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肩こりに関わる筋肉「抗重力筋」とは?

みなさんは肩こりに悩まされたことはありませんか?

多くの方が悩む肩こりを考える上で知っておきたいのが「抗重力筋」という筋肉です。ここでは抗重力筋について解説するほか、抗重力筋の仕組みをふまえた肩こり対策も見ていきたいと思います。

抗重力筋とは?

日常生活を送るためには、重力に逆らう必要があります。そのとき、知らず知らずのうちにさまざまな筋肉を使っていますが、その中でも特に必要な筋肉群を「抗重力筋」といいます。この抗重力筋のおかげで、さまざまな姿勢を保持して生活ができているのです。

多くの人にとって聞きなれない言葉かもしれませんが、実は人間が生活をしていく上でとても大切な筋肉群だと言えるでしょう。

抗重力筋に含まれる筋肉

抗重力筋は膝から足首までの部分(下腿)・太もも(大腿)・お腹(腹部)・胸部・首といった体のそれぞれの部位の前後に張り巡らされており、前後に交代しながら伸び縮みをすることでバランスをとっています。

それぞれの筋肉で支えている部分は異なり、主に3つのグループに分類することができます。

・腕を支えている筋肉:上腕二頭筋、僧帽筋上部、大胸筋、小胸筋など

・肩甲骨を支えている筋肉:上腕三頭筋、上腕二頭筋、三角筋、僧帽筋上部 など

・体幹を支えている筋肉:腸腰筋、腹筋群、脊柱起立筋群など

姿勢の保持には抗重力筋が必要である

抗重力筋に含まれるのは、それぞれ生活していくうえで姿勢を保持するためには欠かすことができない筋肉ばかりです。

たとえば、立ったり座ったりするだけでもどれかの抗重力筋が働いており、大腿四頭筋は膝を伸ばす働き、大臀筋は太ももを後ろに振る働き、背筋群と腹筋群の2つの大きな筋肉群で上体を支えています。

もちろん、頭を支えるだけでも首の筋肉は支えるために働き続けています。

抗重力筋は休むことなく使い続けられているため、ほかの筋肉と比べると疲れやすかったり、こりやすかったりするとも言えるでしょう。

肩こりと抗重力筋

身体の「こり(凝り)」の中でも、特に悩む人が多い症状が「肩こり」です。

抗重力筋が本来の“正しい状態”にある場合、筋肉群である抗重力筋がバランスを取り合うことで自然と歪みが直り、正しい姿勢をキープできます。しかし日常生活の中の動きで体の姿勢に癖がついた場合、抗重力筋が“歪んだ姿勢の状態”を記憶してしまうことから体の特定部位に負荷をかけやすくなり、慢性の腰痛や肩こりを引き起こすことになります。

参考:抗重力筋 | e-ヘルスネット(厚生労働省)


特に現代はパソコン・スマホ・タブレットを使うのが当たり前です。多くの場合、画面を見るために首が下に向いたままになっていたり、同じ姿勢でずっと過ごしていたりします。それと同時に画面を長時間観ています。これらのパソコンやスマホなどを使用しているときの姿勢や行動の歪みも抗重力筋に影響し、肩こりの原因の1つとなりうるのです。

また首は5kg~6kgもある重い頭をずっと支えており、そのままでも肩こりの原因に繋がるケースもあります。さらにパソコンやスマホなどを使うために下を向いたり、キーボードを打つために腕を酷使したりしているのです。また、日本人は欧米の方と比べると体格が小さいにもかかわらず重い頭を支え続けているため、欧米の方より肩こりを訴える方が多いことが特徴とも言えるでしょう。

そして人間は無意識のうちに重力に逆らって生活しています。重力に逆らって生活すること自体、体に負担をかけているのです。

他にも、冷え・運動不足・ストレスなども肩こりにつながります。昔と比べると首に負担をかけたり体を動かさなかったりすることが、現代は肩こりを訴える方が多い理由だと考えられています。

抗重力筋は衰える

加齢に伴って筋肉が萎縮することを「廃用性筋委縮症」(サルコペニア)といいます。筋肉は運動不足や加齢が原因で衰えます。抗重力筋が衰えると、肩こりだけではなく歩く・立つ・座るなどの生活をしていく上で当たり前に行っている動作ができなくなります。

加齢と共に動きがゆっくりになる方も多いですが、これは抗重力筋が衰えていることが原因の1つにあります。例えば大腿四頭筋の場合、80歳代の筋肉量と30歳代の筋肉量を比べると80歳代になると半分まで低下することが分かっています。さらに抗重力筋が衰えると日常生活の動作ができなくなり「廃用症候群」になります。

動作が不自由になる前に、肩こりや腰痛などの症状が出てしまい生活に影響が出ることもあるでしょう。「たかが肩こり、されど肩こり」で、肩こりから頭痛や吐き気につながり仕事や勉強に集中できなくなります。さまざまなパフォーマンスが低下することもあり、肩こりを放置してはいけません。肩こりは若い方でもなるため、必要な対策を講じることが大切です。

抗重筋の仕組みをふまえた肩こり予防

ここまでは抗重力筋の役割や、抗重力筋と肩こりの関係について解説しました。それをふまえた肩こり予防法をいくつかご紹介しましょう。

正しい姿勢を維持する

パソコン・スマホ・タブレットは便利なツールですが、いつの間にか体に負担をかけ肩こりになってしまいます。肩こりにならないためには、正しい姿勢を維持することが大切です。さらに、筋肉の疲労だけではなく目の疲れ(眼精疲労)も関係しています。

パソコンやスマホなどを使っているときの姿勢は、肩が体の内側に入り体をすぼめている状態です。この姿勢を続けていると首から肩、場合によっては胸筋まで疲れてしまい肩こりや血流の悪化などが起こります。

さらに、細かい文字を見続けていると目の周囲にある筋肉が緊張し、首の筋肉まで緊張が伝わります。集中して画面を見続けていると、瞬きの回数も減少します。さまざまなことが積み重なって、肩こりになります。仕事や勉強のためにパソコンやスマホなどは必須アイテムです。そのため肩こりにならないためには、1時間ごとに休憩したり意識して正しい姿勢を維持したりしましょう。

参考:肩こり・首こりが気になる方が意識すべき、パソコン作業時の適切な姿勢(座り方)とデスク環境とは? 厚生労働省のガイドラインをふまえて解説します。

抗重力筋のバランスを整える

抗重力筋のはたらきをサポートするためにも、適切な運動により筋肉を鍛えたり、バランスを整えたりしていくことが重要です。

なお運動には様々な種類がありますが、どの運動を取り入れても一度に鍛えることはできず継続する必要があります。「継続しやすいかどうか」という観点もふまえて選ぶと良いでしょう。

まずは定期的にストレッチを行い筋肉の緊張をほぐしましょう。一定の姿勢を続けると抗重力筋の収縮や疲労に繋がるため、バランスをくずしやすくなります。

そして適度にウォーキングやジョギングを行ってみましょう。運動によるケガの心配がある場合、もしくは運動する時間がとれない場合は、日常生活の活動量を増やすだけでも効果を期待できます。

さらに負荷の高い運動が好みの方は、スクワット・腕立て伏せ・腹筋などのレジスタンス運動も合わせて取り入れましょう。レジスタンス運動とは鍛えたい筋肉に的を絞り、負荷をかける運動のことです。

ただし抗重力筋はバランスが大切です。一部だけを極端に鍛えるとバランスがくずれ、かえって逆効果になる可能性もあるでしょう。

関連ページ:肩こり・首こりの根本解消に有効なエクササイズとは(運動学・バイオメカニクスの観点から)

関連ページ:肩こりラボのパーソナルトレーニング・運動療法について

まとめ

今回は抗重力筋についてお伝えしました。抗重力筋は大切な筋肉群であり、正しくバランスを整えると肩こり対策だけではなく様々なメリットがあるかもしれません。

また運動には抗重力筋の調整だけではなく、気分転換・ストレス発散などの効果も期待できます。筋肉を鍛えることで血行が改善されれば、冷えの対策もできるでしょう。

人間の筋肉は互いに影響し合っているため、1つの行動が様々な結果に繋がる可能性も考えられます。


執筆者:伊藤 美里
Misato Ito

盛岡医療福祉専門学校卒業
日本医学柔整鍼灸専門学校卒業

鍼師・灸師
柔道整復師

学生時代バレーボールに打ち込み、当時自分の心の支えとなったアスリートやアーティストに携わる仕事をしたいと思い、「身体の治療・ケア」する道を選びました。
日々患者さんの治療にあたる中で、さらに治療の引き出しを増やすべく鍼灸師の資格を取得。
解剖学的な構造、運動学、最新のエビデンスの理論を基におひとりおひとりの「何が原因か」を追究し、よい治療をご提案できるよう努めてまいります。


今年、特に要注意な「寒暖差疲労」とは? 季節の変わり目に体調を崩す方必見!

はじめに

「寒暖差アレルギーなら聞いたことがあるけど、寒暖差疲労という言葉は初めて聞いた」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

寒暖差疲労は、実は、コロナ禍になった現在の方が発症するリスクの高い症状なのです。

 

なお、「寒暖差疲労」は、正確には医学的に認められた病名ではなく、医学用語でもありません。

 

しかしながら、季節の変わり目や寒暖差が大きい時期に不調が生じ、お困りの方は少なくなくありません。

 

そのため、正式な病気ではありませんが、「寒暖差疲労」という状態はあるものと考えられます。

 

このような不調がどのような原因とメカニズムで生じているのか、さらに4つのタイプへ分類し、それぞれへの対処法を解説いたします。

 

寒暖差疲労と考えられる諸症状でお悩みの方のお役にたてましたら幸いです。

 

 

「寒暖差疲労」とは

原因

寒暖差疲労とは、簡単に言えば「大きな気温の変化に体がついていかない状態」です。

 

外気温変化に慣れていない状態で、外気温変化が大きくなると、体温調節を過剰に行わないといけなくなり自律神経系が過活動を起こします。

 

これが”繰り返されること”で、疲労し、自律神経のバランスが乱れ、自律神経失調症様症状が出てしまうのです。

 

 

体温を一定に保つ仕組み

 

私たち人間の平熱は、大体36℃前後〜37℃前半くらいに保たれています。

これは、人間には生命維持のために、外気温の影響を受けないよう、暑い時は体から熱を放出し、寒い時は熱を生み出して、体温を一定に保つ仕組み(ホメオスタシス)が備わっているからです。

 

(対照的に、爬虫類や両生類などの変温動物は外気温の低下に伴って体温も下がってしまうため温度変化の影響を受けにくい地中や水の底にもぐって、冬眠をする必要があります。)

 

多少の温度の変化であれば、このホメオスタシスが機能するため問題はありません。

 

しかし、温度差が5度から7度以上あると、体温を一定に保つため、自律神経の働きが必要以上に活発になります。その結果、自律神経への負担が高まり、疲れやだるさを感じる、というのが寒暖差疲労です。

 

昼と夜との寒暖差が大きくなりがちな季節の変わり目や、暖かい室内から気温の低い室外へ移動する場合などは寒暖差疲労がたまりやすいので注意が必要です。

 

 

メカニズム

 

自律神経は交感神経と副交感神経からなり、さまざまな臓器の機能調整を行っています。

 

例えるなら、アクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)のような関係です。

 

環境の変化に伴い、この二つの働きを適宜切り替わらないといけませんが、スイッチのように瞬時に切り替わるものではなく、本来は緩やかに切り替わっていくものです。

 

 

皆さん、なにか興奮状態になった時を思い出してみてください。

 

その後、なかなか興奮状態が冷めやらなかったり、夜寝付けなかったりしたことはありませんでしょうか。

 

