった。

筋力トレーニングの内容を適宜アップデートしながら、セルフケアとして自宅でも行なっていただいた。

6回の治療で、H様の自覚として日々の生活で問題を感じなくなり、客観的にも筋力向上と姿勢改善が見受けられたため、治療からの離脱のために後期治療に移行することとした。

後期治療

セルフケアによる自己管理を体得する治療フェイズ。頻度は3週〜8週に一度。

症状を低い水準にコントロールしつつ、筋力強化を継続、3週、4週と徐々に治療の間隔をあけていくようにした。

その間、仕事の忙しさやストレスによって一過性に症状が出ることがあったが、セルフケアでの対処ができるようになってきた。

後期治療4回で、8週あけても悩ましくない状態をキープできるようになり、日常生活に支障をきたさなくなったため、ゴールとなった。

ゴール後も、症状や疲労解消のためのセルフケアだけでなく、筋力維持のための筋力トレーニングも生活習慣にしていただいた。

ゴールしてから6ヶ月後にチェックとメンテナンスを行なったところ、セルフケアが習慣になり、良好な状態を維持できていたため、卒業となった。

治療開始から約1年、計16回の治療でゴールになり、17回の治療で卒業に至った。

コメント

H様と同じように、様々な施術を受けても慢性的な症状が改善しないという方は少なくありません。本件において、転機となったのは、仰向けで行なった首の鍼治療でした。

仰向けで鍼をうつことで、ピンポイントで患部にアプローチをすることができ、慢性化してしまったいた症状が解消され、改善のための良いサイクルをつくることができました。

適切な治療内容は個々によって異なります。一般的にはあまり行わない手法、一般的には強めの刺激、だとしてもH様にとっては「適切な治療」になりました。

肩こりや首こりの治療は、あくまでも自覚症状を改善させることなので、患者さんからの訴えを治療に反映することがとても重要となります。本件は、H様が的確に感想をおっしゃってくださったおかげで、治療者との相互理解が深まり、治療に活かすことがきました。

患者さんにとって適している治療内容(方法や刺激量)や治療計画は個々によって異なるため、治療はそれにフィットさせていくことがとても重要です。

中期治療では、筋力トレーニングを正しくかつ積極的に行えるかどうかが進捗を左右しますが、H様はセルフケアをとても頑張ってくださいました。その甲斐あって、停滞しやすい中期治療をスムーズに進めることができました。計画通りにゴールに至れたのはH 様の頑張りの賜物です。ありがとうございました。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こり・肩甲骨こりが慢性化して自律神経の乱れやイライラなどの精神症状をきたしたケース|ケースレポート

概要

肩こりと肩甲骨こりが、一時しのぎを続けるうちに慢性化し、日常生活に支障が出るほどになってしまった。

K様 / 東京都在住 / 38歳 / 男性 / システムエンジニア

症状

・重度の肩こり、肩甲骨こり
・怒りっぽい、イライラなどの精神症状

状態

学生時代から首や肩の凝りを自覚していたが、就職して、デスクワークの時間が長くなり、ひどくなってきた。つらくなると湿布や貼付型磁気治療器を貼り、どうしてもつらくなるとマッサージにいってほぐすということを続けてきた。(貼付型磁気治療器をと使うとラクにはなる)

マッサージの頻度は、はじめは月に1回程だったが、次第に間隔が短くなってきて、数年前からは週に1〜2回は行くようになってしまった。というよりも正確には、週に1〜2回通わないと仕事に集中できない状態だった。以前は、マッサージに行ってほぐしてもらうとしばらくは楽になっていたが、ここのところは、いくら揉んでも、押されているその時に気持ちが良いだけで、楽にならならないし改善もしない。

病院で診てもらったところ、特に異常はなく、ストレートネックであることを指摘されるだけで、解決法が見出されなかった。痛み止めと湿布を処方されて様子をみるように言われた。

効果的であるといわれている鍼、注射、ハイドロリリースなど様々な治療を受けても、凝りが緩和されるのはその日だけで、翌日には戻ってしまう。治療を受けてもすぐに戻ってしまうため、最近では、もう通うのをやめてしまった。

