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慢性的な首こり・肩こりが体幹の筋力強化によって解消されたケース|ケースレポート

概要

 

S様 / 東京都在住 / 33歳 / 女性 / 自営業(技術職)

 

症状

首こり 肩こり

肩甲骨周りのこり

 

状態

長い間慢性的な首肩こりや、肩甲骨周りのこりに悩まされており、5年前から鍼灸マッサージ院に通い始めた。

通う以前と比べるとだいぶ良い状態に改善したが、仕事が忙しくなり、座る時間が長くなると、まだこりを感じてしまうため、来院された。

 

見立て

一見すると姿勢は悪くないが、インナーマッスル(脊柱起立筋、腹横筋など)と比較して、アウターマッスル(僧帽筋、広背筋など)が優位に働きやすく、姿勢の維持をアウターマッスルに頼ってしまっている。

アウターマッスルは強い張力を発揮するが、持続性に乏しく筋疲労を起こしやすい。

そのため、長時間同じ姿勢をとっていると、筋疲労や筋緊張が起こりやすい状態となっている。

インナーマッスルを優先的に使えるようにトレーニングをすることで、長時間の姿勢維持が可能となり、現状打破できると考えた。

 

治療

1〜3回目

こりの出やすい首、肩や肩甲骨周りを中心に鍼やマッサージで全体的に筋肉をほぐした。

また、並行してインナーマッスル(腹横筋、脊柱起立筋など)のトレーニングを行なった。

治療頻度は2週間に1回のペース。

治療後はこりから解放され楽になる感覚はあったが、1週間ほどでまたこりを感じてしまう状況で、これ以上短いペースで治療をすることは仕事の都合上難しかった。

だが、日常生活の中でセルフケアとしてトレーニングをすることによっても、こりの緩和を実感されていたため、あえて鍼やマッサージを使わずにトレーニングのみで、筋力強化とこりの緩和を狙う方針に方向転換した。

 

4〜7回目

姿勢を長時間キープするのに必要な要素(腹横筋、脊柱起立筋など)を個別にトレーニングしつつ、徐々にスクワットやデッドリフトなど、それぞれの筋肉を連動させながら動かすトレーニングにステップアップしていった。

また、肩甲骨周りがこりやすいので、こりの解消を目的として、肩甲骨を積極的に動かすトレーニングをセルフケアでも入念に行なっていただいた。

はじめのうちは、うまく連動させることができなかったが、トレーニングを重ねるごとに少しずつ、連動性が増していき、負荷の増量や、回数、セット数も多くこなせるようになった。

 

8回目

トレーニングを重ね、アウターマッスルのみに頼りすぎず、インナーマッスルと協調して姿勢キープができるように改善した。

仕事が立て込んでいる際に、こりはまだ多少感じることはあったが、日々のセルフケアによっておおよそコントロールができるようになり、日常生活や仕事にも支障をきたさなくなってきたため、治療はゴールとなった。

 

コメント

今回のケースのように、鍼治療やマッサージ治療にて、ある程度まで改善したけれど、その状態からなかなか先に進まないという方は少なくありません。

鍼やマッサージは対症療法です。一定の頻度で通い続けていれば、つらさは低い水準で保つことができます。

ですが、S様のように、今まで以上に仕事が忙しくなってしまったり、治療間隔をあけてしまうと、こりがつらくなってしまうという方は、トレーニングを行い身体を支えるのに適した筋肉(多くの場合はインナーマッスル)で、効率的に姿勢を維持する必要があります。

S様は日々のセルフケアでこりがひどくならないように保ちながら、体幹のインナーマッスルを強化することで、徐々に治療の必要がない身体へと改善することができました。

本件は、運動療法によって根本的な改善にいたった例といえます。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こり・首こりが気になる方が意識すべき、パソコン作業時の適切な姿勢とデスク環境とは? 厚生労働省のガイドラインをふまえて解説します。

昨今リモートワークが急激に普及し、パソコンを自宅で使う機会が多くなりました。

通勤時間の減少などメリットも多い一方で、運動不足に陥り、首こり・肩こりなどの慢性的な不調を訴える方が増えてきていると実感しております。当院の患者さんも、自宅でテレワークを行うことで、今まで通勤やオフィス内の移動が運動になっていたことに気がついたとおっしゃる方が少なくありません。

これまでは普段仕事をする環境ではなかった場所で、長時間のデスクワークを余儀無くされているわけですから、負担が増大するのも頷けます。

今回は、首こり・肩こりの予防を目的として、自宅で簡単に実践できる「パソコン作業時の適切なデスク環境」をご紹介していきたいと思います。
是非参考にしていただけたらと思います。

なぜデスク環境が大事なのか?

デスク環境

それではまず、首こり・肩こりの予防としてデスク環境を整えることがなぜ大事なのか?
以下3点を理由に挙げます。

  • 首こり・肩こりでお悩みの患者さんは座り仕事の方が圧倒的に多い。
  • 長時間過ごすため、少しの負担がチリツモになりやすい。
  • 首こり・肩こりの軽減として即効性が高い。

首こり・肩こりでお悩みの患者さんは座り仕事の方が圧倒的に多い。

座っている姿勢は、立っている姿勢と比べると疲れにくいし、楽に感じる方も多いと思います。

しかし、実際は座り姿勢の方が正しい姿勢を保ちにくく、首肩や腰に関しては負荷がかかりやすい状態となります。

長時間過ごすため、少しの負担がチリツモになりやすい。

デスクワーカーなど、仕事でパソコンを使う方などにとっては、1日のほぼ大半をデスクで過ごすことになります。

重い物を持つなどの重労働と比べると、短い時間にかかる負担の量は少ないです。

しかし、「塵も積もれば山となる」というように、少しの負担でも1日8時間以上ともなると、蓄積される負荷量はかなりのものになるでしょう。

首こり・肩こりの軽減として即効性が高い。

首こり、肩こりを軽減させるために、トレーニングやストレッチなどの運動は大切です。

しかし、筋力や柔軟性は一朝一夕で改善されるものではなく、効果の実感までに時間を要することが大半です。(今まで使えていなかった筋の使い方を覚えることで、一回のトレーニングで劇的に変化する方も中にはいらっしゃいます。)

その点デスク環境など、環境要因を改善することは、負担の軽減に即効性があり、一度整えてしまえば半永久的にその恩恵が受けられます。

以上の理由からデスク環境を整えることは、治療をすることと同等に首こり・肩こりの軽減に必要なことと考えます。

むしろ環境要因の改善そのものが治療の一部といっても過言ではありません。

厚生労働省のガイドライン

厚生労働省では、パソコン等の作業における労働衛生管理のためのガイドラインを公表しています。

平成14年4月5日「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が発表されました。

その後、基本的な考え方は維持しつつ、多様な作業形態に対応するため、改定版として令和元年7月12日「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が発表されました。

情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて(基発0712第3号)[PDF形式:1464KB]


このような公的機関のガイドラインは一定の基準と考えて良いでしょう。

ただ、個々のおかれている状況は異なりますし、作業環境を改善させるにも限界があるというのも実際のところです。

また、公的なガイドラインがあるものの、デスクワークにより、不調をきたす方が多いのも事実です。

今回は厚生労働省のガイドラインをふまえた上で、私たち肩こりラボが、肩こりや首こりの治療に取り組む中で見出した、より実践的なデスク環境をご紹介させていただきます。

一部、ガイドラインに記載されている内容と異なる箇所がありますが、実際をふまえたうえでの肩こりラボ独自のノウハウとなります。

この点をご了承いただきますよう、よろしくお願いいたします。

肩こりラボ推奨のデスクワーク環境設定

まずは早速、首肩に負担のかかりにくい理想の姿勢をご覧ください。

上記の姿勢を取る上で重要なポイントを大きく3つに分けました。

机と椅子の高さの調整

椅子の高さは、座って脇を閉じたまま机に手を置いた時に、肘の角度が概ね90°となるようにしましょう。

机が高すぎる場合、あるいは椅子が低すぎる場合、多くは肘の角度が90°以下になります。
すると肩がすくんで、腕が力みやすくなるため、負担が大きくなります。

また、机の高さはJIS規格により、多くが床から70cmとなっています。

これは1971年頃に成人男性の一般的な体格に合うように作られた規格です。

小柄な方ですと、前述の方法で机を基準に椅子の高さを合わせると、足が浮いてしまい不安定になってしまいます。
成人男性の平均身長を元にしているので、当然ながら女性には適しにくいです。

昇降デスクであれば高さの調節が可能ですが、そうでない場合、足元に台を置いて足裏が床に付くようにすると安定しやすいです。

こちらの記事で、自分に合った机と椅子の選び方について解説しています。
よろしければ参考にしてみてください。

〜関連記事〜

自分の体に適した机と椅子の高さとは?人間工学に基づいた計算方法をご紹介。デスクワークで肩こり・首こりにお悩みの方は是非ご一読ください。

ディスプレイやキーボードの置き方

デスクトップ型パソコンの場合

デスクトップ型のパソコンの場合、ディスプレイとキーボードが分かれています。
そのため、それぞれを最適な位置にセットしやすく、身体への負担は一番かかりにくいです。

●ディスプレイ
上端が目の高さと同じ、もしくはやや下となるように高さを合わせます。

●キーボード
肘や腕を机に乗せるスペースを確保しつつ、なるべく自分に近づけましょう。
肘掛けのある椅子を使用すると、肘を身体の近くに置くことができ、キーボードを身体の近くに置きやすくなります。

ノートパソコンの場合

ノートパソコンは持ち運びに優れる反面、ディスプレイとキーボードが一体となっています。
ディスプレイを適切な高さに合わせるとキーボードの位置が高すぎてしまい、その逆もまた然りです。

一番良い方法は外付けキーボードかディスプレイを使用し、デスクトップ型と同じ環境にすることです。

このようにすると体への負担は減りますが、用意する物品が増やしたくない方もいらっしゃると思います。
そこで、もう少し手軽な方法を推奨します。

それはキーボードに傾斜をつけることです。

ノートパソコンの奥が高くなるように傾斜をつけると、ディスプレイの高さを出しつつ、快適なキーボード操作が可能となります。

この傾斜をつける方法は、専用のスタンドも市販されていますが、雑誌などで簡易的に対応もできるため、誰でもすぐに実行でき、ディスプレイを高くして首肩の負担を減らすことができる利点があります。

一方で、キーボードを打つ際に、手首の背屈角度(反らす角度)が増すというデメリットもあります。手首の背屈が増すと、腕の甲側の筋肉(前腕伸筋群)の負担が増えることになり、手首や肘の痛みにつながる可能性もあります。