こちらも、自律神経系が関与しているのですが、時間が経過してもなかなか興奮状態が鎮まらないという現象からわかるように、自律神経系は自分の意識ではコントロールできないのです。

 

同じような現象がそれぞれの臓器でも起こります。

 

1日の中で急激に、そして何度も 寒暖差に晒されると、本来緩やかに切り替わる自律神経が過剰に働き、それに伴った臓器に大きな負担がかかってしまい 様々な不調が現れてしまいます。

 

 

現れる症状

以下、主に寒暖差疲労として現れる症状と考えられます。

 

・ 肩こり、腰痛、頭痛

・ めまい、不眠

・ 食欲不振、便秘、下痢

・ イライラ、気分の変化

・ 冷え、むくみ

 

 

 

特に今年は注意が必要な年

自粛生活の副作用

 

新型コロナウィルスの影響により、数年前よりも圧倒的に外出する機会が減りましたね。

 

自粛生活は感染対策として重要な役割を果たしているとともに、私たちの人間の身体にとっては必ずしもメリットだけではありません。

 

 

調整する機能が低下している

主に、寒暖差疲労は、朝(寒い)→昼(暖かい)、室内(暖かい)→屋外(寒い)といったように短時間内で寒暖差に曝露されることにより蓄積されます。

 

しかし、昨年から今年にかけて、ステイホームやリモートワークの時間が増え、通勤時の屋外に出る頻度が激減しました。

 

その為、室内に滞在することが多く、普段の生活で温度差に対応する自律神経の働きが鈍くなり、寒暖差への耐性が弱い人が増えた傾向にあると考えられています。

 

 

 寒暖差疲労4タイプ

 

寒暖差疲労における原因を4つご紹介いたします。

 

以下のチェック項目で当てはまるものをチェックしてみてください。どのタイプの項目に一番多くチェックがはいるでしょうか。

 

ストレスによる寒暖差疲労

こちらは、ストレスを感じることにより交感神経が過剰に働き、身体が過緊張となることにより疲労が蓄積されるタイプです。副交感神経への切り替えがうまくいかず寒暖差による影響を受けてしまいます。

 

<チェック項目>

□首肩こり、腰痛が慢性的

□イライラする

□情緒不安定

□寝つきが悪い、寝ても途中で起きてしまう

□頭痛・めまい・立ちくらみがある

□お腹が張りやすい

 

 

生活習慣の乱れによる寒暖差疲労

こちらは、生活習慣が定まっておらず 自律神経の働きが乱れているタイプです。

ある程度、生活リズムが定まってくると 自律神経の切り替えもルーティン化され、大きな体調の崩れの防止を期待できます。

 

<チェック項目>

□睡眠時間が不規則

□食事の時間が不規則

□お通じのタイミングが不規則

□よく食べすぎたり飲みすぎたりする

□便秘または下痢気味

□昼に居眠りをしてしまうことがある

 

 

運動不足による寒暖差疲労

ここ数年で運動量が減少し、筋力量が減少し体温を作れないことにより寒暖差に影響を受けてしまうタイプです。

普段から筋トレやスポーツなどをしていなくても、通勤による歩行や階段昇降が格段に減った方は要注意です。

 

<チェック項目>

□階段を登ると息切れするようになった

□毎日お腹がすく感覚がない

□数ヶ月で体脂肪率が増加した

□以前より足や腕が細くなった

□コロナの影響でスポーツジムや趣味のスポーツ等を控えている

□元々、運動が苦手だ

 

 

加齢による寒暖差疲労

こちらは、加齢により 以前よりも栄養の吸収能力が衰えたり、運動習慣が減ったことにより筋肉が増えにくいタイプです。

初めは疲れやすいかもしれませんが、積極的に運動習慣を作り体力の向上、意識してタンパク質を多くに摂取することが重要です。

 

<チェック項目>

□疲れやすい

□体がだるく力がない

□身体が冷えやすい

□膝や腰が弱い

□ここ数年で食が細くなった

□周りの人と暖房や冷房の温度が合わない

 

 

 対策

寒暖差を感じやすいシーズンに入る前に、対策をしておくことが非常に大切です。

上記のチェック項目で一番多く当てはまるものはどのタイプでしたでしょうか。

 

ぜひタイプ別に沿った対策をご参考にしてみてください。

 

 ストレスによる寒暖差疲労タイプの対策法

筋肉を温める。

緊張の強い筋肉をカイロやホットタオルで温めましょう。

タイミングとしては、就寝前やリラックスしたいときがおすすめ。リラックス効果のあるラベンダーのアロマオイルなどを併用してみても良いかもしれません。

 

放置しない。

休息をとっても回復しない肩こり・腰痛には治療が必要な症状になっているかもしれません。

ストレッチやフォームローラーなどでセルフケアを行ってもあまり効果を感じられない場合は専門家へのご相談をおすすめします。

 

なお、闇雲にストレッチをすれば良いというわけではありません。よく誤解されている方が多いのは「痛ければ効く」という認識です。

 

正しい知識を持ってセルフケアを行っていただけたらと思います。

 

 

過去のブログ

【肩こり解消を目指す方向け】ストレッチの原則5つ

筋膜リリースを解説します

 

汗をかく習慣を作る。

冷暖房の完備された現代では、体温調節するための「汗をかく」という生理現象をあえて再習得する必要があると考えられます。

 

身体を動かして汗をかくことをおすすめしますが、もしそれが難しいというかたは入浴・またはシャワーの時間で身体を温め汗をかくことでも代用できます。

入浴される方:38〜40°の湯船に15〜20分は浸かりましょう。

シャワーの方:42°くらいのやや熱めのお湯を首や背中(特に、肩甲骨の間)に浴びましょう。30〜60秒。

 

 

生活習慣の乱れによる寒暖差疲労タイプの対策

 

外側からリズムを作る。

毎日決まった時間に体を温め、リズムを作っていきましょう。

朝が流動的になってしまう方は夜に、夜の帰宅時間が定まらない方は朝にルーティンを作るなどして、一度不規則なリズムをリセットしましょう。

(例)寝る2時間前にシャワーを浴びる、朝カイロをお腹に貼る など。

 

 

日中、日光に浴びる。

睡眠や覚醒のリズム、血圧、体温などをコントロールする体内時計は視覚領域から生まれる刺激信号とされています。

朝に日光を浴びることで約16時間後にメラトニンという睡眠ホルモンを分泌するスイッチが入り眠りやすい状態を作ります。

その調整に日光を浴びることで体内生成されるビタミンDが一役買っているとする研究データも出ております。

近年では紫外線による肌トラブルを取り上げられることが多いですが、日光に浴びることは人間にとって とても重要な役割を担ってきたのです。

 

 

排便のタイミングを逃さない。

排便のタイミングも規則正しいリズムを作るひとつです。まずは毎日同じ時間ではなくても、便意を催したときに、自然なタイミングで排便できるように心がけましょう。

 

 

 運動不足による寒暖差疲労タイプの対策

 

散歩や普段の歩行を「運動」にする。

つま先をまっすぐに振り出すことを意識して大股気味に歩くことを意識しましょう。普段より大股で速めに歩くことで、運動効果をより高めることができます。

 

また、普段、姿勢不良が気のなる方は 呼吸法も意識してみましょう。鼻から息を吸いこんで、お腹を凹ますように口から吐き出しながら腹式呼吸を行うとインナーマッスルである「腹横筋」が働きます。

腹横筋は良い姿勢をキープするための要になりますのでぜひ取り入れてみてください。

 

 

自宅でできるエクササイズ

大きな筋肉は、生み出す熱量も大きくなります。

特に臀筋(お尻の筋肉)・背筋群(背中の筋肉)・腹筋群(お腹の筋肉)は筋肉が大きく、ここを日々しっかり使えるようになることで体温を保ち、寒暖差へも耐性があげられることが期待できます。

 

3つ同時に鍛えられる『スクワット』

 

1.  足を肩幅より少し広めに開きます。足の爪先は少し外側に向けます。腕は耳の横にセットし肩甲骨を下へ引き下げましょう。

 

 

2.  股関節を曲げ、お尻を真下に落とすイメージで膝を曲げます。お尻を後ろに突き出し、膝が爪先より前に出ないように椅子に座るイメージです。顔を上げ、胸を張り、背筋を伸ばします。この際、お腹にも力を入れ、腰が反りすぎないように注意しましょう。

 

 

3.  徐々にお尻を落としていきます。最初は無理せず、浅い角度で行ってください。

 

 

 

4. 膝を軽く曲げたところまで立ち上がります。

 

簡単そうに見えて、実は正しいフォームが難しい「スクワット」。

間違ったフォームで続けると、膝や腰を痛める原因になります。正しく鍛えられているかわからないという方は、一度専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

 

 

 

加齢による寒暖差疲労タイプの対策

 

意識してタンパク質を摂取する。

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、

 

高齢者(65 歳以上)では 少なくとも 1.0 g/kg 体重/日以上のたんぱく質を摂取することが望ましいと考えられる。

出典 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)

 

とされています。

 

目安として、豆腐100gに5g、鶏肉100gに25g、鮭100gに22gのタンパク質が含まれています。年齢的に高齢者には当てはまらない方も、1日の総摂取カロリーの13~20%はタンパク質から補うように心がけましょう。

 

なるべく、暖房・冷房に頼らない。

極端に暑い日や、寒い日を除き、あまり空調に頼らないようにしてみましょう。

 

常に快適での生活に慣れてしまうと、自律神経の働きが鈍くなり、寒暖差疲労を起こしやすくなります。

 

また、やむを得ず冷暖房が必要になる時期は空調から送られる気流の調整にも注意しましょう。

 

 

 

 

上記のイラストの2つの気流による室内での休息に関する実験では、「人あて気流」に比べ、「つつみ込む気流」の方が疲労を軽減させるという研究結果が出ています。

 

冷刺激軽減による自律神経機能の調整作用に関与するものだと考えられる。

出典 包み込む気流制御エアコンの健常女性における健康維持及び疲労に対する有用性

 

特に、冷房において 気流の直撃を避けることが肌に感じる冷えを和らげ、自律神経の調整にもつながります。

「風向調整」機能を有効活用し、極力、冷風の直撃を避けましょう。

 

 

 

以上、寒暖差疲労に対するタイプ別対処法でした。

 

寒暖差疲労を起こしやすくなる気温差は、「前日と比較して5℃以上」と考えられています。

 

これからの季節、気温の変動が大きくなりますので天気予報をチェックする際は、「前日比」も意識して生活をしてみてください。

 

 

参考文献

都市における屋外温度の変化が疲労度に与える影響 日本建築学会技術報告集 第 23 巻 第 54 号,563-566,2017 年 6 月

国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センターHP「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」

厚生労働省HP 「日本人の食事摂取基準」(2020年版)

包み込む気流制御エアコンの健常女性における健康維持及び疲労に対する有用性 日本建築学会技術報告集 第 23 巻 第 54 号,563-566,2017 年 6 月

 


執筆者:伊藤 美里
Misato Ito

盛岡医療福祉専門学校卒業
日本医学柔整鍼灸専門学校卒業

鍼師・灸師
柔道整復師

学生時代バレーボールに打ち込み、当時自分の心の支えとなったアスリートやアーティストに携わる仕事をしたいと思い、「身体の治療・ケア」する道を選びました。
日々患者さんの治療にあたる中で、さらに治療の引き出しを増やすべく鍼灸師の資格を取得。
解剖学的な構造、運動学、最新のエビデンスの理論を基におひとりおひとりの「何が原因か」を追究し、よい治療をご提案できるよう努めてまいります。