最近特につらいのは肩甲骨の内側の凝りで、つらくて気になってしまい仕事で座っていられないため、湿布やピップエレキバンを毎日貼らざるを得ず、時間があればテニスボールや柱などで肩甲骨の内側をゴリゴリするのが癖になってしまっている。

以前は、デスクワークの時間が長くなるにつれて凝りがつらくなっていたが、今は常に凝りがある状態。凝りが気になって寝付けないこともあるし、寝起きからひどく凝っていることもある。常時気になってしまうため、仕事に集中できず、ミスを繰り返してしまっている。ちょっとのことですぐにカッとなってしまい、家族にも申し訳ない。申し訳ないと思いつつも感情をおさえられない。

この先、一生このままなのか、と思うと気が滅入りそうになる。日常生活に支障をきたしてしまっていることから、治るものなら治したいと思って治療にきた。

見立て

まず、医療機関で異常がないことが確認されており、他の疾患が想定される症状ならびに所見が見受けられなかったため、病気が元になっている「肩こり・肩甲骨こり」ではないということを前提とした。

触診にて調べたところ、自覚症状と一致する部位、特に僧帽筋に非常に強い緊張が見受けられた。

また、関節可動域と筋力を調べたところ、背骨(胸椎)と股関節の可動性が低いこと、腹横筋と大殿筋が極めて弱っていることが判明した。特に大殿筋においては、自力で収縮させることが困難で、動かす感覚が全くない状態。

一方で、学生の頃にラグビーをやっていたということもあり、胸や上肢の筋肉は発達している。体を支える土台となる体幹下部の筋肉が弱ってしまっているために、効率良く姿勢をキープすることができない状態となってしまっていた。

K様の場合は、体幹で姿勢をキープすることができず、デスクワーク時に背中が丸まってしまい、負担が首、肩、肩甲骨付近に集中し、凝りが生じていると考えられた。

首や肩に負担をかけている原因への対処をせず、凝りのある箇所に限局したマッサージを常習的に受けていたことから、刺激に慣れてしまい、慢性化してしまったと推測できる。

また、慢性的な凝りによるつらさがストレスになり、イライラや情緒不安定等の精神症状につながってしまっていると考えられる。常時自覚する煩わしい症状、そして症状がつらいというということに加えて解決策の見出せないというストレスが、自律神経を乱し、さらなる凝りを招くという負のスパイラルに陥ってしまっていると考えられた。

症状が慢性化しており、自己回復が困難なため、治療が必要な状態と判断した。きちんと症状を解消することだけでなく、日常生活動作の改善含めて、原因療法が重要になると考えられる。

治療

症状のつらさからくるストレスや精神症状が、さらなる凝りを招く負のスパイラルを形成していたため、まずは慢性的な症状をきちんと解消することからスタートした。3D鍼にて首や肩の筋肉一つ一つにアプローチして、丁寧に凝りをほぐした。特に肩甲骨こりの症状を招いている僧帽筋中部と下部には積極的に3D鍼でアプローチをした。

また、同時並行して、運動療法にて、根本原因である体幹のコンディション改善を行った。具体的には、背中(胸椎)と股関節の可動性改善、体幹の筋力強化。特に、最も筋力低下が著しかった大殿筋の強化に注力した。

慢性的な症状の緩和のために、はじめは凝りを詳細にほぐすことを重きを置いた治療を行なった。初回は体の反応をみるために、3D鍼を弱めにうち、IDマッサージをメインで行ったところ、あまり効果を感じられなかった。

マッサージで効果が得られにくいということから、2回目にやや強めの3D鍼を行ったところ、症状が緩和[ NRS10→8 ]した。これまで施術を受けても全く楽にならなかったため、症状は依然としてあるが、わずかながらも変化がでたということに希望を感じたとのこと。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

3回目の治療も3D鍼で僧帽筋を集中的にアプローチしたところ、症状がおおきく改善[ NRS8→2 ]し、日常生活に支障をきたすひどい症状が緩和した。

4回目以降は、症状の緩和のための鍼マッサージと、原因解消のための運動療法を並行して行った。週一回の治療8回の時点で、悩ましい慢性的な症状は解消された[ NRS0〜1 ]。