この方法は、外出時やどうしても外付けキーボードやモニターを用意できない場合など、あくまでも短時間の作業時に留めておくことが良いでしょう。

日々ノートパソコンで長時間の作業を行う方は、多少のコストは発生しますが、一回マッサージに行くよりも、肩こりや首こりに対して長期的にプラスにはたらきます。

ぜひ外付けキーボードかモニターをご用意していただけたらと思います。

姿勢の意識

最後は姿勢、座り方のコツです。

重心位置

頑張りすぎず、効率的に姿勢を保つために、重心をどこに置くかが重要です。

猫背で丸まってしまっている時は尾骨や仙骨あたりに体重が乗っていることが多いです。
このような座り方が「良くない姿勢」ということはお分かりだと思います。

問題は「良い姿勢」をとった時にどこに重心があるかです。

試しに良い姿勢をとってみましょう。どこに一番体重が乗っているでしょうか。

おそらくですが、多くの方が「坐骨」というお尻の出っ張っている骨の部分に体重が乗っているのではないでしょうか。

坐骨を示す骨模型

実はこの「坐骨座り」は、キープして姿勢を支えるのに、たくさんの筋力が必要です。
ですから良い姿勢をキープしようとしてもすぐに疲れてしまい維持できないのです。

「坐骨座り」でピッと背すじを伸ばしている姿勢は見た目はキレイですが、とても力を必要としますので、長時間のデスクワークを考えると現実的ではありません。良い姿勢をとりたくても、維持できなかったり、かえってつらいという方はこの「坐骨座り」が原因かもしれません。

ではどうすれば良いかといいますと、重心位置を坐骨よりもさらに前方にします。
坐骨よりも前側、太もものつけねです。


首肩に優しい重心のポジションを意識した座り方は「太もも座り」です。

慣れないうちは少し前傾すぎに感じると思いますが、鏡で横から見ると思いのほか姿勢がまっすぐになっているのが確認できると思います。

ただし「太もも座り」にも欠点があります。
それは、反り腰になりやすいことです。
場合によっては腰に痛みや負担感をご自覚する方もいらっしゃるかもしれません。

その場合は無理に「太もも座り」を維持しようとしないでください。

「首肩こりと腰痛のどちらもある…。」という方の場合は、個別に適切な重心位置を調整する必要がありますので、専門家に診てもらうのがいいでしょう。

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上半身の使い方/ポイントは「胸」

重心位置が整ったら次は上半身を整えていきます。

ポイントは「胸」です。
胸を前上方に突き出すように意識してみましょう。

良い姿勢を取ろうと無理に「肩を引く」のではなく、「胸を突き出す(引き上げる)」ようにすることで、「脊柱起立筋」という姿勢維持に適した筋肉が収縮しやすくなり、長時間の座り姿勢を少ない負担で支えることができます。

良い姿勢と言うと、肩甲骨をグッと後ろに引いた状態をイメージしがちですが、実は努力して肩を後ろに引こうとすると、アウターマッスルである僧帽筋や広背筋がメインで働きます。

僧帽筋は肩こりで硬直しやすい筋肉であることは多くの方がご存知だと思いますが、その僧帽筋自体に負荷をかけてしまいます。

また、広背筋がたくさん収縮することで、肩関節が内側に巻いてしまい、いわゆる「巻き肩」の状態になりやすくなり、さらに僧帽筋に負荷がかかります。

また、肩甲骨は僧帽筋や肩甲挙筋で、首と連結しています。(首からぶら下がっている様な状態)

広背筋は肩甲骨を下に引っ張るはたらきもありますので、過剰に収縮することで、肩甲骨を上から支えている僧帽筋や肩甲挙筋に負荷をかけることになります。

肩関節を動かしたり体幹を支える上で、僧帽筋や広背筋はとても重要な筋肉ですが、そればかりが過剰に働いてしまうと悪影響もあります。

丸まっているのを直そうとして肩をグッと後ろにひこうとすることで、効果が無いだけでなくかえって状況が悪くなってしまう可能性もありますので、注意をしてくださいね。

サポートアイテムの利用

上記2つ「太もも座り」と「胸出し」を意識して座ると、大腿部と背部の筋肉を使えるようになり、首肩への負担軽減につながります。

ですが、この姿勢をキープするにもある程度体幹の筋力が必要であり、最初のうちは短い時間で疲れてしまうかと思います。

そこである道具を使うことで、姿勢のキープがとても楽になります。

正しい姿勢を理想論ではなく、今日から実際に活かしていただくためのとっておきの方法です。

それは、クッションです。ただしその使い方が特殊です。

世の中に、姿勢をサポートするクッションなどのグッズはごまんとありますが、その多くは座面や背もたれに設置するタイプのものです。

肩こりラボが推奨するクッションの使い方は、座面や背もたれに挟むのではなく、クッションを太ももの上に置き、お腹と机で挟み込むように座りましょう。

クッションを前方に設置することで、背もたれ側ではなく、お腹の方に寄りかかることができます。このようにすることで、自然と太もも座りや胸出しを促すことになり、無意識に背中が丸まってしまうのを防ぐことができます。

また、ここで使うクッションは、ソファ用クッションや座布団、あるういはタオルや掛け布団を丸めたものでも代用できます。今現在ご自宅にあるもので代用できますので、新たなものも購入する必要はございません。

市販されている、骨盤が立つように座面をサポートしてくれるシートなどと併せて行っていただいてもよいでしょう。

まとめ

首・肩に負担をかけにくいデスク環境を以下にまとめます。

椅子と机の高さは肘が概ね90°になるように調節する。

※足が浮いてしまう場合は足置き台などを使用。

昇降式のデスクと椅子を使用するのがベスト。

ディスプレイ上端が目と同じ高さ、キーボードはなるべく近くに寄せる。

※ノートパソコンの場合
外付けのディスプレイかキーボードを使用
もしくはキーボードに傾斜をつける

理想の姿勢は重心が太もものつけね、胸を突き出した状態。

※長時間キープが疲れてしまう場合

クッションを太ももの上に置き、机とお腹で挟む

現在使用しているパソコンがノートパソコンの場合は上の図のようにサポートアイテムを使うことで、首や肩の負担を減らすことができます。

家にあるもので代用しやすいので、新たに周辺機器を購入する必要がないのがメリットです。

厚生労働省のガイドラインは学術的知見を踏まえて、適切なデスク環境への措置方法が網羅されています。

本記事も厚生労働省のガイドラインに基づいた内容となっておりますが、中には会社の規定や個人的な事情により、ベストな状況にしたくてもできない方も多いと思います。

そのため、家にあるもので代用できる案も、合わせてご紹介をさせていただきました。

まずは簡単に実践できるものから試してみてはいかがでしょうか。

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執筆者:須藤 大登
Hiroto Sudo

呉竹鍼灸柔整専門学校 柔整科卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
柔道整復師

学生の頃、大きな怪我で部活が出来ない時期がありました。
全治2~3ヶ月と診断を受けた時、リハビリ担当の先生が「大丈夫。しっかり治すために一緒に頑張ろう」と声をかけてくれました。
なんでもない言葉ですが、当時の私にはすごく心強く、前向きになれたことを覚えています。
治療する立場となった現在、かつて私がしてもらったように、少しでも前向きに思えるような治療や言葉を届けられる存在となれるよう日々精進いたします。


HYPERVOLT(ハイパーボルト)とHYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)でどちらにしようか迷っている方へ。実機を用いて使用感の比較検証しました。

はじめに

肩こりラボでは、HYPERICE社製品の各種機器を、治療で取り入れています。各機器の中でも特に使用頻度が高いのが、HYPERVOLT(ハイパーボルト)とHYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)です。

HYPERICE社製の機器は複数ありますが、中でもHYPERVOLT(ハイパーボルト)とHYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)は、メディアやSNS等で度々紹介されており、治療家やトレーナーに限らず一般の方も「見たことある!」「知っている!」という方はいらっしゃることかと思います。

 

当院は、HYPERICE社製品の正規取り扱い施設となっております。そのため、HYPERVOLT(ハイパーボルト)とHYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)について、興味をもたれている方や購入を検討しているという方から多数お問い合わせをいただきました。

そこで今回、HYPERVOLT(ハイパーボルト)とHYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)という2つの製品の使用感を比較する動画を製作しました。

 

動画につきましては、現在、肩こりラボ公式YouTubeチャンネルにて公開中です。

 

なお、本記事は、公開している動画の内容を文章にて書き起こしたものです。現在公開している動画と合わせてご覧いただけたらと思います。 (動画は最下部からもご覧いただけます)

 

 

それでは、さっそく内容に入っていきます。

HYPERVOLT(ハイパーボルト)とHYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)

この2つの使用感について比較、検証していきます。

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

動画作成の経緯について

まず、YouTube動画を製作しようと思った経緯ですが、私たちがハイパーボルトを導入しようと思った時に、ボルトとボルトプラスどちらが良いのか、とても迷いました。

実際に導入した後も、トレーナーさんや治療家さん、あとは患者さんからもどちらが良いのか?違いは何なのか?というお問い合わせを沢山いただきました。

そこで、同じようにどちらを選ぶべきか迷われている方々のお役に立てたらという思いから、ボルトとボルトプラス、この2つの比較検証動画を製作してみようと思い立ったのです。

 

2機種の紹介、スペックの違い

まずは、今回比較、検証する機種の紹介です。

HYPERVOLT(ハイパーボルト)について

HYPERVOLT (ハイパーボルト)は2018年4月に発売され、2019年6月にリニューアルされています。今回の比較に使用するのはリニューアル後の新しい物となります。

 

 

以下、HYPERICE公式HPより引用

HYPERVOLTは、最先端のQuiet Glideテクノロジーを搭載した3段階の強力な振動によって、トレーニング前後の身体のトータルケアや筋膜リリースに最適なアイテムです。セルフケアだけでなくトレーナー、治療家の方もクライアントに使用頂けます。片手で使える約1.1kgの軽量コードレス式で使用する場所を選びません。

強力な振動を生み出しながらも特許取得済みのQuiet Glideテクノロジーにより静かな音で作動します。

5種類のアタッチメントをケアしたい部位、痛み、目的に応じてカスタマイズでき、振動は3段階(毎分約1,800回〜3,180回まで)に調整することができます。

使用する場所を選ばない、持ち運びにも便利なコードレス式で、1回の満充電で最大2時間まで連続使用できるリチウムイオンバッテリーを搭載しています。

どれくらい患部に当てているかの圧力を感知して3段階のLEDライトで確認できる圧力センサーを搭載しています。治療セッションの際のより正確な施術のための視覚的なフィードバックとしてお役立てください。  

出典:HYPERICE公式HP

 

 

HYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)ついて

HYPERVOLT PLUS(ハイパーボルトプラス)は2019年10月に発売されました。

 

 

以下、HYPERICE公式HPより引用

HYPERVOLT PLUSは、HYPERVOLTの1.5倍パワフルなモーターを搭載し、どんな振動機器よりも強力な振動を備えています。パワフルな振動の方が心地よい方や、よりアスリートの方向けにパフォーマンスの向上そして体の機能を改善するために設計されています。

強力な振動を生み出しながらも特許取得済みのQuiet Glideテクノロジーにより静かな音で作動します。

5種類のアタッチメントをケアしたい部位、痛み、目的に応じてカスタマイズでき、振動は3段階(毎分約1,800回〜3,180回まで)に調整することができます。

使用する場所を選ばない、持ち運びにも便利なコードレス式で、1回の満充電で最大2時間まで連続使用できるリチウムイオンバッテリーを搭載しています。

どれくらい患部に当てているかの圧力を感知して3段階のLEDライトで確認できる圧力センサーを搭載しています。治療セッションの際のより正確な施術のための視覚的なフィードバックとしてお役立てください。

出典:HYPERICE公式HP

 

ここからは、この2機種のスペックの違いを見ていきます。

スペック上の違いとしては、以下の3つの違いがあります。

 

①モーターの出力

②重量

③バッテリー稼働時間

 