2019年国民生活基礎調査でみる「肩こり」

皆さんの多くは「現代人には肩こりに悩む方が多い」という話を耳にしたことがあるのではないでしょうか。この話を裏付けるデータは、様々な統計で確認することができます。

そのひとつが、国民の健康や生活状況などを把握するために国が実施している国民生活基礎調査です。国民生活基礎調査は国民の健康状態が数値で分かることから、健康に関する仕事をしている職業であれば、データを目にする機会が少なからずある調査ではないでしょうか。

そこで今回は2019年に行われた国民生活基礎調査のデータを、肩こりに注目しながら見ていきましょう。

参考: 2019年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省

 

国民生活基礎調査とは

調査のために記入をしたことがあっても、データがどのように使用されているか把握していない方もいるでしょう。まずは、国民生活基礎調査についてご紹介します。

目的

実施する目的は「保健・医療・福祉・年金・所得など国民生活の基礎となる事項を調査し、厚生労働行政の企画および立案に必要な基礎資料を得ること」です。

昭和61年(1986)年から3年ごとに「大規模調査』、中間の年は「簡単な調査」を実施しています。直近では2019年が大規模調査です。国民生活基礎調査は世帯ごとに実施するため、家族の誰かがアンケートに答えていることもあります。

 

調査対象

日本に国籍がある世帯とその世帯員が対象です。さらに、票によって調査対象が決まっています。

■世帯票/健康票
2015年実施の国勢調査区の中で、後置番号「1」と「8」より層化無作為抽出を行った5530地区内すべての世帯と世帯員(約30万世帯と約72万人の世帯員)
※「後置番号」は国勢調査区の種類を表します。一般調査区が「1」、単身者およそ50人以上が居住する寄宿舎・寮などがある区域は「8」です。

 

■介護票
世帯票と健康票と同じく5530地区内から層化無作為抽出をした2500地区内の、介護保険法における要介護者と約7千人の要支援者

■所得票/貯蓄票
世帯票と健康票と同じ5530地区に設定した単位区の中で、後置番号の「1」より層化無作為抽出をした2000単位地区内のすべての世帯である約3万世帯と約8万人の世帯員ただし、以下の条件に当てはまる方は対象外です。

1.世帯票/健康票/介護票の対象外
<以下の状況で世帯に不在の方>
単身赴任の方、出稼ぎの方、おおむね3か月以上の長期出張中の方、遊学中の方、社会福祉施設に入所中の方、病院に住民登録をしている長期入院中の方、預けられている里子、収監されている、その他の別居中の方

2.所得票/貯蓄票の対象外
1.の世帯票に当てはまる方、世帯票調査日以降に転出入した世帯と世帯員、住み込みやまかない付きの寮・寄宿舎に住む単独世帯

調査日

調査日は調査対象の分類ごとに決まっています。

2019年国民生活基礎調査でいうと、世帯票・健康票・介護票は2019(令和元)年6月6日、所得票・貯蓄票は2019(令和元)年7月11日が調査日でした。

 

調査する内容

対象ごとに調査する内容が決まっています。

■世帯票
単独世帯の状況や5月中の家計支出総額、世帯主との続柄、性、出生年月、配偶者の有無、療保険の加入状況、公的年金・恩給の受給状況、公的年金の加入状況、就業状況など

 

■健康票
自覚症状、通院、日常生活への影響、健康意識、悩みやストレスの状況、こころの状態、健康診断などの受診状況など

■介護票
介護が必要な方の性別と出生年月、要介護度の状況、介護が必要となった原因、介護サービスの利用状況、主に介護する方の介護時間、家族などと事業者による主な介護内容など

■所得票
前年の年間所得の種類別金額・課税などの状況、生活意識の状況など

■貯蓄票
貯蓄現在高、借入金残高など

 

2019年国民生活基礎調査の結果

国民生活基礎調査をすることで、国民のさまざまな状況を数値で把握することができます。各項目について見ていきましょう。

 

世帯数と世帯人員の状況

結果は「単独世帯」が全世帯の 28.8%と一番多く、世帯類型でみると「高齢者世帯」が全世帯の 28.7%と一番多いという結果が出ました。このように世帯を構成している人数や年齢層などが把握できます。

 

各種世帯の所得等の状況

前年の1月1日から12月31日までの所得、貯蓄・借入金は2019年6月末日の現在高及び残高です。年次別の所得では「全世帯」で552万3千円、所得の分布状況では「200~300万円未満」が13.6%などの結果が出ました。また、この項目では世帯主の年齢別の所得や主な所得の種類なども調査しています。

 

介護状況

自宅で介護をしている家族構成は「核家族世帯」が 40.3%と高いことが分かりました。昔は三世代世帯が一般的でしたが、現在は核家族世帯が上昇しています。

また、同居している配偶者が主な介護者という結果などが出ました。介護される年齢は男性では「80~84歳」、女性では「90歳以上」が最も多いということが分かりました。

 

世帯員の健康状態の特徴

自覚症状の状況では、病気やけがなどの自覚症状がある方(有訴者率)の人数を調査しています。まず、性別でみると有訴者率は女性のほうが高く、年齢が高くなるにつれて人数が増加するという結果を得ました。

具体的にどのような症状を訴えているかですが、男性は腰痛・肩こり・鼻がつまるまたは鼻汁が出るという順。女性では肩こりが最も高く、腰痛・手足の関節が痛むという結果でした。また悩みやストレスの状況をみると男性より女性のほうが、割合が高くなっています。

 

有訴者率の上位症状(2019年国民生活基礎調査)

男性 1位、腰痛 2位、肩こり 3位、鼻が詰まる・鼻汁が出る 4位、せきやたんが出る 5位、手足の関節が痛む

女性 1位、肩こり 2位、腰痛 3位、手足の関節が痛む 4位、体がだるい 5位、頭痛

 

2019年国民生活基礎調査に見る肩こり

2019年の国民生活基礎調査では、男女問わず肩こりに悩む方が多いとの調査結果が出ました。またあわせて特に「肩こりを訴えるのは女性が多い」という結果も見られます。

ここで注目したいのは、ストレスを感じている割合も女性のほうが多く出ているという点です。肩こりの原因の一つにストレスがあります。

また筋肉量は男性より女性のほうが少なく、5~6kgもある重い頭を支えたり筋肉が弱いことで姿勢が悪くなりやすかったりするためではないかとの見方もできます。さらに、男性より女性のほうが冷えやすいため血行不良になりやすい、運動不足なども関係しているでしょう。

肩こりがあると頭痛になったり、痛みでやる気が出なかったりと日常生活に影響することもあります。慢性的になると痛みが続くため、一つひとつの作業が億劫になることもあるでしょう。症状を放置せず、何らかの対策をとることが必要です。

 

まとめ

2019年の国民生活基礎調査から、肩こりが自覚症状として持つ人が多く、中でも男性よりも女性のほうが多いということがわかりました。

肩こりの対策において大切なことは、まず原因を考えることです。肩こりに悩む場合、何かしらの原因があります。ストレスや筋肉量だけではなく、緊張・運動不足・姿勢が悪いなど原因の種類はさまざまです。

根本となっている原因を把握したら、それに応じて対策をしていきます。たとえば運動不足が原因であれば、日常生活に少しずつでも運動を取り入れてみましょう。正しく適切な運動を習慣にできれば、お悩みを解決できるかもしれません。

まとまった時間を確保できない場合は、就寝前や仕事の休憩中などにストレッチをしたり、意識して正しい姿勢を保持したりすることが対策になる場合もあります。

参考:肩こりの原因(1)
参考:肩こりを解消したいなら、まずは毎日の暮らしを見直そう

そしてできることなら、早めに医療機関をはじめとする専門家に相談しましょう。肩こりの原因は人それぞれです。場合によっては「良かれ」と思って行った対策が逆効果になることもあるでしょう。特に慢性化した肩こり、悪化したと感じる肩こりは専門家への相談を強くおすすめします。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


快適さだけで選んでは危険!?整形外科医が推奨する枕の選び方とは

はじめに

今日 たくさんの快眠グッヅや寝具が販売され、ネットでは枕選びのコツや睡眠コラムなど様々な情報が溢れています。「人生の3分の1は睡眠」という言葉が浸透しているように、それほどまでに現代人は「睡眠の質」に対する関心が高まってると言えるでしょう。

寝具を新調する際、多くの方は長い目でより自分に合ったものを選びたいと考えるのではないでしょうか。

枕ひとつをとってみても、安価なものから数万円するもの、素材も形状も多種多様です。

個人個人の体格差や骨格の違いなどを考慮した最適な枕を使用しないと睡眠の質は落ちるどころか、首肩こりの原因にもなりうる枕選び。

今回はさまざまな睡眠の研究をもとに整形外科学的に推奨される「枕選び」をご紹介いたします。

良質な睡眠の定義

そもそも、良い睡眠とはどういう睡眠を指すの?

2020年11月より厚労省の掲げる健康寿命の延伸を目指すプロジェクト「睡眠の質を上げてカラダもココロも健やかに」特設Webコンテンツが公開されています。

その中にも掲載されている、睡眠の質の向上について具体的な実践を進めていく手だてとして策定された「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、

個人差はあるものの、必要な睡眠時間は 6 時間以上 8 時間未満のあたりにあると考える のが妥当でしょう。睡眠時間と生活習慣病やうつ病との関係などからもいえることですが、 必要な睡眠時間以上に長く睡眠をとったからといって、健康になるわけではありません。 年をとると、睡眠時間が少し短くなることは自然であることと、日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番であるということを知っておくとよいしょう。

 出典 厚生労働省健康局 健康づくりのための睡眠指針 2014

と記載されています。

つまり、必要な睡眠時間は約7時間前後ではありますが、時間にこだわらず、日中の眠気で困らない睡眠を確保することが大切なのです。

短い睡眠時間しか確保できないという方こそ、良い睡眠(=日中に眠気で困らない睡眠)を得るために、個人に合った寝具選びは非常に重要になってきます。

さまざまな寝具の研究の問題点

寝姿勢は何度も変化するもの

さまざまな、商品のPR広告やHPをみると どれも良さそうに見えますよね。

そこで注意してみていただきたいポイントがひとつあります。

それは、「枕が首のカーブにフィットする」や「頭の重みを分散する」など、寝姿勢を静止した状態として捉えている商品です。

人は夜中に 何度も何度も寝返りを打ちます。

朝、寝た時と同じ体勢で起きるという方も、全く寝返りを打っていないという人はいないのです。そういう方は、目覚めた時が たまたま、入眠姿勢だったということになります。

一晩にする寝返りの回数ってご存知ですか?