症状のコントロールができるようになったので、9回目以降は、治療の頻度を2週間とし、セルフケアでのストレッチ(主に大腿部と背中)と筋力トレーニング(主に大殿筋と腹横筋)を積極的に行い、デスクワーク時の姿勢の改善と定着化を図った。2週間頻度の治療を4回行ない、症状の安定と筋力や関節可動域の改善が見受けられた。

13回目の治療を4週間隔としたところ問題なく過ごすことができ、一度も湿布や貼付型磁気治療器を使用することがなかった。仕事が忙しくなると、夕方に肩や肩甲骨の内側が多少重くなるが、セルフケア体操をして就寝すればリセットでき、翌日には持ち越さないようになった。

14回目、15回目は8週間隔としたが、問題なく過ごせた。日常生活において凝りに悩むということがなくなり、仕事の生産性があがり、休日も家族と楽しく過ごすことができるようなった。人柄も明るくなり、元気になった。

常時ストックしてあった湿布や貼付型磁気治療器にかかる費用面の負担がなくなり経済的にもプラスとなった。疲れることをして、然るべき疲労が生じることは正常である。凝りに悩むことがなくなり、セルフケアで自己管理ができるようになったため、計15回、約9ヶ月間の治療でゴールに至った。

コメント

本件は、一時をしのぐ対処を続けるうちに慢性化、重症化してしまった典型例といえます。はじめは効果があったマッサージも、続けるうちに効果が弱くなり、やがて全く効かなくなってしまう、という方は少なくありません。

痛みが痛みを呼ぶことがあるように、凝りが凝りを呼ぶこともあります。したがって、凝りをほぐすことは、とても大切なことではありますが、それだけでは同じことの繰り返しとなり、やがてひどくなっていってしまいます。肩こり・首こり・肩甲骨の改善のためには、「なぜ凝りが生じるのか?」を分析して、対症療法と同時に原因療法の行うことが大切です。

K様の場合、臀部や腹部といった下部体幹の筋力が低くなってしまっていたために、首肩・肩甲骨周囲の筋肉に過剰な負担がかかってしまっていました。そのため、一見、首や肩のこりと関係がなさそうな、お尻やお腹のトレーニングを行うことで負担が減り、こりが生じにくくなっていきました。

とても慢性的な状態で日常生活にも支障をきたしてしまっていましたが、セルフケアもきちんと行っていただいたことで早期に体が変わり、スムーズにゴールに至りました。つらくても諦めずに、本当によく頑張ってくださいました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりラボの新型コロナウイルス感染症対応ならびに予約受付につきまして

2020年4月18日 現在
肩こりラボは、新型コロナウイルス感染症対応として3つの「密」を防ぐために予約枠の制限縮小、標準予防策に准ずるできる限りの感染防止対策をしたうえで、現在も予約の受付を行なっております。

具体的な対応につきましては以下にて解説しております。

はじめに

首都圏を中心に、日本全国で新型コロナウイルス感染症が蔓延しています。4月7日に首都圏で発出された緊急事態宣言が、4月16日には全国に拡大されました。

大前提として、国や各都道府県からの要請に従い、不要不急の活動を自粛するというのが原則です。これ以上の感染拡大防止と早期収束のために、個々が意識を高くもって行動することが求められています。

 

一方で、医療、物流、生活必需品販売、金融、通信、消防などに従事する方々には、多大な負担がかかっているという実情があります。このような方々は、休みたくても休むことができず、疲労困憊でも仕事を続けなければなりません。仮にぎっくり腰になってしまったとしても、休むことができる状況ではないでしょう。

また、多くの人は、日々の活動を自粛していますが、このような状況下であっても個々には生活があり、在宅での仕事、家事、育児など一定の社会活動を続けなければなりません。

テレワークにより普段と異なる環境・PCで仕事をすることで「(普段はそこまでじゃなくても)今だからつらい!!」という声を、最近はしばしば耳にします。普段と異なる環境、仕事に適していない環境で仕事をしなければならないのは、普段以上に疲れますし、ストレスも溜まることでしょう。

 

凝りや痛みで命に関わることはありません。多くの方にとって治療はそこまで重要ではないかもしれません。ですが、一部の方の生活において筋肉や筋膜に対する治療は「重要」であり、今痛い方・今つらい方にとって治療は「急ぎ」で必要となります。