具体的にみていきましょう。

①モーター

HYPERVOLT     →  60w

HYPERVOLT PLUS  →  90w

ボルトが60wであるのに対し、プラスは90wと1.5倍強い出力のモーターを積んでいます。

受けてみると、モーターの出力が大きい方が1回1回の打撃が重く感じ、ずっしり深く刺激が入る感覚です。

 

 

②重量

HYPERVOLT          →  1.1kg

HYPERVOLT PLUS  →  1.3kg

機種の重量の差は200gです。ボルトプラスと比べて、ボルトの方が200g軽いです。

200gの目安は、小さめなリンゴ1個分の重さ。一般的なPC用マウスひとつが約100gなので、マウス2個分の重さの違いとなります。

 

 

③バッテリー稼働時間

HYPERVOLT        → 3時間

HYPERVOLT PLUS→ 2.5時間

ボルトが3時間であるのに対し、プラスは2.5時間と、ボルトプラスの方が30分ばかり短いです。

HYPERVOLT PLUSの方が、W数は大きいので消費電力も当然多くなります。

 

肩こりラボでは、2機種とも実際の治療に取り入れておりますが、一日で充電が切れてしまうことはほぼありません。

そして、スペック上の連続使用時間の差について、日々使っている上でプラスの方が劣っていると感じることはありません。※どちらも連続2時間は使用できます。

 

 

 

検証

では、ここからは検証に入ります。

実際にボルトとボルトプラスの施術を受け比べてみます。

 

ボルト

圧力センサー1、出力レベル1

■受け手の感想

→けっこう強く感じる。十分刺激が入っている感覚がある。

 

ボルトプラス

圧力センサー1、出力レベル1

■受け手の感想

→ボルトと比べると、かなりしっかり振動を感じる。でも強すぎるという感覚ではなく、心地のよい刺激の範疇。

 

2つの機種での施術を実際に受け比べてみましたが、ボルトプラスの方が、パワーが強いと感じるものの、ボルトが明らかに劣っているというわけではありませんでした。

 

YouTube動画の中ではさらに、水やゴルフボールを使って、振動の大きさの比較を行っています。

特に、ゴルフボールを使って行った検証では、ボルトプラスの方がパワフルであることを視覚的に確認することができました。この検証様子は是非、YouTube動画をご覧になり、お確かめいただけましたら幸いです。

 

 

 

ここで、検証結果を簡単にまとめると・・・

スペックの差からも分かるように、ハイパーボルトプラスの方が全体的なパワーが強いです。

ですが、だからといってハイパーボルトのパワーが弱いという印象も受けませんでした。

 

 

では、この検証結果を踏まえて、どちらの機種を選べば良いのか、考察していきたいと思います。

 

まとめ

それでは、比較、検証した結果のまとめに入ります。

 

モーターの違いについて

ボルトプラスの方がモーターとしては1.5倍強いので、確かに強力な印象を受けました。

ボルトで出力を2にすると、ボルトプラスの出力1よりも、体感的な刺激は強くなるようです。

ボルトとボルトプラス両方とも同じ出力1でやると、施術を受けていてボルトプラスの方が強く、太く、奥まで入るような感覚がします。

重さの違いについて

スペック上、ハイパーボルトはボルトプラスに比べて200g軽いです。

200gという数字ではありますが、実際に操作してみると意外にも大きな差を感じます。
操作している感じではボルトの方が軽くて操作しやすいです。

ボルトプラスの方は重さがある分、扱いが少し大変なのですが、押し付ける時に重さを利用できるので、強い刺激を与えたい場合は操作が楽に感じます。

ですので、ボルトプラスの場合パワーが強いので、押し付けすぎてしまうと、中には強すぎると感じる人もいるかもしれません。

その場合、完全に押し付けずに少し浮かせた状態、ボルトの重み自体もかけない状態で操作する必要があります。

こうなった場合、腕力が弱めの方や一般の方が操作する分には、少し疲れてしまうと思うかもしれません。

バッテリー稼働時間の違いについて

スペック上は、ハイパーボルトの方が30分長く稼働するということなのですが、私たちが日常的に1日使用する中で、ボルトプラスの方が早くバッテリーが切れてしまうという印象は今のところ持っておりません。

バッテリー稼働時間に関しては、大差ないと考えていただいて構わないと思います。

 

ボルトとボルトプラスではどちらが良いか?

それでは、本題のどちらを選ぶか? という部分です。

それは、目的によってかわります。

アスリートの治療施術をすることが多いケースであれば、私たちであればボルトプラスを選びます。

 

筋肉が多く体格が良い方に対して、しっかり奥まで刺激を与えたいというケースが多いということであれば、ボルトプラスがおすすめです。

また、アスリートではなくとも、かなりの強刺激を求める方を施術する機会が多いのであればボルトプラス、一方でそこまで強い刺激を求めないならばボルトで充分です。

ボルトの方が操作はしやすいので、女性のセラピストやセルフケアで用いる方で、とても強い刺激を求めないということであれば、ボルトがオススメです。

両機種とも必要にして十分なパワーはありますが、

よりパワフルなのがボルトプラス、より操作性が良いのはボルト。

となります。

 

 

いかがでしたでしょうか。
HYPERVOLTとHYPERVOLT PLUS
この2つで迷われている方の参考になれば幸いです。

 

他にも、肩こりラボでは、VYPER2.0、HYPERSPHERE、HYPERSPHERE MINI、こちらも導入しています。

これらの機種も、実際にお手にとって検討していただくことが可能です。

HYPERSPHEREとHYPERSPHERE MINI、こちらで迷われている方も多いと思います。そのような方も是非お気軽にお問い合わせください。

 

 

※今回、HYPERVOLTとHYPERVOLT PLUSの検証で使用したアタッチメントはノーマルのもの1つですが、アタッチメントは全部で5種類あります。アタッチメントによって感じ方も変わりますので、さら詳しく比較検討したい場合は、ぜひ実機にてお試しください。

 

 

この記事でご紹介したHYPERVOLTとHYPERVOLT PLUSの比較検証動画は、以下のリンクからご覧いただけます。

お時間のある方は、是非動画も合わせてご覧ください。

 

 

YouTube動画

HYPERVOLT、HYPERVOLT PLUS「どちらが良いの?」お悩みの方へ

 

 

 

HYPERICE JAPAN 公式ホームページ

HYPERICE JAPAN Instagram

肩こりラボ YouTubeチャンネル

肩こりラボ ストレッチ動画

 

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


遠方からの通院で慢性的な首こり・肩こりが解消したケース|ケースレポート

概要

Y様 / 静岡県在住 / 33歳 / 女性 / 会社員

症状

肩こり

首こり

頭痛

状態

肩こり、首こりは高校生の頃からあったが、1年前くらいから特にひどくなってきた。

ひどい時は頭痛や吐き気を伴うこともある。

頭痛外来にて精密検査などを行ったが、これといった異常所見はみられなかった。

はっきりとした原因が特定できないまま、徐々に症状が悪化してきたためご来院された。

頭痛が特にひどいときは痛み止めを飲みながら緩和している。

マッサージや鍼を受けると一時的に緩和するが、数日すると元のつらい状態に戻ってしまう。

仕事はデスクワークが中心で、長時間座りながらパソコン作業をしていることが多い。

見立て

まず、首や肩のつらい部分と一致して、頭半棘筋、頭板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋に強い筋緊張がみられる。そして頭半棘筋や僧帽筋を圧迫した際に、普段の頭痛に近い痛みが再現された。

このことから、頭痛は首や肩の筋緊張により、引き起こされている可能性が高いと考えた。

 

そして各関節可動域や筋力を検査したところ、股関節や胸椎の可動域の低さ、姿勢維持のために適した筋(脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋)の筋力が十分ではないことがわかった。

 

上記の関節可動域の低下や筋力低下があると、良い姿勢を長時間キープすることが困難となる。

仕事では長時間座るため、適した筋肉で支えられていないことで首や肩にかなりの負担を強いることとなる。

 

まずは鍼やマッサージで筋緊張を緩和し、自覚症状をできるだけ少なくするよう努める。

次に根本的な部分の改善として運動療法をメインに進めていき、治療期間をあけても大丈夫な状態を目指すこととなった。

治療

初期治療

初期治療では通常一週間に一度ほどの頻度で集中的に治療をしていくが、静岡県からご来院されるため、二週間に一度のペースで行っていくこととなった。

そして次回の治療までに、なるべくこりの少ない状態をキープしていただくために、セルフケアとしてストレッチや体操を通常よりも多く行ってもらった。

治療を開始して約3ヶ月、7回の治療でこりや頭痛の程度がNRS3まで落ち着いたため、運動療法がメインとなる中期治療へ移行した。

※NRS:Numeric Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

まずは治療開始前のような強いこりや頭痛が出ないようにすること。(鍼やマッサージによるほぐし)

そして姿勢改善のため、可動域改善と筋力強化をメイン課題として運動療法を中心に治療を進めた。

まずは脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など姿勢維持のために必要な筋を個々にトレーニング。

それぞれが十分に使えるようになったら、徐々に連動性をもたせるトレーニングへと発展。

トレーニング開始してから間もない頃は、背中の筋を使おうとすると首や肩など、上半身に力が入ってしまっていた。

腹横筋や大殿筋など体幹や下肢の筋肉が使えるようになると、徐々に上半身の余計な力みがなくなり、目的の筋を選択的に収縮できるようになった。

治療を開始してから約1年。治療回数は26回。良好姿勢が定着したため、後期治療へ移行した。

後期治療

Y様とのご相談により、3ヶ月に一度の治療頻度で良好な状態がキープできるようにすることを目標に、徐々に治療間隔をあけていった。

肩や肩甲骨、鎖骨周りが張ることもしばしばあったが、大きく調子を崩すこともなく、良好姿勢やセルフケアの習慣化なども出来ており、3ヶ月あけても問題ない状態となったため、治療はゴール。

治療期間は約1年9ヶ月。総治療回数は31回。

コメント

当院には、北海道から九州までさまざまな地域から治療を受けにいらっしゃいます。

遠方からご来院される方や、さまざまな事情により当院が推奨している頻度で通うことが難しい場合でも、セルフケアや治療内容のカスタマイズにより、根本的改善に向かっていくことは十分可能です。

 

Y様も静岡県からのご来院ということもあり、平均よりも長期間となることを見据えての治療計画となりました。

セルフケアなど地道に続けていただいた結果、着実に身体が改善していき、ゴールへと到達することができました。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


慢性的な肩こり・背中こりが順調に解消して早期ゴールに至ったケース|ケースレポート

概要

M様 / 埼玉県在住 / 27歳 / 男性 / 会社員(営業職)

症状

  • 肩こり
  • 背中こり

状態

学生の頃から教科書などをたくさん入れた重い荷物を持ち歩くことが多く、肩から背中にかけて強いこり感があった。この時がピークでつらかった。

その後、配送業に就き、現在は転職し営業の仕事をしている。

外回りで長時間車を運転することが多いのと、週に一度は長時間デスクワークをするため、その際にはこりを強く感じやすい。

また、スーツのジャケットを着用していると窮屈さからどうしても姿勢が丸まってしまい、さらに強いこりを感じやすくなる。

運動は現在あまりしていない。趣味としてダイビングをやっている。酸素ボンベを背負う時も肩や背中はつらくなりやすい。

見立て

肩から背中にかけてこりを感じる部分と一致して、筋肉の緊張がみられる(僧帽筋、最長筋、腸肋筋など)。

姿勢を正そうとしても、すぐに崩れやすい主な要因として、股関節と胸椎の柔軟性不足が考えられる。

姿勢を支えることに適している筋(脊柱起立筋、腹横筋、大殿筋など)の筋力低下はあまりみられないが、股関節や胸椎の柔軟性が低いため、相対的に姿勢を支えるために強力な筋力が必要な状態。