男女17人(平均年齢42.5歳、男性9人 女性8人)の6時間の睡眠をビデオ解析した研究によると平均寝返り回数は、頭のみ:平均24回、体のみ:平均16回、頭と体同時:平均15回という研究結果が出ております。

また寝返りをうつ時間間隔は、頭:平均15分ごと、体:平均23分ごととの結果が出ており、いかに高頻度で頭や顔の向き、体勢を変えているかがわかります。

つまり、頭に関しては15分おきに枕との接する面や 首の角度も変化しているのです。

寝姿勢を静止状態のみで捉えることはナンセンスと言えることがお分かりいただけましたでしょうか。

寝返りのしやすさが鍵となる理由

頚椎(首の骨)は、頭部と体幹部を連結するという役割を担うゆえに、わずかな変化にも異常を自覚し防御する機構が備わってます。

ですので、市販されている枕にみる 柔らかさや気持ちよさといった感触を重視しすぎることは、頚椎に悪影響を与えうるという報告もあります。

次にご紹介する正しい枕選びは、個人差のある骨格を考慮しつつ寝返りも加味した枕の高さを調整できる方法です。

ただし、こちらの計測方法は医師による外来で計測する方法となりますのでご自身の正確な数値をお知りになりたいという方は是非URLから飛んでみて下さい。

整形外科学からみた正しい枕えらび

SSS(Set-up for Spinal Sleep)法

こちらの枕の計測方法は枕と睡眠分野を専門とする整形外科医、山田朱織医師により提唱されたものです。

山田医師は2002年より整形外科の診察として特殊外来「枕外来」を開設され、2003年より睡眠姿勢の研究およびオーダーメイド枕の整形外科枕開発のため「山田朱織枕研究所」を設立されております。

SSS(Set-up for Spinal Sleep)法は山田朱織枕研究所の特許に基づく計測方法です。(特許第4024152号)

枕の3大条件

山田朱織枕研究所が推奨する「枕の3大条件」は、以下となります。

第1は体格に適合した枕の高さである。仰臥位と側臥位の両方に適合する1つの高さを決定する。第2は決定した高さが終夜使用中に5mm以上変化しない適度な硬さである。第3は体格変化や加齢に伴い適宜再調整を行う

出典 2015年06月号(58巻07号)整形・災害外科〜肩こりを考える〜金原出版

寝返りに伴い、仰向けでの寝姿勢・横向きでの寝姿勢に対応する高さであること。その高さを保持出来る適度な硬さの素材であること。そして、体格の変化や加齢に応じて枕を調整する必要性があることを提言しております。

改めて、安易に柔らかさや快適さのみで枕を選んではいけないことを、頭に入れておきましょう。

実際の計測方法

では、ここからが実際の計測方法です。

SSS(Set-up for Spinal Sleep)法は3つ行程から適切な高さを算出します。

第1に仰臥位で両上下肢を伸展位で脱力させる。枕の高さを5mmピッチで変更しながら、頸椎の前傾が15度前後で、患者が呼気、吸気とも楽に感じること、後頭部の感触が不快でないこと、後頸部の筋緊張が弛緩することを聴取しながら高さを調節する。

出典 2015年06月号(58巻07号)整形・災害外科〜肩こりを考える〜金原出版

まず、仰向けでの枕の高さを調整します。

両手足を脱力し、伸ばした状態で仰向けで寝ます。首の角度が15°前後となる付近で、呼吸が楽で、後頭部の不快感がなく、首の後ろの筋肉が緩む高さを見つけましょう。

第2に左右側臥位の確認であるが、まず仰臥位で両前腕を前胸部上にクロスして右手を左鎖骨、左手を右鎖骨に触れ、両股関節60度前後、両膝100度前後に屈曲した寝返りの回転ポジションをとり、左右に回転し側臥位になる。額・鼻・顎・胸骨を通る頭頸部の中心線と臥床面が平行になるよう高さ調節する。

出典 2015年06月号(58巻07号)整形・災害外科〜肩こりを考える〜金原出版

次に、横向きでの高さを調整します。

まず仰向けになり、胸の前で両腕をクロスします。股関節と両膝をまげ、左右に寝返りを行います。横向きになったとき、顔と首の中心線と床面が並行になる高さに調整します。

第3に寝返りのスムーズさを確認する。仰臥位で寝返りの回転ポジションをとり、左右に2~3回回転し、寝返りのスムーズさを比較する。目視におけるスムーズとは、中心軸に対し頭部、胸部、骨盤が同期的に回転する状態である。

出典 2015年06月号(58巻07号)整形・災害外科〜肩こりを考える〜金原出版

最後に寝返りのしやすさを確認します。

頭部と骨盤部いずれかに遅れが生じたり、遅れを筋力で補正しようと力む、反動で回転しようとするなどのぎこちない動きがおこらないかをみましょう。

最もスムーズに寝返りができる枕の高さが個人に合った枕の高さと言えます。

なお、前述したように、こちらの計測方法は医師による外来で計測する方法となります。

ご自身で簡易的に行う際はこちらをご参考に鏡や、携帯電話のカメラ機能で確認したり、どなたかに目視で確認してもらってみたりしてお役立てください。

正確な数値をお知りになりたいという方は下記URLから飛んでみていただけますと幸いです。

山田朱織枕研究所 HP

SSS方法を用いた枕の効果

また、SSS法を用いて調整した枕では最少エネルギーでの寝返りが可能となることから、症候性肩こり(交通事故の頚椎捻挫、リウマチ、姿勢異常・円背)への治療としても用いられています。

SSS法を用いると、夜間の寝返りが90%以上容易になり、肩こりの改善は60~80%と高値であった。睡眠中に,最少のエネルギーで寝返りがうてると、肩こりをきたす頚椎、肩、胸椎など骨関節のレストポジションによる安静と同時に、その周囲の筋肉、靱帯、神経等が、ダイナミックな血流の促進により組織が回復し、肩こりが改善されると示唆された。

  出典 2008年11月発行全日本病院出版会「実践 肩のこり・痛みの診かた治しかた」掲載

まとめ

肩こりの治療における枕選びの意義

今回は寝返りのしやすい枕選びという観点からSSS法をご紹介いたしました。

研究や臨床データ、論文を通して ここまで厳密に枕を選定できる基準は多くないと思います。

「朝から肩が凝っている」、「慢性的に肩こりが楽になる事がない」という方は、1日の3分の1の時間を占める寝姿勢になにか問題があるかもしれません。

そのような方は、本投稿が枕を見直していただけるきっかけになれば幸いです。

ただし、逆に合わない枕を使ってしまうことはかえって症状を悪化させてしまう、いわば諸刃の剣とも言えるでしょう。

大きく枕を変えることに不安や抵抗があるという方は、まずは今日からでも実践できる「肩こりラボがすすめる睡眠アドバイス」から徐々に変化の幅をあげていってもよいかもしれません。

肩こりラボがすすめる睡眠アドバイス

タオル枕

バスタオルを三つ折りにしたものを数枚重ね、高さを調整します。

メリットは手軽に枕の高さを調整できることです。自分に合う枕の高さを模索する際や、先程のSSS法を自宅で試してみたいという方におすすめです。

ただし、タオルの生地の柔らかさよって高さを保ちにくかったり、寝返りをうてる十分な幅が作れなかったりすることがあります。特に、枕をすぐに買い換えられない時や、旅先のホテルで枕の高さが合わなかった時などにおすすめです。

就寝前のセルフケア

睡眠前は体を十分なリラックス状態を作ることが重要です。

ゆっくりとした深い呼吸や、脱力をした状態でのストレッチなどを睡眠前に行うことで身体をリラックス状態に導くことができます。

ドローイン(腹式呼吸)や普段丸まりがちな背中のストレッチ、太ももの裏のストレッチなどはベッドの上で行いやすいですので是非無理のない範囲で行ってみてはいかがでしょうか。

胸椎ストレッチ

バスタオルを二重にして丸めたものを肩甲骨の下端あたりに入れます。

猫背となっている丸みの頂点を反らせるように脱力します。

ももの裏のストレッチ

バスタオルなどを細く畳んだものを足底にかけ、両端を体幹方向へ引きます。

もも裏の硬さは、骨盤を後傾(腰が丸まる方向)へ働きます。姿勢不良の要因にもなりますのでしっかり柔軟性を作りましょう。

・もも前のストレッチ

逆に、ももの前が硬い方は、骨盤を前傾させる方向へ働きます。こちらは反り腰の要因にもなります。

足の甲を把持して膝を曲げ、ゆっくりと踵をお尻方向へ引っ張ります。

体幹ひねり・胸のストレッチ

体幹を捻り、臀部〜腰背部〜脇腹など広範囲のストレッチになります。

両腕を大きく真横から斜め上へ開くことで大胸筋のストレッチにもなります。

大胸筋が硬いと肩が内旋(内巻き)方向へ働きますのでこちらも合わせて行いましょう。

以上が、おすすめのストレッチです。

もし余裕のある方は、Youtubeにもストレッチの動画を載せておりますのでこちらもご参考にしてください。

【根本解決ストレッチ】肩こり専門治療院[肩こりラボ]による、コリ解消ストレッチ。肩こりだけでなく首こり、肩甲骨こり、姿勢改善、巻き肩、スマホ首、頚性神経筋症候群

抱き枕

抱き枕は上肢の重みを軽減してくれるとともに、横向きの際に 肩が過度に内旋(内巻き)するのを防いでくれます。

肩が内旋することで僧帽筋(肩こりの症状が出やすい主な筋肉)に伸ばされるストレスがかかることで肩こりが生じてしまうパターンが多く見受けられます。こちらは使っていない掛け布団などを丸め、紐などで縛り代用することができるかと思います。

以上、今日からでも実践できる「肩こりラボがすすめる睡眠アドバイス」でした。

良質な睡眠づくりにお役立ていただけますと幸いです。

参考文献

2015年06月号(58巻 07号) 整形・災害外科~肩こりを考える~金原出版

2008年11月発行全日本病院出版会「実践 肩のこり・痛みの診かた治しかた」掲載

就寝中の寝返りのビデオ解析による特徴点の基礎評価―運動器疼痛管理に役立つ至適睡眠姿勢での検討―


執筆者:伊藤 美里
Misato Ito

盛岡医療福祉専門学校卒業
日本医学柔整鍼灸専門学校卒業

鍼師・灸師
柔道整復師

学生時代バレーボールに打ち込み、当時自分の心の支えとなったアスリートやアーティストに携わる仕事をしたいと思い、「身体の治療・ケア」する道を選びました。
日々患者さんの治療にあたる中で、さらに治療の引き出しを増やすべく鍼灸師の資格を取得。
解剖学的な構造、運動学、最新のエビデンスの理論を基におひとりおひとりの「何が原因か」を追究し、よい治療をご提案できるよう努めてまいります。


肩こりと骨の関係

座りっぱなしの方も増えた現代、老若男女問わず肩こりに悩まされている日々をお過ごしの方も少なくないでしょう。

「常に肩が痛いけど病院に行くほどじゃない」「これぐらいなら我慢できるから……」と放置してしまう人もいらっしゃるかもしれません。けれども肩こりは何らかの不調の合図である可能性も否定できません。

肩こりは原因が何であるかを知り、正しく対処することで改善が見込める可能性があります。原因として考えられる要素は血流の悪さ・ストレスなど様々であり、その1つが「骨」です。

肩こりと骨に密接な関係があります。
今回は「肩甲骨」をはじめ、肩こりに関わる骨に着目してみましょう。

 

 

肩こりに関わる主な骨

肩甲骨は、肩こりに深く関わってくる骨です。理由としては、肩こりを引き起こす筋肉が肩甲骨と多く繋がっているからというところにあるでしょう。

腕を動かすと共に可動する肩甲骨ですが、前傾姿勢のままじっとしていることが多い現代人は肩甲骨が大きく動くことが少ないです。もし肩甲骨があまり動かない状態の場合、周りの筋肉の血流が悪くなるなど、身体に悪影響を及ぼす可能性があり、肩こりへと繋がりやすくなります。意識して適度に身体を動かしていくのが理想です。

 

次に注目するのは首の骨

首の骨、すなわち頸椎の本来の形をみなさんはご存じですか?