「コロナ疲れ」といわれるように、こような情勢によって心身共に疲労しまっているという方もいらっしゃると思います。疲労の蓄積による凝りの場合は、まずはYouTubeでご紹介しているセルフケア体操など、自宅でできる対処法をご提案しています。ところが、セルフケアではどうにも解消されないという方も一定数いらっしゃいます。

 

鍼灸・マッサージは「社会生活を維持するうえで必要な施設」に該当

東京都防災ホームページの「東京都緊急事態措置に関する情報(令和2年4月17日19時00分発表)」 におきまして、鍼灸・マッサージは「社会生活を維持するうえで必要な施設」に該当し、病院や診療所等と同様に適切な感染防止対策の協力を要請と発表がありました。

現在、肩こりラボは、休業要請施設には該当しておりません。

したがいまして、
人と人の接触を極力少なくし、3つの「密」を防ぐために予約枠の制限縮小、そして、標準予防策に従ったできる限りの感染防止対策をしたうえで、予約の受付を行なっております。

 

当院が行う感染防止対策9つ

治療院という特性上、感染症防止対策をするのは当然の義務と考えております。そのため、新型コロナウイルス感染症に対してだけでなく、平時から入念に行ってきたことではございますが、今一度見直しをし、強化徹底をしています。

 

最近になり「行きたいけど不安、どのような対策をしているか教えてほしい」というお声をいただくことがありましたので、この度WEBサイト上でもお知らせすることにいたしました。

 

当院では、予約枠の制限縮小と、標準予防策に准ずるできる限りの感染防止対策を行なっております。詳しくは以下となります。

  • 標準予防策(スタンダードプリコーション)とは、すべての人に分け隔てなく行う感染予防策で、感染症の有無にかかわらず、すべての人の汗を除く、血液、体液、排泄物、創傷のある皮膚、及び粘膜には感染性があると考えて扱うこと。具体的な実施事項としては、適切な手指衛生 、適切な防護用具(マスク等)の使用 、呼吸器衛生(咳エチケット)、周囲環境対策 などがある。

① スタッフの検温と体調管理

全スタッフが、毎朝出勤前に自宅で検温を行います。37.5℃以上ある場合は出勤を禁止しております。熱が無くても、体調不良を自覚する場合は出勤を停止します。現在、スタッフ内に該当者はおりません。

 

② 常時マスク着用

全スタッフが常時サージカルマスクを着用しております。マスクが感染経路とならないよう、取り扱いに細心の注意をしています。

原則患者さんもマスクを着用して治療をお受けいただいております。(マスクの提供は行っておりませんのでご了承くださいませ)

 

③ 手洗いならびに手指消毒の徹底

スタッフは、これまでよりも頻度を高め、丁寧に細部まで時間をかけて洗うようにしています。ハンドソープでの揉み洗い10秒以上+流水洗浄15秒以上を2クール。その後にエタノールでの消毒を行います。また、患者さんに触れる前にはエタノールにて手指消毒をします。

尚、患者さんにも入念に手洗いをお願いしております。ご来院いただきましたら、まずは手洗いにご協力いただいております。また、各所にエタノールを設置してありますので、随時手指消毒をお願いしております。

 

④ 手が触れる箇所の消毒

ドアノブ、ウォーターサーバーのコック、各スイッチ、各種備品、ベッド、枕、治療器具を、一度使用する度に70%エタノールで消毒しております。

 

⑤ 24時間換気

常時換気扇を稼働させており、定期的に窓と扉を開放しての換気を行なっております。

 

⑥ 予約枠の制限・縮小と「密閉」「密集」「密接」の防止

ソーシャルディスタンスを配慮し、極力、患者さん同士、スタッフ同士が密集対面しないよう、予約枠を制限かつ縮小し、導線を工夫しています。

  • 当院は、各治療ブースが独立しており壁で仕切られています。半個室(天井が空いておりそれ以外は完全個室同等)と完全個室(換気可)がございます。
  • 完全予約制のため平常時から基本的に患者さん同士が密集、密接する状況にはなりません。
  • ご予約時にお申し出いただくことで、治療を受ける環境(完全個室あるいは半個室)のご希望に応じてご案内することも可能です。ご来院後に、環境をご覧になってからご変更いただくことも可能です。(予約状況によります)