 

治療は、マッサージや鍼で筋緊張を緩和しつつ、柔軟性の改善と筋力強化の両方向から改善を図る。

また、車の運転中などは姿勢に意識を集中させることが難しいため、無意識の状態でも良い姿勢を保てるように、反復継続的にトレーニングを行うことが重要と考えた。

治療

初期治療

まずはマッサージや鍼を用いて、筋緊張の緩和を優先して治療を進めた。

治療頻度は1週間に一度のペース。

鍼はこれまで受けたことはなかったが、筋の反応がとても良く、1回の治療ごとにこりの自覚症状が改善していき、3回目の治療で NRS 1まで症状改善を実感されたため、中期治療に移行することになった。

※NRS:Numeric Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

中期治療

自覚症状をほとんど感じなくなったため、こりが悪化しないように定期的に筋肉は緩めつつ、柔軟性の改善と筋力強化を目的とし、運動療法をメインに治療を行った。

治療頻度は2週間に一度のペース。

中期治療のはじめは個々の関節可動域の改善や、筋肉をそれぞれ個別に使えるようにするストレッチやトレーニングから開始。徐々に連動的に身体が使えるようにトレーニング内容をステップアップさせていった。

10回目の治療で、姿勢の維持をするために必要な柔軟性や筋力が身についてきたため後期治療に移行。

後期治療

運動療法のペースは保ちつつ、徐々に鍼やマッサージなど、ほぐし治療の頻度をあけていった。

ご相談の上、2ヶ月間肩こり、背中こりに悩まされない状況をキープできたため、ゴールとなった。

治療開始からゴールまでの期間は約10ヶ月間。総治療回数は22回。

そのうち8回は鍼やマッサージをせず、運動療法のみの短い治療。

コメント

本ケースは初診からゴールまで、順調な経過をたどったケースです。

肩こりの根本的な改善を目指すにあたって、中期治療以降は自覚症状の変化が緩やかになり、改善の実感を得にくくなりますが、この期間でしっかりと運動療法を重ねていくことにより、より早期にゴールに近づくことができます。

M様は、気持ちの切れやすい中期治療の際に、セルフケアとして日々しっかりとストレッチや筋力トレーニングを行なってくださったことが早期ゴールにもつながったと考察しております。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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「ドラクエの戦闘シーン」と「肩こり・首こりの根本治療」の類似性

 

画像を「SQUARE ENIX 」ホームページから引用させていただきました

肩こり・首こりの根本治療ってどういうこと?

 

「 根本治療 」

 

多くの治療院、整骨院、整体などのホームページや広告などで目にする機会が多い言葉ですね。

 

 

「根本治療」や「根本改善」と聞くと、みなさんはどんな印象を持たれていますか?

 

 

“なんとなく”良いイメージを持つという方は少なくないでしょうか。

 

 

 

一方、真面目に治療を検討している方であれば、

 

「根本治療っていうけど、具体的に何をどうするの??」

「根本治療をしたらどのような状態になるの??」

 

このような疑問を抱く方も少なからずいらっしゃるかもしれません。

 

 

 

たしかに、患者さんの立場になって考えてみると、

 

  • 「根本治療」って、なんとなく良いイメージがあるけれど、実はわかりにくい(抽象的)

 

  • 「根本治療」というけれど、何をどうするのかわからない(具体的な説明がない)

 

という印象があります。

 

 

 

かく言う私たち肩こりラボも「根本治療」を提言している治療院のひとつです。

 

 

 

私たちは、治療を行うにあたりまして、治療者からの一方向的なものではなく、患者さんと対話をしながら一緒に治していくということを重視しています。

 

ですので、患者さんには”なんとなく”ではなく、”きちんと”理解し、納得して、治療を受けていただきたいのです。

 

そのためにも、きちんとした説明をして、前提を共有することは必要不可欠と考えております。

 

 

 

世の中に「根本治療」という言葉が溢れかえっている状況です。

 

「根本治療」という言葉の「わかりにくさ」「不透明さ」を少しでも解消したい。

 

また、慢性的な肩こりや首こりにお悩みで、本気で治したいとお考えの方のヒントになればと思い、本記事を執筆いたしました。

 

 

 

治療者によって「根本治療」の捉え方は様々あるかと思いますが、肩こりラボが考え、実践している「肩こり・首こりの根本治療」を、有名テレビゲーム「ドラゴンクエスト」を例にご説明させていただきます。

 

なお、本記事では、慢性的な肩こり・首こりにお悩みで、施術を受ければ一時的に緩和するが、日常生活をするとすぐに元どおりになってしまい、本質的に状況が改善しないという方が、施術を受けなくても大丈夫な状態(治療を必要としない状態)になるということをゴールと考えてお話いたします。

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

根本治療はドラクエの戦闘と似ている?

さて、筆者が幼少時代から愛してやまないゲームがあります。

 

それは「ドラゴンクエスト」通称ドラクエです。

 

 

ドラクエとは、RPGの金字塔とも言える作品で、プレーヤーが主人公=勇者となって、世界を脅かしている魔王を倒すために冒険をします。

 

その過程でたくさんの手強いモンスターと遭遇し、戦って勝利をしなければなりません。

 

 

実はこのドラクエの戦闘において、プレーヤーのとるべき戦略と、首こり・肩こりの根本治療への治療計画には共通する部分があります。

 

※ドラゴンクエストをご存知でない方は、本項はとばして次項「水漏れの状況を例にご説明いたします」からお読みいただけますと幸いです。

 

 

 

まずはドラクエの戦闘についてお話しします。

 

ドラクエでは、モンスターに遭遇すると、モンスターはプレーヤーに対して様々な攻撃を仕掛け、ダメージを与えようとしてきます。

 

そして、プレーヤーのHP(Hit Point=体力)が0になると、戦闘不能になってしまいます。

強敵であるほど受けるダメージが大きいため、戦略が非常に重要となります。

 

 

なお、プレーヤーが取る行動の選択肢として、「にげる」というコマンドもありますが、ここでは「たたかう」ことを前提として話を進めさせていただきます。

 

 

話をバトルに戻します。

 

まずこちらのHPに余裕がある時は、モンスターに攻撃する、あるいは強化呪文を使い、守備力などを上げることで次回以降のターンを有利に進めるために備える。

 

これが強敵と戦う上での定石でしょう。

 

 

一方で、モンスターの攻撃を受け、HPが残り少なくなると、戦闘不能とならないように回復呪文でHPを回復する必要があります。

 

つまり、HPに余裕がある時、とるべき行動の優先順位は

攻撃、強化>回復

 

そして、HPが残り少ない時、とるべき行動の優先順位は

攻撃、強化<回復

 

となります。

 

 

また、ドラクエでは特殊な装備や呪文などにより、毎ターン自然回復をすることも可能です。

モンスターの攻撃によるダメージ量よりも、自然回復の量が上回ることで、回復呪文を使わずに戦い続けることも可能となります。

 

 

このように状況に応じて、戦略を変えていくことによって、ダメージを受けつつも倒されずにモンスターに立ち向かうことができます。

 

反対に優先順位を間違えるとモンスターを倒すのに時間がかかってしまう。あるいはHPが尽き、戦闘不能(ゲームオーバー)となってしまうのです。

 

 

 

水漏れの状況を例にご説明いたします

ドラクエに馴染みのない方も多いと思います。

今度はより一般的で誰にでもイメージしやすい例をもう一つご紹介します。

 

 

洗面台の排水口が詰まっており、水が流れにくくなった状態のなか、ある時、蛇口が破損して水が止まらなくなってしまったという状況をご想像ください。

 

排水量よりも漏水量が上回ってしまい、時間の経過と共に徐々に水位が上がり、遂には洗面台から水が溢れ、床が水浸しになってしまっていました。

浸水はどんどんひろがっていきます。家具などが水浸しになって壊れてしまうだけでなく、下層にまで漏水してしまうと大きな損害を与えてしまうことになります。

 

 

さて、このような状況で、あなたが最初にとるべき行動は何でしょうか?

 

 

対処方法は色々あると思います。

この場合、一番困っているトラブルは床が水浸しとなってしまっているという現象ですが、水浸しとなっている箇所をいくら拭いても、問題解決に至らないのは容易に想像できます。

 

床が水浸しとなってしまっているという問題を根本的に解決するためには、一番は蛇口から漏れ出ている水を止めることですが、排水口の詰まりを解消することでも漏水自体はひとまずおさえることができるでしょう。

 

 

でも、排水口の詰まりの解消や、蛇口の修理に多少なりとも時間がかかるとしたら・・・

 

 

水浸しになっている範囲が現在進行形で広がっていく最中、排水口や蛇口の修理に時間をかけてしまうと、その間に被害がどんどん広がってしまう状況が想像できると思います。

 

このような状況で、被害を最小限にするためには、まずはこれ以上浸水が広がらないように床を拭くこと。そして、洗面台の水をかき出すことで一時的にでも、水位を下げて溢れ出てくる水を減らすという応急処置をすることではないかと思います。

 

 

応急処置をして、多少の時間をかせいだうえで、落ち着いて、しっかりと排水口や蛇口を修理することで、水浸しの被害を最小限に抑えながら、問題の根本的な解決に至ることができるでしょう。

 

https://illust8.com/contents/4358から引用させていただきました

 

 

「ドラクエの戦闘」と「水漏れ」の共通点

 

二つの例をご紹介しました。共通点はどこにあるでしょう?

 

 

根本的に解決しなければならない問題

ドラクエ → モンスターを倒し、これ以上ダメージを受けないようにする。

水漏れ    →  洗面台の本来の機能を取り戻し、水漏れを止める。

 

 

根本的解決のために必要なこと

ドラクエ →  攻撃をする、強化呪文を使う。

水漏れ    →  排水口、蛇口の修理をする。

 

 

早急に対処しなければいけないこと

ドラクエ → HPが少なくなったら回復をする。

水漏れ    →  床を拭く、洗面台の水をかき出す。

 

どちらも状況に応じて、やるべきことの優先順位があるという点で共通しています。

 

首こり・肩こり治療に置き換えると?