正しい形状は、”前弯”といい、地面からの垂直に対して顔側にカーブしているものです。

しかし、スマートフォンの使用やパソコン作業によって前傾の姿勢をとることで頸椎のカーブがなくなったストレートネックになってしまう、もしくは背中側にカーブしてしまう場合があります。人の頭はとても重いため、骨が正しい傾きでない場合、首の筋肉に大きく負担をかけてしまうことになるのです。

 

そして鎖骨は本来首と胸をつなげる役割を果たしており、これも肩こりに関係する骨の1つです。

鎖骨の正しい形状はV字の配置です。しかし、なで肩などが理由で水平の配置になってしまうこともあります。そうなると、肩甲骨も下がって筋肉が緊張状態になってしまうため、肩こりに繋がってしまうのです。

 

 

初期症状として肩こりが起こりうる症例

筋力の衰えや重点的な負荷のかけすぎによる肩こりは、主に筋肉の収縮により血管が圧迫されることで起こります。

しかし、中には骨が異常をきたしたことによって発症する肩こりがあります。特に以下の二点がよくある症例です。

 

・頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、背骨のひとつひとつの骨の間にある動きを付けるために必要な椎間板がずれてしまうことです。ヘルニアとは、体内の臓器の位置がずれてしまうことを言います。腰のイメージが強いですが、実は首周りにも発症する可能性があります。首周りを中心に痛みやしびれが伴うほか、肩こりや手足の動きへの影響も考えられるでしょう。若年層の方への発症も確認されています。酷い場合は手術治療が必要になることもあり、自分だけで判断せず、異変を感じたら診察に行きましょう。
・頚椎症(けいついしょう)
年月を経て背骨や椎間板が変形し、神経を圧迫するのが頚椎症(頸椎症)。こちらも首や肩の痛みやこり、手のしびれを引き起こします。加齢が理由で発症することが多いです。薬での改善も見込まれますが、安静のために装具の着用を必要とする場合もあります。

 

たかが肩こり、そう思う方もいらっしゃるでしょう。しかし実は「ただの肩こり」とは言い切れない場合があるのです。

身に覚えがある方、そして下記に当てはまるようでしたら、早めに専門医への検診をおすすめいたします。

・運動した時に肩が痛む。
・手の麻痺、しびれになる。
・動かしていないのに肩や首が痛む。
・だんだん症状が悪化していく。

 

 

見直しの鍵は姿勢から

体のメカニズムを考える上で、姿勢というのは重要な要素です。姿勢の良い人というのは、見た目にも美しい印象を与えやすい傾向にあります。ですがそれだけではありません。姿勢をどのように保つかが、体の状態へ影響を与えていると考えてよいでしょう。

どんな姿勢をキープするかによって、体にかかる負担が大きく異なります。正しい姿勢をとることは全身のバランスに良い影響を与えます。同じ姿勢を長時間続けるよりも、適度に体を動かすようにできればなお良いです。

良い姿勢は、ビジネスやスポーツにおいても良いパフォーマンスも招きやすくなります。逆に姿勢が悪いと血流が滞ってしまう、筋肉が緊張しっぱなしになる他、骨への影響も考えられます。

 

人間の体の軸の1つが背骨です。

体は筋肉や骨格によって支えられています。ですがもし反り腰や猫背をはじめ良くない姿勢が習慣化してしまうと、骨が本来の位置ではなく傾いた状態でキープされ、ゆがみやずれに繋がることになります。この状態が続くと、慢性的な肩こり・腰痛などが起きやすくなる可能性があるでしょう。

 

 

骨を意識した姿勢の改善

では、姿勢を改善するにはどうしたらよいのでしょうか。

姿勢を良くするためには、やはりまずは皆さんが日頃からどのような姿勢で日常生活を送っているのかという点を理解する必要があります。オフィスワークなどでも、1日1回、もしくは気が付いた時だけでもよいので、姿勢をチェックし正す時間を設けてみましょう。

良い座り姿勢というのは、背筋を伸ばし軽くあごを引いた状態のことを指します。この時、背骨がどのような形になっているかを意識し、正しい位置への修正を心掛けるようにすればなお良いです。

 

ここでは、あなたの肩甲骨がどのような状態なのかをチェックする方法の1つをご紹介しましょう。

肩甲骨の状態チェック

①腕を真横に、地面に平行に伸ばしてみてください。
②その状態のまま、痛いと感じるところまで徐々に腕を上げていきましょう。
③耳につく、または耳の近くまで行く人は肩甲骨周りがほぐれている状態です。ですがもし全く動かない、もしくは半分ほどまでしか上がらなかった人は肩甲骨が固まっている可能性があります。

※無理に腕を上げようとすると、筋肉などを傷めてしまう可能性があります。チェックの際は反動をつけないよう、ゆっくり無理のない形で行ってください。

 

定期的に正しい方法で適度なストレッチや運動を行うのは、骨だけではなく筋肉をはじめとする体の各所にとっても良い影響を与える対策法となります。隙間時間に続けることで、肩こりを招きづらい良い状態の体を目指しましょう。

他にも、体への負荷を左右均等にするというのも改善策の1つです。例えばショルダーバックを愛用している方なら、左右どちらかの肩にかけ続けるのではなく、左右両方の肩に同じように負担をかけるようにすることで、骨のゆがみを招きにくくなるでしょう。

 

 

 

骨と肩こりと枕

姿勢と合わせて見直したいのが就寝環境です。

日常生活を送っている中で、姿勢が悪くなっているなと自覚を持った経験をお持ちの方でも、寝ている時の姿勢を意識しているという方はそう多くないかもしれません。

 

もし横になっている状態で頭、首と布団の間に不自然な隙間があると、筋肉が緊張状態になってしまいます。これでは十分に体を休めることができません。また長時間不自然な体勢を取り続けることになるので、肩こりなどを招く可能性もあるでしょう。

そのため「自分に合った枕を使う」というのも肩こり予防の方法として効果が期待できるかもしれません。

自分に合った枕の主な条件は、
・立った状態の時と同じ姿勢で横になることができるもの。
・寝返りを無理なく打てるもの。
などが知られています。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こり率No.1は〇〇職!職種による肩こり・首こりの原因と対策を解説します。

画像をhttps://www.ac-illust.comより引用させていただきました

はじめに

現代の日本において生活形態の変化に伴い頸肩腕痛(首・肩・腕の痛み)を訴える人の割合が多く、日頃、何かしらのメンテナンスをされていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

 

厚生労働省によって平成28年に行われた国民生活基礎調査では,肩こり症状の有訴率は女性は1 位、男性は2 位を占めたことが報告されています。

 

肩こりを訴える方は職種から見るとどのような特徴があるのか、また、どのような形態で仕事をされている方が多いのかを参考に肩こり対策の生活スタイルを考察したいと思います。

 

肩こりになりやすい方には特徴があります。

 

女性は筋力不足、男性はやや肥満傾向の方

 

まず職種を分析する前に男女差について解説いたします。

 

参考文献には、以下のように記載があります。

“肩こり症状有訴者は,肩こり症状非有訴者に比して,女性においては握力と下腿後面の筋力などが有意に低値であったこと,男性においては体脂肪率などが高値であったことを報告している.“

出典 勤労者の肩こり症状に関連する因子の検討 日職災医誌,67:87─94,2019

つまり、女性で肩こりでお悩みの方は、肩こりではない方と比べて筋力不足が認められること、男性においては肩こりでお悩みの方は、そうではない方よりも体脂肪率が高い傾向にあるとの研究結果になります。

 

また、男女共通して肩こり症状を有する方は、体幹筋の筋肉率が低値であることも認められています。

 

肩こりの原因は肩にはない

画像をhttpss://1post.jp/1646 から引用させていただきました

 

前述したように「体幹筋の筋力不足」について、首肩こりと体幹筋の筋力不足はどう関連するのかみていきましょう。

 

まずは具体的に、体幹筋とはどういう筋肉を指すのかご説明いたします。

 

体幹筋とは、腹部を支える「腹直筋」「腹横筋」「内腹斜筋」「外腹斜筋」と、腰背部を支える「脊柱起立筋」「多裂筋」「広背筋」、など字の通り、体の幹となる部分を前後で支えている筋肉になります。

 

これだけを見ると直接首や肩には関連の少ないように思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

 体幹筋の弱さが肩こりの原因となる理由

 

では、なぜ、体幹筋の低下が首や肩へ影響を与えるのか。

 

大きな要因の一つとして、

「体幹筋が使えないことにより首肩こりが誘発される不良姿勢を作ってしまう」ということが考えられます。

 

体幹筋の役割は姿勢を維持することです。

 

体幹筋がうまく機能していないと胴体をよい位置で支える事ができないので、その上にある首や肩を支えている筋肉が代償的に働くこととなり、結果として肩こりという症状が出現します。

 

運動習慣の有無=肩こりの有無?

 

また、男性の肩こりを訴える方は肥満傾向にあるとのことですが、

筋肉の硬さとBMI(Body Mass Index:体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数)の関係性を調べた研究資料によると

 

“運動無し群のBMIが大きくなると筋硬度は運動有り群より数値が高くなる点に注目すれば(中略)運動不足とストレスが加味されて筋硬度が高くなっている。”

出典 肩こりのアンケート調査と筋硬度との相関 計測自動制御学会東北支部 第256回研究集会(2011/11/26)資料番号268-6

こちらの研究では、

普段運動習慣がありBMIが高い方・低い方、また 運動習慣がなくBMIが高い方・低い方の
4分類にわけて対象部位(肩こりの自覚症状のある部位)の筋肉の硬さを筋硬度計を用いて評価しています。

 

結果によると、

運動習慣がなく、BMIが高い方が他の3分類の方よりも筋硬度が高くなっております。
要因としては運動不足や筋緊張のストレスによって筋肉の硬さが大きくなると考えられるという研究結果でした。

 

運動習慣の有無とひとことに言っても、どのような種類の運動かにもよって使われる筋肉の比率は変わってきます。

全身運動と仮定した場合、アウターマッスルのみならず、体幹筋が体幹を安定したポジションで支えることによって、パフォーマンスアップにつながります。

ですので、運動習慣がある方は自ずと日頃から体幹筋を使う習慣があるということになり、肩こりの有無にも関与すると仮定できますね。

 

肩こりを訴える方の過半数は〇〇職!

 

現在、日本にはこんなにも様々な職種があります

 

では、本題となる職種別に肩こりとの因果関係をみていきましょう。

 

日本標準職業分類によると、

事務職, 管理職,専門・技術職,サービス職,保安職,農林漁業職,生産工程職,輸送・機械運転職,建設・採掘職,運搬・清掃・包装等・その他

 

と、現在の日本の職種は多岐に渡ります。

 

やっぱり1位はあの職種

 

しかし、これほどさまざまな業種が存在するにも関わらず、結果をみると

肩こりを訴える方の58.2%が「事務職」となっており、2番目に多い「専門・技術職」が24.1%、「管理職」が12.7%と続きます。

 

いかにデスクワークが首肩への負担が大きいかが伺えますね。

 

就業時間から見る肩こり率

 

みなさんの勤務時間はどのくらいでしょうか。

肩こりを訴える方と肩こりではない方との勤務状況で、もっとも顕著な違いが見られた項目は、勤務時間です。こちらは言わずもがなかもしれません。

 

肩こりの方で勤務時間が1日に9時間以内にとどまっている割合は26.6% 、肩こりではない方の勤務時間が1日に9時間以内にとどまっている割合は41.1%となり、勤務時間の長さに比例した肩こり率とも言えるでしょう。

 

お勤めをされていらっしゃる方の場合、個人で勤務時間を調整するのはなかなか難しいというかたもいらっしゃると思います。

 

こちらは個人では大きく改善することは難しいかもしれませんが次に述べる考察を参考に負担を軽減することは可能だと考えております。

 

職種から肩こりの原因を考察します

 

立たない・歩かないが要因の一つ

事務職の方が他業種と異なる大きな特徴は「座っている時間が長い」ということではないでしょうか。

 

肩こりを訴える方の就業時の姿勢について、さらに詳しく分析すると、事務職の方の中でも、「座位中心だが歩く人」に対して「座位中心で歩かない人」に肩こりを訴える方が多いという結果となっています。

 

人間は座位に比べて立位の方が体幹筋の活動量が大きくなりますので、

前述にある、体幹筋の筋力不足の方に肩こり有訴者が多いことに関連して、座位の時間が長いがゆえに筋力不足を招くとも考えられます。

 