⑦ 直前のキャンセル・変更への対応

通常、ご予約のキャンセルや変更は、予約日前日の午前中までにお願いしておりますが、患者さんが体調不良をご自覚された場合は、当日または直前の場合でもキャンセル料や変更料は無しで承ります。

 

⑧ 患者さんの体調に応じた対応

ご来院いただいた際に、風邪症状が見受けられた場合には、検温をお願いしています。検温の結果、37.5℃以上の発熱が見受けられた場合は、治療を見送らせていただきます。尚、熱が無く、風邪症状のみの場合でも見送らさせていただく場合がございます。

 

⑨ 治療環境の見学可

はじめてご来院される方など、ご不安がある方は、院内の状態を実際にご覧になってから治療を受けるか検討していただくことも可能です。

突然のご来院にも極力お応えいたしますが、ソーシャルディスタンスの配慮や応対スタッフ確保の関係上、すぐのご対応ができないこともございます。ご来院に際しまして、電話・LINE・メールにて一度お問い合わせいただけますと幸いです。

 

肩こりラボでの治療状況

病院では異常がなくとも、「痛みや凝りがつらくてたまらない」「日常生活がままならない」という方、治療やリハビリの途中で、今が大切な時期という方 は少なくありません。

肩こりラボには、重度の凝りや痛みによって日常生活に支障をきたしている方、社会復帰のため・人生をかえるために治療をしている方、手術後のリハビリをしている方、プロアスリート、プロダンサーなど、”治療が必要な方”がご来院しています。

常に変化している状況に対して臨機応変に、私たちにできる限りの対策と対応をしていく所存です。

 

さいごに

繰り返しとなりますが、今は不要不急の外出を自粛すべき時です。

今のご自身の状態が”不要不急”である場合は、ご自宅でのセルフケアにてお過ごしください。新型コロナウイルス感染症問題が落ち着きましたら治療しましょう。

一方、医療、物流、生活必需品販売、金融、通信、消防などに従事する方々は、遠慮なくご連絡ください。皆さんが頑張ってくださっているおかげで今社会がまわっています。私たちのできることでお力になれたらと考えております。

今つらくてたまらない方、痛みがある方は、まずはセルフケア [ 首肩の痛みに効く!!肩こり解消ストレッチ〜正しいストレッチ方法を解説 ] をお試しください。

それでも緩和されない場合、仕事が手に付かない、眠れないなど日常生活に支障をきたしてしまっている場合は、それは不要不急な状態ではないでしょう。早期改善のために、一度お問い合わせいただけたらと思います。

どうぞよろしくお願いいいたします。

 

【参考】

東京都防災ホームページ

第20回 東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議資料

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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慢性的な肩こりが4回でゴールに至ったケース|ケースレポート

概要

就職して仕事をするようになってから肩こりに悩むようになった。はじめはマッサージで緩和されていたがだんだんと効果を感じられなくなってしまった。毎日肩こりがつらく、慢性化してしまっている。

S様 / 東京都在住 / 23歳 / 女性 / 事務職

 症状

首から背中にかけての広範囲のこり、痛み

状態

学生時代からバレエ、テニス、アーチェリーなど、様々な運動を行なっており、今までは肩こりとは無縁だった。

大学を卒業・就職し、身体を動かす習慣が少なくなり、デスクワーク中心の生活になった。仕事をはじめて1〜2ヶ月ほど経ってから、首の後ろから肩甲骨の間にかけて、こりや痛みを感じるようになった。

仕事では長時間パソコンと向き合っている。始業してすぐはまだましだが、時間の経過と共にだんだんと首から背中にかけてつらくなり、終業時には痛みに近い状態になってしまう。毎日このようなサイクルが続いている。ストレッチなどで体を動かすと少しは緩和するが、続けても改善はしていない。