 

上記の共通点は首こり、肩こりなどの慢性症状の治療においても、同様のことが言えます。

 

 

一つ例をあげます。

 

Aさんは慢性的な肩こりがあり、日常生活に支障が出ている状態。

その原因はデスクワークにより長時間同じ姿勢でいること。

そして、その姿勢が悪いことにより、首や肩に負担をかけている。

姿勢を正さなければいけないことはわかっているが、凝りがつらくて、日々姿勢を意識することや、筋トレを続けることが難しい。

 

 

このようなケースを、上述した例え話に置き換えると以下のようになります。

 

 

根本的に解決したい問題

肩こりのつらさによって日常生活に支障が出ている。

 

 

根本的な解決のために必要なこと

肩に負担をかけない姿勢や身体の使い方を習得すること。

→これを原因療法といいます

 

ドラクエだと強化呪文、水漏れだと排水口や蛇口の修理をすることです。

 

肩こりラボでは主にストレッチやトレーニングなどの運動療法が該当します。

不良姿勢の原因筋をほぐすという観点ではIDマッサージや3D鍼などの手技療法も当てはまります。

また、デスク環境を整えるなど、日常生活の工夫をすることも原因療法です。

 

 

早急に対処しなければいけないこと

凝り固まっている所をほぐし、つらさを緩和させること。

→これを対症療法といいます

 

ドラクエだと回復呪文、水漏れだと床を拭き、洗面台の水をかき出すことです。

肩こりラボでは主にIDマッサージや3D鍼などの手技療法が該当します。

凝り固まっている筋を緩めるためのストレッチや体操などもこれにあたります。

 

肩こりラボの考える「根本治療」とは

トレーニングや姿勢を正すこと(原因療法)はもちろん非常に重要です。

ですが、こりのつらさによって日常生活に支障が出ている以上、まずは凝り固まっている筋肉をほぐし、こりのつらさから一時的にでも解放されること(対症療法)が、効果的な原因療法を行うためにも重要となります。

 

対症療法で症状を緩和させながら、原因療法を併せて行い、根本的な改善を目指すのです。

 

そして、仕事など日常的にかかる負担の量よりも、自己の負荷許容量や、休息による自己回復量が上回った際に、治療をしなくても良い状態となります。

 

 

つまり、即効性のある特殊技術を行うこと(対症療法)や、原因療法だけを行うことが根本治療ではございません。

「根本的に解決したい問題」「根本的解決のために必要なこと」「早急に対処しなければいけないこと」これらを整理したうえで、問題を引き起こしている原因を明らかにし、状況によって対症療法と原因療法を組み合わせて対処を行うことが肩こりラボの考える根本治療です。

 

 

当院独自の技術である3D鍼、IDマッサージも一つ一つは単なるメソッド(手段)に過ぎません。

鍼をやったら必ず楽になる!肩こりを治すにはトレーニングじゃなきゃ絶対だめ!ということはございません。

 

 

解決すべき問題を明らかにし、根本的な解決のために必要なこと、早急に対処が必要なこと、これらをまずはしっかりと整理し(見立て)、最短で問題解決に到るための手順を考える(治療計画)、ということが大切となります。

 

 

この「見立て」と「治療計画」があって、次に具体的な対処法(メソッド)の話になるのです。

 

 

「根本治療」において大切なことは、特殊技術ではなく、患者さんの抱えている問題やお悩みをきちんと把握して、それに応じて治療計画を立てていくことと私たちは考えています。

 

 

 

 

まとめ

 

根本治療に必要なことを次の5つにまとめました。

  1. 状況によって対症療法と原因療法の優先度が変わる。
  2. 優先度を踏まえ、対症療法と原因療法を組み合わせる。
  3. 使う道具や技術などは単なるメソッドである。
  4. 必要なメソッドは人や目的により異なる。
  5. 根本治療において重要なのは「見立て」と「治療計画」である。

 

難しい表現をしておりますが、一言で言うと「カスタムメイドが大事」ということです。

 

 

 

症状を文字にすると「肩こり」「首こり」と皆同じように思えますが、解決すべき問題、程度、状況は患者さんによって様々なので、原因も様々です。ですので、原因を解消する手段や手順も様々であるのが自然だと思います。

 

もちろん私たち肩こりラボとしての標準治療は設けておますが、それを強要すること、その手順をいかなる時も遂行することが正解ではないと考えております。

 

ですので、効果的な方法(施術)を行うことや、唯一のマニュアルがあってそれを遂行すること自体が「根本治療」 というわけではございません。

 

一つの治療法にこだわるのではなく、患者さんの抱える問題、生活スタイル、考え方に応じて様々なやり方を提示できる治療院こそ、根本治療を望めると考えます。

 

 

 

さいごに

今回は、治療をし続けなくても良い状態になって治療を卒業することをゴールとし、これを達成するための治療を「根本治療」としてご説明させていただきました。

 

しかし、治療を卒業することのみが目指すべきゴールではありません。

 

患者さんの中にはメンテナンスとして定期的に治療を受けることを望んでおり、それにより良い状態を保てている方もいらっしゃいます。

 

ドラクエの「ゾーマ」級にダメージ量の多いプロジェクトを抱えている方にとっては、回復役が常に回復呪文を唱え続けなければ、戦い続けることはできません。

※ゾーマとはドラクエⅢの魔王(最終ボス)のことです。

 

 

個々の抱えている問題やお悩みは人によって千差万別です。

 

症状をただ治すことを目的とするのではなく、それぞれの問題やお悩みに沿って戦略をカスタマイズし、「問題」を解決すること。

 

それこそが目指すべき本当のゴールと考えております。

 

 

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執筆者:須藤 大登
Hiroto Sudo

呉竹鍼灸柔整専門学校 柔整科卒業
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科卒業

鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師
柔道整復師

学生の頃、大きな怪我で部活が出来ない時期がありました。
全治2~3ヶ月と診断を受けた時、リハビリ担当の先生が「大丈夫。しっかり治すために一緒に頑張ろう」と声をかけてくれました。
なんでもない言葉ですが、当時の私にはすごく心強く、前向きになれたことを覚えています。
治療する立場となった現在、かつて私がしてもらったように、少しでも前向きに思えるような治療や言葉を届けられる存在となれるよう日々精進いたします。


息苦しい・呼吸がしづらい・呼吸が浅い等の自覚症状がマッサージと運動療法で解消したケース|ケースレポート

概要

K様 / 東京都在住 / 50歳 / 男性 / 自営業

症状

・息苦しい

・呼吸がしづらい

・呼吸が浅い

状態

特に心当たりはないが、1年程前から、ふとした時に息苦しさや呼吸のしづらさを自覚するようになった。

だんだんとひどくなってきたので、循環器内科と呼吸器内科を受診し、心電図、レントゲン、肺機能検査を受けたが心臓や肺に異常はみられなかった。

以前から、慢性的に首肩こりや頭痛があり、今回の症状でも鍼やマッサージを受けてみたところ、施術を受けた直後にすぐにラクになるということはなかったが、3ヶ月ほどするといつの間にか息苦しさは気にならなくなっていた。

 

数ヶ月間は比較的良い状態が続いたが、2ヶ月前からまた同じ様な症状が出始め、再度医療機関を受診して検査を受けたが、今回も特に異常はみうけられなかったため、当院への来院に至った。

来院時点では常に呼吸が浅くなっている自覚があり、息苦しさを感じている状態。深呼吸すると少し楽になる。そのため、意識的に深呼吸を多く行なってしまう。

 

息苦しさに影響する要因に心当たりはない。仕事では、主にデスクワークや車の運転など、長時間座っている事が多い。

ジムで週2回、筋力強化のためのトレーニングをしている。

見立て

まず医療機関で精密検査を2度行っていたことから、命に関わる呼吸器や循環器の疾患である可能性が低いことを前提として診察を行った。

 

呼吸のメカニズムの重要な要素として、胸郭の可動性が挙げられる。

※胸郭とは胸椎、肋骨、胸骨で構成されたかご状の骨格。胸郭の内部には胸腔があり、肺や気管、食道、心臓などを収めている。

呼吸では、胸郭が大きく広がることで空気が肺に到達するメカニズムとなっている。胸郭が可動性に富んでおり、拡大することができなければ、肺が空気を取り込んで拡大することが困難となってしまう。

 

K様のお身体を診察したところ、胸郭に付着している筋肉(胸鎖乳突筋、大胸筋、広背筋、腹筋群など)の緊張が著しく高くなっていた。また、頚部の緊張も非常に高い。姿勢は、猫背で、いわゆる「巻き肩」の状態となっており、筋緊張と姿勢の観点から、胸郭が広がりにくい状態となっていた。

 

仕事で長時間の座ることが多いとのことで、不良姿勢により胸郭が可動しにくくなっていることが、自覚的な「息苦しさ」や「呼吸の浅さ」につながっていると考えた。

まずは猫背や巻き肩の原因となってしまっている胸郭周囲の筋緊張ならびに関節可動域をマッサージやストレッチで緩め、胸郭が拡大しやすい状態になるようにした。

そして、正しい座り姿勢を習得するために体幹筋(主に上背部の脊柱起立筋と腹横筋)の筋力強化と、体の使い方を練習する方針とした。

 

一方で、当該症状は、精神的ストレスが起因することもある。(内臓疾患が無いということが確認されているため)

仕事でのストレスやプレッシャー、そして「息苦しい」という症状のつらさ自体が精神的ストレスとなり、さらに息苦しさや呼吸の浅さが気になってしまうという悪循環が起こっている可能性もあると考えた。

そのため治療では、肉体だけでなく心理的なリラクセーションにも重きを置き、処置方法として、K様が心理的に心地よいと感じる治療を優先的に行うことした。このような理由から、鍼ではなく、ほぐす手段は、マッサージとストレッチを主体に処置を行なった。

また、緊張を緩和し可動性を改善させたいターゲット部位は胸郭周囲だが、自律神経のバランス調整のためにも、上肢や下肢へのアプローチも行なった。

 

治療

1回目の治療

猫背や巻き肩など、不良姿勢や胸郭の可動性を制限している要因の解除ため、胸鎖乳突筋、大胸筋、広背筋、脊柱起立筋を中心にマッサージで緩めた。

上肢や下肢への刺激は副交感神経を有意にするため、体幹だけでなく、手や足もほぐした。

治療直後のK様の感想として「呼吸のしづらさ」の目立った改善効果は特に実感できなかった。

セルフケアとして、胸椎や胸郭の可動性を上げるストレッチを毎日セルフケアで行っていただいた。

2回目の治療

初回から2週間後のご来院。

初回よりは少し軽減しているが、依然として頚部から上部体幹の筋緊張がとても高い状態となっている。「息苦しい」「呼吸がしづらい」「呼吸が浅い」といって症状も特に変化はない。

処置の内容は、基本方針は初回と同じとして、緊張の高い部位へ処置を行う時間を長くし、それに加えて、頭部と顔面のマッサージを行なった。セルフケアも、同様のメニューを継続とした。

初回同様、直後の改善効果は特に無し。

3回目の治療

2週間後のご来院。治療を行って1ヶ月ほど経過。

客観的な視点では、徐々に胸椎の可動性が出始めた。

呼吸もいつの間にかあまり苦しいと感じる頻度が減るようになった。

良い姿勢を長時間キープするために必要な脊柱起立筋のトレーニングも行いつつ、全身の筋緊張を緩めていった。

4回目の治療

2週間後のご来院。

たまに深呼吸したいと思うことはあるが、以前のように「息苦しい」「呼吸しづらい」「呼吸が浅い」ということは無くなった。

身体所見としては、巻き肩と猫背姿勢はほぼ改善。

胸椎、胸郭の可動性はまだ改善の余地はあったが、日常生活に支障をきたさない状態となったため、治療はゴールとなった。

総治療回数は4回。治療期間は約1ヶ月半。

コメント

呼吸が苦しいなどの症状に関わらず、治療をする上での大前提として、現在起こっている症状が、病気が元になっているか(症候性)か、そうでないか(本態性)かの見極めが重要となります。