普段から座位中心の就業姿勢の方はまず「立つ」動作の頻度を増やし体幹筋を活動させる回数を増やす必要がありそうですね。

 

長時間のPC作業の負担を減らすコツ

 

勤務時間が長くなってしまう方こそ、PC環境を整えることが重要となってきます。

 

是非、過去の記事、

肩こり・首こりが気になる方が意識すべき、パソコン作業時の適切な姿勢(座り方)とデスク環境とは? 厚生労働省のガイドラインをふまえて解説します。

 

をご参考に少しでも身体の負担が減る環境づくりをしていただきたいと思います。

 

在宅勤務が増えた方へ

画像をhttps://simplish.online/ceointerview/standingwork/より引用させていただきました

 

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で在宅勤務が増えた方も多いと思います。

この変化により身体への負担が減った方・増した方、両方いらっしゃると思いますが皆さんはいかがでしょうか。

 

適宜、休憩を取れる点に関してはとても大きな利点に感じます。

人目を気にせずストレッチをしたり、疲れが蓄積される前に体勢を自由にかえたりすることで以前より首肩への負担を分散できているのではないでしょうか。

 

一方、自宅ではオフィスとは異なり、デスクとチェアではなく床に座りテーブルで作業されることを余儀なくされている方もいらっしゃるでしょう。

 

低いテーブルで頭は前方に倒れ、背中は丸まり、骨盤は後傾し、背部への負担が増大してしまいます。

 

後者でお困りの方は、まずは目線の高さを下げない工夫をしましょう。

ディスプレイの高さを上げるか、もし高めの棚などがあれば立ち上がった姿勢で作業することも首肩への負担は軽減されます。

 

床に座って作業される際は骨盤が後ろに倒れないようにお尻の後方にクッションなどを噛ませて骨盤を立たせ、背中が丸まり過ぎないよう意識してみてください。

 

まとめ

 

以上、肩こりを職種と照らし合わせてみたとき、

有訴者は男性よりも女性に多く、体幹筋の筋肉量が低く、さらに就業時の姿勢が座位中心でほとんど歩くことが少ない方に多いということになります。

 

以上のことから、肩こり対策における打開策として

 

・意識的に体幹筋を働かせて座位時の姿勢を正す。

・無意識でもその姿勢がキープできるように体幹筋をトレーニングにする。

・長時間の座位継続時間を避け、立つ・歩く動作を増やす。

・PC作業環境を整える。

 

が、挙げられます。

 

業種柄、肩こりでお悩みの方の参考になれば幸いです。

 

 

【参考文献】

勤労者の肩こり症状に関連する因子の検討 日職災医誌,67:87─94,2019

肩こりのアンケート調査と筋硬度との相関 計測自動制御学会東北支部 第256回研究集会(2011/11/26)資料番号268-6

 


執筆者:伊藤 美里
Misato Ito

盛岡医療福祉専門学校卒業
日本医学柔整鍼灸専門学校卒業

鍼師・灸師
柔道整復師

学生時代バレーボールに打ち込み、当時自分の心の支えとなったアスリートやアーティストに携わる仕事をしたいと思い、「身体の治療・ケア」する道を選びました。
日々患者さんの治療にあたる中で、さらに治療の引き出しを増やすべく鍼灸師の資格を取得。
解剖学的な構造、運動学、最新のエビデンスの理論を基におひとりおひとりの「何が原因か」を追究し、よい治療をご提案できるよう努めてまいります。


【肩こり解消を目指す方向け】ストレッチの原則5つ

毎日とにかく忙しく昼食も机でパソコンを操作しながらコンビニで買ってきた弁当を掻っ込む。在宅のリモートワークが増え、通勤時間も無く体を動かさないし生活のリズムに変調をきたしてしまった。そんな日々を送っているうち、肩こりで悩むようになったという方も少なくないでしょう。

そこでおすすめなのが、簡単なストレッチ運動です。ストレッチにも様々ありますが、自分に合ったものをうまく生活に取り入れられれば長続きしやすくなるはずです。

 

肩こりの原因は複雑に絡み合っていることが多いです。そのため「このストレッチを続ければ誰でも解決!」というような魔法のストレッチ方法は存在しません。ですがストレッチを行うことで、一時的に症状を緩和し解消することは十分に可能だと考えています。

 

肩こり治療で行なうストレッチ首肩の痛みに効く!!肩こり解消ストレッチ〜正しいストレッチ方法を解説
https://movementjourneys.com/selfcare-stretch/
誰もが経験する急な痛みと慢性的なツラい症状を解消するための正しい対処方法を、肩こり・腰痛の専門コースを行っている専門家の立場から責任を持ってキッチリお教えします。

 

【制作協力】Nintendo Switch「Fit Boxing」× KatakoriLabs 〜肩こり改善効果アップのストレッチ YouTube動画公開〜
https://movementjourneys.com/fit-boxing/
Nintendo Switch用ソフト「Fit Boxing」を発売中のイマジニア株式会社と肩こりラボが、肩こり改善効果アップの為のストレッチ動画を制作いたしました。

 

ただしストレッチはやり方を間違えると筋肉を痛めたり、ケガに繋がったりする可能性があります。またかえって肩こりの症状を悪化させてしまう可能性もあるでしょう。

今回は、厚生労働省が推奨するストレッチの原則をもとにお話ししていきたいと思います。

 

参考:ストレッチング | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-082.html

 

 

ストレッチの分類

ストレッチ(ストレッチング)とは、関節や筋肉の柔軟性をアップすることを目的とした運動全般のことをさします。スポーツの際に準備運動(ウォーミングアップ)、整理運動(クーリングダウン)として正しくストレッチを行うことで、ケガ予防や疲労回復に繋がります。また緊張状態にある筋肉を伸ばし緩めることで、現代人がかかえやすいストレスの解消も期待できることがあるでしょう。

 

ストレッチには大きく分けて2種類あります。

ストレッチの分類

1、静的ストレッチ
2、動的ストレッチ

※さらに1人(セルフ)で行うか、2人組(パートナー)で行うか等によっても細かく分類することが可能

 

 

静的ストレッチと動的ストレッチは、関節の動きの有無によって分類されます。

 

静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
ゆっくりと一定の方向に筋肉を伸ばし、その状態でしばらく止まる形のストレッチです。動的ストレッチに比べ難易度が低いため、ご家庭で行う場合はこちらがメインとなるでしょう。
筋肉には伸ばすと反射的に縮もうとする性質(伸張反射)があります。静的ストレッチはゆっくり伸ばすことでこの反射を抑え、筋肉への過度な緊張や負荷の軽減を目指しています。ただし絶対にケガをしないというわけではなく、体の状況やストレッチの方法次第では筋肉を傷める可能性もあります。

 

動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
ある方向へと関節を動かしつつ、筋肉を伸ばしたり縮めたりを繰り返す形のストレッチです。難易度が高いため、専門家の指導のもとで行うのが望ましいでしょう。
動的ストレッチの中でも、特に反動をつけて速く行うものは『バリスティックストレッチング』と呼ばれています。

 

 

 

厚生労働省が推奨するストレッチの原則

厚生労働省が健康に関する情報を提供しているサイト「e-ヘルスネット」では、ストレッチ(ストレッチング)の原則として、以下の5つを紹介しています。

ストレッチングの原則

1、時間は最低20秒
2、伸ばす筋や部位を意識する
3、痛くなく気持ち良い程度に伸ばす
4、呼吸を止めないように意識する
5、目的に応じて部位を選択する

 

 

ここでは1人(セルフ)で静的ストレッチ(スタティックストレッチ)を行う場合を例にして、解説していきましょう。

 

1、最低でも20秒以上かけて伸ばす。
ストレッチにおいて最初の約5~10秒は、伸ばし具合を適度にための「ムダな時間」だからです。20秒以上かけてゆっくり伸ばすことで、効果を期待しやすくなります。ですがやり過ぎは禁物です。長くても30秒ぐらいまでにしておくほうが無難でしょう。

 

2、伸ばす部位を意識する。
ストレッチで筋肉を伸ばす際、「現在は○○の筋肉を伸ばしている」ということを意識しながら行いましょう。意識しながら伸ばすことで、ストレッチの効果が高まりやすくなります。

 

3、伸ばす際は気持ち良いと感じる程度に。
いくら効果を出したくても、痛くなるまで伸ばすのはかえって逆効果になりかねません。気持ちいいと感じる程度にしておきましょう。

 

4、伸ばしている間は呼吸を止めないように。
特にお腹を圧迫する伸ばし方となる部位のストレッチを行う場合、無意識に伸ばすと呼吸が止まっていることがあります。ですがストレッチ中に呼吸を止めると血圧が上昇する可能性も考えられます。また深くゆっくり呼吸を行うと緊張が和らぐ効果も期待できるでしょう。

 

5、伸ばす部位は適切に選ぶ。
もし全身の筋肉全てをくまなく丁寧にストレッチしようとすると、非常に時間がかかります。またやり過ぎや体のトラブルにも繋がりやすくなるでしょう。また直接お悩みの解消に繋がる筋肉を伸ばせなければ、ストレッチの効果は出にくくなることも考えられます。
「自分が何のためにストレッチを行うのか」をしっかりと考え、その目的に応じ伸ばす筋肉の部位・伸ばし方を選ぶことをおすすめします。

 

 

 

ストレッチを始める前に

肩こりの原因には様々ありますが、その1つが首や背中の筋肉の血行やリンパの流れが滞り、緊張した状態が続くことです。

特に首はデリケートな部分となっています。首には頸椎と呼ばれる7つの骨があり、その間にはクッションの役割をする軟骨の椎間板が存在します。首を柔軟に動かせるのは脛骨とそのクッションとなる椎間板があるからです。

 

また首は神経組織が詰まった脊椎の通り道でもあるため体全体の運動にも大きく関係しています。ところが脊髄を守り首の動きを支える脛骨や椎間板は変形しやすいのが弱点。個人差がありますが早い人だと20代から変形が始まることも。それを起こりやすくしている要因として、現代人特有のライフスタイルが考えられるでしょう。

「ストレートネック」という言葉をご存知でしょうか。頸椎は本来、緩やかなS字を描いています。ところが首を前に突き出した姿勢を長く続けると頸椎が伸びてしまい真直ぐ、つまりストレートな形で固定されてしまうのです。スマホを使う時には前かがみの姿勢になり首が伸びてしまうため「ストレートネック」は「スマホ首」とも呼ばれています。

頭の重さは約5Kg。首を30度前に傾けると、頭の重さの3倍以上の18 kg、60度傾けると27 kgもの負担が首の筋肉に掛かるのです。頸椎がS字を描いていることで、この荷重をうまく逃がしているのですが、ストレートネックになってしまうとそれが上手くいかず首や肩の筋肉が緊張して肩こりの原因となります。他にも無理な姿勢をとり続けたり、運動不足な時期が続いたりなども原因として考えられるでしょう。

 

もちろん専門家に相談しながら根本的な解決を目指せればそれにこしたことはないのですが、忙しい生活の中ではなかなか難しいかもしれません。そこでまずは日々の生活へと手軽に取り入れやすい一時的な解消法として、ストレッチを試してみるのも選択肢の1つです。

ただしその際は正しい方法を心掛けましょう。

そしてもしストレッチを続ける中で体に違和感を覚えた場合、早めに病院へと相談するようにしましょう。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


運動で太りにくい体質に~筋肉量を増やし、基礎代謝アップ・慢性的な肩こりの解消を目指す

「そこまで食べ過ぎていないはずなのに体重が増える」
「日常生活に大きな変化はないはずなのにだんだん太ってきた気がする」

 