だんだんとひどくなってきたので整形外科で診てもらったが特に異常はないと言われた。つらくなったらリラクセーション施設などで、ほぐしてもらうということを続けてきた。

リラクセーションに通い始めたころは施術を受けるとほぐれる感覚があり、ラクになっていたが、通っているうちにだんだんと効果を感じにくくなり、直後もあまり変わらなくなることが増えてきた。最近ではマッサージを受けている時は気持ちが良いが、症状が解消されなくなってきてしまった。

猫背になってパソコンをしているのがいけないと思い、姿勢を正すが、肩こりがラクになる感じがせず、かえって腰が痛くなってしまう。

このまま仕事や日常生活に支障をきたすと感じて治療を検討し、ご来院。鍼の経験はなく、少し恐怖感はあるが、治るならば挑戦してみたい。

見立て

まず、医療機関で異常がないことが確認されており、初診時にも神経症状や他の疾患が想定される症状が見受けられなかったため、病気が元の肩こり・首こりではないということを前提とした。

触診をしたところ、自覚症状のある後頚部 (首の後ろ)から 肩甲骨の内側の筋肉に、著しい過緊張が見受けられた。

全体の筋肉や関節可動域を調べたところ、臀部からハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)の緊張が強く、他の関節と比べて、股関節の可動域だけが著しく低いことが判明した。

股関節の可動域が低いと、座っている時に骨盤が後ろに倒れやすく(後傾しやすく)なり、正常な位置に保つことが困難となる。骨盤が後傾位になると、猫背となり、長時間のパソコン作業中に首が前に出た姿勢を続けることになってしまう。姿勢を正すと腰が痛くなってしまうのは、後傾位になっている骨盤を無理に前傾位(骨盤を立たせた状態)にさせようとして、腰に負担がかかってしまっているからと考えられる。

また、上背部の脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋の筋力が低く、正しい姿勢を保とうとしても、体幹で支えることができず、首や肩の筋肉を力ませてしまっていることも見受けられた。

このようなことから股関節の関節可動域の低下と体幹筋力の低下により正しい座位姿勢保持が困難になり、首や肩の筋肉に負担をかけてしまっていることが、T様の肩こり・首こりの主な原因ではないかと考えた。

デスクワークによる首肩の負担と症状の程度に関連性があるため、日中の仕事時にいかに首肩への疲労を減らせるかがポイントとなる。

首肩の筋肉個々にアプローチをしてきちんと凝りをほぐして症状の緩和を図ること。そして根本的な改善のためには、ほぐすだけではなく、正しい姿勢を長時間保つための運動療法が重要と見立てた。また仕事環境への工夫により負担軽減も必要であると考えた。

治療

慢性的な症状の解消のために、対症療法として、筋緊張が特に強い首肩の筋肉(頭半棘筋、僧帽筋)に対して3D鍼治療を行い、首肩以外の全身の緊張を緩めるために頭から足までIDマッサージを行った。

原因療法としては、姿勢改善のための運動療法を行った。

運動療法で改善したことは主には以下3点

  1. 座っている際に骨盤を正しい位置で保持できるようにすること。
  2. 首肩ではなく、背中の筋肉で姿勢を維持できるようにすること。
  3. 姿勢維持のために股関節と胸椎(背骨)の可動域改善と背部筋(脊柱起立筋)の強化

この3点を改善するために、ストレッチと自重での筋力トレーニングを行った。

 

1回目の治療で、一番つらい状態から半分以下まで症状の程度が軽減した。NRS 10→4。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

その後、一週間毎に治療を行い、順調に症状の程度が軽減し、4回の治療で常にあった自覚症状が無くなった。NRS 4→0。

4回治療を行い、日常生活に問題を感じなくなったため、T様の意向により肩こり治療はゴールとなり、卒業となった。

 

一ヶ月後、改めてT様から連絡があった。

その後具合は良好だが、今よりも仕事が忙しくなったとしても正しい姿勢をキープできる身体にしたい、そしてバレエ も再開したい、という気持ちになったため、さらなる改善を目指して治療を行いたいとのことだった。

症状がつらいということはないので、今回はトレーニング中心の治療にて再スタートをすることになった。トレーニングは7~10日に一度の頻度で一回30分間、自重負荷を中心とした内容のメニュー行なっている。