症候性とは、医学的に診断のつく疾患など明確な原因が背景にあり、その疾患の一症状として、当該症状が出ているという状態です。

症候性の症状の改善のためには、その原因となっている疾患を専門の医療機関で治療する必要があります。一般的に、呼吸が苦しいというと、呼吸器系、循環器系、血液系などの疾患が背景に隠れている可能性があります。

 

一方、本態性とは、症候性のように症状を引き起こしている明確な原因が特定できないもの(病院では異常がないとされるもの)を指します。

たとえば、肩こりや首こりの原因は様々ありますが、病気が元になっているわけではなく、筋肉や筋膜の過緊張、体の使い方不良、姿勢不良、自律神経の不調、精神的ストレスなどによって引き起こされる場合は本態性の肩こり・首こりとなります。

 

当院で治療の適応となるのは、あくまでも本態性の症状となります。

K様は来院前に循環器内科、呼吸器内科の診察を少なくとも2回受けており、検査に異常がなく、症候性の可能性が低いことから、姿勢不良やストレスなどから呼吸に影響を与えていると見立てて、治療を行いました。

そしてその息苦しさを招いていた原因として、胸郭の広がりにくさなど、筋肉や関節の硬さが原因の多くを占めていたため、マッサージや運動療法によって早期の改善に至りました。

 

自覚的に症候性の可能性が低いと感じている場合でも、症候性の可能性を否定するという意味で、病院への受診はとても重要です。万が一、症候性で、なんらかの病気のサインだった場合、命に関わることがあります。

「息苦しい」「呼吸しづらい」「呼吸が浅い」というような症状がある方は、自己判断せず、まずは必ず医療機関を受診するようにしましょう。

 

 

【セルフケア方法をお探しの方へ】

医療機関を受診して異常が無いことを確認したうえで対処法を探しているという方のために、こちらで肩甲骨や胸郭の動きを改善するストレッチをご紹介しています。

このストレッチは治療の中に組み込むこともございます。

必ず痛みや違和感のない範囲で行ってください。

↓↓↓

 

 

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
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緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルス感染症対応につきまして

新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が、5月25日をもちまして東京都も解除されました。

現在、肩こりラボは、【 10:00~22:00・水曜休診 】にて治療受付を行なっております。

 

肩こりラボでは、平時から感染症対策をはじめとした環境整備には細心の注意を払って取り組んでおりましたが、この度のコロナ禍により、見直しと強化徹底を行いました。

 

感染症拡大が収束傾向のため緊急事態宣言は解除されましたが、新型コロナウイルス感染症が終息したわけでありませんので、緊急事態宣言時に行なっておりました下記の感染症対応につきましては継続的に取り組んでまいります。

 

9つの感染症対応

肩こりラボでは、標準予防策に准ずるできる限りの感染防止対策を行なっております。

詳しくは以下となります。

  • 標準予防策(スタンダードプリコーション)とは、すべての人に分け隔てなく行う感染予防策で、感染症の有無にかかわらず、すべての人の汗を除く、血液、体液、排泄物、創傷のある皮膚、及び粘膜には感染性があると考えて扱うことです。具体的な実施事項としては、適切な手指衛生 、適切な防護用具(マスク等)の使用 、呼吸器衛生(咳エチケット)、周囲環境対策 などがあります。

 

① スタッフの検温と体調管理

全スタッフが、毎朝出勤前に自宅で検温を行います。37.5℃以上ある場合は出勤を禁止しております。熱が無くても、体調不良を自覚する場合は出勤を停止します。

 

② 常時マスク着用

全スタッフが常時サージカルマスクを着用しております。

マスクが感染経路とならないよう、マスク脱着の前後は手洗いを行うなど、取り扱いに細心の注意をしています。

原則患者さんもマスクを着用して治療をお受けいただいております。(マスクの提供は行っておりませんのでご了承くださいませ)

 

③ 手洗いならびに手指消毒の徹底

これまで同様、手洗いの頻度を高め、丁寧に細部まで時間をかけて洗うようにしています。

ハンドソープでの揉み洗い10秒以上+流水洗浄15秒以上を2クール。その後にエタノールでの消毒を行います。また、患者さんに触れる前にはエタノールにて手指消毒をします。

尚、患者さんにも入念な手洗いをお願いしております。ご来院いただきましたら、お部屋にご案内する前に、まずは手洗いをしていただくようご協力いただいております。

また、各所に70%エタノール消毒液を設置してありますので、随時手指消毒をお願いしております。

 

④ 手が触れる箇所の消毒

ドアノブ、ウォーターサーバーのコック、各スイッチ、各種備品、ベッド、枕、治療器具を、一度使用する度に70%エタノールで消毒しております。

 

⑤ 24時間換気

常時換気扇を稼働させており、定期的に窓と扉を開放しての換気を行なっております。

 

⑥ 「密閉」「密集」「密接」の防止

ソーシャルディスタンスに配慮し、極力、患者さん同士、スタッフ同士が密集対面しないよう予約と取り方に配慮し、導線を工夫しています。

  • 当院は、各治療ブースが独立しており壁で仕切られています。半個室(天井が空いておりそれ以外は完全個室同等)と完全個室(換気可)がございます。
  • 完全予約制のため平常時から基本的に患者さん同士が密集、密接する状況にはなりません。
  • ご予約時にお申し出いただくことで、治療を受ける環境(完全個室あるいは半個室)のご希望に応じてご案内することも可能です。ご来院後に、環境をご覧になってからご変更いただくことも可能です。(予約状況によります)

 

⑦ 直前のキャンセル・変更への対応

通常、ご予約のキャンセルや変更は、予約日前日の午前中までにお願いしておりますが、患者さんが体調不良をご自覚された場合は、当日または直前の場合でもキャンセル料や変更料は無しで承ります。

 

⑧ 患者さんの体調に応じた対応

ご来院いただいた際に、風邪症状が見受けられた場合には、検温をお願いしています。検温の結果、37.5℃以上の発熱が見受けられた場合は、治療を見送らせていただきます。

尚、熱が無く、風邪症状のみの場合でも見送らさせていただく場合がございます。

 

⑨ 治療環境の見学可

はじめてご来院される方など、ご不安がある方は、院内の状態を実際にご覧になってから治療を受けるか検討していただくことも可能です。

突然のご来院にも極力お応えいたしますが、ソーシャルディスタンスの配慮や応対スタッフ確保の関係上、すぐのご対応ができないこともございます。

ご来院に際しまして、電話・LINE・メールにて一度お問い合わせいただけますと幸いです。

 

さいごに

外出自粛やテレワークにより、不調を自覚している方が少なくないようです。

肩こりや首こりをはじめとした筋肉や筋膜の過緊張は、「病気」ではありません。ですが、一時しのぎを続けることで、慢性化してしまい、まるで病気のような症状が出て不調に陥り、日常生活に支障をきたしてしまうということもございます。

少しほぐしてラクになれば良いのですが、ラクにならなければ、ラクにならない理由があるはずです。そのような場合は、軽視せず、是非きちんとした対処をしていただきたいと思います。

 

肩こり・首こりなどの筋肉や筋膜の過緊張、肩関節の痛みは肩こりラボの専門領域です。皆様の不調の改善、そして健康増進のお役に立てますよう、当院一同真摯に治療いたします。

まずはお気軽にご相談くださいませ。

 

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


首・肩・背中のひどい凝りと痛みが慢性化して約7年間も続いてしまっているケース|ケースレポート

概要

仕事柄うつむく姿勢を長時間しなければならず、元々首肩の疲れや凝りを自覚していたが、年々ひどくなってきており、ある時背中を傷めてしまったことがきっかけで状態が悪化して、痛みや可動域制限等も生じるようになってしまった。

H様 / 東京都在住 / 39歳 / 女性 / 会社員(研究職)

症状

・首こり、肩こり、背中こり
・頭痛
・首から背中の痛み
・首が回らない(首の可動域が狭い)
・手の痺れ、握力低下

 状態

もともと肩こりはあったが約7年前から徐々に悪化してきて、年に2~3回はとてもつらい状態になり、頭痛も出てしまう。仕事は研究職で、顕微鏡を眺めることが多く、加えて長時間のPC作業。

半年くらい前、カバンを持った時に背中がピキッとして痛くなった。以前から、首の動きはよくなかったが、背中を傷めてから痛みでさらに可動域が狭くなってしまった。横を向くことと、上を向くのが制限されている。

整形外科に行ったところ、レントゲンでは異常がなく、湿布と痛み止めを処方された。しばらく様子をみたが、良くならなかった。

とてもつらかったため、マッサージや鍼に行くようになった。

鍼やマッサージを受けると、治療後はラクになるが、翌日にはつらい状態に戻るということを繰り返している。現在は、背中の痛みは最初よりはマシにはなったが、まだ完全に治ってはいない。

首肩背中の広範囲が慢性的に凝っていて、首の可動域も相変わらずせまく、痛みが出る。最近、腕から手にかけてしびれが出てきて、力が入りにくくなったため、再度整形外科にいった。レントゲンとMRI検査を受けて目立った異常はなかったため、リハビリをするように勧められた。

リハビリに、週2回、1ヶ月通ったが、状況に変化はない。

このままだとダメだと思い、根本的に治すために治療院を探していた。

見立て

病気が元になっている症状ではないかの確認

今回のケースは、肩から背中の痛み、首の可動域制限、腕の痺れや握力低下といった症状があったため、頚椎椎間板ヘルニア・頚椎神経根症といった整形外科的な疾患や脳神経外科領域の疾患が元になって症状が出ているのでないかの確認が必要となる。

当院受診の前に医療機関を受診して、疾患が無いことが確認されていたため鍼灸マッサージ治療の適用とした。

診察にて、以下5つを確認

  1. 問診
  2. 触診(炎症所見の確認、圧痛部位の特定、筋緊張の確認、筋肉量の確認)
  3. 可動域
  4. 筋力
  5. 姿勢

1.問診

症状が出たきっかけ、思い当たる原因、発症から現在までの経過、生活習慣と症状の関連性、日常生活動作 等 過去から現在の状況について詳しくお伺いした。

2. 触診

自覚部位の僧帽筋、肩甲挙筋、頭半棘筋、胸鎖乳突筋、板状筋の硬さが顕著であった。症状を自覚する部位に、筋硬結と圧痛を確認することができた。

その他、ハムストリングス、大腿前面、肩甲骨外側筋群、胸筋群、上腕二頭筋の過緊張が見受けられた。

ハムストリングス、大腿前面の硬化は股関節の可動域低下を招き、不良姿勢を招く要因となり、上半身の力みに繋がると考えられる。

上腕二頭筋や胸筋群の過緊張は肩甲骨を外転・前傾させ、肩甲骨外側筋群の過緊張は肩関節が内旋させてしまうため、「巻き肩」を招くことになる。

3. 可動域

頚椎、股関節、胸椎、肩甲胸郭関節の可動域が、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の定める参考可動域に満たないことが確認できた。

  • 頚椎:屈曲、伸展、側屈、回旋、全ての動きで10°動かすと首から背中までの痛みが出現し、再現できる。
  • 股関節:両足屈曲45°、伸展0° 。曲げるのも伸ばすのもどちらも可動域が低い。
  • 胸椎:他動運動、自動運動どちらも伸展が不可。
  • 肩甲胸郭関節:常時外転挙上位、自分自身で内転が不可。内転させようとすると頚部と上肢が過剰に緊張する。