このように、年齢を重ねることで体の変化を感じている方も多いでしょう。

原因としてはいろいろなことが考えられますが、もしかすると代謝が落ちたことが大きいかもしれません。代謝とは簡単に言うと体内で消費するエネルギーのことです。体内に取り込まれた栄養素は体内で分解され、活動するためのエネルギーとして利用されます。

代謝には「基礎代謝」と「生活活動代謝」の2種類があります。基礎代謝は人が生きる上で最低限必要な生命の活動に関する代謝で、心臓や内臓の活動、体温の維持などに使われるエネルギーです。特に何もしなくてもこの基礎代謝によるエネルギーは消費されます。もう一つの生活活動代謝は、体を動かすことによる消費エネルギーで、動けば動くほどその代謝量は上がっていきます。

 

この2つの代謝のうち、特に基礎代謝は筋肉の量によって大きく左右されることが分かっています。筋肉量が多い人は基礎代謝が高くなり、筋肉量が少ない人は基礎代謝が低くなる傾向にあります。つまり筋肉量が多ければエネルギーが自然と消費されやすくなるため太りにくい体質になるのです。冒頭での体質の変化の原因がここにあります。

また年々少しずつ筋肉量が落ちてしまうことにより、肩こりや筋肉痛など様々な症状に繋がっている可能性もあります。生活に無理なく運動を取り入れ筋肉量を戻すことで、これらの改善を見込める可能性もあるでしょう。

 

 

有酸素運動で脂肪を減らす

脂肪を燃やして痩せるには有酸素運動が良い、と耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 

体を動かすエネルギーは、体内にあるATP(アデノシン三リン酸)という物質がキーポイントです。このATPがADP(クレアチン二リン酸)とPi(無機リン酸)に分解されるときに発生するエネルギーを利用することで人間は体を動かすことができます。

しかしATPは体内には少ししかないことから、長時間動き続けるためにはADPとPiを再合成させる必要があります。その再合成のために必要な材料を補うために糖などを消費する必要があります。

 

運動を始めてから時間が経つと次はエネルギーを生み出す過程で脂肪が活躍をしだします。脂肪は1g当たりのエネルギーが糖の2倍以上あり、脂肪を活用することで長時間運動することが可能になります。

脂肪からエネルギーをつくり出すためには、脂肪がTCA回路へ取り込まれる必要があり、脂肪はこのTCA回路の中で形を変えていき、最後には二酸化炭素と水へと分解されていきます。

 

その過程で生み出されたエネルギーをもとにATPの再合成が行われていくのです。そして、TCA回路の働きを維持するうえで大切なのが酸素です。酸素の供給が足りないとこの回路は機能が滞ってしまい、脂肪をエネルギーとして利用することができなくなってしまうのです。運動中に酸素をしっかりと取り入れTCA回路の機能を維持し、脂肪を効率的にエネルギーに変換する。

これが、有酸素運動と呼ばれる仕組みです。

 

 

スロートレーニング

筋肉を成長させるには筋肉に対し刺激を与える必要があります。刺激を与えるには主に日常生活の中で適度に運動するよう心掛けたり、意識的に負荷をかけてトレーニングしたりする方法があります。

筋肉に負荷をかけるトレーニングの1つが「スロートレーニング」です。

 

スロートレーニングの特徴は、その名の通り動作をゆっくりと行うことで筋肉を長く緊張させ血流を制限させることにあります。血流が制限されることにより筋肉へ酸素が届きにくくなり、無酸素で働く速筋がトレーニングの中で使われ強度の高いトレーニングをした時と同様に筋肉に乳酸が溜まります。

その乳酸の濃度を下げるために筋肉は水分を取り込み筋肉がパンパンに張るパンプアップ状態になります。このパンプアップは基本的に強度の高いトレーニングで起こる現象ですが、トレーニングをスローにすることで比較的強度の低いトレーニングでも激しいトレーニングをしたと筋肉に思い込ませることができ、パンプアップを達成することが可能です。

 

重い負荷を体にかけないので怪我のリスクが低く、トレーニング初心者でも比較的取り組みやすいトレーニング方法です。

ただし負荷のかけ方が適切でない場合、例えスロートレーニングであっても怪我に繋がる可能性があります。特に普段運動をしていない方、肩こりをはじめ慢性的な症状をお持ちの方の場合、無理のない範囲でトレーニングを行うのが無難です。また体に違和感を覚えた場合はすぐにトレーニングを中止し、専門家に相談することをおすすめします。

 

 

部分痩せはできる?

特定の筋肉を発達させたい場合は、その筋肉をピンポイントで鍛えることで実現できます。腕を鍛えたいならアームカールを行い、胸板を鍛えるためにはベンチプレスや腕立て伏せを行えば、狙った筋肉を成長させることが可能です。では鍛えるのとは反対に、狙った場所を細くさせることはできるのかというと、これはノーです。

 

腕を引き締めるためにはただ腕の筋トレをすればいいとわけではありません。筋肉だけの話で言えば鍛えて太くなることはあっても細くなることはないのです。

また大変誤解されやすいのがたるみの原因についてです。腕やふくらはぎなどがたるんでいるように見えるのは筋肉が弛んで締まりがなくなってしまったからではなく、筋肉が減ったと同時にその周りに脂肪がつき、その結果プヨプヨとたるんでしまっていることが主な原因です。そのため狙った場所を引き締めたいのであればその狙った筋肉を鍛えつつ、同時に周囲の脂肪を減らす必要があります。

 

しかし気を付けたいのは、特定の部位の脂肪だけを減少させるのは基本できないということです。

運動中に体内のエネルギーが足りなくなると、体脂肪を分解してエネルギーのもとにするためのホルモンが分泌されます。このホルモンは血液に入り全身を巡るため、全身のすべての脂肪のもとに届けられます。脂肪細胞はそのホルモンによりほぼ均等に分解され、遊離脂肪酸になり血液中に流れます。筋肉はこの遊離脂肪酸をエネルギーとして利用するので、特定の部位にある脂肪のみを直接使うことはないのです。

またそもそも筋トレは有酸素運動やスポーツに比べて消費エネルギーが大きくないため、直接脂肪を減らす効果はあまり期待できません。筋トレで狙えるのは筋量を増やすことで基礎代謝をアップさせること。これによりエネルギー消費をしやすい身体を作って体脂肪を減らしたり、日常生活におけるケガなどを防止したりすることに繋がるでしょう。

 

 

筋肉が脂肪に変わる?

筋肉は筋トレや強度の高い運動により強く太くなっていきます。そして筋トレや運動をやめてしまうと、筋肉はだんだんと細くなっていってしまいます。

例えば、骨折により手や足にギプスを付けて固定していると、約6週間で筋肉は25%ほど減少してしまうと言われています。また、無重力状態ではカラダにかかる負担が限りなく0に近くなるため、宇宙へ飛び立つ宇宙飛行士の人たちは船内でトレーニングを行っていないと地球に帰還した時に立つこともできなくなってしまうとも言われるくらいに筋肉は減少してしまうのです。

 

「筋肉は使わないと脂肪に変わる」などと耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。確かに筋肉は使わないと細く弱くなってしまいますが、実際に筋肉が脂肪に変わるということはまず無いと言ってよいです。トレーニングを止めてしまうと筋肉に張りがなくなりプヨプヨしてしまうために、筋肉が脂肪に変わってしまうという勘違いをさせてしまっているのかもしれません。

筋トレをやめて筋肉が減少すると基礎代謝も落ちてしまい、また筋力の低下により疲れやすくなってしまい日常での運動量自体も減ってしまいます。その一方で、日々の食生活があまり変わることがなく過ごしていると、結果として一日の摂取エネルギーの収支がプラスの方向に傾くことで体脂肪が増えていってしまいます。筋肉が細くなり、逆に脂肪が増えることで、さらに筋肉が脂肪に変わったしまったと錯覚をすることになってしまうのです。

 

筋トレをして手に入れた筋肉がいつか脂肪に変わってしまうということはありませんから、なるべく長くトレーニングを継続していくのが望ましいでしょう。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。


肩こりには、どこの筋肉が関係しているのか

多くの現代人が悩まされているであろう肩こり。スマートフォンやパソコンの普及により体の動きが最小限で済む生活になり、肩こりがひどくなったと思っている方も多いでしょう。

また最近では若い人も肩こりに悩むことが増えています。

 

それでは、肩こりと筋肉にはどのような関係があるかご存じでしょうか。肩こりという症状にはどこの筋肉が影響しているのか、筋肉がどのような状況になると肩こりが発生しやすくなってしまうのかを詳しく知り、正しい方法で肩こりを解消していきましょう。

 

 

肩の筋肉

人間の肩にある筋肉は何に使われているのかご存じでしょうか。

腹筋、ふくらはぎの筋肉等の使っている時に実感しやすい部位とは違い、肩の筋肉が動いている時を感じる人は多くはないかもしれません。人によってはむしろ「肩こりになってから肩の筋肉を意識し始めた」というケースもあるかと思います。

 

実は肩の筋肉というのは、主に人間の腕を吊り下げるために使われています。腕や手など、腕を含む全ての重みが肩により支えられています。つまり肩には常に負荷がかかっている状態なのです。

通常でも負荷がかかる肩の筋肉にさらに重点的に負荷がかかる形で酷使される状態、もしくは筋肉が衰え負荷が増えた状態が、肩こりを招いてしまうことがあります。

 

そもそも人の体というのは、意識的に運動をしないと徐々に筋肉量が減っていきます。転勤や勤務形態の変化をはじめとする通勤・勤務環境の変動等により、運動量が自然に減少するケースもあるでしょう。大人になると学生時代は体育の授業等で行っていた運動もなくなりますし、昔に比べれば運動量が大幅に減った方も多いはずです。

筋肉量が減ると代謝や体力の低下が起こりやすくなり、柔軟性もなくなりがちです。そして筋肉が減少したにも関わらず、それまでと同じような負荷をかけていると緊張状態が長くなります。これも肩こりを招く要因となるでしょう。

 

肩こりになるには主に2つのパターンがあります。

・筋肉の疲労がたまって肩こりになる。
・筋肉が引っ張られることで、血管と神経が筋肉に圧迫されて肩こりになる。

 

もちろん他にも様々な要因がありますが、筋肉は肩こりと非常に密接に関係しているということは間違いないでしょう。ですから日常の生活を見直したり、意識的に運動して筋肉を鍛えたりすることが、肩こりの改善に繋がることも多いのです。

 

 

肩の筋肉を労わるストレッチ

肩こりと筋肉の関係性を理解していただいたところで、実践的な解消方法の例もご紹介しましょう。まずはストレッチにより、肩こりになってしまう原因の筋肉をほぐしていく方法です。

 

肩こりに関係している筋肉は、主に肩甲骨、そして首回りです。そこで、

・肩甲骨を意識した大きな腕回し

をしてみましょう。20回から30回以上が理想です。これは血液の滞りない循環にもつながり、精神的なストレス緩和にもなります。緊張していた筋肉をほぐしてあげてください。

 

もうひとつ、首周りのストレッチの方法をご紹介します。

・首をすくめて10秒ほどキープし、脱力して肩を落とす。
・首をまわす。左右方向、各10回ずつ行う。
・首を左右前後に倒し、10秒キープする。

これを行うことでこりがちな首周りの筋肉の緊張を解いていくことができます。座ったままでも実践することができるので、ちょっとした休憩時間にやってみてください。

 

 

肩こりと筋トレ

「肩こりの対処法に筋トレ?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、ちゃんとした方法で行えば筋トレで肩こり改善を狙うことは十分に可能です。
筋トレで筋肉をつけることで、肩の血流の改善が期待できます。血流が良くなれば自然と肩こりの解消を促せるはずです。