日々の生活のなかで肩こり・首こりに悩むことは無くなったが、疲労をためないよう、8週に一度全身のメンテナンス治療を行なっている。

初診から一年が経過した今も、良好な状態をキープしている。バレエ もはじめることができ充実した生活を送ることができている。

コメント

T様はつらい首肩こりに悩まされていましたが、わずか4回の治療でゴールとなりました。通常、慢性の肩こり・首こりでは半年〜1年ほどかけてゴールとなるケースが多いのですが、なぜこんなにも早くゴールに至ったのでしょうか。

T様は、首肩こりが慢性化し始めてから半年以内と早期に来院されました。そのため、ご自覚的にはとてもおつらい状態でしたが、他の慢性例と比較した場合、比較的具合が軽度であり、対症療法として鍼マッサージにて該当する筋肉にきちんと対処することで早期に症状が軽減したと考えられます。

言い換えれば、深層部の「こり」までくまなくほぐせていなかったために、常にこりが残ってしまっている状態になり、症状の慢性化につながってしまっていました。

マッサージで緩和しないほど慢性化してしまっていましたが、発症から早期に治療が開始できたこと、3D鍼治療が著効したこと、この2点が少ない回数でのゴール到達に至った要因であると考えられます。

原因療法として改善すべき関節可動域や筋力といった点では、4回終了時点ではまだ要改善な状態ではありましたが、数回のトレーニングで首肩に負担のかかりにくい身体の使い方のコツを掴めたため、正しい姿勢が身につき、日常生活での負担軽減に結びついたと考えられます。

4回終了時点では、特に原因療法がまだ不完全だったため、当院の定める「ゴール」には至っておりませんでした。ですが、T様にとっての問題だった「慢性的な状態」が解決されたため、ゴールになりました。私たちはこれで良いと考えております。治療は患者さんの抱える「問題」を解決するために行うものですから、ゴールは私たちの定めるものを強要するのではなく、個々によって異なるのが自然です。私たちは一日でも早く、一回でも少ない回数で患者さんにとってのゴールに到達できますよう力を尽くすのみです。

T様におかれましては、さらなる改善のために、一度卒業した後に、再スタートをすることになりました。慢性的な症状が改善し、気持ちも前向きになり、体を動かす意欲も湧いたようで何よりです。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
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【制作協力】Nintendo Switch「Fit Boxing」× KatakoriLabs 〜肩こり改善効果アップのストレッチ YouTube動画公開〜

この度、Nintendo Switch用ソフト「Fit Boxing」を発売中のイマジニア株式会社と、肩こり改善効果アップの為のストレッチ動画を制作いたしました。
2020年4月16日より、イマジニア社の公式YouTubeにて無料公開されております。
当ページの最後から本動画をご覧いただけますので、是非チェックしてみてください。

 

Fit Boxingとは

「おうちで爽快、エクササイズ。」をキャッチコピーとしたNintendo Switch用ソフト。

人気声優がボイスを担当するゲーム内のインストラクターに直接指導を受けながら、Joy-Conを使用してリズムゲーム感覚でパンチを打ち分けるボクシングエクササイズゲーム。

Fit Boxing 公式HP

 

動画について

本動画では自宅にいながら、誰でも簡単に行うことができ、肩こり改善効果が期待されるストレッチをご紹介しています。

テレワークや外出自粛による慣れない環境での仕事やストレスで、肩こり・首こりがつらくなってしまっているという声を耳にする今、Fit Boxingのプログラムと本動画のストレッチを組み合わせて行うことで、肩こり・首こりの緩和、運動不足やストレス解消の一助となりましたら幸いです。

動画内のストレッチはどれも簡単に実践できますので、おうち時間に是非お試しください。

 

動画収録内容

<ストレッチ収録内容>

大腿四頭筋のストレッチ

ハムストリングスのストレッチ

背中のストレッチ

タオルストレッチ

体幹ひねり

 

ストレッチのほか、ヒップアップやぽっこりお腹改善に効果的な筋力トレーニングも収録。

<筋トレ収録内容>

ぽっこりおなか対策筋トレ

ヒップアップ筋トレ

大胸筋&全身を鍛える腕立て伏せ

 