 

Joint by joint theory によると、関節には「可動性(Mobility)」と「安定性(stability)」という役割があるとされています。

  • モビリティ関節 (Mobility joint)   : 動作の際に主に可動する関節
  • スタビリティ関節 (Stability joint): モビリティ関節が可動するのを支える、モビリティ関節に伴って可動する関節

たとえば、胸椎や股関節はモビリティ関節に該当する。H様の場合は、本来可動するべき胸椎や股関節の可動域が著しく低下してしまっており、その代償としてスタビリティ関節である頚椎に可動を強いることになり、過負荷が生じてしまっていることが推測された。

4. 筋力

各種筋力テストにより、腹筋群(特に腹横筋)、大殿筋、上背部の脊柱起立筋の筋力低下が確認された。これらは姿勢を保持するのに重要な役割を持つ。

5. 姿勢

立位、座位の姿勢を確認した。

立位姿勢は、Kendall姿勢の分類における Sway back(後弯平背姿勢)が見受けられた。スウェイバック姿勢とは、横から見ると、頭部が前方に移動し、頚部は軽度伸展位、胸椎は丸まり上半身の後方移動を伴い、骨盤後傾位の状態。

一方、座位は、骨盤が後傾し、頭部前方位。横から見ると、C字に丸まってしまっている姿勢が見受けられた。

しびれと握力低下についての考察

頚部の動きと痛みを観察したところ、動きに伴い首から背中にかけての痛みは再現されるが、全動作を通して腕の痺れは再現することはできない。また、診察時は握力低下も見受けられなかった。

腕の痺れや握力低下は、実際に物も落としたり手作業ができなくなるというわけではなく「動かしづらさ」を自覚する状態。仕事が忙しくなり、肩こりや首こりが酷くなると出現するとのことで、「凝り」に伴って出現するという特徴がある。

診察時に握力を確認したところ、特に減弱している所見は見受けられなかった。整形外科にてMRI検査を踏まえて器質的な疾患(頚椎椎間板ヘルニアや変形性頚椎症 等)や他の病気ではないことが確認されているため、身体所見、徒手検査、経過をふまえて、手のしびれ感と握力低下は、首から上肢にかけての筋疲労や筋の過緊張による「しびれ感」「握力低下感」であると予想した。

首・肩・背中にかけての凝りや痛み、首の可動域制限についての考察

自動運動と他動運動の際の、可動域の違いや痛みの出方を調べた。
※自動運動は、患者さん自分自身で動かすこと。他動運動は、セラピストが動かすこと。

自動運動に比べ、他動運動では痛みは少し軽減した。このことから痛みが軽減したことから頚椎の椎間関節の問題である可能性は低いと予想した。

しかし、わずかながら痛みが出現することから頚椎の椎間関節の問題が完全に除外できたわけではなかった。現段階では筋肉硬化による問題、関節の問題が考えられた。

整形外科で画像検査をふまえて構造的な異常がないことが確認されていること。
今まで鍼やマッサージを行なって悪化はしていないこと。
頚椎が動かせないほどの激痛ではないこと。

上記3点に加えて、当院での検査所見をふまえて総合的に考慮し、頚部周辺の筋緊張、頚椎周囲のインナーマッスル機能低下、頚椎椎間関節の機能低下が痛みや症状を招いている可能性があると考えた。

首こり・肩こり・背中こりについての考察

関節機能の低下や体幹筋力の低下によって、不良姿勢と不良動作を招き、安静時・業務時問わず反復継続的に首肩の筋肉に負担がかかってしまっていることが慢性的な凝りの原因であると推測した。

痛みに関しては、こりが酷くなるにつれて生じることから、筋筋膜性疼痛症候群 (Myofascial Pain Syndrome:MPS)や、頚椎や胸椎の椎間関節の機能不全(関節の動きの不調)の状態と推測した。

動作時に痛みがある場合は身体の使い方を根本から解決しないと良くならない傾向があるため、治療は通常よりも長期的になることが予想できた。仮説を説明し、同意を得られたため、治療を開始した。

治療

初期治療:主な目的は症状緩和。頻度は7~10日に一回。

初回の治療

しばらく鍼やマッサージにいっていないため、自覚症状として、今非常につらい状態。(NRS 10)
※NRS:Numerical Rating Scale。痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

自覚症状部位に対して3D鍼、IDマッサージを行った。続いて姿勢改善のために、姿勢を崩していると考えられる胸筋群、上腕二頭筋、ハムストリングスにIDマッサージを行った。

セルフケア(日常生活の意識)として、座位時、立位時の不良姿勢改善を試みたが、関節可動域不足と筋力不足で正しい姿勢自体をとることが困難だったため、正しい姿勢をとる前段階と判断した。

そのため、初回のセルフケアは、胸椎の伸展可動域が向上させるためのタオルを用いたストレッチ、座位時の骨盤後傾姿勢の改善のための良好姿勢保持の要点とコツをお伝えした。

2回目の治療

初回治療から1週間後のご来院。前回治療後、少しラクになったが少しずつ元に戻っていき、完全に元どおおりでははいが、前回受診前に近い状態。(NRS 10→9.5)

処置は、初回よりも、患部に対して少し多めに3D鍼を行ない、本日から原因療法として運動療法を開始した。

正しい立位姿勢・座位姿勢をとるのに必要な関節可動域を出す為に背中(胸椎)、もも裏(股関節伸筋群)の静的ストレッチと動的ストレッチを行なった。また、体幹筋力強化のため、お腹(腹横筋)と臀筋(大殿筋)の筋力強化を行った。

セルフケアは同じ。鍼やマッサージでほぐして症状が緩和した状態をキープできるよう、とにかく立位、座位を、力むことなくラクにとれるようにすることが課題である。

3回目の治療

前回から10日後のご来院。1週間は効果がもったが、その後、段々戻ってきた。(NRS 8)

症状緩和に変化が出たことから、3回目の治療も2回目同様、患部に対して多めに鍼治療を行なった。

運動療法では、腹部(腹横筋)と臀部(大殿筋)を入念に筋力トレーニングを行なった。運動療法の時間は、前回は10分間だったが、今回は15分間行なった。

セルフケアストレッチの効果で関節可動域が改善したため、正しい姿勢をとった際の力みが軽減した。そのため日常生活で、なるべく正しい姿勢(立位、座位)を保つよう意識をしていただくことをお願いした。

4回目の治療

前回と同様の経過で本日に至る。悪くはなっていないが状況は大きく変わらない。(NRS 8)

首肩の症状を抱えている箇所だけでなく、筋膜の連結のある背中から腰、上肢にかけても鍼治療を行った。

運動療法は、20分間行なった。

セルフケアは、細かい修正をしたが、おおきく変えず今行なっていることをきちんと定着させることとした。

5回目の治療

この時も大きく状況が変わらなかった(NRS 8)ため、鍼治療の刺激を強めにすることを決断。

この日は、これまで以上に首肩に対して入念に鍼治療を行った。首肩への3D鍼はいつもの倍、時間かけた。

本日運動療法は、セルフケアの確認のみで、105分間ほぼすべて鍼とマッサージにて全身をほぐすことに特化した治療を行なった。

6回目の治療

前回後、二日間「揉み返し」のような筋肉痛が続いたが、その後、これまでと異なり、とてもラクになったのを実感した。

10日経った今の時点でも状態は良好で、痛みは無い状態。こりが少し気になるが、当初と比べると格段にラクな状態まで症状の程度が下がった。可動域制限やしびれ、握力低下、頭痛も無し。(NRS 2~3)

前回同様、3D鍼で入念に首肩背中をほぐし、下肢や上肢はマッサージとストレッチを組み合わせた処置を行なった。

中期治療:主な目的は体幹筋力強化・身体の使い方・姿勢と動作の改善。頻度は2週に一度(セルフケアができる場合)。

7~18回目の治療

前回の治療でさらにもう一段階ラクになった実感あり。症状を感じない時間が増えてきた。前回からの期間を通して、低水準で安定(NRS 0~3)。

症状の緩和とコントロールが可能になったため、今回から中期治療に移行する。

運動療法に重きを起き、筋力強化、可動域改善、使い方改善を図る。

 

処置の内容として以下をH様の治療の基本形式とした。

  • 鍼マッサージ治療は75分間(上半身へのアプローチはほぼ3D鍼のみ、股関節から脚にかけてはIDマッサージ)
  • 運動療法は30分間(体幹の強化)

セルフケアは、症状解消目的のものから、身体造りのためのメニューの割合を増やした。

 

今回以降、中期治療として、約2週間の頻度で12回の治療を行なった。

後期治療:主な目的は自己管理能力の体得・治療からの卒業準備。頻度は段階的に拡大。

19回目の治療

症状は安定(NRS 0~3)しており、つらくない時間の方が長くなってきた。仕事が立て込むと、一時的につらくなるが、セルフケアをして就寝することで、翌日に持ち越さなくなった。

H様の自覚的にはとても良好が状態をキープできているとのこと。

客観的に見ても、姿勢が改善し、首肩の負担が軽減していることが見受けられる。セルフケアも日々行うことができているため、今回以降、後期治療に移行することになった。

後期治療は、自己管理と治療からの離脱が目的となる。

次回は、3週間後とし、問題がなければ、段階的に頻度を拡大していく。

20~22回目の治療

3週間、治療の間隔をあけて問題なし。(NRS 0~3)

セルフケアをきちんと実行できているため、以後治療の間隔を21回目は4週、22回目は5週、23回目は6週と段階的に間隔をあけていく。

23回目の治療

治療の間隔が1ヶ月以上になると、途中、疲労がでることはあったが、セルフケアで解消することができ、以前のようなひどい痛みや凝りにでつらくなることはなかった。(つらくなった時にセルフケアをやろうと思えたこと、セルフケアで症状を解消できたことがこれまでと違った)

次回は2ヶ月後。

24回目の治療

問題ない状況。ゴールの相談をしたが、念のためもう一度、2ヶ月あけてみることになった。

25回目の治療(ゴール)

さらに2ヶ月あけても、症状安定。一過性に症状がでてもつらい状態にはならい。

忙しくて少し気になってもセルフケアでリカバリーができる状態。

症状に悩まされることがなくなり、自己管理できる状態となったので、治療をゴールとした。

コメント

本症例は、凝りだけでなく痛みもあり、非常に慢性化してしまっていました。またお仕事柄とても簡単に負担を減らすことができないということもあり、数回で完治するような軽症例ではありませんでした。

ゴールまで約2年(治療回数25回)かかりましたが、あきらめずに継続したことで、日に日にひどくなって約7年間も続いてしまっていた「つらい凝りと痛みのある生活」から脱することができました。

様々な施術を受けてきたが良くならなかった慢性的な症状が、なぜ完治に至ることができたのでしょうか。

治療の要点は2つあると考えられます。

1)しっかりとした刺激の鍼治療を行った

ひとつめは、中途半端な刺激ではなく、しっかりとした刺激で鍼治療を行い、徹底的に筋肉をほぐしたことです。

当初から鍼を用いて、筋肉をほぐしておりましたが、「かえし」とよばれる副作用面とのバランスを考慮して、極端に強い治療は行なっておりませんでした。

中程度の強さの鍼治療によって、一定の効果はあるものの、症状の緩和という観点からすると前進できていない状況でした。

そこで5回目の治療時に、「かえし」が強く出る可能性があることを説明し、H様の同意が得られたため、強めの鍼治療で、しっかりと首肩背中の筋肉へアプローチを行いました。