ただし過度な筋トレやストレッチは禁物です。また筋トレ後のケアを怠っても悪化の可能性がありますから、トレーニング中やトレーニング後に体に違和感があればすぐに専門家へ相談する、もしくは専門家の指導のもとでトレーニングを行うことをおすすめします。

 

肩こりと主に関係してくるのは僧帽筋という、簡単に言うと、肩甲骨を動かす筋肉です。背中の肩甲骨のあたりに、首や肩から背中の中央にかかる菱形のような形状で存在しています。

 

自分で出来る僧帽筋トレーニングの例はこちら。

・椅子の上に足をのせ、背中を伸ばして手を床につけて腕立て伏せをする。
・胡坐を組んで床に座り、背中を伸ばす。その状態で両腕を開いて上に伸ばす。手を握り、両腕を懸垂するイメージで胸に引き寄せる。(この時、肩甲骨をよせることも忘れずに。)

他にもジムでダンベルを使う筋トレも効果的です。やりすぎないよう気を付けつつ、適宜自分に合った量の筋トレを意識してくださいね。

 

 

コアと体

最近、トレーニング雑誌や本のなかでコアトレーニングやコアコンディショニングなど「コア」という言葉をよく目にするようになってきているかと思います。ここでは筋トレで効率よく効果を得るために、改めてコアというものを掘り下げていきましょう。

日本語でコアは「中心部」や「体幹」という意味を持ちます。しかし人によってはお腹周りや手足以外の胴体のことを指していたり、また特定のトレーニングをコアとして認識していたりと様々な解釈をされています。特定の筋肉などを指すのではなく体をコントロールするうえで大切な部分と考え、腰椎や骨盤、頚椎にいたるまで、人体の中心となる部分全体をコアと呼ぶことが多いです。

 

このコアのなかで特に大切とされているのが骨盤であり、体の中心に位置する骨盤は手足を含めたすべての動きにおいて重要な役割を持っています。

骨盤周りの状態が体全体へ影響を及ぼすため、肩こりや腰痛をはじめとした様々な不調において、骨盤周りに原因が潜んでいるというケースが多くあります。そのため、骨盤を中心としたコアの状態を良好に保つことが、カラダ全体の状態を良くすることにつながっていきます。鍛えることで基礎代謝がアップすればダイエット効果も期待できるでしょう。

コアを整え、カラダの動きを改善すること、ここにコアトレーニング、コアコンディショニングの大切な役割があるかと思います。

 

 

筋肉をケアする

せっかく筋肉をほぐしたのですから、筋トレの後にはストレッチをして筋肉を労わりましょう。筋肉の疲労による痛みをなくす方法は、やはり運動を習慣付けることなのですが、それ以外にも必要なことがいくつもあります。ここではピックアップして紹介していきましょう。

 

まずは食事。私たちの体は食べた物で作られていますから、トレーニングと合わせて気を付けたいところです。筋肉の疲労回復に繋げるにはバランスのとれた食事が大切です。合わせて

・炭水化物
・タンパク質
・ビタミン
・ミネラル

を重点において摂取していくことがおすすめです。

中でもビタミンB1は炭水化物をエネルギーとして使うときに必要な成分なので意識的に取り入れてみてください。

 

反対にできればトレーニングと合わせて行うのは避けたい、やってはいけないこともあります。特に以下の行動は筋肉に過度な負担をかけてしまいやすいことになるため、気を付けてください。

<筋肉に負担をかけるNG行動例>
・筋肉が疲れているのにも関わらず過度な運動を続ける。
・自分の体力に見合わない運動をする。
・熱すぎるお風呂に入る。
・偏った食事を続ける。
・過度な飲酒

以上のことなどに気を付けつつ、自分の筋肉を鍛え、肩こり解消を目指していきましょう。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
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肩こりの予防にも!筋トレ(筋肉トレーニング)で健康づくり

近年の健康志向の高まりから、様々な方法で健康づくりを目指す方が増えています。その1つが筋トレ(筋力トレーニング=筋力(筋肉が発揮できる能力)を高めることを目的に行うトレーニング)です。

トレーニングを続けることで手に入れられるのは見た目的な変化だけに限りません。トレーニングにより分泌される成長ホルモンは体内の組織を修復する効果を持っており、免疫力を高めます。

ただしとにかく鍛えればよいというものではありません。体の状況に合わせて行うトレーニングや食事などを調整していく必要があります。

 

適切に体を鍛えれば、脳や体を活性化できるほか、肩こりだけでなく怪我全般の予防にも繋がりやすくなるでしょう。肩こりというのは、肩のあたりの筋肉の違和感や痛みや圧迫感のことを指しており、主に筋肉の血行不良等や疲労の蓄積等が原因となります。そのためトレーニングにより全身の血行が改善されれば、肩こりの予防や解消を期待できるはずです。血液循環が良くなれば全身に栄養素を行き渡らせることができるため、体にたまった老廃物も回収されやすくなるでしょう。

トレーニングを続けて理想の体を手に入れたり、目に見えて成長を感じたりすることで、自信を持てるようになるかもしれません。自信は精神にも良い方向に働きます。これは心の健康を保つうえでもとても大切なことです。またストレスを感じたときに分泌されやすいコルチゾールという免疫力を低下させるホルモンがあるのですが、このホルモンの発生を抑えることができるとも考えられています。

 

トレーニングをすることで得られるメリットは数えきれないほどたくさんあります。日々の生活にトレーニングを取り入れて、心もカラダも健康体で過ごせるようにしてみてはいかがでしょうか。

 

 

筋トレには休息が必要

「筋トレ」という言葉自体は一般に広く知られるようになりましたが、世間に広まる筋トレに関する情報の中には、必ずしも正しいとは言えないものが少なからず存在します。

その中のひとつに、「筋トレは毎日やらなきゃ意味がない/効果が期待できない」というものがあります。ですが実際には筋トレを毎日行った場合、効果が上がるどころか、逆に効果が下がってしまう場合があります。

 

まず筋トレとはカラダに刺激を与えその刺激に適応していくことで筋肉を成長させていくものです。筋肉に対して負荷をかけることで刺激を与え、その負荷に対して負けないように筋肉がレベルを上げていくのです。

筋トレを行うとエネルギーの源となる糖が筋肉の中から減少し、エネルギーをつくる過程で乳酸や水素イオンなどの廃棄物が増えます。そして、筋肉が損傷するなどの様々な変化が起こり、筋肉はある程度弱った状態になります。そして弱ったままでトレーニングを続けることが筋肉にとっては良くないので、ここで休息が必要になってくるのです。

つまり、毎日筋トレを行うと、筋肉が十分に回復をしていない状態で新たな刺激を与えてしまうことになります。これでは効果を得るどころか疲労が重なり逆効果になる可能性があったり、怪我へのリスクが高くなってしまったりしてしまいます。

 

そのため筋トレをした後は、十分に筋肉を休ませ、同時に必要な栄養素を積極的に摂取することで筋肉をより強くすることが大切です。筋肉を休ませ回復させることにより、元の状態よりも成長させることを超回復と呼びます。この超回復にかかる時間は筋肉の部位や体の状態により異なりますが、大まかに48~72時間と言われています。そのため筋肉を休ませる時間を考えると筋トレの回数は週に2~3回が妥当でしょう。

また今現在全く運動をしていない人やこれまで運動経験がほとんどない人は、いきなり筋トレを始めると筋肉痛が強く出てしまうかと思います。そのような場合はまず慣れるまで週に1~2回、軽めのメニューを行うことから始めてみてください。無理のない範囲でトレーニングを進め、慣れてきたら頻度や強度を少しずつ増やしながら様子を見るのがよいでしょう。

 

 

トレーニングと食事

「『食事における摂取エネルギー』が『一日の消費エネルギー』を超えるとその分体重は増加し、逆であれば体重は減少する」

この簡単なエネルギーの計算が、私たちの体重の増減を左右しています。

そして筋肉・骨・臓器・脂肪・爪等、私たちの体は全て食べた物をもとに作られています。食物に含まれる水分や栄養素が私たちの血となり肉となり、体をつくりあげる最も大切な源であり、食事の量が足りなければ痩せ、多ければ太ることになります。

摂取のバランスを見直すことで、体脂肪現象をはじめダイエット効果も期待できるでしょう。そしてトレーニングで健康的な体づくりを心掛ける場合、この摂取エネルギーのバランス調整は意識しなければいけない要素の1つとなっています。

 

ここでは2つ、食事において大切なポイントを説明しましょう。

1つ目のポイントは「朝食を抜かない」ことです。朝起きた時、体内のエネルギーは不足気味になっています。ここで朝食を食べずにいると体が飢餓を感じ、脂肪を溜め込みやすい状態に入ってしまいます。この状態を避けるためにもしっかりと朝食を摂り体温を上げ、活き活きと一日を始めることが大切です。

2つ目のポイントは「就寝前は食べ過ぎない」ことです。寝ている間はエネルギーを消費することがあまりないので、寝る前に食べ過ぎてしまうと体脂肪になりやすいと言われています。なるべく寝る直前には食べないようにすることを心がけ、少なくとも寝る2~3時間前には食事を終え、また炭水化物は気持ち少なめにすることが太りにくくするためのポイントです。かといって減らし過ぎは体にとってあまり良くないので、無理のない範囲で意識していくことが大切です。

食事というのは、3大欲求のなかの1つとされているほど、私たちにとって大切なものです。また日々の生活の中での大きな楽しみとなっている方も多いでしょう。いつまでも美味しい食事を楽しく食べ続けられるよう、この2つのポイントを意識してみてはいかがでしょうか。

 

 

筋肉痛

久しぶりの運動や激しいトレーニングを行うと次の日あたりにやってくる筋肉痛。朝目覚めたときに身体が痛くてなかなか起きられないという経験をしたことがある人は少なくないことでしょう。

「筋肉痛」というのは、体を動かし筋肉を使用した際、それに伴い発生する筋肉の痛みのことをさしています。

 

筋肉痛には大きく分けて2種類があります。

まずは「筋肉痛(即発性筋痛)」。こちらは運動直後もしくは運動中に起こる筋肉痛です。

そして一般的によく耳にするのは「遅発性筋肉痛(遅発性筋痛)」という、痛みがすぐには現れず少し時間が経ってから痛みが出てくるタイプの筋肉痛です。ではなぜ、体を動かした後すぐには現れず、少し遅れてやってくるのでしょうか。

 

筋肉痛のメカニズムには様々な説があります。中でも現在有力なのは「筋肉痛の痛みは、体を動かしたことで傷ついた筋繊維が修復する際のものである」という説です。

運動を行うと、筋肉は動いた刺激に応じて損傷を負います。日常の運動程度ではこの損傷そのものでは痛みを感じにくいですが、損傷した筋肉を治そうとする時に痛みが発生します。筋肉を修復する際には徹底的な処置を行おうとするため一度損傷した組織を壊しきって、その損傷部の奥深く根本から治そうとします。この時に起こる炎症反応により痛みが発生します。炎症反応が起こるのに少し時間がかかるため、筋肉痛はすぐには起こらず遅れてやってくるという仕組みです。

 

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執筆者:丸山 太地
Taichi Maruyama

日本大学文理学部
体育学科卒業 東京医療専門学校 鍼灸マッサージ科卒業
上海中医薬大学医学部 解剖学実習履修
日本大学医学部/千葉大学医学部 解剖学実習履修

鍼師/灸師/按摩マッサージ指圧師
厚生労働省認定 臨床実習指導者
中学高校保健体育教員免許

病院で「異常がない」といわれても「痛み」や「不調」にお悩みの方は少なくありません。
何事にも理由があります。
「なぜ」をひとつひとつ掘り下げて、探り、慢性的な痛み・不調からの解放、そして負のスパイラルから脱するためのお手伝いができたらと考えております。