ストレッチ動画のご案内

2020.4.16公開

IMAGINEER公式YouTube

Fit Boxing × katakoriLABS 肩こり治療のプロが解説する肩こり改善効果アップのストレッチ

 

 

 

Fit Boxing 公式Instagram

Fit Boxing 公式note

イマジニア株式会社 公式Twitter

フィットボクシングジャパン 公式Twitter

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


体が柔らかいのに慢性的な首こり・肩こりにお悩みのケース|ケースレポート

概要

柔軟性が高く、体が柔らかいにも関わらず、慢性的な首こり・肩こりが長年治らなかったケース

T様 / 東京都在住 / 女性 /54歳 / 専門職

症状

・首こり
・肩こり

状態

20年ほど前から慢性的に首こり・肩こりに悩まされている。

臨床心理士の仕事をしており、カウンセリング、セミナーなどで長時間座り続けたり、立ち続けることが多い。

これまで、つらい時は鍼やマッサージを受けに行っていた。首肩をほぐすと楽になるが、二週間ほどすると再びこりを感じ始める。施術を受ければ楽になるが、二週間以上は効果が持続しない。

モダンバレエ、テニスなど日常的に運動は行っている。運動すると首こり・肩こりは少し楽になる。

見立て

僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋など、つらさを感じている部分と一致して筋肉の緊張がみられる。

また、脇の下(広背筋など)や胸の筋肉が過緊張しており、それにより肩が前に出てしまう、いわゆる巻き肩の姿勢となっている。そのため、背中が丸まり首や肩の筋肉が持続的に伸ばされる状態となってしまい、負担が常にかかってしまう。

柔軟性が高く、各関節の可動域は広いが、姿勢を支えるための筋力(脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など)が不足しており、こりやすい僧帽筋や首の筋肉で支えてしまっている状況。

まずはしっかりとこりをほぐしつつ、徐々に原因部分の改善を行う。脇や胸の筋緊張を緩め、巻き肩の改善を目指す。次いで姿勢維持のための筋力強化を行う。

治療

初期治療

鍼やマッサージは日頃から受け慣れているので、より入念に様々な角度から刺激をいれてほぐしていった。

序盤はつらさが戻ってしまう前に1週間ペースで治療を重ねていき、4回の治療でこりの自覚症状はほとんど感じなくなった。NRS 10→1 。
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

首肩こりの”こり”の自覚症状は感じなくなったが、首肩を触ったときの筋肉の硬さや、巻き肩により胸が開きづらい感覚がまだ残っている。

中期治療では初期治療よりも原因の改善をメインで行う。

巻き肩はこりの原因となっている部分のため、しっかりと緩めつつ、他の部分で身体を支えられるように運動療法を行った。

運動療法の方向性としては、脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋をまずは単独でしっかりと使えるようにし、徐々に複数の筋肉を同時に使えるように連動性を持たせていく。(スクワットなど)

16回目の治療で各筋の筋力改善や連動性を持った動きが出来るようになったため、後期治療に移行した。

後期治療

後期治療では徐々にマッサージや鍼を行う頻度を減らしていき、治療から離れても大丈夫な状態を目指していく。

また、トレーニングのみのセッションを入れることで、トレーニングの頻度は2週ペースで保ち、メニューやフォームの見直しが随時行えるようにした。

約2ヶ月間、鍼やマッサージを受けない状態でも良い状態でキープ出来るようになったため首こり・肩こりの治療はゴールとなった。ゴールまでの総治療回数は27回。

コメント

T様のように日常的に運動を行っており、柔軟性もあるのになぜか首こり・肩こりが治らないという方は数多くいらっしゃいます。

正しい姿勢を保つためには柔軟性を高め、関節可動域を広く保つこともとても重要な要素の一つですが、それだけでは十分ではありません。

姿勢を維持することに適している筋肉がちゃんと働いているかどうか、それ以外の筋肉との筋バランスがとても重要になります。

T様は元々筋力がそこまで低いわけではなかったのですが、使うべき筋肉が眠っていたために、首や肩に負荷がかかりやすくなっていました。

トレーニング中のちょっとした気付きがきっかけとなり、眠っていた筋肉が呼び起こされ、首や肩に負担をかけない姿勢の取り方を習得したことで良い方向に向かうことが出来ました。

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

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