この強めの鍼が功を奏して、症状が急激に解消されました。これが転機となり、治療を進めることができました。

 

対症療法はネガティヴな印象をもたれがちですが、根本的な改善のための第一歩として、重要です。

H様におかれましても、H様に適した対症療法がきちんとなされていなかったために、症状がすぐにぶりかえしてしまうなど慢性化してしまっていたのだと考えられます。

症状が解消されたために、姿勢も維持しやすくなり、セルフエクササイズに取り組みやすくなったということもあるでしょう。

 

このようなことから、思い切って強い治療に踏み切って、症状の解消をできたことが、一つ目の要点と考えられます。

誤解のないように付け足しますと、誰でも強い治療をすれば良いというわけではございません。H様にとっては、今回行なった強さが「適した刺激」であったということです。

大切になのは、個々の患者さんにとっての「適した刺激」を行うことです。

2)姿勢意識を徹底していただいた

H様は、お仕事柄首や肩に負担がかかりやすい状況で、仕事中はうつむく姿勢を取らざるを得ず、理想的な姿勢を維持することは症状や身体のコンデションに関係なく困難でした。

そのため仕事以外のシーンにて姿勢に気をつけてお過ごしいただくことをご提案させていただきました。

一日の仕事が約10~12時間、睡眠を6時間とすると、残りの約6時間は移動やプライベートの時間となります。今までは仕事以外のこの約6時間も、常に不良姿勢で首や肩に負担をかけ続けてしまっていました。

この約6時間だけでも、首肩に負担へかかりにくい姿勢を意識して生活していただくことで、今まで16~18時間負担をかけていたものが、10~12時間になります。すると単純計算ではありますが、3〜4割程度の負担が軽減することになります。

仕事中柄、うつむかないということは不可能なわけなので、これならば出来そうということで、H様も納得してくださり、ご協力くださいました。

これによって常にかかっていた負担が軽減していき、症状がすぐに戻ってしまうということの抑制につながりました。

そして、はじめは強く意識しなければできなかった理想的な姿勢が無意識でもできる状態に定着していきました。するといつのまにか、仕事中もうつむかないで良い時間は良い姿勢になっていることに気がついたそうです。

 

生活スタイルは個々で違うのが当然なように、皆一様に生活全てで姿勢を気をつけるべき(姿勢が維持できないから治らない)と決めつけるのではなく、個々の生活を考慮してそれにアジャストさせることが大切だと考えております。

このように、できることからスタートし、まずは仕事以外での負担を徹底的に減らす方針で原因療法を行ないました。H様はとても努力してくださり、改善につながりました。

完治に至れた理由

ひとつ確かなことがあります。

それは、完治できたのはH様の「治したい」という気持ちと努力のおかげということです。

慢性的な症状を改善させるためには、(現時点では)手っ取り早く手間をかけずにやることは困難で、患者さんの努力が少なからず必要となります。

今回の治療は、はじめはなかなかわかりやすい効果を感じることができませんでしたが、そこであきらめず、約2年間という長い期間、しっかりと計画に則り、治療に取り組んでくださいました。

当初はとてもおつらい状態で、大変だったと思います。お伝えしたことを毎日地道に行なってくださりありがとうございました。

約2年間の治療、本当にお疲れ様でした。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


20年来の慢性的な首こりと、凝りに伴う頭痛がでゴールに至ったケース|ケースレポート

概要

整体とパーソナルトレーニングにより、一時のひどい状態からは改善したが、頭痛を伴う首こりによって仕事や日常生活に支障をきたしてしまっている。

O様 / 東京都在住 /  52歳 / 男性 / 会社員(管理職)

症状

・慢性的な首こり
・頭痛

状態

20年くらい前から肩こりと首こりで、様々な施術を受けてきた。

様々受けたなかで、肩こりや首こりを専門とする整体と、整体とは別のトレーナーによるパーソナルトレーニングに行き着き、この二つを併せて行うことで、かなり改善した(NRS 10→5)。
※NRS:Numerical Rating Scale 痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で表す評価方法。

今は、もうほとんど肩こりの自覚はなく、姿勢も改善したという自覚がある。

姿勢はいつも気をつけているし、ゴルフやウォーキングなどの運動、日々のストレッチも行っているため、日常生活は特に問題がないと自覚している。

最も悪かった時から比べると今は5割ほどの状態だが、首こりだけがどうしても改善しない。肩こりは無いが、首がつらい。

首こりがひどい時は頭痛がして、仕事や日常生活に支障が出てしまう。頭痛は主に右の後頭部から頭頂部、両側のコメカミに生じる。

いくつかの病院で脳や首の検査を受けたが、異常は見つからず、おそらく凝りのせいだろうといわれた。整体で、強く押してもらうと気持ちが良いが、奥の芯の様な凝りが解消されず、改善には至らない。

見立て

【頭痛について】

まず、頭痛があるということで、命に影響を及ぼす疾患の可能性を考慮しなければならないが、当院初診一ヶ月前に、医療機関を受診して専門医の診察を受けて特に病気は無いといわれており、この間も症状に変化がないということから、再度の医療機関受診の必要性は低いと判断した。

触診により、首の後ろから横にかけての筋肉(僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋)や、頭部の筋肉(側頭筋、前頭筋、後頭筋)が緊張していることがわかった。

頭の感覚を担う神経は、首に由来するものがある。大後頭神経、大耳介神経、小後頭神経である。これらは頚椎から出て、首の筋肉を貫いて、頭にむかうため、首こりによって頭痛になることがある。首こりによる大後頭神経痛はその一つである。

また、頭部にも筋肉(前頭筋、側頭筋、後頭筋)があるため、眼、顎、首の酷使によって、これらの頭の筋肉自体が硬くなり、頭痛を招くことがある。このような頭痛が緊張性頭痛である。

本件の場合は、複数の医療機関で検査を受けて、脳や首に異常がないことが確認されており、且つ、症状のある部位の筋緊張が見受けられたため、頭痛は首こりや頭こりによるもの(頭部の筋肉自体が緊張して生じる頭痛と首こりによって大後頭神経が圧迫されて生じる頭痛の混合)である可能性が高いと推測した。

【首こりを招く要因について】

診察時の様子からも、とても姿勢には気をつけていることがうかがえた。

ところが、背スジをピンと伸ばしてはいるが、顎を強く引きすぎてしまっていた。顎を引くと見た目は美しく見えるが、首は力んでしまう。喰いしばりも強くなり、側頭筋が緊張し、頭こりや顔こりにつながってしまう。

真っ直ぐに伸びることを強く意識しているため、見た目は美しいが、力みが強い姿勢といえる。この力みにより、首や頭の筋肉に負担がかかり、凝りが生じてしまっていると考えた。

仕事のストレスが多いことから、ストレスによる凝りもあると思われるが、肉体的な負担がかかっていることも明らかなので、まずは肉体的なものを改善させる方針とした。

治療

慢性的な首こりの解消のために、今まで強いマッサージを受けても解消しきれなかったため、初回から鍼治療を行った。

3D鍼で首の浅層から深層まで筋肉(僧帽筋、半棘筋、板状筋、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋)をひとつひとつほぐした。特に緊張が強い部分(半棘筋、板状筋)は、3D電気鍼(低周波鍼通電療法)も行った。

頭こりや顔こりは、マッサージで丁寧にほぐした。加えて、首と関連性が高い、背中や腰筋肉、肩甲骨の筋肉をマッサージで入念にほぐし、股関節と肩甲骨柔軟性改善のために、ストレッチを行った。

首こりは、1回の治療で、奥に芯となっているように感じていた慢性的な凝りが解消されたとのこと(NRS 1以下)。これにより、これまで週に2~3回は頭痛があったが、2回目の治療までの1週間で、一度も頭痛が出なかった。

首こりの解消も一時的なものではなく、一週間経過時点でも楽な状態が続いている。

 

首への負担を減らすために、原因療法として、同時に姿勢の改善も行った。

運動を行っているため、個々の筋力は十分だったので、それらを効率よく連動させる使い方の練習をした。姿勢の要点も確認して、首や肩に負担をかけない姿勢を体得していただいた。

一週間頻度で3回の治療で症状がほぼ無くなり、治療の内容を姿勢改善に重きをおくようシフトした。

4回目は2週間後。5回目は4週間後としたが、症状でつらくなることはなく、計5回の治療でゴールに至った。

コメント

本ケースの要点は二つあります。

一つ目は、対症療法。首こりや頭痛の元となっていた首の深層筋の凝りをくまなく解消することです。

O様は、これまでもマッサージ等の手技療法により、体の表面からは凝りのポイントに対処をしていました。実際、つらいところを強いマッサージでほぐしてもらうと、少しは楽になっていました。

ですが、いくら首を集中的にマッサージしても完全にすっきりすることはなく、翌日には戻ってしまう状態でした。一方、鍼治療も受けてはいましたが、翌日には戻ってしまうということに変わりはありませんでした。(鍼治療は、ツボや経絡に対して鍼をうつ東洋医学的な手法だったため、患部には直接的に刺してはいなかったとのことです。)

O様がこれまで受けてきた、凝りをほぐすための治療は、凝りのある皮膚上や、遠隔部から間接的には患部に対して対処をしていましたが、皮下にある「凝り」そのものに対して直接的なアプローチがなされていなかったということが想定されました。

そのため、対処を繰り返しても、凝りの「芯」が解消しきれず残ったままだったので、治療を受けてもすぐにぶり返してしまう状態だったのではないかと考えました。

全てではありませんが、慢性化している深層筋の凝りは、マッサージなどの体外からのアプローチでは解消しきれない場合が少なくありません。マッサージで解消しきれず慢性化してしまっている場合は、直接的にアプローチが可能な鍼が有効です。

鍼治療の技法は様々ありますが、このような筋肉性の場合は、ツボや経絡ではなく、対象となる筋肉に直接刺す手法が功を奏することが少なくありません。

O様の場合は、凝り固まってしまっている筋肉を鍼で直接ほぐしたところ、すぐに慢性的な状態から脱することができました。

O様の状態をひとことで言うと、ほぐし不足により慢性化してしまっていた、といえます。

 

二つめは、原因療法。首や肩に負担をかけない姿勢を理解し、体得することです。

実は、背筋をピンと伸ばして顎を引くという見た目が美しい姿勢と、首や肩に負担をかけない姿勢は、異なるものなのです。

O様は、姿勢を正そうと、とても意識をしてくださっていましたが、それが裏目に出てしまっていました。姿勢を正そうとすることで、かえって首を力ませてしまい、良かれと思って行っていたことが、かえって負担となってしまっていたのです。

O様は、日々運動をしていることから、柔軟性や筋力など基本的な要素が概ね良い状態でした。それ故に、簡単な補強運動と、体の使い方を練習し、姿勢のコツをお伝えすることで、すぐに正しい姿勢を身につけることができました

とはいえ、新しいことを体得するということはたいへんなことです。日常生活にて意識を続けてくださったことで、原因療法がスムーズに進み、早期にゴールに至ったと考えられます。

 

 

 


執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。